説明

APD測定装置及び方法

【課題】APD測定におけるインターフェースの転送容量や記憶デバイスの記憶容量の大容量化を防止する。
【解決手段】所定のサンプリング周期で取得した前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを対数変換部18で分割された信号レベルとしたレベル軸と、サンプリング周期に応じた時間間隔に基づき分割した時間軸とで構成した周波数帯域成分毎の信号レベルの2次元マップを作成する。次に、作成された2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割し、分割したブロックを構成する各エリアの信号レベルに類似度が一番高いマスクパターンを選別する。そして、このマスクパターンに応じた符号を割り当て、第2データ転送部25から転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングでソフトウェア処理部3に転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号の周波数成分を分析し、各周波数成分の大きさが所定時間中に所定の閾値を超える時間率の累積分布を示す振幅確率分布(Amplitude Probability Distribution:APD)を測定するAPD測定装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
APD測定は、振幅が一定レベルを超える受信信号の時間確率を求める統計データの取得方法の1つであり、統計的に受信信号を観測することにより、瞬時に見て取れない信号特性を観測することができる。
【0003】
従来のAPD測定器としては、受信信号をアナログデジタル変換器(以下、単に「A/D変換器」という)でデジタルデータに変換して、その出力をフィルタバンクで複数の周波数帯域成分に振り分けて、各周波数帯域成分の振幅を個々に所望の量で重み付けをして合成し、その出力を受けて重み付けAPDが合成後の合成振幅の発生頻度に基づく確率を求め、求めた確率を様々な形態で表示部に表示させるものがある(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0004】
このようなAPD測定器の測定対象とする信号の帯域が広い場合には、時間的な信号の振る舞いをつぶさに観測しようとすると、この帯域のなかで最も高い周波数の2倍以上の速さで信号をサンプリングして観測する必要がある。さらに、APDを測定する際は、帯域の10倍以上のサンプリングが必要とされる。例えば、測定帯域が10MHzの場合は、その帯域の10倍の10M×10=100M/秒でサンプリングしてデータを観測する必要がある。
【0005】
この膨大なデータのAPDを測定する場合には、データを実時間処理で記憶し累積する必要が生じてくる。この実時間処理を減らすため、従来のAPD測定器は、サンプリングしたデータを実用に差し支えない精度で量子化して、ある一定時間(例えば、1秒間)あたりの出現頻度を蓄えることにより、確率密度関数(PDF、Probability Density function)のデータを作成する。
【0006】
このPDFデータは、一定時間毎(例えば、1秒毎)に発生するので、PDFデータを累積加算して求める分布関数であるAPD統計データを作成する処理は、実時間で実行する必要はなく、一定時間毎に処理することができて、表示処理や信号処理等のより複雑なハードウェアでは対応しがたい処理を容易に処理できるソフトウェア処理により実行することができる。
【0007】
ソフトウェア処理は、処理速度の点ではハードウェアに比べれば遅いが、製造コスト面や将来の技術継承性では非常によい実現方法であり、判断子を含む制御等のような、より複雑な処理ができ、ソフトウェア処理の有用性を含めてハードウェア処理との並存が有効な実現手段となる。
【0008】
このように従来のAPD測定器は、実時間処理と非実時間処理との2つの処理によってAPD測定を実現するようになっている。ここで、実時間処理は、ハードウェアによって処理され、非実時間処理はソフトウェアによって処理される。
【0009】
ハードウェアにおいては、受信信号が、同相(In-Phase、以下、単に「I」という)成分と直交(Quadrature-Phase、以下、単に「Q」という)成分とに分離され、包絡線検波され、対数変換される。
【0010】
ここで、信号レベルを0.1dB毎にカウントする場合には、1000個のカウンタを用意することにより、ダイナミックレンジが100dBで0,1dB毎の信号履歴を累積することができる。同様に、信号レベルを0.05dB毎にカウントする場合には、2000個のカウンタを用意することにより、ダイナミックレンジが100dBで0.05dB毎の信号履歴を蓄積することができる。
