説明

LEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物及びこれを用いたLEDリフレクター、LED照明器具

【課題】熱劣化による変色が小さく耐熱変色性に優れ、これを用いたLEDランプが長寿命であって、比較的安価でしかも材料の保存安定性、ハンドリング性、加工性に優れた汎用のLEDリフレクター用樹脂組成物及びこれを用いたLEDリフレクター、LED照明器具を提供する。
【解決手段】不飽和ポリエステル樹脂、重合開始剤、無機充填剤、白色顔料、離型剤、及び補強材を少なくとも含む乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、不飽和ポリエステル樹脂が、組成物全体量に対して14〜40質量%の範囲内であり、無機充填剤と白色顔料の配合量の合計が、組成物全体量に対して44〜74質量%の範囲内であり、無機充填剤と白色顔料の配合量の合計に占める白色顔料の割合が30質量%以上であり、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和アルキッド樹脂と架橋剤が混合されたものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱変色性に優れたLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物及びこれを用いたLEDリフレクター、LED照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、その活用が急速に拡大しているLEDにおいて、LEDの初期の輝度を如何に長く保つことができるかが課題となっている。
【0003】
LEDの輝度低下の要因は、構成されているLEDリフレクターの熱変色による反射率の低下であり、熱による変色の少ない素材の採用がLEDの寿命延長の要因となっている。
【0004】
従来より、耐熱変色性の良好なセラミックス製のLEDリフレクターが知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、セラミックスは加工性に限界があり、また、価格が高いことから、汎用のLEDリフレクターとしては適していないという問題がある。
【0005】
そこで、蛍光ランプや白熱電球等に替わる光源としてのLEDのための汎用リフレクターとしては、従来より照明用として知られてもいるナイロンやポリアミド樹脂を用いている(例えば特許文献2〜4参照)。これらは比較的耐熱性が良好であって安価でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/013899号公報
【特許文献2】特開平6−200153号公報
【特許文献3】特開2002−374007号公報
【特許文献4】特開2010−100682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、耐熱性のナイロンやポリアミド樹脂製のLEDリフレクターは、熱による変色が大きく、LEDランプの寿命が短いという欠点を有していた。
【0008】
そこで、熱劣化による変色が小さいという特徴のある熱硬化性のエポキシ樹脂成形材料を用いることが進められているが、エポキシ樹脂成形材料はリードフレームとの密着性が良好である反面、成形時に発生するバリもフレームとの密着性が良く、このバリの除去が必ずしも容易でない。また、エポキシ樹脂成形材料は材料の保管を低温で行う必要がある。
【0009】
しかも、エポキシ樹脂成形材料は比較的高価であって、射出成形が容易ではない等の欠点も有している。このため、エポキシ樹脂成形材料は汎用LEDリフレクターには適していない。
【0010】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、熱劣化による変色が小さく耐熱変色性に優れ、これを用いたLEDランプが長寿命であって、比較的安価でしかも材料の保存安定性、ハンドリング性、加工性に優れた汎用のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物及びこれを用いたLEDリフレクター、LED照明器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために以下のことを特徴としている。
【0012】
即ち、本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂、重合開始剤、無機充填剤、白色顔料、離型剤、及び補強材を少なくとも含む乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、不飽和ポリエステル樹脂が、組成物全体量に対して14〜40質量%の範囲内であり、無機充填剤と白色顔料の配合量の合計が、組成物全体量に対して44〜74質量%の範囲内であり、無機充填剤と白色顔料の配合量の合計に占める白色顔料の割合が30質量%以上であり、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和アルキッド樹脂と架橋剤が混合されたものであることを特徴とする。
【0013】
このLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物においては、無機充填剤が、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0014】
このLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物においては、白色顔料が、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0015】
このLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物においては、白色顔料の配合量が、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して100〜300質量部の範囲内であることが好ましい。
