説明

IP通信端末、通信制御方法およびプログラム

【課題】1台のIP通信端末で複数の交換主装置のラインキーを割付け、同時着信、通話中着信などの機能を1台で行うことができること。
【解決手段】複数の交換主装置にIP網を介して接続し、通信する際に使用するポートを可変として登録する主装置登録手段と、ボタン押下にて発信する際に使用する交換主装置を選択して発信する発信制御手段と、着信の際にどの交換主装置からの着信かを判断して着信処理を行う着信制御手段と、前記通信端末が有するラインキーに割り付けられた複数の主装置に対するボタンのランプ制御などを発着信の際に行うラインキー制御手段と、を備えるようにすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP網を介して互いに通信を行うIP釦電話機等のIPネットワーク対応通信端末(以下、IP通信端末という。)に関する通信技術に係り、特に複数の交換主装置(交換用サーバともいう。)と同時に通信でき、種々のサービス機能を実行することのできるIP通信端末、通信制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構内交換機(PBX: Private Branch Exchange)あるいはボタン電話機・キーテレフォンなどの交換主装置は、専用線などを用いて接続し、その専用線上に独自のプロトコルを用いて独自の網を構成し、そのように構成された網を経由して通信を行うことでサービスを提供していた。また、IP(Internet Protocol)網が整備されてからは、交換主装置は、ITU(International Telephony Union)またはIETF(Internet Engineering Task Force)などにより提供される国際的な統一規格である、H.323、SIP(Session Initiation Protocol)、MGCP(Media Gateway Control Protocol)などに準拠してIP網を用いたネットワークサービスを提供するようになった。
【0003】
また、交換主装置としての機能を有するサーバの冗長化に対応するために、複数のサーバに登録可能なIP通信端末は存在しても、同時に複数のサーバに接続して通信可能なネットワーク対応の通信端末は無く、このため、1台の通信端末で同時に複数のサーバの端末として使い分けることはできず、使い分けを行う場合は他のサーバに登録し直すか、もしくは他のIPネットワーク対応通信端末を設置しなければならず、煩雑となり且つスペースも必要になり不便であった。
【0004】
一方、通信端末を複数のSIPサーバに登録する技術としては、特許文献1では、発信する際に優先順位の高いSIPサーバが使用できない場合は次の優先順位の高いSIPサーバを用いて発信を行うという技術が提案されている。
また、特許文献2では、交換サーバが他の交換サーバの管理しているゲートウェイを自由に利用できる電話交換システムが提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの特許文献に記載されている技術は、複数のサーバを同時に使用して通信を行うものではない。
【特許文献1】特開2006−237950号公報
【特許文献2】特開2005−333440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のかかる事情に鑑みてなされたものであり、1台のIP通信端末に複数の交換主装置を同時登録して、使用者に対して種々のサービスを提供でき、利便性を向上させることのできるIP通信端末、通信制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係わるIP通信端末は、複数の交換主装置にIP網を介して接続されるIP通信端末であって、複数の交換主装置と通信する際に使用するポートを可変にして登録する主装置登録手段と、発信する際に主装置登録手段によって登録されている複数の交換主装置のうち、使用する一の交換主装置を選択して発信する発信制御手段と、着信の際にどの交換主装置からの着信かを判定して着信処理を行う着信制御手段と、ラインキーに割り付けられた複数の交換主装置に対するボタンのランプ制御を実行するラインキー制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、IP通信端末側で各交換主装置と接続する際のポートを可変にするので、同時に複数の交換主装置と接続することができる。なお、交換主装置側は同じポートを用いることによって交換主装置側の交換機能に修正を加えることなく各IP通信端末と接続することができる。このため既存の交換主装置を用いたシステムで容易にIP通信端末の付加サービスの提供が可能となる。
【0009】
好ましくは、着信制御手段は、接続する複数の交換主装置に優先順位を設け、同時着信の際に優先順位の高い交換主装置からの着信を優先するように構成する。
