IL−2媒介性免疫応答の有効性を高める組成物および方法
【課題】免疫系を刺激するIL-2の有効性を高める組成物および方法を提供する。
【解決手段】Treg(CD4+CD25+)細胞は増殖させないがCD8+細胞およびNK1.1+細胞を増殖させ、それによって前記個体に投与されるIL-2の免疫刺激作用を増強するための医薬であって、少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質および抗CD25抗体の組合せを含む、前記医薬。
【解決手段】Treg(CD4+CD25+)細胞は増殖させないがCD8+細胞およびNK1.1+細胞を増殖させ、それによって前記個体に投与されるIL-2の免疫刺激作用を増強するための医薬であって、少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質および抗CD25抗体の組合せを含む、前記医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にIL-2媒介性免疫反応を増強する方法に関する。より具体的には、本発明は、IL-2療法の有効性を高めるために、CD25アンタゴニスト、例えば抗CD25抗体、またはCD4アンタゴニスト、例えば抗CD4抗体を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞内病原体を除去するために発達した適応細胞性免疫反応に対して、ウイルス感染または腫瘍増殖を患っている哺乳動物の免疫系を刺激することは有用である。それによって活性化される免疫細胞の重要な集団はCD8+エフェクターT細胞(細胞傷害性リンパ球)である。IL-2が単球、NK細胞およびT細胞を含むさまざまな免疫細胞を刺激することは当該分野で公知である。IL-2は病院で細胞性免疫反応を刺激するために用いられ、転移性メラノーマまたは転移性腎癌を有する患者における標準治療としてFDAに認可されている(例えばアルデスロイキン(Chiron)(別名Proleukin(登録商標)))。
【0003】
細胞媒介性適応免疫反応に関与するT細胞レパートリーは、CD8+メモリーT細胞、CD8+エフェクターT細胞および制御性T細胞(Treg)を含む。これらのTregは、エフェクターT細胞およびメモリーT細胞の活性を低下させることにより、適応免疫プログラムにおいて重要な役割を果たしている。しかしながら、IL-2はまたT細胞のTregサブセットを活性化し、次いでそれがCD8+T細胞を抑制するかまたは他のT細胞を寛容化するように作用する事ができることが観察されている。従って、IL-2は適応免疫反応の活性化およびその減弱化の両方に関与している。
【0004】
Treg細胞はCD4および転写因子FoxP3の発現を特徴とし、ついでそれはIL-2受容体複合体のαサブユニットであるCD25の発現を活性化する(CD4+CD25+細胞)。このように、CD25はTreg細胞において構成的に発現されている。CD25とIL-2受容体複合体のシグナル伝達構成成分(βサブユニットCD122およびγサブユニットCD132)の会合により、中親和性IL-2受容体複合体は高親和性IL-2受容体複合体に変換される。高親和性IL-2受容体複合体により中継されるシグナル伝達経路を通してTreg細胞のIL-2活性化が起こる。
【0005】
高レベルのCD25発現は活性化T細胞の特徴であり、高親和性IL-2受容体複合体を介してこれらの細胞はIL-2に感受性になる。CD25の遮断は活性化T細胞におけるIL-2媒介性シグナル伝達を阻害し、免疫抑制効果を示すという理論的根拠により、CD25の遮断に基づく療法が開発されている。腎移植後の急性臓器拒絶の予防のために、ダクリズマブ(Roche)(別名Zenapax(登録商標))およびバシリキシマブ(ノバルティス)(別名Simulect(登録商標))などの抗CD25抗体がFDAにより認可されている。
IL-2の2重の役割のため、当該技術分野において、より効果的なIL-2媒介性療法を提供する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一般にIL-2媒介性免疫反応を増強する方法および組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面によれば、本発明は患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する方法である。本方法は、CD25アンタゴニストおよび、IL-2部分を有するタンパク質を投与するステップを含む。CD25アンタゴニストは、IL-2部分を含むタンパク質の免疫刺激作用を増強するのに有効な量で投与される。一実施形態において、IL-2は例えば成熟ヒトIL-2である。一実施形態において、患者は例えばヒトである。他の実施形態において、IL-2部分を有するタンパク質は中親和性IL-2受容体複合体を活性化することができる。
本発明によれば、一実施形態において、患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する方法は癌を治療するためであり、他の実施形態において、本方法はウイルス感染を治療する。
【0008】
他の実施形態において、IL-2部分を有するタンパク質は第2のIL-2部分を有する。他の実施形態において、前記第2のIL-2部分を有するタンパク質は、免疫グロブリン部分をさらに含む。一実施形態において、免疫グロブリン部分はFc部分である。さらに他の実施形態において、免疫グロブリン部分は抗体である。よりさらなる実施形態において、抗体は腫瘍細胞上に提示される抗原に対する可変領域を有する。さらに他の実施形態において、抗体は腫瘍細胞環境中に存在する抗原に対する可変領域を有する。代替実施形態において、腫瘍細胞環境中に存在する抗原は、正常細胞環境中よりも高濃度で存在する。
他の実施形態において、本発明によれば、CD25アンタゴニストは抗CD25抗体またはCD25に結合できるその部分である。一実施形態において、抗CD25抗体はダクリズマブであり、他の実施形態において、抗CD25抗体はバシリキシマブである。
他の実施形態において、CD25アンタゴニストはIL-2の表面に結合し、IL-2とIL-2高親和性受容体のCD25サブユニットの間の相互作用を阻害するタンパク質である。他の実施形態において、CD25アンタゴニストは抗体、例えば、抗IL-2抗体またはその部分である。
【0009】
本発明の実施形態によれば、CD25アンタゴニストはIL-2部分を有するタンパク質の投与の前に投与され、他の実施形態において、CD25アンタゴニストはIL-2部分を有するタンパク質と同時に投与される。他の実施形態において、抗癌ワクチンは抗CD25抗体およびIL-2部分を有するタンパク質と共に投与される。例えば、一実施形態において、抗癌ワクチンは抗CD25抗体およびIL-2部分を有するタンパク質の前に投与され、他の実施形態において、抗癌ワクチンは抗CD25抗体の投与の後であってIL-2部分を有するタンパク質の投与の前には投与される。あるいはまた、抗癌ワクチンは抗CD25抗体およびIL-2部分を有するタンパク質の両方の投与の後に投与される。他の実施形態によれば、本方法はIL-2部分を含むタンパク質に加えて免疫刺激剤の投与をさらに含む。
他の実施形態において、IL-2部分を含むタンパク質は中親和性IL-2受容体複合体を活性化することができるが、他の実施形態において、そのIL-2部分は高親和性IL-2受容体複合体を活性化することができない。さらに他の実施形態において、IL-2部分を含むタンパク質はIL-2受容体複合体のβ-サブユニットと結合することができるが、IL-2受容体複合体のα-受容体サブユニットと結合することができない。
【0010】
本発明によれば、一実施形態において、CD25アンタゴニストの有効量は1回あたり約0.1mg/kg〜10mg/kgであり、他の実施形態において、CD25アンタゴニストの有効量は1回あたり約0.5mg/kg〜2mg/kgである。さらに他の実施形態において、CD25アンタゴニストの有効量は1回あたり約1mg/kgである。
他の実施形態において、IL-2部分を含むタンパク質の有効量は例えば約0.004mg/m2〜4mg/m2であり、他の実施形態において、IL-2部分を含むタンパク質の有効量は約0.12mg/m2〜1.2mg/m2である。
【0011】
他の実施形態によれば、本発明は患者におけるエフェクター細胞機能を刺激する方法を含む。本方法は、IL-2融合タンパク質およびIL-2とIL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用の阻害因子を患者に投与するステップを含む。阻害因子は、IL-2融合タンパク質の免疫刺激作用を増強するのに有効な量で投与される。一実施形態において、阻害因子は抗IL2抗体である。他の実施形態において、抗IL-2抗体は少なくともIL-2高親和性受容体αサブユニットへの結合に必要なIL-2の部分に対して向けられる。他の実施形態において、阻害因子はIL-2受容体のβサブユニットに結合するIL-2の能力に影響を及ぼさない。
他の実施形態において、本発明は患者におけるエフェクター細胞機能を刺激する他の方法を含む。例えば、一実施形態において、本方法はIL-2とIL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質を患者に投与することを含む。IL-2融合タンパク質はエフェクター細胞機能を刺激するのに有効な量で投与される。他の実施形態において、IL-2融合タンパク質は野生型ヒトIL-2の残基R38およびF42に対応するIL-2部分における変異を含む。他の実施形態によれば、前記1以上の変異は、IL-2高親和性受容体αサブユニットへの結合に必要なIL-2融合タンパク質のIL-2部分の部分とIL-2高親和性受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する。
他の側面によれば、本発明はIL-2融合タンパク質およびIL-2に結合するタンパク質を含む医薬組成物を含む。IL-2に結合するタンパク質は、IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を遮断する。一実施形態において、IL-2に結合するタンパク質は抗IL2抗体である。他の実施形態において、IL-2に結合するタンパク質はIL-2とIL-2高親和性または中親和性受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しない。例えば、IL-2に結合し、IL-2とIL-2高親和性または中親和性受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しないタンパク質は、高親和性IL-2受容体αサブユニットへの結合に必要なIL-2の部分のみに対する抗IL-2抗体である。
【0012】
他の実施形態によれば、本発明は、IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質を含む医薬組成物を含む。他の実施形態において、本発明は抗CD25抗体およびIL-2部分を含むタンパク質を含む医薬組成物を含むが、他の実施形態において、本医薬組成物はIL-2融合タンパク質およびIL-2に結合するタンパク質を含む。さらに他の実施形態において、本医薬組成物はIL-2融合タンパク質および、IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を含む。
他の実施形態において、本発明による方法は、患者に投与されるワクチンの有効性を高めるのに有用である。本発明によれば、ワクチンは、抗癌ワクチンであってよく、または、ワクチンが適している任意の他の状態に対するワクチンであり得る。一実施形態において、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチンの抗原に加えて、IL-2とIL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質を患者に投与することを含む。他の実施形態において、本方法は、ワクチンの抗原に加えて、IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与するステップを含む。
【0013】
他の実施形態において、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチンの抗原、IL-2融合タンパク質およびIL-2に結合するタンパク質を患者に投与することを含む。他の実施形態において、本方法は、ワクチン、IL-2に結合するタンパク質およびIL-2融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与することを含む。さらに他の実施形態によれば、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチンの抗原、IL-2融合タンパク質およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を患者に投与することを含む。さらなる実施形態によれば、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチンの抗原、IL-2融合タンパク質をコードする核酸およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を患者に投与することを含む。
他の側面において、本発明は患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する方法を含む。本方法は、CD4アンタゴニストおよび、IL-2部分を含むタンパク質を投与するステップを含む。CD4アンタゴニストは、IL-2部分を含むタンパク質の免疫刺激作用を増強するのに有効な量で投与される。かわりに、本方法は抗CD25アンタゴニストを投与するステップを含むことができる。よって、一実施形態において、抗CD25アンタゴニストおよび抗CD4アンタゴニストは、IL-2部分を含むタンパク質の投与の前に投与される。他の実施形態において、抗CD25アンタゴニストおよび抗CD4アンタゴニストは同時に投与される。本発明によれば、一実施形態において、抗CD4アンタゴニストはCD4抗体であり、抗CD25アンタゴニストは抗CD25抗体である。
【0014】
本発明はまた、抗CD4アンタゴニストおよびIL-2を含むタンパク質を含むタンパク質組成物を含む。例えば、一実施形態において、組成物は抗CD4抗体および抗体-IL-2融合タンパク質の組成物である。他の実施形態において、タンパク質組成物はまた抗CD25アンタゴニスト、例えば抗CD25抗体を含む。
【0015】
要約すれば、本発明は以下の側面に関する:
・CD25アンタゴニストおよびIL-2部分を含むタンパク質を投与することを含む患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する方法であって、CD25アンタゴニストがIL-2部分を含むタンパク質の免疫刺激作用を増強するのに有効な量で投与される前記方法。
・タンパク質が第2のIL-2部分をさらに含む、対応する方法。
・タンパク質が免疫グロブリン部分をさらに含む、対応する方法。
・免疫グロブリン部分が抗体を含む、対応する方法。
・抗体が腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境内に提示される抗原に対する可変領域を含む、対応する方法。
・免疫グロブリン部分がFc部分を含む、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質が中親和性IL-2受容体複合体を活性化することができる、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質が高親和性IL-2受容体複合体を活性化することができない、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質がIL-2受容体複合体のβ-サブユニット(CD122)と結合することができるが、IL-2受容体複合体のα-サブユニット(CD25)と結合することができない、対応する方法。
・CD25アンタゴニストが抗CD25抗体またはCD25に結合できるその部分である、対応する方法。
・抗CD25抗体がダクリズマブまたはバシリキシマブである、対応する方法。
・CD25アンタゴニストがIL-2部分を含むタンパク質の投与の前に投与される、対応する方法。
・CD25アンタゴニストおよびIL-2部分を含むタンパク質が同時に投与される、対応する方法。
・CD25アンタゴニストの有効量が1回あたり約0.1mg/kg〜10mg/kgである、対応する方法。
・CD25アンタゴニストの有効量が1回あたり約0.5mg/kg〜2mg/kg、対応する方法。
・CD25アンタゴニストの有効量が1回あたり約1mg/kgである、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質の有効量が約0.004mg/m2〜4mg/m2である、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質の有効量が約0.12mg/m2〜1.2mg/m2である、対応する方法。
・患者がヒトである、対応する方法。
【0016】
・前述の方法に従って患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強することを含む、癌を治療する方法。
・前述の方法に従って患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強することを含む、ウイルス感染を治療する方法。
・抗癌ワクチンを投与するステップをさらに含む、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質に加えて免疫刺激剤を投与することをさらに含む、対応する方法。
・IL-2部分が成熟ヒトIL-2である、対応する方法。
・CD25アンタゴニストがIL-2の表面に結合しIL-2とCD25の間の相互作用を阻害するタンパク質であり、かつ好ましくは抗体であり、より好ましくは抗IL-2抗体である、対応する方法。
・IL-2融合タンパク質およびIL-2に結合するタンパク質を含む医薬組成物であって、前記IL-2に結合する前記タンパク質がIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断する前記組成物。
・IL-2に結合するタンパク質が抗IL-2抗体またはその部分である、対応する組成物。
・IL-2に結合するタンパク質がIL-2と高親和性または中親和性IL-2受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しない、対応する組成物。
・IL-2に結合するタンパク質が高親和性IL-2受容体のαサブユニットへの結合に必要なIL-2の少なくとも一部に対して向けられる、対応する組成物。
【0017】
・ワクチンの抗原および前述の医薬組成物を患者に投与することを含む、ワクチンの有効性を増強する方法。
・ワクチンの抗原、IL-2融合タンパク質をコードする核酸およびIL-2に結合するタンパク質を患者に投与することを含むワクチンの有効性を増強する方法であって、前記IL-2に結合する前記タンパク質がIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断する前記方法。
・IL-2融合タンパク質およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子、好ましくは抗IL-2抗体を患者に投与することを含む、患者におけるエフェクター細胞機能を刺激する方法であって、前記阻害因子がIL-2融合タンパク質の免疫刺激作用を増強するのに有効な量で投与される前記方法。
・前記抗IL-2抗体が高親和性IL-2受容体のαサブユニットへの結合に必要なIL-2部分の少なくとも一部に対して向けられる、対応する方法。
【0018】
・IL-2融合タンパク質およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を含む医薬組成物。
・ワクチンの抗原および前述の前記医薬組成物を患者に投与することを含む、ワクチンの有効性を増強する方法。
・ワクチンの抗原、IL-2融合タンパク質をコードする核酸およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を患者に投与することを含む、ワクチンの有効性を増強する方法。
・IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質を患者に投与することを含む、患者におけるエフェクター細胞機能を刺激する方法であって、前記IL-2融合タンパク質がエフェクター細胞機能を刺激するのに有効な量で投与される前記方法。
・IL-2融合タンパク質が野生型ヒトIL-2の残基R38およびF42に対応するIL-2部分における変異を含む、対応する方法。
・1以上の変異が、高親和性IL-2受容体のαサブユニットへの結合に必要なIL-2融合タンパク質のIL-2部分の少なくとも一部の間の相互作用を低減または破壊する、対応する方法。
【0019】
・IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含む、IL-2融合タンパク質を含む医薬組成物。
・ワクチンの抗原および上記の医薬組成物を患者に投与することを含む、ワクチンの有効性を増強する方法。
・ワクチンの抗原および、IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与することを含む、ワクチンの有効性を増強する方法。
・抗CD25抗体およびIL-2部分を含むタンパク質を含む医薬組成物。
・CD4アンタゴニストおよびIL-2部分を含むタンパク質を投与することを含む、患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する方法であって、前記CD4アンタゴニストがIL-2部分を含むタンパク質の免疫刺激作用を増強するのに有効な量で投与される前記方法。
・抗CD25アンタゴニストを投与するステップをさらに含む、対応する方法。
・抗CD25アンタゴニストおよび抗CD4アンタゴニストがIL-2部分を含むタンパク質の投与
の前に投与される、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質が抗体-IL2融合タンパク質である、対応する方法。
【0020】
・抗CD4アンタゴニストおよびIL-2を含むタンパク質を含むタンパク質組成物。
・癌を患っている個体においてIL-2の免疫刺激作用を増強する医薬組成物であって、
(i)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質、並びに、CD25アンタゴニスト、および/または、CD4アンタゴニスト、または
(ii)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質、および、IL-2に結合しIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断するタンパク質、または
(iii)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質であって、対応する野生型IL-2融合タンパク質と比較してIL-2と高親和性IL-2受容体のIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊するが中親和性IL-2受容体に対する融合タンパク質の親和性を低減しない1以上の変異を含み、前記変異は野生型IL-2部分のアミノ酸配列の位置R38およびR42におけるアミノ酸置換を含むが、変異D20T、N88RおよびQ126Dのいずれも含まない前記融合タンパク質、
を含み、場合により薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む前記医薬組成物。
・前記CD25アンタゴニストがIL-2の表面に結合し、IL-2とCD25の間の相互作用を阻害するタンパク質である、対応する医薬組成物。
・少なくとも2つのIL-2部分含むIL-2融合タンパク質、および、IL-2に結合しIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断し、さらに好ましくはIL-2に結合し、好ましくはIL-2と高親和性または中親和性IL-2受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しないタンパク質を含む、対応する医薬組成物。
・IL-2に結合する前記タンパク質が抗IL-2抗体である、対応する医薬組成物。
・前記CD25アンタゴニストおよび前記CD4アンタゴニストが抗体である、対応する医薬組成物。
【0021】
・抗CD25抗体がダクリズマブまたはバシリキシマブである、対応する医薬組成物。
・少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質を含む医薬組成物であって、前記融合タンパク質は、対応する野生型IL-2融合タンパク質と比較してIL-2と高親和性IL-2受容体のIL-2受容体α-サブユニットの間の相互作用を低減または破壊するが中親和性IL-2受容体に対する融合タンパク質の親和性を低減しない1以上の変異を含み、前記変異は野生型IL-2部分のアミノ酸配列の位置R38およびR42における、位置R38におけるアミノ酸残基A、E、N、F、S、L、G、YまたはWでのアミノ酸置換を含むかまたはそれらであるが変異D20T、N88RおよびQ126Dのいずれも含まない前記医薬組成物。
・前記変異がアミノ酸置換R38WおよびF42Kを含むかまたはR38WおよびF42Kである、対応する医薬組成物。
・IL-2融合タンパク質が中親和性IL-2受容体複合体を活性化することができるが、高親和性IL-2受容体複合体を活性化することができない、対応する医薬組成物。
・IL-2融合タンパク質がIL-2受容体複合体のβ-サブユニット(CD122)と結合することができるが、IL-2受容体複合体のα-サブユニット(CD25)と結合することができない、対応する医薬組成物。
・IL-2融合タンパク質が、好ましくは(a)腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境中に提示される抗原に対する可変領域を含む抗体、または(b)抗体のFc部分である免疫グロブリン部分を含む免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質である、対応する医薬組成物。
【0022】
・免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が、KS-IL-2、14.18-IL-2もしくはNHS76-IL-2、またはFc-IL-2もしくはIL-2-Fc、またはそれらの変種もしくは誘導体であるかまたはそれらに由来する、対応する医薬組成物。
・免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が:KS-IL-2、KS-ala-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2、Fc-IL-2およびIL-2-Fcからなる群から選択され、CD25アンタゴニストが抗CD25抗体である、対応する医薬組成物。
・ワクチン、好ましくは本ワクチンの抗原および場合によりアジュバントを含む抗癌ワクチンをさらに含む本明細書記載の対応する医薬組成物。
・異なる分離した容器を含む医薬キットであって、
(i)第1容器が免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質を含み、
(ii)第2容器が、
(a)抗CD25抗体、または
(b)抗CD4抗体、または
(c)抗CD25抗体および抗CD4抗体、または
(d)およびIL-2に結合してIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断するが、IL-2と高親和性または中親和性IL-2受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しないタンパク質、
を含み、場合により
(e)ワクチン、好ましくは場合によりアジュバントを含む抗腫瘍ワクチンを含む第3容器、
を含む前記医薬キット。
・(d)のタンパク質が抗IL-2抗体である、対応する医薬キット。
・免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が中親和性IL-2受容体複合体を活性化することができるが、高親和性IL-2受容体複合体を活性化することができない、対応する医薬キット。
・免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質がIL-2受容体複合体のβ-サブユニット(CD122)と結合することができるが、IL-2受容体複合体のα-サブユニット(CD25)と結合することができない、対応する医薬キット。
【0023】
・前記免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質の免疫グロブリン部分が
(a)腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境中に提示される抗原に対する可変領域を含む抗体、または
(b)抗体のFc部分
である、対応する医薬キット。
・免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が:
KS-IL-2、KS-ala-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2、
Fc-IL-2またはIL-2-Fc
からなる群から選択される、対応する医薬キット。
・組み合わせ療法の場合において、それぞれのIL-2融合タンパク質単独の投与と比較して、または単独療法の場合において、それぞれの未改変IL-2融合タンパク質の投与と比較して、患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する対応する医薬組成物または対応する医薬キットの使用。
・前記免疫刺激作用がCD8+細胞およびNK1.1+細胞の増強および/またはTreg(CD4+CD25+)細胞活性の低下をもたらす、前記医薬組成物または前記医薬キットの前記のそれぞれの使用。
・癌および/または腫瘍転移の治療のための、前記医薬組成物または前記医薬キットのそれぞれの使用。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】図1Aは、実施例1に記載の実験プロトコルの概略図である。
【図1B】図1Bは、PBS、抗CD25抗体PC61、PC61およびKS-ala-IL2の組み合わせならびにPC61およびrhIL-2(組換え野生型ヒトIL-2)の組み合わせのいずれかで処置されたマウスから8日目に採取したマウス血液サンプルにおけるCD4+細胞(黒い棒)およびCD8+(白抜き棒)の量の棒グラフである。
【図1C】図1Cは、PBS、抗CD25抗体PC61、PC61およびKS-ala-IL2の組み合わせ、ならびにPC61およびrhIL-2のいずれかで処置されたマウスから8日目に採取されたマウス試料におけるCD4+細胞(黒い棒)およびCD8+(白抜き棒)細胞の全脾臓細胞中の百分率の棒グラフである。
【図1D】図1Dは、PBS、抗CD25抗体PC61、PC61およびKS-ala-IL2の組み合わせならびにPC61およびrhIL-2の組み合わせのいずれかで処置されたマウスから8日目に採取したマウス試料におけるCD25+細胞(黒い棒)およびCD4+CD25+細胞(白抜き棒)の全脾臓細胞中の百分率の棒グラフである。
【図2A】図2Aは、PBS、抗CD25抗体PC61、KS-ala-IL2(IC(1))の単回用量、KS-ala-IL2(IC(2))の2回用量ならびにPC61とKS-ala-IL2の単回用量または2回用量の組み合わせのいずれかで処置したマウスの、8日目(黒い棒)、10日目(白抜き棒)、14日目(灰色棒)および21日目(縞のある棒)に採取したマウス血液サンプルにおけるCD8+細胞数の棒グラフである。
【図2B】図2Bは、PBS、抗CD25抗体PC61、KS-ala-IL2(IC(1))の単回用量、KS-ala-IL2(IC(2))の2回用量ならびにPC61とKS-ala-IL2の単回用量または2回用量の組み合わせのいずれかで処置したマウスの、8日目(黒い棒)、14日目(白抜き棒)および21日目(灰色棒)に採取したマウス血液サンプルにおけるCD4+CD25+細胞数の棒グラフである。
【図2C】図2Cは、PBS、抗CD25抗体PC61、KS-ala-IL2(IC(1))の単回用量、KS-ala-IL2(IC(2))の2回用量ならびにPC61とKS-ala-IL2の単回用量または2回用量の組み合わせのいずれかで処置したマウスの、8日目におけるCD4+細胞(黒い棒)、CD8+(白抜き棒)およびNK1.1+細胞(灰色棒)の、PBS処理対照に対する血液中の免疫細胞の割合の棒グラフである。
【図2D】図2Dは、PBS、抗CD25抗体PC61、KS-ala-IL2(IC(1))の単回用量、KS-ala-IL2(IC(2))の2回用量ならびにPC61とKS-ala-IL2の単回用量または2回用量の組み合わせのいずれかで治療されたマウスの、10日目に採取されたマウス血液サンプルにおけるCD8+細胞(黒い棒)、メモリーCD8+(白抜き棒)およびナイーブCD8+細胞(斜線棒グラフ)の数の棒グラフである。
【図2E】図2Eは、図2A〜Dにおけるデータを得たフローサイトメトリー図である。
【図3】図3A〜Cは、本明細書の実施例3において処置されたマウスから採取された末梢血試料における、CD4(図3A)、CD8(図3B)およびNK1.1(図3C)細胞の細胞数測定の棒グラフであり、図3D〜Fは、マウスの同じ集団の脾臓におけるCD4(図3D)、CD8(図3E)およびNK1.1(図3F)細胞の百分率の棒グラフである。
【図4】図4Aは、本明細書の実施例3に従って処置されたマウスから採取された、CD25+FoxP3+でもある全脾臓細胞の百分率の棒グラフである。図4Bは、図4Aにおけるデータが導き出されたフローサイトメトリー図である。
【図5A】図5A〜Cは、本明細書の実施例4を参照する。図5Aは、以下の処置:(a)PBSと組み合わせたラットIgG抗体、(b)KS-ala-IL2と組み合わせたラットIgG抗体、(c)KS-ala-monoIL2と組み合わせたラットIgG抗体、(d)KS-ala-IL2(D20T)と組み合わせたラットIgG抗体、および(e)KS-マウスIL2と組み合わせたラットIgG抗体、(a’)PBSと組み合わせた抗CD25抗体PC61、(b’)KS-ala-IL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、(c’)KS-ala-monoIL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、(d’)KS-ala-IL2(D20T)と組み合わせた抗CD25抗体PC61、および(e’)KS-マウスIL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、を受けたマウスから8日目に採取したマウス血液サンプルにおけるCD4+細胞数の棒グラフである。データは、n=3マウスの平均値と標準偏差値を示す。
【図5B】図5A〜Cは、本明細書の実施例4を参照する。図5Bは,以下の処置:(a)PBSと組み合わせたラットIgG抗体、(b)KS-ala-IL2と組み合わせたラットIgG抗体、(c)KS-ala-monoIL2と組み合わせたラットIgG抗体、(d)KS-ala-IL2(D20T)と組み合わせたラットIgG抗体、および(e)KS-マウスIL2と組み合わせたラットIgG抗体、(a’)PBSと組み合わせた抗CD25抗体PC61、(b’)KS-ala-IL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、(c’)KS-ala-monoIL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、(d’)KS-ala-IL2(D20T)と組み合わせた抗CD25抗体PC61、および(e’)KS-マウスIL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、を受けたマウスから8日目に採取したマウス血液サンプルにおけるCD8+細胞数の棒グラフである。データは、n=3マウスの平均値と標準偏差値を示す。
【図5C】図5A〜Cは、本明細書の実施例4を参照する。図5Cは、以下の処置:(a)PBSと組み合わせたラットIgG抗体、(b)KS-ala-IL2と組み合わせたラットIgG抗体、(c)KS-ala-monoIL2と組み合わせたラットIgG抗体、(d)KS-ala-IL2(D20T)と組み合わせたラットIgG抗体、および(e)KS-マウスIL2と組み合わせたラットIgG抗体、(a’)PBSと組み合わせた抗CD25抗体PC61、(b’)KS-ala-IL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、(c’)KS-ala-monoIL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、(d’)KS-ala-IL2(D20T)と組み合わせた抗CD25抗体PC61、および(e’)KS-マウスIL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、を受けたマウスから8日目に採取したマウス血液サンプルにおけるNK1.1+細胞数の棒グラフである。データはn=3マウスの平均値と標準偏差値を示す。
【図6】図6A〜Eは、本明細書の実施例9に記載されているプロトコルに従って治療されたマウスから採取した末梢血中に存在するCD4(図6A)、CD4+CD25+(図6B)、CD8(図6C)、CD8+CD25+(図6D)およびNK1.1(図6E)細胞の細胞計数の棒グラフである。
【図7】図7は、B16メラノーマ細胞でトランスフェクトし、本明細書の実施例7に記載されているプロトコルにしたがって治療されたマウスの表面転移の百分率および腫瘍量のデータを叙述したものである。
【図8】図8A〜Bは、本明細書の実施例10に記載されているように処置されたSCIDマウスから採取した末梢血試料における細胞計数の棒グラフである。図8Aは、DX5+NK細胞(黒い棒)およびDX5+CD11b+NK細胞(白抜き棒)の計数を示す。図8BはGr1+顆粒球の計数を示す。図8C〜Dは、Bl/6マウスから採取された末梢血試料における細胞の計数の棒グラフである。図8CはCD8+細胞の計数を示し、図8DはNK1.1+細胞計数を示す。
【図9】図9は、実施例13に記載されているプロトコルに従って処置されたマウスの末梢血および脾臓に存在するCD4細胞の表現型に関連するデータを記述したものである。特に、データはCD25+FOXP3+であったCD4細胞の百分率を扱っている。
【図10】図10A〜Fは、実施例13に記載されているプロトコルに従って処置されたマウスから採取された血液サンプルにおける細胞計数の棒グラフである。CD4細胞計数は図10Aに示され;CD4+CD25+細胞計数は図10Bに示され;CD8細胞計数は図10Cに示され;CD8+CD25+細胞計数は図10Dに示され;NK1.1細胞計数は図10Eに示され;Gr1細胞計数は図10Fに示されている。
【図11】図11は、成熟ヒトIL-2アミノ酸配列(配列番号1)である。
【図12】図12は、KS抗体の軽鎖アミノ酸配列(配列番号2)である。
【図13】図13は、KS抗体の重鎖アミノ酸配列(配列番号3)である。
