説明

LEDプリンタ

【課題】LEDアレイの位置ずれが1ライン未満であっても、印刷の副走査方向の位置ずれを防止できる露光装置とLEDプリンタを提供する。
【解決手段】主走査方向に沿って一次元に配列される複数のLEDアレイ31と、主走査方向に直角な副走査方向に回転して複数のLEDアレイ31により露光される感光ドラム11と、複数のLED31のうちの副走査方向の最も遠方に位置する基準LEDアレイと、基準LEDアレイ以外の他のLEDアレイとの副走査方向の位置のずれ量を記憶する遅延時間記憶部610と、他のLEDアレイの発光のタイミングを、基準LEDアレイ31の発光のタイミングから遅延時間記憶部610に記憶される位置のずれ量に応じた遅延時間だけ遅延させるLEDアレイ制御部608およびシフトレジスタ33とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLEDプリンタに関する。詳しくは、直列に配列される複数の光源と、これらの複数の光源によって露光される感光ドラムを備えるLEDプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
LEDプリンタとしては、たとえば特許文献1のような構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−34399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来一般のLEDプリンタは、複数のLEDアレイが設けられる露光装置と、この露光装置により露光される感光ドラムとを有する。そして複数のLEDアレイは、たとえば主走査方向に沿って直線状に配列されて実装される。このような構成においては、LEDアレイを露光装置に実装する際に、LEDアレイの副走査方向の位置がずれることがある。各LEDアレイの副走査方向の位置が互いにずれていると、各LEDアレイの副走査ヘッドによる露光領域も副走査方向に互いに相違する。このため、LEDアレイごとに印刷の位置がずれる。
【0005】
特許文献1に記載される構成は、副走査方向の印刷の位置ずれを防止するため、実装のずれが1ライン以上であるLEDアレイの印刷タイミングを、他のLEDアレイから1ライン分ずらすものである。しかしながら、このような構成では、LEDアレイのずれが1ライン未満である場合には、印刷の位置ずれを防止できない。そこで、上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、LEDアレイの位置ずれが1ライン未満であっても、印刷の位置ずれを防止できるLEDプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、主走査方向に沿って一次元に配列される複数の光源と、前記主走査方向に直角な副走査方向に関する前記複数の光源どうしの間の距離を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶される前記距離に応じて前記複数の光源の発光開始タイミングを制御する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各光源の発光の開始タイミングを、各光源の副走査方向の位置に応じて1ラインの時間内で遅延させる。このため、各光源による露光の副走査方向の位置を一致させることができ、印刷の位置ずれを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、LEDプリンタの構成を示す断面模式図である。
【図2】図2は、露光ヘッドおよびその周辺の回路の構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】図3は、LEDプリンタのシステムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図4】図4は、各LEDアレイの回路構成の概略を示す図である。
【図5】図5(a)は、露光ヘッドによる露光位置を模式的に示す図であって、LEDアレイが正確に一直線に配列される場合を示す図であり、図5(b)は、露光ヘッドによる露光位置を模式的に示す図であって、LEDアレイが副走査方向に位置ずれしている場合を示す図である。
【図6】図6は、LEDアレイの動作のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
