説明

Escherichiacoliの新規株、その調製方法、およびL−トレオニン産生のための発酵プロセスにおけるその使用

【課題】高収量でL-トレオニンを効率的に産生するが、トレオニン生合成酵素をコードする遺伝子を含む任意の組換えプラスミドを必要とせずそして好ましくはアミノ酸栄養要求性を有さない微生物を提供すること。
【解決手段】本発明は、Escherichia coliの新規株、およびこれらの微生物を含む発酵プロセスに関する。より詳細には、本発明は、遺伝子改変したEscherichiacoli株、およびアミノ酸、特にトレオニンのようなアスパラギン酸ファミリーのメンバーのアミノ酸の産生のためのその使用に関する。本発明はまた、アミノ酸の発酵産生における使用のためにE.coli株を調製する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、Escherichiacoliの新規株、およびこれらの微生物を含む発酵プロセスに関する。より詳細には、本発明は、遺伝子改変したEscherichia coli株、およびアミノ酸、特にトレオニンのようなアスパラギン酸ファミリーのメンバーのアミノ酸の産生のためのその使用に関する。本発明はまた、アミノ酸の発酵産生における使用のためにE.coli株を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
Escherichiacoliにおいて、アミノ酸L-トレオニン、L-イソロイシン、L-リジン、およびL-メチオニンは、以下の通常の生合成経路によって、すべてまたは一部の炭素原子をアスパラギン酸塩(アスパラギン酸)から誘導する(G.N.Cohen,「The common pathway to lysine, methionine and threonine」147-171頁, AminoAcids: Biosynthesis and Genetic Regulation, K.M. HerrmannおよびR.L. Somerville編,Addison-Welesley Publishing Co., Inc., Reading, Mass. (1983)):
アスハ゜ラキ゛ン酸→アスハ゜ルチルホスフェート→アスハ゜ラキ゛ン酸セミアルテ゛ヒト゛→ホモセリン→→MET/THR/ILE

LYS
この通常の経路の第1の反応は、3つの異なるアスパラギン酸キナーゼ(AK I、II、またはIII)の1つによって触媒され、そのそれぞれは別々の遺伝子によってコードされ、そしてその活性および合成が調節されるように他のものとは異なる。例えば、アスパラギン酸キナーゼIは、thrAによってコードされ、その活性はトレオニンによって阻害され、そしてその合成はトレオニンとイソロイシンの組み合わせによって抑制される。しかし、AKIIは、metLによってコードされ、そしてその合成はメチオニンによって抑制される(しかし、その活性は、メチオニンによって、またはメチオニン、リジン、トレオニン、およびイソロイシンの2つの組み合わせによって抑制されない(F.Falcoz-Kellyら,Eur. J. Biochem.8:146-152 (1969);J.C.Patteら, Biochim. Biophys. Acta 136:245-257(1967)))。AK IIIはlysCによってコードされ、そしてその活性および合成は、リジンによって、それぞれ阻害および抑制される。
【0003】
2つのAK、IおよびIIは、異なるタンパク質ではなく、むしろそれぞれホモセリンデヒドロゲナーゼIまたはIIを含む複合タンパク質のドメインであり、そのそれぞれは、アスパラギン酸セミアルデヒドのホモセリンへの還元を触媒する(P.Truffa-Bachiら, Eur. J. Biochem.5:73-80 (12968))。従って、ホモセリンデヒドロゲナーゼIはまた、thrAによってコードされ、その合成はトレオニンおよびイソロイシンによって抑制され、そしてその活性はトレオニンによって阻害される。HDIIは同様にmetLによってコードされ、そしてその合成はメチオニンによって抑制される。
【0004】
トレオニン生合成は、以下のさらなる反応を包含する:ホモセリン→ホモセリンホスフェート→トレオニン。ホモセリンのリン酸化は、thrBによってコードされる2つの同一の29kDaサブユニットからなるタンパク質であるホモセリンキナーゼによって触媒され、そしてその活性はトレオニンによって阻害される(B.Burrら, J. Biochem. 62:519-526 (1976))。最終工程の、ホモセリンホスフェートのL-トレオニンへの複合変換は、thrCによってコードされる47kDaタンパク質であるトレオニンシンターゼによって触媒される(C.Parsotら, Nucleic Acids Res. 11:7331-7345 (1983))。
【0005】
thrA、thrB、およびthrC遺伝子はすべてE.coliの遺伝子マップの0分に位置する単一オペロンであるthrオペロンに属する(J. ThezeおよびI. Saint-Girons, J.Bacteriol. 118:990-998 (1974);J. Thezeら, J. Bacteriol. 117:133-143 (1974))。これらの遺伝子は、それぞれ、アスパラギン酸キナーゼI−ホモセリンデヒドロゲナーゼI、ホモセリンキナーゼ、およびトレオニンシンターゼをコードする。これらの酵素の生合成は、トレオニンおよびイソロイシンによる多価抑制を受ける(M.Freundlich, Biochem. Biophys. Res. Commun. 10:277-282 (1963))。
【0006】
調節領域は、thrオペロンの第1の構造遺伝子の上流に見られ、そしてその配列は決定されている(J.F.Gardner, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:1706-1710 (1979))。転写開始部位の下流のthrアテニュエーターは、リーダーペプチドをコードする配列を含み;この配列は、8つのトレオニンコドンおよび4つのイソロイシンコドンを含む。thrアテニュエーターはまた、古典的に相互排他的な二次構造を含み、これは荷電したトレオニル-およびイソロイシル-tRNAのレベルに依存して、thrオペロン中の構造遺伝子のRNAポリメラーゼ転写を可能にするかまたは防止する。
【0007】
天然の生合成による高レベルのアミノ酸産生を得ることに関する問題のため(例えば、所望の産物によるthrオペロンの抑制)、フィードバック耐性酵素をコードするthrA遺伝子とともにthrオペロンを含むプラスミドを有する細菌株が産生されている。このようなプラスミドを用いて、L-トレオニンは、Brevibacteriumflavum、Serratia marcescens、およびEscherichia coliのような広範な種々の微生物を用いる発酵プロセスによって工業的な規模で産生されている。
【0008】
例えば、E.coli BKIIM B-3996株(Debabovら, 米国特許第5,175,107号)はプラスミドpVIC40を含み、36時間で約85g/Lを生成する。宿主は欠損トレオニンシンターゼのためにトレオニン要求株である。BKIIMB-3996では、トレオニン生合成に必要とされる重要な酵素的活性、すなわち、フィードバック耐性AK I-HD I、ホモセリンキナーゼ、およびトレオニンシンターゼを提供する組換えプラスミドpVIC40である。このプラスミドはまた、宿主のトレオニン栄養要求性を補完する。
【0009】
E. coli29-4株(E. Shimizuら, Biosci. Biotech. Biochem. 59:1095-1098 (1995))は、組換えE. coliトレオニンプロデューサーの別の例である。29-4株を、トレオニン-過剰産生変異株、E.coli K-12(βIM-4)(E. coli株ATCC 21277に由来する)のthrオペロンを、プラスミドpBR322にクローニングすることによって構築し、次いで、これを親株に導入した(K.Wiwaら, Agric. Biol. Chem. 47:2329-2334 (1983))。29-4株は、72時間で約65g/LのL-トレオニンを産生する。
【0010】
