DME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法及び燃料充填システム
【課題】長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対しても、簡素な制御でしかも低コストで、燃料充填時において、複数の燃料タンクに同時に燃料充填しながら、燃料供給停止時の衝撃波の発生を容易に回避できるDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法と燃料充填システムを提供する。
【解決手段】燃料タンク10A、10Bの一つで燃料の充填が停止した後、燃料タンク10A、10B全体への充填を高流量充填とし、次に、燃料タンク10A、10Bの二つ目の燃料充填量がこの燃料タンク10A、10Bの減速用充填量に到達したときに、燃料タンク10A、10B全体への充填を低流量充填とし、二つ目の燃料タンク10A、10Bの燃料充填量がこの燃料タンク10A、10Bの停止用充填量に到達したときに、二つ目の燃料タンク10A、10Bの充填を停止させる。
【解決手段】燃料タンク10A、10Bの一つで燃料の充填が停止した後、燃料タンク10A、10B全体への充填を高流量充填とし、次に、燃料タンク10A、10Bの二つ目の燃料充填量がこの燃料タンク10A、10Bの減速用充填量に到達したときに、燃料タンク10A、10B全体への充填を低流量充填とし、二つ目の燃料タンク10A、10Bの燃料充填量がこの燃料タンク10A、10Bの停止用充填量に到達したときに、二つ目の燃料タンク10A、10Bの充填を停止させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DME燃料使用エンジンと、複数のDME燃料用の燃料タンクを搭載した車両に対して、複数の燃料タンクに同時に燃料を充填する際に、燃料タンクへの燃料供給の停止時に衝撃波が発生するのを回避でき、しかも、短い時間で充填できるDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法及び燃料充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
DME(ジメチルエーテル)燃料を使用する自動車の燃料供給装置は、現行法規ではLPガス自動車用構造取扱基準に準拠し作製されている。DME燃料の供給は燃料供給スタンドから供給するが、現在はLPガス供給スタンドと酷似した供給方法で行われている。
【0003】
例えば、燃料供給スタンドに設けられている貯槽内の燃料を圧送ポンプ(燃料ポンプ)で、計量器(ディスペンサー:液体定量吐出装置)に圧送し、この計量器に取り付けられた供給用ホースで自動車側の燃料タンクに供給している。この供給用ホースの先端には、自動車側の燃料タンクの充填口と接続可能なノズルが取り付けられていて、燃料タンクと着脱可能としている。
【0004】
燃料の充填は、燃料タンクの充填口に計量器側のノズルを装着して、圧送ポンプにより貯槽に貯められた燃料を燃料タンクに供給することで行う。また、燃料の供給、あるいは停止は、ノズルに取り付けられているバルブの開閉で行う。
【0005】
そして、この充填装置の従来技術においては、燃料供給をノズル側(燃料供給側)で停止する方法と、図10に示す燃料充填システム1Xのように、自動車側(受け入れ側)の燃料タンク10に過充填防止装置12を設けて構成し、燃料の貯槽30から圧送ポンプ40で送られてくる燃料を計量器(ディスペンサー)20の充填ノズル21から、充填口13に供給し、燃料が燃料タンク10内に充分に供給されて満タン状態(燃料タンク容量の約85%)になると、燃料タンク10内に装備されている過充填防止装置12が機能し、充填口13の配管を遮断し、供給系統側で燃料をリリーフすることで、供給側の圧送ポンプ40は停止しない状態で、充填を停止する方法がある。その後、供給側のスイッチを停止する等することで、圧送ポンプ40が停止される。
【0006】
従来技術の充填装置は、乗用車あるいは小型トラックを前提にしているLPG燃料スタンドをベースにしている為、燃料供給流量は概ね20〜30(1/min)であり、これは大型トラックへの普及を考えると燃料供給流量は十分でない。DMEは軽油に対し発熱量が低く、同一発熱量を得ようとすると体積比で1.86倍の量が必要となる。つまり、軽油車と同等の航続距離を得るためには、1.86倍の燃料を積載する必要が生じる。そのため、充填速度についても高速充填が求められ、現在の軽油の給油と同等の時間で供給する場合には、80〜100(1/min)の充填速度が必要となる。
【0007】
一方、充填速度を上昇させると、過充填防止装置が作動した時に、弁の作動により配管内に衝撃波が発生し、供給系ライン、ホース、ノズル、計量器内に過大な圧力がかかるようになる。衝撃波が大きくなり、供給システム側が許容耐圧を超えると、各部品に悪影響が生じ、場合によっては、破損に至ることにもなる。
【0008】
この対策として、燃料タンク内の燃料が満タンになる前、すなわち、過充填防止装置が作動する前に充填流量を供給側で落とし、衝撃波の低減を図る方法を採用している例がある。この例としては、例えば、液面高さ情報を取得して、減速液面高さまでは、高速充填速度で充填し、減速液面高さになると、閾液面高さまで、高速充填速度から減速し、最大充填量に達するまでに、充填速度を充分に減速できて、充填停止により発生する水撃作用を充分に抑制するDME燃料充填システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
このような燃料充填システムは、例えば、図11に示すような燃料充填システム1Y、又は、図12に示すような燃料充填システム1Zであり、自動車側(受け入れ側)の燃料タンク10に過充填防止装置12に加えて液面計11を設けて構成し、燃料の貯槽30から圧送ポンプ40で送られてくる燃料を計量器(ディスペンサー)20の流量制御弁22を制御しながら充填ノズル21から、充填口13に供給する。
【0010】
この制御は図13に例示するような制御フローで行われ、ステップS11で燃料タンク10の液面レベル(燃料レベル)を示す液面計(液面センサ)11の測定値を計量器20側で利用できるか、つまり、計量器20側で液面レベルの計測が可能な状態になっているか否かを判定し、可能でない場合には(NO)、ステップS13に行き、第2充填速度(低速充填速度)V2の低流量充填で燃料を充填する。一方、液面レベルの計測が可能な状態になっている場合には(YES)、ステップS12に行き、第1充填速度(高速充填速度)V1の高流量充填で予め設定した時間(S15の液面レベルのチェックのインターバルに関係する時間)の間燃料を充填し、次にステップS14で液面レベルを計測し、次のステップS15で燃料が予め設定した液面レベル(減速液面高さ)になったか否かを判定し、この液面レベルになるまでは(NO)、流量制御弁22を調整して第1充填速度V1で充填し、この液面レベルになると(YES)、ステップS16で流量制御弁22を調整して水撃作用が問題にならない第2充填速度V2の低流量充填に減速して充填し、満タン状態になったら過充填防止装置12で自動停止させる。自動停止したら、ステップS17で、圧送ポンプ40を停止する等して、充填作業を終了する。なお、液面計11と計量器20の間を、図11では、信号ケーブル50で接続しているが、図12では、液面計11と計量器20の間を送信器51と受信器52による無線通信で接続している。
【0011】
また、燃料タンクの液面の位置を検出する液面計11として、フロート式液面ゲージや超音波式液面センサ等の液面計を取り付け、この液面計11の入力信号を電気ケーブルや光ケーブルや無線を介して、燃料供給側の計量器(ディスペンサー)20へ転送して、燃料の液面情報を入力することで液面レベルの検出が行われている。
【0012】
つまり、これらの燃料充填では、燃料タンクに充填ノズルをセットすると、液面レベルの情報が液面計、ケーブル(あるいは無線送受信)により計量器に伝達され、計量器側では、供給側システムの圧送ポンプを作動させて燃料供給を開始する。燃料充填開始時は高速充填とし、流量は例えば80〜100(1/min)とする。このとき、液面計で検出された液面レベル情報は連続的に計量器へ伝達される。そして、計量器では、液面レベルが所定のレベル(例えば、満タン状態の90%〜95%程度)になったと判断した場合には、充填流量を供給停止時の衝撃波が問題にならない流量レベルまで減速させる。この流量レベルまで流量を落とした後、過充填防止装置により充填停止するか、又は、液面レベルの情報により満タンを判断して供給側の圧送ポンプを停止するかして、燃料の供給を停止する。
【0013】