【0016】
このLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物においては、白色顔料の平均粒径が2.0μm以下であることが好ましい。
【0017】
このLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物においては、無機充填剤と白色顔料の配合量の合計が、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して500質量部以下であり、無機充填剤の平均粒径が250μm以下であることが好ましい。
【0018】
このLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物においては、補強材がガラス繊維であり、補強材の配合量が不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して10〜100質量部であることが好ましい。
【0019】
本発明のLEDリフレクターは、前記LEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
【0020】
このLEDリフレクターにおいては、射出成形法により成形されたものであることが好ましい。
【0021】
このLEDリフレクターにおいては、成形後、ブラスト処理によりバリ取りが行われていることが好ましい。
【0022】
本発明のLED照明器具は、前記LEDリフレクターが装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物によれば、LEDリフレクターとしたときの熱劣化による変色が小さく耐熱変色性に優れ、LEDランプが長寿命であって、安価で、樹脂組成物の保存安定性、ハンドリング性が良好で、トランスファー成形とともに射出成形が可能である等の加工性に優れたLEDリフレクター用樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】LED電球の概略断面図である。
【図2】LEDリフレクターの、反射率の経時変化(波長:460nm)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂として、50℃以上で軟化を開始する不飽和アルキッド樹脂を用いている。
【0026】
本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物である。ここで乾式とは30℃以下の温度範囲において固体であり、粉砕加工や押出しペレット加工により粒状に加工できることを意味する。
【0027】
不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和アルキッド樹脂と共重合性モノマー等の架橋剤とを混合して得られる。共重合性モノマーは、樹脂組成物作成時に他の混合物と共に樹脂に混合されるが、樹脂組成物作成前に樹脂と混合されていても良い。
【0028】
不飽和アルキッド樹脂は、不飽和多塩基酸類、飽和多塩基酸類とグリコール類とを脱水縮合反応させて得られるものである。
【0029】
不飽和多塩基酸類としては、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等を挙げることができる。
【0030】
飽和多塩基酸類としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸等を挙げることができる。
【0031】
グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド化合物、ジブロムネオペンチルグリコール等を挙げることができる。
【0032】
本発明では、不飽和アルキッド樹脂の中でも、溶融粘度1000〜2500cPの不飽和アルキッド樹脂を好適に用いることができ、特に、イソフタル酸系不飽和アルキッド樹脂、テレフタル酸系不飽和アルキッド樹脂を好適に用いることができる。
【0033】
これらの不飽和アルキッド樹脂を用いることにより、成形性及び耐熱変色性に優れたLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物とすることができる。
【0034】
不飽和アルキッド樹脂と混合する架橋剤としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等のビニル系共重合性モノマーを用いることができる。
【0035】
また、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどの共重合性モノマーを用いることができる。さらにまた、これらのプレポリマーを用いることができる。
【0036】
本発明では、特にジアリルフタレートプレポリマー、ジアリルフタレートモノマー、スチレンモノマーを好適に用いることができる。また、これらの架橋剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0037】
不飽和ポリエステル樹脂中の不飽和アルキッド樹脂と架橋剤の比率は質量比で99/1〜50/50の範囲である。なお、架橋剤としてモノマーを用いる場合、モノマーの配合量が多くなると常温固形の乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物にならないため、モノマーの配合量は不飽和ポリエステル樹脂100質量部中10質量部以下とするのが好ましい。
【0038】
不飽和ポリエステル樹脂の配合量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物全体量に対して14〜40質量%の範囲内である。
【0039】
本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、重合開始剤として、通常不飽和ポリエステル樹脂組成物に用いられる加熱分解型の有機過酸化物を用いることができる。
