説明

IP電話中継装置およびIP電話中継方法

【課題】プライベート網内の複数のIP電話端末のセッションを、中継装置のグローバル側の1つのポートに集約すること。
【解決手段】プライベート網内に存在する複数のIP電話端末から送信される登録情報を終端し管理するUAC管理手段と、グローバル網側に存在する呼制御管理装置に対して新たに自己の通信装置の登録情報を送信する登録情報送信手段と、グローバル網とプライベート網間のIP電話通信に関して、その発着信に際し宛先情報を相互変換する宛先情報編集手段と、を備えるようにすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グローバル網に接続されているIP電話端末とプライベート網(プライベートIPを使用する企業内、家庭内ネットワークなど)に接続されているIP電話端末を相互通話可能とする通信技術に係り、特にプライベート網内のIP電話端末からの登録情報を終端し、グローバル網内のIP電話端末との通信制御信号のやり取りを行うパケット内のヘッダ情報などを相互変換することのできるIP電話中継装置およびIP電話中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットプロバイダによるIP電話サービスが普及している。通常、IP電話装置を設置する場合、インターネットアクセス回線に直接収容するのではなく、ゲートウェイ装置配下に設置される。そのため、プライベート網にあるIP電話装置は、グローバル網のIP電話キャリアに接続する場合、ゲートウェイ装置にSIP−ALG等のNATトラバーサル機能を具備しなければならない。
【0003】
従来のIP電話中継装置(SIP−ALG)の例を図2に示す。この図において、IP電話端末2であるUAC#1〜UAC#3はプライベートIPアドレスを有し、SIP−ALG1xは、プライベート網4とグローバル網5を中継する位置に存在し、UAS(User Agent Server)であるSIPサーバ(呼制御管理装置)3はグローバル網に存在する。
SIP−ALG1xは、呼制御SIPセッションのNAT(Network Address Translation)変換が目的であり、プライベート網のIP電話端末2のコンポーネントであるUAC(User Agent Client)のSIPセッションS21、S22、S23のIPアドレス、ポート番号の変更を行うのみである。図2は、プライベート網にある複数のIP電話端末2のUACとグローバル網側に存在するSIPサーバ3のSIPセッションの関係を示している。なお上記内容は、非特許文献1及び非特許文献2に記載されている。
【非特許文献1】「Best Current Practices for NAT Traversal for SIP draft-ietf-sipping-nat-scenarios-05」、IETF
【非特許文献2】「RFC3261 ” SIP : Session Initiation Protocol ”」、IETF
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上術の従来の技術は、プライベート側に存在するIP電話端末2からのSIPメッセージはSIP−ALG1xで終端することはなく、NAT変換によるヘッダ情報編集、SIP−ALG1xによるペイロードに含まれるアドレス情報の編集を行って外部グローバル網の宛先に届くことになる。
しかしながら、この方法では、SIP−ALG1xがグローバル網側で相手先IP電話端末と通信するポートはプライベート網内のIP電話端末ごとに異なる値となってしまい管理が煩雑となる。また、プライベート網に繋がっている装置の情報をグローバル網に積極的に送信することはセキュリティ上好ましくない。
【0005】
本発明は、上述のかかる事情に鑑みてなされたものであり、プライベート網内のIP電話端末をSIP−ALGのような中継装置を介してグローバル網側のIP電話端末と接続する際に、ポートの制約を無くして効率的に管理することができ、セキュリティに優れ、また、プライベート網内の複数のIP電話装置をグローバル網にあるSIPサーバに、あたかも1台だけに見せる事ができるため、1つのアクセス回線で1つのUACしか接続を許容しないIP電話キャリアのSIPサーバと接続することができるIP電話中継装置およびIP電話中継方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係わるIP電話中継装置は、グローバル網に接続されているグローバル側IP電話端末および発着信時の呼制御処理を実行する呼制御管理装置と、プライベート網に接続されている複数のプライベート側IP電話端末との間に介在し、IPアドレスやポート番号の変換処理を行ってグローバル側IP電話端末と各プライベート側IP電話端末との間で通信の中継を行うIP電話中継装置であって、各プライベート側IP電話端末から送られてくる端末ID、該端末のプライベートIPアドレスおよびポート番号を含む登録情報を終端し、該登録情報と自己のグローバルIPアドレスおよびポート番号をそれぞれ対応付けてUAC登録・変換テーブルに登録するUAC管理手段と、該UAC管理手段の動作とは独立して新たに呼制御管理装置に対して自己のグローバルIPアドレスおよびポート番号を含む登録情報を送信する登録情報送信手段と、発着信に際し呼制御管理装置との間で呼制御処理を実行すると共に、UAC登録・変換テーブルを参照して、夫々対応付けられたプライベートIPアドレスとグローバルIPアドレス、および、夫々のポート番号の変換処理を実行して、プライベート側IPアドレスとの間で呼制御処理を実行することで、各プライベート側IP電話端末とグローバル側IP電話端末との相互通信を可能とする呼制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明では、プライベート側IP電話端末の端末ID、該端末のプライベートIPアドレスおよびポート番号を含む登録情報と、自己のグローバルIPアドレスおよびポート番号をそれぞれ対応付けて保存するUAC登録・変換テーブルを設け、このテーブルを用いて、グローバル網側とプライベート網側の通信の中継処理を実行する。
これにより、プライベートIP電話端末は、直接外部のグローバル網に存在するSIPサーバなどの呼制御管理装置と通信することなくIP電話中継装置が一旦プライベート網内の全てIP電話端末の通信制御を終端するので、プライベート網側のIP電話端末を1つのUACとして見せることができる。
【0008】
