HVAC制御システムおよび方法
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、 (a)当該ビル用の初期熱モデルを開発し、時間の経過とともに当該熱モデルを継続的に更新する工程と、(b)当該熱モデルを利用して、当該ビルの1日のHVAC稼働プランを継続的に開発する工程と、(c)現時点のHVAC稼働プランを継続的に検査し、当該現時点のHVAC稼働プランによって現時点のHVAC稼働状況を最適化する工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビルの効率的な暖房、換気、および空調(HVAC)システムおよび方法に関する。とりわけ、本発明は、ビルで使用される、より効率的な温度調節システムを提供する。
【背景技術】
【0002】
暖房、換気、および空調(HVAC)システムの設置が広く普及したことで、ビルの設計・形態の自由度(融通性)は著しく高まってきた。厳しい気候条件のもとでも快適な屋内環境がもたらされ、熱的性能の悪いビルでも居住に適したものにできるようになった。とはいえ、こうした自由度にはコストがかかってくる。たとえばオーストラリアでは、一般的にHVACが商業ビルのエネルギー利用の60パーセント以上を占め(Australian Greenhouse Office, 1999)、温室効果ガスの排出に大きく寄与し、配電網の整備を強く推進している。
【0003】
最適なHVAC制御戦略に向けて、現在かなりの調査が実施されている。こうした調査では、快適性、配電網の相互作用、温室効果ガス排出といった側面が、個別にではあるが、考慮されてきた。たとえば、Braun et al. (1990, 2001) ではエネルギー負荷成形用のビルの熱質量の利用が研究されており、Eto (2007) では配電網に運転予備電力を提供する空調の利用が例示されている。また、Fanger (19617) によって熱的快適性に関する調査が始められ、最近になって熱的快適性が生産性にもたらす効果がSeppaenen et al. (2006) によって研究されている。温室効果ガスの排出は一般的に包括的省エネ戦略の一環として行われてきたが、電熱併給システム(たとえばWhite and Ward (2006))によって廃熱および代替燃料を利用した排出量の削減も図られている。
【0004】
HVAC制御システムでは、一般的に商業ビル全体の制御設定値として温度が利用されている。バルブ・ダンパ位置、ファン回転速度等を含め、HVAC設備は所定の設定温度を得るために制御される。一般にこの設定温度は固定であるが、最新技術のHVACシステムでは、負荷制限要求に基づいて温度を変化させることもできる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、多くの望ましい特徴を有する改良型のHVAC制御システムを提供することである。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法が提供され、当該方法は、(a)当該ビル用の初期熱モデルを開発し、時間の経過とともに当該熱モデルを継続的に更新する工程と、(b)当該熱モデルを利用して、当該ビルの1日のHVAC稼働プランを継続的に開発する工程と、(c)現時点のHVAC稼働プランを継続的に検査し、このプランによって現時点のHVAC稼働状況を最適化する工程とを備える。
【0007】
前記熱モデルは当該ビルの過去の熱データに適合させた一連のパラメータを利用する。前記熱モデルは区分的多項式モデルである。前記初期熱モデルは実質的に毎日繰り返し更新される。1日の稼働プランは、ユーザの快適性、消費電力および電力コストを含む演算子選択肢の組み合わせを最適化したものである。稼働プランを駆動する演算子選択肢以外に外部からの入力として、電気の価格データ、気象予報、および居住者の快適満足度データがある。1日のHVAC稼働プランは実質的に5分ごとに再計算される。現時点のHVAC稼働プランによるHVAC稼働状況の前記最適化は、実質的に10秒ごとに試みられる。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法が提供され、当該方法は、(a)当該ビル用の熱モデルを決定する工程と、(b)当該ビルのユーザ用予想人体快適性モデルを決定する工程と、(c)当該予想人体快適性モデルを当該ビルのHVAC稼働プランの計算における主要因として利用する工程とを備える。
【0009】
前記人体快適性モデルは、商業ビルのユーザによるデータフィードバックによって、商業ビルのユーザの個人用快適データで増強される。前記人体快適性モデルはASHRAE標準快適性モデルから導き出される。
【0010】
一の実施の形態における熱モデルは以下の式を有する。
ここで、Tint(z)は、平均ビル内部温度を表し、Tamb(z)は、周囲温度を表し、Pcool(z)は、HVAC冷房消費電力を表す。
【0011】
PcoolTypは、標準的なHVAC冷房消費電力を表し、数式(1)では、他のパラメータとほぼ同じ範囲におけるパラメータFPcool(z)の大きさを得るためのスケーリングファクターとして用いられ、また、さまざまなビル管理システムの操作を可能にする正規化機構を提供する――これは最適化制約に関してとりわけ重要である。
【0012】
Pheat(z)は、HVAC暖房消費電力を表す。
【0013】
PheatTypは、標準的なHVAC暖房消費電力を表し、数式(1)では、他のパラメータとほぼ同じ範囲におけるパラメータFPheat(z)の大きさを得るためのスケーリングファクターとして用いられ、また、さまざまなビル管理システムの操作を可能にする正規化機構を提供する――これは最適化制約に関してとりわけ重要である。
【0014】
Famb(z)は、周囲温度に対するビル内部温度を取る。
【0015】
FPcool(z)は、HVAC冷房能力に対するビル内部温度を取る。
【0016】
FPheat(z)は、HVAC暖房能力に対するビル内部温度を取る。
【0017】
B(z),“基準”は、Famb(z),FPcool(z)およびFPheat(z)以外の係数を取る。
【0018】
“10”は、他のパラメータとほぼ同じ範囲におけるパラメータFPcool(z)の大きさを得るためのスケーリングファクターであり、この数字は、任意選択である。
【0019】
他の実施の形態によれば、当該熱モデルは実質的に以下の式を有する。
【0020】
理想的には、ΔTSSは、以下の式で表される。
【0021】
上記好ましい形態では、基準関数は曜日によって変化する。より好ましくは、基準関数は1日のうちの特定固定点において推定される三角基底関数の組み合わせによって形成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面によって、明白となる。
【図1】HVACシステムの動作環境を示す概略図である。
【図2】実施の形態のOpticoolシステムの概略ブロック図を示す。
【図3】商業ビルモデル開発の機能を模式的に例示する。
【図4】快適性に基づくゾーン制御を模式的に例示する。
【図5】あるゾーンの熱快適性モデリング用のインターフェイスの一例を示す。
【図6】商業ビルの熱的挙動をモデル化する熱モデリングループを例示する。
【図7】商業ビルの電力プランニングループを例示する。
【図8】温度調節ループを例示する。
【図9】商業ビルゾーン温度のモデル化の結果を例示する。
【図10】本発明の一の実施の形態のビルモデルの基準関数作成に使用される三角基底関数を例示する。
【図11】ビルモデルの全日の基準関数作成に使用される12の三角基底関数を例示する。
【図12】暖房能力パラメータと冷房能力パラメータとの関係の一例を示す。
【図13】実際の測定温度と予測された周囲温度を合成するプロセスを例示する。
【図14】オーストラリア商業ビルでの燃料使用率を種類ごとに示す。
【図15】燃料価格の内訳用グラフィカルユーザインタフェースの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を一例として説明する。
【0024】
本実施の形態では、システムのための基本の設定値が温度ではなく人体快適性(PMV(予測平均温冷感申告:快適性指標))である制御システムが提供される。本実施の形態では、人間の快適性の目標が最初に設定され、その目標ゾーン温度をはじめ、バルブ・ダンパ位置、ファン回転速度等の設備パラメータが、快適設定値を達成できるよう制御される。この点で、温度に基づく設定値スキームに依存する先行技術と対照的である。たとえば、同じ快適設定値を達成する一定範囲のさまざまな温度が考えられる。成果の点で言えば、基本的な制御パラメータとして人体快適性を用いることによって、ある特定レベルの人体快適性を維持しながら、著しいエネルギーおよびコスト節減を実現できる。
【0025】
また、本実施の形態のシステムは、商業ビルの熱モデルを継続的に更新するシステムおよび方法を提供する。本実施の形態は、商業ビルの継続的に調整可能な熱モデルに依存している。本実施の形態では、制御システムが継続的に熱モデルおよび快適性モデルを再学習し、続いて商業ビルの挙動を一定の間隔で再計画する。一の例示的な実施の形態では、以下のような計画された工程が実施される。
【0026】
1日に1度、システムは過去の性能データを利用して、商業ビルの熱モデルを学習する。このモデルでは、1日のうちの時間と曜日が特別に考慮されるため、生成される熱モデルが1日のうちの時間と曜日を認識したものとなる。
【0027】
システムは5分ごとにHVACの1日先の新しい稼働プランを作成する。定期的に1日先の稼働プランを更新することによって、システムは天候の変化や商業ビルの1日をとおした使用パターンに適応することができる。
【0028】
システムは10秒ごとに1日先の稼働プランを検査し、現在の状態と計画された状態とを比較し、1日先の稼働プランに合うようにHVAC設備を制御する。
【0029】
挙動を継続的に学習し、再計画することにより、商業ビルの速い動的変化(たとえば、突然ビルの中に人がなだれ込んだことにより商業ビルの一部に起こる熱応答の変化)、あるいはゆっくりとした動的変化(たとえば、ビルの西側の壁に沿って木が大きく育ったために午後の遅い時間に起こる熱応答の変化)の両方にシステムが対応できるという利点が生まれる。また、実際に商業ビルやHVACシステムは稼働を開始した当初の状態から変わってしまうことがしばしばあり、継続的に学習および適応をしなければ、HVACシステムの性能が落ち、結果的に人体快適性とエネルギー効率が低下することがある。
【0030】
一般的な商業ビルにおけるHVAC制御は、ビル管理システムによって実行される。ビル管理システムとは、コンピュータプログラムおよび関連ハードウェア、アクチュエータ、センサ、およびコントローラのことで、冷房、暖房、空調ユニットの稼働を測定し調整することによって、商業ビル居住者のための温度調節をする。
【0031】
商業ビルのエネルギー性能を改善するためには、適切な環境条件を提供しつつ、エネルギー消費量や支出状況といった資源を管理する、さらに一歩進んだアプローチが求められる。さまざまな資源や望ましい環境条件を検討した結果、一歩進んだ商業ビル制御システムの役割とは、必然的に競合するいくつかの目標のバランスを見つけだすことにある。適切なバランスを見つけだすことが、本実施の形態の重要な作用の一つである。
【0032】
一般的なHVACコントローラにはない、本実施の形態に係るHVAC制御システムの特徴を以下にあげる。
・異なるエネルギー源とそれらを利用することの意味合いを認識する。たとえば、商業ビルでは、天然ガスによる暖房と電気による冷房を利用していることがある。異なる燃料タイプは、コストや温室効果ガスといった点で異なる意味合いをもち、異なる負荷レベルで利用される設備が異なる効率によって稼働することになる。
・反動的な制御方針から離れるために予測を活用する。たとえば、温帯気候にある多くの商業ビルでは、午前中は暖房モードで稼働し、その後遅い時間になると冷房モードになる。天候予想と遅い時間の熱負荷を考慮に入れれば、暖房は適切に制限され、暖房負荷もその後の冷房負荷も削減することができる。
・熱快適性モデルを通した人体快適性の明確な考慮と、測定温度および湿度と他の要素(対気速度、衣類、活動レベル)の名目値の利用。
・さらに、個々の建物と居住者の考慮。熱快適性に関する調査が進んでいるにもかかわらず、快適性と満足度を測る一番の方法は、つねにビルの居住者からのフィードバックである。本実施の形態は熱快適性と満足度に関する居住者のフィードバックを得る機構を含んでいる。このユーザフィードバックは、局所的なユーザの好みを反映する計算熱快適性モデルに加味される、各HVACゾーンの快適性オフセットマップを計算する際に用いられる。ゾーンレベルの実際のユーザ快適性情報に応えることで、ビルの中で不快と感じている人のパーセンテージ(不快者率)を理論上5パーセント未満まで下げることができる。
・HVACシステムを制御した場合の、(i)ランニングコスト、(ii)温室ガス排出量、(iii)居住者の熱快適性のバランスを取る機構。
【0033】
<実施の詳細>
図1に本実施の形態の動作環境1を模式的に示す。本実施の形態(以下、OptiCOOL制御システム2と称する)は、監視制御システムである。すなわち、OptiCOOLは、既存のビル管理システム(BMS)3の構成要素であり、そのインターフェイスとして機能し、高水準コマンドをビル管理システムに供給する。OptiCOOL制御システムは、バルブ、ファン回転速度、検知・制御装置4とのインターフェイスについては個々に制御しておらず、こうした低次機能はビル管理システム3に任せている。OptiCOOLは、HVAC業界標準通信用インターフェイス(多くが入手可能)を通してビル管理システムのインターフェイスとなり(5)、ゾーン温度、冷房およびファン設定値といった基本的なデータをビル管理システムから入手する。OptiCOOL3はこのHVAC設備データと、電気価格、気象予報、ユーザ快適性データ、ビル用熱モデルを含む外部データ6とを組み合わせて、ビル管理システム3に基本ゾーン設定温度を供給する制御決定をくだす。すると、ビル管理システム3はこの設定温度を達成できるように、HVAC設備を管理する。
【0034】
上述したように、OptiCOOL制御システム3は、ビル全体のHVAC設備用の1日先もしくは同程度の期間の稼働プランの設定に基づいている。OptiCOOL制御システムの詳細を図2に示す。このようなプラン10を実現するには、ビルが天気やHVAC設備の動作にどう反応するかという熱モデルが必要である。モデル11は過去のビルデータから「学習」している。
【0035】
HVACシステムのインテリジェントスケジューリングを可能にするために、モデルは考えられうる範囲の制御動作に対するシステムの反応を評価できないといけない。制御中のシステムにモデルが適合していれば、適切な制御戦略を見つけるために考えられうる範囲の制御動作を判断する最適化ループの一環として用いることができる。図3は、ビルの熱的性能、HVACシステムの挙動、およびビルの熱負荷を事実上包含する基本的なHVACモデルを例示する。外部の熱的条件およびゾーン消費電力を入力として使用することで、モデルはゾーン条件との関係を学習することができる。
【0036】
設定値の変更や外部条件へのゾーンの反応を同定するために、いくつかのモデリング手法が利用可能であった。高度な学習テクニックを使用する実施の形態もあれば、モデル化されている根本的な物理的プロセスについての明確な知識を要することなく、入力/出力の特性を観察することから単純な「ブラックボックス」モデルを導き出す実施の形態もある。後者のモデルは、複雑で非線形の多変数のシステムに対してとりわけ有効で、この手法ではシステムパラメータの手動構成が必要ない。単純な多項式手法が適していることが解った。このモデルの利点は、適合されたパラメータにおいて線形なモデルであり、そのためモデルフィッティングプロセスを実質的に単純化できる。
【0037】
一の実施の形態では、高度な学習プロセスがHVACモデルにおいて実現されている。このプロセスには、HVACの冷暖房能力に加えて、周囲温度に対するビルの反応のしかたを取得するためのモデルのパラメータを推定する工程が含まれている。こうしたモデルの一例を、<ビルモデルの一例>で説明する。
【0038】
入力データは手動入力でもよいし、各情報源向けの適切なインターフェイスが使われてもよい。たとえば、一の実施の形態では、オーストラリア気象局(Australian Bureau of Meteorology)より気象予測データを、オーストラリアン・エレクトリシティ・マーケット・オペレーター(Australian Electricity Market Operator)よりリアルタイム電気価格情報を、およびビル居住者快適性調査結果を得るためのJavaインターフェイスが開発されている。
【0039】
この多項式モデルでは、ビルの平均ゾーン温度を推定するために、HVAC電力、周囲温度、ビルの同定熱ベース負荷プロファイルを利用している。このモデルは以下の式で表される。
【0040】
ここで、TAVは、ビル全体の平均ゾーン温度であり、Tambient は、外部周囲温度であり、PHVACは、HVACシステムの総消費電力であり、k1, k2, k3, k4, k5は、測定データに最も適合する調整可能パラメータであり、τ1, τ1は、ビルHVACシステムの支配的な熱時定数であり、sは、複素ラプラス変数であり、 ‘Initial Conditions’は、測定期間開始時におけるビル構造とHVACシステムの内部熱状態における不確実性を表す。これらの初期状態(initial conditions)は、一時的なもので、システムの固有モードの組み合わせで決まり、それゆえに、k6e-t/τ1 + k7e-t/τ2の形式で表わされる。これらのモードは、システム同定にバイアスがかからないように明確に同定される。Thermal Baseloadは、1日の中で異なる熱負荷を示す同定ベース負荷プロファイルである。これは、たとえば、ソーラーゲインやビル居住者の活動といった要素に依存する。熱べース負荷は、区分的線形関数としてパラメータ化することができる。このベース負荷関数は、設定されたデータにおいてそれぞれの日によって同一であるとされ、周囲温度やHVAC電力に依存しないで決定される。