【図14】図14は、KS-ala-IL2抗体融合タンパク質の重鎖アミノ酸配列(配列番号4)である。KS-ala-IL2は、KS抗体の重鎖がIL-2に融合され、抗体部分のC末端リジンがアラニン残基で置換されていることを意味する。
【図15】図15は、脱免疫化(deimmunized)NHS76抗体の軽鎖アミノ酸配列(配列番号5)である。
【図16】図16は、NHS76(γ2h)(FN>AQ)-ala-IL2と呼ばれる、IL2に融合させた脱免疫化NHS76抗体の重鎖アミノ酸配列(配列番号6)であって、重鎖がIgG1からの他のドメインと共にIgG2ヒンジを有し、重鎖のC末端リジンがアラニンで置換され、フェニルアラニンアスパラギンの配列がアラニングルタミンに変換されている前記アミノ酸配列である。
【図17】図17は、ヒト14.18IgG1抗体の軽鎖アミノ酸配列(配列番号7)である。
【図18】図18は、IL2に融合させたヒト14.18IgG1抗体であって、抗体のC末端リジンが欠失した前記抗体の重鎖アミノ酸配列(配列番号8)である。
【図19】図19は、Fc部分のN末端に融合させた抗原CEAである、成熟ヒトCEA-Fc-IL2(配列番号9)アミノ酸配列である。Fc部分のC末端はIL-2に融合されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
免疫療法を用いる癌の治療における大きな課題の1つは、免疫系活性化を調節するように設計された免疫系の制御システムを同時に活性化することなしに抗腫瘍活性を促進する必要性である。本発明によれば、IL-2に反応した細胞傷害性CD8+T細胞増殖をCD25+Treg阻害の調節から免除する方法が開示されている。Treg阻害を低減または排除するこのような機構は、Tregの細胞表面上のCD25受容体を遮断することおよび/またはCD4+細胞を枯渇させることを含む。また、同じ結果を達成するためのもう1つの機構は、CD25受容体との結合を低減または排除するIL-2の変異である。
IL-2免疫サイトカインの投与と組み合わせた、Tregの細胞表面上のCD25受容体および/またはCD4+細胞の遮断、あるいは代わりに、CD25への結合を低減または排除された変異体IL-2部分を有するIL-2免疫サイトカインの投与は、野生型IL-2が投与される場合に観察されるレベルをはるかに超えたCD8+T細胞増殖の劇的な増加をもたらす。このアプローチが、例えばIL-2を変異させることにより細胞表面CD25誘導の遮断または欠如を含む場合、中親和性IL-2受容体を有するさらなる免疫細胞型、最も代表的にはNK細胞および顆粒球の増殖が起こる。
ウイルス感染または腫瘍増殖を患っている哺乳動物において、CD8+細胞障害性T細胞(CTL)、および/またはNK細胞などの活性化T細胞の数を増加させることは有用である。T細胞およびNK細胞は、一般にIL-2刺激に感受性を示す。本発明は、哺乳動物におけるIL-2治療の有効性を高める方法を提供する。
【0026】
本発明の一側面において、哺乳動物においてCD8+および/またはNK細胞を刺激するのにIL-2単独よりもより有効な方法が提供される。一実施形態によれば、本方法はCD8+細胞およびNK細胞の増殖をもたらすが、Treg細胞は機能的に不活性化されたままである。一実施形態によれば、本方法はCD25受容体アンタゴニストおよびIL-2を含むタンパク質組成物(本明細書においてはIL-2タンパク質組成物と呼ぶ)を投与することを含む。一実施形態において、CD25受容体アンタゴニストおよびIL-2タンパク質組成物は患者に同時に投与され、他の実施形態において、CD25受容体アンタゴニストはIL-2タンパク質組成物とは異なる時間に投与される。
本発明の他の実施形態によれば、本方法は、CD25受容体アンタゴニストおよびIL-2の変異バージョンを含むIL-2タンパク質組成物を投与することを含む。例えば、一実施形態において、IL-2は、IL-2が高親和性IL-2受容体のIL-2αサブユニット(CD25+)に結合するのを低減または排除する1以上の変異を含む。例えば、一実施形態において、IL-2部分は、IL-2部分の少なくとも一部が高親和性IL-2受容体のαサブユニット(CD25+)に結合する能力を低減または排除する1以上の変異を含む。他の実施形態において、IL-2部分はIL-2融合タンパク質である。例えば、一実施形態において、融合タンパク質はIL-2部分に融合させた抗体である。
【0027】
他の実施形態において、本方法はIL-2の変異バージョンを含むタンパク質組成物を投与することを含む。例えば、一実施形態において、IL-2の変異バージョンは、IL-2が高親和性IL-2受容体のIL-2αサブユニット(CD25+)に結合する能力を低減または排除する1以上の変異を含む。一実施形態によれば、IL-2の変異バージョンはIL-2融合タンパク質である。他の実施形態において、本方法はIL-2タンパク質組成物を用いる患者の治療中のいずれの時点においてもCD25受容体アンタゴニストを投与せずにIL-2の変異バージョンを含むタンパク質組成物を投与することを含む。
一実施形態において、野生型IL-2における位置に対応する下記の残基の1以上は、IL-2αサブユニットへの結合に必要なIL-2の部分と高親和性IL-2受容体のIL-2αサブユニット(CD25+)の間の結合を低減または排除するために変異される:R38、F42、K35、M39、K43またはY45。本発明によれば、変異は欠失、挿入または置換を含むことができる。一実施形態において、R38における残基はアミノ酸残基A、E、N、F、S、L、G、YまたはWで置換される。他の実施形態において、M39における残基はアミノ酸Lで置換される。他の実施形態において、F42における残基はアミノ酸残基A、K、L、S、Qで置換され、さらに他の実施形態において、K35における残基はアミノ酸EまたはAで置換される。よりさらなる実施形態において、位置K43におけるアミノ酸残基はアミノ酸Eで置換される。これらの変異は例示的であり、IL-2とIL-2高親和性受容体のαサブユニットの間の結合に悪影響を及ぼす任意の変異は本発明により考慮される。本発明のさらなる実施形態によれば、IL-2αサブユニットへの結合に必要なIL-2の部分と高親和性IL-2受容体のIL-2αサブユニット(CD25+)の間の結合を低減または排除するIL-2への変異は、IL-2と高親和性または中親和性IL-2受容体のβサブユニットの間の結合を排除しない。
【0028】
一実施形態において、結合の低下または排除は、標的に対する参照タンパク質の結合親和性と比較したときの、標的に対するあるタンパク質の結合親和性の低下または排除のことを言う。一実施形態において、参照タンパク質は野生型タンパク質であり、結合親和性が低減または排除されたタンパク質は変異体である。例えば、一実施形態において、IL-2免疫グロブリン融合タンパク質のIL-2部分への変異は、参照タンパク質の結合親和性と比較して、IL-2αサブユニットに対するそのタンパク質の結合親和性を低減または排除する。参照タンパク質は、野生型IL-2部分を有するIL-2免疫グロブリン融合タンパク質である。
一実施形態によれば、変異体IL-2はIL-2Rαサブユニット結合に影響を及ぼす唯一つの変異のみを含む。例えば、一実施形態において、変異体IL-2は変異R38Wを含む。他の実施形態において、変異体IL-2は変異F42Kを含む。他の実施形態において、変異体IL-2はIL-2がIL-2Rαサブユニットに結合するのに影響を及ぼす2以上の変異を含む。例えば、変異体IL-2は少なくとも変異R38WおよびF42Kを含む。
他の実施形態において、本発明による方法はエフェクター細胞機能を刺激する方法である。例えば、一実施形態によれば、IL-2タンパク質組成物およびIL-2とIL-2高親和性受容体のαサブユニットの間の相互作用の阻害因子が患者に投与される。一実施形態において、IL-2タンパク質組成物は融合タンパク質を含む。他の実施形態において、IL-2とIL-2受容体αの間の相互作用の阻害因子は、IL-2高親和性受容体のαサブユニットへの結合に必要なIL-2の部分に対する抗IL-2抗体であり、例えば、抗IL2Rα抗体である。
他の実施形態において、患者におけるエフェクター細胞機能を刺激する本発明による方法は、IL-2融合タンパク質を含むIL-2タンパク質組成物を患者に投与することを含む。一実施形態において、IL-2融合タンパク質は、IL-2部分とIL-2高親和性受容体のαサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する融合タンパク質のIL-2部分における1以上の変異を含む。他の実施形態において、IL-2部分への変異は、βサブユニットへの結合が維持されるように、IL-2部分とIL-2高親和性または中親和性受容体のβサブユニットの間の相互作用を妨げない。他の実施形態において、IL-2部分とIL-2高親和性受容体のαサブユニットの間の結合を低減または破壊する、融合タンパク質のIL-2部分における変異を有するIL-2融合タンパク質は患者に投与され、CD25受容体アンタゴニストは投与されない。他の実施形態において、IL-2融合タンパク質は抗体-IL-2融合タンパク質である。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、CD25受容体アンタゴニストは抗CD25抗体である。さらなる実施形態によれば、CD25受容体アンタゴニストは、例えばヒト患者の治療における、ヒトCD25タンパク質に特異的な抗体である。本発明によるヒトに使用する抗CD25抗体の例は、ダクリズマブおよびバシリキシマブを含む。しかしながら、他の抗CD25抗体もまた本発明に有用である。例えば、一実施形態において、ADCCまたはCDCエフェクター機能を欠く抗CD25抗体が用いられ、他の実施形態において、CD25に対して向けられる抗CD25小(small)鎖可変領域(scFv)、ミニボディまたはダイアボディなどの抗体の誘導体も本発明に使用される。このような分子は当該技術分野で公知の技術に従って製造できる(例えば、Holliger et al., (2005), Nature Biotech., 23(9):1126-1136を参照のこと)。他の抗CD25抗体は、当業者に公知の方法に従って製造できる。
他の実施形態において、T細胞増殖を刺激する本発明による方法は、CD4アンタゴニストおよびIL-2タンパク質組成物を投与することを含む。一実施形態において、CD4アンタゴニストはIL-2、タンパク質組成物の投与の前に投与され、他の実施形態において、CD4アンタゴニストはIL-2タンパク質組成物と同時に投与される。さらに他の実施形態において、T細胞増殖を刺激する本発明による方法は、CD4アンタゴニスト、CD25アンタゴニストおよびIL-2タンパク質組成物を投与することを含む。例えば、一実施形態において、患者はCD4アンタゴニストおよびCD25アンタゴニストの組み合わせを最初に投与され、ついでIL-2タンパク質組成物が投与される。
【0030】
本明細書記載の本発明の多くの実施形態はCD25アンタゴニストの投与を含むが、本発明によるCD25アンタゴニストの代わりにCD4アンタゴニストを投与できることが本発明によりさらに考えられる。また、一実施形態において、CD25アンタゴニストをCD4アンタゴニストと同時に投与することができる。CD4アンタゴニストは、CD25アンタゴニストの投与のために概説したものと同じ投与スケジュールに従って投与できる。
本発明の一実施形態によれば、CD4アンタゴニストは抗CD4抗体である。好ましい実施形態において、CD4アンタゴニストは、CD4+細胞を枯渇させることができる抗CD4抗体である抗CD4アンタゴニストである。特定の実施形態において、CD4アンタゴニストはヒトCD4に特異的である。例えば、ザノリムマブ(zanolimumab)はヒトCD4に特異的なヒト抗CD4抗体の1例である。本発明の一実施形態によれば、ヒト抗CD4抗体は本発明の方法に従ってヒト患者に投与される。他の有用な抗CD4抗体は当業者に公知であり、本発明に有用である。加えて、CD4に対して向けられる抗CD4小鎖可変領域(scFv)、ミニボディまたはダイアボディなどの抗体の誘導体は、本発明に使用できる。このような分子は、当該技術分野で公知の技術に従って製造できる(例えば、Holliger et al., (2005), Nature Biotech., 23(9):1126-1136 を参照のこと)。他の抗CD4抗体は、当業者に公知の方法に従って製造できる。代替実施形態において、抗CD4アンタゴニストはCD4に結合できる任意の化学的部分を含む。
【0031】
抗CD25抗体およびIL-2タンパク質組成物の組み合わせで哺乳動物を治療した結果としてTreg細胞は機能的に不活性化されたままであるがCD8+細胞およびNK細胞は増殖(エクスパンジョン)するということは、本発明の洞察である。驚いたことに、本願の実施例1に示されるように、CD8+細胞およびNK細胞増殖に対する作用は、遊離(モノマーの)組換えIL-2では見られないが、抗体-IL-2融合タンパク質などの他のIL-2タンパク質組成物では見られる。
理論に拘束されるものではないが、IL-2タンパク質組成物の多量体を用いることにより、中親和性IL-2受容体複合体依存性シグナル伝達経路の活性化を可能にするために十分に高いIL-2の局所濃度を提供することが可能である。抗CD25抗体などの遮断するCD25アンタゴニストの存在下で、CD8+メモリーT細胞またはCD8+エフェクターT細胞などの特定のT細胞サブセットは、CD25をふくまない中親和性IL-2受容体複合体により媒介されるIL-2シグナル伝達に応答する事ができると思われる。しかしながら、IL-2によるその活性化を高親和性IL-2受容体経路に強く依存するTreg細胞は、受容体がCD25受容体アンタゴニストの存在、例えば抗CD25抗体により遮断されるとき、IL-2に感受性を示さない。
【0032】
よって、他の側面において、本発明は癌の治療方法である。例えば、一実施形態において、有用なIL-2タンパク質組成物は、腫瘍の微小環境にIL-2活性を向ける抗体-IL2融合タンパク質である。従って、さらなる実施形態によれば、IL-2の融合パートナーは腫瘍の微小環境において豊富な抗原に対して特異性を有する抗体部分である。例えば、抗体部分が接着分子EpCAMを認識するKS抗体である抗体-IL2融合タンパク質;ジシアロガングリオシドGD2を認識する14.18抗体;または腫瘍の壊死性コアにおけるDNAを認識するNHS76抗体は本発明に有用である。患者の癌に応じて、当業者に公知の他の抗体を使用することができる。本発明の一実施形態によれば、IL-2融合タンパク質は、IL-2とIL-2高親和性受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する、融合タンパク質のIL-2部分への1以上の変異を含む。IL-2への有用な変異は前述されている。
他の実施形態において、抗体融合タンパク質はKS-IL2(C末端重鎖IL-2部分を有するKS抗体)である。KS-IL2のKS部分の軽鎖(配列番号2)および重鎖(配列番号3)の配列を、それぞれ図12および13に示す。他の実施形態において、抗体融合タンパク質はKS-ala-IL2である(抗体部分のC末端リジンがアラニンで置換された、C末端重鎖IL-2部分を有するKS抗体;EMD 273066 またはtucotuzumab celmoleukinの別名でも知られる;米国特許第5,650,150号および米国特許出願公開第2003/0157054号もまた参照のこと)。KS-ala-IL2の軽鎖(配列番号2)および重鎖(配列番号4)の配列をそれぞれ図12および14に示す。(米国特許出願公開第2002/0147311号もまた参照のこと)。
他の実施形態において、抗体融合タンパク質はNHS76-IL2(C末端重鎖IL-2部分を有するNHS76抗体)である。NHS76-IL2の典型的な実施形態の軽鎖(配列番号5)および重鎖(配列番号6)の配列を、それぞれ図15および16に示す。(米国特許出願公開第2002/0147311号もまた参照のこと)。
他の実施形態において、抗体融合タンパク質はhu14.18-IL2(C末端重鎖IL-2部分を有するヒト14.18抗体)である。hu14.18-IL2の典型的な実施形態の軽鎖(配列番号7)および重鎖(配列番号8)の配列を、それぞれ図17および18に示す。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、IL-2タンパク質組成物はIL-2の複数コピーを含む(すなわち多量体である)。例えば、一実施形態において、IL-2タンパク質組成物は、2、3、4、5またはそれ以上のIL-2部分を含む。よって、他の実施形態において、IL-2タンパク質組成物は二量体IL-2である。さらなる実施形態によれば、IL-2タンパク質組成物は互いに結合した2つのIL-2部分を含む。本発明によれば、IL-2部分はポリペプチドリンカー、化学リンカー、ジスルフィド結合などにより結合されていることができる。他の実施形態において、3、4、5またはそれ以上のIL-2部分は結合されて多量体IL-2を形成する。
本発明の他の実施形態によれば、多量体IL-2タンパク質組成物は免疫グロブリン融合タンパク質である。例えば、一実施形態において、免疫グロブリン融合タンパク質は抗体-IL2融合タンパク質である。他の実施形態において、IL-2部分は抗体の重鎖C末端のそれぞれに結合して、2つのIL-2部分を有する抗体-IL2融合タンパク質を形成する。他の実施形態において、IL-2部分は抗体の軽鎖N末端のそれぞれに結合されて、2つのIL-2部分を有する抗体-IL2融合タンパク質を形成する。さらに他の実施形態によれば、抗体-IL2融合タンパク質は、重鎖および/または軽鎖のC末端および/またはN末端の1以上に結合して多量体抗体-IL2融合タンパク質を形成するIL-2部分を含むことができる。他の実施形態において、融合タンパク質のFc領域に含まれるFcγRの結合部位が除かれる。(米国特許出願第2002/0105294号を参照のこと)。他の実施形態において、免疫グロブリンおよびIL-2部分はヒト由来であり、従ってヒト患者の治療に有用である。一実施形態によれば、IL-2部分は融合により、すなわちタンパク質主鎖への取り込みにより抗体に結合される。
【0034】
本発明の他の実施形態によれば、多量体IL-2タンパク質組成物はFc-IL2融合タンパク質である。例えば、一実施形態において、IL-2部分はFc部分のN末端のそれぞれに結合されて、2つのIL-2部分を有するFc融合タンパク質を形成する。他の実施形態において、IL-2部分はFc部分のC末端のそれぞれに結合されて2つのIL-2部分を有するFc融合タンパク質を形成する。さらなる実施形態によれば、IL-2部分はFc部分のN末端および/またはC末端の1以上に結合されて、多量体Fc-IL2融合タンパク質を形成する。一実施形態によれば、IL-2部分は融合により、すなわちタンパク質主鎖への取り込みによりFc部分に結合される。他の実施形態において、免疫グロブリンおよびIL-2部分はヒト由来であり、従ってヒト患者の治療に有用である。融合タンパク質は、当業者に公知の標準手順、例えば米国特許第5,650,150号、第5,541,087号および第6,992,174号ならびに米国特許出願公開第2002/0147311号、第2003/0044423号および第2003/0166163号に記載の手順に従って構築できる。
本発明によれば、一実施形態において、IL-2部分は野生型IL-2からの1以上のアミノ酸変種を含む。例えば、一実施形態において、配列番号1に示されるIL-2野生型配列の残基に対応するIL-2部分の下記のアミノ酸残基の1以上を変異させることは有用である:Lys8、Gln13、Glu15、Leu19、Asp20、Gln22、Met23、Asn26、Arg38、Phe42、Lys43、Thr51、His79、Leu80、Arg81、Asp84、Asn88、Val91、Ile92、およびGlu95。他の実施形態によれば、配列番号1に示されるIL-2野生型配列の残基に対応するIL-2部分の下記のアミノ酸残基の1以上を変異させることもまた有用である:Leu25、Asn31、Leu40、Met46、Lys48、Lys49、Asp109、Glu110、Ala112、Thr113、Val115、Glu116、Asn119、Arg120、Ile122、Thr123、Gln126、Ser127、Ser130およびThr131。
【0035】
他の実施形態において本発明によれば、IL-2部分は、中親和性IL-2受容体に対する野生型IL-2部分を有するタンパク質の親和性と比較して中親和性IL-2受容体に対するIL-2部分を有するタンパク質の親和性を変化させる変異を含まない。さらに他の実施形態において、IL-2部分は、野生型IL-2部分を有するタンパク質の中親和性受容体に対する親和性と比較してIL-2部分を有するタンパク質の中親和性IL-2受容体に対する親和性を低減させる変異を含まない。
さらに他の実施形態において本発明によれば、IL-2部分を有するタンパク質は、高親和性IL-2受容体に対する野生型IL-2部分の親和性を有するタンパク質の親和性と比較して高親和性IL-2受容体に対するIL-2部分を有するタンパク質の親和性を変化させる変異を含まない。他の実施形態において、IL-2部分を有するタンパク質は、中親和性受容体を発現している細胞の野生型IL-2部分の活性化を有するタンパク質と比較して中親和性受容体を発現している細胞のIL-2部分を有するタンパク質の活性化を低減させる変異を含まない。さらに他の実施形態において、IL-2部分を有するタンパク質は、高親和性IL-2受容体に対する親和性と比較して中親和性IL-2受容体に対するIL-2部分を有するタンパク質の親和性を低減させる変異を有さない。これらの実施形態によれば、野生型IL-2部分を有するタンパク質は、IL-2部分が野生型IL-2部分であるということを除いては、IL-2部分を有するタンパク質と同一の参照タンパク質である。IL-2含有タンパク質の相対的親和性を比較する方法は、米国特許出願公開第2003-00166163号に説明されている。
【0036】
他の実施形態において、IL-2部分を有するタンパク質は、参照タンパク質であって、IL-2部分を有するタンパク質と同一であるが、参照タンパク質のIL-2部分が野生型IL-2である前記参照タンパク質の選択性と比較してタンパク質のIL-2部分を有するタンパク質の選択性を変化させる変異を含まない。選択性は、IL-2中親和性受容体を発現している細胞の活性化と比較した高親和性IL-2受容体を発現している細胞の活性化の比として測定される。
他の実施形態において、IL-2部分を有するタンパク質は、IL-2高親和性受容体に対するIL-2部分を有するタンパク質の親和性と比較したIL-2中親和性受容体に対するIL-2部分を有するタンパク質の親和性に示差効果をもたらす変異を含まない。増殖をIL-2に依存する細胞または細胞株の増殖反応により示差的効果が測定される。IL-2部分を有するタンパク質に対するこの反応はED50値として表現され、用量反応曲線をプロットし、最大半量反応をもたらすタンパク質濃度を測定することにより得られる。IL-2部分を有するタンパク質と同一であるであるがIL-2部分が野生型IL-2である参照タンパク質に対するED50値の比と比較した、IL-2部分を有するタンパク質に対する中親和性IL-2受容体を発現している細胞に対して得られるED50値の比は、融合タンパク質の示差的効果の尺度を与える。
【0037】
他の実施形態において、本発明によれば、IL-2部分は、配列番号1に示されるIL-2野生型配列の残基に対応するIL-2部分の下記の残基のいずれにおける変異も含まない:Lys8、Gln13、Glu15、Leu19、Asp20、Gln22、Met23、Asn26、Arg38、Phe42、Lys43、Thr51、His79、Leu80、Arg81、Asp84、Asn88、Val91、Ile92およびGlu95。本発明のさらなる実施形態によれば、IL-2部分は、配列番号1に示されるIL-2野生型配列の残基に対応するIL-2部分の下記の残基のいずれか1つにおける変異を含まない:Leu25、Asn31、Leu40、Met46、Lys48、Lys49、Asp109、Glu110、Ala112、Thr113、Val115、Glu116、Asn119、Arg120、Ile122、Thr123、Gln126、Ser127、Ser130およびThr131。一実施形態において、変異はアミノ酸残基の挿入であり、他の実施形態において、変異はアミノ酸残基の欠失であり、さらに他の実施形態において、変異はアミノ酸残基の置換である。他の実施形態において、IL-2部分は、野生型IL-2に対応する下記の残基のいずれか1つにおける変異を有さない:D20T、N88RまたはQ126D。
本発明は、自然界に見られるIL-2配列、例えば図11(配列番号1)に開示される成熟ヒト野生型IL-2アミノ酸配列を用いることを考えるばかりでなく、例えば、図1に開示される成熟ヒトIL-2アミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸同一性を有する他のIL-2アミノ酸配列を用いることもまた考える。
【0038】
2つのアミノ酸配列または核酸の一致率を決定するために、最適の比較目的で配列がアラインメントされる(例えば、第2アミノ酸または核酸配列との最適のアラインメントのために、第1アミノ酸または核酸配列の配列中にギャップを導入することができる)。2つの配列間の一致率は、配列により共有される一致位置数の関数である(すなわち、%一致=一致位置数/全位置数x100)。
本発明はまた、配列番号1に示す成熟ヒト野生型IL-2と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、92%、95%、よりさらに好ましくは99%のIL-2生物活性を維持しているIL-2配列を用いることを考える。IL-2活性は、in vitro細胞増殖アッセイ、例えば米国特許出願公開第2003-0166163号に記載のアッセイを用い、または当業者に公知の他の方法に従って測定できる。
本発明はまた、多量体IL-2タンパク質を用いることを考える。多量体IL-2タンパク質は、ペプチド結合、ジスルフィド結合または化学リンカーにより直接または間接に結合された、IL-2活性を示す複数のポリペプチド領域または部分を含むタンパク質組成物であることができる。例えば、一実施形態において、多量体IL-2は、それぞれがIL-2活性を示す2つの部分を有するタンパク質である二量体IL-2を含む。
【0039】
一実施形態において、用語“CD25受容体アンタゴニスト”は、高親和性IL-2受容体のCD25サブユニットに結合して無力化することができるポリペプチド、核酸または他の化学薬剤を意味する。例えば、一実施形態において、CD25受容体アンタゴニストは抗CD25抗体である。他の実施形態によれば、用語“抗CD25抗体”は、CD25受容体アンタゴニストであるすべての抗CD25抗体を含む。CD25アンタゴニストは、例えば、CD25サブユニットの分解を引き起こすアンタゴニスト、CD25サブユニットの内在化を引き起こすアンタゴニスト、IL-2がCD25サブユニットに結合するのを遮断するアンタゴニストまたはCD25サブユニットと高親和性IL-2受容体の他のサブユニットとの相互作用への妨害を引き起こすアンタゴニストを含む。
他の実施形態において、用語“CD25受容体アンタゴニスト”はまた、IL-2に結合し、それによって高親和性IL-2受容体のαサブユニット(CD25)に結合するIL-2の能力を妨害することができる他のポリペプチド、核酸または他の化学薬剤を含む。αサブユニットに結合するIL-2の能力を妨害することができる化学薬剤は、Rickert et al., (2005), Science, 308:1477-1480 において説明されている。例えば、一実施形態において、CD25アンタゴニストは、高親和性IL-2受容体のαサブユニット(CD25)への結合に必要なIL-2部分の少なくとも一部に対する抗IL-2抗体である。高親和性IL-2受容体のαサブユニット(CD25)への結合に必要なIL-2部分の少なくとも一部に対して向けられる抗IL-2抗体の例は当該技術分野で公知であり、マウスモノクローナル抗体S4B6およびヒトIL-2に対して向けられるモノクローナル抗体MAB602を含み、Boyman et al., Science, (2006), 311:1924-1927に開示されている。本発明の他の実施形態によれば、本明細書で定義するCD25受容体アンタゴニストは、IL-2とIL-2受容体のβ受容体(中親和性または高親和性IL-2受容体に存在するような)の間の相互作用を遮断しない。
一実施形態によれば、“抗体”は無傷の抗体(例えばモノクローナルまたはポリクローナル抗体を意味する。他の実施形態によれば、抗体は、例えばFabフラグメント、Fab’フラグメント、(Fab’)2フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖抗体結合部位およびsFv、二重特異性抗体およびそれらの抗原結合部分ならびに多重特異性抗体およびそれらの抗原結合部分を含む、それらの抗原結合部分を含むことができる。さらにまた、さらに他の実施形態において、抗体は、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、(Fab’)2フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖抗体結合部位またはFc部分もしくはFc部分の任意部分に結合されているsFvフラグメントのいずれかを含むことができる。
本発明によれば、一実施形態において、“抗CD25”抗体はIL-2高親和性受容体のCD25サブユニット(抗原)に特異的に結合できる抗体である。“特異的結合”、“特異的に結合する”および“特異的結合する”は、対象の抗原に対して少なくとも約10-6M、あるいは少なくとも約10-7M、あるいは少なくとも約10-8M、あるいは少なくとも10-9Mあるいは少なくとも約10-10Mの結合親和性を抗体が有することを意味すると解釈される。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、本治療方法は、Treg細胞と活性化CD8+エフェクター細胞のバランスをCD8+エフェクター細胞の有利となるように影響を及ぼす。本発明の一実施形態において、高親和性IL-2受容体複合体を発現している細胞においてIL-2依存性シグナル伝達を機能的に阻害する抗CD25抗体が用いられる。例えば、Treg細胞の機能的不活性化を引き起こすことが示されているPC61または7D4のような抗CD25抗体が用いられる(Kohm et al., (2006), J. Immunol., 176:3301-3305)。他の実施形態において、抗CD25抗体は、場合によりその循環半減期を低減させる変異を含むことができる。このような抗体を得る方法は当該技術分野で公知である。例えばCH2ドメインの欠失を有する抗体が用いられる。
また、他の実施形態において、His435における点変異を有する抗体のような、FcRn受容体への結合が低減した抗体が用いられる。このような抗体の実施形態は、IL-2タンパク質組成物を用いる刺激でTreg細胞よりもCD8+エフェクターT細胞の増幅に有利にするのに有用であることができる。さらに、このような抗体の実施形態は、高親和性IL-2受容体複合体を介してシグナルを送るが、中親和性IL-2受容体複合体を介してシグナルを送らないIL-2タンパク質組成物と組み合わせて用いる場合有用であることができる。
【0041】
本発明の他の実施形態において、抗CD25抗体はTreg細胞の枯渇を引き起こすために用いられる。例えば、強いCDC応答または強いADCC応答を誘発する抗CD25抗体が用いられる。CDCまたはADCCを増強させる方法は当該技術分野で公知である。例えば、C1q結合の親和性を増加させる抗体における変異でCDC反応を増強することができる(Idusogie et al., (2001), J. Immunol., 166(4):2571-2575)。YB2/0細胞株における抗体の産生による方法など、抗体のグリカンからフコース部分を排除する方法によりADCCを増強することができる。本発明の他の実施形態において、放射性核種または毒素を含む抗CD25抗体複合体が用いられる。一般的に用いられる放射性核種は、例えば90Y、131Iであり、特に67Cuであり、一般的に用いられる毒素は、ドキソルビシン、カリチェアミシンまたはメイタンシンDM1およびDM4である(Wu et al., (2005), Nat. Biotechnol., 23(9):1137-1146)。他の実施形態において、抗CD25抗体複合体は場合によりその循環半減期を低減させる変異を含むことができる。このような抗体を得る方法は当該技術分野で公知である。例えば、CH2ドメインの欠失を有する抗体が用いられる。また、His435における点変異を有する抗体などの、FcRn受容体への結合が低減された抗体が用いられる。
【0042】
抗体に基づかないCD25受容体アンタゴニストもまた用いることができる。このようなアンタゴニストは、例えば、核酸オリゴヌクレオチド、ペプチドまたは非抗体ポリペプチドドメインに基づくことができる。本発明の一実施形態において、CD25に対するアンタゴニスト活性を有するDNAアプタマーが用いられる。本発明の他の実施形態において、CD25に対するアンタゴニスト活性を有するRNAアプタマーが用いられる。DNAおよびRNAアプタマーを得る方法は当該技術分野で公知である。この方法は、一般にSELEXと呼ばれる、標的タンパク質に結合する核酸分子を選択し、結合分子を増幅するin-vitro反復プロセスに依存する(例えば Brody et al., (2000) J Biotechnol 74:5-13 を参照のこと)。他の実施形態において、抗CD25アプタマーは、その治療効果を高めるための修飾をさらに含むことができる。例えば、ヌクレアーゼに抵抗性にするためにアプタマーに核酸アナログが導入され、あるいは、その循環半減期を増加させるためにアプタマーを担体分子に結合させることができる。他の実施形態において、CD25アンタゴニストは非抗体ポリペプチドドメイン由来である。有用な非抗体ポリペプチドドメインは当該技術分野で公知であり、一般に、その上に可変の潜在的エピトープ結合ループが設計された足場構造(scaffold structure)を特徴とする。例えば、フィブロネクチンタイプIIIドメインが用いられる。フィブロネクチン足場に基づくCD25アンタゴニストの製造方法は当該技術分野で公知である。例えば、特定のCD25結合剤を選択するために、無作為化表面ループを有するフィブロネクチンのライブラリーをディスプレイするファージディスプレイ技術を用いることができる(例えば米国特許第5,223,409号を参照のこと)。また、in-vitro反復選択技術が用いられる(例えば、第6,818,418号を参照のこと)。特定のCD25アンタゴニストを得るための代替法は、例えば、アンキリンリピートタンパク質ライブラリー(Binz et al., (2004) Nat Biotechnol 22(5):575-582)またはavimers(Silverman et al., (2005) Nat Biotechnol 23(12):1556-1561)を用いて設計される。
【0043】
本明細書において、用語“免疫グロブリン”は、無傷の抗体(例えば、モノクローナルまたはポリクローナル抗体)またはフラグメントまたはその部分、例えば抗原結合部分と相同性を示す、天然に存在するかまたは合成的に製造されるポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを意味すると理解される。本発明の免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgG、IgEまたはIgMなどの任意のクラス由来であることができる。IgG免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4などの任意のサブクラスのものであることができる。用語免疫グロブリンは、免疫グロブリン由来のポリペプチドおよびそれらのフラグメントを含む。
免疫グロブリンの定常領域は免疫グロブリンC末端領域と相同性を示す天然に存在するかまたは合成的に製造されるポリペプチドであり、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはCH4ドメインを別々に、または任意の組み合わせで含むことができる。本明細書において、“Fc部分”は、定常領域のフラグメント、アナログ、変種、変異体または誘導体を含む、抗体の定常領域由来のヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはCH4ドメインを別々に、または任意の組み合わせで含む。一実施形態において、Fc部分はヒンジ、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。あるいは、他の実施形態において、Fc部分はヒンジ、CH2ドメインおよび/またはCH3ドメインの全部または一部を含む。
本発明によれば、一実施形態において、抗体の定常ドメインは異なるIgGクラスに由来する。例えば、一実施形態において、抗体のヒンジ領域はIgG1由来であり、CH2ドメインおよびCH3ドメインはIgG2由来である。他の実施形態において、Fc部分のヒンジはIgG1由来であり、CH2ドメインおよびCH3ドメインはIgG2由来である。
【0044】
本発明によれば、一実施形態において、IL-2タンパク質組成物は免疫グロブリン部分を含む。本発明のさらなる実施形態によれば、免疫グロブリン部分は、IL-2中親和性または高親和性受容体に対するIL-2タンパク質組成物の結合特性に影響を及ぼす改変または変異を含まない。例えば、一実施形態において、免疫グロブリン部分は、タンパク質のグリコシル化パターンに影響を及ぼす修飾を含まない。他の実施形態において、免疫グロブリン部分はIgG 重鎖の位置N297における修飾を含まない。修飾は、分子のPEG化およびN-結合型グリコシル鎖を除去するためのN-グリカナーゼでの処理を含む。他の実施形態において、免疫グロブリン部分は、Fc受容体との相互作用に直接影響を及ぼす変異を含まない。他の実施形態において、免疫グロブリン領域は、重鎖のC末端リジンの代わりに他のアミノ酸に置換する変異を有さない。他の実施形態において、C末端リジンはアラニンで置換されない。他の実施形態において、免疫グロブリン部分はT細胞エピトープを排除または低減する変異を有さない。
本発明の方法によれば、CD25受容体アンタゴニスト、例えば抗CD25抗体はIL-2タンパク質組成物と共に投与される。一実施形態において、抗CD25抗体およびIL-2タンパク質組成物は互いに離れて投与される。他の実施形態において、抗CD25抗体はIL-2タンパク質組成物と実質的に同時に投与される。一実施形態において、抗CD25抗体での前治療が行われ、それにIL-2タンパク質組成物が続く。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、抗CD25抗体およびIL-2タンパク質組成物の用量が一緒に投与され、他の実施形態において、同じ治療セッション中別々に投与される。代替実施形態において、用量が別々の治療セッション中に投与される。例えば、特定の実施形態において、抗CD25抗体の用量が0日目に投与され、IL-2タンパク質組成物の用量が0〜7日後に投与される。他の特定の実施形態において、抗CD25抗体の用量が0日目に投与され、IL-2タンパク質組成物の用量が3日目に投与される。必要に応じて、他の投与間隔レジメンを用いることができる。一実施形態において、例えば、抗CD25抗体がTreg細胞などの標的細胞に対して有効であり、IL-2タンパク質組成物がTreg細胞を顕著に刺激するのを防ぐ投与間隔レジメンが用いられる。
他の実施形態によれば、場合により、抗CD25抗体の第2用量が投与される。目的は、CD25飽和のレベル維持を達成することである。例えば、一実施形態において、抗CD25抗体の第2用量を5日目に投与できる。IL-2タンパク質組成物の第2用量と同じ日に抗CD25抗体の第2用量を投与することは便利でありうるが、IL-2タンパク質組成物の複数回投与に対して観察された最適の用法・用量により、用法・用量が決定される。