好ましくは、登録情報送信手段は、各プライベートIP電話端末の端末IDを呼制御管理装置へ送信し、呼制御手段は、呼制御管理装置から端末IDを指定して送られてくる接続要求を受信したとき、UAC登録・変換テーブルを参照して、該端末IDのプライベートIPアドレスおよびポート番号に対して、接続要求を送信する構成にする。
ネットワーク全体を通して、ユニークに定まる端末IDによって、プライベートIP電話端末を特定して中継処理を行うことができる。
【0009】
また、UAC管理手段は、複数のプライベート側IP電話端末を1つのグループとして登録し、呼制御手段は、呼制御管理装置からの着信に際し、該グループ内の各プライベート側IP電話端末に対して、一斉に、又は、予め定められた所定の順序で順に接続要求を送信し、応答のあった一のプライベート側電話端末との間で呼制御手順を進めるという構成も好ましい。
【0010】
この構成によれば、各プライベートIP電話端末の端末IDを呼制御管理装置へ送信する必要がなく、従来の呼制御管理装置の機能をそのまま利用することができる。
また、本発明に係わるIP電話中継方法は、グローバル網に接続されているグローバル側IP電話端末および発着信時の呼制御処理を実行する呼制御管理装置と、プライベート網に接続されている複数のプライベート側IP電話端末との間に、IPアドレスやポート番号の変換処理を行うIP電話中継装置を設けて、グローバル側IP電話端末と複数のプライベート側IP電話端末の夫々との間で通信の中継を行うIP電話中継方法であって、IP電話中継装置には、プライベート側IP電話端末の端末ID、該端末のプライベートIPアドレスおよびポート番号を含む登録情報を自己のグローバルIPアドレスおよびポート番号とそれぞれ対応付けて保存するUAC登録・変換テーブルを設け、呼制御管理装置には、グローバルIP電話端末およびIP電話中継装置を区別することなくグローバルIP電話端末として、夫々の端末IDおよびグローバルIPアドレスを含む登録情報を保存するUAS内UAC登録テーブルを設け、呼制御管理装置は、あるIP電話端末から相手先の端末IDを含む接続要求を受信したときは、UAS内UAC登録テーブル内に相手先の端末IDが登録されているか否かを判定し、登録されていない場合は、一斉に、又は、予め定められた所定の順序で順にUAS内UAC登録テーブルに登録されているIP電話端末に対して相手先の端末IDを含む接続要求を送信し、IP電話中継装置は、呼制御管理装置から送られてくる接続要求を受信したときは、UAC登録・変換テーブルを参照して、相手先の端末IDのプライベート側IP電話端末が存在するか否かを判定し、存在する場合は、当該プライベート側IP電話端末へ接続要求を送信し、その後、該プライベート側IP電話端末からの応答信号を受信した場合は、呼制御管理装置へ応答信号を送信することを特徴とする。
【0011】
本発明では、呼制御管理装置に、グローバルIP電話端末およびIP電話中継装置を区別することなくグローバルIP電話端末として登録・管理する。そして、あるIP電話端末から相手先の端末IDを含む接続要求を受信したときは、その相手先の端末IDが登録されているか否かを調べて登録されていない場合は、一斉に、又は、予め定められた所定の順序で順に登録されているIP電話端末に対して接続要求を送信する。これにより、接続要求先のIP電話端末がIP電話中継装置の場合は、応答信号が返送されるため、着信呼の接続が可能となる。
【0012】
なお、呼制御管理装置では、接続要求の送信後、いずれかのグローバルIP電話端末から応答信号を受信したときは、UAS内UAC登録テーブルの該応答信号の送信元のグローバルIP電話端末の端末IDと送信先の端末IDとを関連付けて保存することによって、次回以降、同じ相手先に対しては、直ちにそのグローバルIP電話端末(実体はIP電話中継装置)に対して、接続要求を送信することができる。また、この構成によって予め全ての端末IDを呼制御管理装置へ登録する手間を省くことができる。
【0013】
また、本発明に係わるIP電話中継方法は、グローバル網に接続されているグローバル側IP電話端末および発着信時の呼制御処理を実行する呼制御管理装置と、プライベート網に接続されている複数のプライベート側IP電話端末との間に、IPアドレスやポート番号の変換処理を行うIP電話中継装置を設けて、グローバル側IP電話端末と複数のプライベート側IP電話端末の夫々との間で通信の中継を行うIP電話中継方法であって、IP電話中継装置には、プライベート側IP電話端末の端末ID、該端末のプライベートIPアドレスおよびポート番号を含む登録情報を自己のグローバルIPアドレスおよびポート番号とそれぞれ対応付けて保存するUAC登録・変換テーブルを設け、呼制御管理装置には、IP電話端末か、IP電話中継装置かを区別して夫々の端末もしくは中継装置の識別情報およびグローバルIPアドレスを含む登録情報を保存するUAS内UAC登録テーブルを設け、呼制御管理装置は、あるIP電話端末から相手先の端末IDを含む接続要求を受信したときは、UAS内UAC登録テーブル内に相手先の端末IDが登録されているか否かを判定し、登録されていない場合は、一斉に、又は、予め定められた所定の順序で順にUAS内UAC登録テーブルに登録されているIP電話中継装置に対して相手先の端末IDを含む接続要求を送信し、IP電話中継装置は、呼制御管理装置から送られてくる接続要求を受信したときは、UAC登録・変換テーブルを参照して、相手先の端末IDのプライベート側IP電話端末が存在するか否かを判定し、存在する場合は、当該プライベート側IP電話端末へ接続要求を送信し、その後、該プライベート側IP電話端末からの応答信号を受信した場合は、呼制御管理装置へ応答信号を送信し、呼制御管理装置は、接続要求の送信後、IP電話中継装置から応答信号を受信した場合は、UAS内UAC登録テーブルの当該IP電話中継装置の識別情報と相手先の端末IDとを関連付けて保存することを特徴とする。
【0014】