【0041】
従来のVAVシステムを備えた実験用ビルから得たデータを用いて、16日間5分間隔で取ったデータは、さまざまなパラメータを決定する回帰分析を用いた多項式モデルに適合される。このデータセットに適合する決定係数はr2=0.956で、これは、このモデルがうまく適合していることを示している。追加の二次項が求められていたが(すなわち2乗)、これらは分散を著しく増加させるものではなく、そのためモデルには含まれていなかった。適合の一例を図9に示す。
【0042】
ビル熱モデル11が確立されると、このモデルと気象予報および電気料金情報6を合わせて、HVAC設備の消費プラン出力12を生成する。このプランは、ビル全体のPMV快適性設定値を得るのに必要な個々のHVAC設備の消費電力を蓄積したものに基づいた、ビルの時系列電力プロファイルである。このプラン12を求め出力するために、最適化ルーチンはビルの想定されうるさまざまな電力プロファイルを考慮し、居住者の快適性、ランニングコスト、二酸化炭素排出量といった優先事項を考慮したコスト関数に基づいて、どのプロファイルを使用するかを決定する。最適な(コスト関数の観点からコストミニマムの)電力プロファイル12が決定されると、このプロファイルがビル全体の快適性プロファイルへ転換され、ビル全体の快適設定値が1日を通して一定間隔で決定される。
【0043】
ビル全体の快適設定値15が決定されると、ゾーン制御決定16を介したビルの各ゾーンの個別制御に基づいて、実際のHVAC制御が実施される。
【0044】
図4に示すように(制御システムからのスクリーンショット)、ゾーン制御は3つの主機能ブロックに基づいて実施される。すなわち、快適性フィードバックブロック41は、ComfortSENSEクライアントアプリケーションに基づいて、ユーザのフィードバックを取得し、これを“不快者率”に変換する。ゾーン快適性モデルブロック42はゾーン温度(OptiCOOL-BMSデータリンクを介してBMSより提供される)を取得し、ASHRAE-55標準“Thermal Environmental Conditions for Human Occupancy”を用いて該当ゾーンの予測平均温冷感申告(PMV)44と予測不快者率(PPD)を計算する。このブロックの機能性を図5に示す。その後、この理論上のPMVおよびPDDの数字が快適性フィードバックブロックから得たPPDの測定値によって補正される(45)。快適性フィードバックブロックから有効なデータ(利用は任意である)が得られない場合、システムはASHRAE標準から計算した理論上のPMV/PPDの数字を全体的に用いる。
【0045】
ゾーン制御ブロック47はビル全体制御ループから該当ゾーンの所定快適設定値(PMV)を取得し、(ビル管理システムから)ゾーンおよび外部温度を取得し、快適性モデルから実際のPMV/PPD値を取得し、望ましいゾーンPMV設定値を得るためのゾーン設定温度48を決定する。
【0046】
図2に戻り、ここにはOptiCOOLソフトウェアシステム2における3つの主要制御ループが示されている。すなわち、ビル熱モデル11を決定する熱モデリングループ、消費電力プラン10を決定する電力プランニングループ、およびビルのゾーン設定値を設定するビル設定値決定ループである。OptiCOOLソフトウェアシステムが作成する3つの将来プランは、継続的に最適化および更新される。つまり、ビル熱モデル、フィードバックにより調整された人体快適性モデル、続いて、全体のビル電力プロファイルは、一定の(あらかじめ決められた)制御間隔にて更新される。この挙動によって、システムは予測電気料金や気象予報、ビルの使用状況や人体快適性における突然の変化といった外的要因の変化に対応することが可能になるため、重要である。この挙動の結果、HVAC消費電力、人体快適性、および時間といったつねに更新される先行プロファイルが得られる。3つの主要ループは、次のように動作し得る。
【0047】
<モデリングループ(図6)>
モデリングループは1日に1度実行され、曜日、1日のうちの時間、HVAC消費電力、および外部の気象に基づいた内部温度を予測する、ビルの熱モデル11を形成する。このループには、以下の工程が含まれる。過去の電力および対応温度プロファイル61を供給する工程、予想される電力および気象依存要因61を計算する工程、時間および曜日要因63用の定数を計算する工程、および指定された曜日、時間、予想外部気象、およびHVAC電力におけるビル内の温度を予測する多項式モデルを組み立てる工程である。
【0048】
<電力プランニングループ(図7)>
電力プランニングループは5分ごとに実行され、24時間先に計画されたビルのHVAC消費電力プロファイル12を作成する。このループは、まず現時点のHVAC総消費電力を決定し、将来時点の気象予報を決定し、最適化によってコストミニマムな電力プランを作成する。
【0049】
<設定値決定制御ループ(図8)>
ビル全体の設定値決定制御ループ14は、10秒ごとに実行され、ビルの電力プランを取得し、ビル管理システム(BMS)にこの電力プランを達成することを目標としたゾーン設定温度を供給する。制御システムは、ビルの各HVACゾーンの計画パラメータとして、人体快適性を使用する。局所的なユーザフィードバックに基づく変化を含んだASHRAE快適モデルを適用することによって、人体快適性は、屋内温度および湿度といった物理的パラメータに転換される。ファン回転速度またはバルブ設定値といったビルパラメータは、提供されたゾーン温度データに基づいたものにするため、現状通りビル管理システム(BMS)の実施に任せ、ここでは特定されない。
【0050】
実現されたシステムは、一のモデリング技法、すなわち線形時不変技法を用いる。この技法は、ビルの熱応答の三次線形時不変モデルをパラメータ化するための制約最小二乗適合アルゴリズムの使用に基づいて実施される。
【0051】
このシステムの初期条件は、過去のビル性能データについてこのアルゴリズムを実行することによって確立される。
【0052】
このインテリジェントHVAC監視制御システムは、OPCのような業界標準プロセス制御インターフェイスによって、既存のビル管理システム(BMS)に容易に組み込むことができる。このインテリジェントHVACコントローラは、機械学習技術を利用して自動的に周辺環境のモデルを形成し、こうしたモデルを用いて、最適なHVAC稼働プランを決定するためのさまざまな制御戦略を評価する。この技術は、既存および新しいビルストックの両方をターゲットとし、最低限の設備投資しか必要としないため、投資回収期間が比較的短くてすみ、さらに操業コストの削減に向けて著しい進展が期待できる。さらに、エネルギー消費の削減と二酸化炭素排出用の削減によって、ビルのエネルギー効率と性能評価の改善が容易になる。
【0053】
<熱快適性および生産性の評価>
熱快適性を考えるとき温度がすぐに思い浮かぶが、ほかにも寄与する要因がたくさんある。風速、放射温度、湿度、代謝率、衣類レベルがそれに含まれる。"Thermal Environmental Conditions for Human Occupancy"のためのASHRAE-55標準には、指定条件のもとでの予測平均温冷感申告(PMV)および居住者の予測不快者率(PPD)を理論的に求める方法が詳細に述べられている。
【0054】
熱快適性を評価・予測するにあたって、PPD測定法(図5のインターフェイスで実施される)には居住者の快適性フィードバックアプリケーションが統合されている。ASHRAE適応快適性基準の場合、幅広い条件が容認されており、たとえば窓を開け閉めできるなど、ビルが自然に換気され、ユーザが自身の環境条件を直接制御できる。同様に、個々の居住者の快適性をフィードバックするための機構を提供すれば、熱満足度が向上する。それは、屋内温度をユーザが調節できるという直接的な物理的効果からだけでなく、居住者に権限を与えるという側面からの効果もある(Brager et al. 2004)。
【0055】
居住者アプリケーションを居住者のパーソナルコンピュータに組み込むことができ、色分けされた小さなアイコンおよび“ポップアップ”メッセージによって、居住者にHVACの稼働モードの変化(たとえば、空調、自然換気、ピーク時の電力需要)を知らせることができる。上記の説明は熱快適性の評価を扱ったものだが、職場環境を考えるなら、熱快適性が生産性にどう影響するかというさらに複雑な問題が生じてくる。この問題を数値を使って説明しようと多くの研究調査がなされてきたが、明快な結果は出ておらず、多種多様な研究結果を評価したうえで、Seppaenen et al. (2003, 2006) は温度が21〜25℃のあいだでは統計からみて生産性に顕著な差異は見られないと示した。なお、Seppaenenは、温度が25℃を超えると、1℃につき約2パーセント生産性が低下すると示している。
【0056】
既存のビル管理システム(BMS)で同一の熱快適性を維持しつつ、エネルギーコストと二酸化炭素排出量を実質的に節減することは可能であることがわかっている。
【0057】
ビルの管理者またはユーザに、競合するパフォーマンス目標に対する相対的重み付けを決定させることによって、特定の制御戦略を選んだ場合に起こる代償について、彼らは明確に知ることができる。
【0058】
<ビルモデルの一例>
この学習プロセスモデルには、HVACの冷暖房能力に加えて、周囲温度に対するビルの反応のしかたを取得するためのモデルのパラメータを推定する工程が含まれている。パラメータの推定方法は、学習データへの最小二乗誤差適合である。学習データは、ビル管理システムからリアルタイムもしくはオフラインで収集するか、ビル管理システムの過去の設定値から収集する。学習プロセスは、データがどのように収集されたか(リアルタイムかオフラインか)には影響されないが、“充分な”適合が確実に行えるだけの充分な量のデータを収集することが求められる。
【0059】
このモデルの一の実施の形態は、以下の式で表される。
【0060】
上記のモデルにおいて、とくに興味を引く項目は、周囲温度や冷暖房能力、および基準に対する動的応答を表す伝達関数である。一の実施の形態においては、これらの伝達関数は異なる時定数による一次ローパスフィルタの集まりである。各フィルタは以下の式で表される。
ここで、z−1は、m差分演算子であり、aは、以下の式で与えられる。
ここで、τは、システム時定数であり、hは、サンプリング間隔である。他の実施の形態では、伝達関数は、高次フィルタ関数のような他の種類の関数を表している。大ざっぱに言えば、時定数にくらべてサンプリングが充分に速いことが保証される必要がある。一般的に、
【0061】
ビル管理システムから過去のデータを引き出す際には考慮しておかなくてはいけないことがある。離散時間領域において、式(2)の一次フィルタは次の式で表される。
ここで、x(tk)は、入力であり、上の式(3)で表され、tkは、サンプルkのサンプリング時間である。本実施の形態では、x(tk)の代わりにx(tk−1)を用いていることに留意されたい。これは、最小限の差異であり、その影響はあったとしてもほとんどないのが理想である。他の実施の形態では、x(tk−1)を異なる形で表わしている。けれども、本実施の形態では、以下の式が用いられる。
【0062】
サンプル番号だけを用いることで、表記を単純化できる。
【0063】
<周囲温度とHVAC電力に対する反応>
本実施の形態では、冷暖房HVAC電力だけでなく周囲温度に対するビルの反応が3つの一次系としてモデル化され、式(5)が異なる時定数を用いてそれぞれ表されている。すなわち、
は、それぞれ3つの一次応答の時定数1h,2,および5hに対応する式(3)のパラメータである(式(3)とは一致していないが、本目的を考えれば充分に近い)。これを考慮すると、これらの時定数に対応する式(2)の一次フィルタであるF1h,F2h,F5hを用いて、周囲温度、HVAC冷房能力、およびHVAC暖房能力に対する動的応答は以下のようにモデル化される。
【0064】
この時間領域において、上記に対する動的応答(もしくはフィルタを適用した際の応答――よって上付き“F”)は以下のようになる。
ここで、
Nは、それぞれ時定数1h,2hおよび5hに対して1,2および5である。パラメータpijは、さまざまな時定数に対応する動的応答の相対寄与を表す。これらのパラメータは、<学習:モデルパラメータ推定>で説明するように、推定(“学習”)されたものである。
【0065】
上記の式を式(1)のビル全体モデルに適用すると、以下の時間領域バージョンが得られる。
【0066】
ここで、基準Bstate(k)は、周囲温度および冷暖房能力反応によってモデル化されたもの以外の平均内部温度反応への変化を取るキャッチオール関数である。下付の“state”は、「平日」か「週末」のどちらかを示し、前者は一般的な就業時間の活気あるビルでの稼働を示し、後者は週末の稼働を示す。このように、事実上、曜日によって2タイプの異なるモデルが存在する。
【0067】
一の実施の形態では、基準関数の特定の形式が以下のようになる。
【0068】
【0069】
“12”という数字は、2時間ごとに基準挙動に著しい差異が予想されるという事実を反映しており(三角形関数の1つの頂点により取得される)、その中間時が、寄与する三角形関数の頂点間の線形補間と同等の、三角形関数の線形結合によって適切にモデル化されている。
【0070】
【0071】
基準関数の目的は、1日を通じてのビルの負荷(式(9)〜(17)で取得したもの以外)の変化のしかたを取得することである。たとえば、午前中の早い時間帯に多くの人がビル内に流れ込めば、ビルの熱力学に影響をもたらすことは当然予測できる。昼休みや夕方に人がビルから出て行く場合も同じである。平日基準の12の三角形関数と、これとは別に週末基準の12の三角形関数がある。
【0072】
他の実施の形態では、基準関数の異なる形式が、基底関数の異なる組み合わせを使って実現されることを理解されたい。
【0073】
<学習:モデルパラメータ推定>
【0074】
ここで、
【0075】
【0076】
まだ説明していない式(22)の最後の要素は、基準値B(k)である。これらは、(式(20)で使われたように)“1”をピークとして持つhiを中心とした三角形関数のサンプルである。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
これらの要件を実現するAの特定の形態は、以下のように表される。
ここで、Im×mは、サイズがm×mの恒等行列であり、0m×nは、m列n行の零行列である。パラメータ推定制約は、ベクトルbに包含されており、このベクトルの具体例が以下のように与えられる。
ここで、上記の201×24は、20の24次元のベクトルを表している。
【0081】
<最適化>
上記のパラメータに従って推定されたモデルから、ある「コスト」目標および/または制約を満たす最適能力プロファイルを見つけることが可能である。本節では、冷房を例にとって説明する。けれども、同様の最適化プロセスは暖房を含むモデルについても可能であることを理解されたい。
【0082】
たとえば、Tamb={Tamb(1),...,Tamb(k)}で与えられる気象予報を考える。また、Pcool={Pcool(1),...,Pcool(k)}で与えられたビルの冷房能力プロファイルが選択された場合についても考える。2つの時系列をフィルタ適用の式(12)〜(17)に入れ、フィルタ適用バージョンを求めることが可能で、そこから式(18):Tint={Tint(1),...,Tint(k)}によって、ビル内部温度を求めることが可能である。
【0083】
PcoolおよびTintによって、選択された冷房能力プロファイルPcoolがよく機能しているかどうかを評価することができる。具体的には、エネルギー消費とCO2排出のコスト(Pcoolに基づく)、および居住者の快適性(Tintに基づく)に目を向けることができる。
【0084】
本実施の形態のエネルギー消費のドルコストは,以下の式で与えられる。
ここで、Tariff(tk)は、サンプルkに対応する時間のエネルギー料金を表す。
【0085】
CO2排出のコストは、以下の式で与えられる。
【0086】
以下のように、所定の目標平均快適性レベルからの偏差にコストを課すことも
可能である。
【0087】
これら3つのコスト要素を結合して単独のコスト関数にすることができる。
【0088】
式(35)において、3つのパラメータw1,w2およびPPDtargetは、ユーザが設定可能である。C(Pcool|Tamb)のパラメータPcoolは、ある与えられた周囲温度予報に対して、全体のコスト関数が選択された冷房能力プロファイルにのみ依存していることを強調するためのものである。
【0089】
コスト関数によって、標準最適化を用いた最適能力プロファイルを見つけることが可能になる。もちろん、代替のコスト関数または変形コスト関数も利用可能である。
【0090】
<暖房を含む代替のモデル例>
暖房の最適化を含む、上述のモデルの拡張形をこれから説明する。拡張形はさらなるビルの稼働タイプ、すなわち暖房と混合燃料源を、代替の最適化およびモデリング方法においても可能にする。モデルは、熱エネルギー効果の同定、電気および非電気燃料源、ならびに冷暖房混合状態におけるビルのエネルギー消費、快適性レベル、およびCO2排出が考慮されるように拡張される。
【0091】