しかしながら、長距離走行するような大型トラック等の自動車の場合、積載燃料確保の為に、燃料タンクを複数本搭載する場合があるが、その場合に、燃料充填時において、上記のような衝撃波回避の方法を採用するに際して、それぞれの燃料タンクの制御を行うことは低コストの実現及び制御の簡素化を考慮すると困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−138755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対しても、簡素な制御でしかも低コストで、燃料充填時において、複数の燃料タンクに同時に燃料充填しながら、燃料供給停止時の衝撃波の発生を容易に回避できるDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法と燃料充填システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するための本発明のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法は、DME燃料使用エンジンと、複数のDME燃料用の燃料タンクを搭載した車両に対するDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法において、複数の前記燃料タンクに同時に燃料を充填する時に、前記燃料タンクへの燃料の充填速度の制御を、前記燃料タンクの個々への充填速度に対してではなく、前記燃料タンク全体への充填速度に対して一括して行うと共に、充填開始時には、前記燃料タンク全体への充填速度を第1充填速度とし、次に、前記燃料タンクの一つの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を供給停止時の衝撃波が問題にならない第2充填速度まで減速させ、前記一つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した停止用充填量に到達したときに、前記一つ目の燃料タンクの充填のみを停止させることを特徴とする方法である。
【0017】
この方法によれば、長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対して、燃料充填時に複数の燃料タンクに同時に燃料充填しながら、充填停止時の衝撃波の発生を簡素な制御でしかも低コストで容易に回避できる。
【0018】
また、上記のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法において、前記燃料タンクの一つで燃料の充填が停止した後、前記燃料タンク全体への充填速度を第3充填速度に増速し、次に、前記燃料タンクの二つ目の燃料充填量がこの燃料タンクの減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を第4充填速度まで減速させ、前記二つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの停止用充填量に到達したときに、前記二つ目の燃料タンクの充填のみを停止させる。この方法によれば、二つ目の燃料タンクへの充填速度を増速するので、全体の充填時間を短縮できる。
【0019】
そして、上記の目的を達成するための本発明のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システムは、DME燃料使用エンジンと、複数のDME燃料用の燃料タンクを搭載した車両に対して、DME燃料の燃料タンクへの燃料充填システムにおいて、前記車両側に、前記燃料タンクのそれぞれに燃料充填量を検出する液面計を設けると共に、燃料スタンド側に貯槽と前記燃料タンクとを連結する燃料供給ラインを設け、該燃料供給ラインの途中に圧送ポンプと流量調整弁を、先端に充填ノズルをそれぞれ設け、更に、前記液面計の出力を受けて前記圧送ポンプと流量調整弁を制御する充填制御装置を設けて構成し、前記充填制御装置が、複数の前記燃料タンクに同時に燃料を充填する時に、前記燃料タンクへの燃料の充填速度の制御を、前記燃料タンクの個々への充填速度に対してではなく、前記燃料タンク全体への充填速度に対して一括して行うと共に、充填開始時には、前記燃料タンク全体への充填速度を第1充填速度とし、次に、前記燃料タンクの一つの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を供給停止時の衝撃波が問題にならない第2充填速度まで減速させ、前記一つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した停止用充填量に到達したときに、前記一つ目の燃料タンクの充填のみを停止させる制御を行うように構成される。
【0020】
この構成によれば、長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対して、燃料充填時に複数の燃料タンクに同時に燃料充填しながら、充填停止時の衝撃波の発生を簡素な制御でしかも低コストで容易に回避できる。
【0021】
また、上記のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システムにおいて、前記燃料タンクの一つで燃料の充填が停止した後、前記燃料タンク全体への充填速度を第3充填速度に増速し、次に、前記燃料タンクの二つ目の燃料充填量がこの燃料タンクの減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を第4充填速度まで減速させ、前記二つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの停止用充填量に到達したときに、前記二つ目の燃料タンクの充填のみを停止させる制御を行うように構成される。この構成によれば、二つ目の燃料タンクへの充填速度を増速するので、全体の充填時間を短縮できる。
【0022】
また、上記のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システムにおいて、前記液面計を、液面が指定の液面に達したことを検出するとON−OFFする接点スイッチと、該接点スイッチと並列に設けられる電気抵抗を備えて、液面が前記指定の液面レベルに達するまでは前記接点スイッチがONで、電気抵抗値が略ゼロの状態となり、液面が前記指定の液面レベルに達したことを検出すると前記接点スイッチがOFFとなり、前記電気抵抗値の値が略ゼロの状態から変化するように形成すると共に、前記液面計を直列に連結して、燃料タンク全体としての液面検出用の電気回路とし、該電気回路における電気抵抗の変化から前記燃料タンクの燃料充填量が前記減速用充填量に到達したことを検出するように構成される。この構成によれば、非常に簡単な回路構成により、複数の燃料タンクへの充填速度を一括して制御できるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法及び燃料充填システムによれば、長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対して、燃料充填時に複数の燃料タンクに同時に燃料充填しながら、充填停止時の衝撃波の発生を簡素な制御でしかも低コストで容易に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】発明に係る第1及び第2の実施の形態の燃料タンクが2つの場合の燃料充填システムの構成を示す図である。
【図2】燃料タンクが2つの場合の液面計の接続関係の構成を示す図である。
【図3】発明に係る第1及び第2の実施の形態の液面計の信号の電気回路を示す図で、2つの液面計が両方とも予め設定した液面レベルに達していない場合を示す。
【図4】発明に係る第1及び第2の実施の形態の液面計の信号の電気回路を示す図で、一方の液面計が予め設定した液面レベルに達している場合を示す。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態の燃料充填方法の制御フローを示す図である。
【図6】本発明に係る第1の実施の形態の燃料充填方法における、液面計の抵抗値と燃料供給量の時間的な変化を示す図である。
【図7】本発明に係る第2の実施の形態の燃料充填方法の制御フローを示す図である。
【図8】図7の制御フローのステップS20の詳細な制御フローを示す図である。
【図9】本発明に係る第2の実施の形態の燃料充填方法における、液面計の抵抗値と燃料供給量の時間的な変化を示す図である。
【図10】車両側の燃料タンクが一つの場合の燃料充填システムの構成を示す図である。
【図11】車両側の燃料タンクが一つで液面計と信号ケーブルを用いる場合の燃料充填システムの構成を示す図である。
【図12】車両側の燃料タンクが一つで液面計と無線信号を用いる場合の燃料充填システムの構成を示す図である。
【図13】従来技術の燃料充填方法の制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法及び燃料充填システムについて説明する。以下、燃料タンクの数を2個で説明するが、本発明は燃料タンクの数は2個に限定されず、2個以上、言い換えれば、複数の燃料タンクに対してDME燃料を充填する燃料充填システムや燃料充填方法に適用できる。
【0026】