【0046】
本発明の方法によれば、抗IL-2抗体などのCD25受容体アンタゴニストはIL-2タンパク質組成物と共に投与される。一実施形態において、抗IL-2抗体およびIL-2タンパク質組成物は互いに離れて投与される。この実施形態において、抗IL-2抗体はIL-2タンパク質組成物と実質的に同時に投与される。一実施形態において、抗IL-2抗体での前治療が行われ、それにIL-2タンパク質組成物が続く。
本発明の一実施形態によれば、抗IL-2抗体の用量およびIL-2タンパク質組成物の用量が共に投与され、他の実施形態において、同じ治療セッション中に用量が別々に投与される。代替実施形態において、用量は、別々の治療セッション中に投与される。例えば、特定の実施形態において、抗IL-2抗体の用量は0日目に投与され、IL-2タンパク質組成物の用量は0〜7日後に投与される。他の特定の実施形態において、抗IL-2抗体の用量は0日目に投与され、IL-2タンパク質組成物の用量は3日目に投与される。必要に応じて、他の投与間隔レジメンを用いることができる。一実施形態において、例えば、抗IL-2抗体がTreg細胞などの標的細胞に対して有効であり、IL-2タンパク質組成物がTreg細胞を顕著に刺激するのを防ぐ投与間隔レジメンが用いられる。
他の実施形態によれば、場合により、抗IL-2抗体の第2用量が投与される。目的は、抗IL-2抗体によりIL-2飽和のレベル維持を達成することである。例えば、一実施形態において、IL-2抗体の第2用量を5日目に投与できる。IL-2タンパク質組成物の第2用量と同じ日に抗IL-2抗体の第2用量を投与することは便利でありうるが、IL-2タンパク質組成物の複数回投与に対して観察された最適の用法・用量により、用法・用量が決定される。
他の実施形態において、IL-2部分と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を低減または排除するIL-2部分における変異を有するIL-2融合タンパク質は、0日目に患者に投与される。その後は、0〜7日後に、変異体IL-2融合タンパク質の用量が投与される。必要に応じて他の投与間隔レジメンを用いることができる。
【0047】
前臨床マウスモデルを用いた本願の実施例2に示すように、一実施形態によれば、本発明の方法は、IL-2タンパク質組成物の連続した2回用量を用いたときにより有効であった。例えば、一実施形態によれば、2日間離れたIL-2タンパク質組成物の2回用量を含む用法・用量において、抗CD25抗体は0日目および5日目に投与され、IL-2タンパク質組成物は3日目および5日目に投与される。この用法・用量は本発明の一実施形態の例である。しかしながら、本発明の精神を逸脱することなくこの用法・用量の変形物を考えることができることは、当業者には明らかであろう。
他の実施形態によれば、場合により、免疫系の活性化またはCD8+エフェクター細胞の生成を促進する他の治療が含まれる。例えば、一実施形態によれば、前節に記載の組み合わせ療法の1〜14日前、好ましくは1〜7日前のIL-2タンパク質組成物を用いる選択可能な初期治療が含まれる。本発明のさらなる実施形態によれば、IL-2およびCD25アンタゴニストの組み合わせ療法の前に場合により投与できる他のサイトカインの例は、例えば、IL-7、IL-12、および/またはIL-15である。本発明の方法はまた、当業者に公知のアジュバントCpGなどの他の免疫系活性化剤も考える。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、抗CD25抗体は、CD25受容体の飽和維持を達成できる用量で投与される。例えば、ヒト成人を治療するためには、約0.01mg/kg〜10mg/kgの用量が一般に投与される。他の実施形態において、約0.5mg/kg〜2mg/kgの用量が用いられる。特定の実施形態において、抗CD25抗体ダクリズマブは、標準的には0.9%滅菌生理食塩水50mlの容量を用い、静脈内に約1mg/kgで投与される。代替実施形態において、前プロトコルのいずれかにより、抗CD25抗体の代わりに抗CD4抗体が投与される。
本発明の一実施形態によれば、変異体IL-2部分を有する融合タンパク質は、一般に約0.01mg/kg〜10mg/kgの用量で投与される。他の実施形態において、約0.5mg/kg〜2mg/kgの用量が用いられる。特定の実施形態において、変異体IL-2部分を有する融合タンパク質は、0.9%滅菌生理食塩水50mlの容量を用い、静脈内に約1mg/kgで投与される。
本発明の一実施形態によれば、抗IL-2抗体は、抗IL-2抗体による高親和性IL-2受容体のαサブユニット(CD25)への結合に必要なIL-2部分の部分を長期間飽和する用量で投与される。例えば、ヒト成人を治療するためには、約0.01mg/kg〜10mg/kgの用量が一般に投与される。他の実施形態において、約0.5mg/kg〜2mg/kgの用量が用いられる。特定の実施形態において、抗IL-2抗体は、0.9%滅菌生理食塩水50mlの容量を用い、静脈内に約1mg/kgで投与される。
本発明の他の実施形態によれば、IL-2タンパク質組成物はまた、最大耐量以下であると決定されている用量で投与される。一実施形態において、抗体-IL2融合タンパク質またはFc-IL2融合タンパク質に関しては、約0.004mg/m2〜4mg/m2の用量が投与される。他の実施形態において、約0.12mg/m2〜4mg/m2の用量が用いられる。他の実施形態において、約0.12mg/m2〜1.2mg/m2の用量が用いられる。よりさらなる実施形態において、約1mg/m2の用量が用いられ、4時間の注入を用いて静脈内に投与される。他の実施形態において、本発明の方法は抗体-IL2融合タンパク質が分離して投与される方法よりも、抗体-IL2融合タンパク質に関してより優れた治療係数を提供できるので、標準よりも低投与量、例えば約0.5mg/m2が用いられる。
【0049】
抗体-IL-2融合タンパク質を用いる本発明の組み合わせ治療薬は、前節に記載の方法で投与できる。
本発明の他の実施形態によれば、CD25アンタゴニストおよびIL-2タンパク質組成物は、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、腹腔内、経皮(局所)、経粘膜または直腸内のいずれかで投与される。
本発明の他の側面において、腫瘍に対する免疫反応の刺激に関して癌ワクチン単独よりも有効な方法が提供される。一実施形態において、本発明によれば、本方法は任意の望ましい癌ワクチン製剤と共に使用できる。一般に、癌ワクチンは、腫瘍細胞または腫瘍増殖を支える周囲の腫瘍間質の細胞により選択的に発現されている抗原に対して向けられる。腫瘍選択的抗原の例は、特に、MAGEファミリーメンバー、Cancer/Testisファミリーメンバー、サバイビン、CEAまたはムチンを含む。腫瘍間質の細胞に選択的な抗原の例は、特にVEGFR1またはFAPaplhaである。他の実施形態において、本方法は、対象の他の抗原に対する有効性を改善するために用いられる。
【0050】
癌ワクチン組成物は、抗原成分をコードするDNAまたは、抗原前駆体または抗原成分自身を形成するポリペプチドに基づくことができる。DNAベース癌ワクチン組成物はネイキッド(naked)DNAとして、またはリポソームまたはウイルスまたは細菌などの送達ビヒクルを用いて送達できる。例えば、一実施形態において、例えばXiangらにより米国特許出願公開第2004/0192631号に記載されているような、サルモネラ(salmonella)ベース細菌ビヒクルを用いて送達するためにパッケージ化された、サバイビンをコードするDNAワクチンを用いることができる。他の実施形態において、ペプチドカクテルを含むポリペプチドベース癌ワクチン組成物が用いられる。例えば、一実施形態において、Stratenらによる米国特許出願公開第2004/0210035号に記載のペプチドカクテルを含むペプチドカクテルが用いられる。さらに他の実施形態において、CEAが抗原であり、Fc-IL-2部分がアジュバント効果を有し、さらにIL-2活性を与えるCEA-Fc-IL2などのタンパク質が用いられる(配列番号9、例えば図19参照)。
【0051】
本発明の一実施形態において、癌ワクチンプロトコルは、抗CD25抗体およびIL-2の複数コピーを含むタンパク質組成物を含む組み合わせ治療薬と共に用いられる。例えば、一実施形態において、癌ワクチンを用いる前治療に続いてIL-2タンパク質組成物および抗CD25抗体による治療が行われる。一実施形態において、ワクチンを用いる前治療後に、最初にIL-2タンパク質組成物が投与され、ついで抗CD25抗体の投与が行われる。他の実施形態において、ワクチンを用いる前治療後に抗CD25抗体およびIL-2タンパク質組成物が共に投与される。実施例11および実施例12ならびに前節において、用法・用量の例の概略が述べられている。本発明の異なる実施形態において、抗IL-2抗体は抗CD25抗体に置き換えられる。
一実施形態において、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチンの抗原およびIL-2と高親和性IL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質を患者に投与することを含む。IL-2への有用な変異は上記に記載されている。他の実施形態において、本方法は、ワクチンの抗原およびIL-2とIL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与することを含む。さらなる実施形態によれば、本発明による1つのワクチンは、抗原およびIL-2とIL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質を含む医薬組成物である。
【0052】
本発明の他の実施形態によれば、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチンの抗原、IL-2融合タンパク質およびIL-2に結合するタンパク質を患者に投与することを含む。一実施形態において、IL-2融合タンパク質は抗体-IL-2融合タンパク質である。他の実施形態において、本方法は、ワクチン、IL-2に結合するタンパク質およびIL-2融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与することを含む。さらなる実施形態によれば、本発明による1つのワクチンは、抗原、IL-2融合タンパク質およびIL-2に結合するタンパク質を含む医薬組成物である。
本発明の他の実施形態によれば、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチン、IL-2融合タンパク質およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を患者に投与することを含む。一実施形態において、IL-2融合タンパク質は抗体-IL-2融合タンパク質である。他の実施形態において、本方法はワクチンの抗原、IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子およびIL-2融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与することを含む。他の実施形態によれば、本発明による1つのワクチンは、抗原、IL-2融合タンパク質およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を含む医薬組成物である。一実施形態において、このワクチンは患者に投与される。
【0053】
他の側面において、本発明は、IL-2タンパク質およびIL-2と高親和性IL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を遮断するタンパク質を含む医薬組成物を含む。例えば、一実施形態において、医薬組成物はIL-2および抗CD25抗体を含む。一実施形態において、医薬組成物は、IL-2および抗CD25抗体の混合物、例えば溶液である。他の実施形態において、医薬組成物はIL-2および抗IL-2抗体を含む。例えば、医薬組成物は、IL-2および抗IL-2抗体の混合物、例えば溶液であることができる。他の実施形態において、IL-2はIL-2融合タンパク質である。他の実施形態において、IL-2融合タンパク質はIL-2とIL-2中親和性または高親和性受容体βサブユニットの間の相互作用を遮断しない。さらに他の実施形態において、IL-2融合タンパク質はIL-2とIL-2高親和性受容体αサブユニットの間の相互作用を遮断しない。他の実施形態において、IL-2タンパク質は、高親和性IL-2受容体αサブユニットに結合するIL-2の能力を低減または排除する変異を含む。他の実施形態において、医薬組成物は患者、例えばヒト患者に投与される。
【0054】
他の側面において、本発明はキットを含む。本発明によれば、一実施形態において、キットは患者におけるエフェクター細胞機能を刺激する方法に用いられる。他の実施形態において、キットはIL-2媒介性免疫反応を調節する方法に用いられる。一実施形態によれば、キットは少なくともCD25受容体アンタゴニストおよびIL-2タンパク質組成物を含む。一実施形態において、キット内で、CD25受容体アンタゴニストは1つの容器に含まれ、IL-2タンパク質組成物は別の容器に含まれる。さらに他の実施形態において、CD25受容体アンタゴニストはIL-2と同じ容器に含まれる。
本発明に含まれるキットへの言及の続きとして、一実施形態において、キットに含まれるIL-2は、IL-2高親和性受容体のCD25サブユニットに結合するIL-2の能力を低減または排除するように変異される。例えば、一実施形態において、IL-2はR38WおよびF42Kに対応する1以上の残基における変異を有する。一実施形態において、CD25受容体アンタゴニストは抗CD25抗体であり、他の実施形態において、CD25受容体アンタゴニスト抗IL-2抗体である。他の実施形態において、抗IL-2抗体は、IL-2の高親和性IL-2受容体のαサブユニット(CD25)への結合に必要なIL-2部分の少なくとも一部に対して向けられる。
他の実施形態において、本発明によるキット内に含まれるIL-2は、IL-2融合タンパク質である。
【0055】
本発明の具体的実施態様を以下に列挙する。
(1)癌を患っている個体においてIL-2の免疫刺激作用を増強する医薬組成物であって、
(i)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質、並びに、CD25アンタゴニストおよび/またはCD4アンタゴニスト、または
(ii)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質、および、IL-2に結合してIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断するタンパク質、または
(iii)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質であって、対応する野生型IL-2融合タンパク質と比較して、IL-2と高親和性IL-2受容体のIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊するが、中親和性IL-2受容体に対する融合タンパク質の親和性を低減しない1以上の変異を含み、前記変異は、野生型IL-2部分のアミノ酸配列の位置R38およびR42におけるアミノ酸置換を含むが、変異D20T、N88RおよびQ126Dのいずれも含まない前記融合タンパク質、
を含み、場合により薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む前記医薬組成物。
(2)少なくとも2つのIL-2部分含むIL-2融合タンパク質およびCD25アンタゴニストを含む、(1)記載の医薬組成物。
(3)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質およびCD4アンタゴニストを含む、(1)記載の医薬組成物。
(4)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質およびCD25アンタゴニストおよびCD4アンタゴニストを含む、(1)記載の医薬組成物。
(5)CD25アンタゴニストが、IL-2の表面に結合し、IL-2とCD25の間の相互作用を阻害するタンパク質である、(2)または(4)の医薬組成物。
(6)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質、および、IL-2に結合してIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断するタンパク質を含む、(1)記載の医薬組成物。
(7)IL-2に結合するタンパク質が、さらにIL-2と高親和性または中親和性IL-2受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しない、(6)記載の医薬組成物。
(8)L-2に結合する前記タンパク質が抗IL-2抗体である、(5)〜(7)のいずれかに記載の医薬組成物。
(9)CD25アンタゴニストおよびCD4アンタゴニストが抗体である、(1)〜(5)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10)抗CD25抗体がダクリズマブまたはバシリキシマブである、(9)記載の医薬組成物。
(11)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質であって、対応する野生型IL-2融合タンパク質と比較して、IL-2と高親和性IL-2受容体のIL-2受容体α-サブユニットの間の相互作用を低減または破壊するが、中親和性IL-2受容体に対する融合タンパク質の親和性を低減しない1以上の変異を含み、前記変異は野生型IL-2部分のアミノ酸配列の位置R38およびR42におけるアミノ酸置換を含むが、変異D20T、N88RおよびQ126Dのいずれも含まない前記融合タンパク質を含む、(1)記載の医薬組成物。
(12)前記変異がアミノ酸置換R38WおよびF42Kを含む、(11)記載の医薬組成物。
(13)IL-2融合タンパク質が中親和性IL-2受容体複合体を活性化できるが高親和性IL-2受容体複合体を活性化できない、(1)〜(12)のいずれかに記載の医薬組成物。
(14)IL-2融合タンパク質がIL-2受容体複合体のβ-サブユニット(CD122)と結合できるが、IL-2受容体複合体のα-サブユニット(CD25)と結合できない、(1)〜(12)のいずれかに記載の医薬組成物。
(15)IL-2融合タンパク質が免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質である、(1)〜(14)のいずれかに記載の医薬組成物。
(16)免疫グロブリン部分が、腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境中に提示される抗原に対する可変領域を含む抗体である、(15)記載の医薬組成物。
(17)免疫グロブリン部分が抗体のFc部分である、(15)記載の医薬組成物。
(18)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質がKS-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2であるか、あるいはKS-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2に由来する、(15)または(16)記載の医薬組成物。
(19)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質がFc-IL-2またはIL-2-Fcであるか、あるいはFc-IL-2またはIL-2-Fcに由来する、(15)または(17)記載の医薬組成物。
(20)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が:
KS-IL-2、KS-ala-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2、
Fc-IL-2またはIL-2-Fc
からなる群から選択され、CD25アンタゴニストが抗CD25抗体である、(15)記載の医薬組成物。
(21)抗癌ワクチンをさらに含む、(1)〜(29)のいずれかに記載の医薬組成物。
(22)異なる別々の容器を含む医薬キットであって、
(i)第1容器が免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質を含み、
(ii)第2容器が、
(a)抗CD25抗体、または
(b)抗CD4抗体、または
(c)抗CD25抗体および抗CD4抗体、または
(d)および、IL-2に結合してIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断するが、IL-2と高親和性または中親和性IL-2受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しないタンパク質、を含む、
前記医薬キット。
(23)(d)のタンパク質が抗IL-2抗体である、(22)記載の医薬キット。
(24)抗腫瘍ワクチンを含む第3容器をさらに含む、(22)または(23)記載の医薬キット。
(25)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が、中親和性IL-2受容体複合体を活性化できるが高親和性IL-2受容体複合体を活性化できない、(22)〜(24)のいずれかに記載の医薬キット。
(26)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が、IL-2受容体複合体のβ-サブユニット(CD122)に結合できるがIL-2受容体複合体のα-サブユニット(CD25)に結合できない、(22)〜(24)のいずれかに記載の医薬キット。
(27)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質の免疫グロブリン部分が、
(a)腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境中に提示される抗原に対する可変領域を含む抗体、または
(b)抗体のFc部分
である、(22)〜(26)のいずれかに記載の医薬キット。
(28)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が:
KS-IL-2、KS-ala-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2、
Fc-IL-2またはIL-2-Fc
からなる群から選択される、(27)記載の医薬キット。
(29)組み合わせ療法の場合において、それぞれのIL-2融合タンパク質単独の投与と比較して、または単独療法の場合において、それぞれの未改変IL-2融合タンパク質の投与と比較して、患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する医薬の製造のための、(1)〜(28)のいずれかに記載の医薬組成物または医薬キットの使用。
(30)免疫刺激作用がCD8+細胞およびNK1.1+細胞の増強をもたらす、(29)記載の医薬組成物または医薬キットの使用。
(31)免疫刺激作用がTreg(CD4+CD25+)細胞活性の低下をもたらす、(29)または(30)記載の医薬組成物または医薬キットの使用。
(32)医薬が癌の治療に用いられる、(29)〜(31)のいずれかに記載の医薬組成物または医薬キットの使用。
本発明は、限定するものではない以下の実施例によりさらに説明される。
【実施例1】
【0056】
抗CD25抗体および抗体-IL2融合タンパク質で処置したマウスにおけるCD8+細胞の増強
マウスモデルにおいて、抗CD25抗体と種々の形のIL-2の組み合わせ治療薬の作用を評価するために、処置後に末梢血および脾臓から採取したマウス免疫細胞のレベルの変化を分析した。
【0057】
7〜8週齢の雌C57BL/6マウスを用いた。ラット抗マウス抗CD25抗体PC61(ラットハイブリドーマ細胞PC61(ATCC TIB222, Manassas, VA)から産生した)を、250マイクログラム/マウスの用量で、0日目および5日目に、マウス(1処置群につきn=3)に腹腔内投与した。1つの実験群のマウスに、3日目から7日目まで1日量20μg/マウスで静脈内に抗体融合タンパク質KS-ala-IL2をさらに投与し、一方、第2実験群のマウスに、1日量3.3μg/マウスで静脈内に組換えヒトIL-2(rh-IL2)をさらに投与した。この用量は、マウスに対するIL-2に関してモルベースでKS-ala-IL2 20マイクログラム/マウスと同等な用量を与えた(図1A参照)。対照群において、マウスには上記のPC61抗体を250マイクログラム/マウスもしくは100マイクログラム/マウスのいずれかの用量を投与するか、またはPBS溶液0.2mlの注射を行った。
【0058】
3日目のIL-2処置の開始時、および8日目のIL-2処置の終わりに再度末梢血細胞を採取し、当業者に公知の標準法であるフローサイトメトリーにより、マーカーCD4、CD8およびCD25に関して分析した。8日目に脾臓を採取し、上記のように分析した。3日目において、全CD4+および全CD8+細胞数は比較的不変のままであったが、検出可能なCD25+細胞数はPBS処置対照群に対しておおよそ10%に減少し、以前報告されたこの抗体の作用が確認された。さらに、PC61抗体の2つの用量の比較により、検出可能なCD25+細胞数の減少において、低投与量の100μgは高投与量と同様な効果を示したので、続く実験には典型的にはこの用量を用いた。8日目において、PC61およびKS-ala-IL2(配列番号2および4)の組み合わせで処置されたマウスからの末梢血細胞は、PBS処置対照またはPC61のみで処置したマウスに対して、CD4+およびCD8+細胞集団において劇的な変化を示した。全CD4+細胞はおよそ40%減少したのに対し、全CD8+細胞は400%を超えて増加した。このように、この組み合わせ治療薬は全CD4+およびCD8+集団に対して反対の効果を示した。
【0059】
驚いたことに、KS-ala-IL2の作用と対照的に、PC61およびrhIL-2の組み合わせで処置されたマウスからの末梢血細胞は、これらの細胞集団において有意な変化を示さず、数は対照と同様であった(図1B)。脾臓から単離された細胞でも同様な結果が見られた(図1C)。さらにまた、CD25+細胞についての脾臓細胞の分析は、PC61抗体治療薬は有効であり、実験期間中その効果は持続し、CD4+CD25+細胞を含む検出可能なCD25+細胞の数は対照の10%未満に低下したことを示した(図1D)。
CD25に対する抗体、例えばPC61と組み合わせるとき、抗体-IL2融合タンパク質に関連したIL-2を用いる動物の治療は、遊離(モノマーの)IL-2を用いる治療と対照的に、免疫療法に有用な免疫細胞集団に顕著で有益な変化、すなわち、CD8+細胞数の急増および、Treg細胞集団であるCD4+CD25+細胞を含む検出可能なCD25+細胞数の低下をもたらすことをこれらの結果は示している。遊離IL-2は、抗体-IL2融合タンパク質と同じ有益な結果を生じない。
【0060】
理論に拘束されるものではないが、遊離IL-2(配列番号1)に対してKS-ala-IL2で見られる示差効果は、KS-ala-IL2と関連する細胞におけるアビディティ効果などによるIL-2部分の局所濃度の増加によるものであることができる。二量体IL-2タンパク質、例えばFc-IL2または抗体-IL2融合タンパク質を含む他のタンパク質変種などの、IL-2に対してアビディティ効果を与える他の組成物は抗CD25抗体と組み合わせて有効であることができることが示唆される。
【0061】
マウスにおいて、抗CD25抗体処置によりTreg細胞は物理的に枯渇されず、むしろ、Treg細胞上のCD25受容体タンパク質はダウンレギュレートまたは低減し、Treg細胞の機能的不活性化がもたらされることが報告されている(Kohm et al., (2006), J. Immunol., 176:3301-3305)。本質的に前述のように行われ、加えて、CD4と共にTreg細胞の特徴である転写因子FoxP3を発現している細胞を検出する試薬を用いた異なる実験からの結果とこの所見とは一致する。PC61抗体での処置後にCD4+CD25+細胞は検出可能ではないが、CD4+FoxP3+細胞は検出可能であることが見いだされたが、このことは、Treg細胞は枯渇されず、FoxP3を発現し続け、むしろCD25依存性刺激に関して機能的に不活性化されたことを示している(データは示さず)。理論に拘束されるものではないが、抗体-IL2融合タンパク質に関連した二量体性により与えられるIL-2活性は、抗CD25抗体による阻害作用として予期される作用を克服してCD8+細胞集団を増幅させるがCD4+CD25+細胞集団を増幅させないと考えられる。
【0062】
興味あることに、この組み合わせ療法は全CD4+細胞の増幅よりもむしろ減少を導いたが、このことはさらに、CD4+およびCD8+細胞はこの処置に対して実際に異なった応答を示すことを示唆している。理論に拘束されるものではないが、CD4+細胞のタイプであるTreg細胞は、同様にこの組み合わせ療法に関連した抗体-IL2融合タンパク質治療に感受性を示さず、従って抗体-IL2治療はTreg活性の回復をもたらさないと考えられる。
【実施例2】
【0063】
投与の最適化ならびに抗CD25抗体および抗体-IL2融合タンパク質を用いる組み合わせ治療により誘導される免疫反応のさらなる解析
実施例1の実験に見られる劇的効果は、抗CD25抗体との組み合わせ療法によりKS-ala-IL2の治療係数を増加させることができ、それによりKS-ala-IL2の投与頻度の低下が可能になるということを示唆した。このことを試験するために、7〜8週齢雌C57BL/6マウス(1処置群につきn=3)において、抗CD25抗体PC61の有り無しで免疫細胞集団に対するKS-ala-IL2処置の効果を比較した。20マイクログラム/マウスの用量で、3日目における単回用量または3日目および5日目における2回用量のいずれかを用いてマウスの静脈内にKS-ala-IL2を投与した。1つの実験条件において、マウスの複数の群にさらに0日目および5日目に100マイクログラム/マウスの用量でPC61抗体を腹腔内に投与し、一方他の実験条件において、マウスの複数の群にはPC61を投与しなかった。対照群には、前述のスケジュールでPC61抗体を単独で投与するか、または0.2ml/マウスPBSを0日目および5日目腹腔内へ、3日目および5日目に静脈内へ投与した。
【0064】
フローサイトメトリーならびに細胞表面受容体CD4、CD8、CD25およびNK-1.1に対する抗体を用い、8日目、14日目および21日目に採取した血液サンプルからの免疫細胞集団を標準法により試験した。10日目にさらなる血液サンプルを採取し、CD8+メモリーT細胞を同定する細胞表面受容体CD8、CD44、CD62およびCD122に対する抗体を用いてフローサイトメトリーにより免疫細胞集団を分析した。分析は、当業者に公知の標準手順に従って行った。
予想されたように、PC61抗体治療薬は検出可能なCD25+細胞集団の約5倍の低下を引き起こし(データは示さず)、検出可能なCD4+CD25+細胞集団の約30倍の低下を引き起こしたが(図2B)、CD4+、CD8+またはNK-1.1+(ナチュラルキラー)細胞の総数は主として影響を受けなかった(図2C)。検出可能なCD4+CD25+細胞集団は、実験期間を通して、21日目になってもその低減したレベルを維持していた(図2B)。
KS-ala-huIL2単独による処置は、8日目において、CD8+細胞集団(図2A)およびCD4+CD25+細胞集団(図2B)のわずかな用量依存的増加を引き起こし、基礎レベルのおおよそ2倍に達したが、14日目までには、これらの集団は基礎レベルまで復帰した。
【0065】
NK1.1+細胞の集団は、8日目におおよそ3倍に増加した(図2C)。それに引き換え、組み合わせ治療の効果は甚大であった。8日目において、検出可能なCD4+CD25+細胞集団は対照に対しておおよそ50倍低減し(図2B)、全CD8+細胞集団(図2Aおよび2C)およびNK1.1+細胞集団(図2C)は、それぞれ7倍および40倍用量依存的に増加した。加えて、全CD4+細胞集団は対照に対して約40%用量依存的に減少した(図2C)。
10日目に、その8日目のレベルと比較して組み合わせ療法群におけるCD8+細胞集団は減少していたが、KS-ala-IL2を単独で投与された処置群のレベルよりも依然として上であったが、14日目までに基礎レベルに復帰した(図2A)。これらの細胞の大部分は、メモリーT細胞すなわち高レベルのCD44、CD62LおよびCD122を発現している細胞(中親和性IL-2受容体)上に見られる細胞マーカーを発現した。従って、増幅されたCD8+細胞の大部分はメモリー表現型のものであった(図2D)。他方では、ナイーブCD8+T細胞数は処置群間で変化は見られず、低レベルにとどまっていた(図2D)。
この組み合わせは、CD8+T細胞およびNK-1.1+細胞の増殖を一過性に増加させ、加えて、CD8+およびNK1.1+細胞集団に対してそれ自身ではこのような著しい効果を生まないKS-ala-IL2の用量で検出可能なTreg(CD4+CD25+)集団の活性を著しく低下させるのに有効であることをこれらの結果は示唆している。
【実施例3】
【0066】
抗CD25抗体と組み合わせた、モノマーまたは二量体IL-2を含む抗体-サイトカイン融合タンパク質の免疫細胞に対する活性
KS-ala-IL2におけるIL-2の二量体性がT細胞およびNK細胞増殖に対する劇的効果にとって重要かどうかを決定するために、抗体-IL2融合タンパク質のさらなる形態を試験した。このような分子の1つであるKS-ala-monoIL2は、抗体部分を含む2つの抗体重鎖の1つのC末端に結合した1つのみのIL-2部分を含む。融合タンパク質内の全長抗体構造の必要性を決定するために、IL-2が二量体でFc C末端とIL‐2部分の間にアラニンを有するFc-IL2融合タンパク質もまた試験した。huKS-ala-IL2について報告されているものと同じ程度にFc融合タンパク質の循環半減期を増すためにアラニンを挿入した(Gillies et al., (2002) Clin. Cancer. Res., 8:210-216)。
【0067】
抗CD25抗体PC61と組み合わせての、KS-ala-IL2に対するKS-ala-monoIL2の免疫細胞の増殖促進における効果を比較するために下記の実験を行った。
KS-ala-monoIL2を得るために、KS-ala-IL2重鎖融合タンパク質、KS抗体重鎖およびKS 軽鎖をコードする別々の発現カセットを含むベクターを構築した。この発現ベクターを骨髄系細胞株NS/0にトランスフェクトし、プロテインAセファロースに結合させ、溶離することにより馴化細胞培養培地から融合タンパク質を精製した。ヘテロ二量体のKS-ala-monoIL2をSECクロマトグラフィーによりさらに精製し、還元条件下、非変性および変性ゲル電気泳動でその同定を行った。薬物動態学に関しては、マウスにおいて、KS-ala-monoIL2の循環半減期は、KS-ala-IL2の循環半減期と少なくとも長さが同じくらいであることが観察された。
【0068】
それぞれ5つの群(1群につきn=3)に分割したC57BL/6マウス2セットを0日目および5日目にPC61100μgまたは非特異的ラット抗体100μgのいずれかで処置した。両セットにおける各群に、さらに3日目および5日目に、PBS、KS-ala-IL2 20μg、KS-ala-monoIL2 20μg、Fc-ala-IL2または遊離IL-2のいずれかを注射した。8日目に、標準法に従ってフローサイトメトリーにより末梢血細胞および脾細胞を分析した。対照群および実験群の両方に対する、フローサイトメトリーによる細胞数測定結果を図3A〜Fに示す。
【0069】
図3A〜Fを参照すると、PC61およびKS-ala-IL2を用いる組み合わせ治療は、著しいCD8+およびNK1.1+細胞の増殖をもたらし、末梢血および脾臓試料の両方における全CD4+細胞の低下をもたらしたが、遊離IL-2はPBS対照と比較してほとんど変化を示さなかった。この結果は、前記の実験ですでに観察されている結果と同様であった。それに引き換え、1つのIL-2分子を含むが遊離IL-2と比較して長い循環半減期を示すKS-ala-monoIL2を用いる治療は、PC61抗体と組み合わせた場合、CD8細胞のわずかな増加を示しただけだった。NK細胞数に対するKS-ala-monoIL2の効果は、二量体形で観察された効果よりもずっと低かった。CD4細胞に関しては、末梢血試料におけるCD4細胞の減少にKS-ala-monoIL2は効果を示さなかったが、脾臓試料におけるCD4細胞レベルはPBS対照よりもわずかに低いだけだった。Fc-ala-IL2での結果は、KS-ala-IL2に関して観察されたNKおよびCD8細胞の増殖パターンと類似していた。全体としては、脾臓におけるCD8およびNK細胞の合わせた百分率は、対照動物における20%未満からKS-ala-IL2およびPC61抗体組み合わせ群における75%を超えて増加した。
【0070】
この組み合わせ治療に関連して、KS-ala-IL2におけるIL-2の二量体性はその免疫刺激特性にとって重要であり、通常の組換えヒトIL-2(rhIL-2または“遊離IL-2”)に差異を生じさせることをこれらの結果は示している。理論に拘束されるものではないが、NK細胞はFcγRタンパク質を発現することが知られているので、KS-ala-monoIL2でのNK細胞増殖に対して見られる軽度の効果は、KS-ala-monoIL2のFc部分を介している可能性がある。
【0071】
上記の実験において、抗CD25抗体とKS-ala-IL2、KS-ala-monoIL2、IL-2またはFc-ala-IL2との組み合わせ療法から得られた脾臓のCD4細胞を、FoxP3およびCD25の発現に関してさらに分析した。抗FoxP3および抗CD25抗体を用いた。この場合において、PC61のエピトープとは別のエピトープに結合し、他人によりこの受容体の存在を検出する事が示されている7D4ラット抗マウスCD25抗体(Sauve et al., (1991), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4636-40)を用いた。示されたタンパク質で処置されたマウスにおける全脾細胞の百分率として、全CD25+FoxP3+細胞を測定した。以下の両陽性細胞の報告された百分率は、CD4細胞数に基づいており、組み合わせ群に関してずっと低かった。データを図4に示す。
【0072】
抗CD25抗体を用いる処置は、PBSおよびrIL-2群において、FoxP3+脾臓細胞上のCD25の発現レベルを明らかに低下させた(図4A)。それに引き換え、二量体IL-2融合タンパク質のいずれかで処置された群は、抗CD25抗体の非存在下でのFoxP3+細胞の百分率の増加ばかりでなく、PC61抗体の存在下でFoxP3+細胞上のCD25の継続的な発現も示した。huKS-ala-IL2およびPC61抗体の組み合わせで処置されたマウスの脾臓におけるCD4細胞総数はhuKS-ala-IL2単独群に対して減少したので、FoxP3およびCD25両陽性であるCD4細胞の百分率はCD4細胞の百分率として増加した(図4B)。しかしながら、実際はFoxP3+CD25+細胞総数は減少した(図4A)。顕著な特徴である細胞表面マーカー、CD4、CD25およびFoxP3の発現にもかかわらず、表面CD25へのPC61の結合が、二量体IL-2融合タンパク質での刺激後のCD8およびNK細胞増幅のTregによる抑制を機能的に阻害したと考えられる。この主張の裏づけとして、最近の研究により、PC61投与後にTregは枯渇されず、処置されたマウスからの精製CD4+FoxP3+GITR+T細胞は制御機能を欠くことが示されている(Fecci et al., (2005), Clin. Cancer Res., 12:4294-4305)。