同様に構築された組換え株は、他の生物を使用して作成されている。例えば、S. marcescens T2000株は、フィードバック耐性thrA遺伝子産物をコードするthrオペロンを有するプラスミドを含み、そして96時間で約100g/Lのトレオニンを産生する(M.Masudaら, Applied Biochemistry and Biotechnology 37:255-262 (1992))。これらの株はすべて、トレオニン生合成酵素をコードする遺伝子の複数コピーを有するプラスミドを含み、これはこれらの酵素の過剰発現を可能にする。トレオニン生合成酵素をコードするプラスミド産生遺伝子、特にフィードバック耐性AKI-HD IをコードするthrA遺伝子の過剰発現は、これらの株が大量のトレオニンを産生することを可能にする。プラスミド含有微生物の他の例は、例えば、米国特許第4,321,325号;第4,347,318号;第4,371,615号;第4,601,983号;第4,757,009号;第4,945,058号;第4,946,781号;第4,980,285号;第5,153,123号;および第5,236,831号に記載される。
【0011】
しかし、これらのようなプラスミド含有株は、それらのアミノ酸の商業的発酵産生のための有用性を限定するという問題を有する。例えば、これらの株での重要な問題は、プラスミド含有株の統合性が、細胞増殖および分裂の間のプラスミドの潜在的喪失のために、発酵プロセスを通して維持されることを確実にする。この問題を避けるために、例えば、プラスミドにおける抗生物質耐性遺伝子を用いることによって、培養中のプラスミドを含まない細胞を選択的に排除することが必要である。しかし、この溶液は、発酵培地に1つ以上の抗生物質の添加を必要とし、これは大規模発酵のためには商業的に実際的ではない。
【0012】
プラスミド含有株での別の重要な問題は、プラスミド安定性である。遺伝子がプラスミド上にコードされる酵素の高発現は、商業的に実際的な発酵プロセスに必要であり、しばしばプラスミド不安定性を引き起こす(E. Shimizuら, Biosci. Biotech. Biochem. 59:1095-1098 (1995))。プラスミド安定性はまた、培養温度および培養培地中の溶存酸素のレベルのような因子に依存する。例えば、プラスミド含有29-4株は、より低い培養温度(30℃対37℃)およびより高いレベルの溶存酸素でより安定であった(E.Shimizuら, Biosci. Biotech. Biochem. 59:1095-1098 (1995))。
【0013】
上記の微生物より効果が少ないが、非プラスミド含有微生物はまた、トレオニンプロデューサーとして使用されている。H-8460のようなE. coliの株は、一連の従来の変異誘発およびいくつかの代謝アナログに対する耐性についての選択によって得られ、70時間で約75g/LのL-トレオニンを生成する(Kinoら,米国特許第5,474,918号)。H-8460株は、組換えプラスミドを有さず、そして染色体上のトレオニン生合成遺伝子の1つのコピーを有する。これらの非プラスミド含有株がトレオニン生合成遺伝子の単一コピーのみを有するので、BKIIMB-3996のようなプラスミドを産生する株と比較して、この株のより低い生産性は、より低い酵素活性(特にthrオペロンによってコードされるもの)によると考えられる。適切な非プラスミド含有微生物の他の例は、例えば、米国特許第5,376,538号;第5,342,766号;第5,264,353号:第5,217,883号;第5,188,949号;第5,164,307号;第5,098,835号;第5,087,566号;第5,077,207号;第5,019,503号;第5,017,483号;第4,996,147号;第4,463,094号;第4,452,890号;第3,732,144号;第3,711,375号;第3,684,654号;第3,684,653号;第3,647,628号;第3,622,453号;第3,582,471号;第3,580,810号;第3,984,830号;および第3,375,173号に記載される。
【0014】
E. coliの非プラスミド含有およびプラスミド含有株の両方で、thrオペロンは、特定の株のそれぞれの天然トレオニンプロモーターによって制御される。上記のように、天然プロモーターの発現は、リーダーペプチドをコードし、そして多くのトレオニンおよびイソロイシンコドンを含むDNAの領域によって制御されるアテニュエーション機構によって調製される。この領域は、トレオニニル-tRNAおよびイソロイシニル-tRNAのレベルを感知するリボソームによって翻訳される。これらのレベルがリーダーペプチドが翻訳されるために十分である場合、転写は早めに終結されるが、レベルがリーダーペプチドが翻訳されるために不十分である場合、転写は終結されず、そしてオペロン全体が転写され、これは翻訳後、トレオニン生合成酵素の産生の増加を生じる。従って、トレオニル-tRNAおよび/またはイソロイシニル-tRNAレベルが低い場合、thrオペロンが最大に転写され、そしてトレオニン生合成酵素が最大に生成される。
【0015】
E. coliトレオニン産生株BKIIMB-3996では、プラスミド中のトレオニンオペロンは、その天然プロモーターによって制御される。結果として、株がトレオニンおよび/またはイソロイシンを枯渇される場合にのみ、thrオペロンは最大で発現される。トレオニンの枯渇がトレオニン産生株で可能ではないので、これらの株は、より高いレベルの酵素的活性を得るために、イソロイシンの栄養要求性である。
【0016】
アテニュエーション制御を克服する別の方法は、細胞中のトレオニル-tRNAおよび/またはイソロイシニル-tRNAのレベルを低下させることである。例えば、トレオニンに対して200倍減少した見かけの親和性を示すトレオニル-tRNAシンターゼを有するthrS変異体は、おそらく低レベルのトレオニル-tRNAにより、thrオペロンの過剰発現を生じる(E.J.Johnsonら, J. Bacteriol. 129:66-70 (1977))。
【0017】
しかし、これらの株を使用する発酵プロセスにおいて、細胞は、その欠失したイソロイシン生合成のために、増殖期でイソロイシンを補充されなければならない。続いて、産生段階では、細胞は、トレオニン生合成酵素の発現を誘導するためにイソロイシンを取り除かれる。従って、トレオニン生合成酵素の発現を制御するために天然トレオニンプロモーターを使用することの主な欠点は、細胞がイソロイシンで補充されなければならないことである。
【0018】
抗生物質ボレリジンはまた、トレオニルtRNA-シンセターゼの酵素的活性を減少させ、そしてそれによってE. coliの増殖を阻害することが公知である(G. Nassら,Biochem. Biophys. Res. Commun. 34:84 (1969))。この減少した活性を考慮して、E. coliの特定のボレリジン感受性株は、高レベルのトレオニンを産生するために用いられている(日本国特許出願公開第6752/76号;米国特許第5,264,353号)。培養物へのボレリジンの添加は、L-トレオニンの収量を増加することが見出された。BrevibacteriumおよびCorynebacteriumのボレリジン感受性株もまた、高レベルのトレオニンを産生するために使用されている(日本国特許第53-101591号)。
【0019】
E. coliのボレリジン耐性変異体は、トレオニルtRNA-シンセターゼ活性の変化を同様に示す。より詳細には、ボレリジン耐性E.coliは、以下の特徴の1つを示すことが示されている:(i)構成的に増加したレベルの野生型トレオニルtRNA-シンセターゼ;(ii)構造的に変化されたトレオニルtRNA-シンセターゼ;または(iii)おそらく膜変化による、いくつかの未知の細胞変化(G.NassおよびJ. Thomale, FEBS Lett. 39:182-186 (1974))。しかし、これらの変異体株のいずれもが、L-トレオニンの発酵産生のためには使用されていない。
【0020】
上記の議論を考慮すると、トレオニンのようなアミノ酸を効率的に産生する微生物株について当該技術分野での必要性が残ったままであるが、最先端に関連する問題はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
(発明の要旨)
従って、本発明の目的は、高収量でL-トレオニンを効率的に産生するが、トレオニン生合成酵素をコードする遺伝子を含む任意の組換えプラスミドを必要とせずそして好ましくはアミノ酸栄養要求性を有さない微生物を提供することである。本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の好ましい実施態様の詳細な説明に記載され、そして一部はその記載から明らかでありまたは本発明の実施によって学び得る。本発明のこれらの目的および利点は、本明細書の記載された説明および請求の範囲で特に指摘された方法によって理解され達成される。
【課題を解決するための手段】
【0022】