【0011】
これらのカウンタは、各周波数帯域成分に対して用意する必要があるため、例えば、サンプリング周期を100M/sとし、カウンタの量子化したレベルを1000段階と仮定すると、1秒間に最大100M個×1000個のカウントの内容値がハードウェアからソフトウェア処理側に転送される。100Mまでの整数値は28ビットで表現できるため、この例では、各周波数帯域成分に対するカウント値は、28×1000=28kb/sで転送されることになる。一方、包絡線検波後の時系列データの転送の場合は、毎秒100M/s×16ビット(1サンプルあたり16bitとする。)となる、1.6Gb/sの転送量を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−275401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、APD測定においても、サンプリングされた各信号レベルを知りたいというニーズがある。例えば、APD測定時に異常値が検出されたときに、その時刻でどのような信号が出現していたかを知ることで、異常発生の要因の究明やその対策を講じる有益な情報となる。
【0014】
しかしながら、従来のAPD測定装置では、ミクロな立場で観測しようとすると、時間軸の捕捉率が高まるため、前述のようにハードウェアからソフトウェア処理側に大量の時系列データを転送するインタフェースの伝送容量や、ソフトウェア処理側の記憶容量が不足してしまうため、大量のサンプリングされた時系列データをソフトウェア処理側に格納する、大容量の記憶デバイスを用意しなければならないという問題があった。
【0015】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、インタフェースの伝送容量やソフトウェア処理側の記憶容量が不足することなく大量の時系列データをソフトウェア処理側に転送することができるAPD測定装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたAPD測定装置は、ハードウェアで構成されるハードウェア部2と、ソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理部3とを備え、測定対象信号の周波数成分を分析してAPDを測定するAPD測定装置1において、
前記ハードウェア部は、前記所定のサンプリング周期で取得した前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを対数変換する信号レベル取得部13〜18と、
該対数変換された信号レベルをレベル軸、サンプリング周期の時間間隔に基づき分割した時間軸とで構成した周波数帯域成分毎の信号レベルの2次元マップを作成し、当該2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割する2次元マップ作成部21と、
前記分割したブロックを構成する各エリアの信号レベルと、分割するブロック数に応じて予め設定されたマスクパターンとを照合し、前記照合対象であるブロックと類似度が一番高い前記マスクパターンを選別するパターン照合判別部23と、
前記選択されたマスクパターンに応じた符号を割り当る符号割当部24と、
予め設定された転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングで前記ソフトウェア処理部に前記符号を転送する第2データ転送部25とを備え、
前記ソフトウェア処理部は、前記転送ルール情報に対応した受信ルール情報に基づき前記第2データ転送部からの前記符号を受信して各周波帯域数成分の信号レベルを復元することを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載されたAPD測定装置は、ハードウェアで構成されるハードウェア部2と、ソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理部3とを備え、測定対象信号の周波数成分を分析してAPDを測定するAPD測定装置1において、
前記ハードウェア部は、前記所定のサンプリング周期で取得した前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを対数変換する信号レベル取得部13〜18と、
該対数変換された信号レベルをレベル軸、サンプリング周期の時間間隔に基づき分割した時間軸とで構成した周波数帯域成分毎の信号レベルの2次元マップを作成し、当該2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割する2次元マップ作成部21と、