【実施例4】
【0073】
抗CD25抗体および、中親和性IL-2受容体複合体に対する低減した結合を有するマウスIL-2またはIL-2変種を含む抗体-IL2融合タンパク質の刺激活性
これらの研究に用いたPC61は、マウスIL-2によって誘導されるがヒトIL-2またはKS-ala-IL2(ヒトIL-2配列を含む)によっては誘導されないマウスCTLL-2細胞の増殖を抑制することがin vitro実験で示されているので、マウスにおいて観察された効果は単に、PC61の作用を回避することができる異種間背景におけるヒトIL-2タンパク質の使用の結果である可能性がある。
【0074】
IL-2受容体複合体におけるIL-2作用のPC61による中和が重要であるかどうかを試験するために、マウスを、ヒトIL-2(KS-ala-IL2)またはマウスIL-2(KS-ala-mIL2)を含むKS-ala-IL2のいずれかで処置した。本質的に前記実施例に記載されているように実験を行った。C57BL/6マウス(1処置群につきn=3)に、0日目および5日目に、PC61抗体100マイクログラム/マウスまたは非特異的ラット抗体100μgを注射し、3日目および5日目に20マイクログラムのKS-ala-IL2、KS-ala-mIL2またはPBSを注射した。対照群のマウスには、PC61の代わりに無関係のラット抗マウス抗体100マイクログラム/マウスを投与した。8日目に、末梢血試料を採取し、前述同様に、CD4、CD8、NK1.1およびCD25に対するマーカーを用い、フローサイトメトリーにより分析した。
組み合わせ治療薬において、抗体-IL2融合タンパク質のマウス形は、マウスにおけるCD8+およびNK1.1+細胞の増殖の誘導において同様に活性であることが見いだされ(図5Bおよび5C)、このことはこの効果がin vitroでサイトカイン生物活性を中和する抗CD25抗体の能力に関係しないことを示している。しかしながら、抗体-IL2融合タンパク質のマウス型は、CD4+細胞レベルの低下を引き起こさなかった(図5A)。
【0075】
本実験の第2の側面において、中親和性IL-2受容体複合体を介するシグナル伝達の重要性を評価した。このために、IL-2受容体のα鎖への結合に必要なIL-2(D20T)における単一の点変異を含むIL-2変種を有する抗体融合タンパク質を用いる。以前の研究は、これが高親和性IL-2受容体に対して中親和性受容体よりも高選択的(>1000倍)であることを示している(例えば、米国特許出願公開第2003/0166163号参照)。C57BL/6マウスのさらなる群を、上記のように、3日目および5日目にKS-ala-IL2(D20T)で処置した。この変種が用いられる場合、CD8+またはNK1.1+細胞集団は増幅されないことが見いだされ(図5Bおよび5C)、これは中親和性IL-2受容体複合体を介するシグナル伝達が必要であることを示した。
【0076】
要約すれば、本発明は中親和性IL-2受容体複合体を介してシグナル伝達することができる二量体形のIL-2および抗CD25抗体の使用を最低限必要とすることを、実施例3および4は示している。しかしながら、高親和性受容体複合体への外から加えられたIL-2の結合およびシグナル伝達を抗体が中和できることを必要としないと思われる。
【実施例5】
【0077】
非標的化IL-2融合タンパク質および抗CD25抗体を用いる処置によるTreg細胞活性の低下ならびにCD8+T細胞およびNK1.1+細胞の増強
前記実施例において抗体-IL2融合タンパク質を用いた。しかしながら、EpCAMに特異的な抗体可変領域は免疫細胞集団変化に対する観察された効果に対して副次的であり、従ってPC61と組み合わせた二量体IL-2融合タンパク質の非標的化形は、CD8+細胞およびNK1.1+細胞を増強する一方でCD4+CD25+細胞の活性を低下させる能力において前記抗体-IL2融合タンパク質と同様に有効であると考えられる。
【0078】
この予測を試験するために、下記の実験を用いることができる。非標的化二量体IL-2変種の例は、ヒトIL-2のN末端に融合させたヒトIgG1のFc部分からなるFc-IL2融合タンパク質またはヒトIgG1のFc部分のN末端に融合させたヒトIL-2からなるIL2-Fcを含む。IL2-Fcタンパク質はCDCおよびADCCエフェクター機能を維持しているが(例えば、米国特許第5,349,053号参照)、Fc-IL2タンパク質はそれを維持していないことが明らかにされたので、N-グリカナーゼでIL2-Fcをさらに処理してAsn297部位でN-結合型グリコシル化を除いてエフェクター機能を除去し、IL-2受容体保有T細胞の殺傷を回避する。対照としてKS-ala-IL2および酵素的に脱グリコシル化されたKS-ala-IL2(Asn297において)を用いる。
本質的に前記実施例に記載されているように実験を行う。C57BL/6マウス(1処置群につきn=3)に、0日目および5日目にPC61抗体100マイクログラム/マウスを注射し、3日目および5日目にFc-IL2 20マイクログラム、脱グリコシル化されたIL2-Fc、KS-ala-IL2もしくは脱グリコシル化されたKS-ala-IL2またはPBSを注射する。対照群のマウスには、PC61の代わりに、無関係のラット抗マウス抗体100マイクログラム/マウスを投与する。8日目に、末梢血試料を採取し、CD4、CD8、NK1.1およびCD25に対するマーカーを用いて前述同様にフローサイトメトリーにより分析する。
【0079】
本発明によれば、両方の非標的化二量体IL-2融合タンパク質は、CD4+CD25+細胞を低下させることとCD8+T細胞およびNK1.1+細胞の両方を増殖させることにおいて、KS-ala-IL-2融合タンパク質と同程度に有効であることが観察される。さらにまた、IL2-FcまたはKS-ala-IL2のいずれかの脱グリコシル化によるFc受容体結合の排除はこのプロセスに対してほとんど効果を示さない。従って、Fc-IL2またはIL2-Fc(変異、N-結合型グリカンを除去するための酵素的処理により、または低Fc受容体結合を有するイソタイプ、例えばIgG2を用いることよりFc受容体結合を排除した)のいずれも、抗CD25抗体と組み合わせた場合、Treg細胞の全身性機能的不活性化ならびにCD8+T細胞およびNK細胞の全身性増殖のための本発明の有用な実施形態と考えられる(融合タンパク質におけるFc受容体結合の除去の議論に関しては、米国特許出願公開第2003-01045294号を参照のこと)。
【0080】
興味深いことに、IL-2受容体α相互作用に関与するIL-2領域を抗体がふさぐ特定の抗IL2-抗体/IL-2複合体は、in vivoでメモリーCD8+T細胞およびNK細胞の増殖を刺激することができることが観察されていた(Boyman et al., (2006), Science, 311:1924-1927 参照)。無傷の抗体の代わりに対応するF(ab)2フラグメントの使用によりこの効果は著しく低減されたので、このタンパク質組成物に関しては、Fc/Fc受容体相互作用がレスポンダー細胞へのIL-2の提示にとって重要であることが示唆された。
【実施例6】
【0081】
抗CD25抗体と組み合わされたときの、抗体-IL2融合タンパク質の増強された抗腫瘍活性
本実施例に記載された実験のような実験は、免疫細胞に対する組み合わせ治療薬の効果がより効果的な抗腫瘍治療に関連しているということを示すために使用できる。例えば、トランスフェクトされてヒト細胞表面タンパク質EpCAMを発現し、KS抗体により認識されるLewis肺癌細胞株であるLLC/KSA腫瘍細胞をC57BL/6マウスの皮下に移植する。次いでこのマウスをPC61抗体と組み合わせたKS-ala-IL2で治療する。IL-2の腫瘍への標的化の相対的重要性を評価するための対照として、Fc-IL2などの非標的化二量体IL-2融合タンパク質を用いる。
【0082】
下記の実験において、前記実施例に記載されている治療スケジュールが用いられるが、場合により抗体およびIL-2融合タンパク質の他の用法用量を用いることができる。7〜8週齢の雌C57BL/6マウス(1群につきn=6)の皮下にLLC/KSAを移植する。皮膚腫瘍が平均サイズ50mm3に達するとき、例えば本質的に前記実施例に記載されているようにマウスを処置する:0日目および5日目にマウスの複数の群に、PC61 100マイクログラム/マウスまたは非特異的ラット抗体100マイクログラム/マウスのいずれかを注射し;3日目および5日目に、マウスの複数の群を、KS-ala-IL2 20マイクログラム/マウスまたはFc-IL2 20マイクログラム/マウスまたはPBSでさらに処置する。8日目に、末梢血試料を採取し、CD4、CD8、NK1.1およびCD25に対するマーカーを用いて前述同様にフローサイトメトリーにより分析する。実験期間を通じて、週2回、腫瘍体積の連続測定を行う。
【0083】
本発明によれば、CD25抗体単独ではこの腫瘍の増殖にほとんど効果を示さず、KS-ala-IL2単独の2つの用量は、わずかな活性しか示さないことを結果が示すことが予期される。さらに、組み合わせ療法は、いずれかの薬剤単独と比較して腫瘍増殖速度に顕著な効果を示すことが予期され、これはCD8+T細胞および/またはNK1.1+細胞の増幅と関連することが予期される。加えて、抗CD25およびFc‐IL2を用いる動物の治療は、抗CD25および標的KS-ala-IL2分子を用いる治療よりも低い抗腫瘍活性を示すことが予期されるので、IL-2の腫瘍標的化もまた抗腫瘍活性に重要な役割を果たすことが予期される。
他の投与計画を選択することができ、マウスモデルで試験することができる。例えば、抗CD25抗体治療薬を投与する前に活性化T細胞を増殖させることは有用かもしれず、前述の標準的投与計画の2日または3日前のKS-ala-IL2を用いる選択可能な初期治療を含むことができる。必要に応じて、免疫細胞の活性化を促進するかまたはエフェクター細胞を生成させるためのさらなる治療を挿入するために、実験投与計画をさらに改変することができる。場合により、他のT細胞活性化剤、例えばCpGをスケジュール中に含むことができる。
【0084】
実験の他の側面において、主として抗腫瘍活性に関与するエフェクター細胞タイプは、CD8+T細胞またはNK細胞のいずれかの枯渇により評価できる。1日目および6日目に、組み合わせ療法を受けている2群のマウスの腹腔内に、抗CD8抗体100マイクログラム/マウスまたは抗asialo GM1(#986 - 10001, Wako Chemicals USA, Richmond, VA) 20マイクロリットル/マウスをさらに投与し、ついでマウスを本実施例に記載されているように処置する。例えば、もし抗CD8抗体による処置が著しく多い腫瘍量を有するマウスをもたらせば、それによりCD8+細胞が重要なエフェクター細胞集団であることが確認されるであろう。
【実施例7】
【0085】
抗CD25抗体/抗体-IL2組み合わせ治療の他の実験転移モデルにおける抗腫瘍活性に対する効果
抗体標的化は、末梢血におけるエフェクターの結果としてよりも、腫瘍微小環境においてその主要な抗腫瘍活性を発揮すると考えられるので、腫瘍標的化免疫サイトカインと抗CD25遮断との組み合わせの効果を試験した。抗IL2抗体およびIL2全身性遺伝子治療を用いて以前報告された結果と結果の比較を容易にするために、B16メラノーマモデルを選択した(Kamimura et al., (2006), J. Immunol., 177:1924-1927)。
【0086】
Gillies et al., (1998), J. Immunol., 160:6195-6203 に記載されているように、レトロウイルスベクターを用い、トランス感染により、huKS抗体に対する抗原(KSAまたはEpCAM、上皮細胞接着分子)を発現している安定的にトランスフェクトされたB16メラノーマクローンであるB16/KSAを作製した。G418(1mg/ml)(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含む細胞増殖培地で細胞を培養した。0日目にB16/KSAの生存単一細胞2x105個を含むPBS0.2mlをマウスの静脈内に注射し、1日間回復させた。
1日目および5日目に、100マイクログラム/用量のラットIgGまたは抗CD25抗体PC61のいずれかをマウスの腹腔内に注射した。3日目および5日目に、20マイクログラム/用量のhuKS-ala-IL2を静脈内に注射した。マウスの症状をモニターし、対照群が瀕死状態になったとき(腫瘍移植後21日目に起こった)マウスを犠牲にした。肺を摘出し、重さを計り、ブアン液で固定した。(a)体重で正規化した肺重量および(b)転移で覆われた肺表面の百分率、により抗腫瘍効果を評価した。
【0087】
マウス肺における腫瘍量は2つの方法で測定した。腫瘍で覆われた肺表面の百分率は視覚的検査で評価した。これは6匹の動物群の平均+/-標準誤差で表わされる。腫瘍量はまた、肺を計量することにより測定した。値は各マウスの体重で正規化した。組み合わせ群とBPS対照群の間の差異は、2つの測定により、統計的に有意(p<0.01)であったが、huKS-ala-IL2群との差異は有意差がなかった。表面転移および腫瘍量のデータは図7に示されている。
図7に示すように、huKS-ala-IL2および対照ラットIgGでの処置は、腫瘍量にある程度の効果を示したが、抗CD25抗体を加えない場合は差異は統計的に有意ではなかった。1つには各マウスの応答の変動のせいで、huKS-ala-IL2単独療法と組み合わせ療法群の間の差異は十分に統計的に有意ではなかった。
【0088】
これらの結果の可能な説明は、抗CD25はCD4+CD25+細胞に関するTreg機能ばかりでなく、CD8+CD25+細胞に関するエフェクター機能もまた遮断するということである。このことを回避する試みとして、実施例13における代替的アプローチを試みた。さらにまた、これらのデータとKamimuraら ((2006), J. Immunol., 177:1924-1927) により以前に報告されたデータとの差異は、処置のタイミングばかりでなく腫瘍量の測定時(12日目に対する21日目)によっても説明しうる。動物の全群における腫瘍量が増すに従って非治癒処置における差異は急速に失われることは予想されることであろう。実際、huKS-ala-IL2単独での免疫刺激の条件は、定着したB16肺転移の成長を抑制するのにすでに十分強力であり、2日を越える投与により容易により有効にし得る。この高い効力は抗体-IL2融合タンパク質の標的化効果の反映と考えることができ、今日までに試験されたすべてのモデルにおいて、遊離抗体およびサイトカインよりもずっと強力であるということが示されている(Davis et al., (2003), Cancer Immunol. Immunother., 52:297-308 。
【実施例8】
【0089】
制御性T細胞を低減しCD8陽性T細胞の増幅を増強する、二量体IL-2融合タンパク質および抗CD25抗体とワクチンの組み合わせの効果
ワクチン接種という状況での抗CD25抗体および二量体IL-2融合タンパク質を用いる治療の価値を明らかにするために、下記の実験を行う。例えば、本実験の0日目および5日目において、抗CD25抗体または対照ビヒクルを用いてマウスを最初に前処置する。次いで、例えば1日目に、場合によりアジュバントを含めて抗原を投与する。CD8+T細胞応答をモニターするための有用な抗原はクラスI MHCにより認識されるAH1-Ala5ペプチドであり、Balb/cマウスにおける同系腫瘍により提示される(Slansky et al., (2000), Immunity, 13:526-538)。これは、不完全フロイントアジュバントと共に容易に投与できる。本実施例においては、二量体IL-2融合タンパク質は、静脈内注射により3日目および5日目に投与される(20μg/マウス)。11日目および18日目に、複数の群のマウスを犠牲にし、マウスの脾臓細胞を免疫細胞サブセットに関して分析し、さらにELISPOTによりインターフェロンガンマ(IFN-γ)を発現しているAH1-Ala5ペプチド特異的CD8+T細胞数の計数を行う。このELISPOTアッセイは、抗原特異的細胞傷害性CD8細胞レベル(CTL)を測定するためのアッセイとして当該分野で公知である(例えば、 Power et al., (1999), J. Immunol. Meth., 227:99-107 参照)。抗CD25抗体および二量体IL-2融合タンパク質にワクチン接種プロトコルを加えた組み合わせは、各薬剤単独のいずれよりも大きい程度に抗原特異的CD8+T細胞数を増加させることを結果は示す。
【0090】
この特定のプロトコルは、免疫感作に対するCD8+細胞ワクチン応答を高めることが示されるが、本発明の実施形態として、このアプローチの多くの変法を考えることができる。
例えば、一実施形態において、二量体IL-2分子(例えばFc-IL2またはIL2-Fc)は、抗原と同時または約24〜48時間以内に投与され、そして好ましくは乳化アジュバントが注射される部位とは異なる部位に投与される。抗CD25抗体は静脈内に注射するのが好ましいが、二量体IL-2タンパク質はいくつかの代替法によって投与できる。上記の実施例に記載されているように、静脈内注射を用いることができるが、皮下または筋肉内注射もまた使用できる。他の送達方法は、二量体IL-2融合タンパク質をコードするDNAベクターの注射を含むことができる。
また、CEA-Fc-IL2(配列番号9)融合タンパク質などのタンパク質が投与される。CEAは抗原と考えられ、Fc-IL-2部分がアジュバント効果を有すると共に二量体IL-2を提供する。抗CD25抗体の投与は、好ましくは融合タンパク質の注射の前に行われるが、0〜2日前の範囲であることができる。場合により、追加免疫効果を得るためにこの手順が繰り返される。ついで細胞性免疫反応は標準法によりモニターされる。
【実施例9】
【0091】
抗体-IL-2および抗CD4または抗CD25抗体を用いる治療に起因する、NKおよびCD8T細胞増殖へのCD4枯渇の効果
前述の実験の結果は、抗CD25抗体によるTreg細胞の機能的遮断は、二量体IL-2抗体融合タンパク質によるNKおよびCD8T細胞両方の増殖のより強力な刺激を可能にさせることを示しており、in vivoにおいてこれらの細胞はこのプロセスを活発に抑制していることを示唆している。抗CD4抗体枯渇もまたこの抑制を取り除くことが予期できるので、組み合わせ療法において、これらの2つの抗体アプローチの効果をhuKS-ala-IL2と比較した。前述の実験と同じ投与量およびスケジューリングに従って、1日目および5日目に抗CD4抗体または抗CD25抗体のいずれかを用い、3日目および5日目にhuKS-ala-IL2を用いてマウスを処置した。ついで後眼窩採血により全血を得、フローサイトメトリーにより分析した。それから得られた細胞数を図6A〜Eに示す。
【0092】
図6A〜Eに示すように、用いた条件下での抗CD4抗体を用いる処置は、分析日である8日目においてほぼ完全にCD4およびCD4+CD25+細胞を排除した(図6Aおよび6B)。いずれかの抗体を用いる組み合わせ療法はCD8細胞増殖の同様な増強をもたらし、Tregの機能的遮断または全CD4 T細胞の排除は同様な効果を示すことを示唆した。1つの顕著ではあるが予期せぬものではない差異は、huKS-ala-IL2および抗CD4で処置されたCD8細胞は、抗CD25で処置された組み合わせ群よりもずっと高いCD25レベルを示したことである。
組み合わせ治療群間の他の興味ある差異は、この治療ではCD4+ CD25+細胞は枯渇されたが、CD4細胞の枯渇は抗CD25抗体で観察される場合と同じレベルのhuKS-ala-IL2によるNK細胞増殖をもたらさなかったことである(図6A〜E)。かわりに、NK1.1+集団における増加は、huKS-ala-IL2単独で見られた増加と同様であった(図6E)。
【0093】
huKS-ala-IL2およびPC61を投与したマウスに、さらなる枯渇抗体(NK細胞を枯渇するための抗CD8および抗GM1)を投与することにより、他の潜在的免疫細胞相互作用を試験した。これらの抗体の追加は、追加しなければhuKS-ala-IL2およびPC61に応じて大きく増幅された数を示すはずのマウスにおけるそれぞれの細胞型を除去するのに完全に有効であった(図6A〜E)。huKS-ala-IL2およびPC61を投与したマウスへの抗CD8抗体の追加の効果は、わずかではあったが統計的に有意なNK細胞の低下をもたらした。それに引き換え、CD8細胞増幅に関しては、抗GM1を用いるNK細胞の枯渇は、huKS-ala-IL2を投与したマウスへのPC61の追加の刺激効果を逆転させた。
Treg活性を低下させる手段としての抗CD4の使用もまた、CD8+CD25+T細胞の増加をもたらした。阻害を低下させる手段はこれらの細胞のCD25活性化を抑制しなかったので、これらのCD8+CD25+T細胞はより強力なエフェクター活性を有する可能性がある。この場合は、CD8細胞増殖のみが増強されたが、下記の実施例13に記載されているように、CD4、NKおよびGr1+細胞は、抗体-IL2変異構築物を用いて、すべて増強された。
CD4枯渇はCD8細胞の増殖を刺激したが、NK細胞の増殖を刺激せず、かつ抗CD25抗体よりもやや低い程度であったことは、IL-2抗体融合タンパク質および抗CD25抗体を同時投与されたマウスにおけるCD8細胞の最適の増殖のためにNK細胞が必要であると考えられる事実による可能性がある。
【実施例10】
【0094】
SCIDマウスおよびCD4枯渇Bl/6マウスにおける抗CD25抗体およびhuKS-IL2の効果
huKS-ala-IL2およびPC61抗体投与により誘導されるNK細胞の増殖にCD4細胞が必要かどうかを試験するために、CD4枯渇Bl/6マウスならびに機能的TおよびB細胞を欠くSCID CB17マウスにおける実験を企てた。
【0095】
1日目および5日目に、対照抗体ラットIgGまたは抗CD25抗体PC61のいずれか(100マイクログラム/用量、PBSで全量200マイクロリットルに希釈)をSCIDマウスの腹腔内に注射した。ついで3日目および5日目に、ラットIgGを投与されたマウスに、PBSまたはhuKS-ala-IL2(20マイクログラム/用量、PBSで全量100マイクロリットルに希釈)のいずれかを尾静脈を介して静脈内に投与した。同様に、抗CD25抗体を投与されたSCIDマウスに、PBSまたはhuK
S-ala-IL2(20マイクログラム/用量)のいずれかを尾静脈を介して静脈内に投与した。
1日目および5日目に、B1/6マウスに、対照抗体ラットIgG、抗CD25抗体PC61、抗CD4抗体GK1.5またはPC61およびGK1.5の両方のいずれか(100マイクログラム/用量、PBSで全量200マイクロリットル希釈)を腹腔内に注射した。ついで、3日目および5日目に、PBSまたはhuKS-ala-IL2のいずれか(20マイクログラム/用量、PBSで全量100マイクロリットルに希釈)をマウスに投与した。
8日目に末梢血試料を採取し、全血細胞をフローサイトメトリーにより分析した。DX5+ NK細胞、CD11bおよびGr1(顆粒球)のレベルに関してSCIDマウスからの血球を評価した。NK1.1+ NK細胞(図8C)およびCD8+ T細胞(図8D)に関してB/6マウスからの血球を評価した。
【0096】
驚いたことに、huKS-ala-IL2単独治療群と比較して、抗CD25抗体の追加はDX5+ (NK)細胞の劇的増幅をもたらし、これらの大部分は成熟表現型を示すCD11b+であった(図8A)。この組み合わせ群において、Gr1+細胞もまた10倍を超えて増幅された(図8B)。前記実験において、NK細胞がhuKS-ala-IL2および抗CD25抗体に応じて増幅されなかった理由はCD4細胞の枯渇ではなくて、むしろおそらくは異なる細胞型へのCD25の遮断の欠如が理由であることをこれらの結果は示している。この制御機構の克服が、二量体IL2に応じて、複数のリンパ球および顆粒球集団の増幅をもたらした。
SCIDマウス(機能的CD4細胞を欠く)における観察と一致して、CD4枯渇免疫コンピテントマウスへのPC61の追加は、huKS-ala-IL2により誘導される高レベルのNK細胞増殖を回復させた(図8C)。NK細胞とは異なって、以前の実験において観察されたように、同じマウスにおけるCD8T細胞数は、抗CD4または抗CD25抗体治療のいずれの結果としても増加した(図8D)。これらのデータを合わせれば、CD4細胞(おそらくCD4+CD25+Treg)はCD8 T細胞増殖を制限するが、NK細胞増殖は、CD25も発現してその制御能力をCD25に機能的に依存しているがT細胞系列ではない他の細胞型により制御されていることが示唆される。
【実施例11】
【0097】
免疫サイトカインおよびCD25抗体を用いるヒト癌患者の治療
本発明によれば、ヒト癌患者は抗CD25抗体およびIL-2含有免疫サイトカインで治療される。適切な投与順序は、上記の実施例に記載されている実験におけるマウス腫瘍モデルで確立し、ヒト用を対象とした同じ試薬を用いてサルにおける続く試験で確認できる。例示的な治療は次のとおりである。免疫サイトカイン療法に適していると見なされる患者を、最初に製造業者により推奨される用量でヒト抗CD25抗体を用いて処置する。このような抗体は、当該技術分野で公知であり、移植片拒絶(例えばダクリズマブ(別名Zenapax(登録商標)(Roche))またはバシリキシマブ(別名Simulect(登録商標)(ノバルティス)))の予防用としてすでに市販されている。例えば、ダクリズマブは、標準的には、静脈内に1mg/kgで投与される。投与は、一般に0.9%滅菌生理食塩水50ミリリットル量の注入による。
【0098】
抗CD25抗体の投与後約0〜約72時間に、KS-IL2(配列番号2および3)またはhu14.18-IL2(例えば、配列番号7および8)(例えば、米国特許出願公開第2004/0203100号およびOsenga et al., (2006), Clin. Cancer Res., 12(6):1750-1759 参照)などの免疫サイトカインを静脈内注入により投与する。一般的には4時間注入が用いられるが、より短いまたは長い注入時間を用いることができる。一般に、体表面積1平方メートルあたり0.04〜4mgの免疫サイトカイン用量が用いられるが、これは成人のヒト患者の約0.1〜10mgに相当する。場合により、第1用量のおおよそ5日後に、第2用量の免疫サイトカインと共に、第2用量のダクリズマブが投与される。さらなる前臨床試験および初期臨床試験に基づいて、必要に応じて、他の投与計画を用いることができる。
【実施例12】
【0099】
抗癌ワクチンならびに二量体IL-2融合タンパク質および抗CD25抗体の組み合わせを用いるヒト癌患者の治療
本発明の他の側面によれば、ヒト癌患者は、抗癌ワクチン、抗CD25抗体およびIL-2タンパク質組成物で治療される。適切な投与順序は、上記の実施例に記載されている実験におけるマウス腫瘍モデルで確立し、ヒト用を対象とした同じ試薬を用いてサルにおける続く試験で確認できる。例示的な治療は次のとおりである。癌ワクチン療法に適していると見なされる患者をダクリズマブ(Zenapax(登録商標))などの抗CD25抗体を用いて製造業者により推奨される用量、例えば静脈内に1mg/kgで処置する。投与は、一般に0.9%滅菌生理食塩水50ミリリットル量の注入による。抗CD25抗体の投与後約0〜約72時間に癌ワクチンを投与する。例えば、腫瘍選択的抗原サバイビンを発現している腫瘍への免疫反応を誘発する、サバイビン由来ペプチドのカクテルを含む癌ワクチンを投与する(米国特許出願公開第2004/0210035号参照)。用量は1ペプチドあたり約100マイクログラムであり、投与経路は皮下注射である。場合により同じ治療プロトコルを用いるブーストサイクル(boost cycle)が行われる。その後すぐに、タンパク質の静脈内または皮下注射のいずれかにより、あるいはまたこのようなタンパク質、例えばFc-IL2またはIL2-Fc融合タンパク質をコードするベクターの注射により二量体IL-2融合タンパク質が投与される。場合により、融合タンパク質のFc部分は、T細胞応答を鈍らせることができる、CDCまたはADCCなどの抗体のエフェクター機能を誘発しないように改変される。ワクチン接種手順に関しては、ワクチンの投与量および投与経路は、一般に抗CD25抗体を含まない手順と変わらない。
【0100】
また、他の実施形態によれば、ヒト癌患者を最初に1ラウンドの癌ワクチンで治療し、ついで二量体IL-2融合タンパク質で治療して免疫反応の誘導相を開始させ、その後、前述のように抗CD25抗体で治療の第2ラウンドを開始する。例えば、一実施形態において、患者を癌ワクチンで前治療する。ついで前治療の1〜7日後に、患者をIL-2タンパク質組成物および抗CD25抗体で治療する。代替実施形態において、患者を癌ワクチンで前治療する。ついで前治療後1〜7日に、患者をIL-2タンパク質組成物で治療する。ついでIL-2タンパク質組成物での治療後1〜7日に、患者を抗CD25抗体で治療する。場合により、抗CD25抗体での治療の前に、患者に癌ワクチンのブースト治療が行われる。
【実施例13】
【0101】
IL-2の変異形を含む融合タンパク質と野生型IL-2を含む免疫サイトカインおよび抗CD25抗体の効果の比較
理論に拘束されるものではないが、抗体-IL2融合タンパク質および抗CD25抗体の組み合わせにより誘導される免疫細胞の過剰増殖は、中親和性IL-2受容体を刺激し、同時にCD25を遮断することによると考えられる。従って、抗体を用いてCD25を遮断する、抗CD25抗体およびIL-2含有融合タンパク質の組み合わせへの代案として、IL-2Rα結合表面に欠陥を有する変異体IL-2を含む抗体-サイトカイン融合タンパク質について、同様な効果が得られるかどうか確認するために、T細胞レベルへのそれらの効果を試験した。
【0102】
IL-2のアミノ酸残基R38およびF42は、共に受容体α鎖と相互作用する(Sauve et al., (1991), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4636-40; Heaton et al., (1993), Cell Immunol., 147:167-179)。従って、CD25との相互作用を効果的に遮断するために、残基(R38WおよびF42K)の両方の変異を有するhuKS-ala-IL2のバージョンを設計した(“huKS-ala-IL2RF”と呼ぶ)。対照として、αβγ高親和性受容体複合体への結合を維持しながらCD122への結合を遮断するために、IL-2の位置D20をトレオニンに変異させた(本明細書においては“D20T”または“D”と呼ぶ)(huKS-ala-IL2D20T、huKS-ala-IL2Dとも呼ぶ)。いずれの場合も、変異体抗体-IL2融合タンパク質は、他のIL-2受容体形を介して増殖を誘導することができる(Hu et al., (2003), blood, 101:4853-61)。
7週齢の雌Balb/Cマウスの1群を、それぞれ3匹のマウスからなる部分群を有する2群、すなわち実験群および対照群に分割した。1日目および5日目に、実験用マウスには抗CD25抗体PC61 100マイクログラムを投与し、対照マウスには対照抗体ラットIgG100マイクログラムを投与した。3日目および5日目に、実験群および対照群の部分群に、それぞれPBS、KS-ala-IL2、KS-ala-IL2(R38W、F42K)(KS-ala-IL2RFとも呼ぶ)またはKS-alaIL2(D20T)の1つを20マイクログラム/マウスの量で投与した。8日目に動物を犠牲にし、系列マーカーおよびIL-2受容体発現に関して血球および脾細胞を分析した。
【0103】
以下の表に、分析した表面マーカーおよび計数した血液1ミリリットルあたりの細胞数を示す。
表1
【0104】
表1つづき
【0105】
本発明の特定の治療薬は、エフェクター細胞集団、例えば細胞傷害性T細胞(CD8によって表される)、顆粒球(Gr1によって表される)およびナチュラルキラー細胞(NK-1.1によって表される)への重要な効果を引き起こしたことをこれらの結果は示している。特に、これらの細胞数は、KS-ala-IL2(R38W、F42K)、抗CD25およびKS-ala-IL2または抗CD25およびKS-IL2(R38W、F42K)のいずれかで治療されたマウスにおいて顕著に増加した。さらに、これらの3つの治療薬のそれぞれのCD8+細胞、Gr1+細胞およびNK-1.1+細胞への影響は、互いに統計的に有意な差がなく、KS-ala-IL2(R38W、F42K)などの単一薬剤を用いる治療またはKS-IL2および抗CD25抗体などの組み合わせを用いる治療薬は、同様な有用免疫刺激効果をもたらすであろうことが示唆された。
【0106】
図9もまた、細胞計数のデータを示す。Gr1+細胞計数は、NK1.1.+Gr1+細胞と同様に、中程度および高発現部分群を含む。図で見られるように、huKS-ala-IL2(D20T)(高親和性受容体のみに特異的)を投与された動物のすべての群の免疫細胞数は、抗CD25抗体の存在下でさえも、PBS対照マウスとは有意に異ならなかった。このことにより、抗CD25と組み合わせたKS-ala-IL2に対する増殖反応は、CD122受容体サブユニットを介していることが確認される。著しく対照的に、huKS-ala-IL2(R38W、F42K)(CD122受容体に特異的であるが、CD25を誘導しない)は、抗CD25抗体の存在下または非存在下で、CD8T細胞(図10C)、NK細胞(図10E)およびGr1+細胞(図10F)の強い増殖反応を誘導したが、野生型分子は、反応の増強のためには抗CD25遮断を必要とした。
【0107】
KS-ala-IL2および抗CD25組み合わせ療法とは異なり、huKS-IL2(R38W、F42K)単独療法はCD4 T細胞増殖もまた刺激し(図10A)、これらの細胞の大部分はCD25を発現していた(図10B)。このことは、CD122を介した刺激後のこれらの細胞に対するCD25のアップレギュレーションおよび、それがなければ抗CD25抗体またはTregにより遮断される内因性IL2への後続応答により説明されると考えられる(huKS-ala-IL2単独の場合)。この仮説の証拠は、huKS-IL2(R38W、F42K)および抗CD25抗体を投与された群において示され、その場合において、高親和性受容体に結合できる内因性IL2に感受性を示すことができない結果として全CD4 T細胞数が減少した。
【0108】
同じく注目すべきは、単独療法としてhuKS-ala-IL2(R38W、F42K)を投与されたマウスの群は、CD8+CD25+(おそらくエフェクター)細胞の劇的増加を示したただ一つの群であった(図10D)。この場合も同様に、抗体-IL2融合タンパク質によるCD122シグナル伝達および、おそらく、内因性IL-2によるCD25シグナル伝達を刺激する条件下で、Tregによる抑制の最初の欠如(huKS-ala-IL2(R38W、F42K)はCD25を誘導しないので)によると考えられる。8日目に、免疫細胞をフローサイトメトリー分析すると、CD4+CD25T細胞の大部分はFoxP3もまた発現しており(図9)、従って、制御表現型に変換されたと考えられる。
【0109】
これらのデータが示すように、抗体-IL2融合タンパク質および抗CD25抗体の投与で見られる場合と異なり、huKS-ala-IL2(R38W、F42K)の投与は、CD25を誘発することなく、そうでなければその結果として生じる、増殖を抑制するTreg機能の活性化を伴うことなく、中親和性IL-2受容体を強く刺激する能力を有する。同時に、CD25は、CD4およびCD8エフェクター細胞への作用を遮断されず、両方とも内因性IL-2により刺激することができる。huKS-ala-IL2(R38W、F42K)が内因性IL-2による刺激を遮断する抗CD25抗体と同時投与されるとき、このことにより、CD8エフェクターのより強力な活性化および抗体-IL2で刺激されたCD4細胞の増殖(実際は小幅な低下)をもたらすことができる。恐らく、増幅されたCD4集団により産生される内因性IL-2は、ついで、CD4+CD25陽性細胞を誘導してFoxP3を上方制御し、サプレッサー表現型に変換させる。
【0110】
理論に拘束されるものではないが、本発明の組成物は、少なくとも部分的に、IL-2受容体βサブユニットと相互作用するIL-2部分を介して作用することをこれらの結果は示唆している。この機構は、表1に示される、例えば、KS-IL2および抗CD25を用いて観察されるエフェクター細胞集団の刺激がKS-IL2(D20T)および抗CD25を用いては観察されないという所見によって推測される。D20T変異は、IL-2とIL-2受容体βの間の相互作用を顕著に低減させることが知られている。
【0111】
従って上記の表1の所見に基づいて、本発明は、IL-2部分を含む標的化融合タンパク質において、IL-2/IL-2Rα相互作用を阻害し、IL-2/IL-2Rβ相互作用を維持することは有用であるという一般原理に基づく、免疫刺激のためのいくつかの治療戦略を提供する。上記の表1に示されるように、このことはCD25、IL-2Rαサブユニットに対する抗体を用いることにより、あるいはIL-2Rαとの相互作用が低減または破壊されたIL-2の変異体を用いることにより達成できる。また、本発明によれば、IL-2Rαと相互作用するIL-2の表面上のIL-2融合タンパク質に結合する抗体または他のタンパク質を用いて同じ効果を得ることができる。従って、本発明は、IL-2に結合し、IL-2Rαとのその相互作用を遮断する、抗体または他のタンパク質と組み合わせたIL-2融合タンパク質を含む組成物もまた提供する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にIL-2媒介性免疫反応を増強する方法に関する。より具体的には、本発明は、IL-2療法の有効性を高めるために、CD25アンタゴニスト、例えば抗CD25抗体、またはCD4アンタゴニスト、例えば抗CD4抗体を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞内病原体を除去するために発達した適応細胞性免疫反応に対して、ウイルス感染または腫瘍増殖を患っている哺乳動物の免疫系を刺激することは有用である。それによって活性化される免疫細胞の重要な集団はCD8+エフェクターT細胞(細胞傷害性リンパ球)である。IL-2が単球、NK細胞およびT細胞を含むさまざまな免疫細胞を刺激することは当該分野で公知である。IL-2は病院で細胞性免疫反応を刺激するために用いられ、転移性メラノーマまたは転移性腎癌を有する患者における標準治療としてFDAに認可されている(例えばアルデスロイキン(Chiron)(別名Proleukin(登録商標)))。
【0003】
細胞媒介性適応免疫反応に関与するT細胞レパートリーは、CD8+メモリーT細胞、CD8+エフェクターT細胞および制御性T細胞(Treg)を含む。これらのTregは、エフェクターT細胞およびメモリーT細胞の活性を低下させることにより、適応免疫プログラムにおいて重要な役割を果たしている。しかしながら、IL-2はまたT細胞のTregサブセットを活性化し、次いでそれがCD8+T細胞を抑制するかまたは他のT細胞を寛容化するように作用する事ができることが観察されている。従って、IL-2は適応免疫反応の活性化およびその減弱化の両方に関与している。
【0004】
Treg細胞はCD4および転写因子FoxP3の発現を特徴とし、ついでそれはIL-2受容体複合体のαサブユニットであるCD25の発現を活性化する(CD4+CD25+細胞)。このように、CD25はTreg細胞において構成的に発現されている。CD25とIL-2受容体複合体のシグナル伝達構成成分(βサブユニットCD122およびγサブユニットCD132)の会合により、中親和性IL-2受容体複合体は高親和性IL-2受容体複合体に変換される。高親和性IL-2受容体複合体により中継されるシグナル伝達経路を通してTreg細胞のIL-2活性化が起こる。
【0005】