本発明では、呼制御管理装置において、接続先がIP電話中継装置かIP電話端末かを区別して登録し、未登録の端末IDを相手先とした接続要求については、IP電話中継装置に対して接続要求を送信し、応答信号を返送してきたIP電話中継装置の識別情報(ID)と相手先の端末IDを関連付けて保存する。IP電話中継装置に対して、直ちに接続要求を送信することができるので呼の確立が早くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プライベート網上に存在するIP電話端末のプライベートIPアドレス等の登録処理をIP電話中継装置で終端させ、この登録処理とは独立してIP電話中継装置の呼制御管理装置への登録処理を行い、IP電話中継装置は、UAC登録・変換テーブルによって通信対象端末の対応関係を保ちながらグローバル側とプライベート側でそれぞれ呼制御手順を進めるので、プライベート網上に存在する複数のIP電話端末をグローバル網から見て一つのUACとして見せることができ種々のサービスを提供することが可能となる。また、プライベート網内に存在するUACの存在自体を隠蔽することも可能でありセキュリティが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1に、本発明の第1の実施の形態によるIP電話中継装置を含むシステムの全体構成を示す。このIP電話中継装置(以下、SIP−ALGという。)Iは、グローバル網5とプライベート網4を仲介する位置に存在する。プライベート網4側に存在するIP電話端末(以下、IP電話端末をUACという。)2は、プライベートIPアドレスを有し、グローバル網4側のUAC2はグローバルIPアドレスを有しており、SIP−ALG1は、グローバル網5側のインタフェースはグローバルIPアドレスを、プライベート網4側のインタフェースはプライベートIPアドレスをそれぞれ有している。また、グローバル網5にはSIPサーバなどの呼制御管理装置(以下、UASという。)3が存在し、グローバル網5に繋がるUAC2やSIP−ALG1との間の発着信時の呼制御処理を行う。
【0017】
次に、本実施の形態における特徴的な処理の概要を説明する。
まず、従来の構成では、図2の21に示すように各SIPセッションはグローバル網5側のポート番号はそれぞれ異なっていた。本実施の形態では、図3に示すようにプライベート網4側のUAC2(UAC#1〜UAC#3)とSIP−ALG1間でSIPセッションS31、S32、S33を完結させ、グローバル網5に存在するUAS3とはSIPセッションS34にて完結させる。
【0018】
この場合、図2の従来構成では、プライベート網4側のUAC2とのセッションごとにSIP−ALG1のグローバルIPのポートが異なっていたが、本実施の形態では一つのポート番号を使用する(31)。
図4に、本実施の形態によるSIP−ALG1の機能ブロック図を示す。図4において、プライベート網4は例えば企業のIPネットワークであり、グローバル網はインターネットなどの各サービスプロバイダが提供するIPネットワークである。
【0019】
SIP−ALG1は、プライベート網4とグローバル網5を中継する機能を有し、プライベート網4とのパケットの送受信を行うためのプライベート側送受信部11、グローバル網5とのパケットの送受信を行うためのグローバル側送受信部12、プライベート側送受信部11及びブローバル側送受信部12から受け取ったデータを用いて演算処理を実行する中央演算処理部13、データを記憶するための記憶部14、および、中央演算処理部13との間でデータの入出力などに操作を行う入力部15と内部データなど表示を行う表示部16から構成されている。入力部15と表示部16はマンマシンインタフェースの機能を有する。
【0020】
さらに、中央演算処理部13は、入力部15あるいは表示部16とデータの受け渡しを行う入出力制御手段131、プライベート側送受信部11とグローバル側送受信部12でのデータ(パケット)の送受信の制御を行う送受信制御手段132、プライベート網4側のUAC2の新規登録や変換を行うUAC管理手段133、グローバル側のSIPサーバ3と通信を行うためにSIP−ALG1のグローバル側のIP及びポート番号を送信する登録情報送信手段134、グローバル側に送信する際にプライベート網4側からのパケットの情報を編集し、また、プライベート側に送信する際にグローバル側からのパケットの情報を編集する宛先情報編集手段135、受信するSIPメッセージの情報を分析するSIPメッセージ分析手段136、プライベート網4とグローバル網5間の通信を行うために、グローバル網5側から受信されるパケット及びプライベート網4から受信されるパケット内のヘッダファイルに入力されているグローバルIPアドレス及びプライベートIPアドレスそれぞれを、送信先のプライベート網4内のUAC2のプライベートIPアドレスへ変換及びグローバルIPアドレスへ変換するNAT変換を行うSIPセッションNAT登録手段137、SIPメッセージによる通信プロトコルに従った呼制御を司る呼制御手段138、音声パケットであるRTP及びRTPを制御するためのRTCPパケットのNAT変換を行うためのRTP/RTCPセッションNAT登録手段139から構成されている。
【0021】
記憶部14には、UACの登録データを保持するUAC登録・変換テーブル141が存在する。
図5は、UAC登録・変換テーブル141のデータ構成例を示す。UAC登録・変換テーブル141は、少なくともUACの識別情報(ID)、UAC名、IPアドレス、ポート番号の4つの項目を有している。プライベート網4内に存在する全てのUAC2のデータを格納し保持する。
【0022】
以上、記憶部14内に格納される内部データ及びデータベースについて説明した。
次に中央演算処理部13の有する各手段(機能)について以下に説明する。図6は、プライベート網4内のUAC2のデータ登録・変換を行うUAC管理手段133が行う「UAC登録・変換ルーチン」の動作の処理手順を示すフローチャートの例である。
「UAC登録・変換ルーチン」は入力されたパラメータよりUAC2のIPアドレスとポート番号を取得する(S61)。本実施の形態の場合、少なくともパラメータとしては、IPアドレス及びポート番号である。次にUAC登録・変換テーブル141内に同じIPアドレスとポート番号が既に登録されているかどうか調べる(S62)。存在した場合は対応するIPアドレスとポート番号を出力して処理を終了する(S65)。存在しなかった場合は、パラメータとして入力されたIPアドレスとポート番号を新UACとしてUAC登録・変換テーブル141に登録して処理を終了する(S64)。本実施の形態では登録も同時に行っているが、UACの登録およびUACの変換は別々の処理で行うことも可能である。
【0023】
図7は、宛先情報編集手段135が行う「宛先情報編集ルーチン」の動作の処理手順を示すフローチャートの例である。本ルーチンはSIPメッセージの送受信の際にプライベート網4とグローバル網5の間で送受信されるパケットの内容を編集するときに使用されるものである。
「宛先情報編集ルーチン」はまず、入力されたパラメータよりIPアドレスとポート番号を取得する(S71)。パラメータとしては、本実施の形態ではIPアドレス及びポートである。次に取得したIPアドレスとポート番号を用いて「UAC登録・変換ルーチン」をコールすることで変換すべきIPアドレスとポート番号を得る(S72)。得たIPアドレスとポート番号を送受信するパケット内の対応する所定の場所の内容と変換して処理を終了する(S73)。実際の変換内容については図8〜図11にて説明する。