これらおよび他の目的は本発明の方法によって達成され、これは、第1の実施態様では、L-トレオニンのようなアミノ酸を産生するためのプロセスに関し、これは、培地中でE. coliの株を培養する工程、および培地からアミノ酸を回収する工程を包含する。このプロセスで使用されるE.coliの株は、以下の特徴を有する:(i)非天然プロモーターの制御下の染色体上に、トレオニンオペロン(これはトレオニン生合成酵素をコードする)のようなアミノ酸生合成の遺伝子決定基を含む;および(ii)トレオニンを産生するためのトレオニン生合成酵素をコードする遺伝子を含むいかなる組換えプラスミドも必要としない。
【0023】
本発明の別の実施態様は、上記の特徴を有するE. coliの株の生物学的に純粋な培養物に関する。
【0024】
本発明のさらなる実施態様は、L-トレオニンのようなアミノ酸を産生するプロセスに関し、これは、培地中でE. coliの株を培養する工程、および培地からアミノ酸を回収する工程を包含し、ここでE.coliの株はボレリジンに耐性である。
【0025】
本発明のさらなる実施態様は、トレオニンのようなアミノ酸の発酵産生に有用なE. coliの株を産生する方法に関し、これは、(a)E. coli原栄養性になるようにE. coli栄養要求性の染色体中にアミノ酸産生微生物からの遺伝物質を導入する工程;(b)その発現を制御するためにアミノ酸生合成遺伝子の染色体位置の前の染色体に非天然プロモーターを挿入する工程;および、必要に応じて、(c)染色体からアミノ酸生合成のためのアミノ酸栄養要求性を除去する工程および/または染色体からのアミノ酸生合成に対する妨害を調節する工程、を包含する。
【0026】
上記の一般的説明および以下の詳細な説明の両方が例示的および説明的のみであり、そして請求の範囲として発明のさらなる説明を提供することが意図されることが、理解されるべきである。
【0027】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)L-トレオニンを産生するためのプロセスであって、以下の工程:
(a) 培地中でE.coliの株を培養する工程;および
(b) 該E.coliによって産生されるL-トレオニンを回収する工程;
を包含し、
ここで、該E.coliの株が、
(i) 少なくとも1つの非天然プロモーターと作動可能に連結される少なくとも1つのトレオニン(thr)オペロンを染色体上に含み;そして
(ii)トレオニンを産生するために1つ以上のトレオニン生合成酵素をコードする1つ以上の遺伝子を含む任意の組換えプラスミドを必要としない、
プロセス。
(項目2)前記E. coliが、約30時間で少なくとも約50g/LのL-トレオニンを産生し得る、項目1に記載のプロセス。
(項目3)前記非天然プロモーターが、tacプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、lppプロモーター、Pプロモーター、およびPプロモーターからなる群より選択される、項目1に記載のプロセス。
(項目4)前記トレオニンオペロンが、フィードバック耐性アスパラギン酸キナーゼ−ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含む、項目1に記載のプロセス。
(項目5)前記E. coliがkat-13株である、項目1に記載のプロセス。
(項目6)前記非天然プロモーターがtacプロモーターである、項目3に記載のプロセス。
(項目7)前記E. coliが、染色体上に欠損トレオニンデヒドロゲナーゼ遺伝子を含む、項目1に記載のプロセス。
(項目8)前記トレオニンオペロンが、ATCC 21277から得られる、項目1に記載のプロセス。
(項目9)前記E. coliがボレリジン耐性である、項目1に記載のプロセス。
(項目10)1つ以上のアミノ酸の生合成酵素をコードする組換えプラスミドを有さないE. coliのアミノ酸産生株を産生する方法であって、以下の工程:
(a)E. coli株の染色体にアミノ酸産生微生物からの遺伝物質を導入する工程;
(b) その発現を制御するために、アミノ酸生合成遺伝子の染色体配置の前にそして該遺伝子と作動可能に連結して、該染色体に非天然プロモーターを挿入する工程;および
(c) 必要に応じて、該染色体から、アミノ酸生合成に対する調節妨害物および/またはアミノ酸生合成のための栄養必要物を除去する工程、
を包含する、方法。
(項目11)以下の特徴:
(i) その染色体が、少なくとも1つの非天然プロモーターと作動可能に連結される少なくとも1つのトレオニン(thr)オペロンを含み;そして
(ii) トレオニンを産生するために、1つ以上のトレオニン生合成酵素をコードする1つ以上の遺伝子を含む任意の組換えプラスミドを必要としない、
を有する微生物E. coliの株。
(項目12)前記トレオニンオペロンが、フィードバック耐性アスパラギン酸キナーゼI−ホモセリンデヒドロゲナーゼI遺伝子(thrA)、ホモセリンキナーゼ(thrB)遺伝子、トレオニンシンターゼ遺伝子(thrC)からなる、項目11に記載の株。
(項目13)前記E. coliがkat-13株である、項目11に記載の株。
(項目14)前記非天然プロモーターがtacプロモーターである、項目11に記載の株。
(項目15)前記E. coliが、染色体上に欠損トレオニンデヒドロゲナーゼ遺伝子を含む、項目11に記載の株。
(項目16)前記トレオニンオペロンが、ATCC 21277から得られる、項目11に記載の株。
(項目17)前記E. coliがボレリジン耐性である、項目11に記載の株。
(項目18)前記E. coliがNRRL B-21593株の特徴を有する、項目11に記載の株。
(項目19)L-トレオニンを産生するためのプロセスであって、以下の工程:
(a) 培地中でボレリジン耐性E.coliの株を培養する工程;および
(b) 該E.coliによって産生されるL-トレオニンを回収する工程、
を包含する、プロセス。
(項目20)前記E. coliが、約30時間で少なくとも約50g/LのL-トレオニンを産生し得る、項目19に記載のプロセス。
(項目21)前記E. coliが、少なくとも1つの非天然プロモーターと作動可能に連結される少なくとも1つのトレオニン(thr)オペロンを含む、項目19に記載のプロセス。
(項目22)前記トレオニンオペロンが、フィードバック耐性アスパラギン酸キナーゼ−ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含む、項目21に記載のプロセス。
(項目23)前記E. coliがkat-13株である、項目19に記載のプロセス。
(項目24)前記非天然プロモーターがtacプロモーターである、項目21に記載のプロセス。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、Koharaのλ676およびプラスミドpUC19からのプラスミドpAD103の構築を示す。
【図2】図2は、プラスミドpAD103およびプラスミドpUC4kからのプラスミドpAD106の構築を示す。
【図3】図3は、プラスミドpAD103およびプラスミドpkk223-3からのプラスミドpAD115の構築を示す。
【図4】図4は、プラスミドpAD115およびプラスミドpAD106からのプラスミドpAD123の構築を示す。
【図5】図5は、E.coliの染色体中へのプラスミドpAD123からのプロモーター領域の組込みを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の好ましい実施態様の詳細な説明)
第1の実施態様では、本発明は、アミノ酸の産生のための発酵プロセスで使用され得る新規細菌株に関する。本発明の新規細菌株は以下の特徴を有する:
(i)細胞は、非天然プロモーターの制御下で、染色体上に少なくとも1つのthrオペロン(すなわち、トレオニン生合成酵素をコードする少なくとも1セットの遺伝子)を含む;および
(ii)細胞は、トレオニンを産生するために、トレオニン生合成酵素をコードする任意の組換えプラスミドを必要としない。
【0030】
好ましくは、本発明の株は、約30時間で少なくとも約50g/LのL-トレオニン、より好ましくは約30時間で少なくとも約70g/L、さらにより好ましくは約30時間で少なくとも約80g/L、および最も好ましくは約30時間で少なくとも約90g/Lを産生し得る。好ましくは、本発明の株は、約48時間で少なくとも約90g/L、より好ましくは約48時間で少なくとも約100g/L、および最も好ましくは約48時間で少なくとも約110g/Lのトレオニンを産生し得る。
【0031】
好ましくは、本発明の株は、少なくとも約2g/L/時間、より好ましくは少なくとも約2.5g/L/時間、さらにより好ましくは少なくとも約3g/L/時間、および最も好ましくは少なくとも約3.6g/L/時間の速度でL-トレオニンを産生し得る。
【0032】
特に好ましい実施態様では、新規細菌株はまた、トレオニンの発酵産生のためのアミノ酸栄養要求性を有さない。すなわち、細胞は、増殖およびトレオニン産生にアミノ酸補充を必要としない。
