説明

LED光源モジュール

【課題】
LEDチップからの発熱を、2次冷却系まで効果的に放熱させることができるLED光源モジュールを得ること。
【解決手段】
熱抵抗の低い実装構造を実現するため、LEDチップを搭載したシリコン製サブマウントを金属配線基板のベース金属上に直接配置したLED光源モジュール構造において、LEDチップ、シリコン製サブマウント、金属配線基板を所定の配置とすることにより、LEDチップからの発熱を金属配線基板側へ有効に拡散させ、高い放熱効果を与えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDチップを複数用いたLED光源モジュールの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話や携帯情報端末機等に用いられる小型液晶ディスプレイのバックライト光源には、低出力タイプのLEDチップが用いられている。一方、テレビやパソコン等に用いられる大型液晶ディスプレイ用のバックライト光源には、高い光出力が得られる冷陰極管が使用されている。ところが近年、1W程度の電力を投入することが可能な高出力タイプのLEDチップの実用化に伴い、これらを用いた大型液晶ディスプレイでの利用が可能な液晶バックライト用LED光源モジュールの開発が行われている。
通常、バックライト光源に用いるLED光源モジュールには、長尺の配線基板上に赤、青、緑の3原色のLEDチップを、長手方向へ等間隔に配置した構造からなるLED光源が用いられる(例えば、特許文献1)。このようなLED光源から得られる白色光を導光板へ導入し、面発光をさせることによって液晶ディスプレイ用のバックライトとして機能させる。また、赤、青、緑のLEDチップを1組としてサブマウント上に配列し、更に、長尺の配線基板の長手方向に平行にこのサブマウントを配置した構造からなるLED光源モジュールが用いられることもある(例えば、特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−178048
【特許文献2】特開平8−116401
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、LEDバックライトを大型液晶ディスプレイに適用するためには、高い光出力が必要とされる。そのため、LEDチップへの投入電力が増加し、LEDチップからの発熱量が多くなる。LEDチップの信頼性を確保するためには、発生した熱を効果的に放熱させる光源モジュール構造が必要となる。
そこで本発明は、高い光出力を得ると共に、LEDチップからの発熱を効果的に放熱させることが可能なモジュール構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
複数のLEDチップをサブマウント上に直列配列させた際の発熱密度は、配列の短辺方向に比べ、長手方向の方がLEDチップが隣合っているために高くなる。そこで、本発明では、LEDチップからの熱を効果的に放熱させるために、赤、青、緑のLEDチップを一列に搭載したシリコン製サブマウントを、LEDチップの配列方向が金属配線基板の長手方向に対して直交配列とすることによって、金属配線基板の長手方向へ放熱させることを特徴とする。更に、LEDチップからの熱を金属配線基板の垂直方向へ効果的に放熱させるために、シリコン製サブマウントを金属配線基板上に形成した凹部に直接搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、LED光源モジュールを効果的に放熱することが可能となり、高い光出力を得ることが可能なLED光源モジュールを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、サブマウントの材料として、熱伝導率が高く、微細配線形成が可能であり、更に、大量生産による低コスト化が可能なシリコンを用いる。また、複数のシリコン製サブマウントを配置し、電気的に相互に接続するために用いられる配線基板には、大型液晶ディスプレイの短部の長さに合わせるために長尺化が可能であり、更に、高い放熱効果を有した材料を用いるのが好ましい。そこで本発明では、機械的強度及び熱伝導率の高い、金属を配線基板とした。以下に、本発明の実施形態について添付図面に従って説明する。
【実施例1】
【0008】
