説明

LEDランプ

【課題】新規な冷却・放熱手段を備えたLEDランプを提供すること
【解決手段】このLEDランプ(10)は、複数個のLED素子(18)と、前記LED素子を包囲するガラス製密封容器(6)とを備え、該ガラス製密封容器には低分子量ガスが封入されている。前記低分子量ガスは、ヘリウムガス、水素ガス、ネオンガス又はこれらの混合ガスのいずれかである。前記ガラス製密封容器(6)の端部には口金(2)が形成され、容器の内部と外部の間は気密状態が保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDランプに関する。
【背景技術】
【0002】
照明用ランプは、概して、白熱電球、蛍光灯、HIDランプ、LEDランプと開発され、実用化されてきた。LEDランプは、発光ダイオード素子を光源として利用したランプであり、青色LED素子の開発により白色の発光が可能となり、最近、照明用ランプとして利用が拡がりつつある。
【0003】
図1は、このような現在広く販売されているLEDランプの一例を示す図である。これらのLEDランプ100は、一般に、出力が10W以下(典型的には7W程度)のランプである。図1(A)〜(C)に示すように、ランプ形状は種々あるが、基本的に、口金102、放熱部104及びグローブ106から成っている。放熱部104は、アルミニウムのダイキャストから形成され、多くの場合、外周面に放熱フィンの形状に形成されている。グローブ106は、透光性の樹脂から成る。一部に、ガラス製のグローブも見られる。アルミダイキャスト部分104とグローブ106との間は、適当な接着剤で固定されている。従って、アルミダイキャスト部分104とグローブ106とで形成される内部空間は、ランプ外部との間で気密封止になってない。
【0004】
本発明者等は、次の先行特許文献が存在することを承知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-016805「ライト及びライトの製造方法」、出願人:今井紘一(公開日:2003/01/17)
【特許文献2】特開2004-296245「LEDランプ」、出願人:松下電工株式会社(公開日:2004/10/21)
【特許文献3】特開2009-259813「メタルハライドランプ外囲部からのヘリウム漏れを防止または低減する方法」、出願人:ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ(公開日:2009/11/05)
【特許文献4】特開2010-135181「照明装置」、出願人:シャープ株式会社(公開日:2010/06/17) 以下に説明する本願のLEDランプと比較すると、上記先行特許文献のランプは次の点で相違する。先ず、本願のLEDランプは、LED素子をガラス製密封容器で覆い、ガラス製密封容器内には冷却・放熱手段として低分子量ガスが封入されている。
【0006】
特許文献1は、ケース部材として樹脂及びガラスを例示し、ガラスを使用した場合は内部の発光ダイオードが外部環境から保護され、更にガラス容器内を水分を有しないガス(実施例では窒素ガス)を封入した場合には水分が残留せずガラスが曇らない効果を開示する。しかし、ここには、冷却・放熱手段としての低分子量ガスに関する記載・示唆は無い。
【0007】
特許文献2は、LEDランプを収納するバルブは樹脂材料から形成され、図1に関連して説明した気密封止に関する記載・示唆は無い。
【0008】
特許文献3は、メタルハライドランプに関する発明であり、LED素子に関する記載・示唆は無い。
【0009】
特許文献4は、透光性カバーはポリカーボネート樹脂製であり、放熱部はアルミ等の金属製である。図1に例示したLEDランプに該当し、気密封止に関する記載・示唆は無い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
LED素子は、半導体から成り、半導体の接合部の温度と素子寿命が密接な関係にある。即ち、使用時の接合部の温度が比較的低い場合には素子寿命は長期間となるが、温度が高くなるにつれ素子寿命は急激に短くなる。従って、LEDランプでは、LED素子の温度が高いとランプ寿命が短縮化し、ランプ照度も劣化する。