【0040】
これらのものとしてはt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド等を挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
これらの中でも、10時間半減期温度が100℃以上の有機過酸化物を用いることが好ましく、具体的にはジクミルパーオキサイドを好適に用いることができる。
【0042】
本発明では、白色顔料として酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群から選択される1種以上を配合する。
【0043】
本発明では、これらの白色顔料のなかでも、特に酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムを好適に用いることができる。
【0044】
酸化チタンとしては、例えば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルサイト型酸化チタンを挙げることができる。これらの中でも熱安定性に優れたルチル型酸化チタンを好適に用いることができる。
【0045】
酸化アルミニウム、チタン酸バリウムは、例えば、公知のものであれば特に制限なく用いることができる。
【0046】
白色顔料の平均粒径は、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは0.1〜1.0μm、さらに好ましくは0.3〜0.7μmの範囲である。なお、平均粒径はレーザー回折散乱法等により測定することができる。
【0047】
本発明において、白色顔料の配合量は、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して好ましくは100質量部以上、より好ましくは100〜300質量部の範囲である。
【0048】
白色顔料の配合量をこの範囲内とすることにより、耐熱変色性に優れ、白色で高い反射率を有するLEDリフレクターとすることができる。
【0049】
また本発明では、無機充填剤としてシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群から選択される1種以上を配合する。
【0050】
本発明では、これらの無機充填剤のなかでも特にシリカを好適に用いることができ、これらのものとしては、例えば、溶融シリカ粉末、球状シリカ粉末、破砕シリカ粉末、結晶シリカ粉末を挙げることができる。
【0051】
無機充填剤の平均粒径は、好ましくは250μm以下、より好ましくは10〜100μmの範囲である。平均粒径をこの範囲とすることにより、良好な成形性と、耐熱変色性及び耐湿性に優れたLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物とすることができる。なお、平均粒子径はレーザー回折散乱法等により測定することができる。
【0052】
本発明において、無機充填剤の配合量は、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して好ましくは50質量部以上、より好ましくは50〜250質量部の範囲である。
【0053】
この配合範囲とすることにより、優れた成形性を有するLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物とすることができ、これを用いて成形することにより、優れた耐熱変色性と高い反射率を有するLEDリフレクターを得ることができる。
【0054】
白色顔料と無機充填剤の配合量の合計は、不飽和ポリエステル樹脂組成物全体量に対して44〜74質量%、好ましくは50〜72質量%の範囲内である。
【0055】
また、白色顔料と無機充填剤の配合量の合計に占める白色顔料の割合は30質量%以上、好ましくは40〜85質量%の範囲内である。
【0056】
さらに、白色顔料と無機充填剤を合わせた場合の配合量の合計量は不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して好ましくは500質量部以下、より好ましくは100〜400質量部の範囲である。白色顔料と無機充填剤の配合量の合計量をこの範囲とすることにより、適正な樹脂の流動性とすることができ、良好な成形性が得られる。
【0057】
なお、白色顔料、無機充填剤は、より微粒になるほど凝集や吸油等が生じやすく、充填が困難になることがあるため、表面が脂肪酸やカップリング剤等で表面処理されていてもよい。
【0058】
また、本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物には、樹脂組成物の流動性や、LEDリフレクターとしたときの反射率を阻害しない範囲において、他の無機充填剤を適宜配合することができる。
【0059】
これらのものとしては、酸化物及びその水和物、無機発泡粒子、シリカバルーン等の中空粒子等を挙げることができる。
【0060】
本発明に用いられる補強材としては、通常、BMC、SMC等のFRPに用いられる不飽和ポリエステル樹脂組成物の補強材として使用されるものであれば制限なく用いることができる。
【0061】
これらものとしては、例えば、ガラス繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー等を挙げることができ、これらの中でも、ガラス繊維を好適に用いることができる。
【0062】
ガラス繊維としては、珪酸ガラス、ホウ珪酸ガラスを原料とするEガラス(電気用無アルカリガラス)、Cガラス(化学用含アルカリガラス)、Aガラス(耐酸用ガラス)、Sガラス(高強度ガラス)等のガラス繊維を挙げることができ、これらを長繊維(ロービング)、短繊維(チョップドストランド)としたものを用いることができる。
【0063】
さらに、これらのガラス繊維に対して表面処理を施したものを用いることもできる。