まず、本発明を適用できる実施形態にかかるLEDプリンタ1の全体的な構成および全体的な動作について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、LEDプリンタ1の概略構成を模式的に示す断面図である。図2は、LEDプリンタ1に設けられる露光ヘッド3の概略構成を模式的に示す斜視図である。図3は、LEDプリンタ1のシステムの概略構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、LEDプリンタ1は、感光ドラム11と、露光ヘッド3と、帯電部12と、現像部14と、転写部13と、クリーニング部21と、用紙カセット15と、給紙ローラ16と、レジストローラ17と、搬送部18と、定着部19と、排紙トレイ20と、プリンタ制御部6とを有する。感光ドラム11は、表面に感光体層が形成される回転体であり、図略の駆動機構によって矢印Aの向きに所定の速度で回転する。帯電部12は、感光ドラム11の表面を均一に帯電させる。露光ヘッド3は、帯電部12によって帯電させられた感光ドラム11の表面に光を照射し、電位潜像を形成する。なお、露光ヘッド3の構成の詳細については後述する。現像部14は、電位潜像が形成された感光ドラム11の表面にトナーを付着させ、電位潜像に倣ったトナー像を形成する。用紙カセット15には、印刷用紙が収容される。給紙ローラ16は、用紙カセット15に収容される印刷用紙を引き出してレジストローラ17に引き渡す。レジストローラ17は、感光ドラム11の回転に同期して回転し、印刷用紙を感光ドラム11と転写部13との間に搬送する。転写部13は、感光ドラム11の表面に形成されたトナー像を、レジストローラ17により搬送された印刷用紙の表面に転写する。搬送部18は、トナー像が転写された印刷用紙を、定着部19に搬送する。定着部19は、トナー像を印刷用紙に定着させる。そして、トナー像が定着された印刷用紙は、排紙トレイ20に排出される。クリーニング部21は、トナー像が印刷用紙に転写された後に、感光ドラム11の表面に残留するトナーを除去する。なお、感光ドラム11、感光ドラム11の駆動機構、現像部14、定着部19、用紙カセット15、給紙ローラ16、レジストローラ17、搬送部18、クリーニング部21には、従来公知の構成が適用できる。したがって、これらの説明は省略する。
【0012】
図2に示すように、露光ヘッド3は、複数の光源として、複数のLEDアレイ31を有する。これらの複数のLEDアレイ31は、主走査方向(=感光ドラム11の回転軸の方向)に沿って一次元に配列されるように実装される。各LEDアレイ31には、所定の複数のLED素子32が設けられる。これらの複数のLED素子32は、主走査方向に沿って一次元に配列されるように設けられる。このように、露光ヘッド3には、全体として、複数のLED素子32が、所定の方向(ここでは主走査方向)に沿って一次元に配列される。なお、理想的には、図2に示すように、全てのLEDアレイ31の全てのLED素子32が、主走査方向に沿って一直線に配列される構成であることが好ましい。しかしながら実際には、組み付け誤差などによって、LEDアレイ31が副走査方向(=主走査方向に直角な方向)に沿って位置ずれすることがある。そうすると、LED素子32の副走査方向位置は、LEDアレイ31ごとに互いに相違し、主走査方向に沿って一直線にならないことがある。
【0013】
図3に示すように、プリンタ制御部6は、ROM602と、CPU601と、RAM603と、印刷データ処理部604と、露光ヘッド制御部605とを有する。ROM602は、LEDプリンタ1を制御するためのソフトウェア(コンピュータプログラム)が保存される。CPU601は、ROM602に保存されるソフトウェアを読み出して実行し、LEDプリンタ1の全体的な制御を行う。RAM603は、外部から入力される画像データなどを保存できる。印刷データ処理部604は、外部から入力された画像データまたはRAM603に保存される画像データを、1走査周期(=1ライン)ごとの印刷データ(=露光ヘッド3が露光に用いるデータ)に変換する。なお、印刷データは、各走査周期において各LED素子32が発光するか否かのデータ(P−DATA)と、各LED素子32の露光量のデータ(S−DATA)との2つのデータからなる。
【0014】