【0024】
図8を用いて、本実施の形態によるSIP−ALG1の動作シーケンスを従来例と比較して説明する。まず、従来の方法では、プライベート網4側のUACであるUAC#1及びUAC#2からの「REGSTER」メッセージは、SIP−ALG1を経てNAT変換され、グローバル網5に存在するSIPサーバであるUAS3に届き、それからUAS3からの「200 OK」がUAC#1、UAC#2にSIP−ALG1経由でNAT変換を施された上で届き登録処理が終了する。
【0025】
本実施の形態では、グローバル側のUAS3との処理手順はS81の部分で示され、SIP−ALG1が直接UAS3に対して「REGISTER(登録要求)」を送信し(S81b)、UAS3から「200 OK(正常受付)」が返信されることで直ちに処理を終了する(S82b)。一方、内部のプライベート網4では、各UAC#1、UAC#2と「REGISTER」(S81a、S83a)、「200 OK」(S82a、S84a)のメッセージの授受をそれぞれ経てUAC2とSIP−ALG1間のみで処理を完了する。つまりプライベート網4側の登録処理はSIP−ALG1で終端することになる。
【0026】
またこの時、UAC#1及びUAC#2から受信したメッセージによりUAC#1及びUAC#2の着信ID、IPアドレス及びポート番号をUAC登録・変換テーブル141内に登録する(S82)。
次に、プライベート網4側のUAC2(UAC#1もしくはUAC#2)から接続要求である「INVITE」がグローバル網5上の対向UAC#3に対して送られるとき(S85a)、「INVITE」を受信したSIP−ALG1は、UAC登録・変換テーブル141(86)を参照することでメッセージの送信元IPアドレス/送信元ポート番号がUAC#1のプライベートIPアドレス・ポート番号から、SIP−ALG1が保持するグローバルIPアドレス/ポート番号に書換えて、新たな接続要求「INVITE」メッセージを作成しSIP−ALG1に送信する(S83b)。「INVITE」を受信したSIP−ALG1は相手先が対向UAC#3と判断し、対向UAC#3に対して「INVITE」を送信する(S81c)。プライベート網4内のUAC2からグローバル網5内のUAC2への発信時は以上のように動作する(S83)。
【0027】
次にグローバル網5内のUACである対向するUAC#3からプライベート網4内のUAC#2への着信の場合は、対向UAC#3は着信IDとしてUAC#2の着信IDを含んだ「INVITE」メッセージをUAS3に対して送信する(S82c)。UAS3は着信IDより相手先がSIP−ALG1宛だということを判断しSIP−ALG1に対して「INVITE」メッセージを送信する(S84b)。SIP−ALG1は、「INVITE」の着信情報とUAC登録・変換テーブル141の情報から、当該着信IDに対応するIPアドレス/ポート番号を抽出し、「INVITE」メッセージの着信先IPアドレス/ポート番号に書き換えた後、UAC#2に対して「INVITE」メッセージを送信する(S86a)。グローバル網5内のUAC2からプライベート網4内のUAC2への着信時は以上のように動作する(S84)。
【0028】
次に図9〜図11を用いて実際のSIPメッセージの編集内容について説明する。図9は、グローバル網5内の対向UAC#3からプライベート網4内のUAC#2に着信がある場合のシーケンス例である。UAS3、SIP−ALG1、対向UAC#3はグローバル網5内に存在し、それぞれ「200.20.1.1」、「200.20.20.20」、「200.20.10.10」というグローバルIPアドレスを有しているとする。プライベート網4側には、SIP−ALG1のプライベート網側インタフェース、UAC#1、UAC#2が存在し、それぞれ「192.168.100.1」、「192.168.100.10」、「192.168.100.20」というプライベートIPアドレスを有している。対向UAC#3からUAC#2に対して着信があるとき、まず対向UAC#3は「INVITE」メッセージをUAS3に対して送信する(S91c)。UAS3は着信先がUAC#2であることからSIP−ALG1に対して「INVITE」メッセージを送信する(S91b)。このときの「INVITE」メッセージの内容を図10の右側上部の枠内(B部)に示す。IPアドレスとしてSIP−ALG1のグローバルIP「200.20.20.20」とUAC#2の端末IDである「0353101002」が指定されている(101b、102b)。次にSIP−ALG1は、UAC登録・変換テーブル141を用いて上記部分を変換した「INVITE」メッセージをUAC#2に対して送信する(S91a)。このときの「INVITE」メッセージの内容を図10の左側上部の枠内(A部)に示す。IPアドレスとして着信IDにてUAC登録・変換テーブル141より変換されたプライベートIPアドレス「192.168.100.20」が指定されている(101a、102a)。
【0029】
次に「INVITE」に応答してUAC#2は「100 Trying」メッセージをSIP−ALG1に対して送信し(S92a)、SIP−ALG1は同様に「100 Trying」メッセージをUAS3に対して送信する(S92b)。このときのメッセージの内容をそれぞれ図10の下部の左側(C部)及び右側(D部)に示している(S103a、S103b)。「INVITE」メッセージと同様にUAC#2のプライベートIPアドレス「192.168.100.20」の部分を、SIP−ALG1のグローバルIPアドレス「200.20.20.20」に変換してUAS3に対して送信する。
【0030】
次にUAC#2がリンガー鳴動したことを通知する「180 Ringing」メッセージ及びUAC#2が着信に応答したことを通知する「200 OK」メッセージも「100 Trying」メッセージと同様にUAC登録・変換テーブル141を参照することでUAC#2のプライベートIPアドレスがSIP−ALG1のグローバルIPアドレスに変換されてUAS3に対して通知される。この変換内容は、前述した内容と同様に図11に示す通りである(111a,111b,112a,112b)。
【0031】
なお、登録情報送信手段134は、フローチャートは示していないが、図8のS81に示すように、自分自身のIPアドレスと通信プロトコルで使用するポート番号(例えばSIPでは5060)を用いてグローバル網5に存在するUAS3に対して「REGISTER」メッセージを送信して登録を行う。登録情報にはID情報などが含まれる。