前記分割したブロック内の各エリアの信号レベルを平均化した平均レベル値を算出する平均レベル値算出部26と、
前記算出された平均レベル値と、所定レベル毎に範囲分けしたときの各レベル範囲に対して割り当てられる符号が関連付けされた符号化処理情報とを照合して算出された平均レベル値が含まれるレベル範囲を見つけ出し、該当するレベル範囲の符号情報を出力するレベル照合判別部27と、
前記レベル照合判別部からの前記符号情報に応じた符号を割り当てる符号割当部24と、
予め設定された転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングで前記ソフトウェア処理部3に前記符号を転送する第2データ転送部25とを備え、
前記ソフトウェア処理部は、前記転送ルール情報に対応した受信ルール情報に基づき前記第2データ転送部からの前記符号を受信して各周波帯域数成分の信号レベルを復号化して復元することを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載されたAPD測定方法は、測定対象信号の周波数成分を分析してAPDを測定するAPD測定方法において、
所定のサンプリング周期で取得した前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを対数変換する信号レベル取得ステップと、
該対数変換された信号レベルをレベル軸、サンプリング周期の時間間隔に基づき分割した時間軸とで構成した周波数帯域成分毎の信号レベルの2次元マップを作成し、当該2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割する2次元マップ作成ステップと、
前記分割したブロックを構成する各エリアの信号レベルと、分割するブロック数に応じて予め設定されたマスクパターンとを照合し、前記照合対象であるブロックと類似度が一番高い前記マスクパターンを選別するパターン照合判別ステップと、
前記選択されたマスクパターンに応じた符号を割り当る符号割当ステップと、
予め設定された転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングで前記符号を転送する転送ステップと、
前記転送ルール情報に対応した受信ルール情報に基づき前記符号を受信して各周波帯域数成分の信号レベルを復元する復号化ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載されたAPD測定方法は、測定対象信号の周波数成分を分析してAPDを測定するAPD測定方法において、
所定のサンプリング周期で取得した前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを対数変換する信号レベル取得ステップと、
該対数変換された信号レベルをレベル軸、サンプリング周期の時間間隔に基づき分割した時間軸とで構成した周波数帯域成分毎の信号レベルの2次元マップを作成し、当該2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割する2次元マップ作成ステップと、
前記分割したブロック内の各エリアの信号レベルを平均化した平均レベル値を算出する平均レベル値算出ステップと、
前記算出された平均レベル値と、所定レベル毎に範囲分けしたときの各レベル範囲に対して割り当てられる符号が関連付けされた符号化処理情報とを照合して算出された平均レベル値が含まれるレベル範囲を見つけ出し、該当するレベル範囲の符号情報を出力するレベル照合判別ステップと、
前記レベル照合判別ステップで得られた前記符号情報に応じた符号を割り当てる符号割当ステップと、
予め設定された転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングで前記符号を転送する転送ステップと、
前記転送ルール情報に対応した受信ルール情報に基づき前記符号を受信して各周波帯域数成分の信号レベルを復元する復号化ステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のAPD測定装置によれば、サンプリングした周波数帯域成分毎の信号レベルを非可逆符号化により圧縮することができ、インタフェースの伝送容量やソフトウェア処理側の記憶容量が不足することなく大量の時系列データをソフトウェア処理側に転送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る第1形態のAPD測定装置のシステム構成を示す機能ブロック図である。
【図2】2次元マップ作成部で作成する2次元マップの概念図である。
【図3】マスクパターンの実施例を示す説明図である。
【図4】ソフトウェア処理部のシステム構成を示す機能ブロック図である。