【0064】
本発明では、特に、繊維径10〜15μmのEガラス繊維を酢酸ビニル等の収束剤にて収束し、シランカップリング剤にて表面処理した後、3〜6mmにカットされたチョップドストランドを好適に用いることができる。
【0065】
補強材の配合量は、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して好ましくは10〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは20〜80質量部の範囲である。
【0066】
この条件で補強材を用いることにより、強度特性に優れ、硬化収縮を抑え、優れた反射率を有するLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物とすることができる。
【0067】
本発明に用いられる離型剤としては、一般に熱硬化性樹脂に用いられる脂肪酸系、脂肪酸金属塩系、鉱物系等のワックス類を用いることができ、特に、耐熱変色性に優れた脂肪酸系、脂肪酸金属塩系のものを好適に用いることができる。
【0068】
これらのものとしては、具体的にはステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムを挙げることができる。これらの離型剤は単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0069】
これらの離型剤は、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して4〜15質量部の範囲で配合することができる。離型剤の配合量がこの範囲であると、良好な離型性と優れた外観を両立させることができ、LEDリフレクターとしたときに最適な反射率とすることができる。
【0070】
本発明においては、これらの配合成分以外に、不飽和ポリエステル樹脂の硬化条件を調整するための硬化触媒及び重合禁止剤、着色剤、増粘剤、その他有機系添加剤、無機系添加剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0071】
本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、各成分を配合して、ミキサー、ブレンダー等を用いて十分均一に混合した後、加圧ニーダー、熱ロール、エクストルーダー等にて混練し、粉砕・整粒して製造することができる。
【0072】
なお、重合開始剤は火災・爆発に対してより安全性を高めたマスターバッチとして使用するのが好ましい。
【0073】
このような配合による本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物は乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物であるので、配合成分として液状物を用いることにより、本発明の乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物の乾式の条件以外の、粘性を有する湿式不飽和ポリエステル樹脂組成物や、エポキシ樹脂組成物等とは異なり、保存安定性及びハンドリング性に優れている。
【0074】
また、これを用いたLEDリフレクターは、種々慣用の熱硬化性樹脂組成物の成形方法により成形することができ、熱劣化による変色が小さく、LED電球等のLED照明器具の寿命が長い安価なLEDリフレクターを製造することができる。
【0075】
また、本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、乾式で、かつ溶融時の熱安定性が良好なため、成形方法として、射出成形法、射出圧縮成形法、トランスファー成形法等の溶融加熱成形法を好適に用いることができる。
【0076】
これらの中でも射出成形機を用いた射出成形法が特に好適であり、射出成形法により成形時間をより短くすることができ、複雑な形状のLEDリフレクターを製造することが可能となる。
【0077】
なお、本発明の乾式の条件以外の、粘性を有する湿式不飽和ポリエステル樹脂組成物の場合には、通常のペレット状とすることができないため、ハンドリング性が悪く、射出成形機で成形する場合にはホッパーにプランジャー等の設備を設ける必要があり、製造コストがかかる。
【0078】
これに対し、本発明のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、乾式のペレット状であるため保存安定性に優れ、射出成形機のホッパーから投入するのみで成形が可能であるためハンドリング性に優れている。また、製造コストを低く抑えることができる。
【0079】
また、熱硬化性樹脂のため、成形したLEDリフレクターのフレーム上にバリが発生するが、密着性が低いため容易にバリを除去することが可能である。
【0080】
発生したバリの除去は、例えば、公知の方法により行うことができるが、なかでも不飽和ポリエステル樹脂組成物のバリ除去に広く実施されているブラスト処理により行うことが好ましい。
【0081】
ブラスト処理としては、通常、バリ取りに用いられるブラスト処理法を用いることができ、これらのものとしては、例えばショットブラスト、サンドブラスト、ガラスビーズブラスト等を挙げることができる。
【0082】
本発明のLED照明器具は、上記のようにして得られるLEDリフレクターを装着して構成されている。図1に、本発明のLED照明器具の例としてLED電球の概略断面図を示す。LEDリフレクター3は、リードフレーム1上に実装されたLED素子2の発光を効率よく反射するための反射板であり、その形状は実装されるLED素子2の光量や色、指向性特性等を考慮して適宜設計することができる。
【0083】
また、LEDリフレクター3は、リードフレーム1との密着性を考慮して、図1に示すようにリードフレーム1を抱え込む構造とするのが好ましい。
【0084】