また、図8に示すSIPのシーケンスで示されているように、SIPメッセージ分析手段136は、従来と同様に、受信したSIPメッセージの分析・応答を行い、SIPセッションNAT登録手段137は、プライベート網4とグローバル網5間のSIPプロトコルに関する図10、図11に示すNAT変換を行うためのIPアドレス、ポート番号などの登録を行うものである。また、RTP/RTCPセッションNAT登録手段139は、RTP/RTCPパケットに関して同様にNAT変換するときのポート番号などを登録するものである。本発明による第1の実施の形態は以上のように構成され動作する。
【0032】
本実施の形態によれば、プライベート網側に複数のIP電話端末が存在する場合にも、IP電話中継装置であるSIP−ALGは自装置のIPアドレスと通常のSIPなどの電話用プロトコルで使用する一つのポート番号を使用することでプライベート網内の複数のIP電話端末と通信することができるようになる。また、プライベート網側のIP電話端末を隠蔽することが可能となる。
【0033】
次に第2の実施の形態について以下に説明する。本実施の形態は、プライベート網4内の複数のUAC2がグループを構成し、グローバル側からの着信に対して複数のUAC2が一斉着信もしくは予め定めた順序にて着信して行く方式である。図12は、本実施の形態におけるUAC登録・変換テーブル141の構成例である。第1の実施の形態に加えて、グループ番号を登録できるように構成されている。
【0034】
これは、一つの着信に対しグループを指定して着信させるために登録するものである。このテーブル141への登録の方法は、たとえばSIP−ALG1にシリアルインタフェースもしくはTELNETなどで接続しSIP−ALG1が具備するコマンドインタフェースやWEBインタフェースなどを使用して外部のパソコンなどを使用して登録することができる。この他、入力部15に接続されているキーボードなどを用いて直接入力し、表示部16に内容を表示させるという方法もある。
【0035】
また、図13は図12のデータ構成に着信順序のデータ項目を加えたものである。これは、同一グループ内のUAC2(UAC#1〜UAC#n)に対して着信する順序を決めるものである。この順序は図12の場合と同様にシリアルインタフェースでコマンドラインを使用したり、WEBインタフェースなどを使用したりして個別に登録することも可能であるし、グループ作成の際に自動的に順番が振られていても良い。
【0036】
更には簡易的なACD(Automatic Call Distribution)などのように、グループ内のUAC2が応答する毎に順番が相互に入れ替わっても良い。自動で次に着信するUAC2をSIP−ALG1が決定できる場合は、コールセンターの電話としてUAC2を使用することも可能となる。ただし、上記順序付けの方法については既存の技術を使用することができる。
【0037】
図14は、プライベート網4内のUAC2がグループを構成しており、一斉に全てのグループ内UAC2に着信する場合の呼制御手段138の着信動作を示すフローチャートである。まず着信IDにて着信先がグループ構成になっているかどうかを調べる(S141)。着信先がグループになっていない場合は、通常の着信動作を行い、処理を終了する(S145)。着信先がグループであった場合は、グループに登録されているUAC2を抽出し(S142)、抽出したUAC2に対して着信動作を行う(S143)。
【0038】
次にグループ内の全てのUAC2の抽出が終了したかどうか判定し(S144)、終了していない場合は、ステップS142に進み、前述の動作を繰り返す。全てのグループ内UAC2の抽出が終了した場合は処理を終了する。上記動作は、例えばUAC登録・変換テーブルが図12であるときにグループ1(GRP#1)に着信があった場合には、UAC名が「UAC#1」及び「UAC#3」のUAC2に対して無応答、タイマー満了などに関係なく着信させるものである。
【0039】
図15は、プライベート網4内のUAC2がグループを構成しており、着信順序に従ってグループ内UAC2に着信する場合の呼制御手段138の着信動作を示すフローチャートの例である。まず着信IDにて着信先がグループ構成になっているかどうかを調べる(S151)。グループ着信に設定されていない場合は通常の着信動作を行い、処理を終了する(S156)。グループ着信の場合は、グループ内で次に着信するように登録されているUAC2を抽出し(S152)、着信動作を行う(S153)。
【0040】
着信に際しタイマーを起動し、無応答のままタイマーが満了するかどうかを判定する(S154)。タイマーが満了しない場合は、先の着信先UAC2が応答したと判断し、処理を終了する。タイマーが満了した場合は(S155)、ステップS152に戻り、次に登録されているUAC2を抽出しステップS153からステップS155の処理を繰り返すことで次に登録されているUAC2を呼び出す。
【0041】
上記の動作は、例えばUAC登録・変換テーブルが図13に示す構成であるときにグループ1に着信があった場合で応答が無い場合に、UAC#n−UAC#3−UAC#4−UAC#1の順で着信させるものである。ただし、途中で応答があった場合は次のUAC2への呼び出しは行わない。本発明による第2の実施の形態は以上のように構成され動作する。
【0042】
本実施の形態によれば、プライベート網内の複数のIP電話端末をグループに属させ、同時に着信鳴動させたり、グループ内のIP電話端末に着信順序を設けて着信させたりすることができるので、グローバル網側から見て着信先が固定されておらず隠蔽されたイメージとなる。また複数のIP電話端末を用いた簡易ACDなどの交換機的なサービスを提供することも可能となる。
【0043】
次に第3の実施の形態について以下に説明する。本実施の形態は、グローバル側からの着信に際し、SIP−ALG1に登録されているプライベート網4内に存在する全てのUAC2に同時に一斉着信させる方式である。図16は、プライベート網4内に存在し、SIP−ALG1に登録されている全てのUAC2に着信させる場合の呼制御手段138の着信動作を示すフローチャートである。UAC登録・変換テーブル141自体は、図5、図12、図13のどれであっても良い。
【0044】
本呼制御ルーチンの処理を以下に説明する。まず着信があった際に、着信先が全端末であるかどうか判定する(S161)。全端末への着信であるかどうかは、着信IDやSIP−ALG1システムとして個別に設定させても良い。全端末で無い場合は、通常の着信動作を行い、処理を終了する(S165)。全端末着信の場合は、登録されているUACを抽出し(S162)、着信動作を行い(S163)、全ての登録されているUAC2の着信動作が終了したら処理を終了する(S164)。
【0045】