【図5】本発明に係る第2形態のAPD測定装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者等によりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれる。
【0023】
[1.第1形態]
(1−1.装置構成)
まず、図1を参照しながら、本発明に係る第1形態のAPD測定装置の構成について説明する。なお、以下に示す実施形態では、屋外等で受信される外来電波から得られる信号を測定対象信号としてAPDを測定する例について説明する。
【0024】
図1に示すように、第1形態のAPD測定装置1は、各種ハードウェアによって構成されるハードウェア部2と、ソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理部3と、ハードウェア部2からソフトウェア処理部3にデータ転送するためのインタフェース4とを備えている。
【0025】
ハードウェア部2は、アンテナ10を介してRF(Radio Frequency )信号を受信するRF受信部11と、RF信号をベースバンド信号にダウンコンバートするダウンコンバータ12(以下、単に「D/C」という)と、ベースバンド信号をデジタル信号に変換するA/D変換部13と、デジタル信号に対して測定対象の帯域で帯域制限を行う帯域制限フィルタ14と、帯域制限された信号をI成分とQ成分とに分離するI/Q分離部15と、測定対象として予め定められた各周波数帯域成分を抽出するフィルタバンク16と、周波数帯域成分毎に包絡線検波する包絡線検波部17と、包絡線検波の結果を対数変換する対数変換部18とを備えている。
【0026】
フィルタバンク16は、測定対象の各周波数帯域成分のI成分とQ成分とにそれぞれ対応する複数のバンドパスフィルタによって構成される。また、包絡線検波部17は、測定対象の各周波数帯域成分にそれぞれ対応する複数の包絡線検波回路によって構成され、各包絡線検波回路は、該当する周波数帯域成分I成分とQ成分とに基づいて自乗検波することにより、各周波数帯域成分の信号レベルを算出する。
【0027】
対数変換部18は、各包絡線検波回路に対応した複数の対数変換回路によって構成され、各周波数帯域成分の信号レベルをdB単位に対数変換するようになっている。すなわち、測定対象の周波数帯域成分と信号レベルを所定レベル毎に量子化するときの解像度とに応じて分割(例えば、ダイナミックレンジが100dBで0.1dB間隔に1000分割)している。
【0028】
なお、本形態におけるA/D変換部13、帯域制限フィルタ14、I/Q分離部15、フィルタバンク16、包絡線検波部17及び対数変換部18は、本発明における信号レベル取得部を構成する。
【0029】
カウンタ部19は、測定対象の周波数帯域成分と、信号レベルを量子化するときの解像度に応じた複数のカウンタによって構成され、対数変換された信号レベルの出現頻度を周波数帯域成分毎に累積する。例えば、カウンタ部19は、測定対象の周波数帯域成分の数をNとし、ダイナミックレンジを100dBとし、0.1dB毎の信号履歴を蓄積する場合には、1000×N個のカウンタによって構成される。
【0030】
第1データ転送部20は、カウンタ部19を構成する各カウンタの値を一定の時間間隔T(例えば、1秒間隔)でソフトウェア処理部3にインタフェース4を介して転送する。なお、カウンタ部19を構成する各カウンタは、時間間隔Tで第1データ転送部20にカウント値の転送が終わると自動的にカウント値を0にする処理を行う。
【0031】
さらに、ハードウェア部2は、2次元マップ作成部21と、記憶部22と、パターン照合判別部23と、符号割当部24と、第2データ転送部25とを備えている。
【0032】
2次元マップ作成部21は、図2に示すように、縦軸を対数変換部18で分割された信号レベル(本例では100レベルに分割)としたレベル軸(dB)、横軸を帯域制限フィルタ14の仕様に応じたサンプリング周期(例えば測定帯域が1MHzの場合にその帯域の10倍の10M/秒の間隔)の時間間隔に基づき分割した時間とした時間軸(t)とし、これらの交点位置に対応する周波数帯域成分毎の信号レベルを量子化して「0」又は「1」のエリアで表現した2次元マップを作成する。すなわち、マップ中のある時間tにおける周波数帯域成分の信号レベル「1」は1つということになる。そして、このマップ上における任意のエリア(少なくとも時間軸方向又はレベル軸方向に2エリア以上)を包含するよう所定間隔毎にブロック単位で分割している。図例では4エリアを1つのブロックとして区切られている。
【0033】