この代替モデルは、従来のガスボイラー暖房システム、温水・冷水ループおよびVAVシステムを備えたビルに対するテスト用に設計されてきた。当然ながら、あらゆるタイプのビルに対するカスタマイズも実行されなければならない。このモデルが開発された対象のビルの一例はオーストラリアのビクトリア州にあり、以下のような特徴をもつ。構造は2006年建築のブロック造り;フロア面積は1808m2であり、3階建てオフィス、混合モードでの稼働――ファンによる自然換気、自動開閉窓、暖房:Raypak 868 ガスボイラー(868kWth)(リンク)、冷房:York YCA 0235 6-stage Air-Cooled Scroll Chiller (名目235kWth)(リンク)、ビル管理システム(BMS):Siemens Desigo v3.0, Siemens BACNet Server、計器:ガス・ボリュームメーター、サブ電気メータ――メカニカルサービス&ビル全体管理。
【0092】
このモデルは、ゾーン温度に対する冷暖房効果を学習できるビルエネルギーモデル構造の拡張を可能にする。また、モデルは、冷暖房エネルギー消費の最適化も可能にする。さらに、このモデルは非電気燃料源も扱う。これは、容量、価格体系、および温室効果ガス排出も考慮している。このモデルはまた、おそらく同時活用される多様なエネルギー源についても扱う。
【0093】
先の冷房だけのモデルは、HVACエネルギー消費の大半を冷房が占める温かい気候で運営されるビルに向けて設計されていた。冷房がほぼ電気冷房のみで実現されるのに対し、暖房には多くの異なるタイプのシステムおよび燃料が一般に使われる。さらに、1つのビルでも多様なシステムが設置され、同時に稼働していることもある――それが実行を著しく複雑化している。
【0094】
ビルは多様な暖房/冷房システムを備え、ある条件下でどれを使うかについては実質的に自由に決められるものの、当該代替のモデルを用いた手法では、既存のビル管理システムに指定の空調設定値に作用するよう適切な設備の組み合わせを決定させている。高いレベルでは、当該代替のモデルは、エネルギー温室効果ガスとビルの状態との関係を学習し、最適化ゾーン状態設定値を適用する。低いレベルでは、主要最適化の一部ではないものの、優先的にある設備を閉鎖もしくは使用するために、この代替モデルを用いることができる。低レベルの変化が実施されると、当該代替のモデルは、状態とエネルギーとの関係において変化を認識し、ビルモデルを更新する。
【0095】
<ゾーンレベル暖房/冷房制御>
最初に説明したモデルは、主制御変数にゾーンレベルPMV設定値を用いた。冷房だけ主に使用されているケースでは、暖房はルールに基づいた手法を用いて実行されており(暖房は最低限容認されうる快適性レベルに設定され、それ以上は実行されない)、PMV設定値は冷房の目標レベルと解釈されていた。個々のゾーン制御アルゴリズムは必然的に以下のように示される。
If TZone < TMin_Allowed then Heat_To_TMin else Cool_To_PMV_Setpoint end
【0096】
これらの暖房/冷房設定値が厳密にはどのように実現されるかは、特定のビル管理システム(BMS)およびビル構造に依存していた。そこには、給気設定値や冷水/温水バルブ等の制御も含まれる。この低レベルのBMSインターフェイスによって、冷房設定値を下回る冷房または暖房設定値を上回る暖房でエネルギーが浪費されないという点が重要である(たとえば、冷房能力を下げる目的でゾーン設定値を上げた場合、電気による再加熱が起こる)。暖房と冷房をともに最適化するために、暖房と冷房が同時に実行される可能性を最小限に抑えつつ(それは隣接するゾーンにとって、まさしくエネルギーの浪費になる)、当該代替のモデルの高レベルビル最適化が2つの設定値、つまり冷房設定値PMVと暖房設定値PMV、を生成するように改訂されている。基本的な個々のゾーン制御アルゴリズムは、本質的に以下を実行するように改訂されている。
If PMVZone < PMVHeat_Setpoint then Heat_To_PMVHeat_Setpointelse Cool_To_PMVCool_Setpointend
これは,本質的には最初のものと同じであるが、暖房設定値と冷房設定値の両方がPMVで表され、この最適化によって動的に変化する。これによって、低レベルゾーンコントローラには、最低限の変化しか求められない。
【0097】
暖房、冷房、および異なる燃料源を容易に含められるように、“グレーボックス”ビルモデルの構造が改訂された。改訂後の式は,以下のようになる。
【0098】
これは、HVACシステムによるゾーン温度の差を表している。
【0099】
フィルタF(s)は、以前も、そして現在でもフィードスルーで、1,2,および5時間の時定数を持つ三次線形時不変である。具体的には、
および
ここで、kT_0,kT_1,kT_2,kT_3,kA_0,kA_1,kA_2およびkA_3は、同定されたフィルタゲインであり、τ1,τ2,およびτ3は、それぞれ、1,2,および5時間の時定数である。
【0100】
BaselineFcnは、BaselineWeekdayおよびBaselineWeekendの2つのベクトルで表され、それぞれのベクトルは1×12次元のベクトルで、(平日もしくは週末)1日の時間が[0 2 4 8 10 12 14 16 18 20 22]の場合のモデル化された平均ゾーン温度に付加されるオフセット温度(℃)と解釈される。他の時間の適切なBaseline Fcn値が計算される際には、2つの最も近接する値のあいだで線形補間が行われる。当該代替のモデルにおける1つの違いは、正規化されたHVAC冷房能力がΔTSSに置きかえられている点である。ΔTSSは、ゾーン温度に関する多様な暖房/冷房源の総影響度を表す。
【0101】
<暖房/冷房能力の関係>
先のモデルは冷房が主に使用されるシナリオを扱っていたが、暖房を使用するケースを扱うには、代替の能力モデル構造が望ましい。主要因は、以下のとおりである。ゾーン間の多様性が意味するのは、総ゾーン温度が設定値になっていたとしても、暖房用エネルギーと冷房用エネルギーの両方が個々のゾーンを設定値に維持するために使用される必要があるということ、暖房と冷房を適用されたHVAC電力に比例するものとして扱うよりも、顕著な冷房/暖房が実現する前でさえ、HVACシステムの稼働と結びついた相応な固定負荷(すなわちファンとポンプ)が多くかかりがちだということを認識する必要がある。このベースラインの一部は、他の場所の負荷によるものである場合もある。もう1つの要因は、周囲温度とともに変化する暖房/冷房システムの効率である。具体的な例をあげるなら、周囲温度の上昇にともない、冷房の性能係数(COP)が低下する。冷房/暖房を稼働するよりも外気の利用を増やした場合にも(デイパージ)、この影響がもたらされる。
【0102】
以下に示すような、測定電力と総ゾーン温度への影響との関係が利用されていた。
ここで、数式の第1項は、有効冷房温度(ΔTCool)であり、第2項は、有効暖房温度(ΔTHeat)であり、各パラメータは、以下のものを表す。PCoolおよびPHeatは、それぞれ実際の冷房能力および暖房能力(kW)であり、PcbおよびPhbは、それぞれ基準冷房能力および基準暖房能力(kW)であり、αcおよびαhは、HVAC電力有効性の名義尺度(℃/kW)であり、μcおよびμhは、外部温度の関数としてのHVAC効率のディレーティングである。
【0103】
ディレーティングは、以下のようにパラメータ化される。
および
Tcxは、これを上回ると冷房ディレーティングが起こる温度であり、Thxは、これを下回ると暖房ディレーティングが起こる温度である。一般的には、20℃ぐらいである。αcdおよびαhdは、ディレーティング比であり、一般的には、約0.02/℃である。
【0104】
さらに、暖房と冷房がともに使用されるシナリオをエミュレートするために、有効冷房は、ΔTSS>ΔTc0で起こると考えられ、有効暖房は、ΔTSS<ΔTh0で起こると考えられている。これらの一般的な値は、ΔTc0=−0.5℃ およびΔTh0=0.5℃で、つまり、ΔTSSが−0.5℃〜0.5℃のとき、暖房と冷房の組み合わせが起きていると考えられる。
【0105】
図12は、これらの変数の相互関係を示している。暖房と冷房を組み合わせた能力がビルの総能力であり、これは“V”、すなわち外部温度の関数としてのビルの冷暖房能力に期待する、放物線状の関係となっている。
【0106】
<改訂ビルモデルへのフィッティング>
改訂モデルでは、ビルモデルのフィッティングは1日に1度、ビルが再始動するときに行われる。ビルログファイルからデータが読み出され、時系列データが信号用に抽出される。このデータには以下のものが含まれる。TZは、‘Config_ZoneSizes’コンフィギュレーションパラメータに基づいた全ゾーン温度の加重平均として取得される総ゾーン温度であり、PCoolは、後述のように、全冷房関連能力測定値の総和として取得される。PHeatは、後述のように、全暖房関連能力測定値の総和として取得される。TAmbは、測定周囲(外部)温度である。
【0107】
理想的には、これらのデータセットは、2〜3ヵ月分の継続データからなる。そうでない場合、わずかなデータギャップは、補間される。データに大きなギャップがある場合、データは、複数のセットに分割され、データにフィルタがかけられると、未知の初期条件の影響を最小化するために、各セットの最初の5時間が廃棄される。
【0108】
【0109】
モデル適合は入れ子最適化としてプログラムされる。
【0110】
このモデル適合を実行する際に、Matlab lsqlin 関数(線形制約付き最小二乗)は、FilterParametersを適合するために用いられ、fmincon(多次元制約付き非線形最小化)は、PowerParametersサーチのために用いられる。このモデルは、線形よりも難解な問題であり、求められる非線形最小化の次元を減じるためにこのように分解される。モデルフィッティングルーチンが更新されることで、そのルーチンにハードコーディングされたこれらのパラメータ値の範囲を限定するというよりも、各パラメータの上限および下限として、これらが受け継がれている。パラメータが適合しなければ、これらの上限および下限は同一に設定される。
【0111】
<改訂ビルモデルによるビル設定値の最適化>
当該代替モデルでは、ビルの設定値最適化の方法が、暖房を利用するケースを考慮したかたちに改訂される。先のモデルでは、最適化によって、最適化されたビルの電力プロファイルが返され、その後このプロファイルを追跡しながら、各ゾーンの適切なPMV設定値を決定するために用いられた。代替のモデルでは、改訂された最適化によって、暖房および冷房の期待能力に加えて、暖房および冷房の二本立ての目標PMV設定値が提供される。PMV設定値は現在では主要最適化設定値として扱われており、電気使用量が予想を超えつつある場合にのみ緩和される。このことと、初期条件の導出への改訂されたアプローチが、電力測定における変動に対する感度を一部克服するのに役立っている。電気使用量が予想を超えない限り、ビルはPMV設定値に基づいて稼働する。
【0112】
二本立てPMV設定値は、先のモデルと同様の最適化プロセスを通して導き出されるが、ここでは、ΔTSSは、冷房能力ではなく、最適化された変数である。ΔTSSから、予想暖房/冷房能力が非線形マップより決定され、電力コスト、温室効果ガスコスト、およびPMVが求められる。最適化されたPMVから、2本立てPMV設定値は、以下のように表される。
つまり、ビルが全体暖房の状態のとき、冷房が必要なゾーンでだけ最小許容PMV(PMVは−3:冷〜3:暖の範囲)まで冷房が入れられ、暖房が入っているゾーンは最適化PMV設定値をめざす。同様の方式が冷房モードでも実施される。
【0113】
設定値最適化は、以下の項目について更新された情報に基づいて5分ごとに実施される。項目は、実際のビルゾーン温度、エネルギー価格、および気象予報である。これらは、先に決定されたビルモデルと連動して使用され、暖房/冷房能力とビルの熱的条件のあいだの予測関係を以下のように与える。
【0114】
最適化によって、以下の最小化が図られる。
ここで、CO2は、その日の残りの時間の提案稼働スケジュールで推定されるCO2の影響であり、Costは、その日の残りの時間の提案稼働スケジュールで推定される金銭的コストであり、average PPDは、全日の推定平均PPDであり、WCO2& WCostは、最適化に対するこれらのメトリックスの相対的重要度を配分する(スカラー)重みであり、AvPPDは、その日のビルの目標最大許容平均PPDである。
【0115】
このコスト関数を評価する際には、ΔTSSと暖房/冷房能力のあいだ、ゆえにエネルギーコストとCO2コストのあいだに前節で説明した静的(非線形)マップが存在する。その日の残りの時間のPMVとPPDプロファイルを評価するためには、将来の気象条件の推定が必要となる。ビル管理システム(BMS)からは、TAmbのデータ履歴を取得し、BOM(さらに、局所的な気象学習アルゴリズム)から、予測周囲温度TForecastを取得する。これら2つのデータセットは合成することにより、データに断絶がなくなる。過去の周囲温度と予測周囲温度の合成を3時間間隔で実行し、その結果できたデータをTPredictedで表す。データの合成プロセスを図13に示す。
【0116】
<初期条件の扱い>
先のモデルは、モデル動特性を初期化するのに、測定冷房能力と周囲温度に依存していた。このことは、測定された能力が予測モデル化冷房能力と著しく異なる(たとえば、圧縮ステージングによって)、もしくはビルの動特性と負荷(使用パターン)がモデル化されたものと著しく異なるといった問題を起こしかねない。こうした問題は、測定挙動(現時点までの)とこれから先の予測挙動とのあいだの不連続性(断絶)として現れる。こうした問題を克服し、できるだけ電力モデリングへの依存性を排除するために、最適化は、ビルの動的状態をモデル化するのに状態推定器(オブザーバ)を使用し、自走反応をもたらす。これによって、最適化ルーチンは、提案されたΔTSSに対するビルの反応を計算する際にゼロ初期条件のケースだけを扱うだけでよくなる。
【0117】
推定条件は、ビルモデルを配列し直すことによって得られる。
【0118】
<異なる燃料タイプの提供>
当該代替のモデルは、異なる燃料タイプを扱うこともできる。主な論点は以下の通りである。異なる燃料タイプは、温室効果ガスポテンシャルが異なる。異なる燃料タイプは、価格体系が異なる。燃料の使用状況をモニターするために、異なった測定方法が用いられる。
【0119】
オーストラリアでは、異なるエネルギー源の相対的影響がオーストラリア政府、気候変動・エネルギー効率問題担当省(DCCEE)によって計算されている。毎年、これらの数字は更新され、‘National Greenhouse Accounts (NGA) Factors’ [1]として発行される。各要素は、採掘方法の違い、燃料混合、配分損失等によって変化し、その結果、時間および地理的位置によって変化する。温室効果ガスの影響についての報告のなかで、異なる3つのタイプの排出要因が使用されている:スコープ1の排出――活動からの直接的CO2等価排出(たとえば、ガスの抽出/精製/輸送に何が伴うかを無視して、天然ガスを燃焼させることによる直接的なCO2排出)、スコープ2の排出――組織が活動をする際に購入・消費する電気の発生による間接的なCO2等価排出(すなわち、あなたのために電気を生成する際に、あなたの代わりに発電所が起こすスコープ1の排出)、スコープ3の排出――燃料の抽出、生産、輸送、生成、配分/伝達等と結びついた、上記以外のさまざまな排出。これには電気回路網での損失も含まれる。スコープ3の排出は、全燃料サイクルコストの評価に含まれる。
【0120】
オーストラリアの商業ビルでの使用と報告されているものとして、商業ビルセクターで使用されている異なる燃料タイプの相対的比率を図14に示す。これは、(当然ながら)電気と天然ガスが大半を占めている。オーストラリアでのこれらの燃料のフルサイクルに対する最近の推定(2010年7月付、[1]より)が、下の表(1MWh=3.6GJ)に示されている。
【0121】
<異なる燃料タイプと測定方法に応じた構成変化>
先のモデルは、冷房に寄与する一のタイプの電力(kW)測定を効果的に扱えるものである。当該代替のモデルでは、コンフィギュレーションパラメータを含めることによって、先のモデルが改訂されている。
【0122】
当該代替のモデルは、5つのコンフィギュレーション変数を含む。
【0123】
Config_PowerWeights 1 0.72 278
【0124】
Config_CarbonWeights 1.07 1.07 0.236
【0125】
Config_PowerTypes CP CP HE
【0126】
Config_PowerPrices 1 1 2
【0127】
Config_PowerPriceNames ‘Elec TOU’ ‘Gas’
【0128】
多くの正規化タイプが利用可能であるものの、スケーリングファクターには、異なる燃料と測定タイプの相対的効果を比較するメカニズムを提供する必要がある。スケーリングファクターとは、名目的には測定量を、電力を比較するためにkW(もしくはkWh)へと変換し、温室効果の影響を比較するためにkgCO2-e/kWhへと変換するものと考えられてきた。PowerWeights コンフィギュレーション変数はkW(もしくはkWh)になる。CarbonWeights変数はkgCO2-eになる。PowerTypes変数は、各電力測定値を冷房(C)に寄与するのか、暖房(H)に寄与するのかで分類し、さらに測定タイプが電力(P)なのか、エネルギー(E)なのかで分類する。電力測定は(たとえば)直接kW測定である。エネルギー測定は、累積レジスタを通したもの、すなわちkWhであり、電力レベルを決定するために、時間によって区別されなければならない。PowerTypesの有効値は‘CP’, ‘CE’, ‘HP’ および ‘HE’である。PowerPriceNamesは、異なるエネルギー価格コンフィギュレーションの名前を保持している。PowerPricesは、どのエネルギー価格体系を各電力測定に適用するかを決定するインデックスをPowerPriceNamesに供給する。