また、図17は、プライベート網4内に存在し、SIP−ALG1に登録されている全てのUAC2に着信させるが、接続するのは予め決められた番目に応答したUACである場合の呼制御手段138の着信動作を示すフローチャートである。
本呼制御ルーチンの処理を以下に説明する。ステップS171からステップS175までは図16のステップS161からステップS165と同様の処理を行う。次にプライベート網4内に存在する全てのUAC2に着信動作を終了した後、応答してくるUAC2が予め決められた番目であるかどうかを判定する(S176)。異なる場合は切断処理を行い(S177)、ステップS176に戻る。応答したUAC2が予め決められた番目であった場合は、接続処理を行い、処理を終了する(S178)。
【0046】
本実施の形態によれば、プライベート網内に存在し、SIP−ALGに登録されている全てのIP電話端末に着信させることができるため、全端末を着信鳴動させたり、応答する端末を制限したりするというIP電話端末を用いた交換機的なサービスを提供することも可能となる。
次に第4の実施の形態について以下に説明する。第4の実施の形態は、IP電話中継装置1であるSIP−ALG1内のプライベートIPアドレスを有するUAC2の情報がUAS3側で保持されない場合に、UAS3内にて登録されていない電話番号でグローバル側のUAC2から着信があった際に、登録済のUAC2に対して同時に一斉発信する方式である。
【0047】
図18は、本実施の形態にてUAS3が有するUAC登録テーブルの例である。また図20は、UAS3、SIP−ALG1、グローバル網内のUAC2間で送受信される呼制御メッセージのシーケンスチャートの例である。
図18において、グローバル網内に存在しUAS3に登録されているUAC2が全て登録されており、そのID、UAC名及びグローバルのIPアドレスなどがそれぞれ登録されている。
【0048】
図20は、この場合においてグローバル網5側からUAS3内のUAC登録テーブルに未登録の着信IDに電話がかかってきたときのシーケンスチャートを示す。本実施の形態において、対向UAC#10、UAS、SIP−ALG#1,SIP−ALG#2、UAC#3がそれぞれグローバルIPアドレスとして、GLIP#10、GLIP#11、GLIP#1、GLIP#2、GLIP#3を有してグローバル網5に接続されている。ここで、GLIPはグローバルIPであることを表している。
【0049】
まず対向UAC#10からUAS3に対してINVITEメッセージを用いて着信がある(S201a)。UAS3は図18に示すUAC登録テーブルを検索し、指定されている着信IDが未登録であると判定する。このとき、この着信IDをバッファに保存しておく。
図20においては、例としてUAC2が3つ存在するものとし、一斉に3つの登録されているUAC2に対してUAS3はINVITEメッセージを送ることで着信させようとする(S201b、S201c、S201d)。これらINVITEメッセージに対してSIP−ALG#1とSIP−ALG#2が100Tryingメッセージによって着信を受け付けたことをUAS3に通知している(S202b、S202c)。UAS3は着信を受け付けたことを同様に100Tryingにて発信側の対向UAC#10に通知している(S202a)。
【0050】
その後、SIP−ALG#2が収容するプライベート網4内のUAC2が着信に対して着信鳴動していることを示す180RingingメッセージをUAS3に送信しており(S203c)、更にUAS3も対向UAC#10に対して180Ringingを送信して着信動作が行われていることを通知する(S203a)。このプライベート網4内のUAC2が着信鳴動する際には、第1〜第3の実施の形態で記載しているSIP−ALG#2が有するUAC登録・変換テーブル141を使用して着信させることが可能である。この場合、着信IDがUAC登録・変換テーブル141に登録されているものとSIP−ALG#2にて判断する。
【0051】
プライベート網4内の該当UACが応答すると、SIP―ALG#2は、200OKをUAS3に対して送信し(S204c)、UAS3は対向UAC#10に対して同様に200OKを送信して応答したことを通知する(S204a)。また、UAS3は、UAC登録テーブルの当該SIP―ALG#2のIDとバッファに保存している着信IDとを関連付けて保存する。次に、発信者である対向UAC#10は200OKに対してACKメッセージをUAS3に返送することで通話状態に達したことを着信側UACに通知し(S205a)、UAS3は同様にACKメッセージをSIP−ALG#2に送信することで通話が開始される。
【0052】
なお、本実施の形態においてSIP−ALG#2のプライベート網4内のUACに対する動作は記載していないが、前述した第1〜第3の実施の形態と同様な動作を行うものである。
なお、UAS内UAC登録テーブルは、図18の右横に波線で示すように、IP電話端末かIP電話中継装置かを区別するための装置種別を設けるようにしても良い。登録方法は、たとえば各装置から送らせるようにして、この装置種別を各端末IDに関連付けて登録するという方法がある。あるいは、未登録の着信IDに対して上記の一斉送信をした結果、応答を返してきた端末に対してはSIP−ALGの装置種別をセットするようにしても良い。このようにすれば、装置種別がSIP−ALGとなっているものを優先的に呼接続処理することができるため、通信負荷を軽減させることができる。
【0053】
本実施の形態によれば、SIPサーバが自分のデータ内に登録されていない着信IDを有する着信があった際には、SIPサーバ内のUAC登録テーブルに登録されている全てのUACに対して一斉に着信IDを含んだ着信メッセージを送信し、指定された着信IDを有するプライベート網内のIP電話端末を収容するIP電話中継装置のみが応答し通信できるようになるので、プライベート網内のIP電話端末を隠蔽することが可能となる。
【0054】
次に第5の実施の形態について以下に説明する。第5の実施の形態は、IP電話中継装置1であるSIP−ALG1内のプライベートIPアドレスを有するUAC2の情報がUAS3側で保持されない場合に、UAS3内にて登録されていない電話番号でグローバル側の対向UAC#10から着信があった際に、登録済のUAC2で且つSIP−ALG1であるUAC2に対して優先順位順に着信させる方式である。
【0055】
図19は、本実施の形態にてUAS3が有するUAC登録テーブルの例である。また図21は、UAS3、SIP−ALG1、グローバル網5内のUAC2間で送受信される呼制御メッセージのシーケンスチャートの例である。