【0033】
本発明に従って、本発明の細菌株は、トレオニン産生のためのトレオニン生合成酵素をコードする1つ以上の遺伝子を含む任意の組換えプラスミドを必要としない。すなわち、この株は、組換えプラスミドに含まれる遺伝子によってコードされる1つ以上のトレオニン生合成酵素を必要とせずにトレオニンを産生し得る。もちろん、本発明の株は、必要に応じて、所望の1つ以上の組換えプラスミドを含み得る。例えば、このようなプラスミドはトレオニン産生に必要とされないが、それにもかかわらず、本発明の株は、トレオニン産生を増加するために、トレオニン生合成酵素をコードする組換えプラスミドを含み得る。本発明の株は、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(asd)のような、トレオニン生合成に関連する他の酵素をコードする組換えプラスミドを同様に含み得る。
【0034】
好ましくは、本発明の細菌株は、Escherichia coliの株である。より好ましくは、本発明の細菌株は、マクロライド抗生物質ボレリジンに対する耐性を示すE. coliの株である。本発明の細菌株の特に好ましい例は、E.coli kat-13株であり、これは、Agricultural Research Service Culture Collection (NRRL),1815 North University Street, Peoria, Illinois 61604, USAに1996年6月28日に寄託され、そして受託番号NRRLB-21593を与えられた。
【0035】
本発明の細菌株の細胞の染色体上のトレオニン(thr)オペロンは、トレオニン生合成に必要な酵素をコードする。好ましくは、トレオニンオペロンは、AK-HD遺伝子(thrAまたはmetL)、ホモセリンキナーゼ遺伝子(thrB)、およびトレオニンシンターゼ遺伝子(thrC)からなる。より好ましくは、thrオペロンは、thrA(AKI-HD I遺伝子)、thrB、およびthrCからなる。適切なthrオペロンは、例えば、E. coli ATCC 21277株およびATCC 21530株から得られ得る。ATCC21277株からのthrオペロンが特に好ましい。複数のコピーのthrオペロンが、染色体上に存在し得る。
【0036】
好ましくは、thrオペロンは、少なくとも1つのアテニュエートされない遺伝子を含む。すなわち、遺伝子の発現は、1つ以上のトレオニン生合成酵素および/またはその産物(例えば、トレオニンおよびイソロイシン)のレベル(細胞外および/または細胞内)によって抑制されない。本発明の株はまた、欠損thrアテニュエーターを含むthrオペロン(転写開始部位の下流および第1の構造遺伝子の上流の調節領域)またはthrアテニュエーターを全く欠くthrオペロンを含み得る。
【0037】
本発明の特に好ましい実施態様では、thrオペロンは、1つ以上のフィードバック耐性トレオニン生合成酵素をコードする。すなわち、酵素の活性は、トレオニン生合成の中間体および産物の細胞外および/または細胞内レベルによって阻害されない。最も好ましくは、thrオペロンは、フィードバック耐性AKI-HD Iのような、フィードバック耐性AK-HDをコードする遺伝子を含む。フィードバック耐性AK-HDの使用は、産生されているL-トレオニンの存在下でさえも、トレオニン生合成のためにより高いレベルの酵素的活性を提供する。
【0038】
本発明の株における1つまたは複数のトレオニンオペロンの発現は、非天然プロモーター、すなわち、天然で通常見られるE. coli細菌株においてthrオペロンの発現を制御しないプロモーターによって制御される。トレオニン生合成酵素の天然プロモーターを、thrオペロンの発現を制御するために強力な非天然プロモーターに置換することは、thrオペロンの単一のゲノムコピーのみを用いても、より高いトレオニン産生を生じる。さらに、非天然プロモーターがトレオニンオペロンの発現を制御するために使用されるので、このより高いトレオニン産生を達成するためにイソロイシンについて細菌株を栄養要求性にする必要がない。適切なプロモーターの例示的な例として、lacプロモーター;trpプロモーター;λバクテリオファージのPプロモーター;Pプロモーター;lppプロモーター;およびtacプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の細菌株における使用に特に好ましいものは、tacプロモーターである。
【0039】
トレオニンオペロンに加えて、本発明の細菌株の細胞中の染色体はまた、好ましくはアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(asd)をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む。最も好ましくは、本発明の細胞中の染色体は、少なくとも1つのasd遺伝子、少なくとも1つのthrA遺伝子、少なくとも1つのthrB遺伝子、および少なくとも1つのthrC遺伝子を含む。染色体は、もちろん、1つ以上のこれらの遺伝子の複数のコピーを含み得る。
【0040】
トレオニンデヒドロゲナーゼ(tdh)は、L-トレオニンのα-アミノ-β-ケトブチレートへの酸化を触媒する。従って、特に好ましい実施態様では、本発明の細胞の染色体は、少なくとも1つの欠損トレオニンデヒドロゲナーゼ(tdh)遺伝子をさらに含む。欠損tdh遺伝子は、トレオニンデヒドロゲナーゼの減少した発現レベルを有する遺伝子、または天然トレオニンデヒドロゲナーゼの活性と比較して減少した酵素的活性を有するトレオニンデヒドロゲナーゼ変異体をコードする遺伝子であり得る。好ましくは、本発明の株で用いられる欠損tdh遺伝子は、トレオニンデヒドロゲナーゼを発現しない。トレオニンデヒドロゲナーゼを発現しない適切なtdh遺伝子の例示的な例として、米国特許第5,175,107号に記載のように、それに挿入されたクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子を有するtdh遺伝子またはそれに挿入されたトランスポゾンTn5を有するtdh遺伝子が挙げられる。
【0041】
本発明の細菌株は、当業者に公知および利用可能な方法および技術のいずれかによって調製され得る。本発明の細菌株を構築するために適切な方法の例示的な例として、NTGのような適切な薬剤を使用する変異誘発;直鎖状DNAフラグメントを形質転換することおよび相同組換えによって媒介される、遺伝子組込み技術;およびバクテリオファージP1によって媒介される形質導入が挙げられる。これらの方法は、当該技術分野で周知であり、そして、例えば、J.H.Miller, Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, New York (1972);J.H. Miller, A Short Course in BacterialGenetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(1992);M. SingerおよびP. Berg, Genes & Genomes, University Science Books, MillValley, California (1991);J. Sambrook, E.F. FritschおよびT. Maniatis, MolecularCloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ColdSpring Harbor, New York (1989);P.B. Kaufmanら, Handbook of Molecular andCellular Methods in Biology and Medicine, CRC Press, Boca Raton, Florida (1995);Methodsin Plant Molecular Biology and Biotechnology, B.R. GlickおよびJ.E. Thompson編, CRCPress, Boca Raton, Florida (1993);およびP.F. Smith-Keary, Molecular Genetics of Escherichiacoli, The Guilford Press, New York, NY (1989)に記載される。
【0042】
