説明

LED点灯装置

【課題】
複数個のLEDの直列回路からなるLEDモジュールにアーク放電が発生したときに、定電流電源を制御することなしにアーク放電を消弧させるようにしたLED点灯装置を提供する。
【解決手段】
LED点灯装置は、定電流電源DCCと、複数のLED(LED1〜LED7)が直列接続して定電流電源の出力端に接続し、かつ隣接した複数のLEDの順方向降下電圧Vfの合計値VTが13V以下であるLEDモジュールと、LEDモジュールにおいて順方向降下電圧Vfの合計値VTが13V以下である隣接した複数のLEDの直列部分に対して並列接続し、降伏電圧Vzが13V以下で、かつVz>VTを満足するツェナーダイオードZD1〜ZD4とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のLEDを安全に直列点灯するLED点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のLEDを定電流電源に直列接続して点灯するLED点灯装置において、回路中の各接続部の着脱、接触不良、断線あるいはLEDのワイヤボンディングの開放などにより回路中にアークが発生した場合に、定電流回路の出力電圧の上昇によりアークを検出したときに直流電流を停止する制御部を設けることは既知である(特許文献1参照。)。
【0003】
電気接点対での開離時アーク特性において、銅電気接点対の場合、Holmによる最小アーク電圧Vm13V、最小アーク電流Im0.43Aに等しい結果が得られることが知られている(非特許文献1参照。)。
【0004】
一方、複数のLEDを定電流電源に直列接続して点灯するLED点灯装置において、各LEDにツェナーダイオードを並列接続して、一部のLEDがオープンモードで故障した際にツェナーダイオードを介して電流がバイパスすることにより、残余のLEDが継続して点灯するように構成することは既知である(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2009−010100号公報
【特許文献2】特開2002−299695号公報
【非特許文献1】社団法人 電子情報通信学会発行、「信学技報」R 2000-36、EMD 2000-89(2001-2) 第7〜12頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたLED電源装置は、回路にアーク放電が発生したときに当該アーク放電を検出するとともに定電流電源から出力される直流電流を停止させるための制御部を必要とするため、回路構成が複雑化する。
【0007】
特許文献2に記載されたLED点灯回路は、一部のLEDがオープンモード故障したときにも残余のLEDを点灯継続させるための手段であり、オープン故障時にアーク放電が発生した際の保護動作については、考慮されていない。また、個々のLEDにそれぞれツェナーダイオードを並列接続するので、部品点数およびその配線工数が多くなる。
【0008】
本発明は、複数個のLEDの直列回路からなるLEDモジュールにアーク放電が発生したときに、定電流電源を制御することなしにアーク放電を消弧させるようにしたLED点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のLED点灯装置は、定電流電源と;複数のLEDが直列接続して定電流電源の出力端に接続したLEDモジュールと;LEDモジュールにおいて順方向降下電圧Vfの合計値VTが13V以下である隣接した複数のLEDの直列部分に対して並列接続し、降伏電圧Vzが13V以下で、かつVz>VTを満足するツェナーダイオードと;を具備していることを特徴としている。
【0010】
本発明は、以下の態様を許容する。
【0011】
定電流電源は、本発明の性質上、LEDモジュールを点灯するために厳密な定電流であることが要求されるものではなく、略定電流特性を有していて、ほぼ定電流化された直流電流を出力するのであればよい。なお、直流電流は、調光信号に応じてLEDを調光点灯するなどのためにPWM制御されていてもよい。
【0012】
LEDモジュールは、複数のLEDが直列接続していて、後述するツェナーダイオードが接続する直列部分のLEDの順方向降下電圧Vfの合計値VTが13V以下であればよく、その余の形態については特段限定されない。所望によりLEDモジュールの両端が接続し、定電流電源または他のLEDモジュールと直列接続するための単一のコネクタを備えていることが許容される。
【0013】
また、直列接続するLEDの数は、特段限定されないが、負荷電圧が45V以上になるような数のLEDを直列接続した場合には、アーク放電が発生しやすくなるので、本発明は、特に効果的である。なお、負荷電圧は、LEDモジュールに直流定電流が流れたときのLEDモジュールの両端電圧である。