図1に示すように、本発明に係る第1の実施の形態のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システム1は、車両側(受け入れ側:自動車側)に2つの燃料タンク10A、10Bが設けられ、それぞれに液面計11A、11Bが配置されると共に、過充填防止装置12を設けて構成する。そして、DME燃料の貯槽30から圧送ポンプ40で送られてくる燃料を、流量制御弁22経由で計量器(ディスペンサー:充填制御装置)20の充填ノズル21から、車両側の充填口13に供給し、燃料が満タン状態になったら過充填防止装置12で自動停止させる。また、液面計11A、11Bの検出信号は、電気回路14と信号ケーブル50により計量器(ディスペンサー)20側に入力される。
【0027】
また、図2〜図4に示すように、液面計11A、11Bは燃料が予め設定した液面レベルを超えると接点スイッチ11aがOFFになるように構成され、この接点スイッチ11aと並列に電気抵抗11bが接続されている電気回路14を構成する。つまり、燃料が指定の液面レベルに達すると、接点スイッチ11aが、図4に示すように、無接点となり、並列に取り付けてある電気抵抗11bにより、抵抗値が変化する構造とする。そして、この液面計11A、11Bをそれぞれの燃料タンク10A、10Bに取り付け、更に、直列に連結しておく。また、指定の液面レベルに達するまでは、通電可としておく。なお、電気回路14と信号ケーブル50は、図1と図2では一点鎖線で、図3と図4では実線で示してある。
【0028】
このような電気回路14にすることで、燃料タンク10A、10Bの一方が指定の液面レベルに達すると、その接点スイッチ11aが無接点となり、電流が電気抵抗11b側を通過するようになり、抵抗値が変化するので、計量器20側で燃料タンク10A、10Bの一方が、満タン(満充填)前の第1液面レベルまで達したか否かを判定でき、充填する流量を低流量に減速する制御が行えるようになる。
【0029】
次に、本発明に係る第1の実施の形態のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法について、図5と図6を参照しながら説明する。この燃料充填方法では、車両側の燃料タンク10A、10Bの燃料充填口13に充填ノズル(ディスペンサーノズル)21をセットする。計量器20側の通信ケーブル50を用いて制御する場合には、このセットと同時にあるいは、前もって、この通信ケーブル50を車両側の液面計11A、11Bの電気回路14に接続する。なお、この操作は無線を使用する場合には不要となる。
【0030】
充填開始前で、燃料タンク10A、10B内の燃料が少ない場合には、それぞれの液面計11A、11Bの接点スイッチ11aは閉じていて電気回路14は閉じている。充填制御を開始すると、図5の制御フローがスタートし、最初のステップS11で燃料タンク10の液面レベル(燃料レベル)を示す液面計(液面センサ)11の測定値を計量器20側で利用できるか、つまり、計量器20側で液面レベルの計測が可能な状態になっているか否かを判定する。この判定で可能でない場合には(NO)、ステップS13に行き、万一の衝撃波の発生を回避するために、第2充填速度(低速充填速度)V2の低流量充填で燃料を充填する。一方、液面レベルの計測が可能な状態になっている場合には(YES)、ステップS12に行き、第1充填速度(高速充填速度)V1の高流量充填で予め設定した時間(S15の液面レベルのチェックのインターバルに関係する時間)の間燃料を充填する。
【0031】
この第1充填速度V1は、流量制御弁22を通過する流量で、例えば、160〜200(l/min)とする。つまり、燃料タンク1個当たり、80〜100(l/min)とする。また、第2充填速度V2は、流量制御弁22を通過する流量で、例えば、20〜60(l/min)とする。つまり、燃料タンク1個当たり、10〜30(l/min)とする。
【0032】
次にステップS14で液面レベルを計測し、次のステップS15で、燃料タンク10A、10Bのいずれか一方が、燃料が予め設定した液面レベル(減速液面高さ)になったか否かを判定し、いずれか一方の燃料タンク10A(又は10B)がこの液面レベルになるまでは(NO)、流量制御弁22を調整して第1充填速度V1で充填し、いずれか一方の燃料タンク10A(又は10B)がこの液面レベルになると(YES)、図4に示すように、図面右側の接点スイッチ11aがOFFになり、電気回路14は一つの電気抵抗11bが抵抗として作用するようになるので、この状態であるか否かを判定できる。ステップS15の判定でこの状態になったと判定したら(YES)、ステップS16Aに行き、流量制御弁22を調整して水撃作用が問題にならない第2充填速度V2で充填する。
【0033】
このステップS16Aの第2充填速度V2で一方の燃料タンク10A(又は10B)が満タン状態になったら、ステップS17Aで過充填防止装置12で自動停止させる。その後は、第2充填速度V2の半分の第4充填速度V4で充填して、ステップS16Bで、他方の燃料タンク10B(又は10A)に対して、ステップS16Aの第2充填速度V2で充填する場合と同じ様に、低流量充填で充填を継続し、他方の燃料タンク10B(又は10A)が満タン状態になったら、ステップS17Bで過充填防止装置12で自動停止させる。両方の燃料タンク10A、10Bの燃料供給ラインが過充填防止装置12で自動停止したら、ステップS18で、圧送ポンプ40を停止する等を行い、充填作業を終了する。
【0034】
つまり、燃料充填を開始すると、計量器20側では充填ノズル21から燃料充填を開始するが、このときは第1充填速度V1の高流量充填とする。2つ搭載している燃料タンク10A、10Bの内、いずれか一つの燃料タンク10A(又は10B)が指定値、例えば満タン前の5%から10%以下の予め設定した液面レベルになると、その燃料タンク10A(又は10B)の液面計11の接点スイッチ11aが開となるので、図3及び図4に示すような並行して備えている電気抵抗11b側のみの回路となり抵抗値が変化する。これにより、計量器20側では、間もなく満タンになると判定し、燃料の充填を第2充填速度V2の低流量充填へ切り替える。その後、過充填防止装置12が作動し、この一方の燃料タンク10A(又は10B)の充填が終了する。
【0035】
しかし、他方の燃料タンク10B(又は10A)は低流量充填で充填が続き、過充填防止装置12が作動するまで充填が継続される。この他方の燃料タンク10B(又は10A)が満タンになると過充填防止装置12が作動し、充填が停止される。
【0036】
この第1の実施の形態のDME燃料使用エンジンにおける燃料充填システム及び燃料充填方法では、満タンを先に迎える燃料タンク10A(又は10B)を優先して低流量充填になるように制御し、衝撃波による破損を防止する。これを、図6で見てみると、燃料の充填を開始した時点taからどちらか一つの燃料タンク10A(又は10B)の燃料が予め設定した液面レベルに到達して、電気抵抗が「R0」から「R1」に変化した時点tbまでが高流量充填であり、この時点tbから一方の燃料タンク10A(又は10B)が満タン状態になって過充填防止装置12で自動停止した時点tcと他方の燃料タンク10B(又は10A)の燃料が予め設定した液面レベルに到達して電気抵抗が「R1」から「R1+R2」に変化した時点teを経由して、他方の燃料タンク10B(又は10A)が満タン状態になって過充填防止装置12で自動停止する時点tfまでは低流量充填となる。
【0037】
従って、一方の燃料タンク10A(又は10B)の充填の終了に際しても、他方の燃料タンク10B(又は10A)の充填の終了に際しても、充填する流量は低流量充填に低下しているので、燃料供給停止時の水撃作用を回避できる。
【0038】
なお、上記のように燃料タンクが複数本搭載されている場合、概ね均等に消費されるように車両側の燃料供給を制御しておくことで、燃料充填時における、満タンになるまでの時間の差を燃料タンク間で少なくすることができるので、その効果をより大きくすることができる。
【0039】
次に、第2の実施の形態のDME燃料使用エンジンにおける燃料充填システム及び燃料充填方法について図7、図8と図9参照しながら説明する。この第2の実施の形態における燃料充填システム及び燃料充填方法は、第1の実施の形態における燃料充填システム及び燃料充填方法とは、燃料タンク10A、10Bの一つが満タン状態になった後に、充填する流量を再び高流量化する点が異なる。
【0040】
この第2の実施の形態の燃料充填方法は、図7のステップS11〜S17Aまでは、図5の制御フロー出示す第1の実施の形態と同様であり、ステップS20の他方の燃料タンク10B(又は10A)への充填継続の制御が、図8に示すように異なるだけである。
【0041】
図5の第1の実施の形態の制御フローでは、一方の燃料タンク10A(又は10B)の充填が、過充填防止装置12によって充填を終了するときに、2つの燃料タンク10A、10Bへの流量に対し、一方の燃料タンク10A(又は10B)への流量が減るので、全体の流量が低下する。
【0042】