記憶部22は、2次元マップ作成部21において区切られたブロック内の信号レベルと類似度を比較するためにブロック内のエリア数に基づき生成されたマスクパターンを複数記憶している。本例では4つのエリアを1つのブロックとして分割しているため、図3(a)〜(i)に示すように最大9種類のマスクパターンが存在し、少なくとも図3(a)、図3(b)〜(e)のうちの何れか1つ、図3(f)〜(i)のうちの1つの合計3パターンあればよい。また、記憶部22は、各マスクパターンを符号化する際に割り当てられる符号と各マスクパターンとを関連付けた符号化処理情報を記憶している。さらに、記憶部22は、マスクパターンに割り当てた符号をソフトウェア処理部3に対してどのような順序とタイミングで転送するかを定義した転送ルール情報を記憶している。
【0034】
パターン照合判別部23は、2次元マップ生成部21にてブロック化されたブロックを構成する各エリアの信号レベルと、記憶部22に記憶された各種マスクパターンとを照合して類似度が一番高いマスクパターンを選別し、その選別したマスクパターンに応じたマスクパターン情報を符号割当部24に出力している。
【0035】
符号割当部24は、記憶部22の符号化処理情報に基づき、パターン照合判別部23からのマスクパターン情報に対し、各マスクパターンに応じた符号を割り当ててデータ転送部に出力している。例えば、図3におけるマスクパターンのうち図3(a)、(b)、(f)の3つのマスクパターンを使用した場合、図3(a)のパターンに「01」、図3(b)のパターンに「10」、図3(f)のパターンに「11」のようにそれぞれ符号を割り当てる。これにより、ブロック内の情報が非可逆符号化され、図2の例ではブロック内の4エリアの情報を1つの情報として圧縮されたことになる。
【0036】
第2データ転送部25は、符号割当部24にて各マスクパターンに割り当てられた符号を記憶部22に記憶された転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングでインタフェース4を介してソフトウェア処理部3に転送している。
【0037】
図4に示すように、ソフトウェア処理部3は、インタフェース4を構成するバスにそれぞれ接続された、制御部30と、記憶部31と、キーボード装置やポインティングデバイス等からなる入力部32と、液晶ディスプレイ等の表示装置からなる表示部33とを備えている。
【0038】
記憶部31は、例えばROMやRAMなどの半導体メモリやHDDで構成され、第2データ転送部25からのAPD測定を実行するための処理プログラム等のソフトウェア処理部3を構成する各部を機能させるための各種プログラムが記憶されている。また、記憶部31は、第1データ転送部20からのカウント値、第2データ転送部25からの符号、各マスクパターンと割り当てられる符号とを関連付けした符号化処理情報、制御部30によって復号された各ブロックの信号レベルの復元情報等を記憶している。さらに、記憶部31は、ハードウェア部の記憶部31に記憶される転送ルール情報を受信ルール情報として記憶している。この受信ルール情報は、ハードウェア部2から転送されるマスクパターンの符号を、転送された順序と同一のタイミングで復号するための情報となる。
【0039】
制御部30は、記憶部31に記憶された各種プログラムを実行することにより、ソフトウェア処理部3を構成する各部の処理制御を行っている。また、制御部30は、第1データ転送部20から転送された各カウンタのカウンタ値に基づき算出したAPD及び復元した各周波数帯域成分の信号レベルを表示部33に表示制御している。さらに、制御部30は、ハードウェア部2からの符号を記憶部31に記憶された符号化処理情報と受信ルール情報とに基づき、周波数帯域成分毎の信号レベルを復号するとともに、入力部32からの表示指示に応じて表示部33に表示制御している。
【0040】
(1−2.処理動作)
次に、第1形態におけるAPD測定装置1の処理動作について説明する。まず、入力部32からの入力指示に従いAPDの測定が開始され、アンテナ10を介してRF受信部11でRF信号を受信し、このRF信号をD/C12、A/D変換部13、帯域制限フィルタ14、I/Q分離部15、フィルタバンク16、包絡線検波部17及び対数変換部18によって測定対象信号の周波数成分毎の信号レベルが取得される。
【0041】
このように取得された測定対象信号の周波数帯域成分毎の信号レベルの値は、ハードウェア部2からソフトウェア処理部3へ転送され、記憶部31に周波数帯域成分毎に格納される。
【0042】
また、ハードウェア部2において、縦軸を対数変換部18で分割された信号レベルとしたレベル軸、横軸を帯域制限フィルタ14の仕様に応じたサンプリング周期の時間間隔に基づき分割した時間とした時間軸とし、これらの交点位置に対応する周波数帯域成分毎の信号レベルを量子化して2次元マップを作成する。
【0043】