露光ヘッド制御部605は、クロック信号発生部606と、スタートパルス発生部607と、LEDアレイ制御部608と、印刷データ記憶部609と、遅延時間記憶部610とを有する。なお、LEDアレイ制御部608と印刷データ記憶部609と遅延時間記憶部610とは、露光ヘッド3に設けられるLEDアレイ31に応じた数が設けられ、それぞれ対応するLEDアレイ31を制御する。クロック信号発生部606は、露光ヘッド3の駆動に用いるクロック信号(CL)を発生させる。クロック信号発生部606には、たとえば各種発振器が適用される。スタートパルス発生部607は、クロック信号発生部606が発生させたクロック信号を用いて、1走査周期の開始を示すスタートパルス(SP)を発生させる。スタートパルス発生部607には、たとえば各種分周器が適用される。各印刷データ記憶部609は、印刷データ処理部604が変換した印刷データのうち、対応するLEDアレイ31が露光に用いる部分を、1走査周期ごとに一時的に記憶する。各印刷データ記憶部609はたとえばFIFO回路を有し、一時的に記憶した印刷データをシリアル出力する。各LEDアレイ制御部608は、印刷データ記憶部609に記憶される印刷データを用い、クロック信号およびスタートパルスに基づいて、各LEDアレイ31を制御して駆動する。各遅延時間記憶部610は、各LEDアレイ31の遅延時間を記憶する。そして、各LEDアレイ制御部608は、各走査周期において、遅延時間記憶部610に記憶される遅延時間だけ、対応するLEDアレイ31のLED素子32の発光開始のタイミングパルスを遅延させる。なお、遅延時間については後述する。
【0015】
このほか、プリンタ制御部6は、感光ドラム制御部611と、帯電部制御部612と、現像部制御部613と、転写部制御部614と、給紙ローラ制御部616と、レジストローラ制御部617と、搬送部制御部619と、定着部制御部622と、クリーニング部制御部621とを有する。これらは、それぞれ対応する各部を制御し駆動する。
【0016】
次に、LEDプリンタ1の動作の詳細について、図4〜図7を参照して説明する。以下の説明において、単に「位置」「距離」という場合には、副走査方向(=感光ドラム11の回転方向)についての位置と距離をいうものとする。また、ここでは、説明のために模式化された構成として、露光ヘッド3が4個のLEDアレイ31(31a〜31d)を有し、各LEDヘッド31が16個のLED素子32(32a〜32p)を有する構成を例に用いる。図4は、各LEDアレイ31の回路構成の概略を示す図である。図5(a)は、各LEDアレイ31(31a〜31d)とそれらの露光位置Q1〜Q4を模式的に示す図であって、LEDアレイ31が正確に一直線に配列される場合を示す図である。図5(b)は、各LEDアレイ31(31a〜31d)とそれらの露光位置Q1〜Q4を模式的に示す図であって、LEDアレイ31が副走査方向に位置ずれしている場合を示す図である。図6は、LEDアレイ31の動作のタイミングチャートである。なお、図5においては、説明のため、位置のずれ量D1〜D4を強調してある。また、LEDアレイ31とLED素子の数は例示であり、本発明はこれらの数に限定されるものではない。
【0017】
図4に示すように、各LEDアレイ31(31a〜31d)は、光源としての所定の数のLED素子32(32a〜32p)と、シフトレジスタ33と、調光回路41と、LED素子32と同数のandゲート39およびスイッチング回路40とを有する。シフトレジスタ33は、所定の複数のLED素子32を順次発光させる制御手段として機能する。シフトレジスタ33には、クロック信号線34を通じてクロック信号(CL)が送信されるとともに、スタートパルス線35を通じてスタートパルス(SP)が送信される。シフトレジスタ33は、スタートパルスをトリガーとしてクロック信号の周期のカウントを開始する。そして、シフトレジスタ33は、スタートパルスが入力されてから遅延時間記憶部610に記憶される遅延時間が経過した後に、クロック信号に同期して順次遅延するビット信号(ストローブ信号)を出力する。各andゲート39には、シフトレジスタ33から順次して出力されるビット信号と、印刷データ記憶部609から出力される印刷データであって各LED素子32が発光するか否かを示すデータ(P−DATA)とが入力される。各LED素子32が発光するか否かを示すデータは、クロック信号と同期するシリアル信号として、第一信号線37を通じて各andゲート39に入力される。