さらに、金属製のリードフレーム1を用いる場合には、LEDリフレクター3との密着性を向上させるために、トリアジン系化合物等による金属表面処理を施すことも考慮される。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0086】
<LEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造>
表1に示す実施例1〜9及び表2に示す比較例1〜6のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を、各配合成分、配合量にて配合し、配合物をシグマブレンダーにて均一に混合した後、100℃に加熱した熱ロールにて混練しシート状の混練物を作成し、これを冷却・粉砕・整粒し粒状の樹脂組成物を作製した。
【0087】
配合成分としては以下のものを用いた。
(1)樹脂
不飽和アルキッド樹脂:テレフタル酸系不飽和アルキッド樹脂 日本ユピカ社製 ユピカ8552
エポキシ樹脂:トリグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100) 日産化学工業(株)製 TEPCIC-S
ナイロン樹脂:ナイロン46樹脂(STANYL)
【0088】
(2)架橋剤
架橋剤1:ジアリルフタレートプレポリマー ダイソー(株)製 ダップポリマー
架橋剤2:ジアリルフタレートモノマー ダイソー(株)製 ダップモノマー
架橋剤3:スチレンモノマー
【0089】
(3)重合開始剤
ジクミルパーオキサイド(40%マスターバッチ) 日油(株)製 パークミルD40
(4)エポキシ樹脂硬化剤
ヘキサヒドロ無水フタル酸 新日本理化(株)製 リカシッドHH
【0090】
(5)白色顔料
白色顔料1:酸化チタン(ルチル型酸化チタン 平均粒径0.4μm) タイオキサイドジャパン(株)製 Tioxide R-TC30
白色顔料2:酸化アルミニウム(平均粒径0.5μm)
白色顔料3:チタン酸バリウム(平均粒径0.4μm)
【0091】
(6)無機充填剤
無機充填剤1:シリカ(溶融シリカ 平均粒径25μm) 電気化学工業(株)製 FB820
無機充填剤2:水酸化アルミニウム(平均粒径29μm)
【0092】
(7)離型剤
離型剤:ステアリン酸亜鉛 堺化学工業(株)製 SZ−P
【0093】
(8)補強材
補強材:ガラス繊維(3mm長) オーエンスコーニングジャパン社製 CS03IE830A
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
<評価方法>
(1)射出成形性
表1に示す実施例1〜9及び表2に示す比較例1〜6の配合割合のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を、射出成形機(松田製作所製、150トン 熱硬化性射出成形機)により、金型温度160℃・硬化時間60秒の条件で、JISK6911に準拠した成形収縮率測定用テストピースを作成し、目視にて実成形評価を行った。
良好なものを○、不良のものを×とした。その結果を表1、2に示す。
【0097】
(2)トランスファー成形性
表1に示す実施例1〜9及び表2に示す比較例1〜6の配合割合のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を、トランスファー成形機(50トン プランジャー式トランスファー成形機)により、JISK6911に準拠した成形収縮率測定用テストピースを作成し、目視にて実成形評価を行った。
良好なものを○、不良のものを×とした。その結果を表1、2に示す。
【0098】
(3)反射率経時変化
表1に示す実施例1〜9及び表2に示す比較例2、5の配合割合のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を、成形機(松田製作所製、150トン 熱硬化性射出成形機)により、また、比較例4、6の配合割合のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を、成形機(50トン プランジャー式トランスファー成形機)により、JISK6911に準拠した反射率経時変化用テストピースを作成した。
【0099】
このテストピースに、波長:460nmのLEDを取り付け、150℃での各LEDリフレクターの反射率経時変化を反射率測定器(日本電色工業株式会社製分光色彩計)で測定した。
【0100】
実施例4、比較例4、5のLEDリフレクターの反射率経時変化のグラフを図2に示す。
図2のグラフでは、
実施例4(不飽和ポリエステル樹脂製LEDリフレクター)(●)、
比較例4(エポキシ樹脂製LEDリフレクター)(■)、
比較例5(ナイロン樹脂製LEDリフレクター)(◆)を示している。
また、実施例1〜9及び比較例2、4〜6の初期反射率と1000時間後の反射率を表1、2に示す。
【0101】
(4)耐熱変色性
上記反射率経時変化において、150℃、1000時間処理後のテストピース表面の反射率を反射率測定器(日本電色工業株式会社製分光色彩計)で測定した。
【0102】
反射率測定波長は460nmで行い、反射率が70%以上のものを○、70%未満のものを×、測定不能のものを−とした。その結果を表1、2に示す。
【0103】
(5)ブラストバリ処理性
表1に示す実施例1〜9及び表2に示す比較例2、5の配合割合のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を、射出成形機により、また、比較例4、6の配合割合のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を、トランスファー成形機により、JISK6911に準拠した、ブラストバリ処理性用テストピースを作成した。
各テストピースについてブラスト処理(ドライブラスト法、ビーズ種類:ナイロン 条件:0.1〜0.2MPaの風量で1m/min)し、目視にてブラストバリ処理性評価を行った。
良好なものを○、不良のものを×とした。その結果を表1、2に示す。
【0104】
(6)保存安定性