高レベルのCD25発現は活性化T細胞の特徴であり、高親和性IL-2受容体複合体を介してこれらの細胞はIL-2に感受性になる。CD25の遮断は活性化T細胞におけるIL-2媒介性シグナル伝達を阻害し、免疫抑制効果を示すという理論的根拠により、CD25の遮断に基づく療法が開発されている。腎移植後の急性臓器拒絶の予防のために、ダクリズマブ(Roche)(別名Zenapax(登録商標))およびバシリキシマブ(ノバルティス)(別名Simulect(登録商標))などの抗CD25抗体がFDAにより認可されている。
IL-2の2重の役割のため、当該技術分野において、より効果的なIL-2媒介性療法を提供する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一般にIL-2媒介性免疫反応を増強する方法および組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面によれば、本発明は患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する方法である。本方法は、CD25アンタゴニストおよび、IL-2部分を有するタンパク質を投与するステップを含む。CD25アンタゴニストは、IL-2部分を含むタンパク質の免疫刺激作用を増強するのに有効な量で投与される。一実施形態において、IL-2は例えば成熟ヒトIL-2である。一実施形態において、患者は例えばヒトである。他の実施形態において、IL-2部分を有するタンパク質は中親和性IL-2受容体複合体を活性化することができる。
本発明によれば、一実施形態において、患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する方法は癌を治療するためであり、他の実施形態において、本方法はウイルス感染を治療する。
【0008】
他の実施形態において、IL-2部分を有するタンパク質は第2のIL-2部分を有する。他の実施形態において、前記第2のIL-2部分を有するタンパク質は、免疫グロブリン部分をさらに含む。一実施形態において、免疫グロブリン部分はFc部分である。さらに他の実施形態において、免疫グロブリン部分は抗体である。よりさらなる実施形態において、抗体は腫瘍細胞上に提示される抗原に対する可変領域を有する。さらに他の実施形態において、抗体は腫瘍細胞環境中に存在する抗原に対する可変領域を有する。代替実施形態において、腫瘍細胞環境中に存在する抗原は、正常細胞環境中よりも高濃度で存在する。
他の実施形態において、本発明によれば、CD25アンタゴニストは抗CD25抗体またはCD25に結合できるその部分である。一実施形態において、抗CD25抗体はダクリズマブであり、他の実施形態において、抗CD25抗体はバシリキシマブである。
他の実施形態において、CD25アンタゴニストはIL-2の表面に結合し、IL-2とIL-2高親和性受容体のCD25サブユニットの間の相互作用を阻害するタンパク質である。他の実施形態において、CD25アンタゴニストは抗体、例えば、抗IL-2抗体またはその部分である。
【0009】
本発明の実施形態によれば、CD25アンタゴニストはIL-2部分を有するタンパク質の投与の前に投与され、他の実施形態において、CD25アンタゴニストはIL-2部分を有するタンパク質と同時に投与される。他の実施形態において、抗癌ワクチンは抗CD25抗体およびIL-2部分を有するタンパク質と共に投与される。例えば、一実施形態において、抗癌ワクチンは抗CD25抗体およびIL-2部分を有するタンパク質の前に投与され、他の実施形態において、抗癌ワクチンは抗CD25抗体の投与の後であってIL-2部分を有するタンパク質の投与の前には投与される。あるいはまた、抗癌ワクチンは抗CD25抗体およびIL-2部分を有するタンパク質の両方の投与の後に投与される。他の実施形態によれば、本方法はIL-2部分を含むタンパク質に加えて免疫刺激剤の投与をさらに含む。
他の実施形態において、IL-2部分を含むタンパク質は中親和性IL-2受容体複合体を活性化することができるが、他の実施形態において、そのIL-2部分は高親和性IL-2受容体複合体を活性化することができない。さらに他の実施形態において、IL-2部分を含むタンパク質はIL-2受容体複合体のβ-サブユニットと結合することができるが、IL-2受容体複合体のα-受容体サブユニットと結合することができない。
【0010】
本発明によれば、一実施形態において、CD25アンタゴニストの有効量は1回あたり約0.1mg/kg〜10mg/kgであり、他の実施形態において、CD25アンタゴニストの有効量は1回あたり約0.5mg/kg〜2mg/kgである。さらに他の実施形態において、CD25アンタゴニストの有効量は1回あたり約1mg/kgである。
他の実施形態において、IL-2部分を含むタンパク質の有効量は例えば約0.004mg/m2〜4mg/m2であり、他の実施形態において、IL-2部分を含むタンパク質の有効量は約0.12mg/m2〜1.2mg/m2である。
【0011】
他の実施形態によれば、本発明は患者におけるエフェクター細胞機能を刺激する方法を含む。本方法は、IL-2融合タンパク質およびIL-2とIL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用の阻害因子を患者に投与するステップを含む。阻害因子は、IL-2融合タンパク質の免疫刺激作用を増強するのに有効な量で投与される。一実施形態において、阻害因子は抗IL2抗体である。他の実施形態において、抗IL-2抗体は少なくともIL-2高親和性受容体αサブユニットへの結合に必要なIL-2の部分に対して向けられる。他の実施形態において、阻害因子はIL-2受容体のβサブユニットに結合するIL-2の能力に影響を及ぼさない。
他の実施形態において、本発明は患者におけるエフェクター細胞機能を刺激する他の方法を含む。例えば、一実施形態において、本方法はIL-2とIL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質を患者に投与することを含む。IL-2融合タンパク質はエフェクター細胞機能を刺激するのに有効な量で投与される。他の実施形態において、IL-2融合タンパク質は野生型ヒトIL-2の残基R38およびF42に対応するIL-2部分における変異を含む。他の実施形態によれば、前記1以上の変異は、IL-2高親和性受容体αサブユニットへの結合に必要なIL-2融合タンパク質のIL-2部分の部分とIL-2高親和性受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する。
他の側面によれば、本発明はIL-2融合タンパク質およびIL-2に結合するタンパク質を含む医薬組成物を含む。IL-2に結合するタンパク質は、IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を遮断する。一実施形態において、IL-2に結合するタンパク質は抗IL2抗体である。他の実施形態において、IL-2に結合するタンパク質はIL-2とIL-2高親和性または中親和性受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しない。例えば、IL-2に結合し、IL-2とIL-2高親和性または中親和性受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しないタンパク質は、高親和性IL-2受容体αサブユニットへの結合に必要なIL-2の部分のみに対する抗IL-2抗体である。
【0012】
他の実施形態によれば、本発明は、IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質を含む医薬組成物を含む。他の実施形態において、本発明は抗CD25抗体およびIL-2部分を含むタンパク質を含む医薬組成物を含むが、他の実施形態において、本医薬組成物はIL-2融合タンパク質およびIL-2に結合するタンパク質を含む。さらに他の実施形態において、本医薬組成物はIL-2融合タンパク質および、IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を含む。
他の実施形態において、本発明による方法は、患者に投与されるワクチンの有効性を高めるのに有用である。本発明によれば、ワクチンは、抗癌ワクチンであってよく、または、ワクチンが適している任意の他の状態に対するワクチンであり得る。一実施形態において、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチンの抗原に加えて、IL-2とIL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質を患者に投与することを含む。他の実施形態において、本方法は、ワクチンの抗原に加えて、IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与するステップを含む。
【0013】
他の実施形態において、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチンの抗原、IL-2融合タンパク質およびIL-2に結合するタンパク質を患者に投与することを含む。他の実施形態において、本方法は、ワクチン、IL-2に結合するタンパク質およびIL-2融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与することを含む。さらに他の実施形態によれば、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチンの抗原、IL-2融合タンパク質およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を患者に投与することを含む。さらなる実施形態によれば、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチンの抗原、IL-2融合タンパク質をコードする核酸およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を患者に投与することを含む。
他の側面において、本発明は患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する方法を含む。本方法は、CD4アンタゴニストおよび、IL-2部分を含むタンパク質を投与するステップを含む。CD4アンタゴニストは、IL-2部分を含むタンパク質の免疫刺激作用を増強するのに有効な量で投与される。かわりに、本方法は抗CD25アンタゴニストを投与するステップを含むことができる。よって、一実施形態において、抗CD25アンタゴニストおよび抗CD4アンタゴニストは、IL-2部分を含むタンパク質の投与の前に投与される。他の実施形態において、抗CD25アンタゴニストおよび抗CD4アンタゴニストは同時に投与される。本発明によれば、一実施形態において、抗CD4アンタゴニストはCD4抗体であり、抗CD25アンタゴニストは抗CD25抗体である。
【0014】
本発明はまた、抗CD4アンタゴニストおよびIL-2を含むタンパク質を含むタンパク質組成物を含む。例えば、一実施形態において、組成物は抗CD4抗体および抗体-IL-2融合タンパク質の組成物である。他の実施形態において、タンパク質組成物はまた抗CD25アンタゴニスト、例えば抗CD25抗体を含む。
【0015】
要約すれば、本発明は以下の側面に関する:
・CD25アンタゴニストおよびIL-2部分を含むタンパク質を投与することを含む患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する方法であって、CD25アンタゴニストがIL-2部分を含むタンパク質の免疫刺激作用を増強するのに有効な量で投与される前記方法。
・タンパク質が第2のIL-2部分をさらに含む、対応する方法。
・タンパク質が免疫グロブリン部分をさらに含む、対応する方法。
・免疫グロブリン部分が抗体を含む、対応する方法。
・抗体が腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境内に提示される抗原に対する可変領域を含む、対応する方法。
・免疫グロブリン部分がFc部分を含む、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質が中親和性IL-2受容体複合体を活性化することができる、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質が高親和性IL-2受容体複合体を活性化することができない、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質がIL-2受容体複合体のβ-サブユニット(CD122)と結合することができるが、IL-2受容体複合体のα-サブユニット(CD25)と結合することができない、対応する方法。
・CD25アンタゴニストが抗CD25抗体またはCD25に結合できるその部分である、対応する方法。
・抗CD25抗体がダクリズマブまたはバシリキシマブである、対応する方法。
・CD25アンタゴニストがIL-2部分を含むタンパク質の投与の前に投与される、対応する方法。
・CD25アンタゴニストおよびIL-2部分を含むタンパク質が同時に投与される、対応する方法。
・CD25アンタゴニストの有効量が1回あたり約0.1mg/kg〜10mg/kgである、対応する方法。
・CD25アンタゴニストの有効量が1回あたり約0.5mg/kg〜2mg/kg、対応する方法。
・CD25アンタゴニストの有効量が1回あたり約1mg/kgである、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質の有効量が約0.004mg/m2〜4mg/m2である、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質の有効量が約0.12mg/m2〜1.2mg/m2である、対応する方法。
・患者がヒトである、対応する方法。
【0016】
・前述の方法に従って患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強することを含む、癌を治療する方法。
・前述の方法に従って患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強することを含む、ウイルス感染を治療する方法。
・抗癌ワクチンを投与するステップをさらに含む、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質に加えて免疫刺激剤を投与することをさらに含む、対応する方法。
・IL-2部分が成熟ヒトIL-2である、対応する方法。
・CD25アンタゴニストがIL-2の表面に結合しIL-2とCD25の間の相互作用を阻害するタンパク質であり、かつ好ましくは抗体であり、より好ましくは抗IL-2抗体である、対応する方法。
・IL-2融合タンパク質およびIL-2に結合するタンパク質を含む医薬組成物であって、前記IL-2に結合する前記タンパク質がIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断する前記組成物。
・IL-2に結合するタンパク質が抗IL-2抗体またはその部分である、対応する組成物。
・IL-2に結合するタンパク質がIL-2と高親和性または中親和性IL-2受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しない、対応する組成物。
・IL-2に結合するタンパク質が高親和性IL-2受容体のαサブユニットへの結合に必要なIL-2の少なくとも一部に対して向けられる、対応する組成物。
【0017】
・ワクチンの抗原および前述の医薬組成物を患者に投与することを含む、ワクチンの有効性を増強する方法。
・ワクチンの抗原、IL-2融合タンパク質をコードする核酸およびIL-2に結合するタンパク質を患者に投与することを含むワクチンの有効性を増強する方法であって、前記IL-2に結合する前記タンパク質がIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断する前記方法。
・IL-2融合タンパク質およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子、好ましくは抗IL-2抗体を患者に投与することを含む、患者におけるエフェクター細胞機能を刺激する方法であって、前記阻害因子がIL-2融合タンパク質の免疫刺激作用を増強するのに有効な量で投与される前記方法。
・前記抗IL-2抗体が高親和性IL-2受容体のαサブユニットへの結合に必要なIL-2部分の少なくとも一部に対して向けられる、対応する方法。
【0018】
・IL-2融合タンパク質およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を含む医薬組成物。
・ワクチンの抗原および前述の前記医薬組成物を患者に投与することを含む、ワクチンの有効性を増強する方法。
・ワクチンの抗原、IL-2融合タンパク質をコードする核酸およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を患者に投与することを含む、ワクチンの有効性を増強する方法。
・IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質を患者に投与することを含む、患者におけるエフェクター細胞機能を刺激する方法であって、前記IL-2融合タンパク質がエフェクター細胞機能を刺激するのに有効な量で投与される前記方法。
・IL-2融合タンパク質が野生型ヒトIL-2の残基R38およびF42に対応するIL-2部分における変異を含む、対応する方法。
・1以上の変異が、高親和性IL-2受容体のαサブユニットへの結合に必要なIL-2融合タンパク質のIL-2部分の少なくとも一部の間の相互作用を低減または破壊する、対応する方法。
【0019】
・IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含む、IL-2融合タンパク質を含む医薬組成物。
・ワクチンの抗原および上記の医薬組成物を患者に投与することを含む、ワクチンの有効性を増強する方法。
・ワクチンの抗原および、IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与することを含む、ワクチンの有効性を増強する方法。
・抗CD25抗体およびIL-2部分を含むタンパク質を含む医薬組成物。
・CD4アンタゴニストおよびIL-2部分を含むタンパク質を投与することを含む、患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する方法であって、前記CD4アンタゴニストがIL-2部分を含むタンパク質の免疫刺激作用を増強するのに有効な量で投与される前記方法。
・抗CD25アンタゴニストを投与するステップをさらに含む、対応する方法。
・抗CD25アンタゴニストおよび抗CD4アンタゴニストがIL-2部分を含むタンパク質の投与
の前に投与される、対応する方法。
・IL-2部分を含むタンパク質が抗体-IL2融合タンパク質である、対応する方法。
【0020】
・抗CD4アンタゴニストおよびIL-2を含むタンパク質を含むタンパク質組成物。
・癌を患っている個体においてIL-2の免疫刺激作用を増強する医薬組成物であって、
(i)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質、並びに、CD25アンタゴニスト、および/または、CD4アンタゴニスト、または
(ii)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質、および、IL-2に結合しIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断するタンパク質、または
(iii)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質であって、対応する野生型IL-2融合タンパク質と比較してIL-2と高親和性IL-2受容体のIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊するが中親和性IL-2受容体に対する融合タンパク質の親和性を低減しない1以上の変異を含み、前記変異は野生型IL-2部分のアミノ酸配列の位置R38およびR42におけるアミノ酸置換を含むが、変異D20T、N88RおよびQ126Dのいずれも含まない前記融合タンパク質、
を含み、場合により薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む前記医薬組成物。
・前記CD25アンタゴニストがIL-2の表面に結合し、IL-2とCD25の間の相互作用を阻害するタンパク質である、対応する医薬組成物。
・少なくとも2つのIL-2部分含むIL-2融合タンパク質、および、IL-2に結合しIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断し、さらに好ましくはIL-2に結合し、好ましくはIL-2と高親和性または中親和性IL-2受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しないタンパク質を含む、対応する医薬組成物。
・IL-2に結合する前記タンパク質が抗IL-2抗体である、対応する医薬組成物。
・前記CD25アンタゴニストおよび前記CD4アンタゴニストが抗体である、対応する医薬組成物。
【0021】
・抗CD25抗体がダクリズマブまたはバシリキシマブである、対応する医薬組成物。
・少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質を含む医薬組成物であって、前記融合タンパク質は、対応する野生型IL-2融合タンパク質と比較してIL-2と高親和性IL-2受容体のIL-2受容体α-サブユニットの間の相互作用を低減または破壊するが中親和性IL-2受容体に対する融合タンパク質の親和性を低減しない1以上の変異を含み、前記変異は野生型IL-2部分のアミノ酸配列の位置R38およびR42における、位置R38におけるアミノ酸残基A、E、N、F、S、L、G、YまたはWでのアミノ酸置換を含むかまたはそれらであるが変異D20T、N88RおよびQ126Dのいずれも含まない前記医薬組成物。
・前記変異がアミノ酸置換R38WおよびF42Kを含むかまたはR38WおよびF42Kである、対応する医薬組成物。
・IL-2融合タンパク質が中親和性IL-2受容体複合体を活性化することができるが、高親和性IL-2受容体複合体を活性化することができない、対応する医薬組成物。
・IL-2融合タンパク質がIL-2受容体複合体のβ-サブユニット(CD122)と結合することができるが、IL-2受容体複合体のα-サブユニット(CD25)と結合することができない、対応する医薬組成物。
・IL-2融合タンパク質が、好ましくは(a)腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境中に提示される抗原に対する可変領域を含む抗体、または(b)抗体のFc部分である免疫グロブリン部分を含む免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質である、対応する医薬組成物。
【0022】
・免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が、KS-IL-2、14.18-IL-2もしくはNHS76-IL-2、またはFc-IL-2もしくはIL-2-Fc、またはそれらの変種もしくは誘導体であるかまたはそれらに由来する、対応する医薬組成物。
・免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が:KS-IL-2、KS-ala-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2、Fc-IL-2およびIL-2-Fcからなる群から選択され、CD25アンタゴニストが抗CD25抗体である、対応する医薬組成物。
・ワクチン、好ましくは本ワクチンの抗原および場合によりアジュバントを含む抗癌ワクチンをさらに含む本明細書記載の対応する医薬組成物。
・異なる分離した容器を含む医薬キットであって、
(i)第1容器が免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質を含み、
(ii)第2容器が、
(a)抗CD25抗体、または
(b)抗CD4抗体、または
(c)抗CD25抗体および抗CD4抗体、または
(d)およびIL-2に結合してIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断するが、IL-2と高親和性または中親和性IL-2受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しないタンパク質、
を含み、場合により
(e)ワクチン、好ましくは場合によりアジュバントを含む抗腫瘍ワクチンを含む第3容器、
を含む前記医薬キット。
・(d)のタンパク質が抗IL-2抗体である、対応する医薬キット。
・免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が中親和性IL-2受容体複合体を活性化することができるが、高親和性IL-2受容体複合体を活性化することができない、対応する医薬キット。
・免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質がIL-2受容体複合体のβ-サブユニット(CD122)と結合することができるが、IL-2受容体複合体のα-サブユニット(CD25)と結合することができない、対応する医薬キット。
【0023】
・前記免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質の免疫グロブリン部分が
(a)腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境中に提示される抗原に対する可変領域を含む抗体、または
(b)抗体のFc部分
である、対応する医薬キット。
・免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が:
KS-IL-2、KS-ala-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2、
Fc-IL-2またはIL-2-Fc
からなる群から選択される、対応する医薬キット。
・組み合わせ療法の場合において、それぞれのIL-2融合タンパク質単独の投与と比較して、または単独療法の場合において、それぞれの未改変IL-2融合タンパク質の投与と比較して、患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する対応する医薬組成物または対応する医薬キットの使用。
・前記免疫刺激作用がCD8+細胞およびNK1.1+細胞の増強および/またはTreg(CD4+CD25+)細胞活性の低下をもたらす、前記医薬組成物または前記医薬キットの前記のそれぞれの使用。
・癌および/または腫瘍転移の治療のための、前記医薬組成物または前記医薬キットのそれぞれの使用。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】図1Aは、実施例1に記載の実験プロトコルの概略図である。
【図1B】図1Bは、PBS、抗CD25抗体PC61、PC61およびKS-ala-IL2の組み合わせならびにPC61およびrhIL-2(組換え野生型ヒトIL-2)の組み合わせのいずれかで処置されたマウスから8日目に採取したマウス血液サンプルにおけるCD4+細胞(黒い棒)およびCD8+(白抜き棒)の量の棒グラフである。
【図1C】図1Cは、PBS、抗CD25抗体PC61、PC61およびKS-ala-IL2の組み合わせ、ならびにPC61およびrhIL-2のいずれかで処置されたマウスから8日目に採取されたマウス試料におけるCD4+細胞(黒い棒)およびCD8+(白抜き棒)細胞の全脾臓細胞中の百分率の棒グラフである。
【図1D】図1Dは、PBS、抗CD25抗体PC61、PC61およびKS-ala-IL2の組み合わせならびにPC61およびrhIL-2の組み合わせのいずれかで処置されたマウスから8日目に採取したマウス試料におけるCD25+細胞(黒い棒)およびCD4+CD25+細胞(白抜き棒)の全脾臓細胞中の百分率の棒グラフである。
【図2A】図2Aは、PBS、抗CD25抗体PC61、KS-ala-IL2(IC(1))の単回用量、KS-ala-IL2(IC(2))の2回用量ならびにPC61とKS-ala-IL2の単回用量または2回用量の組み合わせのいずれかで処置したマウスの、8日目(黒い棒)、10日目(白抜き棒)、14日目(灰色棒)および21日目(縞のある棒)に採取したマウス血液サンプルにおけるCD8+細胞数の棒グラフである。
【図2B】図2Bは、PBS、抗CD25抗体PC61、KS-ala-IL2(IC(1))の単回用量、KS-ala-IL2(IC(2))の2回用量ならびにPC61とKS-ala-IL2の単回用量または2回用量の組み合わせのいずれかで処置したマウスの、8日目(黒い棒)、14日目(白抜き棒)および21日目(灰色棒)に採取したマウス血液サンプルにおけるCD4+CD25+細胞数の棒グラフである。
【図2C】図2Cは、PBS、抗CD25抗体PC61、KS-ala-IL2(IC(1))の単回用量、KS-ala-IL2(IC(2))の2回用量ならびにPC61とKS-ala-IL2の単回用量または2回用量の組み合わせのいずれかで処置したマウスの、8日目におけるCD4+細胞(黒い棒)、CD8+(白抜き棒)およびNK1.1+細胞(灰色棒)の、PBS処理対照に対する血液中の免疫細胞の割合の棒グラフである。
【図2D】図2Dは、PBS、抗CD25抗体PC61、KS-ala-IL2(IC(1))の単回用量、KS-ala-IL2(IC(2))の2回用量ならびにPC61とKS-ala-IL2の単回用量または2回用量の組み合わせのいずれかで治療されたマウスの、10日目に採取されたマウス血液サンプルにおけるCD8+細胞(黒い棒)、メモリーCD8+(白抜き棒)およびナイーブCD8+細胞(斜線棒グラフ)の数の棒グラフである。
【図2E】図2Eは、図2A〜Dにおけるデータを得たフローサイトメトリー図である。
【図3】図3A〜Cは、本明細書の実施例3において処置されたマウスから採取された末梢血試料における、CD4(図3A)、CD8(図3B)およびNK1.1(図3C)細胞の細胞数測定の棒グラフであり、図3D〜Fは、マウスの同じ集団の脾臓におけるCD4(図3D)、CD8(図3E)およびNK1.1(図3F)細胞の百分率の棒グラフである。
【図4】図4Aは、本明細書の実施例3に従って処置されたマウスから採取された、CD25+FoxP3+でもある全脾臓細胞の百分率の棒グラフである。図4Bは、図4Aにおけるデータが導き出されたフローサイトメトリー図である。
【図5A】図5A〜Cは、本明細書の実施例4を参照する。図5Aは、以下の処置:(a)PBSと組み合わせたラットIgG抗体、(b)KS-ala-IL2と組み合わせたラットIgG抗体、(c)KS-ala-monoIL2と組み合わせたラットIgG抗体、(d)KS-ala-IL2(D20T)と組み合わせたラットIgG抗体、および(e)KS-マウスIL2と組み合わせたラットIgG抗体、(a’)PBSと組み合わせた抗CD25抗体PC61、(b’)KS-ala-IL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、(c’)KS-ala-monoIL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、(d’)KS-ala-IL2(D20T)と組み合わせた抗CD25抗体PC61、および(e’)KS-マウスIL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、を受けたマウスから8日目に採取したマウス血液サンプルにおけるCD4+細胞数の棒グラフである。データは、n=3マウスの平均値と標準偏差値を示す。
【図5B】図5A〜Cは、本明細書の実施例4を参照する。図5Bは,以下の処置:(a)PBSと組み合わせたラットIgG抗体、(b)KS-ala-IL2と組み合わせたラットIgG抗体、(c)KS-ala-monoIL2と組み合わせたラットIgG抗体、(d)KS-ala-IL2(D20T)と組み合わせたラットIgG抗体、および(e)KS-マウスIL2と組み合わせたラットIgG抗体、(a’)PBSと組み合わせた抗CD25抗体PC61、(b’)KS-ala-IL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、(c’)KS-ala-monoIL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、(d’)KS-ala-IL2(D20T)と組み合わせた抗CD25抗体PC61、および(e’)KS-マウスIL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、を受けたマウスから8日目に採取したマウス血液サンプルにおけるCD8+細胞数の棒グラフである。データは、n=3マウスの平均値と標準偏差値を示す。
【図5C】図5A〜Cは、本明細書の実施例4を参照する。図5Cは、以下の処置:(a)PBSと組み合わせたラットIgG抗体、(b)KS-ala-IL2と組み合わせたラットIgG抗体、(c)KS-ala-monoIL2と組み合わせたラットIgG抗体、(d)KS-ala-IL2(D20T)と組み合わせたラットIgG抗体、および(e)KS-マウスIL2と組み合わせたラットIgG抗体、(a’)PBSと組み合わせた抗CD25抗体PC61、(b’)KS-ala-IL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、(c’)KS-ala-monoIL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、(d’)KS-ala-IL2(D20T)と組み合わせた抗CD25抗体PC61、および(e’)KS-マウスIL2と組み合わせた抗CD25抗体PC61、を受けたマウスから8日目に採取したマウス血液サンプルにおけるNK1.1+細胞数の棒グラフである。データはn=3マウスの平均値と標準偏差値を示す。
【図6】図6A〜Eは、本明細書の実施例9に記載されているプロトコルに従って治療されたマウスから採取した末梢血中に存在するCD4(図6A)、CD4+CD25+(図6B)、CD8(図6C)、CD8+CD25+(図6D)およびNK1.1(図6E)細胞の細胞計数の棒グラフである。
【図7】図7は、B16メラノーマ細胞でトランスフェクトし、本明細書の実施例7に記載されているプロトコルにしたがって治療されたマウスの表面転移の百分率および腫瘍量のデータを叙述したものである。
【図8】図8A〜Bは、本明細書の実施例10に記載されているように処置されたSCIDマウスから採取した末梢血試料における細胞計数の棒グラフである。図8Aは、DX5+NK細胞(黒い棒)およびDX5+CD11b+NK細胞(白抜き棒)の計数を示す。図8BはGr1+顆粒球の計数を示す。図8C〜Dは、Bl/6マウスから採取された末梢血試料における細胞の計数の棒グラフである。図8CはCD8+細胞の計数を示し、図8DはNK1.1+細胞計数を示す。
【図9】図9は、実施例13に記載されているプロトコルに従って処置されたマウスの末梢血および脾臓に存在するCD4細胞の表現型に関連するデータを記述したものである。特に、データはCD25+FOXP3+であったCD4細胞の百分率を扱っている。
【図10】図10A〜Fは、実施例13に記載されているプロトコルに従って処置されたマウスから採取された血液サンプルにおける細胞計数の棒グラフである。CD4細胞計数は図10Aに示され;CD4+CD25+細胞計数は図10Bに示され;CD8細胞計数は図10Cに示され;CD8+CD25+細胞計数は図10Dに示され;NK1.1細胞計数は図10Eに示され;Gr1細胞計数は図10Fに示されている。
【図11】図11は、成熟ヒトIL-2アミノ酸配列(配列番号1)である。
【図12】図12は、KS抗体の軽鎖アミノ酸配列(配列番号2)である。
【図13】図13は、KS抗体の重鎖アミノ酸配列(配列番号3)である。
【図14】図14は、KS-ala-IL2抗体融合タンパク質の重鎖アミノ酸配列(配列番号4)である。KS-ala-IL2は、KS抗体の重鎖がIL-2に融合され、抗体部分のC末端リジンがアラニン残基で置換されていることを意味する。
【図15】図15は、脱免疫化(deimmunized)NHS76抗体の軽鎖アミノ酸配列(配列番号5)である。
【図16】図16は、NHS76(γ2h)(FN>AQ)-ala-IL2と呼ばれる、IL2に融合させた脱免疫化NHS76抗体の重鎖アミノ酸配列(配列番号6)であって、重鎖がIgG1からの他のドメインと共にIgG2ヒンジを有し、重鎖のC末端リジンがアラニンで置換され、フェニルアラニンアスパラギンの配列がアラニングルタミンに変換されている前記アミノ酸配列である。
【図17】図17は、ヒト14.18IgG1抗体の軽鎖アミノ酸配列(配列番号7)である。
【図18】図18は、IL2に融合させたヒト14.18IgG1抗体であって、抗体のC末端リジンが欠失した前記抗体の重鎖アミノ酸配列(配列番号8)である。
【図19】図19は、Fc部分のN末端に融合させた抗原CEAである、成熟ヒトCEA-Fc-IL2(配列番号9)アミノ酸配列である。Fc部分のC末端はIL-2に融合されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
免疫療法を用いる癌の治療における大きな課題の1つは、免疫系活性化を調節するように設計された免疫系の制御システムを同時に活性化することなしに抗腫瘍活性を促進する必要性である。本発明によれば、IL-2に反応した細胞傷害性CD8+T細胞増殖をCD25+Treg阻害の調節から免除する方法が開示されている。Treg阻害を低減または排除するこのような機構は、Tregの細胞表面上のCD25受容体を遮断することおよび/またはCD4+細胞を枯渇させることを含む。また、同じ結果を達成するためのもう1つの機構は、CD25受容体との結合を低減または排除するIL-2の変異である。
IL-2免疫サイトカインの投与と組み合わせた、Tregの細胞表面上のCD25受容体および/またはCD4+細胞の遮断、あるいは代わりに、CD25への結合を低減または排除された変異体IL-2部分を有するIL-2免疫サイトカインの投与は、野生型IL-2が投与される場合に観察されるレベルをはるかに超えたCD8+T細胞増殖の劇的な増加をもたらす。このアプローチが、例えばIL-2を変異させることにより細胞表面CD25誘導の遮断または欠如を含む場合、中親和性IL-2受容体を有するさらなる免疫細胞型、最も代表的にはNK細胞および顆粒球の増殖が起こる。
ウイルス感染または腫瘍増殖を患っている哺乳動物において、CD8+細胞障害性T細胞(CTL)、および/またはNK細胞などの活性化T細胞の数を増加させることは有用である。T細胞およびNK細胞は、一般にIL-2刺激に感受性を示す。本発明は、哺乳動物におけるIL-2治療の有効性を高める方法を提供する。
【0026】
本発明の一側面において、哺乳動物においてCD8+および/またはNK細胞を刺激するのにIL-2単独よりもより有効な方法が提供される。一実施形態によれば、本方法はCD8+細胞およびNK細胞の増殖をもたらすが、Treg細胞は機能的に不活性化されたままである。一実施形態によれば、本方法はCD25受容体アンタゴニストおよびIL-2を含むタンパク質組成物(本明細書においてはIL-2タンパク質組成物と呼ぶ)を投与することを含む。一実施形態において、CD25受容体アンタゴニストおよびIL-2タンパク質組成物は患者に同時に投与され、他の実施形態において、CD25受容体アンタゴニストはIL-2タンパク質組成物とは異なる時間に投与される。