図7及び図8の第2の実施の形態では、ステップS21で、この低下を計量器20側で判定し、一方の燃料タンク10A(又は10B)の充填停止の確認を行い、ステップS22で、他方の燃料タンク10B(又は10A)への充填を第3充填速度V3の高流量充填に切り替える。この流量制御弁22を通過した後の第3充填速度V3を第1充填速度V1の半分とすることで、ステップS12の第1充填速度V1で充填する場合と同じ様に、他方の燃料タンク10B(又は10A)への充填を高流量充填で行うことができるようになる。この場合、流量制御弁22を通過するときの流速で、例えば、第1充填速度V1を160〜200(l/min)とし、第3充填速度V3を80〜100(l/min)とする。
【0043】
その後の充填は、一方の燃料タンク10A(又は10B)が満タン状態になるまでの充填制御と同じ様に行い、ステップS22で、第3充填速度V3の高流量充填で予め設定した時間(ステップS24の液面レベルのチェックのインターバルに関係する時間)の間燃料を充填する。
【0044】
次にステップS23で液面レベルを計測し、次のステップS24で、他方の燃料タンク10B(又は10A)が、燃料が予め設定した液面レベル(減速液面高さ)になったか否かを判定し、この液面レベルになるまでは(NO)、流量制御弁22を調整して第3充填速度V3に増速して充填し、この液面レベルになると(YES)、図4に示すように、接点スイッチ11aの一つがOFFになり、一つの電気抵抗11bが電気回路14の抵抗となるので、ステップS25で流量制御弁22を調整して水撃作用が問題にならない第4充填速度(低速充填速度)V4の低流量充填に減速して充填する。この流量制御弁22を通過した後の全体としての第4充填速度V4を、全体としての第2充填速度V2の半分とすることで、ステップS16Aの第2充填速度V2で充填する場合と同じ様に、他方の燃料タンク10B(又は10A)への充填を低流量充填で行うことができるようになる。この場合、流量制御弁22を通過するときの流速で、例えば、第2充填速度V2を20〜60(l/min)とし、第4充填速度V4を10〜30(l/min)とする。
【0045】
この第2の実施の形態のDME燃料使用エンジンにおける燃料充填システム及び燃料充填方法では、満タンを先に迎える燃料タンク10A(又は10B)を優先して低流量充填へ制御し、衝撃波による破損を防止すると共に、満タンを先に迎えた燃料タンク10A(又は10B)への燃料充填が停止した後は、再度、高流量充填として、他方の燃料タンク10B(又は10A)の充填時間を短縮する。
【0046】
これを、図9で見てみると、燃料の充填を開始した時点taからどちらか一つの燃料タンク10A(又は10B)の燃料が予め設定した液面レベルに到達して、電気抵抗が「R0」から「R1」に変化した時点tbまでが高流量充填であり、この時点tbから一方の燃料タンク10A(又は10B)が満タン状態になって過充填防止装置12で自動停止した時点tcを経由して、一方の燃料タンク10A(又は10B)の充填停止が確認できた時点tdまでが低流量充填となる。
【0047】
更に、この一方の燃料タンク10A(又は10B)の充填停止が確認できた時点tdから、他方の燃料タンク10B(又は10A)の燃料が予め設定した液面レベルに到達して、電気抵抗が「R1」から「R1+R2」に変化する時点teまでを高流量充填とすることができる。なお、他方の燃料タンク10B(又は10A)が満タン状態になって過充填防止装置12で自動停止する時点tfまでは低流量充填となる。
【0048】
上記のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法及び燃料充填システムによれば、長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンク10A、10Bを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対して、燃料充填時に複数の燃料タンク10A、10Bに同時に燃料充填しながら、充填停止時の衝撃波の発生を簡素な制御でしかも低コストで容易に回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法と燃料充填システムによれば、長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対しても、簡素な制御でしかも低コストで、燃料充填時において、複数の燃料タンクに同時に燃料充填しながら、燃料供給停止時の衝撃波の発生を容易に回避できるので、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 燃料充填システム
10A、10B 燃料タンク
11A、11B 液面計
11a 接点スイッチ
11b 電気抵抗
12 過充填防止装置
13 充填口
14 電気回路
20 計量器(ディスペンサー)
21 充填ノズル
22 流量制御弁
30 貯槽
40 圧送ポンプ
50 信号ケーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、DME燃料使用エンジンと、複数のDME燃料用の燃料タンクを搭載した車両に対して、複数の燃料タンクに同時に燃料を充填する際に、燃料タンクへの燃料供給の停止時に衝撃波が発生するのを回避でき、しかも、短い時間で充填できるDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法及び燃料充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
DME(ジメチルエーテル)燃料を使用する自動車の燃料供給装置は、現行法規ではLPガス自動車用構造取扱基準に準拠し作製されている。DME燃料の供給は燃料供給スタンドから供給するが、現在はLPガス供給スタンドと酷似した供給方法で行われている。
【0003】
例えば、燃料供給スタンドに設けられている貯槽内の燃料を圧送ポンプ(燃料ポンプ)で、計量器(ディスペンサー:液体定量吐出装置)に圧送し、この計量器に取り付けられた供給用ホースで自動車側の燃料タンクに供給している。この供給用ホースの先端には、自動車側の燃料タンクの充填口と接続可能なノズルが取り付けられていて、燃料タンクと着脱可能としている。
【0004】
燃料の充填は、燃料タンクの充填口に計量器側のノズルを装着して、圧送ポンプにより貯槽に貯められた燃料を燃料タンクに供給することで行う。また、燃料の供給、あるいは停止は、ノズルに取り付けられているバルブの開閉で行う。
【0005】
そして、この充填装置の従来技術においては、燃料供給をノズル側(燃料供給側)で停止する方法と、図10に示す燃料充填システム1Xのように、自動車側(受け入れ側)の燃料タンク10に過充填防止装置12を設けて構成し、燃料の貯槽30から圧送ポンプ40で送られてくる燃料を計量器(ディスペンサー)20の充填ノズル21から、充填口13に供給し、燃料が燃料タンク10内に充分に供給されて満タン状態(燃料タンク容量の約85%)になると、燃料タンク10内に装備されている過充填防止装置12が機能し、充填口13の配管を遮断し、供給系統側で燃料をリリーフすることで、供給側の圧送ポンプ40は停止しない状態で、充填を停止する方法がある。その後、供給側のスイッチを停止する等することで、圧送ポンプ40が停止される。
【0006】
従来技術の充填装置は、乗用車あるいは小型トラックを前提にしているLPG燃料スタンドをベースにしている為、燃料供給流量は概ね20〜30(1/min)であり、これは大型トラックへの普及を考えると燃料供給流量は十分でない。DMEは軽油に対し発熱量が低く、同一発熱量を得ようとすると体積比で1.86倍の量が必要となる。つまり、軽油車と同等の航続距離を得るためには、1.86倍の燃料を積載する必要が生じる。そのため、充填速度についても高速充填が求められ、現在の軽油の給油と同等の時間で供給する場合には、80〜100(1/min)の充填速度が必要となる。
【0007】
一方、充填速度を上昇させると、過充填防止装置が作動した時に、弁の作動により配管内に衝撃波が発生し、供給系ライン、ホース、ノズル、計量器内に過大な圧力がかかるようになる。衝撃波が大きくなり、供給システム側が許容耐圧を超えると、各部品に悪影響が生じ、場合によっては、破損に至ることにもなる。
【0008】
この対策として、燃料タンク内の燃料が満タンになる前、すなわち、過充填防止装置が作動する前に充填流量を供給側で落とし、衝撃波の低減を図る方法を採用している例がある。この例としては、例えば、液面高さ情報を取得して、減速液面高さまでは、高速充填速度で充填し、減速液面高さになると、閾液面高さまで、高速充填速度から減速し、最大充填量に達するまでに、充填速度を充分に減速できて、充填停止により発生する水撃作用を充分に抑制するDME燃料充填システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
このような燃料充填システムは、例えば、図11に示すような燃料充填システム1Y、又は、図12に示すような燃料充填システム1Zであり、自動車側(受け入れ側)の燃料タンク10に過充填防止装置12に加えて液面計11を設けて構成し、燃料の貯槽30から圧送ポンプ40で送られてくる燃料を計量器(ディスペンサー)20の流量制御弁22を制御しながら充填ノズル21から、充填口13に供給する。
【0010】