【0129】
上記例の特定のコンフィギュレーション値として、3つの測定電力データ点がある。ビルコンフィギュレーションファイルでは、これらをパワー_1, パワー_2、パワー_3と呼ぶ。パワー_1は、kWで直接測定され、したがってPowerWeights=1となる。CO2-eに対するスケーリングファクターは、1.07である(NSWの場合)。このエネルギーは、冷房に利用され、電力は直接測定の‘CP’である。エネルギーの価格タイプは、‘Elec TOU’で、よって、インデックス1がPowerPriceNamesに与えられる。パワー_2は、平衡三相システムのうち1相のアンペアを測定することによって得られる。測定された1アンペアは、720Wに相当するので、よって、PowerWeightsは、0.72に設定される。他のスケーリングファクターは、パワー1と同じである。パワー_3は、暖房用のガスであり、累積メータを用いてGJ単位で測定される。278のPowerWeightsは、GJを等価kWに変換する。0.236のCarbonWeightsは、天然ガス消費量に相当するkWhと等価なkgCO2-eである。PowerPricesは、2で、これがガスの価格体系のインデックスとしてPowerPriceNamesに与えられる。
【0130】
さまざまな電力価格体系の名前はコンフィギュレーションファイルに記憶されているが、実際のプライスレベルのコンフィギュレーションは、多様な燃料タイプに対応できるよう改訂された“エネルギー価格コンフィギュレーション”のGUIを通して得られる(EnergyPriceConfigV2.m参照)。これによって、‘TOU’の価格体系が各燃料タイプに設定される。こうしてガスのように、固定の一定価格が設定される。図15はデータエントリー用の改訂GUIを例示している。単位は任意であるものの、名目上c/kWhとして取得される。
【0131】
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【0140】
ASHRAE (2004), ANSI/ASHRAE Standard 55-2004, Thermal Environmental Conditions for Human Occupancy. American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers. Atlanta, USA. www.ashrae.org
【0141】
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【0142】
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【0143】
National Greenhouse Accounts (NGA) Factors. Department of Climate Change and Energy Efficiency, Commonwealth of Australia 2010. ISBN: 978-1-921299-04-9
【0144】
<解説>
本明細書を通じて、「一の実施の形態」もしくは「実施の形態」と称しているのは、実施の形態との関連で説明した特別な特徴、構造あるいは特性が、本発明の少なくとも1つの実施の形態に含まれていることを意味している。よって、本明細書を通じてさまざまな箇所で「一の実施の形態においては」もしくは「実施の形態においては」というフレーズが出現するのは、必ずしもすべてが同じ実施の形態を指すわけではないが、同じものでもかまわない。さらに、特別な特徴、構造あるいは特性は適切なかたちで組み合わされてもよく、それは一あるいは複数の実施の形態においてこの開示から、当業者には明白である。
【0145】
同様に、本発明の例示的な実施の形態の上記説明において、開示を合理化し、一あるいは複数の発明的態様の理解を助ける目的で、単一の実施例、図面、説明のなかで、発明の種々の特徴をまとめて説明していることもあることを理解いただきたい。だが、この開示の方法は、特許請求された発明が各請求項に明白に記載されている以上の特徴を要求するという意図を反映するとして解釈されるものではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、発明的態様は、先に開示された単一の実施の形態のすべての特徴に見いだされるわけではない。よって、[発明を実施するための形態]に続く請求項は、この[発明を実施するための形態]に明白に含まれており、各請求項は本発明の個々の実施の形態として単独で存在する。
【0146】
また、ここで説明された実施の形態には、他の実施の形態に含まれる他の特徴ではない、いくつかの特徴を含んでいるものもあるが、異なる実施の形態の特徴の組み合わせは発明の範囲内にあるとみなされ、別の実施の形態を形成するものであり、当業者にはそう理解される。たとえば、以下の請求項において、特許請求された実施の形態はいずれも、いかなる組み合わせにおいても使用可能である。
【0147】
また、実施の形態には、方法、あるいはコンピュータシステムのプロセッサもしくはその機能を果たす他の手段によって実現されうる方法の要素の組み合わせとして、ここで説明されているものもある。よって、プロセッサは、このような方法や方法の要素を実行するために必要な命令とともに、方法や方法の要素を実行する手段を形成する。さらに、ここで説明された装置の実施の形態の要素は、本発明を実行する目的で、当該要素によって実現される機能を実行する手段の一例にほかならない。
【0148】
ここで示された説明においては、多くの具体的詳細が記載されている。しかし、本発明の実施の形態は、これらの具体的詳細による以外でも実施しうるものであると理解されたい。他の例では、周知の方法、構造および技術は、この説明の理解を不明瞭なものにしないために、詳細には示されていない。
【0149】
ここで用いられているように、一般的な物を説明するための序数を示す形容詞「第1の」、「第2の」、「第3の」等の使用は、別の指定がない限り、たんに同様の物の異なる例を言及しているにすぎず、このような形容詞で修飾された物が、時間的、空間的、序列、あるいは他のいかなる様式においても、特定の順序にあると意図するものではない。
【0150】
以下の請求項および実施の形態の説明において、「を備える」という用語は、少なくともその前に挙げられた要素や特徴を含んでいることを意味するものであって、他の要素、特徴を排除するものではない。よって、請求項で用いられる「備える」という用語は、その前に挙げられた手段、要素、工程を限定するものとして解釈されるべきではない。たとえば、「AおよびBを備える装置」という表現の範囲は、要素AおよびBだけで構成される装置に限定されるわけではない。「を含む」という用語もまた、少なくともその前に挙げられた要素や特徴を含んでいることを意味するものであって、他の要素、特徴を排除するものではない。よって、「含む」は「備える」の同義語であり、同じ意味を表す。
【0151】
同様に、請求項で用いられる「結合される」という用語は、直接の接続(結合)だけに限定されるものとして解釈されるべきではない。「結合される」、「接続される」という用語は、その派生語とともに用いられてもよい。これらの用語は、互いの同義語として意図されたものではないと理解されたい。よって、「装置Bと結合された装置A」という表現の範囲は、装置Aの出力が装置Bの入力に直接接続されている装置やシステムに限定されるわけではない。この表現は、装置Aの出力と装置Bの入力のあいだに経路があり、その経路が他の装置や手段を含んでいることもある、ということを意味している。「結合される」という用語は、2もしくはそれ以上の要素が物理的に直接あるいは電気的に接続されていることを意味する場合もあれば、あるいは2もしくはそれ以上の要素が直接的に接触しているわけではないが、互いに協働もしくは相互作用する関係にあることを意味する場合もある。
【0152】
この発明を添付図面に示す実施態様について説明したが、この発明は、特に明記した部分を除いては、その詳細な説明の記載をもって制約しようとするものではなく、特許請求の範囲に記載する範囲において広く構成しようとするものである。
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビルの効率的な暖房、換気、および空調(HVAC)システムおよび方法に関する。とりわけ、本発明は、ビルで使用される、より効率的な温度調節システムを提供する。
【背景技術】
【0002】
暖房、換気、および空調(HVAC)システムの設置が広く普及したことで、ビルの設計・形態の自由度(融通性)は著しく高まってきた。厳しい気候条件のもとでも快適な屋内環境がもたらされ、熱的性能の悪いビルでも居住に適したものにできるようになった。とはいえ、こうした自由度にはコストがかかってくる。たとえばオーストラリアでは、一般的にHVACが商業ビルのエネルギー利用の60パーセント以上を占め(Australian Greenhouse Office, 1999)、温室効果ガスの排出に大きく寄与し、配電網の整備を強く推進している。
【0003】
最適なHVAC制御戦略に向けて、現在かなりの調査が実施されている。こうした調査では、快適性、配電網の相互作用、温室効果ガス排出といった側面が、個別にではあるが、考慮されてきた。たとえば、Braun et al. (1990, 2001) ではエネルギー負荷成形用のビルの熱質量の利用が研究されており、Eto (2007) では配電網に運転予備電力を提供する空調の利用が例示されている。また、Fanger (19617) によって熱的快適性に関する調査が始められ、最近になって熱的快適性が生産性にもたらす効果がSeppaenen et al. (2006) によって研究されている。温室効果ガスの排出は一般的に包括的省エネ戦略の一環として行われてきたが、電熱併給システム(たとえばWhite and Ward (2006))によって廃熱および代替燃料を利用した排出量の削減も図られている。
【0004】
HVAC制御システムでは、一般的に商業ビル全体の制御設定値として温度が利用されている。バルブ・ダンパ位置、ファン回転速度等を含め、HVAC設備は所定の設定温度を得るために制御される。一般にこの設定温度は固定であるが、最新技術のHVACシステムでは、負荷制限要求に基づいて温度を変化させることもできる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、多くの望ましい特徴を有する改良型のHVAC制御システムを提供することである。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法が提供され、当該方法は、(a)当該ビル用の初期熱モデルを開発し、時間の経過とともに当該熱モデルを継続的に更新する工程と、(b)当該熱モデルを利用して、当該ビルの1日のHVAC稼働プランを継続的に開発する工程と、(c)現時点のHVAC稼働プランを継続的に検査し、このプランによって現時点のHVAC稼働状況を最適化する工程とを備える。
【0007】
前記熱モデルは当該ビルの過去の熱データに適合させた一連のパラメータを利用する。前記熱モデルは区分的多項式モデルである。前記初期熱モデルは実質的に毎日繰り返し更新される。1日の稼働プランは、ユーザの快適性、消費電力および電力コストを含む演算子選択肢の組み合わせを最適化したものである。稼働プランを駆動する演算子選択肢以外に外部からの入力として、電気の価格データ、気象予報、および居住者の快適満足度データがある。1日のHVAC稼働プランは実質的に5分ごとに再計算される。現時点のHVAC稼働プランによるHVAC稼働状況の前記最適化は、実質的に10秒ごとに試みられる。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法が提供され、当該方法は、(a)当該ビル用の熱モデルを決定する工程と、(b)当該ビルのユーザ用予想人体快適性モデルを決定する工程と、(c)当該予想人体快適性モデルを当該ビルのHVAC稼働プランの計算における主要因として利用する工程とを備える。
【0009】
前記人体快適性モデルは、商業ビルのユーザによるデータフィードバックによって、商業ビルのユーザの個人用快適データで増強される。前記人体快適性モデルはASHRAE標準快適性モデルから導き出される。
【0010】
一の実施の形態における熱モデルは以下の式を有する。
ここで、Tint(z)は、平均ビル内部温度を表し、Tamb(z)は、周囲温度を表し、Pcool(z)は、HVAC冷房消費電力を表す。
【0011】
PcoolTypは、標準的なHVAC冷房消費電力を表し、数式(1)では、他のパラメータとほぼ同じ範囲におけるパラメータFPcool(z)の大きさを得るためのスケーリングファクターとして用いられ、また、さまざまなビル管理システムの操作を可能にする正規化機構を提供する――これは最適化制約に関してとりわけ重要である。
【0012】
Pheat(z)は、HVAC暖房消費電力を表す。
【0013】
PheatTypは、標準的なHVAC暖房消費電力を表し、数式(1)では、他のパラメータとほぼ同じ範囲におけるパラメータFPheat(z)の大きさを得るためのスケーリングファクターとして用いられ、また、さまざまなビル管理システムの操作を可能にする正規化機構を提供する――これは最適化制約に関してとりわけ重要である。
【0014】
Famb(z)は、周囲温度に対するビル内部温度を取る。
【0015】
FPcool(z)は、HVAC冷房能力に対するビル内部温度を取る。
【0016】
FPheat(z)は、HVAC暖房能力に対するビル内部温度を取る。
【0017】
B(z),“基準”は、Famb(z),FPcool(z)およびFPheat(z)以外の係数を取る。
【0018】
“10”は、他のパラメータとほぼ同じ範囲におけるパラメータFPcool(z)の大きさを得るためのスケーリングファクターであり、この数字は、任意選択である。
【0019】
他の実施の形態によれば、当該熱モデルは実質的に以下の式を有する。
【0020】
理想的には、ΔTSSは、以下の式で表される。
【0021】
上記好ましい形態では、基準関数は曜日によって変化する。より好ましくは、基準関数は1日のうちの特定固定点において推定される三角基底関数の組み合わせによって形成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面によって、明白となる。
【図1】HVACシステムの動作環境を示す概略図である。
【図2】実施の形態のOpticoolシステムの概略ブロック図を示す。
【図3】商業ビルモデル開発の機能を模式的に例示する。
【図4】快適性に基づくゾーン制御を模式的に例示する。
【図5】あるゾーンの熱快適性モデリング用のインターフェイスの一例を示す。
【図6】商業ビルの熱的挙動をモデル化する熱モデリングループを例示する。
【図7】商業ビルの電力プランニングループを例示する。
【図8】温度調節ループを例示する。
【図9】商業ビルゾーン温度のモデル化の結果を例示する。
【図10】本発明の一の実施の形態のビルモデルの基準関数作成に使用される三角基底関数を例示する。
【図11】ビルモデルの全日の基準関数作成に使用される12の三角基底関数を例示する。
【図12】暖房能力パラメータと冷房能力パラメータとの関係の一例を示す。
【図13】実際の測定温度と予測された周囲温度を合成するプロセスを例示する。
【図14】オーストラリア商業ビルでの燃料使用率を種類ごとに示す。
【図15】燃料価格の内訳用グラフィカルユーザインタフェースの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を一例として説明する。
【0024】
本実施の形態では、システムのための基本の設定値が温度ではなく人体快適性(PMV(予測平均温冷感申告:快適性指標))である制御システムが提供される。本実施の形態では、人間の快適性の目標が最初に設定され、その目標ゾーン温度をはじめ、バルブ・ダンパ位置、ファン回転速度等の設備パラメータが、快適設定値を達成できるよう制御される。この点で、温度に基づく設定値スキームに依存する先行技術と対照的である。たとえば、同じ快適設定値を達成する一定範囲のさまざまな温度が考えられる。成果の点で言えば、基本的な制御パラメータとして人体快適性を用いることによって、ある特定レベルの人体快適性を維持しながら、著しいエネルギーおよびコスト節減を実現できる。
【0025】
また、本実施の形態のシステムは、商業ビルの熱モデルを継続的に更新するシステムおよび方法を提供する。本実施の形態は、商業ビルの継続的に調整可能な熱モデルに依存している。本実施の形態では、制御システムが継続的に熱モデルおよび快適性モデルを再学習し、続いて商業ビルの挙動を一定の間隔で再計画する。一の例示的な実施の形態では、以下のような計画された工程が実施される。
【0026】
1日に1度、システムは過去の性能データを利用して、商業ビルの熱モデルを学習する。このモデルでは、1日のうちの時間と曜日が特別に考慮されるため、生成される熱モデルが1日のうちの時間と曜日を認識したものとなる。
【0027】
システムは5分ごとにHVACの1日先の新しい稼働プランを作成する。定期的に1日先の稼働プランを更新することによって、システムは天候の変化や商業ビルの1日をとおした使用パターンに適応することができる。
【0028】
システムは10秒ごとに1日先の稼働プランを検査し、現在の状態と計画された状態とを比較し、1日先の稼働プランに合うようにHVAC設備を制御する。
【0029】