本発明の他の実施形態によれば、本方法は、CD25受容体アンタゴニストおよびIL-2の変異バージョンを含むIL-2タンパク質組成物を投与することを含む。例えば、一実施形態において、IL-2は、IL-2が高親和性IL-2受容体のIL-2αサブユニット(CD25+)に結合するのを低減または排除する1以上の変異を含む。例えば、一実施形態において、IL-2部分は、IL-2部分の少なくとも一部が高親和性IL-2受容体のαサブユニット(CD25+)に結合する能力を低減または排除する1以上の変異を含む。他の実施形態において、IL-2部分はIL-2融合タンパク質である。例えば、一実施形態において、融合タンパク質はIL-2部分に融合させた抗体である。
【0027】
他の実施形態において、本方法はIL-2の変異バージョンを含むタンパク質組成物を投与することを含む。例えば、一実施形態において、IL-2の変異バージョンは、IL-2が高親和性IL-2受容体のIL-2αサブユニット(CD25+)に結合する能力を低減または排除する1以上の変異を含む。一実施形態によれば、IL-2の変異バージョンはIL-2融合タンパク質である。他の実施形態において、本方法はIL-2タンパク質組成物を用いる患者の治療中のいずれの時点においてもCD25受容体アンタゴニストを投与せずにIL-2の変異バージョンを含むタンパク質組成物を投与することを含む。
一実施形態において、野生型IL-2における位置に対応する下記の残基の1以上は、IL-2αサブユニットへの結合に必要なIL-2の部分と高親和性IL-2受容体のIL-2αサブユニット(CD25+)の間の結合を低減または排除するために変異される:R38、F42、K35、M39、K43またはY45。本発明によれば、変異は欠失、挿入または置換を含むことができる。一実施形態において、R38における残基はアミノ酸残基A、E、N、F、S、L、G、YまたはWで置換される。他の実施形態において、M39における残基はアミノ酸Lで置換される。他の実施形態において、F42における残基はアミノ酸残基A、K、L、S、Qで置換され、さらに他の実施形態において、K35における残基はアミノ酸EまたはAで置換される。よりさらなる実施形態において、位置K43におけるアミノ酸残基はアミノ酸Eで置換される。これらの変異は例示的であり、IL-2とIL-2高親和性受容体のαサブユニットの間の結合に悪影響を及ぼす任意の変異は本発明により考慮される。本発明のさらなる実施形態によれば、IL-2αサブユニットへの結合に必要なIL-2の部分と高親和性IL-2受容体のIL-2αサブユニット(CD25+)の間の結合を低減または排除するIL-2への変異は、IL-2と高親和性または中親和性IL-2受容体のβサブユニットの間の結合を排除しない。
【0028】
一実施形態において、結合の低下または排除は、標的に対する参照タンパク質の結合親和性と比較したときの、標的に対するあるタンパク質の結合親和性の低下または排除のことを言う。一実施形態において、参照タンパク質は野生型タンパク質であり、結合親和性が低減または排除されたタンパク質は変異体である。例えば、一実施形態において、IL-2免疫グロブリン融合タンパク質のIL-2部分への変異は、参照タンパク質の結合親和性と比較して、IL-2αサブユニットに対するそのタンパク質の結合親和性を低減または排除する。参照タンパク質は、野生型IL-2部分を有するIL-2免疫グロブリン融合タンパク質である。
一実施形態によれば、変異体IL-2はIL-2Rαサブユニット結合に影響を及ぼす唯一つの変異のみを含む。例えば、一実施形態において、変異体IL-2は変異R38Wを含む。他の実施形態において、変異体IL-2は変異F42Kを含む。他の実施形態において、変異体IL-2はIL-2がIL-2Rαサブユニットに結合するのに影響を及ぼす2以上の変異を含む。例えば、変異体IL-2は少なくとも変異R38WおよびF42Kを含む。
他の実施形態において、本発明による方法はエフェクター細胞機能を刺激する方法である。例えば、一実施形態によれば、IL-2タンパク質組成物およびIL-2とIL-2高親和性受容体のαサブユニットの間の相互作用の阻害因子が患者に投与される。一実施形態において、IL-2タンパク質組成物は融合タンパク質を含む。他の実施形態において、IL-2とIL-2受容体αの間の相互作用の阻害因子は、IL-2高親和性受容体のαサブユニットへの結合に必要なIL-2の部分に対する抗IL-2抗体であり、例えば、抗IL2Rα抗体である。
他の実施形態において、患者におけるエフェクター細胞機能を刺激する本発明による方法は、IL-2融合タンパク質を含むIL-2タンパク質組成物を患者に投与することを含む。一実施形態において、IL-2融合タンパク質は、IL-2部分とIL-2高親和性受容体のαサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する融合タンパク質のIL-2部分における1以上の変異を含む。他の実施形態において、IL-2部分への変異は、βサブユニットへの結合が維持されるように、IL-2部分とIL-2高親和性または中親和性受容体のβサブユニットの間の相互作用を妨げない。他の実施形態において、IL-2部分とIL-2高親和性受容体のαサブユニットの間の結合を低減または破壊する、融合タンパク質のIL-2部分における変異を有するIL-2融合タンパク質は患者に投与され、CD25受容体アンタゴニストは投与されない。他の実施形態において、IL-2融合タンパク質は抗体-IL-2融合タンパク質である。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、CD25受容体アンタゴニストは抗CD25抗体である。さらなる実施形態によれば、CD25受容体アンタゴニストは、例えばヒト患者の治療における、ヒトCD25タンパク質に特異的な抗体である。本発明によるヒトに使用する抗CD25抗体の例は、ダクリズマブおよびバシリキシマブを含む。しかしながら、他の抗CD25抗体もまた本発明に有用である。例えば、一実施形態において、ADCCまたはCDCエフェクター機能を欠く抗CD25抗体が用いられ、他の実施形態において、CD25に対して向けられる抗CD25小(small)鎖可変領域(scFv)、ミニボディまたはダイアボディなどの抗体の誘導体も本発明に使用される。このような分子は当該技術分野で公知の技術に従って製造できる(例えば、Holliger et al., (2005), Nature Biotech., 23(9):1126-1136を参照のこと)。他の抗CD25抗体は、当業者に公知の方法に従って製造できる。
他の実施形態において、T細胞増殖を刺激する本発明による方法は、CD4アンタゴニストおよびIL-2タンパク質組成物を投与することを含む。一実施形態において、CD4アンタゴニストはIL-2、タンパク質組成物の投与の前に投与され、他の実施形態において、CD4アンタゴニストはIL-2タンパク質組成物と同時に投与される。さらに他の実施形態において、T細胞増殖を刺激する本発明による方法は、CD4アンタゴニスト、CD25アンタゴニストおよびIL-2タンパク質組成物を投与することを含む。例えば、一実施形態において、患者はCD4アンタゴニストおよびCD25アンタゴニストの組み合わせを最初に投与され、ついでIL-2タンパク質組成物が投与される。
【0030】
本明細書記載の本発明の多くの実施形態はCD25アンタゴニストの投与を含むが、本発明によるCD25アンタゴニストの代わりにCD4アンタゴニストを投与できることが本発明によりさらに考えられる。また、一実施形態において、CD25アンタゴニストをCD4アンタゴニストと同時に投与することができる。CD4アンタゴニストは、CD25アンタゴニストの投与のために概説したものと同じ投与スケジュールに従って投与できる。
本発明の一実施形態によれば、CD4アンタゴニストは抗CD4抗体である。好ましい実施形態において、CD4アンタゴニストは、CD4+細胞を枯渇させることができる抗CD4抗体である抗CD4アンタゴニストである。特定の実施形態において、CD4アンタゴニストはヒトCD4に特異的である。例えば、ザノリムマブ(zanolimumab)はヒトCD4に特異的なヒト抗CD4抗体の1例である。本発明の一実施形態によれば、ヒト抗CD4抗体は本発明の方法に従ってヒト患者に投与される。他の有用な抗CD4抗体は当業者に公知であり、本発明に有用である。加えて、CD4に対して向けられる抗CD4小鎖可変領域(scFv)、ミニボディまたはダイアボディなどの抗体の誘導体は、本発明に使用できる。このような分子は、当該技術分野で公知の技術に従って製造できる(例えば、Holliger et al., (2005), Nature Biotech., 23(9):1126-1136 を参照のこと)。他の抗CD4抗体は、当業者に公知の方法に従って製造できる。代替実施形態において、抗CD4アンタゴニストはCD4に結合できる任意の化学的部分を含む。
【0031】
抗CD25抗体およびIL-2タンパク質組成物の組み合わせで哺乳動物を治療した結果としてTreg細胞は機能的に不活性化されたままであるがCD8+細胞およびNK細胞は増殖(エクスパンジョン)するということは、本発明の洞察である。驚いたことに、本願の実施例1に示されるように、CD8+細胞およびNK細胞増殖に対する作用は、遊離(モノマーの)組換えIL-2では見られないが、抗体-IL-2融合タンパク質などの他のIL-2タンパク質組成物では見られる。
理論に拘束されるものではないが、IL-2タンパク質組成物の多量体を用いることにより、中親和性IL-2受容体複合体依存性シグナル伝達経路の活性化を可能にするために十分に高いIL-2の局所濃度を提供することが可能である。抗CD25抗体などの遮断するCD25アンタゴニストの存在下で、CD8+メモリーT細胞またはCD8+エフェクターT細胞などの特定のT細胞サブセットは、CD25をふくまない中親和性IL-2受容体複合体により媒介されるIL-2シグナル伝達に応答する事ができると思われる。しかしながら、IL-2によるその活性化を高親和性IL-2受容体経路に強く依存するTreg細胞は、受容体がCD25受容体アンタゴニストの存在、例えば抗CD25抗体により遮断されるとき、IL-2に感受性を示さない。
【0032】
よって、他の側面において、本発明は癌の治療方法である。例えば、一実施形態において、有用なIL-2タンパク質組成物は、腫瘍の微小環境にIL-2活性を向ける抗体-IL2融合タンパク質である。従って、さらなる実施形態によれば、IL-2の融合パートナーは腫瘍の微小環境において豊富な抗原に対して特異性を有する抗体部分である。例えば、抗体部分が接着分子EpCAMを認識するKS抗体である抗体-IL2融合タンパク質;ジシアロガングリオシドGD2を認識する14.18抗体;または腫瘍の壊死性コアにおけるDNAを認識するNHS76抗体は本発明に有用である。患者の癌に応じて、当業者に公知の他の抗体を使用することができる。本発明の一実施形態によれば、IL-2融合タンパク質は、IL-2とIL-2高親和性受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する、融合タンパク質のIL-2部分への1以上の変異を含む。IL-2への有用な変異は前述されている。
他の実施形態において、抗体融合タンパク質はKS-IL2(C末端重鎖IL-2部分を有するKS抗体)である。KS-IL2のKS部分の軽鎖(配列番号2)および重鎖(配列番号3)の配列を、それぞれ図12および13に示す。他の実施形態において、抗体融合タンパク質はKS-ala-IL2である(抗体部分のC末端リジンがアラニンで置換された、C末端重鎖IL-2部分を有するKS抗体;EMD 273066 またはtucotuzumab celmoleukinの別名でも知られる;米国特許第5,650,150号および米国特許出願公開第2003/0157054号もまた参照のこと)。KS-ala-IL2の軽鎖(配列番号2)および重鎖(配列番号4)の配列をそれぞれ図12および14に示す。(米国特許出願公開第2002/0147311号もまた参照のこと)。
他の実施形態において、抗体融合タンパク質はNHS76-IL2(C末端重鎖IL-2部分を有するNHS76抗体)である。NHS76-IL2の典型的な実施形態の軽鎖(配列番号5)および重鎖(配列番号6)の配列を、それぞれ図15および16に示す。(米国特許出願公開第2002/0147311号もまた参照のこと)。
他の実施形態において、抗体融合タンパク質はhu14.18-IL2(C末端重鎖IL-2部分を有するヒト14.18抗体)である。hu14.18-IL2の典型的な実施形態の軽鎖(配列番号7)および重鎖(配列番号8)の配列を、それぞれ図17および18に示す。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、IL-2タンパク質組成物はIL-2の複数コピーを含む(すなわち多量体である)。例えば、一実施形態において、IL-2タンパク質組成物は、2、3、4、5またはそれ以上のIL-2部分を含む。よって、他の実施形態において、IL-2タンパク質組成物は二量体IL-2である。さらなる実施形態によれば、IL-2タンパク質組成物は互いに結合した2つのIL-2部分を含む。本発明によれば、IL-2部分はポリペプチドリンカー、化学リンカー、ジスルフィド結合などにより結合されていることができる。他の実施形態において、3、4、5またはそれ以上のIL-2部分は結合されて多量体IL-2を形成する。
本発明の他の実施形態によれば、多量体IL-2タンパク質組成物は免疫グロブリン融合タンパク質である。例えば、一実施形態において、免疫グロブリン融合タンパク質は抗体-IL2融合タンパク質である。他の実施形態において、IL-2部分は抗体の重鎖C末端のそれぞれに結合して、2つのIL-2部分を有する抗体-IL2融合タンパク質を形成する。他の実施形態において、IL-2部分は抗体の軽鎖N末端のそれぞれに結合されて、2つのIL-2部分を有する抗体-IL2融合タンパク質を形成する。さらに他の実施形態によれば、抗体-IL2融合タンパク質は、重鎖および/または軽鎖のC末端および/またはN末端の1以上に結合して多量体抗体-IL2融合タンパク質を形成するIL-2部分を含むことができる。他の実施形態において、融合タンパク質のFc領域に含まれるFcγRの結合部位が除かれる。(米国特許出願第2002/0105294号を参照のこと)。他の実施形態において、免疫グロブリンおよびIL-2部分はヒト由来であり、従ってヒト患者の治療に有用である。一実施形態によれば、IL-2部分は融合により、すなわちタンパク質主鎖への取り込みにより抗体に結合される。
【0034】
本発明の他の実施形態によれば、多量体IL-2タンパク質組成物はFc-IL2融合タンパク質である。例えば、一実施形態において、IL-2部分はFc部分のN末端のそれぞれに結合されて、2つのIL-2部分を有するFc融合タンパク質を形成する。他の実施形態において、IL-2部分はFc部分のC末端のそれぞれに結合されて2つのIL-2部分を有するFc融合タンパク質を形成する。さらなる実施形態によれば、IL-2部分はFc部分のN末端および/またはC末端の1以上に結合されて、多量体Fc-IL2融合タンパク質を形成する。一実施形態によれば、IL-2部分は融合により、すなわちタンパク質主鎖への取り込みによりFc部分に結合される。他の実施形態において、免疫グロブリンおよびIL-2部分はヒト由来であり、従ってヒト患者の治療に有用である。融合タンパク質は、当業者に公知の標準手順、例えば米国特許第5,650,150号、第5,541,087号および第6,992,174号ならびに米国特許出願公開第2002/0147311号、第2003/0044423号および第2003/0166163号に記載の手順に従って構築できる。
本発明によれば、一実施形態において、IL-2部分は野生型IL-2からの1以上のアミノ酸変種を含む。例えば、一実施形態において、配列番号1に示されるIL-2野生型配列の残基に対応するIL-2部分の下記のアミノ酸残基の1以上を変異させることは有用である:Lys8、Gln13、Glu15、Leu19、Asp20、Gln22、Met23、Asn26、Arg38、Phe42、Lys43、Thr51、His79、Leu80、Arg81、Asp84、Asn88、Val91、Ile92、およびGlu95。他の実施形態によれば、配列番号1に示されるIL-2野生型配列の残基に対応するIL-2部分の下記のアミノ酸残基の1以上を変異させることもまた有用である:Leu25、Asn31、Leu40、Met46、Lys48、Lys49、Asp109、Glu110、Ala112、Thr113、Val115、Glu116、Asn119、Arg120、Ile122、Thr123、Gln126、Ser127、Ser130およびThr131。
【0035】
他の実施形態において本発明によれば、IL-2部分は、中親和性IL-2受容体に対する野生型IL-2部分を有するタンパク質の親和性と比較して中親和性IL-2受容体に対するIL-2部分を有するタンパク質の親和性を変化させる変異を含まない。さらに他の実施形態において、IL-2部分は、野生型IL-2部分を有するタンパク質の中親和性受容体に対する親和性と比較してIL-2部分を有するタンパク質の中親和性IL-2受容体に対する親和性を低減させる変異を含まない。
さらに他の実施形態において本発明によれば、IL-2部分を有するタンパク質は、高親和性IL-2受容体に対する野生型IL-2部分の親和性を有するタンパク質の親和性と比較して高親和性IL-2受容体に対するIL-2部分を有するタンパク質の親和性を変化させる変異を含まない。他の実施形態において、IL-2部分を有するタンパク質は、中親和性受容体を発現している細胞の野生型IL-2部分の活性化を有するタンパク質と比較して中親和性受容体を発現している細胞のIL-2部分を有するタンパク質の活性化を低減させる変異を含まない。さらに他の実施形態において、IL-2部分を有するタンパク質は、高親和性IL-2受容体に対する親和性と比較して中親和性IL-2受容体に対するIL-2部分を有するタンパク質の親和性を低減させる変異を有さない。これらの実施形態によれば、野生型IL-2部分を有するタンパク質は、IL-2部分が野生型IL-2部分であるということを除いては、IL-2部分を有するタンパク質と同一の参照タンパク質である。IL-2含有タンパク質の相対的親和性を比較する方法は、米国特許出願公開第2003-00166163号に説明されている。
【0036】
他の実施形態において、IL-2部分を有するタンパク質は、参照タンパク質であって、IL-2部分を有するタンパク質と同一であるが、参照タンパク質のIL-2部分が野生型IL-2である前記参照タンパク質の選択性と比較してタンパク質のIL-2部分を有するタンパク質の選択性を変化させる変異を含まない。選択性は、IL-2中親和性受容体を発現している細胞の活性化と比較した高親和性IL-2受容体を発現している細胞の活性化の比として測定される。
他の実施形態において、IL-2部分を有するタンパク質は、IL-2高親和性受容体に対するIL-2部分を有するタンパク質の親和性と比較したIL-2中親和性受容体に対するIL-2部分を有するタンパク質の親和性に示差効果をもたらす変異を含まない。増殖をIL-2に依存する細胞または細胞株の増殖反応により示差的効果が測定される。IL-2部分を有するタンパク質に対するこの反応はED50値として表現され、用量反応曲線をプロットし、最大半量反応をもたらすタンパク質濃度を測定することにより得られる。IL-2部分を有するタンパク質と同一であるであるがIL-2部分が野生型IL-2である参照タンパク質に対するED50値の比と比較した、IL-2部分を有するタンパク質に対する中親和性IL-2受容体を発現している細胞に対して得られるED50値の比は、融合タンパク質の示差的効果の尺度を与える。
【0037】
他の実施形態において、本発明によれば、IL-2部分は、配列番号1に示されるIL-2野生型配列の残基に対応するIL-2部分の下記の残基のいずれにおける変異も含まない:Lys8、Gln13、Glu15、Leu19、Asp20、Gln22、Met23、Asn26、Arg38、Phe42、Lys43、Thr51、His79、Leu80、Arg81、Asp84、Asn88、Val91、Ile92およびGlu95。本発明のさらなる実施形態によれば、IL-2部分は、配列番号1に示されるIL-2野生型配列の残基に対応するIL-2部分の下記の残基のいずれか1つにおける変異を含まない:Leu25、Asn31、Leu40、Met46、Lys48、Lys49、Asp109、Glu110、Ala112、Thr113、Val115、Glu116、Asn119、Arg120、Ile122、Thr123、Gln126、Ser127、Ser130およびThr131。一実施形態において、変異はアミノ酸残基の挿入であり、他の実施形態において、変異はアミノ酸残基の欠失であり、さらに他の実施形態において、変異はアミノ酸残基の置換である。他の実施形態において、IL-2部分は、野生型IL-2に対応する下記の残基のいずれか1つにおける変異を有さない:D20T、N88RまたはQ126D。
本発明は、自然界に見られるIL-2配列、例えば図11(配列番号1)に開示される成熟ヒト野生型IL-2アミノ酸配列を用いることを考えるばかりでなく、例えば、図1に開示される成熟ヒトIL-2アミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸同一性を有する他のIL-2アミノ酸配列を用いることもまた考える。
【0038】
2つのアミノ酸配列または核酸の一致率を決定するために、最適の比較目的で配列がアラインメントされる(例えば、第2アミノ酸または核酸配列との最適のアラインメントのために、第1アミノ酸または核酸配列の配列中にギャップを導入することができる)。2つの配列間の一致率は、配列により共有される一致位置数の関数である(すなわち、%一致=一致位置数/全位置数x100)。
本発明はまた、配列番号1に示す成熟ヒト野生型IL-2と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、92%、95%、よりさらに好ましくは99%のIL-2生物活性を維持しているIL-2配列を用いることを考える。IL-2活性は、in vitro細胞増殖アッセイ、例えば米国特許出願公開第2003-0166163号に記載のアッセイを用い、または当業者に公知の他の方法に従って測定できる。
本発明はまた、多量体IL-2タンパク質を用いることを考える。多量体IL-2タンパク質は、ペプチド結合、ジスルフィド結合または化学リンカーにより直接または間接に結合された、IL-2活性を示す複数のポリペプチド領域または部分を含むタンパク質組成物であることができる。例えば、一実施形態において、多量体IL-2は、それぞれがIL-2活性を示す2つの部分を有するタンパク質である二量体IL-2を含む。
【0039】
一実施形態において、用語“CD25受容体アンタゴニスト”は、高親和性IL-2受容体のCD25サブユニットに結合して無力化することができるポリペプチド、核酸または他の化学薬剤を意味する。例えば、一実施形態において、CD25受容体アンタゴニストは抗CD25抗体である。他の実施形態によれば、用語“抗CD25抗体”は、CD25受容体アンタゴニストであるすべての抗CD25抗体を含む。CD25アンタゴニストは、例えば、CD25サブユニットの分解を引き起こすアンタゴニスト、CD25サブユニットの内在化を引き起こすアンタゴニスト、IL-2がCD25サブユニットに結合するのを遮断するアンタゴニストまたはCD25サブユニットと高親和性IL-2受容体の他のサブユニットとの相互作用への妨害を引き起こすアンタゴニストを含む。
他の実施形態において、用語“CD25受容体アンタゴニスト”はまた、IL-2に結合し、それによって高親和性IL-2受容体のαサブユニット(CD25)に結合するIL-2の能力を妨害することができる他のポリペプチド、核酸または他の化学薬剤を含む。αサブユニットに結合するIL-2の能力を妨害することができる化学薬剤は、Rickert et al., (2005), Science, 308:1477-1480 において説明されている。例えば、一実施形態において、CD25アンタゴニストは、高親和性IL-2受容体のαサブユニット(CD25)への結合に必要なIL-2部分の少なくとも一部に対する抗IL-2抗体である。高親和性IL-2受容体のαサブユニット(CD25)への結合に必要なIL-2部分の少なくとも一部に対して向けられる抗IL-2抗体の例は当該技術分野で公知であり、マウスモノクローナル抗体S4B6およびヒトIL-2に対して向けられるモノクローナル抗体MAB602を含み、Boyman et al., Science, (2006), 311:1924-1927に開示されている。本発明の他の実施形態によれば、本明細書で定義するCD25受容体アンタゴニストは、IL-2とIL-2受容体のβ受容体(中親和性または高親和性IL-2受容体に存在するような)の間の相互作用を遮断しない。
一実施形態によれば、“抗体”は無傷の抗体(例えばモノクローナルまたはポリクローナル抗体を意味する。他の実施形態によれば、抗体は、例えばFabフラグメント、Fab’フラグメント、(Fab’)2フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖抗体結合部位およびsFv、二重特異性抗体およびそれらの抗原結合部分ならびに多重特異性抗体およびそれらの抗原結合部分を含む、それらの抗原結合部分を含むことができる。さらにまた、さらに他の実施形態において、抗体は、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、(Fab’)2フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖抗体結合部位またはFc部分もしくはFc部分の任意部分に結合されているsFvフラグメントのいずれかを含むことができる。
本発明によれば、一実施形態において、“抗CD25”抗体はIL-2高親和性受容体のCD25サブユニット(抗原)に特異的に結合できる抗体である。“特異的結合”、“特異的に結合する”および“特異的結合する”は、対象の抗原に対して少なくとも約10-6M、あるいは少なくとも約10-7M、あるいは少なくとも約10-8M、あるいは少なくとも10-9Mあるいは少なくとも約10-10Mの結合親和性を抗体が有することを意味すると解釈される。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、本治療方法は、Treg細胞と活性化CD8+エフェクター細胞のバランスをCD8+エフェクター細胞の有利となるように影響を及ぼす。本発明の一実施形態において、高親和性IL-2受容体複合体を発現している細胞においてIL-2依存性シグナル伝達を機能的に阻害する抗CD25抗体が用いられる。例えば、Treg細胞の機能的不活性化を引き起こすことが示されているPC61または7D4のような抗CD25抗体が用いられる(Kohm et al., (2006), J. Immunol., 176:3301-3305)。他の実施形態において、抗CD25抗体は、場合によりその循環半減期を低減させる変異を含むことができる。このような抗体を得る方法は当該技術分野で公知である。例えばCH2ドメインの欠失を有する抗体が用いられる。
また、他の実施形態において、His435における点変異を有する抗体のような、FcRn受容体への結合が低減した抗体が用いられる。このような抗体の実施形態は、IL-2タンパク質組成物を用いる刺激でTreg細胞よりもCD8+エフェクターT細胞の増幅に有利にするのに有用であることができる。さらに、このような抗体の実施形態は、高親和性IL-2受容体複合体を介してシグナルを送るが、中親和性IL-2受容体複合体を介してシグナルを送らないIL-2タンパク質組成物と組み合わせて用いる場合有用であることができる。
【0041】
本発明の他の実施形態において、抗CD25抗体はTreg細胞の枯渇を引き起こすために用いられる。例えば、強いCDC応答または強いADCC応答を誘発する抗CD25抗体が用いられる。CDCまたはADCCを増強させる方法は当該技術分野で公知である。例えば、C1q結合の親和性を増加させる抗体における変異でCDC反応を増強することができる(Idusogie et al., (2001), J. Immunol., 166(4):2571-2575)。YB2/0細胞株における抗体の産生による方法など、抗体のグリカンからフコース部分を排除する方法によりADCCを増強することができる。本発明の他の実施形態において、放射性核種または毒素を含む抗CD25抗体複合体が用いられる。一般的に用いられる放射性核種は、例えば90Y、131Iであり、特に67Cuであり、一般的に用いられる毒素は、ドキソルビシン、カリチェアミシンまたはメイタンシンDM1およびDM4である(Wu et al., (2005), Nat. Biotechnol., 23(9):1137-1146)。他の実施形態において、抗CD25抗体複合体は場合によりその循環半減期を低減させる変異を含むことができる。このような抗体を得る方法は当該技術分野で公知である。例えば、CH2ドメインの欠失を有する抗体が用いられる。また、His435における点変異を有する抗体などの、FcRn受容体への結合が低減された抗体が用いられる。
【0042】
抗体に基づかないCD25受容体アンタゴニストもまた用いることができる。このようなアンタゴニストは、例えば、核酸オリゴヌクレオチド、ペプチドまたは非抗体ポリペプチドドメインに基づくことができる。本発明の一実施形態において、CD25に対するアンタゴニスト活性を有するDNAアプタマーが用いられる。本発明の他の実施形態において、CD25に対するアンタゴニスト活性を有するRNAアプタマーが用いられる。DNAおよびRNAアプタマーを得る方法は当該技術分野で公知である。この方法は、一般にSELEXと呼ばれる、標的タンパク質に結合する核酸分子を選択し、結合分子を増幅するin-vitro反復プロセスに依存する(例えば Brody et al., (2000) J Biotechnol 74:5-13 を参照のこと)。他の実施形態において、抗CD25アプタマーは、その治療効果を高めるための修飾をさらに含むことができる。例えば、ヌクレアーゼに抵抗性にするためにアプタマーに核酸アナログが導入され、あるいは、その循環半減期を増加させるためにアプタマーを担体分子に結合させることができる。他の実施形態において、CD25アンタゴニストは非抗体ポリペプチドドメイン由来である。有用な非抗体ポリペプチドドメインは当該技術分野で公知であり、一般に、その上に可変の潜在的エピトープ結合ループが設計された足場構造(scaffold structure)を特徴とする。例えば、フィブロネクチンタイプIIIドメインが用いられる。フィブロネクチン足場に基づくCD25アンタゴニストの製造方法は当該技術分野で公知である。例えば、特定のCD25結合剤を選択するために、無作為化表面ループを有するフィブロネクチンのライブラリーをディスプレイするファージディスプレイ技術を用いることができる(例えば米国特許第5,223,409号を参照のこと)。また、in-vitro反復選択技術が用いられる(例えば、第6,818,418号を参照のこと)。特定のCD25アンタゴニストを得るための代替法は、例えば、アンキリンリピートタンパク質ライブラリー(Binz et al., (2004) Nat Biotechnol 22(5):575-582)またはavimers(Silverman et al., (2005) Nat Biotechnol 23(12):1556-1561)を用いて設計される。
【0043】
本明細書において、用語“免疫グロブリン”は、無傷の抗体(例えば、モノクローナルまたはポリクローナル抗体)またはフラグメントまたはその部分、例えば抗原結合部分と相同性を示す、天然に存在するかまたは合成的に製造されるポリペプチド、例えば組換えポリペプチドを意味すると理解される。本発明の免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgG、IgEまたはIgMなどの任意のクラス由来であることができる。IgG免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4などの任意のサブクラスのものであることができる。用語免疫グロブリンは、免疫グロブリン由来のポリペプチドおよびそれらのフラグメントを含む。
免疫グロブリンの定常領域は免疫グロブリンC末端領域と相同性を示す天然に存在するかまたは合成的に製造されるポリペプチドであり、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはCH4ドメインを別々に、または任意の組み合わせで含むことができる。本明細書において、“Fc部分”は、定常領域のフラグメント、アナログ、変種、変異体または誘導体を含む、抗体の定常領域由来のヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはCH4ドメインを別々に、または任意の組み合わせで含む。一実施形態において、Fc部分はヒンジ、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。あるいは、他の実施形態において、Fc部分はヒンジ、CH2ドメインおよび/またはCH3ドメインの全部または一部を含む。
本発明によれば、一実施形態において、抗体の定常ドメインは異なるIgGクラスに由来する。例えば、一実施形態において、抗体のヒンジ領域はIgG1由来であり、CH2ドメインおよびCH3ドメインはIgG2由来である。他の実施形態において、Fc部分のヒンジはIgG1由来であり、CH2ドメインおよびCH3ドメインはIgG2由来である。
【0044】
本発明によれば、一実施形態において、IL-2タンパク質組成物は免疫グロブリン部分を含む。本発明のさらなる実施形態によれば、免疫グロブリン部分は、IL-2中親和性または高親和性受容体に対するIL-2タンパク質組成物の結合特性に影響を及ぼす改変または変異を含まない。例えば、一実施形態において、免疫グロブリン部分は、タンパク質のグリコシル化パターンに影響を及ぼす修飾を含まない。他の実施形態において、免疫グロブリン部分はIgG 重鎖の位置N297における修飾を含まない。修飾は、分子のPEG化およびN-結合型グリコシル鎖を除去するためのN-グリカナーゼでの処理を含む。他の実施形態において、免疫グロブリン部分は、Fc受容体との相互作用に直接影響を及ぼす変異を含まない。他の実施形態において、免疫グロブリン領域は、重鎖のC末端リジンの代わりに他のアミノ酸に置換する変異を有さない。他の実施形態において、C末端リジンはアラニンで置換されない。他の実施形態において、免疫グロブリン部分はT細胞エピトープを排除または低減する変異を有さない。
本発明の方法によれば、CD25受容体アンタゴニスト、例えば抗CD25抗体はIL-2タンパク質組成物と共に投与される。一実施形態において、抗CD25抗体およびIL-2タンパク質組成物は互いに離れて投与される。他の実施形態において、抗CD25抗体はIL-2タンパク質組成物と実質的に同時に投与される。一実施形態において、抗CD25抗体での前治療が行われ、それにIL-2タンパク質組成物が続く。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、抗CD25抗体およびIL-2タンパク質組成物の用量が一緒に投与され、他の実施形態において、同じ治療セッション中別々に投与される。代替実施形態において、用量が別々の治療セッション中に投与される。例えば、特定の実施形態において、抗CD25抗体の用量が0日目に投与され、IL-2タンパク質組成物の用量が0〜7日後に投与される。他の特定の実施形態において、抗CD25抗体の用量が0日目に投与され、IL-2タンパク質組成物の用量が3日目に投与される。必要に応じて、他の投与間隔レジメンを用いることができる。一実施形態において、例えば、抗CD25抗体がTreg細胞などの標的細胞に対して有効であり、IL-2タンパク質組成物がTreg細胞を顕著に刺激するのを防ぐ投与間隔レジメンが用いられる。
他の実施形態によれば、場合により、抗CD25抗体の第2用量が投与される。目的は、CD25飽和のレベル維持を達成することである。例えば、一実施形態において、抗CD25抗体の第2用量を5日目に投与できる。IL-2タンパク質組成物の第2用量と同じ日に抗CD25抗体の第2用量を投与することは便利でありうるが、IL-2タンパク質組成物の複数回投与に対して観察された最適の用法・用量により、用法・用量が決定される。
【0046】
本発明の方法によれば、抗IL-2抗体などのCD25受容体アンタゴニストはIL-2タンパク質組成物と共に投与される。一実施形態において、抗IL-2抗体およびIL-2タンパク質組成物は互いに離れて投与される。この実施形態において、抗IL-2抗体はIL-2タンパク質組成物と実質的に同時に投与される。一実施形態において、抗IL-2抗体での前治療が行われ、それにIL-2タンパク質組成物が続く。
本発明の一実施形態によれば、抗IL-2抗体の用量およびIL-2タンパク質組成物の用量が共に投与され、他の実施形態において、同じ治療セッション中に用量が別々に投与される。代替実施形態において、用量は、別々の治療セッション中に投与される。例えば、特定の実施形態において、抗IL-2抗体の用量は0日目に投与され、IL-2タンパク質組成物の用量は0〜7日後に投与される。他の特定の実施形態において、抗IL-2抗体の用量は0日目に投与され、IL-2タンパク質組成物の用量は3日目に投与される。必要に応じて、他の投与間隔レジメンを用いることができる。一実施形態において、例えば、抗IL-2抗体がTreg細胞などの標的細胞に対して有効であり、IL-2タンパク質組成物がTreg細胞を顕著に刺激するのを防ぐ投与間隔レジメンが用いられる。
他の実施形態によれば、場合により、抗IL-2抗体の第2用量が投与される。目的は、抗IL-2抗体によりIL-2飽和のレベル維持を達成することである。例えば、一実施形態において、IL-2抗体の第2用量を5日目に投与できる。IL-2タンパク質組成物の第2用量と同じ日に抗IL-2抗体の第2用量を投与することは便利でありうるが、IL-2タンパク質組成物の複数回投与に対して観察された最適の用法・用量により、用法・用量が決定される。
他の実施形態において、IL-2部分と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を低減または排除するIL-2部分における変異を有するIL-2融合タンパク質は、0日目に患者に投与される。その後は、0〜7日後に、変異体IL-2融合タンパク質の用量が投与される。必要に応じて他の投与間隔レジメンを用いることができる。
【0047】
前臨床マウスモデルを用いた本願の実施例2に示すように、一実施形態によれば、本発明の方法は、IL-2タンパク質組成物の連続した2回用量を用いたときにより有効であった。例えば、一実施形態によれば、2日間離れたIL-2タンパク質組成物の2回用量を含む用法・用量において、抗CD25抗体は0日目および5日目に投与され、IL-2タンパク質組成物は3日目および5日目に投与される。この用法・用量は本発明の一実施形態の例である。しかしながら、本発明の精神を逸脱することなくこの用法・用量の変形物を考えることができることは、当業者には明らかであろう。
他の実施形態によれば、場合により、免疫系の活性化またはCD8+エフェクター細胞の生成を促進する他の治療が含まれる。例えば、一実施形態によれば、前節に記載の組み合わせ療法の1〜14日前、好ましくは1〜7日前のIL-2タンパク質組成物を用いる選択可能な初期治療が含まれる。本発明のさらなる実施形態によれば、IL-2およびCD25アンタゴニストの組み合わせ療法の前に場合により投与できる他のサイトカインの例は、例えば、IL-7、IL-12、および/またはIL-15である。本発明の方法はまた、当業者に公知のアジュバントCpGなどの他の免疫系活性化剤も考える。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、抗CD25抗体は、CD25受容体の飽和維持を達成できる用量で投与される。例えば、ヒト成人を治療するためには、約0.01mg/kg〜10mg/kgの用量が一般に投与される。他の実施形態において、約0.5mg/kg〜2mg/kgの用量が用いられる。特定の実施形態において、抗CD25抗体ダクリズマブは、標準的には0.9%滅菌生理食塩水50mlの容量を用い、静脈内に約1mg/kgで投与される。代替実施形態において、前プロトコルのいずれかにより、抗CD25抗体の代わりに抗CD4抗体が投与される。