この制御は図13に例示するような制御フローで行われ、ステップS11で燃料タンク10の液面レベル(燃料レベル)を示す液面計(液面センサ)11の測定値を計量器20側で利用できるか、つまり、計量器20側で液面レベルの計測が可能な状態になっているか否かを判定し、可能でない場合には(NO)、ステップS13に行き、第2充填速度(低速充填速度)V2の低流量充填で燃料を充填する。一方、液面レベルの計測が可能な状態になっている場合には(YES)、ステップS12に行き、第1充填速度(高速充填速度)V1の高流量充填で予め設定した時間(S15の液面レベルのチェックのインターバルに関係する時間)の間燃料を充填し、次にステップS14で液面レベルを計測し、次のステップS15で燃料が予め設定した液面レベル(減速液面高さ)になったか否かを判定し、この液面レベルになるまでは(NO)、流量制御弁22を調整して第1充填速度V1で充填し、この液面レベルになると(YES)、ステップS16で流量制御弁22を調整して水撃作用が問題にならない第2充填速度V2の低流量充填に減速して充填し、満タン状態になったら過充填防止装置12で自動停止させる。自動停止したら、ステップS17で、圧送ポンプ40を停止する等して、充填作業を終了する。なお、液面計11と計量器20の間を、図11では、信号ケーブル50で接続しているが、図12では、液面計11と計量器20の間を送信器51と受信器52による無線通信で接続している。
【0011】
また、燃料タンクの液面の位置を検出する液面計11として、フロート式液面ゲージや超音波式液面センサ等の液面計を取り付け、この液面計11の入力信号を電気ケーブルや光ケーブルや無線を介して、燃料供給側の計量器(ディスペンサー)20へ転送して、燃料の液面情報を入力することで液面レベルの検出が行われている。
【0012】
つまり、これらの燃料充填では、燃料タンクに充填ノズルをセットすると、液面レベルの情報が液面計、ケーブル(あるいは無線送受信)により計量器に伝達され、計量器側では、供給側システムの圧送ポンプを作動させて燃料供給を開始する。燃料充填開始時は高速充填とし、流量は例えば80〜100(1/min)とする。このとき、液面計で検出された液面レベル情報は連続的に計量器へ伝達される。そして、計量器では、液面レベルが所定のレベル(例えば、満タン状態の90%〜95%程度)になったと判断した場合には、充填流量を供給停止時の衝撃波が問題にならない流量レベルまで減速させる。この流量レベルまで流量を落とした後、過充填防止装置により充填停止するか、又は、液面レベルの情報により満タンを判断して供給側の圧送ポンプを停止するかして、燃料の供給を停止する。
【0013】
しかしながら、長距離走行するような大型トラック等の自動車の場合、積載燃料確保の為に、燃料タンクを複数本搭載する場合があるが、その場合に、燃料充填時において、上記のような衝撃波回避の方法を採用するに際して、それぞれの燃料タンクの制御を行うことは低コストの実現及び制御の簡素化を考慮すると困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−138755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対しても、簡素な制御でしかも低コストで、燃料充填時において、複数の燃料タンクに同時に燃料充填しながら、燃料供給停止時の衝撃波の発生を容易に回避できるDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法と燃料充填システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するための本発明のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法は、DME燃料使用エンジンと、複数のDME燃料用の燃料タンクを搭載した車両に対するDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法において、複数の前記燃料タンクに同時に燃料を充填する時に、前記燃料タンクへの燃料の充填速度の制御を、前記燃料タンクの個々への充填速度に対してではなく、前記燃料タンク全体への充填速度に対して一括して行うと共に、充填開始時には、前記燃料タンク全体への充填速度を第1充填速度とし、次に、前記燃料タンクの一つの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を供給停止時の衝撃波が問題にならない第2充填速度まで減速させ、前記一つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した停止用充填量に到達したときに、前記一つ目の燃料タンクの充填のみを停止させることを特徴とする方法である。
【0017】
この方法によれば、長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対して、燃料充填時に複数の燃料タンクに同時に燃料充填しながら、充填停止時の衝撃波の発生を簡素な制御でしかも低コストで容易に回避できる。
【0018】
また、上記のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法において、前記燃料タンクの一つで燃料の充填が停止した後、前記燃料タンク全体への充填速度を第3充填速度に増速し、次に、前記燃料タンクの二つ目の燃料充填量がこの燃料タンクの減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を第4充填速度まで減速させ、前記二つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの停止用充填量に到達したときに、前記二つ目の燃料タンクの充填のみを停止させる。この方法によれば、二つ目の燃料タンクへの充填速度を増速するので、全体の充填時間を短縮できる。
【0019】
そして、上記の目的を達成するための本発明のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システムは、DME燃料使用エンジンと、複数のDME燃料用の燃料タンクを搭載した車両に対して、DME燃料の燃料タンクへの燃料充填システムにおいて、前記車両側に、前記燃料タンクのそれぞれに燃料充填量を検出する液面計を設けると共に、燃料スタンド側に貯槽と前記燃料タンクとを連結する燃料供給ラインを設け、該燃料供給ラインの途中に圧送ポンプと流量調整弁を、先端に充填ノズルをそれぞれ設け、更に、前記液面計の出力を受けて前記圧送ポンプと流量調整弁を制御する充填制御装置を設けて構成し、前記充填制御装置が、複数の前記燃料タンクに同時に燃料を充填する時に、前記燃料タンクへの燃料の充填速度の制御を、前記燃料タンクの個々への充填速度に対してではなく、前記燃料タンク全体への充填速度に対して一括して行うと共に、充填開始時には、前記燃料タンク全体への充填速度を第1充填速度とし、次に、前記燃料タンクの一つの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を供給停止時の衝撃波が問題にならない第2充填速度まで減速させ、前記一つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した停止用充填量に到達したときに、前記一つ目の燃料タンクの充填のみを停止させる制御を行うように構成される。
【0020】
この構成によれば、長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対して、燃料充填時に複数の燃料タンクに同時に燃料充填しながら、充填停止時の衝撃波の発生を簡素な制御でしかも低コストで容易に回避できる。
【0021】
また、上記のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システムにおいて、前記燃料タンクの一つで燃料の充填が停止した後、前記燃料タンク全体への充填速度を第3充填速度に増速し、次に、前記燃料タンクの二つ目の燃料充填量がこの燃料タンクの減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を第4充填速度まで減速させ、前記二つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの停止用充填量に到達したときに、前記二つ目の燃料タンクの充填のみを停止させる制御を行うように構成される。この構成によれば、二つ目の燃料タンクへの充填速度を増速するので、全体の充填時間を短縮できる。
【0022】