各andゲート39からの出力は、スイッチング回路40のベース(ゲート)に入力される。電力線36は、各LED素子32の発光のための電流(VLED)が流れる線であり、各スイッチング回路40を経て各LED素子32に接続される。調光回路41には、各印刷データ記憶部609から出力される印刷データであって、各LED素子32の露光量を示すデータ(S−DATA)が入力される。各LED素子32の露光量を示すデータは、各LED素子32が発光するか否かを示すデータと同期するシリアル信号として、第二信号線38を通じて調光回路41に入力される。そして、調光回路41は、入力された印刷データに応じて、各LED素子32による露光量(たとえば、LED素子32の発光時間や輝度)を制御する。このような構成によれば、LEDアレイ31に設けられる複数のLED素子32(32a〜32p)は、一端側に位置するLED素子32aから他端側に位置するLED素子32pに向かって順次して発光し、感光ドラム11を露光する。なお、全てのLEDアレイ31は、クロック信号およびスタートパルスを用いて同期して動作し、感光ドラム11を露光する。
【0018】
図5は、各LEDアレイ31(31a〜31d)による露光位置Q1〜Q4を示す図であり、感光ドラム11の表面を平面に展開した図である。Q1は、LEDアレイ31aによる露光位置を示し、Q2は、LEDアレイ31bによる露光位置を示し、Q3は、LEDアレイ31cによる露光位置を示し、Q4は、LEDアレイ31dによる露光位置を示す。また、D1,D2,D4は、各LEDアレイ31(31a,31b,31d)について、感光ドラム11の回転方向の最も遠方に位置するLEDアレイ31(31c)からの位置のずれ量を示す。
【0019】
図5(a)に示すように、全てのLEDアレイ31の発光のタイミングが同一である構成においては、全てのLEDアレイ31が主走査方向に沿って正確に直線状に配列されると、各LEDアレイ31による露光位置Q1〜Q4は位置ずれしない。このため、感光ドラム11に形成される電位潜像は主走査方向に沿って一直線に並ぶ。しかしながら、図5(b)に示すように、LEDアレイ31が位置ずれしていると、各LEDアレイ31による露光位置Q1〜Q4が位置ずれする。このため、感光ドラム11に形成される電位潜像は、主走査方向に沿って一直線にならない。印刷用紙には、感光ドラム11に形成される電位潜像がトナー像として転写されるため、各LEDアレイ31の露光位置Q1〜Q4が位置ずれしていると、印刷物には、LEDアレイ31の境界に対応する位置に段差が生じ、印刷が不連続になる。
【0020】
そこで、LEDアレイ31のLED素子32の順次発光の開始のタイミングを、位置のずれ量に応じて遅延させる(=タイミングをずらす)。これにより、これにより、LEDアレイ31の露光位置Q1〜Q4の位置ずれを防止する。すなわち、図5と図6に示すように、各走査周期において、まず、感光ドラム11の回転方向の最も遠方に位置するLEDアレイ31c(このLEDアレイ31cを、「基準LEDアレイ31c」と称する)が最初に発光する。そして感光ドラム11が回転し、基準LEDアレイ31cによる露光位置Q3が、感光ドラム11の回転方向の遠方から二番目に位置するLEDアレイ31aによる露光位置Q1に到達したタイミングで、当該LEDアレイ31aが発光する。これにより、遠方から二番目に位置するLEDアレイ31aの露光位置Q1と、基準LEDアレイ31cの露光位置Q3とが一致する。感光ドラム11がさらに回転し、基準LEDアレイ31cによる露光位置Q3が、感光ドラム11の回転方向の遠方から三番目に位置するLEDアレイ31dによる露光位置Q4に到達した時点で、当該LEDアレイ31dが発光する。これにより、感光ドラム11の回転方向の遠方から三番目に位置するLEDアレイ31dの露光位置Q4と、遠方から二番目に位置するLEDアレイ31aの露光位置Q1と、基準LEDアレイ31cの露光位置Q3とが一致する。感光ドラム11がさらに回転し、基準LEDアレイ31による露光位置Q3が、感光ドラム11の回転方向の遠方から四番目に位置するLEDアレイ31bによる露光位置Q2に到達した時点で、当該LEDアレイ31bが発光する。これにより、感光ドラム11の回転方向の遠方から四番目に位置するLEDアレイ31dの露光位置Q4と、遠方から三番目に位置するLEDアレイ31dの露光位置Q4と、遠方から二番目に位置するLEDアレイ31aの露光位置Q1と、基準LEDアレイ31cの露光位置Q3とが一致する。このように、基準LEDアレイ31c以外のLEDアレイ31a,31b,31dは、基準LEDアレイ31cが発光してから、それぞれ所定の遅延時間を経過した後に発光する。このような構成によれば、全てのLEDアレイ31(31a〜31d)の露光位置Q1〜Q4を一致させることができる。したがって、印刷物には、LEDアレイ31の境界に対応する位置に段差が生じないようにできる。