【0014】
さらに、LEDは、その用途が照明に限定されない。このため、多様な光色や順方向降下電圧(Vf)などを有するLEDを用いることができる。
【0015】
LEDモジュールにおいて、複数の隣接して直列接続するLEDであって、各LEDのVfの合計値VTが13V以下となる直列部分に対して、後述するツェナーダイオードが並列接続されている。
【0016】
ツェナーダイオードは、その降伏電圧Vzが13V以下で、かつLEDモジュールにおける直列部分に含まれるLEDのVfの合計値VTが13V以下で、かつVz>VTの条件を満足するように設定されている。これは、銅接点の最小アーク電圧が13VであることがHolmにより明らかにされているが、ツェナーダイオードの降伏電圧Vzが13V以下であれば、以下の作用が生じるからである。
【0017】
すなわち、ツェナーダイオードが並列接続する複数のLEDの直列部分のうち、例えば1つのLEDに関連するオープンモード故障が生起した際にアーク放電が発生すると、アーク放電に降下電圧(Varc)が生じる。このため、上記直列部分の電圧降下がVT+Varcとなって、ツェナーダイオードの降伏電圧Vzを超える。その結果、ツェナーダイオードが降伏して上記直列部分の電圧降下がVzに制限されるから、オープンモード故障部の電圧がアーク放電電圧以下に低下してしまうので、最早アーク放電が維持されないで消滅する。
【0018】
これに対して、LEDモジュールの電源が定電流電源の場合、アーク放電が発生しても負荷回路に定電流が流れ続けるため、アーク放電が持続した状態が継続すると、当該部分において定電流とアーク電圧との積により決まる大きな電力が消費されるから、当該部分が異常発熱する。その結果、発煙したり、甚だしい場合には発火に至ったりする恐れもある。
【0019】
なお、ツェナーダイオードの好ましい降伏電圧Vzは、上記条件を満足し、かつ11V以上である。そうすれば、降伏電圧が高いために、より多くの数のLEDの直列部分にツェナーダイオードを並列接続することができる。その結果、ツェナーダイオードの使用数をより一層低減することができる。
【0020】
ところで、ツェナーダイオードが並列接続する直列部分のLEDの数は、2個以上であればよい。しかし、好ましくはLEDのVfにもよるが上限が6個程度までである。より好ましくは3〜5個程度である。直列部分のLEDの数が多くなると、それに伴ってそのうちの1個のLEDにオープンモード故障が発生したときにツェナーダイオードの降伏に伴って消灯するLEDが多くなる。また、直列部分が2個のLEDからなる場合には、使用するツェナーダイオードの数がLEDの数の少なくとも半分になる。これより少ない数のツェナーダイオードを所望する場合には、直列部分に含まれるLEDの数が3個以上であるのがよい。
【0021】
また、複数のLEDの直列部分うち、一部のLED、例えば1個または複数個を2個のツェナーダイオードが共有して、並列接続するように構成することができる。この場合、2個のツェナーダイオードは、それらの両端がLEDモジュールの複数のLEDのうち異なったLEDに接続する。換言すれば、2個のツェナーダイオードがLEDモジュールに対して段違いに並列接続する。
【0022】
さらに、LEDモジュールの両端が互いに比較的接近した単一のコネクタを備えていて、このコネクタを介して他のLEDモジュールと直列接続したり、定電流電源の出力端に接続したりするように構成されている態様を許容する。この態様において、全てのLEDの順方向降下電圧Vfの合計値VTが13V以下である場合には、LEDモジュールの両端間にツェナーダイオードを接続した構成とすることができる。このような構成によれば、コネクタ内部にアーク放電が発生したときにもツェナーダイオードがアーク放電を消滅させることができる。
【0023】
なお、以上の説明によれば、本発明においては、負荷のLEDモジュールに接続したツェナーダイオードがオープンモード故障時に保護動作を行うので、定電流電源に安全回路を配設する必要がないし、また保護状態下であっても残余のLEDが一部を除いて発光し続けるので、引き続き最低限の照明を持続することができる。しかしながら、保護動作前の本来の発光量が得られないので、なるべく早い時期に故障したLEDを除外して正常な負荷状態に戻すことが望ましい。このために、所望により負荷の異常状態発生を表示する表示手段を定電流電源に配設することができる。
【0024】