本発明の一実施形態によれば、変異体IL-2部分を有する融合タンパク質は、一般に約0.01mg/kg〜10mg/kgの用量で投与される。他の実施形態において、約0.5mg/kg〜2mg/kgの用量が用いられる。特定の実施形態において、変異体IL-2部分を有する融合タンパク質は、0.9%滅菌生理食塩水50mlの容量を用い、静脈内に約1mg/kgで投与される。
本発明の一実施形態によれば、抗IL-2抗体は、抗IL-2抗体による高親和性IL-2受容体のαサブユニット(CD25)への結合に必要なIL-2部分の部分を長期間飽和する用量で投与される。例えば、ヒト成人を治療するためには、約0.01mg/kg〜10mg/kgの用量が一般に投与される。他の実施形態において、約0.5mg/kg〜2mg/kgの用量が用いられる。特定の実施形態において、抗IL-2抗体は、0.9%滅菌生理食塩水50mlの容量を用い、静脈内に約1mg/kgで投与される。
本発明の他の実施形態によれば、IL-2タンパク質組成物はまた、最大耐量以下であると決定されている用量で投与される。一実施形態において、抗体-IL2融合タンパク質またはFc-IL2融合タンパク質に関しては、約0.004mg/m2〜4mg/m2の用量が投与される。他の実施形態において、約0.12mg/m2〜4mg/m2の用量が用いられる。他の実施形態において、約0.12mg/m2〜1.2mg/m2の用量が用いられる。よりさらなる実施形態において、約1mg/m2の用量が用いられ、4時間の注入を用いて静脈内に投与される。他の実施形態において、本発明の方法は抗体-IL2融合タンパク質が分離して投与される方法よりも、抗体-IL2融合タンパク質に関してより優れた治療係数を提供できるので、標準よりも低投与量、例えば約0.5mg/m2が用いられる。
【0049】
抗体-IL-2融合タンパク質を用いる本発明の組み合わせ治療薬は、前節に記載の方法で投与できる。
本発明の他の実施形態によれば、CD25アンタゴニストおよびIL-2タンパク質組成物は、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、腹腔内、経皮(局所)、経粘膜または直腸内のいずれかで投与される。
本発明の他の側面において、腫瘍に対する免疫反応の刺激に関して癌ワクチン単独よりも有効な方法が提供される。一実施形態において、本発明によれば、本方法は任意の望ましい癌ワクチン製剤と共に使用できる。一般に、癌ワクチンは、腫瘍細胞または腫瘍増殖を支える周囲の腫瘍間質の細胞により選択的に発現されている抗原に対して向けられる。腫瘍選択的抗原の例は、特に、MAGEファミリーメンバー、Cancer/Testisファミリーメンバー、サバイビン、CEAまたはムチンを含む。腫瘍間質の細胞に選択的な抗原の例は、特にVEGFR1またはFAPaplhaである。他の実施形態において、本方法は、対象の他の抗原に対する有効性を改善するために用いられる。
【0050】
癌ワクチン組成物は、抗原成分をコードするDNAまたは、抗原前駆体または抗原成分自身を形成するポリペプチドに基づくことができる。DNAベース癌ワクチン組成物はネイキッド(naked)DNAとして、またはリポソームまたはウイルスまたは細菌などの送達ビヒクルを用いて送達できる。例えば、一実施形態において、例えばXiangらにより米国特許出願公開第2004/0192631号に記載されているような、サルモネラ(salmonella)ベース細菌ビヒクルを用いて送達するためにパッケージ化された、サバイビンをコードするDNAワクチンを用いることができる。他の実施形態において、ペプチドカクテルを含むポリペプチドベース癌ワクチン組成物が用いられる。例えば、一実施形態において、Stratenらによる米国特許出願公開第2004/0210035号に記載のペプチドカクテルを含むペプチドカクテルが用いられる。さらに他の実施形態において、CEAが抗原であり、Fc-IL-2部分がアジュバント効果を有し、さらにIL-2活性を与えるCEA-Fc-IL2などのタンパク質が用いられる(配列番号9、例えば図19参照)。
【0051】
本発明の一実施形態において、癌ワクチンプロトコルは、抗CD25抗体およびIL-2の複数コピーを含むタンパク質組成物を含む組み合わせ治療薬と共に用いられる。例えば、一実施形態において、癌ワクチンを用いる前治療に続いてIL-2タンパク質組成物および抗CD25抗体による治療が行われる。一実施形態において、ワクチンを用いる前治療後に、最初にIL-2タンパク質組成物が投与され、ついで抗CD25抗体の投与が行われる。他の実施形態において、ワクチンを用いる前治療後に抗CD25抗体およびIL-2タンパク質組成物が共に投与される。実施例11および実施例12ならびに前節において、用法・用量の例の概略が述べられている。本発明の異なる実施形態において、抗IL-2抗体は抗CD25抗体に置き換えられる。
一実施形態において、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチンの抗原およびIL-2と高親和性IL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質を患者に投与することを含む。IL-2への有用な変異は上記に記載されている。他の実施形態において、本方法は、ワクチンの抗原およびIL-2とIL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与することを含む。さらなる実施形態によれば、本発明による1つのワクチンは、抗原およびIL-2とIL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を低減または破壊する1以上の変異を含むIL-2融合タンパク質を含む医薬組成物である。
【0052】
本発明の他の実施形態によれば、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチンの抗原、IL-2融合タンパク質およびIL-2に結合するタンパク質を患者に投与することを含む。一実施形態において、IL-2融合タンパク質は抗体-IL-2融合タンパク質である。他の実施形態において、本方法は、ワクチン、IL-2に結合するタンパク質およびIL-2融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与することを含む。さらなる実施形態によれば、本発明による1つのワクチンは、抗原、IL-2融合タンパク質およびIL-2に結合するタンパク質を含む医薬組成物である。
本発明の他の実施形態によれば、ワクチンの有効性を増強する方法は、ワクチン、IL-2融合タンパク質およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を患者に投与することを含む。一実施形態において、IL-2融合タンパク質は抗体-IL-2融合タンパク質である。他の実施形態において、本方法はワクチンの抗原、IL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子およびIL-2融合タンパク質をコードする核酸を患者に投与することを含む。他の実施形態によれば、本発明による1つのワクチンは、抗原、IL-2融合タンパク質およびIL-2とIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用の阻害因子を含む医薬組成物である。一実施形態において、このワクチンは患者に投与される。
【0053】
他の側面において、本発明は、IL-2タンパク質およびIL-2と高親和性IL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を遮断するタンパク質を含む医薬組成物を含む。例えば、一実施形態において、医薬組成物はIL-2および抗CD25抗体を含む。一実施形態において、医薬組成物は、IL-2および抗CD25抗体の混合物、例えば溶液である。他の実施形態において、医薬組成物はIL-2および抗IL-2抗体を含む。例えば、医薬組成物は、IL-2および抗IL-2抗体の混合物、例えば溶液であることができる。他の実施形態において、IL-2はIL-2融合タンパク質である。他の実施形態において、IL-2融合タンパク質はIL-2とIL-2中親和性または高親和性受容体βサブユニットの間の相互作用を遮断しない。さらに他の実施形態において、IL-2融合タンパク質はIL-2とIL-2高親和性受容体αサブユニットの間の相互作用を遮断しない。他の実施形態において、IL-2タンパク質は、高親和性IL-2受容体αサブユニットに結合するIL-2の能力を低減または排除する変異を含む。他の実施形態において、医薬組成物は患者、例えばヒト患者に投与される。
【0054】
他の側面において、本発明はキットを含む。本発明によれば、一実施形態において、キットは患者におけるエフェクター細胞機能を刺激する方法に用いられる。他の実施形態において、キットはIL-2媒介性免疫反応を調節する方法に用いられる。一実施形態によれば、キットは少なくともCD25受容体アンタゴニストおよびIL-2タンパク質組成物を含む。一実施形態において、キット内で、CD25受容体アンタゴニストは1つの容器に含まれ、IL-2タンパク質組成物は別の容器に含まれる。さらに他の実施形態において、CD25受容体アンタゴニストはIL-2と同じ容器に含まれる。
本発明に含まれるキットへの言及の続きとして、一実施形態において、キットに含まれるIL-2は、IL-2高親和性受容体のCD25サブユニットに結合するIL-2の能力を低減または排除するように変異される。例えば、一実施形態において、IL-2はR38WおよびF42Kに対応する1以上の残基における変異を有する。一実施形態において、CD25受容体アンタゴニストは抗CD25抗体であり、他の実施形態において、CD25受容体アンタゴニスト抗IL-2抗体である。他の実施形態において、抗IL-2抗体は、IL-2の高親和性IL-2受容体のαサブユニット(CD25)への結合に必要なIL-2部分の少なくとも一部に対して向けられる。
他の実施形態において、本発明によるキット内に含まれるIL-2は、IL-2融合タンパク質である。
【0055】
本発明の具体的実施態様を以下に列挙する。
(1)癌を患っている個体においてIL-2の免疫刺激作用を増強する医薬組成物であって、
(i)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質、並びに、CD25アンタゴニストおよび/またはCD4アンタゴニスト、または
(ii)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質、および、IL-2に結合してIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断するタンパク質、または
(iii)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質であって、対応する野生型IL-2融合タンパク質と比較して、IL-2と高親和性IL-2受容体のIL-2受容体αサブユニットの間の相互作用を低減または破壊するが、中親和性IL-2受容体に対する融合タンパク質の親和性を低減しない1以上の変異を含み、前記変異は、野生型IL-2部分のアミノ酸配列の位置R38およびR42におけるアミノ酸置換を含むが、変異D20T、N88RおよびQ126Dのいずれも含まない前記融合タンパク質、
を含み、場合により薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む前記医薬組成物。
(2)少なくとも2つのIL-2部分含むIL-2融合タンパク質およびCD25アンタゴニストを含む、(1)記載の医薬組成物。
(3)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質およびCD4アンタゴニストを含む、(1)記載の医薬組成物。
(4)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質およびCD25アンタゴニストおよびCD4アンタゴニストを含む、(1)記載の医薬組成物。
(5)CD25アンタゴニストが、IL-2の表面に結合し、IL-2とCD25の間の相互作用を阻害するタンパク質である、(2)または(4)の医薬組成物。
(6)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質、および、IL-2に結合してIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断するタンパク質を含む、(1)記載の医薬組成物。
(7)IL-2に結合するタンパク質が、さらにIL-2と高親和性または中親和性IL-2受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しない、(6)記載の医薬組成物。
(8)L-2に結合する前記タンパク質が抗IL-2抗体である、(5)〜(7)のいずれかに記載の医薬組成物。
(9)CD25アンタゴニストおよびCD4アンタゴニストが抗体である、(1)〜(5)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10)抗CD25抗体がダクリズマブまたはバシリキシマブである、(9)記載の医薬組成物。
(11)少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質であって、対応する野生型IL-2融合タンパク質と比較して、IL-2と高親和性IL-2受容体のIL-2受容体α-サブユニットの間の相互作用を低減または破壊するが、中親和性IL-2受容体に対する融合タンパク質の親和性を低減しない1以上の変異を含み、前記変異は野生型IL-2部分のアミノ酸配列の位置R38およびR42におけるアミノ酸置換を含むが、変異D20T、N88RおよびQ126Dのいずれも含まない前記融合タンパク質を含む、(1)記載の医薬組成物。
(12)前記変異がアミノ酸置換R38WおよびF42Kを含む、(11)記載の医薬組成物。
(13)IL-2融合タンパク質が中親和性IL-2受容体複合体を活性化できるが高親和性IL-2受容体複合体を活性化できない、(1)〜(12)のいずれかに記載の医薬組成物。
(14)IL-2融合タンパク質がIL-2受容体複合体のβ-サブユニット(CD122)と結合できるが、IL-2受容体複合体のα-サブユニット(CD25)と結合できない、(1)〜(12)のいずれかに記載の医薬組成物。
(15)IL-2融合タンパク質が免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質である、(1)〜(14)のいずれかに記載の医薬組成物。
(16)免疫グロブリン部分が、腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境中に提示される抗原に対する可変領域を含む抗体である、(15)記載の医薬組成物。
(17)免疫グロブリン部分が抗体のFc部分である、(15)記載の医薬組成物。
(18)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質がKS-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2であるか、あるいはKS-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2に由来する、(15)または(16)記載の医薬組成物。
(19)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質がFc-IL-2またはIL-2-Fcであるか、あるいはFc-IL-2またはIL-2-Fcに由来する、(15)または(17)記載の医薬組成物。
(20)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が:
KS-IL-2、KS-ala-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2、
Fc-IL-2またはIL-2-Fc
からなる群から選択され、CD25アンタゴニストが抗CD25抗体である、(15)記載の医薬組成物。
(21)抗癌ワクチンをさらに含む、(1)〜(29)のいずれかに記載の医薬組成物。
(22)異なる別々の容器を含む医薬キットであって、
(i)第1容器が免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質を含み、
(ii)第2容器が、
(a)抗CD25抗体、または
(b)抗CD4抗体、または
(c)抗CD25抗体および抗CD4抗体、または
(d)および、IL-2に結合してIL-2と高親和性IL-2受容体のαサブユニットの間の相互作用を遮断するが、IL-2と高親和性または中親和性IL-2受容体のβサブユニットの間の相互作用を遮断しないタンパク質、を含む、
前記医薬キット。
(23)(d)のタンパク質が抗IL-2抗体である、(22)記載の医薬キット。
(24)抗腫瘍ワクチンを含む第3容器をさらに含む、(22)または(23)記載の医薬キット。
(25)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が、中親和性IL-2受容体複合体を活性化できるが高親和性IL-2受容体複合体を活性化できない、(22)〜(24)のいずれかに記載の医薬キット。
(26)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が、IL-2受容体複合体のβ-サブユニット(CD122)に結合できるがIL-2受容体複合体のα-サブユニット(CD25)に結合できない、(22)〜(24)のいずれかに記載の医薬キット。
(27)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質の免疫グロブリン部分が、
(a)腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境中に提示される抗原に対する可変領域を含む抗体、または
(b)抗体のFc部分
である、(22)〜(26)のいずれかに記載の医薬キット。
(28)免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が:
KS-IL-2、KS-ala-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2、
Fc-IL-2またはIL-2-Fc
からなる群から選択される、(27)記載の医薬キット。
(29)組み合わせ療法の場合において、それぞれのIL-2融合タンパク質単独の投与と比較して、または単独療法の場合において、それぞれの未改変IL-2融合タンパク質の投与と比較して、患者におけるIL-2の免疫刺激作用を増強する医薬の製造のための、(1)〜(28)のいずれかに記載の医薬組成物または医薬キットの使用。
(30)免疫刺激作用がCD8+細胞およびNK1.1+細胞の増強をもたらす、(29)記載の医薬組成物または医薬キットの使用。
(31)免疫刺激作用がTreg(CD4+CD25+)細胞活性の低下をもたらす、(29)または(30)記載の医薬組成物または医薬キットの使用。
(32)医薬が癌の治療に用いられる、(29)〜(31)のいずれかに記載の医薬組成物または医薬キットの使用。
本発明は、限定するものではない以下の実施例によりさらに説明される。
【実施例1】
【0056】
抗CD25抗体および抗体-IL2融合タンパク質で処置したマウスにおけるCD8+細胞の増強
マウスモデルにおいて、抗CD25抗体と種々の形のIL-2の組み合わせ治療薬の作用を評価するために、処置後に末梢血および脾臓から採取したマウス免疫細胞のレベルの変化を分析した。
【0057】
7〜8週齢の雌C57BL/6マウスを用いた。ラット抗マウス抗CD25抗体PC61(ラットハイブリドーマ細胞PC61(ATCC TIB222, Manassas, VA)から産生した)を、250マイクログラム/マウスの用量で、0日目および5日目に、マウス(1処置群につきn=3)に腹腔内投与した。1つの実験群のマウスに、3日目から7日目まで1日量20μg/マウスで静脈内に抗体融合タンパク質KS-ala-IL2をさらに投与し、一方、第2実験群のマウスに、1日量3.3μg/マウスで静脈内に組換えヒトIL-2(rh-IL2)をさらに投与した。この用量は、マウスに対するIL-2に関してモルベースでKS-ala-IL2 20マイクログラム/マウスと同等な用量を与えた(図1A参照)。対照群において、マウスには上記のPC61抗体を250マイクログラム/マウスもしくは100マイクログラム/マウスのいずれかの用量を投与するか、またはPBS溶液0.2mlの注射を行った。
【0058】
3日目のIL-2処置の開始時、および8日目のIL-2処置の終わりに再度末梢血細胞を採取し、当業者に公知の標準法であるフローサイトメトリーにより、マーカーCD4、CD8およびCD25に関して分析した。8日目に脾臓を採取し、上記のように分析した。3日目において、全CD4+および全CD8+細胞数は比較的不変のままであったが、検出可能なCD25+細胞数はPBS処置対照群に対しておおよそ10%に減少し、以前報告されたこの抗体の作用が確認された。さらに、PC61抗体の2つの用量の比較により、検出可能なCD25+細胞数の減少において、低投与量の100μgは高投与量と同様な効果を示したので、続く実験には典型的にはこの用量を用いた。8日目において、PC61およびKS-ala-IL2(配列番号2および4)の組み合わせで処置されたマウスからの末梢血細胞は、PBS処置対照またはPC61のみで処置したマウスに対して、CD4+およびCD8+細胞集団において劇的な変化を示した。全CD4+細胞はおよそ40%減少したのに対し、全CD8+細胞は400%を超えて増加した。このように、この組み合わせ治療薬は全CD4+およびCD8+集団に対して反対の効果を示した。
【0059】
驚いたことに、KS-ala-IL2の作用と対照的に、PC61およびrhIL-2の組み合わせで処置されたマウスからの末梢血細胞は、これらの細胞集団において有意な変化を示さず、数は対照と同様であった(図1B)。脾臓から単離された細胞でも同様な結果が見られた(図1C)。さらにまた、CD25+細胞についての脾臓細胞の分析は、PC61抗体治療薬は有効であり、実験期間中その効果は持続し、CD4+CD25+細胞を含む検出可能なCD25+細胞の数は対照の10%未満に低下したことを示した(図1D)。
CD25に対する抗体、例えばPC61と組み合わせるとき、抗体-IL2融合タンパク質に関連したIL-2を用いる動物の治療は、遊離(モノマーの)IL-2を用いる治療と対照的に、免疫療法に有用な免疫細胞集団に顕著で有益な変化、すなわち、CD8+細胞数の急増および、Treg細胞集団であるCD4+CD25+細胞を含む検出可能なCD25+細胞数の低下をもたらすことをこれらの結果は示している。遊離IL-2は、抗体-IL2融合タンパク質と同じ有益な結果を生じない。
【0060】
理論に拘束されるものではないが、遊離IL-2(配列番号1)に対してKS-ala-IL2で見られる示差効果は、KS-ala-IL2と関連する細胞におけるアビディティ効果などによるIL-2部分の局所濃度の増加によるものであることができる。二量体IL-2タンパク質、例えばFc-IL2または抗体-IL2融合タンパク質を含む他のタンパク質変種などの、IL-2に対してアビディティ効果を与える他の組成物は抗CD25抗体と組み合わせて有効であることができることが示唆される。
【0061】
マウスにおいて、抗CD25抗体処置によりTreg細胞は物理的に枯渇されず、むしろ、Treg細胞上のCD25受容体タンパク質はダウンレギュレートまたは低減し、Treg細胞の機能的不活性化がもたらされることが報告されている(Kohm et al., (2006), J. Immunol., 176:3301-3305)。本質的に前述のように行われ、加えて、CD4と共にTreg細胞の特徴である転写因子FoxP3を発現している細胞を検出する試薬を用いた異なる実験からの結果とこの所見とは一致する。PC61抗体での処置後にCD4+CD25+細胞は検出可能ではないが、CD4+FoxP3+細胞は検出可能であることが見いだされたが、このことは、Treg細胞は枯渇されず、FoxP3を発現し続け、むしろCD25依存性刺激に関して機能的に不活性化されたことを示している(データは示さず)。理論に拘束されるものではないが、抗体-IL2融合タンパク質に関連した二量体性により与えられるIL-2活性は、抗CD25抗体による阻害作用として予期される作用を克服してCD8+細胞集団を増幅させるがCD4+CD25+細胞集団を増幅させないと考えられる。
【0062】
興味あることに、この組み合わせ療法は全CD4+細胞の増幅よりもむしろ減少を導いたが、このことはさらに、CD4+およびCD8+細胞はこの処置に対して実際に異なった応答を示すことを示唆している。理論に拘束されるものではないが、CD4+細胞のタイプであるTreg細胞は、同様にこの組み合わせ療法に関連した抗体-IL2融合タンパク質治療に感受性を示さず、従って抗体-IL2治療はTreg活性の回復をもたらさないと考えられる。
【実施例2】
【0063】
投与の最適化ならびに抗CD25抗体および抗体-IL2融合タンパク質を用いる組み合わせ治療により誘導される免疫反応のさらなる解析
実施例1の実験に見られる劇的効果は、抗CD25抗体との組み合わせ療法によりKS-ala-IL2の治療係数を増加させることができ、それによりKS-ala-IL2の投与頻度の低下が可能になるということを示唆した。このことを試験するために、7〜8週齢雌C57BL/6マウス(1処置群につきn=3)において、抗CD25抗体PC61の有り無しで免疫細胞集団に対するKS-ala-IL2処置の効果を比較した。20マイクログラム/マウスの用量で、3日目における単回用量または3日目および5日目における2回用量のいずれかを用いてマウスの静脈内にKS-ala-IL2を投与した。1つの実験条件において、マウスの複数の群にさらに0日目および5日目に100マイクログラム/マウスの用量でPC61抗体を腹腔内に投与し、一方他の実験条件において、マウスの複数の群にはPC61を投与しなかった。対照群には、前述のスケジュールでPC61抗体を単独で投与するか、または0.2ml/マウスPBSを0日目および5日目腹腔内へ、3日目および5日目に静脈内へ投与した。
【0064】
フローサイトメトリーならびに細胞表面受容体CD4、CD8、CD25およびNK-1.1に対する抗体を用い、8日目、14日目および21日目に採取した血液サンプルからの免疫細胞集団を標準法により試験した。10日目にさらなる血液サンプルを採取し、CD8+メモリーT細胞を同定する細胞表面受容体CD8、CD44、CD62およびCD122に対する抗体を用いてフローサイトメトリーにより免疫細胞集団を分析した。分析は、当業者に公知の標準手順に従って行った。
予想されたように、PC61抗体治療薬は検出可能なCD25+細胞集団の約5倍の低下を引き起こし(データは示さず)、検出可能なCD4+CD25+細胞集団の約30倍の低下を引き起こしたが(図2B)、CD4+、CD8+またはNK-1.1+(ナチュラルキラー)細胞の総数は主として影響を受けなかった(図2C)。検出可能なCD4+CD25+細胞集団は、実験期間を通して、21日目になってもその低減したレベルを維持していた(図2B)。
KS-ala-huIL2単独による処置は、8日目において、CD8+細胞集団(図2A)およびCD4+CD25+細胞集団(図2B)のわずかな用量依存的増加を引き起こし、基礎レベルのおおよそ2倍に達したが、14日目までには、これらの集団は基礎レベルまで復帰した。
【0065】
NK1.1+細胞の集団は、8日目におおよそ3倍に増加した(図2C)。それに引き換え、組み合わせ治療の効果は甚大であった。8日目において、検出可能なCD4+CD25+細胞集団は対照に対しておおよそ50倍低減し(図2B)、全CD8+細胞集団(図2Aおよび2C)およびNK1.1+細胞集団(図2C)は、それぞれ7倍および40倍用量依存的に増加した。加えて、全CD4+細胞集団は対照に対して約40%用量依存的に減少した(図2C)。
10日目に、その8日目のレベルと比較して組み合わせ療法群におけるCD8+細胞集団は減少していたが、KS-ala-IL2を単独で投与された処置群のレベルよりも依然として上であったが、14日目までに基礎レベルに復帰した(図2A)。これらの細胞の大部分は、メモリーT細胞すなわち高レベルのCD44、CD62LおよびCD122を発現している細胞(中親和性IL-2受容体)上に見られる細胞マーカーを発現した。従って、増幅されたCD8+細胞の大部分はメモリー表現型のものであった(図2D)。他方では、ナイーブCD8+T細胞数は処置群間で変化は見られず、低レベルにとどまっていた(図2D)。
この組み合わせは、CD8+T細胞およびNK-1.1+細胞の増殖を一過性に増加させ、加えて、CD8+およびNK1.1+細胞集団に対してそれ自身ではこのような著しい効果を生まないKS-ala-IL2の用量で検出可能なTreg(CD4+CD25+)集団の活性を著しく低下させるのに有効であることをこれらの結果は示唆している。
【実施例3】
【0066】
抗CD25抗体と組み合わせた、モノマーまたは二量体IL-2を含む抗体-サイトカイン融合タンパク質の免疫細胞に対する活性
KS-ala-IL2におけるIL-2の二量体性がT細胞およびNK細胞増殖に対する劇的効果にとって重要かどうかを決定するために、抗体-IL2融合タンパク質のさらなる形態を試験した。このような分子の1つであるKS-ala-monoIL2は、抗体部分を含む2つの抗体重鎖の1つのC末端に結合した1つのみのIL-2部分を含む。融合タンパク質内の全長抗体構造の必要性を決定するために、IL-2が二量体でFc C末端とIL‐2部分の間にアラニンを有するFc-IL2融合タンパク質もまた試験した。huKS-ala-IL2について報告されているものと同じ程度にFc融合タンパク質の循環半減期を増すためにアラニンを挿入した(Gillies et al., (2002) Clin. Cancer. Res., 8:210-216)。
【0067】
抗CD25抗体PC61と組み合わせての、KS-ala-IL2に対するKS-ala-monoIL2の免疫細胞の増殖促進における効果を比較するために下記の実験を行った。
KS-ala-monoIL2を得るために、KS-ala-IL2重鎖融合タンパク質、KS抗体重鎖およびKS 軽鎖をコードする別々の発現カセットを含むベクターを構築した。この発現ベクターを骨髄系細胞株NS/0にトランスフェクトし、プロテインAセファロースに結合させ、溶離することにより馴化細胞培養培地から融合タンパク質を精製した。ヘテロ二量体のKS-ala-monoIL2をSECクロマトグラフィーによりさらに精製し、還元条件下、非変性および変性ゲル電気泳動でその同定を行った。薬物動態学に関しては、マウスにおいて、KS-ala-monoIL2の循環半減期は、KS-ala-IL2の循環半減期と少なくとも長さが同じくらいであることが観察された。
【0068】
それぞれ5つの群(1群につきn=3)に分割したC57BL/6マウス2セットを0日目および5日目にPC61100μgまたは非特異的ラット抗体100μgのいずれかで処置した。両セットにおける各群に、さらに3日目および5日目に、PBS、KS-ala-IL2 20μg、KS-ala-monoIL2 20μg、Fc-ala-IL2または遊離IL-2のいずれかを注射した。8日目に、標準法に従ってフローサイトメトリーにより末梢血細胞および脾細胞を分析した。対照群および実験群の両方に対する、フローサイトメトリーによる細胞数測定結果を図3A〜Fに示す。
【0069】
図3A〜Fを参照すると、PC61およびKS-ala-IL2を用いる組み合わせ治療は、著しいCD8+およびNK1.1+細胞の増殖をもたらし、末梢血および脾臓試料の両方における全CD4+細胞の低下をもたらしたが、遊離IL-2はPBS対照と比較してほとんど変化を示さなかった。この結果は、前記の実験ですでに観察されている結果と同様であった。それに引き換え、1つのIL-2分子を含むが遊離IL-2と比較して長い循環半減期を示すKS-ala-monoIL2を用いる治療は、PC61抗体と組み合わせた場合、CD8細胞のわずかな増加を示しただけだった。NK細胞数に対するKS-ala-monoIL2の効果は、二量体形で観察された効果よりもずっと低かった。CD4細胞に関しては、末梢血試料におけるCD4細胞の減少にKS-ala-monoIL2は効果を示さなかったが、脾臓試料におけるCD4細胞レベルはPBS対照よりもわずかに低いだけだった。Fc-ala-IL2での結果は、KS-ala-IL2に関して観察されたNKおよびCD8細胞の増殖パターンと類似していた。全体としては、脾臓におけるCD8およびNK細胞の合わせた百分率は、対照動物における20%未満からKS-ala-IL2およびPC61抗体組み合わせ群における75%を超えて増加した。
【0070】
この組み合わせ治療に関連して、KS-ala-IL2におけるIL-2の二量体性はその免疫刺激特性にとって重要であり、通常の組換えヒトIL-2(rhIL-2または“遊離IL-2”)に差異を生じさせることをこれらの結果は示している。理論に拘束されるものではないが、NK細胞はFcγRタンパク質を発現することが知られているので、KS-ala-monoIL2でのNK細胞増殖に対して見られる軽度の効果は、KS-ala-monoIL2のFc部分を介している可能性がある。
【0071】
上記の実験において、抗CD25抗体とKS-ala-IL2、KS-ala-monoIL2、IL-2またはFc-ala-IL2との組み合わせ療法から得られた脾臓のCD4細胞を、FoxP3およびCD25の発現に関してさらに分析した。抗FoxP3および抗CD25抗体を用いた。この場合において、PC61のエピトープとは別のエピトープに結合し、他人によりこの受容体の存在を検出する事が示されている7D4ラット抗マウスCD25抗体(Sauve et al., (1991), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4636-40)を用いた。示されたタンパク質で処置されたマウスにおける全脾細胞の百分率として、全CD25+FoxP3+細胞を測定した。以下の両陽性細胞の報告された百分率は、CD4細胞数に基づいており、組み合わせ群に関してずっと低かった。データを図4に示す。
【0072】
抗CD25抗体を用いる処置は、PBSおよびrIL-2群において、FoxP3+脾臓細胞上のCD25の発現レベルを明らかに低下させた(図4A)。それに引き換え、二量体IL-2融合タンパク質のいずれかで処置された群は、抗CD25抗体の非存在下でのFoxP3+細胞の百分率の増加ばかりでなく、PC61抗体の存在下でFoxP3+細胞上のCD25の継続的な発現も示した。huKS-ala-IL2およびPC61抗体の組み合わせで処置されたマウスの脾臓におけるCD4細胞総数はhuKS-ala-IL2単独群に対して減少したので、FoxP3およびCD25両陽性であるCD4細胞の百分率はCD4細胞の百分率として増加した(図4B)。しかしながら、実際はFoxP3+CD25+細胞総数は減少した(図4A)。顕著な特徴である細胞表面マーカー、CD4、CD25およびFoxP3の発現にもかかわらず、表面CD25へのPC61の結合が、二量体IL-2融合タンパク質での刺激後のCD8およびNK細胞増幅のTregによる抑制を機能的に阻害したと考えられる。この主張の裏づけとして、最近の研究により、PC61投与後にTregは枯渇されず、処置されたマウスからの精製CD4+FoxP3+GITR+T細胞は制御機能を欠くことが示されている(Fecci et al., (2005), Clin. Cancer Res., 12:4294-4305)。
【実施例4】
【0073】
抗CD25抗体および、中親和性IL-2受容体複合体に対する低減した結合を有するマウスIL-2またはIL-2変種を含む抗体-IL2融合タンパク質の刺激活性
これらの研究に用いたPC61は、マウスIL-2によって誘導されるがヒトIL-2またはKS-ala-IL2(ヒトIL-2配列を含む)によっては誘導されないマウスCTLL-2細胞の増殖を抑制することがin vitro実験で示されているので、マウスにおいて観察された効果は単に、PC61の作用を回避することができる異種間背景におけるヒトIL-2タンパク質の使用の結果である可能性がある。
【0074】
IL-2受容体複合体におけるIL-2作用のPC61による中和が重要であるかどうかを試験するために、マウスを、ヒトIL-2(KS-ala-IL2)またはマウスIL-2(KS-ala-mIL2)を含むKS-ala-IL2のいずれかで処置した。本質的に前記実施例に記載されているように実験を行った。C57BL/6マウス(1処置群につきn=3)に、0日目および5日目に、PC61抗体100マイクログラム/マウスまたは非特異的ラット抗体100μgを注射し、3日目および5日目に20マイクログラムのKS-ala-IL2、KS-ala-mIL2またはPBSを注射した。対照群のマウスには、PC61の代わりに無関係のラット抗マウス抗体100マイクログラム/マウスを投与した。8日目に、末梢血試料を採取し、前述同様に、CD4、CD8、NK1.1およびCD25に対するマーカーを用い、フローサイトメトリーにより分析した。
組み合わせ治療薬において、抗体-IL2融合タンパク質のマウス形は、マウスにおけるCD8+およびNK1.1+細胞の増殖の誘導において同様に活性であることが見いだされ(図5Bおよび5C)、このことはこの効果がin vitroでサイトカイン生物活性を中和する抗CD25抗体の能力に関係しないことを示している。しかしながら、抗体-IL2融合タンパク質のマウス型は、CD4+細胞レベルの低下を引き起こさなかった(図5A)。
【0075】
本実験の第2の側面において、中親和性IL-2受容体複合体を介するシグナル伝達の重要性を評価した。このために、IL-2受容体のα鎖への結合に必要なIL-2(D20T)における単一の点変異を含むIL-2変種を有する抗体融合タンパク質を用いる。以前の研究は、これが高親和性IL-2受容体に対して中親和性受容体よりも高選択的(>1000倍)であることを示している(例えば、米国特許出願公開第2003/0166163号参照)。C57BL/6マウスのさらなる群を、上記のように、3日目および5日目にKS-ala-IL2(D20T)で処置した。この変種が用いられる場合、CD8+またはNK1.1+細胞集団は増幅されないことが見いだされ(図5Bおよび5C)、これは中親和性IL-2受容体複合体を介するシグナル伝達が必要であることを示した。
【0076】
要約すれば、本発明は中親和性IL-2受容体複合体を介してシグナル伝達することができる二量体形のIL-2および抗CD25抗体の使用を最低限必要とすることを、実施例3および4は示している。しかしながら、高親和性受容体複合体への外から加えられたIL-2の結合およびシグナル伝達を抗体が中和できることを必要としないと思われる。
【実施例5】
【0077】
非標的化IL-2融合タンパク質および抗CD25抗体を用いる処置によるTreg細胞活性の低下ならびにCD8+T細胞およびNK1.1+細胞の増強
前記実施例において抗体-IL2融合タンパク質を用いた。しかしながら、EpCAMに特異的な抗体可変領域は免疫細胞集団変化に対する観察された効果に対して副次的であり、従ってPC61と組み合わせた二量体IL-2融合タンパク質の非標的化形は、CD8+細胞およびNK1.1+細胞を増強する一方でCD4+CD25+細胞の活性を低下させる能力において前記抗体-IL2融合タンパク質と同様に有効であると考えられる。