【0011】
半導体素子を使用した電子機器においては冷却・放熱手段が重要事項であるのと同様に、LEDランプにおいても冷却・放熱手段が重要事項となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題に鑑みて、本発明は、新規な冷却・放熱手段を備えたLEDランプを提供することを目的とする。
【0013】
本発明に係るLEDランプは、複数個のLED素子と、前記LED素子を包囲するガラス製密封容器とを備え、該ガラス製密封容器の内部には低分子量ガスが封入されている。
【0014】
更に、上記LEDランプでは、前記低分子量ガスは、ヘリウムガス、水素ガス、ネオンガス又はこれらの任意の組み合わせの混合ガスのいずれかを含んでいてもよい。
【0015】
更に、上記LEDランプでは、前記ガラス製密封容器の端部には口金が形成され、容器の内部と外部との間は気密状態が保持されていてもよい。
【0016】
更に、上記LEDランプでは、更に、軸線方向に沿って貫通孔を有する棒状体の光源支持体を備え、前記複数個のLED素子は、前記光源支持体の側面に固定され、前記光源支持体の開孔は、前記低分子量ガスが流れるガス流路を形成していてもよい。
【0017】
更に、上記LEDランプでは、前記光源支持体は、断面形状が多角形であってよい。
【0018】
更に、上記LEDランプでは、更に、前記光源支持体の貫通孔の上端、下端又はその両方の近傍にガス流加速ファンを備えていてもよい。
【0019】
更に、上記LEDランプでは、前記光源支持体は、少なくとも、アルミニウム、銅、又は熱伝導樹脂を含む良好な熱伝導性を有する部材から成っていてもよい。
【0020】
更に、上記LEDランプでは、前記光源支持体には、前記複数個のLEDが搭載された実装基板が固定されていてもよい。
【0021】
更に、上記LEDランプでは、前記実装基板は、金属ベース基板又は金属コア基板であってもよい。
【0022】
更に、上記LEDランプでは、更に、複数枚の矩形の基板を備え、前記基板は、全体としてガス流路を形成するように側端部を相互接続し、前記複数個のLED素子は、前記複数枚の矩形の基板の表面に夫々搭載されていてもよい。
【0023】
更に、上記LEDランプでは、更に、前記口金とは反対側である前記ガラス製密封容器のトップ部内側に、前記光源支持体に対して固定された熱伝導樹脂から成る伝熱器を備え、該光源支持体には、前記開口を流れるガス流の出入り可能な孔が形成されていてもよい。
【0024】
更に、上記LEDランプでは、更に、前記ガラス製密封容器のトップ部外側に、前記伝熱器に前記ガラス製密封容器を挟んで熱的伝導関係にある追加熱放熱器を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、新規な冷却・放熱手段を備えたLEDランプを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、現在広く販売されているLEDランプの一例を示す図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態に係るLEDランプを説明する図である。
【図3】図3は、図2(A)のLEDランプの光源支持体及び実装基板の二つの例を説明する図である。
【図4】図4は、図2(A)に示すLEDランプの製造方法のフローであり、各ステップの右側にその段階の簡単なランプの図を示している。
【図5】図5は、本発明の第3実施形態に係る伝熱器及び第4実施形に係る追加放熱器を説明する図である。
【図6】図6は、図2(A)に示すLEDランプに封入ガスとしてヘリウムガスを用い、光源支持体として銅を用いた試作品における「LED素子の電力−LED素子温度」の測定結果のグラフである。比較例として、ヘリウムガスの代わりに空気を用いた測定結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るLEDランプの実施形態に付いて、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中、同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。また、以下に説明する実施形態は、例示であって、本発明の範囲を限定するものではないことを承知されたい。