また、本発明のLED点灯装置は、そのLEDを照明装置の光源として用いることができる。この場合の照明装置は、照明装置本体およびLED点灯装置を具備している。照明装置は、LEDを光源として備えていればその余の構成は自由であり、またその用途は照明目的であるのが一般的であるが、これに限定されない。照明装置本体は、照明装置からLED点灯装置を除去した残余の全ての部分をいう。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数のLEDが直列接続してなり、定電流電源の出力端に接続したLEDモジュールにおいて各LEDのVfの合計値VTが13V以下となる複数のLEDの直列部分に対して並列接続され、降伏電圧Vzが13V以下で、かつVz>VTを満足するツェナーダイオードを具備していることにより、LEDモジュール内における複数のLEDからなる直列列部分のオープンモード故障時にアーク放電が発生したとしても、並列接続しているツェナーダイオードが降伏して当該直列部分の両端電圧をアーク電圧以下に低下させるので、アーク放電を迅速に消滅させることができる。その結果、定電流電源を制御することなしにオープンモード故障部が異常発熱するのを回避して安全化を図ることができる。
【0026】
また、ツェナーダイオードの降伏電圧を13Vまでの範囲で高く設定することができるので、複数のLEDに対して1個のツェナーダイオードを並列接続することができるから、少ない数のツェナーダイオードでLEDモジュール全体をアーク放電から保護することができる。
【0027】
さらに、少なくとも降伏していない他のツェナーダイオードが並列接続している残余の直列部分のLEDは、オープンモード故障発生後も引き続き点灯を継続するので、オープンモード故障が発生したことを目視により確認することができ、早期に正常なLEDモジュールに交換できるとともに、その交換前でも最小限の照明を継続できるから安心である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0029】
図1は、本発明のLED点灯装置を実施するための第1の形態を示す回路図である。
【0030】
本形態において、LED点灯装置は、定電流電源DCC、LEDモジュールLMおよびツェナーダイオードDZ1〜ZD4を具備して構成されていて、商用交流電源ACから給電される。
【0031】
本形態において、定電流電源DCCは、例えば整流化直流電源および定電流化回路を備えて構成されている。整流化直流電源で交流を整流、平滑化して整流化直流電源を得るとともに定電流化回路で定電流制御を行って直流出力に定電流特性を付与している。
【0032】
LEDモジュールLMは、複数例えば7個のLED(LED1〜LED7)が同一極性に直列接続してなる部分を1単位としたとき、その1単位または直列接続した複数の単位からなる。そして、その両端が定電流電源DCCの直流出力端に順方向に接続する。
【0033】
ツェナーダイオードZDは、上記1単位に対して4個(DZ1〜ZD4)がそれぞれLEDモジュールLMの隣接する3個のLEDの直列部分に対して並列接続するとともに、上記直列部分のうち2個のLEDを共有しながら1個のLEDずれて段違いに接続している。すなわち、ツェナーダイオードZD1は、LED1〜LED3の直列部分に接続し、ツェナーダイオードZD2は、LED2〜LED4の直列部分に接続し、ツェナーダイオードZD3は、LED4〜LED6の直列部分に接続し、ツェナーダイオードZD4は、LED5〜LED7の直列部分に接続している。上記各直列部分における複数のLEDの順方向降下電圧Vfの合計値VTは13V以下である。
【0034】
ツェナーダイオードZDは、その降伏電圧Vzが13V以下で、かつVz>VTの条件をともに満足するように設定されている。
【実施例1】
【0035】
実施例1は、図1に示す回路において、図示のLED直列接続列体を1単位として全部で2単位を定電流電源DCCの出力端に直列接続した。
【0036】
LEDモジュールにおいて、複数のLEDは白色発光形で、そのVfがいずれも3.5Vである。したがって、隣接する複数のLEDの直列部分における3個のLEDのVfの合計値VTは10.5Vである。また、LEDモジュールLM全体でLEDは14個であるから、その負荷電圧は49Vである。
【0037】
ツェナーダイオードZDは、その降伏電圧が12Vであり、LEDモジュールLMの1単位に対して4個のツェナーダイオードZDが段違いに接続している。
【0038】
そうして、定電流電源DCCから直流電流を供給して直列接続した2単位のLEDモジュールLMを点灯中に、図示の第1の単位の中のLED2にオープンモード故障部を人為的形成した。その結果、オープンモード故障部にアーク放電が発生したが、その直後にツェナーダイオードZD1とZD2が降伏して、アーク放電が瞬時に消滅した。これに伴って、LED2、LED3が消灯したものの、LED1、LED4には正常状態の50%の電流が流れるので、調光状態で点灯を継続し、残余のLED5〜LED7には100%の電流が流れて正常状態で点灯を継続した。なお、上記回路動作の間、LEDモジュールの残余の第2の単位は、定電流電源DCCからの直流電流により全てのLEDが正常状態で点灯を継続した。