本発明によれば、優先順位に従って複数の交換主装置から同時着信があった場合に自動的に優先度の高いものからの着信を受け付け、優先度の低い着信に対しては該当のランプに着信を知らせる、またはビジー音を聴取させるなどのサービスを提供することができる。更には、ランプに着信した場合は現在の通話を保留し新たな着信に応答するなどのサービスを提供することができる。
【0010】
更に好ましくは、着信制御手段は、通話中に他の交換主装置からの着信があった場合に、通話中状態を他の交換主装置に通知し、他の交換主装置からの状態通知に従ってラインキーに着信表示を行うに構成する。
本発明によれば、通話中の他の交換主装置からの着信時にランプ表示により着信を受け付けることができるので、通話中の呼を保留し新たな呼に応答するなどのサービスを提供することができる。
【0011】
なお、発信時においても優先順位の高い交換主装置を通して発信先のIP通信端末との通信要求を行い、既に当該交換主装置と発信先のIP通信端末とが接続中の場合は、次に優先順位の高い交換主装置を介して当該発信先のIP通信端末との通信要求を行うようにすると良い。これによって、発信元のIP通信端末は、発信先のIP通話端末への着信を知らせることができ、また発信先の通話状態を常に取得することができる。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係わる通信制御方法は、複数の交換主装置と、各交換主装置とIP網を介して接続するIP通信端末との通信制御方法であって、IP通信端末では、複数の交換主装置と通信する際に使用するポートを交換主装置ごとに変えて登録し、該登録したポートを用いて各交換主装置と通信を行い、発信する際には登録されている複数の交換主装置のうち、使用する一の交換主装置を選択して発信し、着信の際にはポートをもとにどの交換主装置からの着信かを判定して着信処理を行い、ラインキーに割り付けられた複数の交換主装置に対するボタンのランプ制御を実行し、通信中に他の交換主装置からの着信があった場合はユーザによって指定された通知情報を他の交換主装置へ送信し、他の交換主装置では、IP通信端末から送信されてきた通知情報を発信元のIP通信端末へ転送することを特徴とする。
【0013】
本発明では、異なるポートを用いて複数の交換主装置と接続し、通話中に他のIP通信端末から着信があった場合は、発信元のIP通信端末の電話番号等の情報を取得すると共にボタンに対応して予め設定された通知情報を、当該ボタンの押下によって発信元のIP通信端末へ送信する。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係わるIP通信プログラムは、IP網を介して複数の交換主装置と通信するIP通信端末上で動作するプログラムであって、複数の交換主装置と通信する際に使用するポートを可変にして登録する主装置登録処理と、発信する際に主装置登録処理によって登録されている複数の交換主装置のうち、使用する一の交換主装置を選択して発信する発信制御処理と、着信の際にどの交換主装置からの着信かを判定して着信処理を行う着信制御処理と、ラインキーに割り付けられた複数の交換主装置に対するボタンのランプ制御を実行するラインキー制御処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、IP網上に存在するIP対応交換主装置対応のIP通信端末として同時に複数の交換主装置を介した発着信が可能となるので、机上に複数の通信端末を置くために必要な場所を節約することができる。更に同時に複数の交換主装置からの着信や、通話中時の着信に対応することが可能であるため、2台の通信端末を置いて対応する場合には不可能であるラインボタン押下による自動保留で通話相手を替えたりするようなサービスを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態によるIP通信端末を含む通信システム全体の概略構成図である。本実施の形態によるIP通信端末1は、IP網3を介して複数のIP対応交換主装置(以下、「交換主装置」という。)2に接続されている。交換主装置2は、例えばSIPサーバであったり、H.323、MGCPをサポートするサーバであっても良い。交換主装置2はIP網3と音声通信及びデータ通信を行う送受信部21、交換制御を行う制御部221を含む中央演算処理部22、全ての音声の通り道であるHWY23、外部接続先の一つであるIPネットワークとのインターフェースであるIPトランク24及び既存のアナログの交換網4とのインターフェースである局線トランク25より構成されている。
【0017】
図2に、本発明の実施の形態によるIP通信端末1の機能ブロック図を示す。図2において、IP通信端末1は、IP網3を介して交換主装置2と相互に通信可能に構成されている。ここで、交換主装置2は、SOHO、小さな会社から日本中に拠点が存在するような大会社などに電話サービスを提供し、運営を行っている会社、または電話サービス事業者など、もしくは会社独自で管理、運営される。
【0018】