また、上記のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システムにおいて、前記液面計を、液面が指定の液面に達したことを検出するとON−OFFする接点スイッチと、該接点スイッチと並列に設けられる電気抵抗を備えて、液面が前記指定の液面レベルに達するまでは前記接点スイッチがONで、電気抵抗値が略ゼロの状態となり、液面が前記指定の液面レベルに達したことを検出すると前記接点スイッチがOFFとなり、前記電気抵抗値の値が略ゼロの状態から変化するように形成すると共に、前記液面計を直列に連結して、燃料タンク全体としての液面検出用の電気回路とし、該電気回路における電気抵抗の変化から前記燃料タンクの燃料充填量が前記減速用充填量に到達したことを検出するように構成される。この構成によれば、非常に簡単な回路構成により、複数の燃料タンクへの充填速度を一括して制御できるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法及び燃料充填システムによれば、長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対して、燃料充填時に複数の燃料タンクに同時に燃料充填しながら、充填停止時の衝撃波の発生を簡素な制御でしかも低コストで容易に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】発明に係る第1及び第2の実施の形態の燃料タンクが2つの場合の燃料充填システムの構成を示す図である。
【図2】燃料タンクが2つの場合の液面計の接続関係の構成を示す図である。
【図3】発明に係る第1及び第2の実施の形態の液面計の信号の電気回路を示す図で、2つの液面計が両方とも予め設定した液面レベルに達していない場合を示す。
【図4】発明に係る第1及び第2の実施の形態の液面計の信号の電気回路を示す図で、一方の液面計が予め設定した液面レベルに達している場合を示す。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態の燃料充填方法の制御フローを示す図である。
【図6】本発明に係る第1の実施の形態の燃料充填方法における、液面計の抵抗値と燃料供給量の時間的な変化を示す図である。
【図7】本発明に係る第2の実施の形態の燃料充填方法の制御フローを示す図である。
【図8】図7の制御フローのステップS20の詳細な制御フローを示す図である。
【図9】本発明に係る第2の実施の形態の燃料充填方法における、液面計の抵抗値と燃料供給量の時間的な変化を示す図である。
【図10】車両側の燃料タンクが一つの場合の燃料充填システムの構成を示す図である。
【図11】車両側の燃料タンクが一つで液面計と信号ケーブルを用いる場合の燃料充填システムの構成を示す図である。
【図12】車両側の燃料タンクが一つで液面計と無線信号を用いる場合の燃料充填システムの構成を示す図である。
【図13】従来技術の燃料充填方法の制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法及び燃料充填システムについて説明する。以下、燃料タンクの数を2個で説明するが、本発明は燃料タンクの数は2個に限定されず、2個以上、言い換えれば、複数の燃料タンクに対してDME燃料を充填する燃料充填システムや燃料充填方法に適用できる。
【0026】
図1に示すように、本発明に係る第1の実施の形態のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システム1は、車両側(受け入れ側:自動車側)に2つの燃料タンク10A、10Bが設けられ、それぞれに液面計11A、11Bが配置されると共に、過充填防止装置12を設けて構成する。そして、DME燃料の貯槽30から圧送ポンプ40で送られてくる燃料を、流量制御弁22経由で計量器(ディスペンサー:充填制御装置)20の充填ノズル21から、車両側の充填口13に供給し、燃料が満タン状態になったら過充填防止装置12で自動停止させる。また、液面計11A、11Bの検出信号は、電気回路14と信号ケーブル50により計量器(ディスペンサー)20側に入力される。
【0027】
また、図2〜図4に示すように、液面計11A、11Bは燃料が予め設定した液面レベルを超えると接点スイッチ11aがOFFになるように構成され、この接点スイッチ11aと並列に電気抵抗11bが接続されている電気回路14を構成する。つまり、燃料が指定の液面レベルに達すると、接点スイッチ11aが、図4に示すように、無接点となり、並列に取り付けてある電気抵抗11bにより、抵抗値が変化する構造とする。そして、この液面計11A、11Bをそれぞれの燃料タンク10A、10Bに取り付け、更に、直列に連結しておく。また、指定の液面レベルに達するまでは、通電可としておく。なお、電気回路14と信号ケーブル50は、図1と図2では一点鎖線で、図3と図4では実線で示してある。
【0028】
このような電気回路14にすることで、燃料タンク10A、10Bの一方が指定の液面レベルに達すると、その接点スイッチ11aが無接点となり、電流が電気抵抗11b側を通過するようになり、抵抗値が変化するので、計量器20側で燃料タンク10A、10Bの一方が、満タン(満充填)前の第1液面レベルまで達したか否かを判定でき、充填する流量を低流量に減速する制御が行えるようになる。
【0029】
次に、本発明に係る第1の実施の形態のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法について、図5と図6を参照しながら説明する。この燃料充填方法では、車両側の燃料タンク10A、10Bの燃料充填口13に充填ノズル(ディスペンサーノズル)21をセットする。計量器20側の通信ケーブル50を用いて制御する場合には、このセットと同時にあるいは、前もって、この通信ケーブル50を車両側の液面計11A、11Bの電気回路14に接続する。なお、この操作は無線を使用する場合には不要となる。
【0030】
充填開始前で、燃料タンク10A、10B内の燃料が少ない場合には、それぞれの液面計11A、11Bの接点スイッチ11aは閉じていて電気回路14は閉じている。充填制御を開始すると、図5の制御フローがスタートし、最初のステップS11で燃料タンク10の液面レベル(燃料レベル)を示す液面計(液面センサ)11の測定値を計量器20側で利用できるか、つまり、計量器20側で液面レベルの計測が可能な状態になっているか否かを判定する。この判定で可能でない場合には(NO)、ステップS13に行き、万一の衝撃波の発生を回避するために、第2充填速度(低速充填速度)V2の低流量充填で燃料を充填する。一方、液面レベルの計測が可能な状態になっている場合には(YES)、ステップS12に行き、第1充填速度(高速充填速度)V1の高流量充填で予め設定した時間(S15の液面レベルのチェックのインターバルに関係する時間)の間燃料を充填する。
【0031】
この第1充填速度V1は、流量制御弁22を通過する流量で、例えば、160〜200(l/min)とする。つまり、燃料タンク1個当たり、80〜100(l/min)とする。また、第2充填速度V2は、流量制御弁22を通過する流量で、例えば、20〜60(l/min)とする。つまり、燃料タンク1個当たり、10〜30(l/min)とする。
【0032】
次にステップS14で液面レベルを計測し、次のステップS15で、燃料タンク10A、10Bのいずれか一方が、燃料が予め設定した液面レベル(減速液面高さ)になったか否かを判定し、いずれか一方の燃料タンク10A(又は10B)がこの液面レベルになるまでは(NO)、流量制御弁22を調整して第1充填速度V1で充填し、いずれか一方の燃料タンク10A(又は10B)がこの液面レベルになると(YES)、図4に示すように、図面右側の接点スイッチ11aがOFFになり、電気回路14は一つの電気抵抗11bが抵抗として作用するようになるので、この状態であるか否かを判定できる。ステップS15の判定でこの状態になったと判定したら(YES)、ステップS16Aに行き、流量制御弁22を調整して水撃作用が問題にならない第2充填速度V2で充填する。
【0033】
このステップS16Aの第2充填速度V2で一方の燃料タンク10A(又は10B)が満タン状態になったら、ステップS17Aで過充填防止装置12で自動停止させる。その後は、第2充填速度V2の半分の第4充填速度V4で充填して、ステップS16Bで、他方の燃料タンク10B(又は10A)に対して、ステップS16Aの第2充填速度V2で充填する場合と同じ様に、低流量充填で充填を継続し、他方の燃料タンク10B(又は10A)が満タン状態になったら、ステップS17Bで過充填防止装置12で自動停止させる。両方の燃料タンク10A、10Bの燃料供給ラインが過充填防止装置12で自動停止したら、ステップS18で、圧送ポンプ40を停止する等を行い、充填作業を終了する。
【0034】
つまり、燃料充填を開始すると、計量器20側では充填ノズル21から燃料充填を開始するが、このときは第1充填速度V1の高流量充填とする。2つ搭載している燃料タンク10A、10Bの内、いずれか一つの燃料タンク10A(又は10B)が指定値、例えば満タン前の5%から10%以下の予め設定した液面レベルになると、その燃料タンク10A(又は10B)の液面計11の接点スイッチ11aが開となるので、図3及び図4に示すような並行して備えている電気抵抗11b側のみの回路となり抵抗値が変化する。これにより、計量器20側では、間もなく満タンになると判定し、燃料の充填を第2充填速度V2の低流量充填へ切り替える。その後、過充填防止装置12が作動し、この一方の燃料タンク10A(又は10B)の充填が終了する。
【0035】