作成された2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割し、分割したブロックを構成する各エリアの信号レベルと、記憶部22に記憶された各種マスクパターンとを照合して類似度が一番高いマスクパターンを選別する。そして、選別されたマスクパターンに応じたマスクパターン情報と符号化処理情報に基づき各マスクパターンに応じた符号を割り当て、第2データ転送部25から転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングでソフトウェア処理部3に転送する。
【0044】
ソフトウェア処理部3は、ハードウェア部2からの符号を符号化処理情報と受信ルール情報とに基づき周波数帯域成分毎の信号レベルを復号している。
【0045】
以上説明したように、上述した第1形態のAPD測定装置1は、対数変換部18で分割された信号レベルとしたレベル軸と、サンプリング周期に応じた時間間隔に基づき分割した時間軸とで構成した周波数帯域成分毎の信号レベルの2次元マップを作成する。次に、作成された2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割し、分割したブロックを構成する各エリアの信号レベルに類似度が一番高いマスクパターンを選別する。そして、このマスクパターンに応じた符号を割り当て、第2データ転送部25から転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングでソフトウェア処理部3に転送している。
【0046】
これにより、サンプリングした周波数帯域成分毎の信号レベルを非可逆符号化により圧縮することができ、インタフェース4の伝送容量やソフトウェア処理側の記憶容量が不足することなく大量の時系列データをソフトウェア処理側に転送することができる。
【0047】
なお、本形態において、インタフェース4の転送容量や記憶デバイスの記憶容量にある程度余裕がある場合は、分割するブロック内のエリア数に応じたパターン数だけ予めマスクパターンを用意しておくことで、ソフトウェア処理部3による復号化の際に信号レベルの再現性を向上させることができる。
【0048】
[2.第2形態]
(2−1.装置構成)
次に、本発明に係る第2形態のAPD測定装置1について説明する。なお、本形態においては、上述した第1形態のAPD測定装置1と同様の構成要件については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図5に示すように、第2形態のAPD測定装置1では、第1形態のAPD測定装置1を構成するハードウェア部2の構成に、2次元マップ作成部21で作成した2次元マップ上で分割したブロック内の信号レベルの平均値を算出する平均レベル値算出部26と、算出した平均レベル値が予め設定された符号化処理情報(所定レベル毎に範囲分けしたときの各レベル範囲と範囲毎に割り当てられた符号とが関連付けされた情報)とを照合判別して該当するレベル範囲に対応する符号情報を出力するレベル照合判別部27とを新たな構成要件として具備している。
【0050】
また、第2形態では、これら構成要件を備えているため、記憶部22は上述した符号化処理情報を記憶し、符号割当部24はレベル照合判別部27からの符号情報に対応した符号を割り当てる処理を行う構成となっている。
【0051】
平均レベル値算出部26は、2次元マップ上で分割されたブロック内の各エリアの信号レベルに対応するdB値(すなわち、判別対象となるブロック内において信号レベルが「1」であるエリアのdB値)を平均化し、算出した平均レベル値をレベル照合判別部27に出力している。
【0052】
レベル照合判別部27は、平均レベル値算出部26からの平均レベル値と記憶部22に記憶した符号化処理情報とを照合して算出された平均レベル値が含まれるレベル範囲を見つけ出し、該当するレベル範囲に対応する符号情報を符号割当部24に出力している。
【0053】
(2−2.処理動作)
次に、第2形態のAPD測定装置1における処理動作について説明する。なお、測定開始から測定対象信号の周波数成分毎の信号レベルが取得されるまでの処理内容は第1形態と同様のため省略し、第2形態の要部となる処理内容についてのみを説明する。
【0054】
ハードウェア部2において、縦軸を対数変換部18で分割された信号レベルとしたレベル軸、横軸を帯域制限フィルタ14の仕様に応じたサンプリング周期の時間間隔に基づき分割した時間とした時間軸とし、これらの交点位置に対応する周波数帯域成分毎の信号レベルを量子化して2次元マップを作成する。
【0055】