本発明の特に好ましい実施態様では、増殖のためにトレオニンを必要とするE. coli 472T23株は、E. coli ATCC 21277株(アメリカンタイプカルチャーコレクション、12301Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, USAから得られ得る)のトレオニンオペロンを導入するためにP1-媒介形質導入を使用してトレオニンプロデューサーに変換され得る。このthrオペロンは、フィードバック耐性アスパラギン酸キナーゼ−ホモセリンデヒドロゲナーゼ遺伝子(thrA)、ホモセリンキナーゼ遺伝子(thrB)、およびトレオニンシンターゼ遺伝子(thrC)からなる。
【0043】
本発明の株におけるトレオニン産生を改良するために、E. coli CGSC6945株(関連遺伝子型:tdh-1::cat1212;E. coli Genetic StockCenter, 355 Osborne Memorial Laboratory, Department of Biology, YaleUniversity, New Haven, Connecticut 06520-8104, USAから得られた)からの欠損トレオニンデヒドロゲナーゼ遺伝子は、P1形質導入によって導入され得る。得られるトレオニンプロデューサーは、NTGで変異誘発することおよび/またはボレリジン耐性について選択することによってさらに改良され得る。
【0044】
kan(カナマイシン耐性をコードする)のような抗生物質耐性マーカー遺伝子、およびPまたはtacのような強力なプロモーター(好ましくは、thrAおよび野生型thrA遺伝子の数百塩基対(すなわち、thrA遺伝子全体ではない)の上流のDNAに隣接する)を有するプラスミドが構築され、そして染色体に所望のDNAフラグメントを送達するためにビヒクルとして使用され得る。プラスミド上のフラグメントは、適切な制限酵素での消化によって単離され、そして精製され、次いで形質転換またはエレクトロポレーションによって株に導入され、トレオニンオペロンの制御領域を除去して所望のフラグメント(すなわち、抗生物質耐性マーカー遺伝子およびthrA遺伝子の始まりでの強力なプロモーター)での相同組換えによって置換され得る。次いで、このフラグメントは、P1形質導入によってボレリジン耐性株に移入され得る。
【0045】
好ましい宿主の株(472T23)のイソロイシン要求性は、例えば、P1形質導入を介してマーカーの野生型対立遺伝子を導入することによって、排除され得る。他の宿主の望ましくない栄養要求性は、類似の方法でまたは当業者に公知および利用可能な他の方法に従って除去され得る。
【0046】
本発明の第2の実施態様は、アスパラギン酸ファミリーのアミノ酸の産生のための発酵プロセスにおける上記の細菌株の使用に関する。例えば、L-トレオニンは、少なくとも1つの炭素供給源、少なくとも1つの窒素供給源、および適宜、無機塩、増殖因子などを含む合成または天然の培地中で、本発明の細菌株を培養することによって得られる。
【0047】
適切な炭素供給源の例示的な例として、炭水化物(例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、スターチ加水分解物、セルロース加水分解物、および糖蜜);有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ギ酸、リンゴ酸、クエン酸、およびフマル酸);およびアルコール(例えば、グリセロール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
適切な窒素源の例示的な例として、アンモニア(アンモニアガスおよびアンモニア水溶液を含む);無機または有機酸のアンモニウム塩(例えば、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、および酢酸アンモニウム);および他の窒素含有物(肉エキス、ペプトン、コーン浸出液、カゼイン加水分解物、ダイズケーキ加水分解物、および酵母エキスを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
培養後、培養ブロス中に蓄積されたL-トレオニンは、公知の方法のいずれかに従って、例えば、米国特許第5,342,766号に記載されるようなイオン交換樹脂の使用によって、分離され得る。この方法は、最初に遠心分離によって培養ブロスから微生物を除去する工程、および次に塩酸を使用してブロスのpHを約2に調節する工程を包含する。酸性化した溶液を、続いて強い酸性カチオン交換樹脂に通し、そして吸着剤を希釈アンモニア水溶液を使用して溶出する。アンモニアを、真空下でのエバポレーションによって除去し、そして得られる溶液を濃縮する。アルコールの添加およびその後の冷却によってL-トレオニンの結晶を得る。
【0050】
アスパラギン酸ファミリーの他のアミノ酸は、上の詳細に記載された方法と類似の方法によって産生され得る。例えば、イソロイシンは、染色体上またはプラスミド上に、増幅されたilvA遺伝子またはtdc遺伝子(その両方とも、トレオニンのイソロイシンへの生物変換に関連する最初の酵素であるトレオニンデアミナーゼをコードする)を含む本発明の細菌株から調製され得る。例えば、フィードバック耐性酵素をコードするilvA遺伝子の使用によるこの遺伝子の増幅は、イソロイシンの生合成を増加させる。
【0051】
同様に、メチオニンは、染色体上に少なくとも1つのmetオペロン(すなわち、metL遺伝子(AK II-HD IIをコードする)、metA遺伝子(ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ)、metB遺伝子(シスタチオニンγ-シンターゼ)、metC遺伝子(シスタチオニンβ-リアーゼ)、ならびにmetEおよびmetH遺伝子(ホモシステインメチラーゼ))を含むE.coliのような微生物によって調製され得る。これらの遺伝子(そのフィードバック耐性改変体を含む)および必要に応じて非天然プロモーターは、上記のおよび/または当業者に公知の1つ以上の一般的な方法に従って宿主微生物の染色体に導入され得る。同様に、リジンは、リジン生合成酵素(好ましくは、lysCおよび/またはdapAによってコードされるフィードバック耐性リジン生合成酵素)、および必要に応じて非天然プロモーターをコードする遺伝子を含む微生物によって調製され得る。
【0052】
本発明の第3の実施態様は、L-トレオニンの産生のための発酵プロセスにおけるボレリジン耐性細菌株の使用に関する。好ましくは、ボレリジン耐性株は、E. coli株の変異体である。このような変異体の特に好ましい実施態様は、E.colikat-13株であり、これはAgricultural Research Service Culture Collection (NRRL), 1815North University Street, Peoria, Illinois 61604, USAに1996年6月28日に寄託され、そして受託番号NRRLB-21593が与えられた。
【0053】
ボレリジン耐性は、当業者に公知の任意の利用可能な方法によって決定され得る。例えば、ボレリジン耐性株は、G. NassおよびJ. Thomale, FEBS Lett. 39:182-186 (1974)に記載のように、約139μM ボレリジンを含む最少培地に候補株をプレーティングすることによって単離され得る。さらに、ある株におけるボレリジン耐性は、細胞の1つ以上の表現型特徴の変化として現れる。例えば、E.coli株6-8およびその誘導体のボレリジン耐性変異体は、桿状よりもむしろ円形のようである。このような場合では、表現型特徴の変化の証拠は、ボレリジン耐性株を適切に同定するために十分であり得る。
【0054】
本発明のこの実施態様に有用なボレリジン耐性変異体は、トレオニンを産生し得る。トレオニン生合成酵素をコードする遺伝子は、染色体上に存在し得るかまたはプラスミドもしくはその混合物に含まれ得る。これらの遺伝子の複数コピーもまた存在し得る。好ましくは、トレオニン生合成酵素をコードする遺伝子は、アテニュエーション制御に耐性であり、および/またはフィードバック耐性酵素をコードする。
【0055】
上記のように、本発明のボレリジン耐性株は、所望のように1つ以上の組換えプラスミドを含み得る。例えば、本発明の微生物は、トレオニン生合成酵素をコードする組換えプラスミドを含み得る。本発明の細菌株は、同様に、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(asd)または増殖を増大させるための酵素のような、トレオニン生合成に関連する他の酵素をコードする組換えプラスミドを含み得る。
【0056】