【0028】
[第1実施形態]
(LEDランプの構成)
図2は、本実施形態に係るLEDランプ10を説明する図である。このLEDランプ10は、図1で説明した現在広く宣伝・販売されている7W程度の低出力LEDランプではなく、主として高出力の20W程度のLEDランプを対象としている。このため、冷却・放熱手段が更に重要な検討事項となる。
【0029】
図2(A)に示すLEDランプ10は、一端が口金2で気密封止された外球6の内部に、複数個のLED素子18が配置されている。複数個のLED素子18は、実装基板16に適当な間隔で搭載され、この実装基板は光源支持体14に固定されている。
【0030】
更に、この光源支持体14は、外球6の一端に固着されたステム8から延在する支柱20によって、外球6の内部の適当な箇所に位置決め支持されている。光源支持体14に隣接する支柱20の部分には、絶縁性チューブ12が被せられ、光源支持体14と支柱20との間の電気絶縁性を確保している。光源支持体14及び実装基板16に関しては、後で、図3を参照しながら説明する。
【0031】
更に、口金2に近い外球6の内部には、熱遮蔽部材24が設けられている。図2(B)に示すように、熱遮蔽部材24は、外球6の内部形状に適合する概して円板状の部材であり、電気リード線及び支柱20を通す開口24a,24b,24cが形成されている。熱遮蔽部材24は、例えば、セラミック、金属板、マイカ板等で形成されている。熱遮蔽部材24の機能に関しては、後で、図4の製造方法に関連して説明する。
【0032】
外球6の内部空間22には、低分子量ガスが封入されている。本出願書類で「低分子量ガス」とは、比熱が大きく、熱伝導性が良好なガスであり、典型的にはヘリウムガスである。更に、ネオンガス、水素ガス、又はこれらの混合ガスであってもよい。特に、水素ガスは反応性が高いため、これを抑制した水素ガスとヘリウムガスとの混合ガスとしてもよい。
【0033】
光源支持体14の下方には、所望により、ガス流加速用ファン32を設けてもよい。このガス流加速用ファン32は、光源支持体14の上方に設けてもよく、下方と上方の両方に設けてもよい。低分子量ガス及びガス流加速用ファン32に関しては、後で、図6に関連して説明する。
【0034】
(各構成要素の説明)
図2(A)に示すLEDランプ10の各要素に関して説明する。
【0035】
口金2は、白熱電球やHIDランプで使用されているねじ込みタイプや差し込みタイプであってよい。外球6は、例えば、ホウケイ酸ガラス等の透光性の硬質ガラスから成るBT管である。しかし、外球6の形状はこれに限定されず、任意の形状であってよい。外球6は、透明タイプ又は拡散タイプ(外球内表面を梨地状に処理した曇りガラスのタイプ)のいずれであってもよい。公知の白熱電球やHIDランプと同様に、口金2と外球6との間は気密封止され、外球内部と外部との間は気密封止状態となっている。
【0036】
図3の(A)と(B)に、光源支持体14及び実装基板16の二つの例を示して、説明する。光源支持体14は、熱伝導性の良好な材質から成り、例えば、銅、アルミニウム、熱伝導樹脂等から成る。熱伝導樹脂は、樹脂に金属粉・金属片を混入して熱伝導係数を高くしたものである。
【0037】
図3(A)及び(B)に示すように、光源支持体14の外形は、棒状体であり、軸線方向に沿って貫通孔15a,15bが形成されている。図示する光源支持体14の軸線に直交する断面形状は、四角形であるが、これに限定されない。しかし、光源支持体14に対して実装基板16を面接触状態で固定するため、断面形状は多角形であることが好ましい。即ち、三角形、五角形、…等の任意の多角形であってよい。断面形状を円形、楕円形等にする場合には、光源支持体14と実装基板16との間に適当な熱伝導性の良好な介在物を設けることが好ましい。