挙動を継続的に学習し、再計画することにより、商業ビルの速い動的変化(たとえば、突然ビルの中に人がなだれ込んだことにより商業ビルの一部に起こる熱応答の変化)、あるいはゆっくりとした動的変化(たとえば、ビルの西側の壁に沿って木が大きく育ったために午後の遅い時間に起こる熱応答の変化)の両方にシステムが対応できるという利点が生まれる。また、実際に商業ビルやHVACシステムは稼働を開始した当初の状態から変わってしまうことがしばしばあり、継続的に学習および適応をしなければ、HVACシステムの性能が落ち、結果的に人体快適性とエネルギー効率が低下することがある。
【0030】
一般的な商業ビルにおけるHVAC制御は、ビル管理システムによって実行される。ビル管理システムとは、コンピュータプログラムおよび関連ハードウェア、アクチュエータ、センサ、およびコントローラのことで、冷房、暖房、空調ユニットの稼働を測定し調整することによって、商業ビル居住者のための温度調節をする。
【0031】
商業ビルのエネルギー性能を改善するためには、適切な環境条件を提供しつつ、エネルギー消費量や支出状況といった資源を管理する、さらに一歩進んだアプローチが求められる。さまざまな資源や望ましい環境条件を検討した結果、一歩進んだ商業ビル制御システムの役割とは、必然的に競合するいくつかの目標のバランスを見つけだすことにある。適切なバランスを見つけだすことが、本実施の形態の重要な作用の一つである。
【0032】
一般的なHVACコントローラにはない、本実施の形態に係るHVAC制御システムの特徴を以下にあげる。
・異なるエネルギー源とそれらを利用することの意味合いを認識する。たとえば、商業ビルでは、天然ガスによる暖房と電気による冷房を利用していることがある。異なる燃料タイプは、コストや温室効果ガスといった点で異なる意味合いをもち、異なる負荷レベルで利用される設備が異なる効率によって稼働することになる。
・反動的な制御方針から離れるために予測を活用する。たとえば、温帯気候にある多くの商業ビルでは、午前中は暖房モードで稼働し、その後遅い時間になると冷房モードになる。天候予想と遅い時間の熱負荷を考慮に入れれば、暖房は適切に制限され、暖房負荷もその後の冷房負荷も削減することができる。
・熱快適性モデルを通した人体快適性の明確な考慮と、測定温度および湿度と他の要素(対気速度、衣類、活動レベル)の名目値の利用。
・さらに、個々の建物と居住者の考慮。熱快適性に関する調査が進んでいるにもかかわらず、快適性と満足度を測る一番の方法は、つねにビルの居住者からのフィードバックである。本実施の形態は熱快適性と満足度に関する居住者のフィードバックを得る機構を含んでいる。このユーザフィードバックは、局所的なユーザの好みを反映する計算熱快適性モデルに加味される、各HVACゾーンの快適性オフセットマップを計算する際に用いられる。ゾーンレベルの実際のユーザ快適性情報に応えることで、ビルの中で不快と感じている人のパーセンテージ(不快者率)を理論上5パーセント未満まで下げることができる。
・HVACシステムを制御した場合の、(i)ランニングコスト、(ii)温室ガス排出量、(iii)居住者の熱快適性のバランスを取る機構。
【0033】
<実施の詳細>
図1に本実施の形態の動作環境1を模式的に示す。本実施の形態(以下、OptiCOOL制御システム2と称する)は、監視制御システムである。すなわち、OptiCOOLは、既存のビル管理システム(BMS)3の構成要素であり、そのインターフェイスとして機能し、高水準コマンドをビル管理システムに供給する。OptiCOOL制御システムは、バルブ、ファン回転速度、検知・制御装置4とのインターフェイスについては個々に制御しておらず、こうした低次機能はビル管理システム3に任せている。OptiCOOLは、HVAC業界標準通信用インターフェイス(多くが入手可能)を通してビル管理システムのインターフェイスとなり(5)、ゾーン温度、冷房およびファン設定値といった基本的なデータをビル管理システムから入手する。OptiCOOL3はこのHVAC設備データと、電気価格、気象予報、ユーザ快適性データ、ビル用熱モデルを含む外部データ6とを組み合わせて、ビル管理システム3に基本ゾーン設定温度を供給する制御決定をくだす。すると、ビル管理システム3はこの設定温度を達成できるように、HVAC設備を管理する。
【0034】
上述したように、OptiCOOL制御システム3は、ビル全体のHVAC設備用の1日先もしくは同程度の期間の稼働プランの設定に基づいている。OptiCOOL制御システムの詳細を図2に示す。このようなプラン10を実現するには、ビルが天気やHVAC設備の動作にどう反応するかという熱モデルが必要である。モデル11は過去のビルデータから「学習」している。
【0035】
HVACシステムのインテリジェントスケジューリングを可能にするために、モデルは考えられうる範囲の制御動作に対するシステムの反応を評価できないといけない。制御中のシステムにモデルが適合していれば、適切な制御戦略を見つけるために考えられうる範囲の制御動作を判断する最適化ループの一環として用いることができる。図3は、ビルの熱的性能、HVACシステムの挙動、およびビルの熱負荷を事実上包含する基本的なHVACモデルを例示する。外部の熱的条件およびゾーン消費電力を入力として使用することで、モデルはゾーン条件との関係を学習することができる。
【0036】
設定値の変更や外部条件へのゾーンの反応を同定するために、いくつかのモデリング手法が利用可能であった。高度な学習テクニックを使用する実施の形態もあれば、モデル化されている根本的な物理的プロセスについての明確な知識を要することなく、入力/出力の特性を観察することから単純な「ブラックボックス」モデルを導き出す実施の形態もある。後者のモデルは、複雑で非線形の多変数のシステムに対してとりわけ有効で、この手法ではシステムパラメータの手動構成が必要ない。単純な多項式手法が適していることが解った。このモデルの利点は、適合されたパラメータにおいて線形なモデルであり、そのためモデルフィッティングプロセスを実質的に単純化できる。
【0037】
一の実施の形態では、高度な学習プロセスがHVACモデルにおいて実現されている。このプロセスには、HVACの冷暖房能力に加えて、周囲温度に対するビルの反応のしかたを取得するためのモデルのパラメータを推定する工程が含まれている。こうしたモデルの一例を、<ビルモデルの一例>で説明する。
【0038】
入力データは手動入力でもよいし、各情報源向けの適切なインターフェイスが使われてもよい。たとえば、一の実施の形態では、オーストラリア気象局(Australian Bureau of Meteorology)より気象予測データを、オーストラリアン・エレクトリシティ・マーケット・オペレーター(Australian Electricity Market Operator)よりリアルタイム電気価格情報を、およびビル居住者快適性調査結果を得るためのJavaインターフェイスが開発されている。
【0039】
この多項式モデルでは、ビルの平均ゾーン温度を推定するために、HVAC電力、周囲温度、ビルの同定熱ベース負荷プロファイルを利用している。このモデルは以下の式で表される。
【0040】
ここで、TAVは、ビル全体の平均ゾーン温度であり、Tambient は、外部周囲温度であり、PHVACは、HVACシステムの総消費電力であり、k1, k2, k3, k4, k5は、測定データに最も適合する調整可能パラメータであり、τ1, τ1は、ビルHVACシステムの支配的な熱時定数であり、sは、複素ラプラス変数であり、 ‘Initial Conditions’は、測定期間開始時におけるビル構造とHVACシステムの内部熱状態における不確実性を表す。これらの初期状態(initial conditions)は、一時的なもので、システムの固有モードの組み合わせで決まり、それゆえに、k6e-t/τ1 + k7e-t/τ2の形式で表わされる。これらのモードは、システム同定にバイアスがかからないように明確に同定される。Thermal Baseloadは、1日の中で異なる熱負荷を示す同定ベース負荷プロファイルである。これは、たとえば、ソーラーゲインやビル居住者の活動といった要素に依存する。熱べース負荷は、区分的線形関数としてパラメータ化することができる。このベース負荷関数は、設定されたデータにおいてそれぞれの日によって同一であるとされ、周囲温度やHVAC電力に依存しないで決定される。
【0041】
従来のVAVシステムを備えた実験用ビルから得たデータを用いて、16日間5分間隔で取ったデータは、さまざまなパラメータを決定する回帰分析を用いた多項式モデルに適合される。このデータセットに適合する決定係数はr2=0.956で、これは、このモデルがうまく適合していることを示している。追加の二次項が求められていたが(すなわち2乗)、これらは分散を著しく増加させるものではなく、そのためモデルには含まれていなかった。適合の一例を図9に示す。
【0042】
ビル熱モデル11が確立されると、このモデルと気象予報および電気料金情報6を合わせて、HVAC設備の消費プラン出力12を生成する。このプランは、ビル全体のPMV快適性設定値を得るのに必要な個々のHVAC設備の消費電力を蓄積したものに基づいた、ビルの時系列電力プロファイルである。このプラン12を求め出力するために、最適化ルーチンはビルの想定されうるさまざまな電力プロファイルを考慮し、居住者の快適性、ランニングコスト、二酸化炭素排出量といった優先事項を考慮したコスト関数に基づいて、どのプロファイルを使用するかを決定する。最適な(コスト関数の観点からコストミニマムの)電力プロファイル12が決定されると、このプロファイルがビル全体の快適性プロファイルへ転換され、ビル全体の快適設定値が1日を通して一定間隔で決定される。
【0043】
ビル全体の快適設定値15が決定されると、ゾーン制御決定16を介したビルの各ゾーンの個別制御に基づいて、実際のHVAC制御が実施される。
【0044】
図4に示すように(制御システムからのスクリーンショット)、ゾーン制御は3つの主機能ブロックに基づいて実施される。すなわち、快適性フィードバックブロック41は、ComfortSENSEクライアントアプリケーションに基づいて、ユーザのフィードバックを取得し、これを“不快者率”に変換する。ゾーン快適性モデルブロック42はゾーン温度(OptiCOOL-BMSデータリンクを介してBMSより提供される)を取得し、ASHRAE-55標準“Thermal Environmental Conditions for Human Occupancy”を用いて該当ゾーンの予測平均温冷感申告(PMV)44と予測不快者率(PPD)を計算する。このブロックの機能性を図5に示す。その後、この理論上のPMVおよびPDDの数字が快適性フィードバックブロックから得たPPDの測定値によって補正される(45)。快適性フィードバックブロックから有効なデータ(利用は任意である)が得られない場合、システムはASHRAE標準から計算した理論上のPMV/PPDの数字を全体的に用いる。
【0045】
ゾーン制御ブロック47はビル全体制御ループから該当ゾーンの所定快適設定値(PMV)を取得し、(ビル管理システムから)ゾーンおよび外部温度を取得し、快適性モデルから実際のPMV/PPD値を取得し、望ましいゾーンPMV設定値を得るためのゾーン設定温度48を決定する。
【0046】
図2に戻り、ここにはOptiCOOLソフトウェアシステム2における3つの主要制御ループが示されている。すなわち、ビル熱モデル11を決定する熱モデリングループ、消費電力プラン10を決定する電力プランニングループ、およびビルのゾーン設定値を設定するビル設定値決定ループである。OptiCOOLソフトウェアシステムが作成する3つの将来プランは、継続的に最適化および更新される。つまり、ビル熱モデル、フィードバックにより調整された人体快適性モデル、続いて、全体のビル電力プロファイルは、一定の(あらかじめ決められた)制御間隔にて更新される。この挙動によって、システムは予測電気料金や気象予報、ビルの使用状況や人体快適性における突然の変化といった外的要因の変化に対応することが可能になるため、重要である。この挙動の結果、HVAC消費電力、人体快適性、および時間といったつねに更新される先行プロファイルが得られる。3つの主要ループは、次のように動作し得る。
【0047】
<モデリングループ(図6)>
モデリングループは1日に1度実行され、曜日、1日のうちの時間、HVAC消費電力、および外部の気象に基づいた内部温度を予測する、ビルの熱モデル11を形成する。このループには、以下の工程が含まれる。過去の電力および対応温度プロファイル61を供給する工程、予想される電力および気象依存要因61を計算する工程、時間および曜日要因63用の定数を計算する工程、および指定された曜日、時間、予想外部気象、およびHVAC電力におけるビル内の温度を予測する多項式モデルを組み立てる工程である。
【0048】
<電力プランニングループ(図7)>
電力プランニングループは5分ごとに実行され、24時間先に計画されたビルのHVAC消費電力プロファイル12を作成する。このループは、まず現時点のHVAC総消費電力を決定し、将来時点の気象予報を決定し、最適化によってコストミニマムな電力プランを作成する。
【0049】
<設定値決定制御ループ(図8)>
ビル全体の設定値決定制御ループ14は、10秒ごとに実行され、ビルの電力プランを取得し、ビル管理システム(BMS)にこの電力プランを達成することを目標としたゾーン設定温度を供給する。制御システムは、ビルの各HVACゾーンの計画パラメータとして、人体快適性を使用する。局所的なユーザフィードバックに基づく変化を含んだASHRAE快適モデルを適用することによって、人体快適性は、屋内温度および湿度といった物理的パラメータに転換される。ファン回転速度またはバルブ設定値といったビルパラメータは、提供されたゾーン温度データに基づいたものにするため、現状通りビル管理システム(BMS)の実施に任せ、ここでは特定されない。
【0050】
実現されたシステムは、一のモデリング技法、すなわち線形時不変技法を用いる。この技法は、ビルの熱応答の三次線形時不変モデルをパラメータ化するための制約最小二乗適合アルゴリズムの使用に基づいて実施される。
【0051】
このシステムの初期条件は、過去のビル性能データについてこのアルゴリズムを実行することによって確立される。
【0052】
このインテリジェントHVAC監視制御システムは、OPCのような業界標準プロセス制御インターフェイスによって、既存のビル管理システム(BMS)に容易に組み込むことができる。このインテリジェントHVACコントローラは、機械学習技術を利用して自動的に周辺環境のモデルを形成し、こうしたモデルを用いて、最適なHVAC稼働プランを決定するためのさまざまな制御戦略を評価する。この技術は、既存および新しいビルストックの両方をターゲットとし、最低限の設備投資しか必要としないため、投資回収期間が比較的短くてすみ、さらに操業コストの削減に向けて著しい進展が期待できる。さらに、エネルギー消費の削減と二酸化炭素排出用の削減によって、ビルのエネルギー効率と性能評価の改善が容易になる。
【0053】
<熱快適性および生産性の評価>
熱快適性を考えるとき温度がすぐに思い浮かぶが、ほかにも寄与する要因がたくさんある。風速、放射温度、湿度、代謝率、衣類レベルがそれに含まれる。"Thermal Environmental Conditions for Human Occupancy"のためのASHRAE-55標準には、指定条件のもとでの予測平均温冷感申告(PMV)および居住者の予測不快者率(PPD)を理論的に求める方法が詳細に述べられている。
【0054】
熱快適性を評価・予測するにあたって、PPD測定法(図5のインターフェイスで実施される)には居住者の快適性フィードバックアプリケーションが統合されている。ASHRAE適応快適性基準の場合、幅広い条件が容認されており、たとえば窓を開け閉めできるなど、ビルが自然に換気され、ユーザが自身の環境条件を直接制御できる。同様に、個々の居住者の快適性をフィードバックするための機構を提供すれば、熱満足度が向上する。それは、屋内温度をユーザが調節できるという直接的な物理的効果からだけでなく、居住者に権限を与えるという側面からの効果もある(Brager et al. 2004)。
【0055】
居住者アプリケーションを居住者のパーソナルコンピュータに組み込むことができ、色分けされた小さなアイコンおよび“ポップアップ”メッセージによって、居住者にHVACの稼働モードの変化(たとえば、空調、自然換気、ピーク時の電力需要)を知らせることができる。上記の説明は熱快適性の評価を扱ったものだが、職場環境を考えるなら、熱快適性が生産性にどう影響するかというさらに複雑な問題が生じてくる。この問題を数値を使って説明しようと多くの研究調査がなされてきたが、明快な結果は出ておらず、多種多様な研究結果を評価したうえで、Seppaenen et al. (2003, 2006) は温度が21〜25℃のあいだでは統計からみて生産性に顕著な差異は見られないと示した。なお、Seppaenenは、温度が25℃を超えると、1℃につき約2パーセント生産性が低下すると示している。
【0056】
既存のビル管理システム(BMS)で同一の熱快適性を維持しつつ、エネルギーコストと二酸化炭素排出量を実質的に節減することは可能であることがわかっている。
【0057】
ビルの管理者またはユーザに、競合するパフォーマンス目標に対する相対的重み付けを決定させることによって、特定の制御戦略を選んだ場合に起こる代償について、彼らは明確に知ることができる。
【0058】
<ビルモデルの一例>
この学習プロセスモデルには、HVACの冷暖房能力に加えて、周囲温度に対するビルの反応のしかたを取得するためのモデルのパラメータを推定する工程が含まれている。パラメータの推定方法は、学習データへの最小二乗誤差適合である。学習データは、ビル管理システムからリアルタイムもしくはオフラインで収集するか、ビル管理システムの過去の設定値から収集する。学習プロセスは、データがどのように収集されたか(リアルタイムかオフラインか)には影響されないが、“充分な”適合が確実に行えるだけの充分な量のデータを収集することが求められる。