図19において、グローバル網5内に存在しUAS3に登録されるUAC2が全て登録されており、図18の構成に加えて、「UAC種別」、「優先順位」の属性項目が追加されている。「UAC種別」は通常のUACかSIP−ALGであるかを登録し、「優先順位」は、「UAC種別」がSIP−ALGである場合に有効な属性項目であり、SIP−ALGに着信させるときの優先順位を示している。
【0056】
例えば本実施の形態の場合は、着信IDが不明である着信がUAS3に届いた場合は、UAC名が「UAC#4」、「UAC#1」、「UAC#2」の順に着信処理をさせることを意味する。
図21は、この場合においてグローバル網5側からUAS3内のUAC登録テーブルに未登録の着信IDに電話がかかってきたときのシーケンスチャートを示す。まず対向のUAC#10からUAS3に対してINVITEメッセージを用いて着信がある(S211a)。UAS3は図19に示すUAS内のUAC登録テーブルを検索し、指定されている着信IDが未登録であると判定する。
【0057】
図21においては、例としてUAC2が3つ存在するものとし、優先順位は図19に示すように設定されているものとする。この場合、UAS3は一番優先順位の高いUAC名が「UAC#4」(図21上ではSIP−ALG#1)に対して最初にINVITEメッセージを送ることで着信させようとする(S211b)。タイマーT211が満了し、INVITEに対する応答が無い場合は、次に優先順位の高いUAC名が「UAC#1」(図21上ではSIP−ALG#2)に対してINVITEメッセージを送信して(S211c)、応答を待つ。本実施の形態では優先順位順に着信処理を行う方式なので、最初のUACが無応答の場合の例を図21に例示している。
【0058】
次にSIP−ALG#2から100Trying及び180Ringingが届いた場合(S212c、S212a)、SIP−ALG#2に着信先の着信IDを有するUACが収容されていることが分かる。その後は、第4の実施の形態と同様に、SIP−ALG#2が管理するプライベート網4内のUACが応答すると、200OKメッセージ及びACKメッセージが続いて送受信されることになり(S214c、S214a、S215a、S215c)、通話が開始される。
【0059】
本実施の形態によれば、SIPサーバが自己のデータ内に登録されていない着信IDを有する着信があった際には、SIPサーバ内のUAC登録テーブルに登録されているUACで且つSIP−ALGの属性を有するUACに対して優先順位順に着信IDを含んだ着信メッセージを送信し、指定された着信IDを有するプライベート網4内のIP電話端末を収容するIP電話中継装置のみが応答し通信できるようになるので、プライベート網内のIP電話端末を隠蔽することが可能となる。
【0060】
なお、本実施の形態では通信プロトコルとしてSIPについて記載しているが、H.323やMGCPなどの他の通信プロトコルでも同様に実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わるIP電話中継装置のネットワーク構成図である。
【図2】従来の技術であるSIP−ALGのセッション説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係わるIP電話中継装置のセッション説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係わるIP電話中継装置の機能構成図である。
【図5】図4のUAC登録・変換テーブルのデータ構成例である。
【図6】図4のUAC管理手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図4の宛先情報編集手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態に係わるプライベート網内のIP電話端末登録及び着信の際のシーケンスチャートである。
【図9】本発明の第1の実施形態に係わるプライベート網内のIP電話端末へのグローバル網内のIP電話端末からの着信の際のシーケンスチャートである。
【図10】図9のシーケンスチャートにおける各SIPメッセージ内のパケットの内容を示す例である。
【図11】図9のシーケンスチャートにおける各SIPメッセージ内のパケットの内容を示す例である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係わるUAC登録・変換テーブルのデータ構成例である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係わるUAC登録・変換テーブルのデータ構成例である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係わる呼制御手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第2の実施形態に係わる呼制御手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第3の実施形態に係わる呼制御手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第3の実施形態に係わる呼制御手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第4の実施形態に係わるUAS内UAC登録テーブルのデータ構成例である。
【図19】本発明の第5の実施形態に係わるUAS内UAC登録テーブルのデータ構成例である。
【図20】本発明の第4の実施形態に係わるグローバル網内のIP電話端末からの着信の際のシーケンスチャートである。
【図21】本発明の第5の実施形態に係わるグローバル網内のIP電話端末からの着信の際のシーケンスチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 IP電話中継装置(SIP−ALG)
2 IP電話端末(UAC)
3 呼制御管理手段(SIPサーバ,UAS)
4 プライベート網 5 グローバル網
11 プライベート側送受信部
12 グローバル側送受信部
13 中央演算処理部
14 記憶部
15 入力部
16 表示部
131 入出力制御手段
132 送受信処理手段
133 UAC管理手段
134 登録情報送信手段
135 宛先情報編集手段
136 SIPメッセージ分析手段
137 SIPセッションNAT登録手段
138 呼制御手段
139 RTP/RTCPセッションNAT登録手段
141 UAC登録・変換テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グローバル網に接続されているグローバル側IP電話端末および発着信時の呼制御処理を実行する呼制御管理装置と、プライベート網に接続されている複数のプライベート側IP電話端末との間に介在し、IPアドレスやポート番号の変換処理を行ってグローバル側IP電話端末と各プライベート側IP電話端末との間で通信の中継を行うIP電話中継装置であって、