作成された2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割し、分割したブロック内の信号レベルの平均値を算出する。そして、レベル照合判別部27において算出した平均レベル値と記憶部22に記憶された符号化処理情報とを照合して平均レベル値が含まれるレベル範囲を見つけ出し、該当するレベル範囲に応じた符号情報に基づき符号割当部24で符号を割り当て、第2データ転送部25から転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングでソフトウェア処理部3に転送する。
【0056】
ソフトウェア処理部3は、ハードウェア部2からの符号を符号化処理情報と受信ルール情報とに基づき周波数帯域成分毎の信号レベルを復号している。
【0057】
以上説明したように、上述した第2形態のAPD測定装置1は、対数変換部18で分割された信号レベルとしたレベル軸と、サンプリング周期に応じた時間間隔に基づき分割した時間軸とで構成した周波数帯域成分毎の信号レベルの2次元マップを作成する。次に、作成された2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割し、分割したブロック内の信号レベルの平均値を算出する。そして、予め設定された符号化処理情報と算出した平均レベル値とを照合判別して該当するレベル範囲に応じた符号を割り当て、第2データ転送部25から転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングでソフトウェア処理部3に転送している。
【0058】
これにより、サンプリングした周波数帯域成分毎の信号レベルを非可逆符号化により圧縮することができ、インタフェース4の伝送容量やソフトウェア処理側の記憶容量が不足することなく大量の時系列データをソフトウェア処理側に転送することができる。
【0059】
また、上述した形態では、2次元マップ上の全てのブロック内の平均レベル値を算出して符号化したものをソフトウェア処理部3で復元する構成で説明したが、これに限定されるものではなく、2次元マップ上においてユーザが必要とするブロックを選択し、このブロック内の平均レベル値のみを符号化してその他のブロックに関しては最短符号を割り当てて転送するよう設定することで、ソフトウェア処理部3による復号化の負担を軽減させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1…APD測定装置
2…ハードウェア部
3…ソフトウェア処理部
4…インタフェース
10…アンテナ
11…RF受信部
12…D/C
13…A/D変換部
14…帯域制限フィルタ
15…I/Q分離部
16…フィルタバンク
17…包絡線検波部
18…対数変換部
19…カウンタ部
20…第1データ転送部
21…2次元マップ作成部
22、31…記憶部
23…パターン照合判別部
24…符号割当部
25…第2データ転送部
26…平均レベル値算出部
27…レベル照合判別部
30…制御部
32…入力部
33…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードウェアで構成されるハードウェア部(2)と、ソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理部(3)とを備え、測定対象信号の周波数成分を分析してAPDを測定するAPD測定装置(1)において、
前記ハードウェア部は、前記所定のサンプリング周期で取得した前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを対数変換する信号レベル取得部(13〜18)と、
該対数変換された信号レベルをレベル軸、サンプリング周期の時間間隔に基づき分割した時間軸とで構成した周波数帯域成分毎の信号レベルの2次元マップを作成し、当該2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割する2次元マップ作成部(21)と、
前記分割したブロックを構成する各エリアの信号レベルと、分割するブロック数に応じて予め設定されたマスクパターンとを照合し、前記照合対象であるブロックと類似度が一番高い前記マスクパターンを選別するパターン照合判別部(23)と、
前記選択されたマスクパターンに応じた符号を割り当る符号割当部(24)と、
予め設定された転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングで前記ソフトウェア処理部3に前記符号を転送する第2データ転送部(25)とを備え、
前記ソフトウェア処理部は、前記転送ルール情報に対応した受信ルール情報に基づき前記第2データ転送部からの前記符号を受信して各周波帯域数成分の信号レベルを復元することを特徴とするAPD測定装置。
【請求項2】
ハードウェアで構成されるハードウェア部2と、ソフトウェア処理を実行するソフトウェア処理部(3)とを備え、測定対象信号の周波数成分を分析してAPDを測定するAPD測定装置(1)において、