IP通信端末1は、IP網3を介してデータの送受信を行うための送受信部11、送受信部11から受け取ったデータの処理、およびその他の種々の処理を行う中央演算処理部12、データを記憶するための記憶部14、および、中央演算処理部12との間でデータの入出力などに操作を行う操作部15と内部データなど表示を行う表示部16から構成されている。操作部15と表示部16はマンマシンインターフェースの機能を有する部分である。送受信部11は通信プロトコルの機能を有する部分である。
【0019】
送受信部11は、更に音声の送受信インターフェースである音声インターフェース111、音声呼などの制御を行う呼制御用のパケットのインターフェースを有する呼制御インターフェース112から構成されている。
【0020】
さらに、中央演算処理部12は、操作部15あるいは表示部16とデータの受け渡しを行う入出力制御部121、音声の送受信の制御を行う音声制御部122、呼制御を司る呼制御部123、送受信部11との間でデータの受け渡しを行う送受信処理手段124、接続する交換主装置2に対して空ポート検索し、検索したポートを通信に使用するために登録する活性化手段125、IP通信端末1が有するラインキーのLEDにどの交換主装置2を登録するかを決定するラインキー・LED登録手段126、および、使用する交換主装置2を登録する主装置登録手段127から構成されている。
【0021】
また、呼制御部123はその内部に、ラインキーを押下した場合または受話器をあげた場合に起動する発信制御手段130、IP網3を経由して着信が有った場合に着信の制御を行う着信制御手段131、ラインキー、各種ボタンが押下されたときにボタンの制御を行うラインキー・LED制御手段132を有している。中央演算処理部12の各手段121〜133はCPUの機能としてプログラムによって実現可能である。
【0022】
図3は、IP通信端末1が接続する交換主装置2に対して優先順位を設けて登録しているシステム登録DB141のデータ構成図である。システム登録DB141には、複数の登録される交換主装置2のID番号と、図中Main、Sub番号で表現されている優先順位が格納され、更に各々の交換主装置2に対して、主装置名、ドメイン名及びIPアドレスなどが登録されるように構成されている。
【0023】
図4は、接続する交換主装置2に対して使用するポートの情報を格納するポート登録DB142のデータ構成図である。接続先の交換主装置2のID番号と使用するポートの番号が1対1で格納されている。
【0024】
図5は、ラインキー対応に登録される交換主装置2を登録するLED登録DB143のデータ構成例を示している。LEDのID番号と登録される交換主装置2のID番号が1対1に関連付けられている。
【0025】
図6は、ラインキー毎に登録される交換主装置2とそのラインキー種別を登録するラインキー登録DB144のデータ構成図である。ラインキーは、ID番号をそれぞれ有し、そのID番号ごとに接続する交換主装置2のID及びラインキー種別が登録されている。
【0026】
図7は、交換主装置2とIP通信端末1が呼制御、ライン制御、ランプ制御などの制御信号として使用するメッセージを登録するメッセージ登録DB145のデータ構成例を示す。メッセージ毎に、メッセージID、メッセージ名及びメッセージの内容詳細が登録されている。本実施の形態ではメッセージの内容詳細も格納しているがメッセージ内容詳細は特に必要ではなく、メッセージによるイベントが発生した際にどのようなイベントであるのかを判断する規定として参照するためのテーブルとして用いるようにしても良い。
【0027】
以上は、記憶部内に格納される内部データ及びデータベースについて記載したが、次に各手段(機能)について以下に説明する。図8及び図9は、使用する交換主装置2を登録する主装置登録手段127が行う「主装置登録ルーチン」の動作の処理手順を示すフローチャート及び登録画面の例である。画面情報はIP通信端末1の表示部16に出力される。
【0028】
「主装置登録ルーチン」は起動するとまず、システム登録DB141より現在のデータを取得し(S81)、画面に出力する(S82)。そして、入力者の入力(S83)に従い分岐処理を実行する(S84)。入力内容が「決定」の場合、システム登録DB141に選択内容を登録する(S85)。入力内容が「カーソルキー」の場合、指定の方向にカーソルを動かす(S86)。入力内容が「終了」の場合、元の画面に戻り(S87)、終了画面をLCDに表示し処理を終了する(S88)。LCDの画面は、画面枠F91内に、カーソルキーF92と交換主装置2の選択内容F93が表示されており、カーソルキーF92で交換主装置を選択することによって優先順位と共に登録される。
【0029】
図10、図11及び図12は、使用する交換主装置2を登録するラインキー・LED登録手段126が行う「ラインキー・LED登録ルーチン」の動作の処理手順を示すフローチャート及び登録画面の例である。画面情報はIP通信端末1の表示部16に出力される。
【0030】