しかし、他方の燃料タンク10B(又は10A)は低流量充填で充填が続き、過充填防止装置12が作動するまで充填が継続される。この他方の燃料タンク10B(又は10A)が満タンになると過充填防止装置12が作動し、充填が停止される。
【0036】
この第1の実施の形態のDME燃料使用エンジンにおける燃料充填システム及び燃料充填方法では、満タンを先に迎える燃料タンク10A(又は10B)を優先して低流量充填になるように制御し、衝撃波による破損を防止する。これを、図6で見てみると、燃料の充填を開始した時点taからどちらか一つの燃料タンク10A(又は10B)の燃料が予め設定した液面レベルに到達して、電気抵抗が「R0」から「R1」に変化した時点tbまでが高流量充填であり、この時点tbから一方の燃料タンク10A(又は10B)が満タン状態になって過充填防止装置12で自動停止した時点tcと他方の燃料タンク10B(又は10A)の燃料が予め設定した液面レベルに到達して電気抵抗が「R1」から「R1+R2」に変化した時点teを経由して、他方の燃料タンク10B(又は10A)が満タン状態になって過充填防止装置12で自動停止する時点tfまでは低流量充填となる。
【0037】
従って、一方の燃料タンク10A(又は10B)の充填の終了に際しても、他方の燃料タンク10B(又は10A)の充填の終了に際しても、充填する流量は低流量充填に低下しているので、燃料供給停止時の水撃作用を回避できる。
【0038】
なお、上記のように燃料タンクが複数本搭載されている場合、概ね均等に消費されるように車両側の燃料供給を制御しておくことで、燃料充填時における、満タンになるまでの時間の差を燃料タンク間で少なくすることができるので、その効果をより大きくすることができる。
【0039】
次に、第2の実施の形態のDME燃料使用エンジンにおける燃料充填システム及び燃料充填方法について図7、図8と図9参照しながら説明する。この第2の実施の形態における燃料充填システム及び燃料充填方法は、第1の実施の形態における燃料充填システム及び燃料充填方法とは、燃料タンク10A、10Bの一つが満タン状態になった後に、充填する流量を再び高流量化する点が異なる。
【0040】
この第2の実施の形態の燃料充填方法は、図7のステップS11〜S17Aまでは、図5の制御フロー出示す第1の実施の形態と同様であり、ステップS20の他方の燃料タンク10B(又は10A)への充填継続の制御が、図8に示すように異なるだけである。
【0041】
図5の第1の実施の形態の制御フローでは、一方の燃料タンク10A(又は10B)の充填が、過充填防止装置12によって充填を終了するときに、2つの燃料タンク10A、10Bへの流量に対し、一方の燃料タンク10A(又は10B)への流量が減るので、全体の流量が低下する。
【0042】
図7及び図8の第2の実施の形態では、ステップS21で、この低下を計量器20側で判定し、一方の燃料タンク10A(又は10B)の充填停止の確認を行い、ステップS22で、他方の燃料タンク10B(又は10A)への充填を第3充填速度V3の高流量充填に切り替える。この流量制御弁22を通過した後の第3充填速度V3を第1充填速度V1の半分とすることで、ステップS12の第1充填速度V1で充填する場合と同じ様に、他方の燃料タンク10B(又は10A)への充填を高流量充填で行うことができるようになる。この場合、流量制御弁22を通過するときの流速で、例えば、第1充填速度V1を160〜200(l/min)とし、第3充填速度V3を80〜100(l/min)とする。
【0043】
その後の充填は、一方の燃料タンク10A(又は10B)が満タン状態になるまでの充填制御と同じ様に行い、ステップS22で、第3充填速度V3の高流量充填で予め設定した時間(ステップS24の液面レベルのチェックのインターバルに関係する時間)の間燃料を充填する。
【0044】
次にステップS23で液面レベルを計測し、次のステップS24で、他方の燃料タンク10B(又は10A)が、燃料が予め設定した液面レベル(減速液面高さ)になったか否かを判定し、この液面レベルになるまでは(NO)、流量制御弁22を調整して第3充填速度V3に増速して充填し、この液面レベルになると(YES)、図4に示すように、接点スイッチ11aの一つがOFFになり、一つの電気抵抗11bが電気回路14の抵抗となるので、ステップS25で流量制御弁22を調整して水撃作用が問題にならない第4充填速度(低速充填速度)V4の低流量充填に減速して充填する。この流量制御弁22を通過した後の全体としての第4充填速度V4を、全体としての第2充填速度V2の半分とすることで、ステップS16Aの第2充填速度V2で充填する場合と同じ様に、他方の燃料タンク10B(又は10A)への充填を低流量充填で行うことができるようになる。この場合、流量制御弁22を通過するときの流速で、例えば、第2充填速度V2を20〜60(l/min)とし、第4充填速度V4を10〜30(l/min)とする。
【0045】
この第2の実施の形態のDME燃料使用エンジンにおける燃料充填システム及び燃料充填方法では、満タンを先に迎える燃料タンク10A(又は10B)を優先して低流量充填へ制御し、衝撃波による破損を防止すると共に、満タンを先に迎えた燃料タンク10A(又は10B)への燃料充填が停止した後は、再度、高流量充填として、他方の燃料タンク10B(又は10A)の充填時間を短縮する。
【0046】
これを、図9で見てみると、燃料の充填を開始した時点taからどちらか一つの燃料タンク10A(又は10B)の燃料が予め設定した液面レベルに到達して、電気抵抗が「R0」から「R1」に変化した時点tbまでが高流量充填であり、この時点tbから一方の燃料タンク10A(又は10B)が満タン状態になって過充填防止装置12で自動停止した時点tcを経由して、一方の燃料タンク10A(又は10B)の充填停止が確認できた時点tdまでが低流量充填となる。
【0047】
更に、この一方の燃料タンク10A(又は10B)の充填停止が確認できた時点tdから、他方の燃料タンク10B(又は10A)の燃料が予め設定した液面レベルに到達して、電気抵抗が「R1」から「R1+R2」に変化する時点teまでを高流量充填とすることができる。なお、他方の燃料タンク10B(又は10A)が満タン状態になって過充填防止装置12で自動停止する時点tfまでは低流量充填となる。
【0048】
上記のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法及び燃料充填システムによれば、長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンク10A、10Bを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対して、燃料充填時に複数の燃料タンク10A、10Bに同時に燃料充填しながら、充填停止時の衝撃波の発生を簡素な制御でしかも低コストで容易に回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法と燃料充填システムによれば、長距離走行等に対しての積載燃料量を確保するために、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に対しても、簡素な制御でしかも低コストで、燃料充填時において、複数の燃料タンクに同時に燃料充填しながら、燃料供給停止時の衝撃波の発生を容易に回避できるので、燃料タンクを複数搭載するDME燃料使用の自動車に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 燃料充填システム
10A、10B 燃料タンク
11A、11B 液面計
11a 接点スイッチ
11b 電気抵抗
12 過充填防止装置
13 充填口
14 電気回路
20 計量器(ディスペンサー)
21 充填ノズル
22 流量制御弁
30 貯槽
40 圧送ポンプ
50 信号ケーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DME燃料使用エンジンと、複数のDME燃料用の燃料タンクを搭載した車両に対するDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法において、
複数の前記燃料タンクに同時に燃料を充填する時に、前記燃料タンクへの燃料の充填速度の制御を、前記燃料タンクの個々への充填速度に対してではなく、前記燃料タンク全体への充填速度に対して一括して行うと共に、
充填開始時には、前記燃料タンク全体への充填速度を第1充填速度とし、
次に、前記燃料タンクの一つの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を供給停止時の衝撃波が問題にならない第2充填速度まで減速させ、
前記一つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した停止用充填量に到達したときに、前記一つ目の燃料タンクの充填のみを停止させることを特徴とするDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法。
【請求項2】