さらに、当業者に公知および利用可能な任意の方法および技術を使用して、例えば、トレオニン産生を増加させる、栄養要求性を除去するなどのために、ボレリジン耐性株は所望のように改変され得る。ボレリジン耐性E. coli変異体および改変体を改変するために適切な方法の例示的な例として:紫外線もしくはX線での照射による、またはニトロソグアニジン(N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン)、メチルメタンスルホネート、ナイトロジェンマスタードなどのような化学的変異原での処理による変異誘発;直鎖状DNAフラグメントおよび相同組換えを形質転換することによって媒介されるような遺伝子組込み技術;およびP1のようなバクテリオファージによって媒介される形質導入が挙げられるが、これらに限定されない。これらの方法は、当該技術分野で周知であり、そして、例えば、J.H.Miller, Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, New York (1972);J.H. Miller, A Short Course in BacterialGenetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(1992);M. SingerおよびP. Berg, Genes & Genomes, University Science Books, MillValley, California (1991);J. Sambrook, E.F. FritschおよびT. Maniatis, MolecularCloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ColdSpring Harbor, New York (1989);P.B. Kaufmanら, Handbook of Molecular andCellular Methods in Biology and Medicine, CRC Press, Baca Raton, Florida (1995);Methodsin Plant Molecular Biology and Biotechnology, B.R. GlickおよびJ.E. Thompson編, CRCPress, Boca Raton, Florida (1993);およびP.F. Smith-Keary, Molecular Genetics ofEscherichia coli, The Guilford Press, New York, NY (1989)に記載される。
【0057】
好ましくは、本発明のボレリジン耐性変異体は、これらの遺伝子が染色体上にあるかおよび/またはプラスミドに含まれるかどうかにかかわりなく、トレオニン生合成酵素をコードする1つ以上の遺伝子の上流に、およびその遺伝子への作動可能な連結で、非天然プロモーターを含むように改変される。
【0058】
本発明のこの実施態様の特に好ましい態様に従って、L-トレオニンは、上記のように、少なくとも1つの炭素供給源、少なくとも1つの窒素供給源、および適宜、無機塩、増殖因子などを含む合成または天然の培地中で、少なくとも1つのボレリジン耐性細菌株を培養することによって得られる。蓄積されたトレオニンは、当業者に公知の任意の方法によって回収され得る。
【実施例】
【0059】
以下の実施例は、例示するのみであって、添付の請求の範囲に定義されるように本発明の範囲を限定することを意図しない。種々の改変および変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明の方法で作成され得ることは、当業者に明らかである。従って、本発明が、添付の請求の範囲およびその等価物の範囲内であるならば、本発明の改変および変更を網羅することが意図される。
【0060】
本明細書中で言及されるすべての特許および刊行物は、特に、参考として援用される。
【0061】
実施例1:E.coli kat-13株の調製
A.E.coli 472T23株の染色体へのE. coli ATCC 21277株のトレオニンオペロンの転移
アメリカンタイプカルチャーコレクション、12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, USAから入手可能なE. coli ATCC21277株(米国特許第3,580,810号)は、アミノ-β-ヒドロキシ吉草酸(AHV)耐性であるが、最少培地中で増殖するためにプロリン、チアミン、イソロイシン、メチオニンを必要とする。ATCC21277は、発酵プロセスにおいて6.20g/Lのトレオニンを蓄積すると報告されている。ATCC 21277のトレオニンオペロンは、フィードバック耐性酵素をコードするアスパラギン酸キナーゼI−ホモセリンデヒドロゲナーゼI遺伝子(thrA)、ホモセリンキナーゼ遺伝子(thrB)、およびトレオニンシンターゼ遺伝子(thrC)からなる。
【0062】
登録番号BKIIMB-2307としてUSSR Antibiotics Research InstituteでのUSSR Collection of CommercialMicroorganismsに寄託される、E. coli 472T23株は、グルコース、アンモニア、ビタミンB1、およびミネラル塩を含む最少培地中で増殖するためにトレオニンおよびイソロイシンを必要とすると報告される。この株は、トレオニン生合成に必須な遺伝子である欠損thrC遺伝子を有するので、トレオニンを産生し得ない。472T23株はまた、イソロイシン生合成における最初の酵素をコードする欠損トレオニンデアミナーゼ遺伝子ilvAを有する。
【0063】
バクテリオファージP1溶解物を、ATCC 21277でファージを増殖することによって調製した。次いで、472T23株を、その中に少数のファージ粒子がATCC21277のトレオニンオペロンを有するこのP1溶解物で感染させた。感染後、トレオニンを合成する細菌を、0.25g/Lのイソロイシンを補充した最少培地E[グルコース0.05g/L;MgSO・7HO0.2g/L;クエン酸・HO 2.0g/L;KHPO 10.0g/L;NaHNHPO・4HO3.5g/L;寒天15.0g/L]寒天プレート上に播種することによって選択した。ATCC 21277のトレオニンオペロンを有するいくつかのトレオニン原栄養性形質導入体は、現在、イソロイシンのみを補充した最少プレート中で増殖し得た。
【0064】
これらの形質導入体を、以下の実施例2に記載されるように、トレオニン産生のために振盪フラスコ発酵によってスクリーニングした。トレオニンを産生するこれらの1つであるG9を、さらなる株の開発のために選択した。
【0065】
B.E.coli G9株の染色体へのクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子とともに挿入された欠損トレオニンデヒドロゲナーゼ(tdh)遺伝子の導入
欠損トレオニンデヒドロゲナーゼ遺伝子(tdh)を有するCGSC6945株を、E. coli Genetic Stock Center, 355Osborne Memorial Laboratory, Department of Biology, Yale University, New Haven,Connecticut 06520-8104, USAから得た。トレオニンデヒドロゲナーゼ遺伝子は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子がこれに挿入されるので、欠損性である。この欠損遺伝子をG9に転移するために、P1ファージをCSCG6945で増殖し、そして溶解物をG9を感染させるために使用した。G9のいくつかのクロラムフェニコール耐性形質導入体を選択し、そして以下の実施例2に記載されるように振盪フラスコ発酵でトレオニン産生について選択およびスクリーニングした。G9よりも高いトレオニン力価を有するこれらの1つであるG909を、さらなる開発のために選択した。
【0066】
C.E.coli G909株の染色体への非天然プロモーターの挿入
G909の染色体へtacプロモーターを送達するために、線状DNAフラグメントとエキソヌクレアーゼVマイナス株(recD)の染色体との間の相同組換えを用いた。
【0067】
線状DNAフラグメントは、トレオニンオペロンの上流(5'末端)の1.5kbの配列、カナマイシン耐性マーカー、tacプロモーター配列、および約480bpのthrA遺伝子を含んだ。それぞれ、5'末端相同性、選択マーカー(カナマイシン耐性)、トレオニンオペロン(tac)への強力および制御可能なプロモーター、ならびに3'末端相同性を提供するこのフラグメントを、以下のように生成した。
【0068】