「ラインキー・LED登録ルーチン」は起動するとまず、LED登録DB及びラインキー登録DB142より現在のデータを取得し(S101)、画面に出力する(S102)。入力者の入力(S103)に従い分岐する(S104)。入力内容が「決定」の場合、LED登録DB143及びラインキー登録DB144に選択内容を登録(S105)。入力内容が「カーソルキー」の場合、指定の方向にカーソルを動かす(S106)。入力内容が「終了」の場合、元の画面に戻り(S107)、終了画面をLCDに表示し処理を終了する(S108)。LCDの画面は、図9に示す主装置登録画面例と同様であり、画面枠F91内に、カーソルキーF111にて交換主装置2の選択内容F112が表示されている。
【0031】
図13、図14及び図15は、使用する交換主装置2を検索し、ポートの調査を行い、接続する交換主装置2に対するポートを登録する活性化手段125が行う「活性化ルーチン」の動作の処理手順を示すフローチャート、ポートの検索を行うサブルーチンである「ポート検索ルーチン」及びその時のシーケンスチャートの例である。
【0032】
「活性化ルーチン」は電源ON(S131)にて起動するとまず、接続する交換主装置2が存在するかどうかをシステム登録DB141を検索して判定する(S132)。交換主装置2が登録されている場合は、ポートの空塞状況を調査するため「ポート検索処理ルーチン」を起動する(S133)。ポートが見つかった場合は、該当の交換主装置2に同ポートを用いて接続する(S134)。ステップS133及びステップS134のステップをシステム登録DB141に登録されている交換主装置2の数だけ行い(S135)、ステップS136へ進む。
【0033】
次に、接続されている交換主装置2の数の表示データを取得し(S136〜S138)、接続されている交換主装置2の表示をLCDに対して行い(S139)処理を終了する。図14,図15において、「ポート検索処理ルーチン」は、ポート番号1025から65535の間(S141a,S141b)、ポートに空きがあるかを検索(S142、ステップS151a,S151b)し、セッションが確立し(S152a,S152b)、空きが見つかったポート番号を選択し出力(S143)し、該ポート番号を用いて対応する交換主装置2にIP通信端末1のIPの登録要求を行う(S153a,S153b)。その後、対応する交換主装置2からIP登録完了メッセージを受信した(S154a,S154b)後に交換主装置2間で登録完了状態となり(S155a,S155b)、次に対応する交換主装置2側からランプ・LCD情報メッセージを受信することで処理を終了する(S156a,S156b)。
【0034】
図16は、発信制御手段130が行う発信から通話までのシーケンスチャートの例である。使用者がラインキーを押下したり、受話器を上げたりすることでIP通信端末1は、「キー情報通知」メッセージを対向の交換主装置2に送信する(S161)。交換主装置2は、「キー情報通知」メッセージより「端末のキー押下と解放を通知」の中のキー押下と認識する。交換主装置2は次にIP通信端末1に対してリンガーを送出するように「鳴動形態表示」メッセージを送信する(S162)。
【0035】
次に交換主装置2は、呼状態に変化があったため、「呼状態通知」メッセージをIP通信端末1に通知する(S163)。IP通信端末1は「呼状態通知」の受信によりダイヤルトーンの聴取などの制御を行うことができる。更に、ユーザが数字ボタンを押下すると、「キー情報通知」メッセージを交換主装置2に送信する(S164)。全ての番号を受信した後に交換主装置2は「鳴動形態表示」をIP通信端末1に送信する(S165)ことでIP通信端末1はリングバックトーンなどをユーザに聴取させる。
【0036】
次に、着信側の交換主装置2に通信端末が応答することで呼状態に変化があると、交換主装置2は、「呼状態通知」メッセージを送信(S166)してIP通信端末1に通知し、着信側の応答により、トーンの送出を停止するなどのために「鳴動形態表示」メッセージを送出する(S167)。この際IP通信端末1側でトーンの制御などを行っている場合は、IP通信端末1がトーン制御を行う。その後、交換主装置2とIP通信端末1通話中状態に遷移する(S168)。
【0037】
図17は、発信制御手段130または着信制御手段131が行う通話中(S171)からの切断シーケンスチャートの例である。通話中からIP通信端末1のユーザが受話器を置いたもしくはキー押下により呼を切断した場合、IP通信端末1は「キー情報通知」メッセージを交換主装置2に送信する(ステップ172)。
【0038】
「キー情報通知」メッセージにより切断を認識した交換主装置2は、切断状態に呼状態を変更し、IP通信端末1に状態変更の通知を行うために「呼状態通知」メッセージを送信し(S173)、端末内部の通話路スイッチを制御するために「通話路情報」メッセージをIP通信端末に送信する(S174)。「呼状態通知」、「通話路情報」メッセージを受信したIP通信端末1は通話路の制御やLCDの制御などを行い、空状態に遷移する。
【0039】