【0038】
良好な熱伝導性の角材14aに、軸線に沿って円形の貫通孔15aを形成して光源支持体としてもよく(図3(A)参照)、角材14bに四角形の貫通孔15bを形成してもよい(図3(B)参照)。或いは、角材に貫通孔を形成するのではなく、板状体を90度ずつ三回折り曲げ両端部を接続して形成してもよく、4片の矩形の板状体を用意し、端部を適当な方法で相互に接続して、図3(B)に図示するような形状にしてもよい。
【0039】
光源支持体14の外周側面には、実装基板16が固定されている。所望により、光源支持体14の外周側面と実装基板16の間に、熱伝導シート21を介在配置してもよい。光源支持体14の断面形状がn角形であれば、n個の外周側面の全てに実装基板16が夫々固定される。
【0040】
各実装基板16には、複数個のLED素子(例えば、18−1〜18−4)が搭載されている。実装基板16は、プリント配線板から成り、LED素子に給電するための必要な回路パターが形成されている。LED素子18の放熱・冷却効果を高めるため、実装基板16は、板厚を比較的薄くするか、或いは金属ベース基板又は金属コア基板として形成することが好ましい。プリント配線板の技術分野に於いて、金属ベース基板又は金属コア基板自体は公知の技術である。通常のプリント配線板が、ガラスエポキシ樹脂製のコア基板に銅の回路パターンが形成されているのに対して、金属ベース基板は一方の面が金属板(銅、アルミニウム等)で、他方の面は絶縁性樹脂で被覆されている。金属コア基板は、金属板に所望により開孔を形成し、表裏及び開孔内を絶縁性樹脂で被覆されている。いずれかの基板の絶縁性樹脂層の上に回路パターンを形成する。金属の良好な熱伝導性により、著しい放熱・冷却効果が期待できる。
【0041】
実装基板16に対するLED素子18の搭載は、半田付け等の公知の方法によって行われる。複数個のLED素子は、全て直列接続され、その両端がリード線を介して口金2につながっている。口金2は、ソケット(図示せず。)にねじ込み又は差し込まれ、各LED素子に所定の電圧が印加されるように所定の電圧源(図示せず。)に接続される。ガス流加速用ファン32を用いる場合も、同じ電圧源により駆動される。
【0042】
(LEDランプの製造方法)
図4は、図2(A)に示すLEDランプ10の製造方法のフローであり、各ステップの右側にその段階の簡単なランプの図を示している。
【0043】
ステップS1のマウント組立て工程で、LED素子18を実装基板16に搭載し、これを光源支持体14に固定し、光源支持体を支柱20に取り付けてマウントを形成、下端にステム8を取り付ける。
【0044】
ステップS2の封止工程で、マウントを外球6の内部に挿入し、マウントの下部のステム8と外球6とをバーナーで熱して、封着する。
【0045】
ステップS3の排気行程で、封止済みの外球内部を排気管を通じて一度真空状態に排気する。その後、低分子量ガスを封入し、チップオフ(排気管をバーナーで溶かして封着すること)する。
【0046】
ステップS4の口金付け工程で、口金2のトップ部及びサイド部を半田付けする。
【0047】
ステップS5の点灯試験、検査を経て、LEDランプ10が完成する。
【0048】
ここで、ステップS2〜S4では、口金、外球の取り付け部、ステム等がバーナーによって1000℃近くの高温に熱せられる。この熱が、外球内部のLED素子に伝わって損傷しないようにするため、熱遮蔽部材24(図2(B)参照)が、外球の口金取り付け部分とLED素子との間に設けられている。
【0049】
[第2実施形態]
第2実施形態は、光源支持体兼実装基板(14,16)を採用する点で、第1実施形態と異なる。即ち、第1実施形態では、光源支持体14と実装基板16とを別物としている。ここで、実装基板16は、好ましくは金属ベース基板又は金属コア基板である。従って、光源支持体14を実装基板16の金属部材と兼用して、光源支持体14を実装基板16の一部にすることができる。
【0050】