【0039】
図2は、本発明のLED点灯装置を実施するための第2の形態を示す回路図である。なお、図中図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
本形態において、LEDモジュールLMは、LEDが6個(LED1〜LED6)に対して2個のツェナーダイオードZD1、ZD2がLEDを共有することなしに並列接続する部分を1単位としたとき、1単位または直列接続した複数の単位からなる。
【実施例2】
【0040】
実施例2は、図2に示す回路において、LEDモジュールLMとして図示の部分を1単位として全部で3単位を定電流電源DCCの出力端に直列接続した。使用されるLEDは全部で18個であり、ツェナーダイオードは全部で6個であり、隣接するLED3個の直列部分に対して並列接続している。LEDおよびツェナーダイオードは、実施例1と同じ仕様であり、したがってVTは10.5Vである。また、LEDモジュールLM全体の負荷電圧は63Vである。
そうして、点灯中にLEDモジュールの図示の第1の単位の中のLED3を人為的にオープンモード故障させたところ、オープンモード故障部にアーク放電が発生し、その直後にツェナーダイオードZD1が降伏して、同時にアーク放電が消滅した。その結果、負荷電流は、ツェナーダイオードZD1を経由して流れた。そのため、第1の単位のLED1〜LED3は消灯したが、残余のLED4〜LED6および残余の第2および第3の単位は継続して100%で点灯した。
【0041】
図3は、本発明のLED点灯装置を実施するための第3の形態を示す回路図である。なお、図中図2と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0042】
本形態において、LEDモジュールLMは、図2に示す第2の形態との対比において、LEDの直列接続回路の両端が単一のコネクタCNに接続してなる部分を1単位としていて、その1単位または複数単位が定電流電源DCCの出力端に直列接続してなり、図示の態様では第1および第2単位LM1、LM2からなる点で異なる。コネクタCNは、単位の一端に配設され、内部に収納している互いに比較的接近している一対の端子にLEDの直列接続体の両端が接続している。このコネクタCNを利用して定電流電源DCCまたは他の単位に接続する。
【実施例3】
【0043】
実施例3は、図3に示す1単位として、その7単位を直列接続してLEDモジュールLMを構成して、定電流電源DCCの出力端に接続した。使用されるLEDは全部で21個であり、ツェナーダイオードは7個(ZD1〜ZD7)である。LEDおよびツェナーダイオードは、実施例1と同じ仕様であり、したがってVTは7組のLEDモジュール全体で73.5Vである。
そうして、点灯中に図示の第1の単位LM1のコネクタCNを人為的にオープンモード故障させたところ、アーク放電が発生し、その直後にツェナーダイオードZD1が降伏し、同時にアーク放電が消滅した。その結果、負荷電流は、ツェナーダイオードZD1を経由して流れた。そのため、LEDモジュールLMの第1の単位はそのLED1〜LED3が全部消灯したが、残余の残余の第2ないし第7の単位は継続して100%で点灯した。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のLED点灯装置を実施するための第1の形態の回路図
【図2】本発明のLED点灯装置を実施するための第2の形態の回路図
【図3】本発明のLED点灯装置を実施するための第3の形態の回路図
【符号の説明】
【0045】
DCC…定電流電源、LM…LEDモジュール、LED1〜LED7…LED、ZD1〜ZD4…ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流電源と;
複数のLEDが直列接続して定電流電源の出力端に接続したLEDモジュールと;
LEDモジュールにおいて順方向降下電圧Vfの合計値VTが13V以下である隣接した複数のLEDの直列部分に対して並列接続し、降伏電圧Vzが13V以下で、かつVz>VTを満足するツェナーダイオードと;
を具備していることを特徴とするLED点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−199522(P2010−199522A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46078(P2009−46078)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】