図18は、着信制御手段131が行う通常の着信における動作のシーケンスチャートの例である。交換主装置2の他の通信端末が本IP通信端末1へ発信した場合、交換主装置2は、IP通信端末1に「鳴動形態表示」メッセージを送信することで着信を通知する(S181)。更に「ランプ・LCD情報」メッセージを送信することでIP通信端末1の対応するランプ及びLCDの表示及びリンガー鳴動などにて着信が有っていることを端末のユーザに知らせる(S182)。
【0040】
IP通信端末1のユーザが受話器を上げて応答するもしくは対応するラインキーを押下することによって応答すると、IP通信端末1は「キー情報通知」メッセージを交換主装置2に送信することによって応答したことを交換主装置2に通知し(S183)、「鳴動形態表示」メッセージを送信することによって(S184)、リンガー停止などの情報を通知し、「呼状態表示」メッセージの送信にて(S185)、IP通信端末1が通話中状態に遷移したことを交換主装置2に通知する(S186)。
【0041】
図19及び図20は、IP通信端末1が通話中状態の時に着信が有った場合の着信制御部131が行う処理のシーケンスチャートの例及びラインキーの表示例である。本実施形態では、図20において、ラインキーの枠(F201)の上部一列(F202)は図19に記載の交換主装置Aに割り付けているラインキーであり、6つのラインキー(F205)が登録されている。下部一列(F203)は図19に記載の交換主装置Bに割り付けているラインキーであり、同様に6つのラインキー(F206)が登録されている。
【0042】
上記構成において、交換主装置AがIP通信端末1と通話中の場合、該当のラインキー(F205)が例えば緑色点灯している。IP通信端末1が通話中状態(S191a)の時に、別の交換主装置Bより着信が有った場合に、IP通信端末1は現在通話中であることを「通話状態通知」メッセージを発信側の交換主装置Bに通知する(S191b)。
【0043】
交換主装置Bは、着信が有っていることを通知するために「鳴動形態表示」メッセージをIP通信端末1に送信する(S192b)。この通知によりIP通信端末1は交換主装置Bの対応するラインキー(F206)を赤色点滅させる。さらに交換主装置Bは、ステップS193bにおいて、「ランプ・LCD情報」メッセージを送信することで着信させたいIP通信端末1のランプもしくはLCDに表示を促す。ユーザは、ランプやLCDの状態により通話中に着信があったことを認識することができる。
【0044】
図21及び図22は、IP通信端末1に対して交換主装置A及び交換主装置Bから同時に着信がある場合に着信制御部131が行う処理のフローチャート及びシーケンスチャートの例である。本実施の形態の場合は、交換主装置AがシステムDB141内で最優先順位を有するものとする。図21及び図22を用いて同時着信が発生した場合について以下に説明する。
【0045】
同時着信が発生した場合、両交換主装置A、Bは、IP通信端末1に対して着信を知らせる「鳴動形態表示」メッセージを同時に送信し(S221a,S221b)、更に着信IP通信端末1のランプ制御及びLCD制御を行うためにIP「ランプ・LCD情報」メッセージを同時に送信する(S222a,S222b)。同時に「鳴動形態表示」メッセージを受信(S211)したIP通信端末1は、発信元が最優先であるメインシステムかどうかを判定し(S212)、発信元交換主装置がメインシステムでない場合は(S212,S215)、着信ユーザが応答した時にオフフックを通知するための「通話状態通知」メッセージを交換主装置Bに送信して(S217,S223b)処理を終了する。
【0046】
発信元交換主装置がメインシステムであると判断(S212)した場合IP通信端末1は、着信鳴音を行い(S213)、ユーザの釦押下(応答)操作(S214)により、「キー情報通知」メッセージをメインシステムである交換主装置Aに通知する(S223a)。交換主装置Aは「キー情報通知」メッセージ受信により、「鳴動形態表示」メッセージをIP通信端末1に送信して応答後に行うべき動作を指定し(S224a)、IP通信端末1は、発信元交換主装置がメインシステムの場合は(S215)、「鳴動形態表示」メッセージ受信により、「呼状態通知」メッセージにて着側ユーザが応答し通話状態に入ることを交換主装置Aに通知し(S216,S225a)、通話状態になる(S226a)。
【0047】
図23は、交換主装置2とIP通信端末1がIP網3にて通信する場合に使用するポートの使用方法を示している。交換主装置であるシステムA(F231)及びシステムB(F232)とIP通信端末1(F233)間の通信は、システムA(F231)側はポートが50000番ポートで、IP通信端末F233側は2000番ポートであり、システムB(F232)側はポートが50000番ポートで、IP通信端末F233側は1567番ポートを用いて通信を行うことを示している。前記2000番ポート及び1567番ポートは前記活性化手段126が起動するポート検索ルーチンにて取得するものである。
【0048】