図に示していないが、具体的には、予め、回路パターンを形成した矩形の金属ベース基板又は金属コア基板を4枚用意する。4枚の基板を、全体としてガス流路を形成するように金属部材の端部を相互に適当な方法で接続して、光源支持体兼実装基板(14,16)を形成する。断面形状がn角形であれば、n枚の実装基板を相互接続して、光源支持体兼実装基板(14,16)を形成する。光源支持体兼実装基板へのLED素子18の搭載は、この相互接続の前後のいずれであってもよい。
【0051】
或いは、断面形状が多角形で軸線方向に貫通孔が形成された熱伝導性の良好な棒状体(例えば、銅、アルミニウム、熱伝導樹脂)を用意する。所望により、側面に開孔を設けてもよい。この棒状体の外周面(更に、必要に応じて開口内周面)に、適当な方法で絶縁層を形成し、その上に化学銅メッキ、電解銅メッキ等を施して導体層を形成し、導体層をパターニングして回路パターンを形成して、光源支持体兼実装基板(14,16)を形成してもよい。その後、所定箇所にLED素子を半田付けする。
【0052】
以上により、光源支持体兼実装基板(14,16)を実現することが出来る。
【0053】
[第3実施形態]
第3実施形態は、伝熱器を採用する点で、第1及び第2実施形態と異なる。即ち、第3実施形態では、図5(A)に示すように、外球内部に伝熱器28を形成することにより、更に冷却・放熱性能の向上を図っている。
【0054】
具体的には、外球内に、熱伝導樹脂を流し込み、硬化させて伝熱器28を形成する。ランプの製造方法で説明したように、外球6の口金2の近傍は加熱され高温に曝されるが、外球トップ部はこのような熱に曝されることはない。従って、予め形成された伝熱器28が、その後の製造工程で熱の影響を受けることはない。
【0055】
試作段階では、伝熱器28は、シリコンにカーボンファイバーを混入した熱伝導樹脂を用いて作成した。しかし、他の熱伝導樹脂(樹脂に金属粉・金属片を混入したもの)を使用してもよい。この伝熱器28に対して、光源支持体14の端部を直接固定する。この場合、光源支持体14の貫通孔15a,15bを流れるガス流の出入りを確保するため、例えば、光源支持体の端部に切り欠き、穴等を設けたり、端部を複数本の脚部状にしたりして、貫通孔を流れるガス流の出入り可能な開口(図示せず。)を形成する。伝熱器28に対して、光源支持体14の端部を直接固定することで、LED素子の発熱が光源支持体14から伝熱器28に高い効率で熱伝導され、冷却・放熱効果が向上する。
【0056】
[第4実施形態]
第4実施形態は、追加放熱器30の採用を採用する点で、第3実施形態と異なる。図4(B)に示すように、第3実施形態の伝熱器28対して、第4実施形態では外球外部に追加放熱器30を形成している。外球トップ部の外形形状に合致するように追加放熱器30を形成し、外球トップ部に圧入し又は適当な接着剤で固着する。
【0057】
外球内の伝熱器28と外球外部の追加放熱器30とは、外球のガラスを介して熱的伝導関係にあるため、伝熱器28の熱は追加放熱器30を介して効率良く外気に放出されることになる。
【0058】
[本実施形態の利点・効果]
(冷却・放熱効果)
(1)図2(A)に示すLEDランプ10を、冷却・放熱の観点から説明する。発熱源であるLED素子18は、板厚の薄いプリント配線板或いは所望により良好な熱伝導性の金属ベース基板又は金属コア基板16に搭載されている。実装基板16は、熱伝導性の良好な光源支持体14に面接触状態で固定されている。このため、LED素子の発熱は、実装基板16を介して光源支持体14まで高い効率で熱伝導される。
【0059】
光源支持体14には、軸線方向に貫通孔15が形成されているため、貫通孔15の内部の熱くなったガスは貫通孔を上方へ移動し光源支持体14から放出され、代わりに貫通孔15の下方から新たな冷たいガスが流入する。このため、図2(A)の矢印23に示すようなガス流の循環が発生する。(なお、ランプ10を上下反転して口金2を下側にした場合は、ガス流の循環は矢印23と逆方向となる。)ガス流の循環23により、光源支持体14の外周面及び貫通孔15の内周面、並びに実装基板16及びLED素子18は、循環ガス流23により冷却・放熱される。即ち、光源支持体14は、LED素子18の支持体、LED素子の発熱の伝導体、及び循環ガスの流路形成体として機能している。