【0021】
各LEDアレイ31a,31b,31dの遅延時間は、露光位置Q1〜Q4の位置が一致するように、基準LEDアレイ31cからの位置のずれ量D1,D2,D4に応じて設定される。各LEDアレイ31a,31b,31dの遅延時間の設定方法は、たとえば次のとおりである。まず、全てのLEDアレイ31のシフトレジスタ33に、同一の遅延時間(たとえばゼロ)を記憶させる。そして、LEDプリンタ1に、たとえば主走査方向に平行な直線を印刷させる。そうすると、図5(b)に示すように、各LEDアレイ31に印刷された部分が、位置のずれ量D1,D2,D4に応じて互いにずれる。ここで、この印刷物を用いて、基準LEDアレイ31cを特定する。そして、印刷された直線について、基準LEDアレイ31cにより印刷された部分と、他のLEDアレイ31a,31b,31dにより印刷された部分との距離を計測する。印刷物には、感光ドラム11に形成された電位潜像がトナー像として転写されるため、これらの距離は、各LEDアレイ31a,31b,31dについての、基準LEDアレイ31cからの位置のずれ量D1,D2,D4を示す。そして、いずれのLEDアレイ31cが基準LEDアレイとして特定されたかという情報と、他の全てのLEDアレイ31a,31b,31dの位置のずれ量D1,D2,D4を、プリンタ制御部6に入力する。また、このような構成に代えて、LEDアレイ実装時に実装位置ズレの情報測定しておき、実装位置ズレ情報をたとえばLEDアレイ基板上の記憶装置(ROM)に記憶しておき、プリンタ本体に組み込み後、前期記憶装置(ROM)から実装位置ズレ情報を取得してもよい。
【0022】
プリンタ制御部6は、入力された位置のずれ量D1,D2,D4に基づいて、各LEDアレイ31の遅延時間を算出する。遅延時間は、「基準LEDアレイ31cによる露光位置Q3が、他のLEDアレイ31a,31b,31dの露光位置Q1,Q2,Q4に到達するまでの時間」である。これらの遅延時間は、「(遅延時間)=(位置のずれ量D1,D2,D4)/(感光ドラム11の周速度)」によって算出される。そして、プリンタ制御部6は、算出したそれぞれの他のLEDアレイ31a,31b,31dの遅延時間を、「クロック信号の何周期分の時間であるか」という情報として、それぞれの他のLEDアレイ31a,31b,31dのシフトレジスタ33と遅延時間記憶部610とに記憶させる。また、プリンタ制御部6は、基準LEDアレイ31cのシフトレジスタ33に、遅延時間として「ゼロ」を記憶させる。なお、この工程は、たとえば、LEDプリンタ1の製造工程や、LEDプリンタ1の製造後の調整や検査の段階で実行される。
【0023】
以上の工程を経たLEDプリンタ1は、全てのLEDアレイ31による露光位置を一致させることができる。この工程を経たLEDプリンタ1の具体的な動作を、図6を参照して説明する。ある走査周期が開始すると、スタートパルス発生部607はスタートパルスを発生させる。そして、発生させたスタートパルスを全てのLEDアレイ31のシフトレジスタ33とLEDアレイ制御部608に入力される。各LEDアレイ31のシフトレジスタ33と、各LEDアレイ制御部608とは、スタートパルスの入力をトリガーとして、クロック信号の周期のカウントを開始する。そして、遅延時間として記憶されるクロック信号の周期の数と、カウントされたクロック信号の周期の数とが一致すると、LEDアレイ制御部608は、シフトレジスタ33および調光回路41に対して印刷データの送信を開始し、LEDアレイ31は、LED素子32の順次発光を開始する。なお、これらの動作は、クロック信号に同期して実行される。
【0024】
