説明

Al含有溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法

【課題】めっき密着性に優れるとともにスパングル模様の均一性が良好なAlを20〜95重量%含有する溶融亜鉛めっき鋼板を得ることを目的とする。
【解決手段】連続式溶融めっき設備で、スナウト内のガス雰囲気を以下に示す式1〜3の条件範囲に保つことにより、鋼板表面に、めっき密着性に優れかつ表面のスパングル均一性インデックスが1.0-1.5 であるAlを20-95 wt%含有するZn-Al めっき皮膜を形成したAl含有溶融亜鉛めっき鋼板。スパングル均一性インデックスとは10cm×10cmのAl含有溶融亜鉛めっき鋼板から任意に10箇所選定し、1cmの長さを横切るスパングルの数をカウントして、“最大カウント”/“最小カウント”の値を“スパングル均一性のインデックス”と定義する。
0%≦(水素濃度%)≦20%(残窒素)…式1、−90℃≦(露点℃)≦−20℃…式2、(露点℃)≧(水素濃度%)×3+(めっき浴温℃)×0.5-380 …式3

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、めっき密着性に優れかつめっき後の鋼板の表面のスパングル模様の均一性が良好な溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼板に対する溶融亜鉛めっきは、例えば特開昭55−128569号公報に記載されているように、めっき浴に下端を浸漬したスナウトの中から焼鈍などの熱処理を経た鋼板をめっき浴に通し、ワイピングノズルによってめっき付着量を調整するという方法で行われている。この方法をおこなう設備においては、スナウト内のめっき浴面から亜鉛蒸気が発生してスナウト壁面に凝縮堆積し、スナウトを通過する鋼板表面やスナウト内のめっき浴面に落下付着し、めっき製品の表面外観を劣化させる原因となる。
【0003】このような欠陥発生を防止するために、スナウト内に故意に酸素や水蒸気を導入し、めっき浴面を酸化させることで亜鉛蒸気発生を抑制することが有効であることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしこれらの方法では、スナウト内に導入した酸素や水蒸気によってスナウト内を通過する鋼板表面が酸化してしまうという問題が生じる。このような鋼板表面の酸化は、鋼板と溶融めっき浴の反応を阻害し、不めっきやめっき剥離などの原因になる。
【0005】また、本発明で対象としているAlを20〜95重量%含有する溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき浴温が通常の溶融亜鉛めっき鋼板に比べて高い場合が多いのでめっき浴面での亜鉛蒸気圧も高くなり、亜鉛蒸気が外観に著しく悪影響を及ぼし易くなる。
【0006】本発明は、この課題を解決すべくなされたもので、スナウト内のガス雰囲気を所定範囲に調節することで、めっき密着性に優れるとともにめっき後の鋼板表面のスパングル模様の均一性が良好なAlを20〜95重量%含有する溶融亜鉛めっき鋼板を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係るAl含有溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板表面に、めっき密着性に優れかつ表面のスパングル均一性インデックスが1.0〜1.5である、Alを20〜95重量%含有するZn−Alめっき皮膜を形成したものである。
【0008】本発明において、スパングル均一性インデックススとは、10cm×10cmのAl含有溶融亜鉛めっき鋼板から任意に10箇所選定し、1cmの長さを横切るスパングルの数をカウントし、カウントした時の“最大カウント”/“最小カウント”の値をいう。このスパングル均一性のインデックスが1.5を越える場合はスパングル均一性(外観)が不良である。また、本発明において、“めっき密着性に優れた”とは、OT密着曲げによる曲げ部を外観観察評価したときに目視でクラック皆無の場合をいう。
【0009】Zn−Alめっき皮膜中のAlを上記範囲に限定した理由は、Alはめっき皮膜に耐食性、耐熱性を付与する元素であるが、20重量%未満では、これらの特性に劣り、95重量%を越えるとZn含有量が少なく、犠牲防食性に劣るためである。
【0010】本発明に係るAl含有溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、熱処理した鋼板を、溶融めっき浴に下端を浸漬したスナウトから溶融めっき浴中に侵入させるに際し、スナウト内のガス雰囲気を以下に示す式1〜3の条件範囲に保つことを特徴とする。
0%≦(水素濃度:%)≦20% 残窒素 式1−90℃≦(露点:℃)≦−20℃ 式2(露点:℃)≧(水素濃度:%)×3+(めっき浴温:℃)×0.5-380 式3本発明方法において、スナウト内の水素濃度を0〜20%とした理由は、水素濃度がこれ以上高くなるとスナウト内を通過する鋼板表面が還元されて清浄度が向上するが、このような表面には亜鉛蒸気が堆積しやすくなり、めっき浴に浸漬された時点で異常な反応を起こしやすくなるためである。
【0011】スナウト内の露点を−90〜−20℃とした理由は、露点が−20℃よりも高くなるとスナウト内を通過する鋼板表面が厚く酸化されるので、めっき浴に浸漬された時点でこの表面酸化膜を十分に還元することができず、めっき密着性が劣化する。一方、露点が−90℃よりも低くなるとめっき浴表面が酸化されにくくなるため、亜鉛蒸気が大量に発生して水素濃度を高くしたときと同様の状況になる。
【0012】また、露点と水素濃度をめっき浴温との関係で式3のように規定したのは、水素濃度の上昇とめっき浴温の上昇がいずれも亜鉛蒸気発生を促進する要因となるためで、これらの効果を相殺するには露点を上昇させる必要がある。
【0013】このようにスナウト内のガス雰囲気を下式1〜3の範囲に保つことにより、めっき密着性を良好とすることができる。また、Zn−Alめっきに係るめっき浴は、めっき浴温が通常の溶融亜鉛メッキ鋼板に比べて高く、めっき浴面での亜鉛蒸気圧も高くなるために亜鉛蒸気が外観に対する影響が大であるが、上記のように亜鉛蒸気発生を抑制する条件でAl含有溶融亜鉛めっき鋼板を製造することにより、スパングル模様の均一性を良好(スパングル均一性インデックス1.0〜1.5)とすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】図2に溶融めっき鋼板を製造するための、連続式溶融亜鉛めっきの設備の概要を示す。図において鋼板1を熱処理する焼鈍炉2の出側にスナウト3を設け、このスナウト3の下端を溶融めっきポット4内の溶融めっき浴5に浸漬させている。鋼板1はスナウト3から溶融めっきポット4中のシンクロール6で反転して上方に導かれ、溶融めっき浴5の上でガスワイピングノズル7からのガス流れによってめっき付着量を調整する。
【0015】スナウト3には、水素供給管8と窒素供給管9がそれぞれ独立に接続し、スナウト内の雰囲気を測定するために水素濃度計10と露点計11が設けられている。水素濃度計10、露点計11の出力端はそれぞれ自動制御装置12の入力端に接続され、自動制御装置12の出力端は水素供給管8、窒素供給管9、水素濃度計10の入力端に接続されている。そして、自動制御装置12は、水素濃度計10、露点計11から出力されたデータに基づいて、水素供給管8、窒素供給管9の制御弁を調節し、これら供給管からの水素、酸素の供給量を式1〜式3に基づいて調整するようになっている。また、これらの計器をモニターしながらガス流量を適宜調整し、水素濃度と露点を所定の範囲に保持することもできる。
【0016】
【実施例】本発明の効果を確認するために、連続式溶融亜鉛めっき設備で以下のような製造実験を行った。めっき浴組成は55%Al−1.5%Si−Znとし、板厚0.5mmt で板巾1050mmの冷延鋼板をめっき母材とした。この鋼板を焼鈍炉2において750℃で加熱、還元処理し、その後板温を580℃まで冷却したのち溶融めっき浴5に浸漬し、めっき付着量を両面で150g/m2 とした(めっき皮膜組成:55%Al−1.5%Si−Zn)。このときにめっき浴温、スナウト3内のガス雰囲気をそれぞれ所定の範囲で変化させた。これらの実験材は、OT曲げによりめっき密着性を、外観観察によりめっき表面の欠陥やスパングル模様の均一性を評価した。その製造実験条件と実験材の評価結果をまとめて表1に示す。図1は、本発明で規定したスナウト内ガス雰囲気条件をめっき浴温600℃の場合について図示し、そこに製造実験の結果を記述したものである。
【0017】
【表1】