図1に本発明のLED光源モジュール4の断面図を示す。複数のLEDチップ3を実装したシリコン製サブマウント2を、長尺の金属配線基板1の長手方向に複数配置した構造からなる。ここで、各シリコン製サブマウント2上には、赤、青、緑の3原色のLEDチップを実装し、これらを混色することによって白色光が得られるようになっている。図2に、4個のLEDチップ3をシリコン製サブマウント2上に一列に実装したシリコン製サブマウントの平面図を示す。各色のLEDチップ3の個数は、ホワイトバランスを揃えるため、赤を1個、青を1個、緑を2個とし、両側に緑のLEDチップを配置してある。両側に発熱量の最も多い緑のLEDチップを配置することにより、最も効率的な放熱効果が得られる。図3には、従来例を示す。一般に、LEDチップ3を一列に実装したサブマウントは、色むらを低減させるため、LEDチップ3の配列方向と金属配線基板1の長手方向が平行になるように配置される。本発明では、図4に示したように、シリコン製サブマウント2上のLEDチップ3の配列方向を、金属配線基板1の長手方向に対して直交するように配置することを特徴としている。図5に、本発明のLED光源モジュール4を用いたバックライト光源16の全体図を示す。LED光源モジュール4は、導光板14の端部に相対して配置されており、LEDから放出される光はレンズ15を通して導光板14に導かれ、液晶パネルの背面を照射する。LED光源モジュールを、図4のようなバックライト光源へ適用する場合、液晶ディスプレイの厚みを薄くするため、金属配線基板の短辺の長さは短い方が好ましい。
【0009】
図4に示した本発明の構造では、発熱密度の高いシリコン製サブマウントの長辺が、金属配線基板の長手方向に対して直交に配置しているため、LEDチップからの熱は金属配線基板の長手方向へ効果的に放熱される。LEDチップ3から発生した熱は、シリコン製サブマウント上でLEDチップが一列に配置されていることから、その発熱密度は、図2のAMで示したシリコン製サブマウントの短辺よりも、ANで示した長辺の方が高くなる。これは、隣合ったLEDチップからの発熱による影響を受けるためであり、LEDチップ間の間隙が狭いほど、この影響は高くなる傾向にある。よって、図3に示した従来の配置方法の場合、放熱性を確保するために、シリコン製サブマウントの長辺と金属配線基板1の長手方向の辺との間隙を充分広くすることが必要となる。一方、図4に示した本発明の場合、発熱密度が高くなるシリコン製サブマウントの長辺は、金属配線基板1の長手方向と垂直に配置されているため、シリコン製サブマウントの長辺と金属配線基板1の長手方向の辺との間隔を必要とせず、LEDチップからの発熱は金属配線基板1の長手方向に効果的に拡散される。
【0010】
本発明の詳細構造を図6を用いて説明する。
シリコン製サブマウント2は、シリコン基板10の表面に絶縁層を形成し、この上に配線層12を形成する。当該配線層12上にLEDチップ4を、半田、導電性接着剤、超音波の何れかの手法によって接合する。また、シリコン製サブマウント2の表面に形成する絶縁膜は酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化アルミ膜等を用いることができる。当該シリコン製サブマウント2を、長尺の金属配線基板1の長手方向に沿って配置する。金属配線基板1は、アルミから成るベース基板5と、その上面に形成した絶縁層6及び配線層7から構成される。ここで、シリコン製サブマウント2を搭載する金属配線基板1上の領域を絶縁層6を除去した凹部8とすることにより、ベース基板5とシリコン製サブマウント2を熱抵抗の高い絶縁層6を介さずに直接搭載することによって熱抵抗を低下させることができる。なお、シリコン製サブマウント2と金属配線基板1の接続は、放熱性の高い樹脂、例えば銀ペースト9を用いて行われる。次に、金属配線基板1の配線層7と、シリコン製サブマウント2の配線層12を、ワイヤーボンディング13によって電気的に結線することによって、LED光源モジュール4が製造される。
【実施例2】
【0011】
次に、形状が正方形のシリコン製サブマウント2上に、LEDチップ3を格子状に配置した場合の実施例について説明する。図7は本実施例に用いるシリコン製サブマウントの平面図を示す。なお、正方形のシリコン製サブマウント2の一辺の長さはCとし、LEDチップの一辺の長さをA5とする。シリコン製サブマウント2の形状とLEDチップ3の配置以外のLED光源モジュール4の構造は実施例1と同様である。図7に示したように、LEDチップ3はシリコン製サブマウント2上に格子状に配置される。このような正方形のシリコン製サブマウント2を、金属配線基板1の上に搭載したLED光源モジュールの平面図を図8に、断面図を図9に示す。