野生型E.coli W3110のトレオニンオペロンを、Dr. Yuju Kohara, Department of Molecular Biology, Schoolof Science, Nagoya University, Chikusa-ku, Nagoya, Japanからのλクローン676のDNAを使用することによって、プラスミドpUC19の制限酵素SphI部位へクローニングした。次いで、λクローン676およびpUC19のDNAを、SphIで消化した。続いて、pUC19フラグメントを、エビアルカリホスファターゼ(SAP)で脱リン酸化し、そしてアガロースゲル精製した。λクローンからのトレオニンオペロンの6.9kbフラグメントもまた精製した。続いて、これらの2つのフラグメントを、T4DNAリガーゼによって連結し、プラスミドpAD103を生成した。
【0069】
次いで、相同組換えおよびカナマイシン耐性マーカーについての上流隣接領域を構築した。pAD103を、制限酵素BstEII、XbaIで消化し、クレノウフラグメント処理で平滑末端にした。トレオニンオペロンの5'末端(上流)のみ(しかしthrオペロン自体でもその制御領域でもない)を含む1.5kbフラグメントを単離し、そしてpUC4K(Pharmacia)からのカナマイシン耐性遺伝子のフラグメントに連結し、これを、制限酵素SalIで消化し、そして3'突出を満たすようにクレノウフラグメント処理し、中間体プラスミドpAD106を生成した。
【0070】
pAD103もまた制限酵素TaqIで消化し、そしてクレノウフラグメント処理で平滑末端にした。天然リボソーム結合部位およびthrA遺伝子の約480bpのコード配列を含むフラグメントを単離し、次いでpKK233-3(Pharmacia)のフラグメントに連結した。これは、プラスミドpAD115を得るために制限酵素SmaIで消化およびSAPで脱リン酸化され、tacプロモーターのDNA配列、リボソーム結合部位、および数百塩基のthrA遺伝子を含んでいる。
【0071】
続いて、pAD115を制限酵素BamHiで消化し、そして所望のDNA配列を含む0.75kbのDNAフラグメントを単離した。pAD106もまたBamHIで消化し、次いでSAPで脱リン酸化した。次いで、2つのフラグメントを連結してプラスミドpAD123を提供した。これは、トレオニンオペロンの上流のDNA配列、カナマイシン耐性マーカー遺伝子、tacプロモーター、およびthrA遺伝子の始めの約480bpを含んだ。
【0072】
次いで、pAD123をSpeI、BglIで消化し、そして所望のDNA配列を含むフラグメントを単離した。
【0073】
エキソヌクレアーゼVマイナス株(recD)を、argA中の同時形質導入可能なトランスポゾンTn10挿入とともにrecD遺伝子を含むE. coli KW251株(関連遺伝子型:argA81::Tn10,recD1014;Pharmaciaから得られた)でP1ファージを増殖することによって調製した。次いで、ファージから調製された溶解物を使用して、G9株を感染させ、そしてテトラサイクリン耐性形質導入体G9T7を単離した。
【0074】
プラスミドpAD123からのDNAフラグメントを、エレクトロポレーションによってE.coli G9T7株へ送達した。G9T7のカナマイシン耐性株を単離し、そしてP1ファージ溶解物を、この株でファージを増殖することによって作成した。次いで、P1ファージ溶解物を使用して、G909を形質導入した。G909のカナマイシン耐性形質導入体の1つであるtac3は、振盪フラスコ研究においてIPTGの存在下でより高いトレオニン力価を示し、これを単離した。
【0075】
続いて、P1ファージ溶解物をtac3株で調製し、次いで6-8株を感染させるために使用した(以下に記載される)。カナマイシン耐性形質導入体を選択し、そしてそれらの1つである6-8tac3株(これは、振盪フラスコ研究でtac3よりもさらに高い力価を生じた)を単離した。
【0076】
D.E.coli G909株および6-8からのNTG変異誘発ならびにボレリジン耐性変異体の単離
G909株の細胞を、従来の方法を使用してN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)処理(50mg/L、30分、36℃)によって変異誘発した。次いで、得られる細胞を、0.25g/LのL-イソロイシンおよび0.1%v/vのボレリジンを含む最少培地E寒天プレート上に播種した。36℃にて3〜5日間のインキュベーション後、6-8株を含む、プレート上に形成した大きなコロニーを、ボレリジン耐性およびL-トレオニン産生の試験のために選択した。
【0077】
ボレリジン耐性について試験するために、各株を、20mlの種培地SM[32.5g/Lグルコース;1g/L MgSO・7HO;24.36g/LKHPO;9.52g/L KHPO;5g/L (NH)SO;15g/L酵母エキス;pH7.2]中で36℃にて17時間振盪しながら培養した。細胞を回収し、そして最少培地Eで洗浄した。次いで、細胞懸濁液を、3mlの最少培地Eおよび0、0.1、0.5、または1mMボレリジンを含む滅菌管に接種した。振盪しながら36℃にて24時間の培養後、増殖を660nmでの吸光度を測定することによって決定した。結果を、ボレリジンの非存在下での増殖と比較して以下に示す。
【0078】
【表1】

E.イソロイシン要求性およびラクトースリプレッサー遺伝子(lacI)の除去
非天然tacプロモーターおよびフィードバック耐性thrA遺伝子を導入することによって、thrオペロン(thrA、thrB、thrC)の発現は、もはやアテニュエーション機構によって制御されない。結果として、イソロイシンの枯渇および/またはilvA栄養要求性マーカーの存在は、もはやトレオニン産生を必要としない。
【0079】
従って、野生型ilvAマーカーを、株のイソロイシン要求性を固定するために、すなわち、細胞増殖のためのイソロイシン補充培地の必要性を排除するために、6-8tac3への形質導入によって導入した。CGSC7334(関連遺伝子型:lacI42::Tn10,lacZU118;E. coli Genetic Stock Center, 355 Osborne Memorial Laboratory,Department of Biology, Yale University, New Haven, Connecticut 06520-8104, USAから得られた)から作成されたP1ファージ溶解物を使用して6-8tac3を感染させ、そしてイソロイシン生合成にポジティブな形質導入体を選択した。これらの形質導入体は、振盪フラスコ研究で、6-8tac3株とほぼ同じ量のL-トレオニンを産生した。これらの形質導入体の1つである6-8tac3ile+を、さらなる開発のために選択した。
【0080】
6-8tac3ileのトレオニンオペロンがtacプロモーターの制御下にあるので、イソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)は、thrオペロンを完全に発現するために細胞を誘導することが必要であった。しかし、thrオペロンの発現を誘導するためのIPTGの使用は、本発明の方法ではあまり好ましくない。
【0081】
従って、この不必要な調節障害を排除するために、欠損lacリプレッサー(lacI)遺伝子を、CGSC7334から作成したP1ファージでの6-8tac3ile+の感染によって導入する。得られた形質導入体(6-8tac3lacI-)を、テトラサイクリンに対する耐性について試験し、そしてテトラサイクリン耐性コロニーを選択した。
【0082】
実施例2:トレオニン産生の振盪フラスコ発酵研究
種々のE.coli株間のトレオニン産生の比較を、振盪フラスコ発酵におけるそれらの性能によって決定した。試験した株をLB寒天培地[10g/Lのトリプトン、5g/Lのエキス、15g/L寒天]上で増殖した。1〜2日の増殖後、細胞をpH7.2での5mlの種培地[デキストロース32.5g/L;KHPO 24.35g/L;KHPO9.5g/L;酵母エキス15g/L;(NH)SO 5g/L;MgSO・7HO1g/L]に懸濁した。種を、37℃にて250rpmの撹拌速度で24時間増殖した。次いで、15mlの発酵培地[デキストロース 40g/L;酵母エキス2g/L;クエン酸2g/L;(NH)SO 25g/L;MgSO・7HO2.8g/L;CaCO3 20g/L;微量金属溶液2mL]をpH7.2で種に添加し、そして発酵プロセスを250rpmの撹拌速度で37℃にて行った。培養後、培養ブロス中に蓄積したL-トレオニンの量をHPLC(ISCOModel 2353ポンプ、Rainin Model RI-1屈折インデックス検出器、およびaminex Hp87-CAカラム)によって分析した。
【0083】
試験した株のそれぞれによって産生されたL-トレオニンの量を以下に示す。
【0084】
【表2】

実施例3:発酵研究
本発明のE.coli株およびその前駆体株を、発酵によるL-トレオニン産生について試験した。
【0085】