【0059】
このモデルの一の実施の形態は、以下の式で表される。
【0060】
上記のモデルにおいて、とくに興味を引く項目は、周囲温度や冷暖房能力、および基準に対する動的応答を表す伝達関数である。一の実施の形態においては、これらの伝達関数は異なる時定数による一次ローパスフィルタの集まりである。各フィルタは以下の式で表される。
ここで、z−1は、m差分演算子であり、aは、以下の式で与えられる。
ここで、τは、システム時定数であり、hは、サンプリング間隔である。他の実施の形態では、伝達関数は、高次フィルタ関数のような他の種類の関数を表している。大ざっぱに言えば、時定数にくらべてサンプリングが充分に速いことが保証される必要がある。一般的に、
【0061】
ビル管理システムから過去のデータを引き出す際には考慮しておかなくてはいけないことがある。離散時間領域において、式(2)の一次フィルタは次の式で表される。
ここで、x(tk)は、入力であり、上の式(3)で表され、tkは、サンプルkのサンプリング時間である。本実施の形態では、x(tk)の代わりにx(tk−1)を用いていることに留意されたい。これは、最小限の差異であり、その影響はあったとしてもほとんどないのが理想である。他の実施の形態では、x(tk−1)を異なる形で表わしている。けれども、本実施の形態では、以下の式が用いられる。
【0062】
サンプル番号だけを用いることで、表記を単純化できる。
【0063】
<周囲温度とHVAC電力に対する反応>
本実施の形態では、冷暖房HVAC電力だけでなく周囲温度に対するビルの反応が3つの一次系としてモデル化され、式(5)が異なる時定数を用いてそれぞれ表されている。すなわち、
は、それぞれ3つの一次応答の時定数1h,2,および5hに対応する式(3)のパラメータである(式(3)とは一致していないが、本目的を考えれば充分に近い)。これを考慮すると、これらの時定数に対応する式(2)の一次フィルタであるF1h,F2h,F5hを用いて、周囲温度、HVAC冷房能力、およびHVAC暖房能力に対する動的応答は以下のようにモデル化される。
【0064】
この時間領域において、上記に対する動的応答(もしくはフィルタを適用した際の応答――よって上付き“F”)は以下のようになる。
ここで、
Nは、それぞれ時定数1h,2hおよび5hに対して1,2および5である。パラメータpijは、さまざまな時定数に対応する動的応答の相対寄与を表す。これらのパラメータは、<学習:モデルパラメータ推定>で説明するように、推定(“学習”)されたものである。
【0065】
上記の式を式(1)のビル全体モデルに適用すると、以下の時間領域バージョンが得られる。
【0066】
ここで、基準Bstate(k)は、周囲温度および冷暖房能力反応によってモデル化されたもの以外の平均内部温度反応への変化を取るキャッチオール関数である。下付の“state”は、「平日」か「週末」のどちらかを示し、前者は一般的な就業時間の活気あるビルでの稼働を示し、後者は週末の稼働を示す。このように、事実上、曜日によって2タイプの異なるモデルが存在する。
【0067】
一の実施の形態では、基準関数の特定の形式が以下のようになる。
【0068】
【0069】
“12”という数字は、2時間ごとに基準挙動に著しい差異が予想されるという事実を反映しており(三角形関数の1つの頂点により取得される)、その中間時が、寄与する三角形関数の頂点間の線形補間と同等の、三角形関数の線形結合によって適切にモデル化されている。
【0070】
【0071】
基準関数の目的は、1日を通じてのビルの負荷(式(9)〜(17)で取得したもの以外)の変化のしかたを取得することである。たとえば、午前中の早い時間帯に多くの人がビル内に流れ込めば、ビルの熱力学に影響をもたらすことは当然予測できる。昼休みや夕方に人がビルから出て行く場合も同じである。平日基準の12の三角形関数と、これとは別に週末基準の12の三角形関数がある。
【0072】
他の実施の形態では、基準関数の異なる形式が、基底関数の異なる組み合わせを使って実現されることを理解されたい。
【0073】
<学習:モデルパラメータ推定>
【0074】
ここで、
【0075】
【0076】
まだ説明していない式(22)の最後の要素は、基準値B(k)である。これらは、(式(20)で使われたように)“1”をピークとして持つhiを中心とした三角形関数のサンプルである。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
これらの要件を実現するAの特定の形態は、以下のように表される。
ここで、Im×mは、サイズがm×mの恒等行列であり、0m×nは、m列n行の零行列である。パラメータ推定制約は、ベクトルbに包含されており、このベクトルの具体例が以下のように与えられる。
ここで、上記の201×24は、20の24次元のベクトルを表している。
【0081】
<最適化>
上記のパラメータに従って推定されたモデルから、ある「コスト」目標および/または制約を満たす最適能力プロファイルを見つけることが可能である。本節では、冷房を例にとって説明する。けれども、同様の最適化プロセスは暖房を含むモデルについても可能であることを理解されたい。
【0082】
たとえば、Tamb={Tamb(1),...,Tamb(k)}で与えられる気象予報を考える。また、Pcool={Pcool(1),...,Pcool(k)}で与えられたビルの冷房能力プロファイルが選択された場合についても考える。2つの時系列をフィルタ適用の式(12)〜(17)に入れ、フィルタ適用バージョンを求めることが可能で、そこから式(18):Tint={Tint(1),...,Tint(k)}によって、ビル内部温度を求めることが可能である。
【0083】
PcoolおよびTintによって、選択された冷房能力プロファイルPcoolがよく機能しているかどうかを評価することができる。具体的には、エネルギー消費とCO2排出のコスト(Pcoolに基づく)、および居住者の快適性(Tintに基づく)に目を向けることができる。
【0084】
本実施の形態のエネルギー消費のドルコストは,以下の式で与えられる。
ここで、Tariff(tk)は、サンプルkに対応する時間のエネルギー料金を表す。
【0085】
CO2排出のコストは、以下の式で与えられる。
【0086】
以下のように、所定の目標平均快適性レベルからの偏差にコストを課すことも
可能である。
【0087】
これら3つのコスト要素を結合して単独のコスト関数にすることができる。
【0088】
式(35)において、3つのパラメータw1,w2およびPPDtargetは、ユーザが設定可能である。C(Pcool|Tamb)のパラメータPcoolは、ある与えられた周囲温度予報に対して、全体のコスト関数が選択された冷房能力プロファイルにのみ依存していることを強調するためのものである。
【0089】
コスト関数によって、標準最適化を用いた最適能力プロファイルを見つけることが可能になる。もちろん、代替のコスト関数または変形コスト関数も利用可能である。
【0090】
<暖房を含む代替のモデル例>
暖房の最適化を含む、上述のモデルの拡張形をこれから説明する。拡張形はさらなるビルの稼働タイプ、すなわち暖房と混合燃料源を、代替の最適化およびモデリング方法においても可能にする。モデルは、熱エネルギー効果の同定、電気および非電気燃料源、ならびに冷暖房混合状態におけるビルのエネルギー消費、快適性レベル、およびCO2排出が考慮されるように拡張される。
【0091】
この代替モデルは、従来のガスボイラー暖房システム、温水・冷水ループおよびVAVシステムを備えたビルに対するテスト用に設計されてきた。当然ながら、あらゆるタイプのビルに対するカスタマイズも実行されなければならない。このモデルが開発された対象のビルの一例はオーストラリアのビクトリア州にあり、以下のような特徴をもつ。構造は2006年建築のブロック造り;フロア面積は1808m2であり、3階建てオフィス、混合モードでの稼働――ファンによる自然換気、自動開閉窓、暖房:Raypak 868 ガスボイラー(868kWth)(リンク)、冷房:York YCA 0235 6-stage Air-Cooled Scroll Chiller (名目235kWth)(リンク)、ビル管理システム(BMS):Siemens Desigo v3.0, Siemens BACNet Server、計器:ガス・ボリュームメーター、サブ電気メータ――メカニカルサービス&ビル全体管理。
【0092】
このモデルは、ゾーン温度に対する冷暖房効果を学習できるビルエネルギーモデル構造の拡張を可能にする。また、モデルは、冷暖房エネルギー消費の最適化も可能にする。さらに、このモデルは非電気燃料源も扱う。これは、容量、価格体系、および温室効果ガス排出も考慮している。このモデルはまた、おそらく同時活用される多様なエネルギー源についても扱う。
【0093】
先の冷房だけのモデルは、HVACエネルギー消費の大半を冷房が占める温かい気候で運営されるビルに向けて設計されていた。冷房がほぼ電気冷房のみで実現されるのに対し、暖房には多くの異なるタイプのシステムおよび燃料が一般に使われる。さらに、1つのビルでも多様なシステムが設置され、同時に稼働していることもある――それが実行を著しく複雑化している。
【0094】
ビルは多様な暖房/冷房システムを備え、ある条件下でどれを使うかについては実質的に自由に決められるものの、当該代替のモデルを用いた手法では、既存のビル管理システムに指定の空調設定値に作用するよう適切な設備の組み合わせを決定させている。高いレベルでは、当該代替のモデルは、エネルギー温室効果ガスとビルの状態との関係を学習し、最適化ゾーン状態設定値を適用する。低いレベルでは、主要最適化の一部ではないものの、優先的にある設備を閉鎖もしくは使用するために、この代替モデルを用いることができる。低レベルの変化が実施されると、当該代替のモデルは、状態とエネルギーとの関係において変化を認識し、ビルモデルを更新する。
【0095】
<ゾーンレベル暖房/冷房制御>
最初に説明したモデルは、主制御変数にゾーンレベルPMV設定値を用いた。冷房だけ主に使用されているケースでは、暖房はルールに基づいた手法を用いて実行されており(暖房は最低限容認されうる快適性レベルに設定され、それ以上は実行されない)、PMV設定値は冷房の目標レベルと解釈されていた。個々のゾーン制御アルゴリズムは必然的に以下のように示される。
If TZone < TMin_Allowed then Heat_To_TMin else Cool_To_PMV_Setpoint end
【0096】
これらの暖房/冷房設定値が厳密にはどのように実現されるかは、特定のビル管理システム(BMS)およびビル構造に依存していた。そこには、給気設定値や冷水/温水バルブ等の制御も含まれる。この低レベルのBMSインターフェイスによって、冷房設定値を下回る冷房または暖房設定値を上回る暖房でエネルギーが浪費されないという点が重要である(たとえば、冷房能力を下げる目的でゾーン設定値を上げた場合、電気による再加熱が起こる)。暖房と冷房をともに最適化するために、暖房と冷房が同時に実行される可能性を最小限に抑えつつ(それは隣接するゾーンにとって、まさしくエネルギーの浪費になる)、当該代替のモデルの高レベルビル最適化が2つの設定値、つまり冷房設定値PMVと暖房設定値PMV、を生成するように改訂されている。基本的な個々のゾーン制御アルゴリズムは、本質的に以下を実行するように改訂されている。
If PMVZone < PMVHeat_Setpoint then Heat_To_PMVHeat_Setpointelse Cool_To_PMVCool_Setpointend
これは,本質的には最初のものと同じであるが、暖房設定値と冷房設定値の両方がPMVで表され、この最適化によって動的に変化する。これによって、低レベルゾーンコントローラには、最低限の変化しか求められない。
【0097】
暖房、冷房、および異なる燃料源を容易に含められるように、“グレーボックス”ビルモデルの構造が改訂された。改訂後の式は,以下のようになる。
【0098】
これは、HVACシステムによるゾーン温度の差を表している。
【0099】
フィルタF(s)は、以前も、そして現在でもフィードスルーで、1,2,および5時間の時定数を持つ三次線形時不変である。具体的には、
および
ここで、kT_0,kT_1,kT_2,kT_3,kA_0,kA_1,kA_2およびkA_3は、同定されたフィルタゲインであり、τ1,τ2,およびτ3は、それぞれ、1,2,および5時間の時定数である。
【0100】
BaselineFcnは、BaselineWeekdayおよびBaselineWeekendの2つのベクトルで表され、それぞれのベクトルは1×12次元のベクトルで、(平日もしくは週末)1日の時間が[0 2 4 8 10 12 14 16 18 20 22]の場合のモデル化された平均ゾーン温度に付加されるオフセット温度(℃)と解釈される。他の時間の適切なBaseline Fcn値が計算される際には、2つの最も近接する値のあいだで線形補間が行われる。当該代替のモデルにおける1つの違いは、正規化されたHVAC冷房能力がΔTSSに置きかえられている点である。ΔTSSは、ゾーン温度に関する多様な暖房/冷房源の総影響度を表す。
【0101】
<暖房/冷房能力の関係>
先のモデルは冷房が主に使用されるシナリオを扱っていたが、暖房を使用するケースを扱うには、代替の能力モデル構造が望ましい。主要因は、以下のとおりである。ゾーン間の多様性が意味するのは、総ゾーン温度が設定値になっていたとしても、暖房用エネルギーと冷房用エネルギーの両方が個々のゾーンを設定値に維持するために使用される必要があるということ、暖房と冷房を適用されたHVAC電力に比例するものとして扱うよりも、顕著な冷房/暖房が実現する前でさえ、HVACシステムの稼働と結びついた相応な固定負荷(すなわちファンとポンプ)が多くかかりがちだということを認識する必要がある。このベースラインの一部は、他の場所の負荷によるものである場合もある。もう1つの要因は、周囲温度とともに変化する暖房/冷房システムの効率である。具体的な例をあげるなら、周囲温度の上昇にともない、冷房の性能係数(COP)が低下する。冷房/暖房を稼働するよりも外気の利用を増やした場合にも(デイパージ)、この影響がもたらされる。
【0102】
以下に示すような、測定電力と総ゾーン温度への影響との関係が利用されていた。
ここで、数式の第1項は、有効冷房温度(ΔTCool)であり、第2項は、有効暖房温度(ΔTHeat)であり、各パラメータは、以下のものを表す。PCoolおよびPHeatは、それぞれ実際の冷房能力および暖房能力(kW)であり、PcbおよびPhbは、それぞれ基準冷房能力および基準暖房能力(kW)であり、αcおよびαhは、HVAC電力有効性の名義尺度(℃/kW)であり、μcおよびμhは、外部温度の関数としてのHVAC効率のディレーティングである。
【0103】
ディレーティングは、以下のようにパラメータ化される。
および
Tcxは、これを上回ると冷房ディレーティングが起こる温度であり、Thxは、これを下回ると暖房ディレーティングが起こる温度である。一般的には、20℃ぐらいである。αcdおよびαhdは、ディレーティング比であり、一般的には、約0.02/℃である。
【0104】
さらに、暖房と冷房がともに使用されるシナリオをエミュレートするために、有効冷房は、ΔTSS>ΔTc0で起こると考えられ、有効暖房は、ΔTSS<ΔTh0で起こると考えられている。これらの一般的な値は、ΔTc0=−0.5℃ およびΔTh0=0.5℃で、つまり、ΔTSSが−0.5℃〜0.5℃のとき、暖房と冷房の組み合わせが起きていると考えられる。
【0105】
図12は、これらの変数の相互関係を示している。暖房と冷房を組み合わせた能力がビルの総能力であり、これは“V”、すなわち外部温度の関数としてのビルの冷暖房能力に期待する、放物線状の関係となっている。
【0106】
<改訂ビルモデルへのフィッティング>
改訂モデルでは、ビルモデルのフィッティングは1日に1度、ビルが再始動するときに行われる。ビルログファイルからデータが読み出され、時系列データが信号用に抽出される。このデータには以下のものが含まれる。TZは、‘Config_ZoneSizes’コンフィギュレーションパラメータに基づいた全ゾーン温度の加重平均として取得される総ゾーン温度であり、PCoolは、後述のように、全冷房関連能力測定値の総和として取得される。PHeatは、後述のように、全暖房関連能力測定値の総和として取得される。TAmbは、測定周囲(外部)温度である。
【0107】
理想的には、これらのデータセットは、2〜3ヵ月分の継続データからなる。そうでない場合、わずかなデータギャップは、補間される。データに大きなギャップがある場合、データは、複数のセットに分割され、データにフィルタがかけられると、未知の初期条件の影響を最小化するために、各セットの最初の5時間が廃棄される。
【0108】
【0109】
モデル適合は入れ子最適化としてプログラムされる。
【0110】
このモデル適合を実行する際に、Matlab lsqlin 関数(線形制約付き最小二乗)は、FilterParametersを適合するために用いられ、fmincon(多次元制約付き非線形最小化)は、PowerParametersサーチのために用いられる。このモデルは、線形よりも難解な問題であり、求められる非線形最小化の次元を減じるためにこのように分解される。モデルフィッティングルーチンが更新されることで、そのルーチンにハードコーディングされたこれらのパラメータ値の範囲を限定するというよりも、各パラメータの上限および下限として、これらが受け継がれている。パラメータが適合しなければ、これらの上限および下限は同一に設定される。
【0111】
<改訂ビルモデルによるビル設定値の最適化>