【0018】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、連続式溶融めっき設備で、スナウト内のガス雰囲気を前述の式1〜式3に示した適切な条件範囲に保つことにより、めっき密着性に優れるとともにめっき後の鋼板表面のスパングル模様の均一性が良好なAlを20〜95重量%含有する溶融亜鉛めっき鋼板を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続式溶融めっき設備の概要を示す図。
【図2】本発明で規定しているスナウト内ガス雰囲気条件をめっき浴温600℃の場合について示した図。
【符号の説明】
1…鋼板、2…焼鈍炉、3…スナウト、4…溶融めっきポット、5…溶融めっき浴、6…シンクロール、7…ガスワイピングノズル、8…水素供給管、9…窒素供給管、10…水素濃度計、11…露点計、12…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋼板表面に、めっき密着性に優れかつ表面のスパングル均一性インデックスが1.0〜1.5である、Alを20〜95重量%含有するZn−Alめっき皮膜を形成したAl含有溶融亜鉛めっき鋼板。ただし、スパングル均一性インデックスとは、10cm×10cmのAl含有溶融亜鉛めっき鋼板から任意に10箇所選定し、1cmの長さを横切るスパングルの数をカウントして、“最大カウント”/“最小カウント”の値を“スパングル均一性のインデックス”と定義する。
【請求項2】 下端をめっき浴に浸漬したスナウト内から鋼板をめっき浴に通して、鋼板表面にAlを20〜95重量%含有するZn−Alめっき皮膜を形成する際に、スナウト内のガス雰囲気を下式1〜3の範囲に保つことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
0%≦(水素濃度:%)≦20% 残窒素 式1−90℃≦(露点:℃)≦−20℃ 式2(露点:℃)≧(水素濃度:%)×3+(めっき浴温:℃)×0.5-380 式3

【図1】
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【図2】
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