基準LEDアレイ31cのシフトレジスタ33と、基準LEDアレイ31cに対応する遅延時間記憶部610に記憶される遅延時間は「ゼロ」である。このため、基準LED31cに対応するLEDアレイ制御部608は、スタートパルスが入力されると、クロック信号に同期して、直ちに印刷データを基準LEDアレイ31cに転送する。また、基準LEDアレイ31cは、クロック信号に同期して、直ちにLED素子32の順次発光を開始する。このように、基準LEDアレイ31は、スタートパルスが入力されると、直ちに発光する。一方、他のLEDアレイ31a,31b,31dのシフトレジスタ33と、これらに対応する遅延時間記憶部610とには、基準LEDアレイ31cとの位置のずれ量D1,D2,D4に応じた遅延時間が記憶される。したがって、基準LEDアレイ31cが発光を開始してから所定の遅延時間を経過した後に、他のLEDアレイ31a,31b,31dが発光する。
【0025】
このような構成によれば、全てのLEDアレイ31の露光位置Q1〜Q4を一致させることができる。したがって、印刷物には、LEDアレイ31の境界に対応する位置に段差が生じないようにできる。特に、LEDアレイ31の位置のずれ量が走査周期の間隔より小さい場合であっても、印刷の位置のずれを防止できる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、前記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。たとえば、前記実施形態においては、複数の光源として複数のLEDアレイ31が適用される構成を示したが、光源の種類は特に限定されるものではない。感光ドラム11を露光できる光源であれば、種類を問わずに適用できる。感光ドラム11の回転方向の最も遠方に位置する光源以外の光源が、感光ドラム11の回転方向の最も遠方に位置する光源が発光してから所定の遅延時間を経過した後に発光する構成であればよい。そして、この遅延時間は、感光ドラム11の回転方向の最も遠方に位置する光源からの位置のずれ量に応じて設定される構成であればよい。また、光源としてLEDアレイ31が適用される構成であっても、LEDアレイ31に設けられる複数のLED素子32が順次発光する構成に限定されない。たとえば、一つのLEDアレイ31に設けられる全てのLED素子32が同時に発光する構成であってもよい。
【0027】
さらに、前記実施形態においては、LEDアレイ31が主走査方向に沿って一列に配列される構成を示したが、千鳥状に二列に配列される構成や、三列以上に配列される構成であってもよい。この場合には、各LEDアレイ31の遅延時間は、各列のLEDアレイ31による露光領域の位置を一致させるための時間に、実装の位置ずれによる印刷の位置のずれを防止するための時間を加算した時間となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、感光体とこの感光体を露光する複数の光源を有するプリンタに有効な技術である。また、本発明は、プリンタ単体のみならず、コピー機、ファクシミリ、およびそれらとの複合機にも有効な技術である。
【符号の説明】
【0029】
1:LEDプリンタ、3:露光ヘッド、31a,31b:ブロック、4:LEDアレイ、41:LED素子、6:プリンタ制御部、605:露光ヘッド制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に沿って一次元に配列される複数の光源と、
前記主走査方向に直角な副走査方向に回転して前記複数の光源により露光される感光ドラムと、
前記複数の光源のうちの前記副走査方向の最も遠方に位置する基準光源と、前記基準光源以外の他の光源との前記副走査方向の位置のずれ量に応じた遅延時間を記憶する記憶部と、
前記他の光源の発光開始のタイミングを、前記基準光源の発光開始のタイミングから前記記憶部に記憶される前記遅延時間だけ遅延させる制御部と
を有することを特徴とするLEDプリンタ。
【請求項2】
前記遅延時間は、「(前記位置のずれ量)/(前記感光ドラムの回転の周速度)」により算出される時間であることを特徴とする請求項1に記載のLEDプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−86464(P2013−86464A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231786(P2011−231786)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000104629)キヤノン・コンポーネンツ株式会社 (49)
【Fターム(参考)】