当該代替モデルでは、ビルの設定値最適化の方法が、暖房を利用するケースを考慮したかたちに改訂される。先のモデルでは、最適化によって、最適化されたビルの電力プロファイルが返され、その後このプロファイルを追跡しながら、各ゾーンの適切なPMV設定値を決定するために用いられた。代替のモデルでは、改訂された最適化によって、暖房および冷房の期待能力に加えて、暖房および冷房の二本立ての目標PMV設定値が提供される。PMV設定値は現在では主要最適化設定値として扱われており、電気使用量が予想を超えつつある場合にのみ緩和される。このことと、初期条件の導出への改訂されたアプローチが、電力測定における変動に対する感度を一部克服するのに役立っている。電気使用量が予想を超えない限り、ビルはPMV設定値に基づいて稼働する。
【0112】
二本立てPMV設定値は、先のモデルと同様の最適化プロセスを通して導き出されるが、ここでは、ΔTSSは、冷房能力ではなく、最適化された変数である。ΔTSSから、予想暖房/冷房能力が非線形マップより決定され、電力コスト、温室効果ガスコスト、およびPMVが求められる。最適化されたPMVから、2本立てPMV設定値は、以下のように表される。
つまり、ビルが全体暖房の状態のとき、冷房が必要なゾーンでだけ最小許容PMV(PMVは−3:冷〜3:暖の範囲)まで冷房が入れられ、暖房が入っているゾーンは最適化PMV設定値をめざす。同様の方式が冷房モードでも実施される。
【0113】
設定値最適化は、以下の項目について更新された情報に基づいて5分ごとに実施される。項目は、実際のビルゾーン温度、エネルギー価格、および気象予報である。これらは、先に決定されたビルモデルと連動して使用され、暖房/冷房能力とビルの熱的条件のあいだの予測関係を以下のように与える。
【0114】
最適化によって、以下の最小化が図られる。
ここで、CO2は、その日の残りの時間の提案稼働スケジュールで推定されるCO2の影響であり、Costは、その日の残りの時間の提案稼働スケジュールで推定される金銭的コストであり、average PPDは、全日の推定平均PPDであり、WCO2& WCostは、最適化に対するこれらのメトリックスの相対的重要度を配分する(スカラー)重みであり、AvPPDは、その日のビルの目標最大許容平均PPDである。
【0115】
このコスト関数を評価する際には、ΔTSSと暖房/冷房能力のあいだ、ゆえにエネルギーコストとCO2コストのあいだに前節で説明した静的(非線形)マップが存在する。その日の残りの時間のPMVとPPDプロファイルを評価するためには、将来の気象条件の推定が必要となる。ビル管理システム(BMS)からは、TAmbのデータ履歴を取得し、BOM(さらに、局所的な気象学習アルゴリズム)から、予測周囲温度TForecastを取得する。これら2つのデータセットは合成することにより、データに断絶がなくなる。過去の周囲温度と予測周囲温度の合成を3時間間隔で実行し、その結果できたデータをTPredictedで表す。データの合成プロセスを図13に示す。
【0116】
<初期条件の扱い>
先のモデルは、モデル動特性を初期化するのに、測定冷房能力と周囲温度に依存していた。このことは、測定された能力が予測モデル化冷房能力と著しく異なる(たとえば、圧縮ステージングによって)、もしくはビルの動特性と負荷(使用パターン)がモデル化されたものと著しく異なるといった問題を起こしかねない。こうした問題は、測定挙動(現時点までの)とこれから先の予測挙動とのあいだの不連続性(断絶)として現れる。こうした問題を克服し、できるだけ電力モデリングへの依存性を排除するために、最適化は、ビルの動的状態をモデル化するのに状態推定器(オブザーバ)を使用し、自走反応をもたらす。これによって、最適化ルーチンは、提案されたΔTSSに対するビルの反応を計算する際にゼロ初期条件のケースだけを扱うだけでよくなる。
【0117】
推定条件は、ビルモデルを配列し直すことによって得られる。
【0118】
<異なる燃料タイプの提供>
当該代替のモデルは、異なる燃料タイプを扱うこともできる。主な論点は以下の通りである。異なる燃料タイプは、温室効果ガスポテンシャルが異なる。異なる燃料タイプは、価格体系が異なる。燃料の使用状況をモニターするために、異なった測定方法が用いられる。
【0119】
オーストラリアでは、異なるエネルギー源の相対的影響がオーストラリア政府、気候変動・エネルギー効率問題担当省(DCCEE)によって計算されている。毎年、これらの数字は更新され、‘National Greenhouse Accounts (NGA) Factors’ [1]として発行される。各要素は、採掘方法の違い、燃料混合、配分損失等によって変化し、その結果、時間および地理的位置によって変化する。温室効果ガスの影響についての報告のなかで、異なる3つのタイプの排出要因が使用されている:スコープ1の排出――活動からの直接的CO2等価排出(たとえば、ガスの抽出/精製/輸送に何が伴うかを無視して、天然ガスを燃焼させることによる直接的なCO2排出)、スコープ2の排出――組織が活動をする際に購入・消費する電気の発生による間接的なCO2等価排出(すなわち、あなたのために電気を生成する際に、あなたの代わりに発電所が起こすスコープ1の排出)、スコープ3の排出――燃料の抽出、生産、輸送、生成、配分/伝達等と結びついた、上記以外のさまざまな排出。これには電気回路網での損失も含まれる。スコープ3の排出は、全燃料サイクルコストの評価に含まれる。
【0120】
オーストラリアの商業ビルでの使用と報告されているものとして、商業ビルセクターで使用されている異なる燃料タイプの相対的比率を図14に示す。これは、(当然ながら)電気と天然ガスが大半を占めている。オーストラリアでのこれらの燃料のフルサイクルに対する最近の推定(2010年7月付、[1]より)が、下の表(1MWh=3.6GJ)に示されている。
【0121】
<異なる燃料タイプと測定方法に応じた構成変化>
先のモデルは、冷房に寄与する一のタイプの電力(kW)測定を効果的に扱えるものである。当該代替のモデルでは、コンフィギュレーションパラメータを含めることによって、先のモデルが改訂されている。
【0122】
当該代替のモデルは、5つのコンフィギュレーション変数を含む。
【0123】
Config_PowerWeights 1 0.72 278
【0124】
Config_CarbonWeights 1.07 1.07 0.236
【0125】
Config_PowerTypes CP CP HE
【0126】
Config_PowerPrices 1 1 2
【0127】
Config_PowerPriceNames ‘Elec TOU’ ‘Gas’
【0128】
多くの正規化タイプが利用可能であるものの、スケーリングファクターには、異なる燃料と測定タイプの相対的効果を比較するメカニズムを提供する必要がある。スケーリングファクターとは、名目的には測定量を、電力を比較するためにkW(もしくはkWh)へと変換し、温室効果の影響を比較するためにkgCO2-e/kWhへと変換するものと考えられてきた。PowerWeights コンフィギュレーション変数はkW(もしくはkWh)になる。CarbonWeights変数はkgCO2-eになる。PowerTypes変数は、各電力測定値を冷房(C)に寄与するのか、暖房(H)に寄与するのかで分類し、さらに測定タイプが電力(P)なのか、エネルギー(E)なのかで分類する。電力測定は(たとえば)直接kW測定である。エネルギー測定は、累積レジスタを通したもの、すなわちkWhであり、電力レベルを決定するために、時間によって区別されなければならない。PowerTypesの有効値は‘CP’, ‘CE’, ‘HP’ および ‘HE’である。PowerPriceNamesは、異なるエネルギー価格コンフィギュレーションの名前を保持している。PowerPricesは、どのエネルギー価格体系を各電力測定に適用するかを決定するインデックスをPowerPriceNamesに供給する。
【0129】
上記例の特定のコンフィギュレーション値として、3つの測定電力データ点がある。ビルコンフィギュレーションファイルでは、これらをパワー_1, パワー_2、パワー_3と呼ぶ。パワー_1は、kWで直接測定され、したがってPowerWeights=1となる。CO2-eに対するスケーリングファクターは、1.07である(NSWの場合)。このエネルギーは、冷房に利用され、電力は直接測定の‘CP’である。エネルギーの価格タイプは、‘Elec TOU’で、よって、インデックス1がPowerPriceNamesに与えられる。パワー_2は、平衡三相システムのうち1相のアンペアを測定することによって得られる。測定された1アンペアは、720Wに相当するので、よって、PowerWeightsは、0.72に設定される。他のスケーリングファクターは、パワー1と同じである。パワー_3は、暖房用のガスであり、累積メータを用いてGJ単位で測定される。278のPowerWeightsは、GJを等価kWに変換する。0.236のCarbonWeightsは、天然ガス消費量に相当するkWhと等価なkgCO2-eである。PowerPricesは、2で、これがガスの価格体系のインデックスとしてPowerPriceNamesに与えられる。
【0130】
さまざまな電力価格体系の名前はコンフィギュレーションファイルに記憶されているが、実際のプライスレベルのコンフィギュレーションは、多様な燃料タイプに対応できるよう改訂された“エネルギー価格コンフィギュレーション”のGUIを通して得られる(EnergyPriceConfigV2.m参照)。これによって、‘TOU’の価格体系が各燃料タイプに設定される。こうしてガスのように、固定の一定価格が設定される。図15はデータエントリー用の改訂GUIを例示している。単位は任意であるものの、名目上c/kWhとして取得される。
【0131】
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【0140】
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【0141】
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【0143】
National Greenhouse Accounts (NGA) Factors. Department of Climate Change and Energy Efficiency, Commonwealth of Australia 2010. ISBN: 978-1-921299-04-9
【0144】
<解説>
本明細書を通じて、「一の実施の形態」もしくは「実施の形態」と称しているのは、実施の形態との関連で説明した特別な特徴、構造あるいは特性が、本発明の少なくとも1つの実施の形態に含まれていることを意味している。よって、本明細書を通じてさまざまな箇所で「一の実施の形態においては」もしくは「実施の形態においては」というフレーズが出現するのは、必ずしもすべてが同じ実施の形態を指すわけではないが、同じものでもかまわない。さらに、特別な特徴、構造あるいは特性は適切なかたちで組み合わされてもよく、それは一あるいは複数の実施の形態においてこの開示から、当業者には明白である。
【0145】
同様に、本発明の例示的な実施の形態の上記説明において、開示を合理化し、一あるいは複数の発明的態様の理解を助ける目的で、単一の実施例、図面、説明のなかで、発明の種々の特徴をまとめて説明していることもあることを理解いただきたい。だが、この開示の方法は、特許請求された発明が各請求項に明白に記載されている以上の特徴を要求するという意図を反映するとして解釈されるものではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、発明的態様は、先に開示された単一の実施の形態のすべての特徴に見いだされるわけではない。よって、[発明を実施するための形態]に続く請求項は、この[発明を実施するための形態]に明白に含まれており、各請求項は本発明の個々の実施の形態として単独で存在する。
【0146】
また、ここで説明された実施の形態には、他の実施の形態に含まれる他の特徴ではない、いくつかの特徴を含んでいるものもあるが、異なる実施の形態の特徴の組み合わせは発明の範囲内にあるとみなされ、別の実施の形態を形成するものであり、当業者にはそう理解される。たとえば、以下の請求項において、特許請求された実施の形態はいずれも、いかなる組み合わせにおいても使用可能である。
【0147】
また、実施の形態には、方法、あるいはコンピュータシステムのプロセッサもしくはその機能を果たす他の手段によって実現されうる方法の要素の組み合わせとして、ここで説明されているものもある。よって、プロセッサは、このような方法や方法の要素を実行するために必要な命令とともに、方法や方法の要素を実行する手段を形成する。さらに、ここで説明された装置の実施の形態の要素は、本発明を実行する目的で、当該要素によって実現される機能を実行する手段の一例にほかならない。
【0148】
ここで示された説明においては、多くの具体的詳細が記載されている。しかし、本発明の実施の形態は、これらの具体的詳細による以外でも実施しうるものであると理解されたい。他の例では、周知の方法、構造および技術は、この説明の理解を不明瞭なものにしないために、詳細には示されていない。
【0149】
ここで用いられているように、一般的な物を説明するための序数を示す形容詞「第1の」、「第2の」、「第3の」等の使用は、別の指定がない限り、たんに同様の物の異なる例を言及しているにすぎず、このような形容詞で修飾された物が、時間的、空間的、序列、あるいは他のいかなる様式においても、特定の順序にあると意図するものではない。
【0150】
以下の請求項および実施の形態の説明において、「を備える」という用語は、少なくともその前に挙げられた要素や特徴を含んでいることを意味するものであって、他の要素、特徴を排除するものではない。よって、請求項で用いられる「備える」という用語は、その前に挙げられた手段、要素、工程を限定するものとして解釈されるべきではない。たとえば、「AおよびBを備える装置」という表現の範囲は、要素AおよびBだけで構成される装置に限定されるわけではない。「を含む」という用語もまた、少なくともその前に挙げられた要素や特徴を含んでいることを意味するものであって、他の要素、特徴を排除するものではない。よって、「含む」は「備える」の同義語であり、同じ意味を表す。
【0151】
同様に、請求項で用いられる「結合される」という用語は、直接の接続(結合)だけに限定されるものとして解釈されるべきではない。「結合される」、「接続される」という用語は、その派生語とともに用いられてもよい。これらの用語は、互いの同義語として意図されたものではないと理解されたい。よって、「装置Bと結合された装置A」という表現の範囲は、装置Aの出力が装置Bの入力に直接接続されている装置やシステムに限定されるわけではない。この表現は、装置Aの出力と装置Bの入力のあいだに経路があり、その経路が他の装置や手段を含んでいることもある、ということを意味している。「結合される」という用語は、2もしくはそれ以上の要素が物理的に直接あるいは電気的に接続されていることを意味する場合もあれば、あるいは2もしくはそれ以上の要素が直接的に接触しているわけではないが、互いに協働もしくは相互作用する関係にあることを意味する場合もある。
【0152】
この発明を添付図面に示す実施態様について説明したが、この発明は、特に明記した部分を除いては、その詳細な説明の記載をもって制約しようとするものではなく、特許請求の範囲に記載する範囲において広く構成しようとするものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、
(a)前記ビル用の初期熱モデルを開発し、時間の経過とともに前記熱モデルを継続的に更新する工程と、
(b)前記熱モデルを利用して、前記ビルの1日のHVAC稼働プランを継続的に開発する工程と、
(c)現時点のHVAC稼働プランを継続的に検査し、前記現時点のHVAC稼働プランによって現時点のHVAC稼働状況を最適化する工程と、
を備える。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記熱モデルは前記ビルの過去の熱データに適合された一連のパラメータを利用する。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記熱モデルは区分的多項式モデルである。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記初期熱モデルは実質的に毎日繰り返し更新される。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法であって、前記1日のHVAC稼働プランは実質的に5分ごとに再計算される。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法であって、前記現時点のHVAC稼働プランによる前記HVAC稼働状況の前記最適化は、実質的に10秒ごとに試みられる。
【請求項7】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、
(a)前記ビル用の熱モデルを決定する工程と、
(b)前記ビルのユーザ用予想人体快適性モデルを決定する工程と、
(c)前記予想人体快適性モデルを前記ビルのHVAC消費電力プランの計算における主要因として利用する工程と、
を備える。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記人体快適性モデルは、前記ビルのユーザによるデータフィードバックによって、前記ビルのユーザの個人用快適データで増強される。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、前記人体快適性モデルは、ASHRAE標準快適性モデルから導き出す。