前記燃料タンクの一つで燃料の充填が停止した後、前記燃料タンク全体への充填速度を第3充填速度に増速し、
次に、前記燃料タンクの二つ目の燃料充填量がこの燃料タンクの減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を第4充填速度まで減速させ、
前記二つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの停止用充填量に到達したときに、前記二つ目の燃料タンクの充填のみを停止させることを特徴とする請求項1に記載のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法。
【請求項3】
DME燃料使用エンジンと、複数のDME燃料用の燃料タンクを搭載した車両に対して、DME燃料の燃料タンクへの燃料充填システムにおいて、
前記車両側に、前記燃料タンクのそれぞれに燃料充填量を検出する液面計を設けると共に、
燃料スタンド側に貯槽と前記燃料タンクとを連結する燃料供給ラインを設け、該燃料供給ラインの途中に圧送ポンプと流量調整弁を、先端に充填ノズルをそれぞれ設け、更に、前記液面計の出力を受けて前記圧送ポンプと流量調整弁を制御する充填制御装置を設けて構成し、
前記充填制御装置が、
複数の前記燃料タンクに同時に燃料を充填する時に、前記燃料タンクへの燃料の充填速度の制御を、前記燃料タンクの個々への充填速度に対してではなく、前記燃料タンク全体への充填速度に対して一括して行うと共に、
充填開始時には、前記燃料タンク全体への充填速度を第1充填速度とし、
次に、前記燃料タンクの一つの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を供給停止時の衝撃波が問題にならない第2充填速度まで減速させ、
前記一つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した停止用充填量に到達したときに、前記一つ目の燃料タンクの充填のみを停止させる制御を行うことを特徴とするDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システム。
【請求項4】
前記充填制御装置が、
前記燃料タンクの一つで燃料の充填が停止した後、前記燃料タンク全体への充填速度を第3充填速度に増速し、
次に、前記燃料タンクの二つ目の燃料充填量がこの燃料タンクの減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を第4充填速度まで減速させ、
前記二つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの停止用充填量に到達したときに、前記二つ目の燃料タンクの充填のみを停止させる制御を行うことを特徴とする請求項3に記載のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システム。
【請求項5】
前記液面計を、液面が指定の液面に達したことを検出するとON−OFFする接点スイッチと、該接点スイッチと並列に設けられる電気抵抗を備えて、液面が前記指定の液面レベルに達するまでは前記接点スイッチがONで、電気抵抗値が略ゼロの状態となり、液面が前記指定の液面レベルに達したことを検出すると前記接点スイッチがOFFとなり、前記電気抵抗値の値が略ゼロの状態から変化するように形成すると共に、
前記液面計を直列に連結して、燃料タンク全体としての液面検出用の電気回路とし、該電気回路における電気抵抗の変化から前記燃料タンクの燃料充填量が前記減速用充填量に到達したことを検出することを特徴とする請求項3又は4に記載のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システム。
【請求項1】
DME燃料使用エンジンと、複数のDME燃料用の燃料タンクを搭載した車両に対するDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法において、
複数の前記燃料タンクに同時に燃料を充填する時に、前記燃料タンクへの燃料の充填速度の制御を、前記燃料タンクの個々への充填速度に対してではなく、前記燃料タンク全体への充填速度に対して一括して行うと共に、
充填開始時には、前記燃料タンク全体への充填速度を第1充填速度とし、
次に、前記燃料タンクの一つの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を供給停止時の衝撃波が問題にならない第2充填速度まで減速させ、
前記一つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した停止用充填量に到達したときに、前記一つ目の燃料タンクの充填のみを停止させることを特徴とするDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法。
【請求項2】
前記燃料タンクの一つで燃料の充填が停止した後、前記燃料タンク全体への充填速度を第3充填速度に増速し、
次に、前記燃料タンクの二つ目の燃料充填量がこの燃料タンクの減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を第4充填速度まで減速させ、
前記二つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの停止用充填量に到達したときに、前記二つ目の燃料タンクの充填のみを停止させることを特徴とする請求項1に記載のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填方法。
【請求項3】
DME燃料使用エンジンと、複数のDME燃料用の燃料タンクを搭載した車両に対して、DME燃料の燃料タンクへの燃料充填システムにおいて、
前記車両側に、前記燃料タンクのそれぞれに燃料充填量を検出する液面計を設けると共に、
燃料スタンド側に貯槽と前記燃料タンクとを連結する燃料供給ラインを設け、該燃料供給ラインの途中に圧送ポンプと流量調整弁を、先端に充填ノズルをそれぞれ設け、更に、前記液面計の出力を受けて前記圧送ポンプと流量調整弁を制御する充填制御装置を設けて構成し、
前記充填制御装置が、
複数の前記燃料タンクに同時に燃料を充填する時に、前記燃料タンクへの燃料の充填速度の制御を、前記燃料タンクの個々への充填速度に対してではなく、前記燃料タンク全体への充填速度に対して一括して行うと共に、
充填開始時には、前記燃料タンク全体への充填速度を第1充填速度とし、
次に、前記燃料タンクの一つの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を供給停止時の衝撃波が問題にならない第2充填速度まで減速させ、
前記一つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの予め設定した停止用充填量に到達したときに、前記一つ目の燃料タンクの充填のみを停止させる制御を行うことを特徴とするDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システム。
【請求項4】
前記充填制御装置が、
前記燃料タンクの一つで燃料の充填が停止した後、前記燃料タンク全体への充填速度を第3充填速度に増速し、
次に、前記燃料タンクの二つ目の燃料充填量がこの燃料タンクの減速用充填量に到達したときに、前記燃料タンク全体への充填速度を第4充填速度まで減速させ、
前記二つ目の燃料タンクの燃料充填量がこの燃料タンクの停止用充填量に到達したときに、前記二つ目の燃料タンクの充填のみを停止させる制御を行うことを特徴とする請求項3に記載のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システム。
【請求項5】
前記液面計を、液面が指定の液面に達したことを検出するとON−OFFする接点スイッチと、該接点スイッチと並列に設けられる電気抵抗を備えて、液面が前記指定の液面レベルに達するまでは前記接点スイッチがONで、電気抵抗値が略ゼロの状態となり、液面が前記指定の液面レベルに達したことを検出すると前記接点スイッチがOFFとなり、前記電気抵抗値の値が略ゼロの状態から変化するように形成すると共に、
前記液面計を直列に連結して、燃料タンク全体としての液面検出用の電気回路とし、該電気回路における電気抵抗の変化から前記燃料タンクの燃料充填量が前記減速用充填量に到達したことを検出することを特徴とする請求項3又は4に記載のDME燃料の燃料タンクへの燃料充填システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−87799(P2013−87799A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226181(P2011−226181)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
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