表1に示す実施例1〜9及び比較例2、4〜6の配合割合のLEDリフレクター用樹脂組成物の外観を20℃の条件で観察し、樹脂組成物が初期の状態からの変化があるか否かで保存安定性を判定した。
変化が無いものを○とし、変化があるものを×とした。
【0105】
<評価結果>
本発明の配合量範囲を満足する実施例1〜9では、射出成形性、トランスファー成形性、及びブラストバリ処理性、保存安定性の結果において全て良好な結果が得られた。また、特に無機充填剤としてのシリカの配合が射出成形性に対して有効であり、耐熱変色性にも好影響を及ぼすことが確認された。
【0106】
全体量に対して不飽和ポリエステル樹脂の配合量が40質量%を越え、無機充填剤を含まない比較例1、不飽和ポリエステル樹脂が14質量%未満で、白色顔料と無機充填剤の配合量が74質量%を超えている比較例3では、射出成形性の結果が不良であり、耐熱変色性の反射率も測定不能であった。
【0107】
酸化チタンとシリカの配合量に占める酸化チタンの割合が30質量%未満である比較例2では、射出成形性は良好であったが耐熱変色性の反射率が70%以下の結果であった。
【0108】
反射率経時変化では、比較例4のエポキシ樹脂製及び比較例5のナイロン樹脂製LEDリフレクターは、初期反射率は本発明の不飽和ポリエステル製LEDリフレクターよりも高い反射率を示しているものの、時間の経過とともに反射率が低下し、1000時間経過時には実施例4の不飽和ポリエステル樹脂製LEDリフレクターの反射率よりも低い値となっている。
【0109】
このことから、実施例4の不飽和ポリエステル樹脂製LEDリフレクターは、比較例4のエポキシ樹脂製及び、比較例5のナイロン樹脂製LEDリフレクターに比べて、反射率の経時変化が少ないことが確認された。
【0110】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂製LEDリフレクターは、表1からも明らかなように、波長が460nmのLEDで、初期の反射率が90%以上であり、150℃、1000時間の経過時に70%以上の反射率を有していることが確認された。
【0111】
また、保存安定性については、常温で硬化反応が進行するエポキシ樹脂組成物である比較例4及び、常温で架橋剤のスチレンモノマーが揮発を起こす湿式不飽和ポリエステル樹脂組成物である比較例6では、初期状態からの増粘が起こり、不良であった。
【符号の説明】
【0112】
1 リードフレーム
2 LED素子
3 LEDリフレクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリエステル樹脂、重合開始剤、無機充填剤、白色顔料、離型剤、及び補強材を少なくとも含む乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、前記組成物全体量に対して14〜40質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計が、前記組成物全体量に対して44〜74質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計に占める前記白色顔料の割合が30質量%以上であり、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和アルキッド樹脂と架橋剤が混合されたものであることを特徴とするLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機充填剤が、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記白色顔料が、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記白色顔料の配合量が、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して100〜300質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記白色顔料の平均粒径が2.0μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計が、前記不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して500質量部以下であり、前記無機充填剤の平均粒径が250μm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記補強材がガラス繊維であり、前記補強材の配合量が前記不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して10〜100質量部であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形してなることを特徴とするLEDリフレクター。
【請求項9】
射出成形法により成形されたものであることを特徴とする請求項8に記載のLEDリフレクター。
【請求項10】
成形後、ブラスト処理によりバリ取りが行われていることを特徴とする請求項8又は9に記載のLEDリフレクター。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載のLEDリフレクターが装着されていることを特徴とするLED照明器具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−229390(P2012−229390A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171141(P2011−171141)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【特許番号】特許第4844699号(P4844699)
【特許公報発行日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】