【請求項10】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、
(a)前記ビル用の熱モデルを決定する工程と、
(b)前記HVACシステム用の消費電力あるいは炭素放出モデルを決定する工程と、
(c)稼動プランの前記消費電力あるいは炭素放出モデルを前記ビルのHVAC稼働プランの計算における主要因として利用する工程と、
を備える。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記消費電力・炭素放出モデルは、エネルギー供給者からの消費・価格データで増強される。
【請求項12】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、
(a)前記ビル用の熱モデルを決定する工程と、
(b)前記HVACシステム用のエネルギーコストモデルを決定する工程と、
(c)前記エネルギーコストモデルを前記ビルのHVAC稼働プランの計算における主要因として利用する工程と、
を備える。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記エネルギーコストモデルは、エネルギー供給者からの消費・価格データで増強される。
【請求項14】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、
(a)前記ビル用の熱モデルを決定する工程と、
(b)前記ビル周辺地域の予想外部気象条件を決定する工程と、
(c)前記HVACシステムの外部気象条件モデルを決定する工程と、
(c)前記外部気象条件モデルを前記ビルのHVAC稼働プランの計算における主要因として利用する工程と
を備える。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記外部気象条件モデルは、気象データ供給者からのデータで増強される。
【請求項16】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、
(a)前記ビル用の熱モデルを決定する工程と、
(b)前記ビルのユーザ用予想人体快適性モデルを決定する工程と、
(c)前記HVACシステム用の消費電力あるいは炭素放出モデルを決定する工程と、
(d)前記HVACシステム用のエネルギーコストモデルを決定する工程と、
(e)前記HVACシステムの外部気象条件モデルを決定する工程と、
(f)前記ビルのHVAC稼働プランの計算において、前記予想人体快適性モデル、前記消費電力あるいは炭素放出モデル、前記エネルギーコストモデルおよび前記外部気象条件モデルのうち2つ以上の相対的重み付けを適用する工程と、
を備える。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記人体快適性モデルは、前記ビルのユーザからのデータフィードバックによって、前記ビルのユーザの個人用快適データで増強される。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、前記人体快適性モデルは、ASHRAE標準快適性モデルから導き出される。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、前記消費電力あるいは炭素放出モデルは、エネルギー供給者からの消費および価格データで増強される。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、前記エネルギーコストモデルは、エネルギー供給者からの消費および価格データで増強される。
【請求項21】
請求項10〜20のいずれかに記載の方法であって、前記熱モデルは、実質的に毎日繰り返し更新される。
【請求項22】
請求項10〜21のいずれかに記載の方法であって、前記HVAC稼働プランは実質的に数分刻みで再計算される。
【請求項23】
請求項1,4,7〜22のいずれかに記載の方法であって、前記熱モデルは、実質的に以下の式を有する。
ここで、Tint(z)は、平均ビル内部温度であり、Tamb(z)は、周囲温度を表であり、Pcool(z)は、HVAC冷房消費電力であり、PcoolTypは、標準的なHVAC冷房消費電力であり、数式(1)では、他のパラメータとほぼ同じ範囲におけるパラメータFPcool(z)の大きさを得るためのスケーリングファクターとして用いられ、また、さまざまなビル管理システムの操作を可能にする正規化機構を提供する――これは最適化制約に関してとりわけ重要であり、Pheat(z)は、HVAC暖房消費電力であり、PheatTypは、標準的なHVAC暖房消費電力であり、数式(1)では、他のパラメータとほぼ同じ範囲におけるパラメータFPheat(z)の大きさを得るためのスケーリングファクターとして用いられ、また、さまざまなビル管理システムの操作を可能にする正規化機構を提供する――これは最適化制約に関してとりわけ重要であり、Famb(z)は、周囲温度に対するビル内部温度反応を取り、FPcool(z)は、HVAC冷房能力に対するビル内部温度反応を取り、FPheat(z)は、HVAC暖房能力に対するビル内部温度反応を取り、B(z),“基準”は、Famb(z),FPcool(z)およびFPheat(z)以外の係数を取り、“10”は、他のパラメータとほぼ同じ範囲におけるパラメータFPcool(z)の大きさを得るためのスケーリングファクターであり、この数字は、任意選択である。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、基準関数は、現時点の曜日によって変化する。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、基準関数は1日のうちの特定固定点において推定される三角基底関数の組み合わせによって形成される。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれかに記載の方法であって、前記現時点のHVAC稼働プランによる前記HVAC利用の前記制御は実質的に数秒刻みで試みられる。
【請求項27】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、実質的に添付の図面を参照して以下に記載したとおりである。
【請求項28】
請求項1,4,7〜22のいずれかに記載の方法であって、前記熱モデルは、実質的に以下の式を有する。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、
ここで、数式の第1項は、有効冷房温度(ΔTCool)であり、第2項は、有効暖房温度(ΔTHeat)であり、各パラメータは、以下のものを表し、PCoolおよびPHeatは、それぞれ実際の冷房能力および暖房能力の推定値(kW)であり、PcbおよびPhbは、それぞれ基準冷房能力および基準暖房能力(kW)であり、αcおよびαhは、HVAC電力有効性の名義尺度(°C/kW)であり、μcおよびμhは、外部温度の関数としてのHVAC効率のディレーティングである。
【請求項1】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、
(a)前記ビル用の初期熱モデルを開発し、時間の経過とともに前記熱モデルを継続的に更新する工程と、
(b)前記熱モデルを利用して、前記ビルの1日のHVAC稼働プランを継続的に開発する工程と、
(c)現時点のHVAC稼働プランを継続的に検査し、前記現時点のHVAC稼働プランによって現時点のHVAC稼働状況を最適化する工程と、
を備える。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記熱モデルは前記ビルの過去の熱データに適合された一連のパラメータを利用する。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記熱モデルは区分的多項式モデルである。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記初期熱モデルは実質的に毎日繰り返し更新される。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法であって、前記1日のHVAC稼働プランは実質的に5分ごとに再計算される。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法であって、前記現時点のHVAC稼働プランによる前記HVAC稼働状況の前記最適化は、実質的に10秒ごとに試みられる。
【請求項7】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、
(a)前記ビル用の熱モデルを決定する工程と、
(b)前記ビルのユーザ用予想人体快適性モデルを決定する工程と、
(c)前記予想人体快適性モデルを前記ビルのHVAC消費電力プランの計算における主要因として利用する工程と、
を備える。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記人体快適性モデルは、前記ビルのユーザによるデータフィードバックによって、前記ビルのユーザの個人用快適データで増強される。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、前記人体快適性モデルは、ASHRAE標準快適性モデルから導き出す。
【請求項10】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、
(a)前記ビル用の熱モデルを決定する工程と、
(b)前記HVACシステム用の消費電力あるいは炭素放出モデルを決定する工程と、
(c)稼動プランの前記消費電力あるいは炭素放出モデルを前記ビルのHVAC稼働プランの計算における主要因として利用する工程と、
を備える。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記消費電力・炭素放出モデルは、エネルギー供給者からの消費・価格データで増強される。
【請求項12】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、
(a)前記ビル用の熱モデルを決定する工程と、
(b)前記HVACシステム用のエネルギーコストモデルを決定する工程と、
(c)前記エネルギーコストモデルを前記ビルのHVAC稼働プランの計算における主要因として利用する工程と、
を備える。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記エネルギーコストモデルは、エネルギー供給者からの消費・価格データで増強される。
【請求項14】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、
(a)前記ビル用の熱モデルを決定する工程と、
(b)前記ビル周辺地域の予想外部気象条件を決定する工程と、
(c)前記HVACシステムの外部気象条件モデルを決定する工程と、
(c)前記外部気象条件モデルを前記ビルのHVAC稼働プランの計算における主要因として利用する工程と
を備える。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記外部気象条件モデルは、気象データ供給者からのデータで増強される。
【請求項16】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、
(a)前記ビル用の熱モデルを決定する工程と、
(b)前記ビルのユーザ用予想人体快適性モデルを決定する工程と、
(c)前記HVACシステム用の消費電力あるいは炭素放出モデルを決定する工程と、
(d)前記HVACシステム用のエネルギーコストモデルを決定する工程と、
(e)前記HVACシステムの外部気象条件モデルを決定する工程と、
(f)前記ビルのHVAC稼働プランの計算において、前記予想人体快適性モデル、前記消費電力あるいは炭素放出モデル、前記エネルギーコストモデルおよび前記外部気象条件モデルのうち2つ以上の相対的重み付けを適用する工程と、
を備える。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記人体快適性モデルは、前記ビルのユーザからのデータフィードバックによって、前記ビルのユーザの個人用快適データで増強される。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、前記人体快適性モデルは、ASHRAE標準快適性モデルから導き出される。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、前記消費電力あるいは炭素放出モデルは、エネルギー供給者からの消費および価格データで増強される。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、前記エネルギーコストモデルは、エネルギー供給者からの消費および価格データで増強される。
【請求項21】
請求項10〜20のいずれかに記載の方法であって、前記熱モデルは、実質的に毎日繰り返し更新される。
【請求項22】
請求項10〜21のいずれかに記載の方法であって、前記HVAC稼働プランは実質的に数分刻みで再計算される。
【請求項23】
請求項1,4,7〜22のいずれかに記載の方法であって、前記熱モデルは、実質的に以下の式を有する。
ここで、Tint(z)は、平均ビル内部温度であり、Tamb(z)は、周囲温度を表であり、Pcool(z)は、HVAC冷房消費電力であり、PcoolTypは、標準的なHVAC冷房消費電力であり、数式(1)では、他のパラメータとほぼ同じ範囲におけるパラメータFPcool(z)の大きさを得るためのスケーリングファクターとして用いられ、また、さまざまなビル管理システムの操作を可能にする正規化機構を提供する――これは最適化制約に関してとりわけ重要であり、Pheat(z)は、HVAC暖房消費電力であり、PheatTypは、標準的なHVAC暖房消費電力であり、数式(1)では、他のパラメータとほぼ同じ範囲におけるパラメータFPheat(z)の大きさを得るためのスケーリングファクターとして用いられ、また、さまざまなビル管理システムの操作を可能にする正規化機構を提供する――これは最適化制約に関してとりわけ重要であり、Famb(z)は、周囲温度に対するビル内部温度反応を取り、FPcool(z)は、HVAC冷房能力に対するビル内部温度反応を取り、FPheat(z)は、HVAC暖房能力に対するビル内部温度反応を取り、B(z),“基準”は、Famb(z),FPcool(z)およびFPheat(z)以外の係数を取り、“10”は、他のパラメータとほぼ同じ範囲におけるパラメータFPcool(z)の大きさを得るためのスケーリングファクターであり、この数字は、任意選択である。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、基準関数は、現時点の曜日によって変化する。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、基準関数は1日のうちの特定固定点において推定される三角基底関数の組み合わせによって形成される。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれかに記載の方法であって、前記現時点のHVAC稼働プランによる前記HVAC利用の前記制御は実質的に数秒刻みで試みられる。
【請求項27】
ビルの暖房、換気、および空調(HVAC)システムを制御する方法であって、実質的に添付の図面を参照して以下に記載したとおりである。
【請求項28】
請求項1,4,7〜22のいずれかに記載の方法であって、前記熱モデルは、実質的に以下の式を有する。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、
ここで、数式の第1項は、有効冷房温度(ΔTCool)であり、第2項は、有効暖房温度(ΔTHeat)であり、各パラメータは、以下のものを表し、PCoolおよびPHeatは、それぞれ実際の冷房能力および暖房能力の推定値(kW)であり、PcbおよびPhbは、それぞれ基準冷房能力および基準暖房能力(kW)であり、αcおよびαhは、HVAC電力有効性の名義尺度(°C/kW)であり、μcおよびμhは、外部温度の関数としてのHVAC効率のディレーティングである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2013−514510(P2013−514510A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543414(P2012−543414)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001691
【国際公開番号】WO2011/072332
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(590003283)コモンウェルス サイエンティフィック アンドインダストリアル リサーチ オーガナイゼーション (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001691
【国際公開番号】WO2011/072332
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(590003283)コモンウェルス サイエンティフィック アンドインダストリアル リサーチ オーガナイゼーション (11)
【Fターム(参考)】
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