G909を、以下の条件下で試験した。2Lの遮断振盪フラスコ中の30g/Lのトリプシン処理ダイズブロスおよび5g/Lの酵母エキスを含む0.5Lの水性培養培地を1.5mLのG909で接種し、そして35℃および200rpmにて8.5時間振盪器でインキュベートした。0.9mL(0.03%)の成熟接種物を、3.0Lの種発酵培地[10g/Ld.s.のコーン浸出液、0.4g/LのL-イソロイシン、2.5g/LのKHPO、2.0g/LのMgSO・7HO、0.5g/Lの(NH)SO、0.192g/Lの無水クエン酸、0.03g/LのFeSO・7HO、0.021g/LのMnSO・HO、および80g/Lのデキストロース]を含むガラス発酵槽に添加した。インキュベーションを、以下の条件下で行った:最初の18時間は39℃、次いで継続中は37℃の温度;6.9のpH(NHOHの添加によって維持した);3.5LPMの空気流;最初に500rpmの撹拌、次いでこれを20%でDOを維持するように増加した;ならびに1〜2psiの逆圧。種発酵段階の完了を、デキストロースの枯渇によって決定した。種発酵槽からの315mL(15%)の成熟接種物を、以下を除く上述と同じ培地(主発酵培地)を含むガラス発酵槽に添加した:容量は2.1Lでありそして0.34g/LのL-イソロイシンを添加した。インキュベーションを、以下の条件下で48時間行った:37℃の温度;6.9のpH(NHOHで維持した);20時間まで3.5LPMの空気流、次いで4.0LPMまで増加した;最初に500rpmの撹拌、次いでこれを20%でDOを維持するように増加した;1〜2psiの逆圧;ならびに10g/Lのデキストロースレベル(50%w/wデキストロース溶液を供給することによって維持した)。発酵を48時間後に終了した。G909は以下の結果を生じた:274gの総生産性および23.2%の収率での62.3g/Lのトレオニンの最終力価。
【0086】
tac3を、以下を除く上記のG909と同じ条件下で試験した:1mg/LのIPTGを主発酵段階の開始で添加した。IPTGの添加で、tac3は、355gの総生産性および28.8%の収率での85.7g/Lのトレオニンの最終力価を生じた。
【0087】
6-8を、上記のG909と同じ条件下で試験した。6-8は以下の結果を生じた:290gの総生産性および28.3%の収率での74.1g/Lのトレオニンの最終力価。
【0088】
6-8tac3を、IPTGの添加を含む、上記のtac3と同じ条件下で試験した。6-8tac3は以下の結果を生じた:421gの総生産性および35.1%の収率での99.3g/Lのトレオニンの最終力価。
【0089】
6-8tac3ile+を、以下を除く上記の6-8tac3と同じ条件下で試験した:種発酵段階または主発酵段階のいずれかでL-イソロイシンを必要としなかった。22.5時間では撹拌不足のため、22時間での力価のみを記録した(62g/Lトレオニン)。
【0090】
kat-13を、以下を除く上記の6-8tac3と同じ条件下で試験した:IPTGを添加しなかった。これらの条件下で、kat-13は、445gの総生産性および33.1%の収率での102g/Lのトレオニンの最終力価を生じた。
【0091】
構築された株の関連遺伝子型、トレオニンの発酵的産生に必要とされる補充物、および記録された力価を、以下の表に示す:
【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

(Escherichia coli kat−13株)
シンガポール
出願人は、微生物の試料の分譲は、専門家に対してのみ行うことを要求できる。その旨の請求は、国際出願の公開のための技術的な準備が完了する前に、出願人により国際事務局へ提出されなければならない。
【0094】
ノルウェー
出願人はここにおいて、出願が(ノルウェー特許庁により)公開に付されるかあるいは公開を経ずにノルウェー特許庁による決定を受けるまでは、サンプルの供 与は当該技術の専門家に対してのみ行われる旨を、請求する。この旨の請求は、ノルウェー特許法第22条および第33条(3)に基づき出願が公に利用可能にされる時点以前に、出願人によりノルウェー特許庁に対してなされるものとする。そのような請求が出願人によりなされた場合は、第三者によるサンプルの供与 のいかなる請求においても、利用される専門家を表示するものとする。専門家は、ノルウェー特許庁により作成された公認専門家のリスト(listof recognized experts)に記載された任意の者か、あるいは、個々の場合において出願人により承認された任意の者であり得る。
【0095】
オーストラリア
出願人はここにおいて、微生物のサンプルの供与は、特許の付与前において、あるいは出願の放棄(lapsing)、拒絶あるいは取り下げ前において、発明 に対し利害関係を有さない当業者である対象者(skilledaddressee)に対してのみ行われる旨を、告知するものである(オーストラリア国特許法第3.25(3)号規定)。
【0096】
フィンランド
出願人はここにおいて、出願が(特許および統制委員会(National Board of Patents and Regulations)により)公開に付されるかあるいは公開を経ずに国立特許および法規委員会による決定を受けるまでは、サンプルの供与は当該技術の専門家に対してのみ行われる旨を、請求する。
【0097】
アイスランド
出願人は、(アイスランド特許庁により)出願公開されるまで、または公開されることなくアイスランド特許庁により最終決定がされるまでは、試料の分譲は、当該技術に対してのみ行うことを要求することができる。
【0098】
(Escherichia coli kat−13株)
デンマーク
出願人はここにおいて、出願が(デンマーク特許庁により)公開に付されるかあるいは公開を経ずにデンマーク特許庁による決定を受けるまでは、サンプルの供 与は当該技術の専門家に対してのみ行われる旨を、請求する。この旨の請求は、デンマーク特許法第22条および第33条(3)に基づき出願が公に利用可能にされる時点以前に、出願人によりデンマーク特許庁に対してなされるものとする。そのような請求が出願人によりなされた場合は、第三者によるサンプルの供与 のいかなる請求においても、利用される専門家を表示するものとする。専門家は、デンマーク特許庁により作成された公認専門家のリスト(listof recognized experts)に記載された任意の者か、あるいは、個々の場合において出願人により承認された任意の者であり得る。
【0099】
スウェーデン
出願人はここにおいて、出願が(スウェーデン特許庁により)公開に付されるかあるいは公開を経ずにスウェーデン特許庁による決定を受けるまでは、サンプル の供与は当該技術の専門家に対してのみ行われる旨を、請求する。この旨の請求は、優先日から16ヶ月が経過するよりも前に、出願人により国際事務局に対してなされるものとする(好ましくはPCT Applicant’s GuideのVolume Iのannex Zに記載された書式PCT/RO/134による)。そのような請求が出願人によりなされた場合は、第三者によるサンプルの供与のいかなる請求においても、利用される専門家を表示するものとする。専門家は、スウェーデン特許庁により作成された公認専門家のリスト(list of recognized experts)に記載された任意の者か、あるいは、個々の場合において出願人により承認された任意の者であり得る。
【0100】
英国
出願人はここにおいて、微生物のサンプルの供与は専門家に対してのみ利用可能にされる旨を、請求する。この旨の請求は、出願の国際公表のための規則上の準備が完了する前に、出願人により国際事務局に対してなされなければならない。
【0101】
オランダ
出願人はここにおいて、オランダ特許の発行日まで、あるいは出願が拒絶、取り下げあるいは放棄(lapsed)される日までは、特許法31F(1)の規定 に基づき、微生物は専門家へのサンプル供与の形でのみ行われる旨を、請求する。この旨の請求は、オランダ王国特許法の第22C条または第25条に基づき出願が公に利用可能にされる日のうちいずれか早い方の日付よりも前に、出願人によりオランダ工業所有権局に対して提出されるものとする。
【0102】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−70752(P2012−70752A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−262728(P2011−262728)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願平10−509111の分割
【原出願日】平成9年7月30日(1997.7.30)
【出願人】(501183976)アーカー−ダニエルズ−ミッドランド カンパニー (12)
【Fターム(参考)】