図24は、交換主装置2とIP通信端末1が行う、ランプ・LED制御の動作を説明するものである。例えば、交換主装置F241が、IP通信端末F242と通信を行う場合に、IP通信端末F242にて、ユーザが押下したラインキー8がどの交換主装置であるかを内部のデータであるシステム登録DB141を判定して決定し、押下されたラインキーは、ラインキー登録DB144を検索してキー種別LK2を取得することを示している(F244、F246)。
また、交換主装置F241からのランプに関するメッセージであるLK2を受信したIP通信端末F242は、同様にラインキー登録DB144を検索することでラインキーの8番を点灯させることが分かる(F243、F245)。
【0049】
図25は、IP通信端末1にてユーザが押下したキーシステムに通知する「キー通知ルーチン」のフローチャートの例である。オフフック後に(S251)、ユーザが押下したキーは、図示していない変換テーブルを参照することで取得し(S252)、システム(交換主装置)に取得したキーの通知を行う(S253)。
【0050】
図26は、IP通信端末1が接続する複数の交換主装置2の優先順位を切り替える「システム切替ルーチン」の動作のフローチャートの例である。
【0051】
ユーザがIP通信端末1の特殊なキー、もしくは予めを決められたキーを押下することによって優先順位の変更を行う(S261)。次にIP通信端末1内のシステム登録DB141内のデータを更新する(S262)。次に、IP通信端末1に接続している全ての交換主装置2に対して画面表示させるためのLCDデータを検索する(S263a,S263b)。この時、メインシステム(優先順位が1番目)の場合のみLCDデータを表示し(S264,S265)、処理を終了する。
本発明の実施の形態によるIP通信端末は以上のように構成され動作する。
【0052】
本発明によれば、複数の交換主装置に収容される1端末として本IP通信端末を動作させることができるため、机上での確保場所も節約でき、通信中の着信、同時着信も一方の着信を切断することなく保留することも可能となり、更に保留した回線に対しサービスを行うこともできる。
【0053】
次に本実施の形態によるIP通信システムの適用例を説明する。図27は、マルチ秘書代行システムのシステム構成図である。マルチ秘書代行を行う経営者の家(秘書)F274と、秘書代行を行う事務所A、B、CであるF271、F272及びF273がIP網3を経由して互いに接続されている。各事務所等F271〜274にはIP通信端末1が設置されており、IP網3に接続されている図示しない交換主装置2を介して通話可能になっている。本マルチ秘書代行システムでは、事務所A、B、Cへの電話を秘書F274のIP通信端末1のラインキーに割付ける。
【0054】
これにより、1台のIP通信端末1によって複数の会社の着信代行が可能となり、通話中であっても着信すなわち端末接続させ、通話状態を通知したり、ボタン操作で予めボタンに割り付けられた情報を発信させることによって必要な情報を相手側へ送信することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
交換主装置の端末としての利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態によるIP通信システムの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態によるIP通信端末の機能ブロック図である。
【図3】図2のシステム登録DBのデータ構成図である。
【図4】図2のポート登録DBのデータ構成図である。
【図5】図2のLED登録DBのデータ構成図である。
【図6】図2のラインキー登録DBのデータ構成図である。
【図7】図2のメッセージ登録DBのデータ構成図である。
【図8】図2の主装置登録手段が行う主装置の選択・登録処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態による主装置登録画面の説明図である。
【図10】図2のラインキー・LED登録手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態によるラインキー・LED登録画面例(その1)である。
【図12】本発明の実施の形態によるラインキー・LED登録画面例(その2)である。
【図13】図2の活性化手段の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】図2の活性化手段が起動するポート検索処理ルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
【図15】図2の活性化手段が行う処理のシーケンスチャートである。
【図16】図2の発信制御手段が行う処理のシーケンスチャートである。
【図17】図2の発信制御手段及び着信制御手段が行う切断の際の処理のシーケンスチャートである。
【図18】図2の着信制御手段が行う着信時のシーケンスチャートである。