【0060】
外球6の内部には、ヘリウム等の低分子量ガスが充填されているので熱伝導率が高く、LED素子18,光源支持体14等の熱は高い効率で外球内部の循環ガス流23によって冷却・放熱される。外球6の周囲は外気に曝されているので、循環ガス流23の熱は最終的に外気に向かって放熱される。
【0061】
図6は、図2(A)に示す第1実施形態に係るLEDランプに封入ガスとしてヘリウムガスを用い、銅製の光源支持体14にLED素子18を取り付けた試作品における「LED素子の電力−LED素子温度」の測定結果のグラフである(図中●(黒丸))。比較例として、ヘリウムガスの代わりに空気を用いた測定結果を示す(図中▲(黒三角))。グラフから、典型的な電力20Wで両者を比較すると、空気を使用した場合のLED素子温度は約128℃を示しているのに対して、ヘリウムガスを使用した場合のLED素子温度は約108℃にとどまる。従って、空気に比べて、ヘリウムガスによる冷却・放熱効果は、約20℃の温度低下となって現れている。
【0062】
ここで、外気常温を20℃とすると、空気を使用した場合のLED素子の発熱分は、外気常温との差分(128−20=)108℃であり、ヘリウムガスを使用した場合のLED素子の発熱分は(108−20=)88℃である。両者の比は88/108=81%となり、空気に換えてヘリウムガスを使用することにより、冷却・放熱効果としてLED素子の温度を19%抑制することができる。
【0063】
約20℃の温度低下により、LED素子の寿命の長期化が図れる。或いは、LED素子の寿命を同程度に設定した場合には、20℃の温度上昇が許容され、更なる出力のアップが可能となる。図6を参照すると、LED素子温度を100℃とすると、空気を用いた場合は14Wまで、ヘリウムガスを用いた場合は18Wまで、ランプ内にLED素子を配置することが許容される。各LED素子が1Wの場合、空気を用いた場合にはLED素子は最大14個までしか封入できないが、ヘリウムガスを用いることによりLED素子を最大18個まで封入することができる。これにより、一層明るいLEDランプを実現できる。
【0064】
(2)外球内部に伝熱器28を形成し、光源支持体14を固定・接続することにより、LED素子18からの熱伝導の効率を向上できる。
【0065】
(3)外球外に追加放熱器30を形成し、外球内の伝熱器28と熱的伝導関係にすることにより、伝熱器28からの熱伝導の効率を向上できる。
【0066】
(その他の効果)
(a)口金2と外球6との間は気密封止され、外球内部と外部の間は気密状態となっている。そのため、外球外部からの湿気、水分、化学工場等における腐食性ガス等が外球内部へ侵入することはない。そのため、LED素子18、関連する回路パターン、その他の構成部材が腐食等することがない。
【0067】
(b)外球内部は、低分子量ガスで満たされているため、酸素は存在しなく、LED素子18、関連する回路パターン、その他の構成部材が酸化、腐食することもない。
【0068】
(c)口金2と外球6との間を気密封止構造に形成することは、本出願人が長年の白熱電球、HIDランプ等で培った製造技術を利用できる。
【0069】
(d)ランプ10を屋外で使用した場合、図1に示すような樹脂製グローブ106は、紫外線により劣化し、変色、ひび割れしたりする。しかし、本実施形態に係るLEDランプは、外球に硬質ガラスを使用しているため、紫外線による劣化は無く、屋外での長期間の使用に耐える。
【0070】
(e)ランプを海岸付近で使用した場合、図1に示すようなアルミダイキャスト104は、塩害により、表面の変色、腐食が発生する。そのため、塗装等の表面処理で対応する必要がある。しかし、本実施形態にかかるLEDランプ外球の硬質ガラスは、塩害の影響は受けず、海岸付近での長期間の使用に耐える。
【0071】
[まとめ]
以上により、本発明に係るLEDランプの実施形態に付いて説明したが、これらは例示であって、本発明を限定するものではない。当業者が容易に成し得る実施形態に対する追加・削除・変更・改良等は、本発明の範囲内である。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。