【0012】
当該配置の場合、金属配線基板1の短手方向の長さB、金属配線基板1の厚みT、シリコン製サブマウント2の一辺の長さCを適切な関係にすることにより、効率的な放熱を実現することができる。
【0013】
3次元熱伝導解析により、金属配線基板1の短手方向の長さB、金属配線基板1の厚みT、シリコン製サブマウント2の一辺の長さCの関係を数値解析した。ここで解析条件として、金属配線基板にはアルミ(熱伝導率は237W/mK)と、サブマウントにはシリコン(熱伝導率は149W/mK)と、シリコン製サブマウントの絶縁層にはシリコン酸化膜(熱伝導率は1W/mK)と、配線層には銅(熱伝導率は401W/mk)と、シリコン製サブマウントと金属配線基板との接続にはAgペースト(熱伝導率は4W/mK)を用いて解析を行った。
【0014】
この結果を図10に示す。図10は、C・T/Bと金属配線基板1上の点Xでの温度上昇との関係を解析した結果を示す。小型化の観点からはC・T/Bは小さい方が良く、更に、図10よりC・T/Bが5を超えると点Xでの温度が急激に上昇する。従って、C・T/Bの値は5以下が望ましい。このような構造にすることにより、効果的な放熱が可能なLED光源モジュールを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るLED光源モジュールの断面図
【図2】複数のLEDチップを一列に配置したシリコン製サブマウントの平面図
【図3】従来のLED光源モジュールの平面図
【図4】本発明に係るLED光源モジュールの平面図
【図5】本実施例1のLED光源モジュールを搭載した液晶バックライト光源の全体図
【図6】本実施例1のLED光源モジュールの詳細な断面図
【図7】本実施例2のLEDチップ実装後のシリコン製サブマウントの平面図
【図8】本実施例2のシリコン製サブマウントを搭載した金属配線基板の平面図
【図9】本実施例2のシリコン製サブマウントを搭載した金属配線基板の断面図
【図10】金属配線基板1の短手方向の長さB、金属配線基板1の厚みT、シリコン製サブマウント2の一辺の長さCとしたとき、C・T/Bと金属配線基板1上の点Xでの温度上昇との関係を解析した結果を示す図
【符号の説明】
【0016】
1 金属配線基板
2 Siサブマウント
3 LEDチップ
4 LED光源光源モジュール
5 ベース基板
6 絶縁層
7 配線層
8 凹部
9 接着剤
10 Si基板
11 絶縁層
12 配線層
13 ワイヤーボンディング
14 導光板
15 レンズ
16 バックライト光源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDチップを一列に配列したサブマウントを長尺状の基板の上に複数並べてなるLED光源モジュールにおいて、
上記サブマウント上のLEDチップの配列方向が、金属配線基板の長手方向と直交することを特徴とするLED光源モジュール。
【請求項2】
請求項1のLED光源モジュールにおいて、
上記基板上にその長手方向と直行する方向に複数の凹部を有し、当該凹部内にシリコン製サブマウントを搭載したことを特徴とするLED光源モジュール。
【請求項3】
請求項1のLED光源モジュールにおいて、
赤を1個、青を1個、緑を2個のLEDチップを一列に実装したシリコン製サブマウントであり、両側に緑のLEDチップを配置したことを特徴とするLED光源モジュール。
【請求項4】
複数のLEDチップを格子状に配列したシリコン製サブマウントを長尺状の金属基板の上に複数並べてなるLED光源モジュールにおいて、
上記金属基板の短手方向の長さをB、上記金属基板の厚さをT、上記金属基板の短手方向における上記シリコン製サブマウントの長さをC、としたとき
C・T/Bが5以下であることを特徴とするLED光源モジュール。
【請求項5】
請求項4のLED光源モジュールにおいて、
上記基板上にその長手方向と直行する方向に複数の凹部を有し、当該凹部内にシリコン製サブマウントを搭載したことを特徴とするLED光源モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−269078(P2006−269078A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80833(P2005−80833)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000005474)日立ライティング株式会社 (130)
【Fターム(参考)】