前記各プライベート側IP電話端末から送られてくる端末ID、該端末のプライベートIPアドレスおよびポート番号を含む登録情報を終端し、該登録情報と自己のグローバルIPアドレスおよびポート番号をそれぞれ対応付けてUAC登録・変換テーブルに登録するUAC管理手段と、
前記呼制御管理装置に対して自己のグローバルIPアドレスおよびポート番号を含む登録情報を送信する登録情報送信手段と、
発着信に際し前記呼制御管理装置との間で呼制御処理を実行すると共に、前記UAC登録・変換テーブルを参照して、夫々対応付けられたプライベートIPアドレスとグローバルIPアドレス、および、夫々のポート番号の変換処理を実行して、前記プライベート側IPアドレスとの間で呼制御処理を実行することで、前記各プライベート側IP電話端末と前記グローバル側IP電話端末との相互通信を可能とする呼制御手段と、
を備えたことを特徴とするIP電話中継装置。
【請求項2】
前記登録情報送信手段は、各プライベートIP電話端末の端末IDを前記呼制御管理装置へ送信し、
前記呼制御手段は、前記呼制御管理装置から前記端末IDを指定して送られてくる接続要求を受信したとき、前記UAC登録・変換テーブルを参照して、該端末IDのプライベートIPアドレスおよびポート番号に対して、接続要求を送信することを特徴とする請求項1記載のIP電話中継装置。
【請求項3】
前記UAC管理手段は、前記複数のプライベート側IP電話端末を1つのグループとして登録し、
前記呼制御手段は、前記呼制御管理装置からの着信に際し、該グループ内の各プライベート側IP電話端末に対して、一斉に、又は、予め定められた所定の順序で順に接続要求を送信し、応答のあった一のプライベート側電話端末との間で呼制御手順を進めることを特徴とする請求項1記載のIP電話中継装置。
【請求項4】
グローバル網に接続されているグローバル側IP電話端末および発着信時の呼制御処理を実行する呼制御管理装置と、プライベート網に接続されている複数のプライベート側IP電話端末との間に、IPアドレスやポート番号の変換処理を行うIP電話中継装置を設けて、前記グローバル側IP電話端末と前記複数のプライベート側IP電話端末の夫々との間で通信の中継を行うIP電話中継方法であって、
前記IP電話中継装置には、プライベート側IP電話端末の端末ID、該端末のプライベートIPアドレスおよびポート番号を含む登録情報を自己のグローバルIPアドレスおよびポート番号とそれぞれ対応付けて保存するUAC登録・変換テーブルを設け、
前記呼制御管理装置には、前記グローバルIP電話端末および前記IP電話中継装置を区別することなくグローバルIP電話端末として、夫々の端末IDおよびグローバルIPアドレスを含む登録情報を保存するUAS内UAC登録テーブルを設け、
前記呼制御管理装置は、あるIP電話端末から相手先の端末IDを含む接続要求を受信したときは、前記UAS内UAC登録テーブル内に前記相手先の端末IDが登録されているか否かを判定し、登録されていない場合は、一斉に、又は、予め定められた所定の順序で順に前記UAS内UAC登録テーブルに登録されているIP電話端末に対して前記相手先の端末IDを含む接続要求を送信し、 前記IP電話中継装置は、前記呼制御管理装置から送られてくる前記接続要求を受信したときは、前記UAC登録・変換テーブルを参照して、前記相手先の端末IDのプライベート側IP電話端末が存在するか否かを判定し、存在する場合は、当該プライベート側IP電話端末へ接続要求を送信し、その後、該プライベート側IP電話端末からの応答信号を受信した場合は、前記呼制御管理装置へ応答信号を送信することを特徴とするIP電話中継方法。
【請求項5】
前記呼制御管理装置は、接続要求の送信後、いずれかのグローバルIP電話端末から応答信号を受信したときは、前記UAS内UAC登録テーブルの該応答信号の送信元のグローバルIP電話端末の端末IDと前記送信先の端末IDとを関連付けて保存することを特徴とする請求項4記載のIP電話中継方法。
【請求項6】
グローバル網に接続されているグローバル側IP電話端末および発着信時の呼制御処理を実行する呼制御管理装置と、プライベート網に接続されている複数のプライベート側IP電話端末との間に、IPアドレスやポート番号の変換処理を行うIP電話中継装置を設けて、前記グローバル側IP電話端末と前記複数のプライベート側IP電話端末の夫々との間で通信の中継を行うIP電話中継方法であって、
前記IP電話中継装置には、プライベート側IP電話端末の端末ID、該端末のプライベートIPアドレスおよびポート番号を含む登録情報を自己のグローバルIPアドレスおよびポート番号とそれぞれ対応付けて保存するUAC登録・変換テーブルを設け、
前記呼制御管理装置には、IP電話端末か、IP電話中継装置かを区別して夫々の端末もしくは中継装置の識別情報およびグローバルIPアドレスを含む登録情報を保存するUAS内UAC登録テーブルを設け、
前記呼制御管理装置は、あるIP電話端末から相手先の端末IDを含む接続要求を受信したときは、前記UAS内UAC登録テーブル内に前記相手先の端末IDが登録されているか否かを判定し、登録されていない場合は、一斉に、又は、予め定められた所定の順序で順に前記UAS内UAC登録テーブルに登録されているIP電話中継装置に対して前記相手先の端末IDを含む接続要求を送信し、
前記IP電話中継装置は、前記呼制御管理装置から送られてくる前記接続要求を受信したときは、前記UAC登録・変換テーブルを参照して、前記相手先の端末IDのプライベート側IP電話端末が存在するか否かを判定し、存在する場合は、当該プライベート側IP電話端末へ接続要求を送信し、その後、該プライベート側IP電話端末からの応答信号を受信した場合は、前記呼制御管理装置へ応答信号を送信し、
前記呼制御管理装置は、接続要求の送信後、前記IP電話中継装置から応答信号を受信した場合は、前記UAS内UAC登録テーブルの当該IP電話中継装置の識別情報と前記相手先の端末IDとを関連付けて保存することを特徴とするIP電話中継方法。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−81037(P2010−81037A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244192(P2008−244192)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】