【符号の説明】
【0072】
2:口金、 6:外球、 8:ステム、 10:LEDランプ、 12:絶縁性チューブ、 14:光源支持体、 (14,16):光源支持体兼実装基板、 15a,15b:貫通孔、 16:実装基板、 18,18−1,18−2,18−3,18−4:LED素子、 20:支柱、 21:熱伝導シート、 22:内部空間、 24:熱遮蔽部材、 28:伝熱器、 30:追加放熱器、 32:ガス流加速用ファン、 100:LEDランプ、 102:口金、 104:放熱部,アルミダイキャスト部分、 106:グローブ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のLED素子と、
前記LED素子を包囲するガラス製密封容器とを備え、該ガラス製密封容器の内部には低分子量ガスが封入されている、LEDランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のLEDランプにおいて、
前記低分子量ガスは、ヘリウムガス、水素ガス、ネオンガス又はこれらの任意の組み合わせの混合ガスのいずれかを含む、LEDランプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のLEDランプにおいて、
前記ガラス製密封容器の端部には口金が形成され、容器の内部と外部との間は気密状態が保持されている、LEDランプ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のLEDランプにおいて、更に、
軸線方向に沿って貫通孔を有する棒状体の光源支持体を備え、
前記複数個のLED素子は、前記光源支持体の側面に固定され、
前記光源支持体の貫通孔は、前記低分子量ガスが流れるガス流路を形成している、LEDランプ。
【請求項5】
請求項4に記載のLEDランプにおいて、
前記光源支持体は、断面形状が多角形である、LEDランプ。
【請求項6】
請求項4に記載のLEDランプにおいて、更に、
前記光源支持体の貫通孔の上端、下端又はその両方の近傍にガス流加速ファンを備えている、LEDランプ。
【請求項7】
請求項4に記載のLEDランプにおいて、
前記光源支持体は、少なくとも、アルミニウム、銅、又は熱伝導樹脂を含む良好な熱伝導性を有する部材から成る、LEDランプ。
【請求項8】
請求項4に記載のLEDランプにおいて、
前記光源支持体には、前記複数個のLEDが搭載された実装基板が固定されている、LEDランプ。
【請求項9】
請求項8に記載のLEDランプにおいて、
前記実装基板は、金属ベース基板又は金属コア基板である、LEDランプ。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のLEDランプにおいて、更に、
複数枚の矩形の基板を備え、
前記基板は、全体としてガス流路を形成するように側端部を相互接続し、
前記複数個のLED素子は、前記複数枚の矩形の基板の表面に夫々搭載されている、LEDランプ。
【請求項11】
請求項4に記載のLEDランプにおいて、更に、
前記口金とは反対側である前記ガラス製密封容器のトップ部内側に、前記光源支持体に対して固定された熱伝導樹脂から成る伝熱器を備え、該光源支持体には、前記貫通孔を流れるガス流の出入り可能な開口が形成されている、LEDランプ。
【請求項12】
請求項11に記載のLEDランプにおいて、更に、
前記ガラス製密封容器のトップ部外側に、前記伝熱器に前記ガラス製密封容器を挟んで熱的伝導関係にある追加熱放熱器を備えている、LEDランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−156036(P2012−156036A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14841(P2011−14841)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】