前記ハードウェア部は、前記所定のサンプリング周期で取得した前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを対数変換する信号レベル取得部(13〜18)と、
該対数変換された信号レベルをレベル軸、サンプリング周期の時間間隔に基づき分割した時間軸とで構成した周波数帯域成分毎の信号レベルの2次元マップを作成し、当該2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割する2次元マップ作成部(21)と、
前記分割したブロック内の各エリアの信号レベルを平均化した平均レベル値を算出する平均レベル値算出部(26)と、
前記算出された平均レベル値と、所定レベル毎に範囲分けしたときの各レベル範囲に対して割り当てられる符号が関連付けされた符号化処理情報とを照合して算出された平均レベル値が含まれるレベル範囲を見つけ出し、該当するレベル範囲の符号情報を出力するレベル照合判別部(27)と、
前記レベル照合判別部からの前記符号情報に応じた符号を割り当てる符号割当部(24)と、
予め設定された転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングで前記ソフトウェア処理部3に前記符号を転送する第2データ転送部(25)とを備え、
前記ソフトウェア処理部は、前記転送ルール情報に対応した受信ルール情報に基づき前記第2データ転送部からの前記符号を受信して各周波帯域数成分の信号レベルを復号化して復元することを特徴とするAPD測定装置。
【請求項3】
測定対象信号の周波数成分を分析してAPDを測定するAPD測定方法において、
所定のサンプリング周期で取得した前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを対数変換する信号レベル取得ステップと、
該対数変換された信号レベルをレベル軸、サンプリング周期の時間間隔に基づき分割した時間軸とで構成した周波数帯域成分毎の信号レベルの2次元マップを作成し、当該2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割する2次元マップ作成ステップと、
前記分割したブロックを構成する各エリアの信号レベルと、分割するブロック数に応じて予め設定されたマスクパターンとを照合し、前記照合対象であるブロックと類似度が一番高い前記マスクパターンを選別するパターン照合判別ステップと、
前記選択されたマスクパターンに応じた符号を割り当る符号割当ステップと、
予め設定された転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングで前記符号を転送する転送ステップと、
前記転送ルール情報に対応した受信ルール情報に基づき前記符号を受信して各周波帯域数成分の信号レベルを復元する復号化ステップと、
を含むことを特徴とするAPD測定方法。
【請求項4】
測定対象信号の周波数成分を分析してAPDを測定するAPD測定方法において、
所定のサンプリング周期で取得した前記測定対象信号の予め定められた各周波数帯域成分の信号レベルを対数変換する信号レベル取得ステップと、
該対数変換された信号レベルをレベル軸、サンプリング周期の時間間隔に基づき分割した時間軸とで構成した周波数帯域成分毎の信号レベルの2次元マップを作成し、当該2次元マップにおける交点位置に対応した各エリアを包含するようブロック単位で分割する2次元マップ作成ステップと、
前記分割したブロック内の各エリアの信号レベルを平均化した平均レベル値を算出する平均レベル値算出ステップと、
前記算出された平均レベル値と、所定レベル毎に範囲分けしたときの各レベル範囲に対して割り当てられる符号が関連付けされた符号化処理情報とを照合して算出された平均レベル値が含まれるレベル範囲を見つけ出し、該当するレベル範囲の符号情報を出力するレベル照合判別ステップと、
前記レベル照合判別ステップで得られた前記符号情報に応じた符号を割り当てる符号割当ステップと、
予め設定された転送ルール情報に則った所定の順序とタイミングで前記符号を転送する転送ステップと、
前記転送ルール情報に対応した受信ルール情報に基づき前記符号を受信して各周波帯域数成分の信号レベルを復元する復号化ステップと、
を含むことを特徴とするAPD測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−202938(P2012−202938A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70280(P2011−70280)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)