【図19】図2の着信制御手段が行う通話中での着信時のシーケンスチャートである。
【図20】本発明の実施の形態における発着信時のラインキーの状態を示す説明図である。
【図21】図2の着信制御手段が行う着信時の処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図22】図2の着信手段が行う同時着信の場合のシーケンスチャートである。
【図23】本発明の実施の形態におけるポートの使用状況を示す説明図である。
【図24】本発明の実施の形態におけるラインキーの制御の説明図である。
【図25】本発明の実施の形態によるキー通知の処理手順を示すフローチャートである。
【図26】本発明の実施の形態によるシステムの切り替えの処理手順を示すフローチャートである。
【図27】本発明の実施の形態によるIP通信システムを適用したサービス例としてのマルチ秘書代行システムの構成図である。
【符号の説明】
【0057】
1 IP通信端末
2 IP対応交換主装置
3 IP網
11 送受信部
12 中央演算処理部
14 記憶部
15 操作部
16 表示部
111 音声インターフェース
112 呼制御インターフェース
121 入出力制御部
122 音声制御部
123 呼制御部
124 送受信処理手段
125 活性化手段
126 ラインキー・LED登録手段
127 主装置登録手段
130 発信制御手段
131 着信制御手段
132 ラインキー・LED制御手段(ラインキー制御手段)
141 システム登録データベース(DB)
142 ポート登録データベース(DB)
143 LED登録データベース(DB)
144 ラインキー登録データベース(DB)
145 メッセージ登録データベース(DB)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の交換主装置にIP網を介して接続されるIP通信端末であって、
前記複数の交換主装置と通信する際に使用するポートを可変にして登録する主装置登録手段と、
発信する際に前記主装置登録手段によって登録されている複数の交換主装置のうち、使用する一の交換主装置を選択して発信する発信制御手段と、
着信の際にどの交換主装置からの着信かを判定して着信処理を行う着信制御手段と、
ラインキーに割り付けられた複数の交換主装置に対するボタンのランプ制御を実行するラインキー制御手段と、
を備えたことを特徴とするIP通信端末。
【請求項2】
前記着信制御手段は、接続する複数の交換主装置に優先順位を割り付け、同時着信の際に優先順位の高い交換主装置からの着信を優先することを特徴とする請求項1に記載のIP通信端末。
【請求項3】
前記着信制御手段は、通話中に他の交換主装置からの着信があった場合に、通話中状態を前記他の交換主装置に通知すると共に、前記他の交換主装置からの状態通知に従ってラインキーに着信表示を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のIP通信端末。
【請求項4】
複数の交換主装置と、各交換主装置とIP網を介して接続するIP通信端末との通信制御方法であって、
前記IP通信端末では、複数の交換主装置と通信する際に使用するポートを交換主装置ごとに変えて登録し、該登録したポートを用いて各交換主装置と通信を行い、発信する際には登録されている複数の交換主装置のうち、使用する一の交換主装置を選択して発信し、着信の際にはポートをもとにどの交換主装置からの着信かを判定して着信処理を行い、ラインキーに割り付けられた複数の交換主装置に対するボタンのランプ制御を実行し、通信中に他の交換主装置からの着信があった場合はユーザによって指定された通知情報を前記他の交換主装置へ送信し、
前記他の交換主装置では、前記IP通信端末から送信されてきた前記通知情報を発信元のIP通信端末へ転送することを特徴とする通信制御方法。
【請求項5】
IP網を介して複数の交換主装置と通信するIP通信端末上で動作するプログラムであって、
前記複数の交換主装置と通信する際に使用するポートを可変にして登録する主装置登録処理と、
発信する際に前記主装置登録処理によって登録されている複数の交換主装置のうち、使用する一の交換主装置を選択して発信する発信制御処理と、
着信の際にどの交換主装置からの着信かを判定して着信処理を行う着信制御処理と、
ラインキーに割り付けられた複数の交換主装置に対するボタンのランプ制御を実行するラインキー制御処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするIP通信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−239843(P2009−239843A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86633(P2008−86633)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】