【0078】
この予測を試験するために、下記の実験を用いることができる。非標的化二量体IL-2変種の例は、ヒトIL-2のN末端に融合させたヒトIgG1のFc部分からなるFc-IL2融合タンパク質またはヒトIgG1のFc部分のN末端に融合させたヒトIL-2からなるIL2-Fcを含む。IL2-Fcタンパク質はCDCおよびADCCエフェクター機能を維持しているが(例えば、米国特許第5,349,053号参照)、Fc-IL2タンパク質はそれを維持していないことが明らかにされたので、N-グリカナーゼでIL2-Fcをさらに処理してAsn297部位でN-結合型グリコシル化を除いてエフェクター機能を除去し、IL-2受容体保有T細胞の殺傷を回避する。対照としてKS-ala-IL2および酵素的に脱グリコシル化されたKS-ala-IL2(Asn297において)を用いる。
本質的に前記実施例に記載されているように実験を行う。C57BL/6マウス(1処置群につきn=3)に、0日目および5日目にPC61抗体100マイクログラム/マウスを注射し、3日目および5日目にFc-IL2 20マイクログラム、脱グリコシル化されたIL2-Fc、KS-ala-IL2もしくは脱グリコシル化されたKS-ala-IL2またはPBSを注射する。対照群のマウスには、PC61の代わりに、無関係のラット抗マウス抗体100マイクログラム/マウスを投与する。8日目に、末梢血試料を採取し、CD4、CD8、NK1.1およびCD25に対するマーカーを用いて前述同様にフローサイトメトリーにより分析する。
【0079】
本発明によれば、両方の非標的化二量体IL-2融合タンパク質は、CD4+CD25+細胞を低下させることとCD8+T細胞およびNK1.1+細胞の両方を増殖させることにおいて、KS-ala-IL-2融合タンパク質と同程度に有効であることが観察される。さらにまた、IL2-FcまたはKS-ala-IL2のいずれかの脱グリコシル化によるFc受容体結合の排除はこのプロセスに対してほとんど効果を示さない。従って、Fc-IL2またはIL2-Fc(変異、N-結合型グリカンを除去するための酵素的処理により、または低Fc受容体結合を有するイソタイプ、例えばIgG2を用いることよりFc受容体結合を排除した)のいずれも、抗CD25抗体と組み合わせた場合、Treg細胞の全身性機能的不活性化ならびにCD8+T細胞およびNK細胞の全身性増殖のための本発明の有用な実施形態と考えられる(融合タンパク質におけるFc受容体結合の除去の議論に関しては、米国特許出願公開第2003-01045294号を参照のこと)。
【0080】
興味深いことに、IL-2受容体α相互作用に関与するIL-2領域を抗体がふさぐ特定の抗IL2-抗体/IL-2複合体は、in vivoでメモリーCD8+T細胞およびNK細胞の増殖を刺激することができることが観察されていた(Boyman et al., (2006), Science, 311:1924-1927 参照)。無傷の抗体の代わりに対応するF(ab)2フラグメントの使用によりこの効果は著しく低減されたので、このタンパク質組成物に関しては、Fc/Fc受容体相互作用がレスポンダー細胞へのIL-2の提示にとって重要であることが示唆された。
【実施例6】
【0081】
抗CD25抗体と組み合わされたときの、抗体-IL2融合タンパク質の増強された抗腫瘍活性
本実施例に記載された実験のような実験は、免疫細胞に対する組み合わせ治療薬の効果がより効果的な抗腫瘍治療に関連しているということを示すために使用できる。例えば、トランスフェクトされてヒト細胞表面タンパク質EpCAMを発現し、KS抗体により認識されるLewis肺癌細胞株であるLLC/KSA腫瘍細胞をC57BL/6マウスの皮下に移植する。次いでこのマウスをPC61抗体と組み合わせたKS-ala-IL2で治療する。IL-2の腫瘍への標的化の相対的重要性を評価するための対照として、Fc-IL2などの非標的化二量体IL-2融合タンパク質を用いる。
【0082】
下記の実験において、前記実施例に記載されている治療スケジュールが用いられるが、場合により抗体およびIL-2融合タンパク質の他の用法用量を用いることができる。7〜8週齢の雌C57BL/6マウス(1群につきn=6)の皮下にLLC/KSAを移植する。皮膚腫瘍が平均サイズ50mm3に達するとき、例えば本質的に前記実施例に記載されているようにマウスを処置する:0日目および5日目にマウスの複数の群に、PC61 100マイクログラム/マウスまたは非特異的ラット抗体100マイクログラム/マウスのいずれかを注射し;3日目および5日目に、マウスの複数の群を、KS-ala-IL2 20マイクログラム/マウスまたはFc-IL2 20マイクログラム/マウスまたはPBSでさらに処置する。8日目に、末梢血試料を採取し、CD4、CD8、NK1.1およびCD25に対するマーカーを用いて前述同様にフローサイトメトリーにより分析する。実験期間を通じて、週2回、腫瘍体積の連続測定を行う。
【0083】
本発明によれば、CD25抗体単独ではこの腫瘍の増殖にほとんど効果を示さず、KS-ala-IL2単独の2つの用量は、わずかな活性しか示さないことを結果が示すことが予期される。さらに、組み合わせ療法は、いずれかの薬剤単独と比較して腫瘍増殖速度に顕著な効果を示すことが予期され、これはCD8+T細胞および/またはNK1.1+細胞の増幅と関連することが予期される。加えて、抗CD25およびFc‐IL2を用いる動物の治療は、抗CD25および標的KS-ala-IL2分子を用いる治療よりも低い抗腫瘍活性を示すことが予期されるので、IL-2の腫瘍標的化もまた抗腫瘍活性に重要な役割を果たすことが予期される。
他の投与計画を選択することができ、マウスモデルで試験することができる。例えば、抗CD25抗体治療薬を投与する前に活性化T細胞を増殖させることは有用かもしれず、前述の標準的投与計画の2日または3日前のKS-ala-IL2を用いる選択可能な初期治療を含むことができる。必要に応じて、免疫細胞の活性化を促進するかまたはエフェクター細胞を生成させるためのさらなる治療を挿入するために、実験投与計画をさらに改変することができる。場合により、他のT細胞活性化剤、例えばCpGをスケジュール中に含むことができる。
【0084】
実験の他の側面において、主として抗腫瘍活性に関与するエフェクター細胞タイプは、CD8+T細胞またはNK細胞のいずれかの枯渇により評価できる。1日目および6日目に、組み合わせ療法を受けている2群のマウスの腹腔内に、抗CD8抗体100マイクログラム/マウスまたは抗asialo GM1(#986 - 10001, Wako Chemicals USA, Richmond, VA) 20マイクロリットル/マウスをさらに投与し、ついでマウスを本実施例に記載されているように処置する。例えば、もし抗CD8抗体による処置が著しく多い腫瘍量を有するマウスをもたらせば、それによりCD8+細胞が重要なエフェクター細胞集団であることが確認されるであろう。
【実施例7】
【0085】
抗CD25抗体/抗体-IL2組み合わせ治療の他の実験転移モデルにおける抗腫瘍活性に対する効果
抗体標的化は、末梢血におけるエフェクターの結果としてよりも、腫瘍微小環境においてその主要な抗腫瘍活性を発揮すると考えられるので、腫瘍標的化免疫サイトカインと抗CD25遮断との組み合わせの効果を試験した。抗IL2抗体およびIL2全身性遺伝子治療を用いて以前報告された結果と結果の比較を容易にするために、B16メラノーマモデルを選択した(Kamimura et al., (2006), J. Immunol., 177:1924-1927)。
【0086】
Gillies et al., (1998), J. Immunol., 160:6195-6203 に記載されているように、レトロウイルスベクターを用い、トランス感染により、huKS抗体に対する抗原(KSAまたはEpCAM、上皮細胞接着分子)を発現している安定的にトランスフェクトされたB16メラノーマクローンであるB16/KSAを作製した。G418(1mg/ml)(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含む細胞増殖培地で細胞を培養した。0日目にB16/KSAの生存単一細胞2x105個を含むPBS0.2mlをマウスの静脈内に注射し、1日間回復させた。
1日目および5日目に、100マイクログラム/用量のラットIgGまたは抗CD25抗体PC61のいずれかをマウスの腹腔内に注射した。3日目および5日目に、20マイクログラム/用量のhuKS-ala-IL2を静脈内に注射した。マウスの症状をモニターし、対照群が瀕死状態になったとき(腫瘍移植後21日目に起こった)マウスを犠牲にした。肺を摘出し、重さを計り、ブアン液で固定した。(a)体重で正規化した肺重量および(b)転移で覆われた肺表面の百分率、により抗腫瘍効果を評価した。
【0087】
マウス肺における腫瘍量は2つの方法で測定した。腫瘍で覆われた肺表面の百分率は視覚的検査で評価した。これは6匹の動物群の平均+/-標準誤差で表わされる。腫瘍量はまた、肺を計量することにより測定した。値は各マウスの体重で正規化した。組み合わせ群とBPS対照群の間の差異は、2つの測定により、統計的に有意(p<0.01)であったが、huKS-ala-IL2群との差異は有意差がなかった。表面転移および腫瘍量のデータは図7に示されている。
図7に示すように、huKS-ala-IL2および対照ラットIgGでの処置は、腫瘍量にある程度の効果を示したが、抗CD25抗体を加えない場合は差異は統計的に有意ではなかった。1つには各マウスの応答の変動のせいで、huKS-ala-IL2単独療法と組み合わせ療法群の間の差異は十分に統計的に有意ではなかった。
【0088】
これらの結果の可能な説明は、抗CD25はCD4+CD25+細胞に関するTreg機能ばかりでなく、CD8+CD25+細胞に関するエフェクター機能もまた遮断するということである。このことを回避する試みとして、実施例13における代替的アプローチを試みた。さらにまた、これらのデータとKamimuraら ((2006), J. Immunol., 177:1924-1927) により以前に報告されたデータとの差異は、処置のタイミングばかりでなく腫瘍量の測定時(12日目に対する21日目)によっても説明しうる。動物の全群における腫瘍量が増すに従って非治癒処置における差異は急速に失われることは予想されることであろう。実際、huKS-ala-IL2単独での免疫刺激の条件は、定着したB16肺転移の成長を抑制するのにすでに十分強力であり、2日を越える投与により容易により有効にし得る。この高い効力は抗体-IL2融合タンパク質の標的化効果の反映と考えることができ、今日までに試験されたすべてのモデルにおいて、遊離抗体およびサイトカインよりもずっと強力であるということが示されている(Davis et al., (2003), Cancer Immunol. Immunother., 52:297-308 。
【実施例8】
【0089】
制御性T細胞を低減しCD8陽性T細胞の増幅を増強する、二量体IL-2融合タンパク質および抗CD25抗体とワクチンの組み合わせの効果
ワクチン接種という状況での抗CD25抗体および二量体IL-2融合タンパク質を用いる治療の価値を明らかにするために、下記の実験を行う。例えば、本実験の0日目および5日目において、抗CD25抗体または対照ビヒクルを用いてマウスを最初に前処置する。次いで、例えば1日目に、場合によりアジュバントを含めて抗原を投与する。CD8+T細胞応答をモニターするための有用な抗原はクラスI MHCにより認識されるAH1-Ala5ペプチドであり、Balb/cマウスにおける同系腫瘍により提示される(Slansky et al., (2000), Immunity, 13:526-538)。これは、不完全フロイントアジュバントと共に容易に投与できる。本実施例においては、二量体IL-2融合タンパク質は、静脈内注射により3日目および5日目に投与される(20μg/マウス)。11日目および18日目に、複数の群のマウスを犠牲にし、マウスの脾臓細胞を免疫細胞サブセットに関して分析し、さらにELISPOTによりインターフェロンガンマ(IFN-γ)を発現しているAH1-Ala5ペプチド特異的CD8+T細胞数の計数を行う。このELISPOTアッセイは、抗原特異的細胞傷害性CD8細胞レベル(CTL)を測定するためのアッセイとして当該分野で公知である(例えば、 Power et al., (1999), J. Immunol. Meth., 227:99-107 参照)。抗CD25抗体および二量体IL-2融合タンパク質にワクチン接種プロトコルを加えた組み合わせは、各薬剤単独のいずれよりも大きい程度に抗原特異的CD8+T細胞数を増加させることを結果は示す。
【0090】
この特定のプロトコルは、免疫感作に対するCD8+細胞ワクチン応答を高めることが示されるが、本発明の実施形態として、このアプローチの多くの変法を考えることができる。
例えば、一実施形態において、二量体IL-2分子(例えばFc-IL2またはIL2-Fc)は、抗原と同時または約24〜48時間以内に投与され、そして好ましくは乳化アジュバントが注射される部位とは異なる部位に投与される。抗CD25抗体は静脈内に注射するのが好ましいが、二量体IL-2タンパク質はいくつかの代替法によって投与できる。上記の実施例に記載されているように、静脈内注射を用いることができるが、皮下または筋肉内注射もまた使用できる。他の送達方法は、二量体IL-2融合タンパク質をコードするDNAベクターの注射を含むことができる。
また、CEA-Fc-IL2(配列番号9)融合タンパク質などのタンパク質が投与される。CEAは抗原と考えられ、Fc-IL-2部分がアジュバント効果を有すると共に二量体IL-2を提供する。抗CD25抗体の投与は、好ましくは融合タンパク質の注射の前に行われるが、0〜2日前の範囲であることができる。場合により、追加免疫効果を得るためにこの手順が繰り返される。ついで細胞性免疫反応は標準法によりモニターされる。
【実施例9】
【0091】
抗体-IL-2および抗CD4または抗CD25抗体を用いる治療に起因する、NKおよびCD8T細胞増殖へのCD4枯渇の効果
前述の実験の結果は、抗CD25抗体によるTreg細胞の機能的遮断は、二量体IL-2抗体融合タンパク質によるNKおよびCD8T細胞両方の増殖のより強力な刺激を可能にさせることを示しており、in vivoにおいてこれらの細胞はこのプロセスを活発に抑制していることを示唆している。抗CD4抗体枯渇もまたこの抑制を取り除くことが予期できるので、組み合わせ療法において、これらの2つの抗体アプローチの効果をhuKS-ala-IL2と比較した。前述の実験と同じ投与量およびスケジューリングに従って、1日目および5日目に抗CD4抗体または抗CD25抗体のいずれかを用い、3日目および5日目にhuKS-ala-IL2を用いてマウスを処置した。ついで後眼窩採血により全血を得、フローサイトメトリーにより分析した。それから得られた細胞数を図6A〜Eに示す。
【0092】
図6A〜Eに示すように、用いた条件下での抗CD4抗体を用いる処置は、分析日である8日目においてほぼ完全にCD4およびCD4+CD25+細胞を排除した(図6Aおよび6B)。いずれかの抗体を用いる組み合わせ療法はCD8細胞増殖の同様な増強をもたらし、Tregの機能的遮断または全CD4 T細胞の排除は同様な効果を示すことを示唆した。1つの顕著ではあるが予期せぬものではない差異は、huKS-ala-IL2および抗CD4で処置されたCD8細胞は、抗CD25で処置された組み合わせ群よりもずっと高いCD25レベルを示したことである。
組み合わせ治療群間の他の興味ある差異は、この治療ではCD4+ CD25+細胞は枯渇されたが、CD4細胞の枯渇は抗CD25抗体で観察される場合と同じレベルのhuKS-ala-IL2によるNK細胞増殖をもたらさなかったことである(図6A〜E)。かわりに、NK1.1+集団における増加は、huKS-ala-IL2単独で見られた増加と同様であった(図6E)。
【0093】
huKS-ala-IL2およびPC61を投与したマウスに、さらなる枯渇抗体(NK細胞を枯渇するための抗CD8および抗GM1)を投与することにより、他の潜在的免疫細胞相互作用を試験した。これらの抗体の追加は、追加しなければhuKS-ala-IL2およびPC61に応じて大きく増幅された数を示すはずのマウスにおけるそれぞれの細胞型を除去するのに完全に有効であった(図6A〜E)。huKS-ala-IL2およびPC61を投与したマウスへの抗CD8抗体の追加の効果は、わずかではあったが統計的に有意なNK細胞の低下をもたらした。それに引き換え、CD8細胞増幅に関しては、抗GM1を用いるNK細胞の枯渇は、huKS-ala-IL2を投与したマウスへのPC61の追加の刺激効果を逆転させた。
Treg活性を低下させる手段としての抗CD4の使用もまた、CD8+CD25+T細胞の増加をもたらした。阻害を低下させる手段はこれらの細胞のCD25活性化を抑制しなかったので、これらのCD8+CD25+T細胞はより強力なエフェクター活性を有する可能性がある。この場合は、CD8細胞増殖のみが増強されたが、下記の実施例13に記載されているように、CD4、NKおよびGr1+細胞は、抗体-IL2変異構築物を用いて、すべて増強された。
CD4枯渇はCD8細胞の増殖を刺激したが、NK細胞の増殖を刺激せず、かつ抗CD25抗体よりもやや低い程度であったことは、IL-2抗体融合タンパク質および抗CD25抗体を同時投与されたマウスにおけるCD8細胞の最適の増殖のためにNK細胞が必要であると考えられる事実による可能性がある。
【実施例10】
【0094】
SCIDマウスおよびCD4枯渇Bl/6マウスにおける抗CD25抗体およびhuKS-IL2の効果
huKS-ala-IL2およびPC61抗体投与により誘導されるNK細胞の増殖にCD4細胞が必要かどうかを試験するために、CD4枯渇Bl/6マウスならびに機能的TおよびB細胞を欠くSCID CB17マウスにおける実験を企てた。
【0095】
1日目および5日目に、対照抗体ラットIgGまたは抗CD25抗体PC61のいずれか(100マイクログラム/用量、PBSで全量200マイクロリットルに希釈)をSCIDマウスの腹腔内に注射した。ついで3日目および5日目に、ラットIgGを投与されたマウスに、PBSまたはhuKS-ala-IL2(20マイクログラム/用量、PBSで全量100マイクロリットルに希釈)のいずれかを尾静脈を介して静脈内に投与した。同様に、抗CD25抗体を投与されたSCIDマウスに、PBSまたはhuK
S-ala-IL2(20マイクログラム/用量)のいずれかを尾静脈を介して静脈内に投与した。
1日目および5日目に、B1/6マウスに、対照抗体ラットIgG、抗CD25抗体PC61、抗CD4抗体GK1.5またはPC61およびGK1.5の両方のいずれか(100マイクログラム/用量、PBSで全量200マイクロリットル希釈)を腹腔内に注射した。ついで、3日目および5日目に、PBSまたはhuKS-ala-IL2のいずれか(20マイクログラム/用量、PBSで全量100マイクロリットルに希釈)をマウスに投与した。
8日目に末梢血試料を採取し、全血細胞をフローサイトメトリーにより分析した。DX5+ NK細胞、CD11bおよびGr1(顆粒球)のレベルに関してSCIDマウスからの血球を評価した。NK1.1+ NK細胞(図8C)およびCD8+ T細胞(図8D)に関してB/6マウスからの血球を評価した。
【0096】
驚いたことに、huKS-ala-IL2単独治療群と比較して、抗CD25抗体の追加はDX5+ (NK)細胞の劇的増幅をもたらし、これらの大部分は成熟表現型を示すCD11b+であった(図8A)。この組み合わせ群において、Gr1+細胞もまた10倍を超えて増幅された(図8B)。前記実験において、NK細胞がhuKS-ala-IL2および抗CD25抗体に応じて増幅されなかった理由はCD4細胞の枯渇ではなくて、むしろおそらくは異なる細胞型へのCD25の遮断の欠如が理由であることをこれらの結果は示している。この制御機構の克服が、二量体IL2に応じて、複数のリンパ球および顆粒球集団の増幅をもたらした。
SCIDマウス(機能的CD4細胞を欠く)における観察と一致して、CD4枯渇免疫コンピテントマウスへのPC61の追加は、huKS-ala-IL2により誘導される高レベルのNK細胞増殖を回復させた(図8C)。NK細胞とは異なって、以前の実験において観察されたように、同じマウスにおけるCD8T細胞数は、抗CD4または抗CD25抗体治療のいずれの結果としても増加した(図8D)。これらのデータを合わせれば、CD4細胞(おそらくCD4+CD25+Treg)はCD8 T細胞増殖を制限するが、NK細胞増殖は、CD25も発現してその制御能力をCD25に機能的に依存しているがT細胞系列ではない他の細胞型により制御されていることが示唆される。
【実施例11】
【0097】
免疫サイトカインおよびCD25抗体を用いるヒト癌患者の治療
本発明によれば、ヒト癌患者は抗CD25抗体およびIL-2含有免疫サイトカインで治療される。適切な投与順序は、上記の実施例に記載されている実験におけるマウス腫瘍モデルで確立し、ヒト用を対象とした同じ試薬を用いてサルにおける続く試験で確認できる。例示的な治療は次のとおりである。免疫サイトカイン療法に適していると見なされる患者を、最初に製造業者により推奨される用量でヒト抗CD25抗体を用いて処置する。このような抗体は、当該技術分野で公知であり、移植片拒絶(例えばダクリズマブ(別名Zenapax(登録商標)(Roche))またはバシリキシマブ(別名Simulect(登録商標)(ノバルティス)))の予防用としてすでに市販されている。例えば、ダクリズマブは、標準的には、静脈内に1mg/kgで投与される。投与は、一般に0.9%滅菌生理食塩水50ミリリットル量の注入による。
【0098】
抗CD25抗体の投与後約0〜約72時間に、KS-IL2(配列番号2および3)またはhu14.18-IL2(例えば、配列番号7および8)(例えば、米国特許出願公開第2004/0203100号およびOsenga et al., (2006), Clin. Cancer Res., 12(6):1750-1759 参照)などの免疫サイトカインを静脈内注入により投与する。一般的には4時間注入が用いられるが、より短いまたは長い注入時間を用いることができる。一般に、体表面積1平方メートルあたり0.04〜4mgの免疫サイトカイン用量が用いられるが、これは成人のヒト患者の約0.1〜10mgに相当する。場合により、第1用量のおおよそ5日後に、第2用量の免疫サイトカインと共に、第2用量のダクリズマブが投与される。さらなる前臨床試験および初期臨床試験に基づいて、必要に応じて、他の投与計画を用いることができる。
【実施例12】
【0099】
抗癌ワクチンならびに二量体IL-2融合タンパク質および抗CD25抗体の組み合わせを用いるヒト癌患者の治療
本発明の他の側面によれば、ヒト癌患者は、抗癌ワクチン、抗CD25抗体およびIL-2タンパク質組成物で治療される。適切な投与順序は、上記の実施例に記載されている実験におけるマウス腫瘍モデルで確立し、ヒト用を対象とした同じ試薬を用いてサルにおける続く試験で確認できる。例示的な治療は次のとおりである。癌ワクチン療法に適していると見なされる患者をダクリズマブ(Zenapax(登録商標))などの抗CD25抗体を用いて製造業者により推奨される用量、例えば静脈内に1mg/kgで処置する。投与は、一般に0.9%滅菌生理食塩水50ミリリットル量の注入による。抗CD25抗体の投与後約0〜約72時間に癌ワクチンを投与する。例えば、腫瘍選択的抗原サバイビンを発現している腫瘍への免疫反応を誘発する、サバイビン由来ペプチドのカクテルを含む癌ワクチンを投与する(米国特許出願公開第2004/0210035号参照)。用量は1ペプチドあたり約100マイクログラムであり、投与経路は皮下注射である。場合により同じ治療プロトコルを用いるブーストサイクル(boost cycle)が行われる。その後すぐに、タンパク質の静脈内または皮下注射のいずれかにより、あるいはまたこのようなタンパク質、例えばFc-IL2またはIL2-Fc融合タンパク質をコードするベクターの注射により二量体IL-2融合タンパク質が投与される。場合により、融合タンパク質のFc部分は、T細胞応答を鈍らせることができる、CDCまたはADCCなどの抗体のエフェクター機能を誘発しないように改変される。ワクチン接種手順に関しては、ワクチンの投与量および投与経路は、一般に抗CD25抗体を含まない手順と変わらない。
【0100】
また、他の実施形態によれば、ヒト癌患者を最初に1ラウンドの癌ワクチンで治療し、ついで二量体IL-2融合タンパク質で治療して免疫反応の誘導相を開始させ、その後、前述のように抗CD25抗体で治療の第2ラウンドを開始する。例えば、一実施形態において、患者を癌ワクチンで前治療する。ついで前治療の1〜7日後に、患者をIL-2タンパク質組成物および抗CD25抗体で治療する。代替実施形態において、患者を癌ワクチンで前治療する。ついで前治療後1〜7日に、患者をIL-2タンパク質組成物で治療する。ついでIL-2タンパク質組成物での治療後1〜7日に、患者を抗CD25抗体で治療する。場合により、抗CD25抗体での治療の前に、患者に癌ワクチンのブースト治療が行われる。
【実施例13】
【0101】
IL-2の変異形を含む融合タンパク質と野生型IL-2を含む免疫サイトカインおよび抗CD25抗体の効果の比較
理論に拘束されるものではないが、抗体-IL2融合タンパク質および抗CD25抗体の組み合わせにより誘導される免疫細胞の過剰増殖は、中親和性IL-2受容体を刺激し、同時にCD25を遮断することによると考えられる。従って、抗体を用いてCD25を遮断する、抗CD25抗体およびIL-2含有融合タンパク質の組み合わせへの代案として、IL-2Rα結合表面に欠陥を有する変異体IL-2を含む抗体-サイトカイン融合タンパク質について、同様な効果が得られるかどうか確認するために、T細胞レベルへのそれらの効果を試験した。
【0102】
IL-2のアミノ酸残基R38およびF42は、共に受容体α鎖と相互作用する(Sauve et al., (1991), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4636-40; Heaton et al., (1993), Cell Immunol., 147:167-179)。従って、CD25との相互作用を効果的に遮断するために、残基(R38WおよびF42K)の両方の変異を有するhuKS-ala-IL2のバージョンを設計した(“huKS-ala-IL2RF”と呼ぶ)。対照として、αβγ高親和性受容体複合体への結合を維持しながらCD122への結合を遮断するために、IL-2の位置D20をトレオニンに変異させた(本明細書においては“D20T”または“D”と呼ぶ)(huKS-ala-IL2D20T、huKS-ala-IL2Dとも呼ぶ)。いずれの場合も、変異体抗体-IL2融合タンパク質は、他のIL-2受容体形を介して増殖を誘導することができる(Hu et al., (2003), blood, 101:4853-61)。
7週齢の雌Balb/Cマウスの1群を、それぞれ3匹のマウスからなる部分群を有する2群、すなわち実験群および対照群に分割した。1日目および5日目に、実験用マウスには抗CD25抗体PC61 100マイクログラムを投与し、対照マウスには対照抗体ラットIgG100マイクログラムを投与した。3日目および5日目に、実験群および対照群の部分群に、それぞれPBS、KS-ala-IL2、KS-ala-IL2(R38W、F42K)(KS-ala-IL2RFとも呼ぶ)またはKS-alaIL2(D20T)の1つを20マイクログラム/マウスの量で投与した。8日目に動物を犠牲にし、系列マーカーおよびIL-2受容体発現に関して血球および脾細胞を分析した。
【0103】
以下の表に、分析した表面マーカーおよび計数した血液1ミリリットルあたりの細胞数を示す。
表1
【0104】
表1つづき
【0105】
本発明の特定の治療薬は、エフェクター細胞集団、例えば細胞傷害性T細胞(CD8によって表される)、顆粒球(Gr1によって表される)およびナチュラルキラー細胞(NK-1.1によって表される)への重要な効果を引き起こしたことをこれらの結果は示している。特に、これらの細胞数は、KS-ala-IL2(R38W、F42K)、抗CD25およびKS-ala-IL2または抗CD25およびKS-IL2(R38W、F42K)のいずれかで治療されたマウスにおいて顕著に増加した。さらに、これらの3つの治療薬のそれぞれのCD8+細胞、Gr1+細胞およびNK-1.1+細胞への影響は、互いに統計的に有意な差がなく、KS-ala-IL2(R38W、F42K)などの単一薬剤を用いる治療またはKS-IL2および抗CD25抗体などの組み合わせを用いる治療薬は、同様な有用免疫刺激効果をもたらすであろうことが示唆された。
【0106】
図9もまた、細胞計数のデータを示す。Gr1+細胞計数は、NK1.1.+Gr1+細胞と同様に、中程度および高発現部分群を含む。図で見られるように、huKS-ala-IL2(D20T)(高親和性受容体のみに特異的)を投与された動物のすべての群の免疫細胞数は、抗CD25抗体の存在下でさえも、PBS対照マウスとは有意に異ならなかった。このことにより、抗CD25と組み合わせたKS-ala-IL2に対する増殖反応は、CD122受容体サブユニットを介していることが確認される。著しく対照的に、huKS-ala-IL2(R38W、F42K)(CD122受容体に特異的であるが、CD25を誘導しない)は、抗CD25抗体の存在下または非存在下で、CD8T細胞(図10C)、NK細胞(図10E)およびGr1+細胞(図10F)の強い増殖反応を誘導したが、野生型分子は、反応の増強のためには抗CD25遮断を必要とした。
【0107】
KS-ala-IL2および抗CD25組み合わせ療法とは異なり、huKS-IL2(R38W、F42K)単独療法はCD4 T細胞増殖もまた刺激し(図10A)、これらの細胞の大部分はCD25を発現していた(図10B)。このことは、CD122を介した刺激後のこれらの細胞に対するCD25のアップレギュレーションおよび、それがなければ抗CD25抗体またはTregにより遮断される内因性IL2への後続応答により説明されると考えられる(huKS-ala-IL2単独の場合)。この仮説の証拠は、huKS-IL2(R38W、F42K)および抗CD25抗体を投与された群において示され、その場合において、高親和性受容体に結合できる内因性IL2に感受性を示すことができない結果として全CD4 T細胞数が減少した。
【0108】
同じく注目すべきは、単独療法としてhuKS-ala-IL2(R38W、F42K)を投与されたマウスの群は、CD8+CD25+(おそらくエフェクター)細胞の劇的増加を示したただ一つの群であった(図10D)。この場合も同様に、抗体-IL2融合タンパク質によるCD122シグナル伝達および、おそらく、内因性IL-2によるCD25シグナル伝達を刺激する条件下で、Tregによる抑制の最初の欠如(huKS-ala-IL2(R38W、F42K)はCD25を誘導しないので)によると考えられる。8日目に、免疫細胞をフローサイトメトリー分析すると、CD4+CD25T細胞の大部分はFoxP3もまた発現しており(図9)、従って、制御表現型に変換されたと考えられる。
【0109】
これらのデータが示すように、抗体-IL2融合タンパク質および抗CD25抗体の投与で見られる場合と異なり、huKS-ala-IL2(R38W、F42K)の投与は、CD25を誘発することなく、そうでなければその結果として生じる、増殖を抑制するTreg機能の活性化を伴うことなく、中親和性IL-2受容体を強く刺激する能力を有する。同時に、CD25は、CD4およびCD8エフェクター細胞への作用を遮断されず、両方とも内因性IL-2により刺激することができる。huKS-ala-IL2(R38W、F42K)が内因性IL-2による刺激を遮断する抗CD25抗体と同時投与されるとき、このことにより、CD8エフェクターのより強力な活性化および抗体-IL2で刺激されたCD4細胞の増殖(実際は小幅な低下)をもたらすことができる。恐らく、増幅されたCD4集団により産生される内因性IL-2は、ついで、CD4+CD25陽性細胞を誘導してFoxP3を上方制御し、サプレッサー表現型に変換させる。
【0110】
理論に拘束されるものではないが、本発明の組成物は、少なくとも部分的に、IL-2受容体βサブユニットと相互作用するIL-2部分を介して作用することをこれらの結果は示唆している。この機構は、表1に示される、例えば、KS-IL2および抗CD25を用いて観察されるエフェクター細胞集団の刺激がKS-IL2(D20T)および抗CD25を用いては観察されないという所見によって推測される。D20T変異は、IL-2とIL-2受容体βの間の相互作用を顕著に低減させることが知られている。
【0111】
従って上記の表1の所見に基づいて、本発明は、IL-2部分を含む標的化融合タンパク質において、IL-2/IL-2Rα相互作用を阻害し、IL-2/IL-2Rβ相互作用を維持することは有用であるという一般原理に基づく、免疫刺激のためのいくつかの治療戦略を提供する。上記の表1に示されるように、このことはCD25、IL-2Rαサブユニットに対する抗体を用いることにより、あるいはIL-2Rαとの相互作用が低減または破壊されたIL-2の変異体を用いることにより達成できる。また、本発明によれば、IL-2Rαと相互作用するIL-2の表面上のIL-2融合タンパク質に結合する抗体または他のタンパク質を用いて同じ効果を得ることができる。従って、本発明は、IL-2に結合し、IL-2Rαとのその相互作用を遮断する、抗体または他のタンパク質と組み合わせたIL-2融合タンパク質を含む組成物もまた提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を患っている個体において、Treg(CD4+CD25+)細胞は増殖させないがCD8+細胞およびNK1.1+細胞を増殖させ、それによって前記個体に投与されるIL-2の免疫刺激作用を増強するための医薬であって、少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質および抗CD25抗体の組合せを含む、前記医薬。
【請求項2】
抗CD25抗体がダクリズマブまたはバシリキシマブである、請求項1記載の医薬。
【請求項3】
IL-2融合タンパク質が免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質である、請求項1または2記載の医薬。
【請求項4】
免疫グロブリン部分が、腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境中に提示される抗原に対する可変領域を含む抗体である、請求項3記載の医薬。
【請求項5】
免疫グロブリン部分が抗体のFc部分である、請求項3記載の医薬。
【請求項6】
免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質がKS-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2であるか、あるいはKS-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2に由来する、請求項3または4記載の医薬。
【請求項7】
免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質がFc-IL-2またはIL-2-Fcであるか、あるいはFc-IL-2またはIL-2-Fcに由来する、請求項3または5記載の医薬。
【請求項8】
免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が、KS-IL-2、KS-ala-IL-2、14.18-IL-2、NHS76-IL-2、Fc-IL-2およびIL-2-Fcからなる群より選ばれる、請求項6または7記載の医薬。
【請求項9】
IL-2融合タンパク質の投与の前に抗CD25抗体が投与されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の医薬。
【請求項10】
IL-2融合タンパク質の投与の3日前に抗CD25抗体が投与されることを特徴とする、請求項9記載の医薬。
【請求項11】
抗CD25抗体が二回投与されることを特徴とする、請求項10記載の医薬。
【請求項12】
抗CD25抗体の二回目の投与が初回投与の5日後である、請求項11記載の医薬。
【請求項13】
抗CD25抗体が第0日および第5日に投与され、IL-2融合タンパク質が第3日および第5日に投与される、請求項9記載の医薬。
【請求項1】
癌を患っている個体において、Treg(CD4+CD25+)細胞は増殖させないがCD8+細胞およびNK1.1+細胞を増殖させ、それによって前記個体に投与されるIL-2の免疫刺激作用を増強するための医薬であって、少なくとも2つのIL-2部分を含むIL-2融合タンパク質および抗CD25抗体の組合せを含む、前記医薬。
【請求項2】
抗CD25抗体がダクリズマブまたはバシリキシマブである、請求項1記載の医薬。
【請求項3】
IL-2融合タンパク質が免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質である、請求項1または2記載の医薬。
【請求項4】
免疫グロブリン部分が、腫瘍細胞上または腫瘍細胞環境中に提示される抗原に対する可変領域を含む抗体である、請求項3記載の医薬。
【請求項5】
免疫グロブリン部分が抗体のFc部分である、請求項3記載の医薬。
【請求項6】
免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質がKS-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2であるか、あるいはKS-IL-2、14.18-IL-2またはNHS76-IL-2に由来する、請求項3または4記載の医薬。
【請求項7】
免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質がFc-IL-2またはIL-2-Fcであるか、あるいはFc-IL-2またはIL-2-Fcに由来する、請求項3または5記載の医薬。
【請求項8】
免疫グロブリン-IL-2融合タンパク質が、KS-IL-2、KS-ala-IL-2、14.18-IL-2、NHS76-IL-2、Fc-IL-2およびIL-2-Fcからなる群より選ばれる、請求項6または7記載の医薬。
【請求項9】
IL-2融合タンパク質の投与の前に抗CD25抗体が投与されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の医薬。
【請求項10】
IL-2融合タンパク質の投与の3日前に抗CD25抗体が投与されることを特徴とする、請求項9記載の医薬。
【請求項11】
抗CD25抗体が二回投与されることを特徴とする、請求項10記載の医薬。
【請求項12】
抗CD25抗体の二回目の投与が初回投与の5日後である、請求項11記載の医薬。
【請求項13】
抗CD25抗体が第0日および第5日に投与され、IL-2融合タンパク質が第3日および第5日に投与される、請求項9記載の医薬。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−100297(P2013−100297A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−271134(P2012−271134)
【出願日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【分割の表示】特願2009−517037(P2009−517037)の分割
【原出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【分割の表示】特願2009−517037(P2009−517037)の分割
【原出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
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