説明

LED表示装置及びLED表示機

【目的】点灯回路の故障を迅速に検出できる故障検出回路を有したLED表示装置及びこのLED表示装置を有したモジュールから構成されたLED表示機を提供すること。
【構成】複数個のLED素子と、入力されたシフトデータに基づいてこれらのLED素子を点灯するためLED素子と同じ数のフリップフロップ2からなるシフトレジスタ3を少なくとも有する点灯回路と、この点灯回路のシフトレジスタ3に故障検出用パルスを入力しシフトレジスタ3から出てきた故障検出用パルスのパルス数をカウントしてシフトレジスタを構成するフリップフロップの故障を検出する故障検出回路4を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はLED表示装置及びLED表示機に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば高速道路上に配置される最近の道路情報表示機は、従来の電球式に代わりLEDを使用した方式が急速に普及し、なかでもシンボルマークのような図柄の表示や文字の見やすさから高解像形のLEDを使用したLED表示機が多数採用されるようになってきている。
【0003】図5のように、例えばLED表示機20は、例えば縦20cm、横20cm、奥行30cmの筐体からなる複数個のモジュール21から構成され、各モジュール21の前面には図6のように例えば256(16×16)個のLED素子22が配置され、シフトデータはINからOUTに矢印のように送られる。モジュールの個数は表示機の大きさにより異なり、図5の表示機では63個のモジュールが使用されている。
【0004】各モジュール内にはこれらLED素子を点灯するためのLED表示装置が組み込まれている。LED表示装置は点灯回路を有し、この点灯回路は、例えば図7のように、LED素子と同じ数のD−FF23−1〜D−FF23−nをカスケード(直列)に接続してなるシフトレジスタ24と、例えば図8のようにLED素子と同じ数のD−FFからなりシフトレジスタ24からの出力データを一旦記憶するラッチ回路25と、LED素子用ドライバー26と、定電流回路などから構成されている。
【0005】なお図7において、SIはシフトデータ入力、SCKはシフトクロック、SCLRはクリア、SOはシフトデータ出力を意味する。表示データとしてのシフトデータは各モジュールのシフトレジスタ24を構成する一番目のD−FF23−1に入力され、そのデータはSCKからシフトクロックが入力されるたびに、その出力Qから次のD−FF23に順次送られながら、それぞれのLED素子を点灯していく。シフトレジスタ24を構成する最後のD−FF23−nから出たシフトデータ出力SOは次のモジュールに入力される。
【0006】道路情報をコントロールする指令室のコンピューターから各LED表示機に表示データとしてのシフトデータが送られると、シフトデータは図5のようにLED表示機20を構成する初めのモジュール21に入力され、その後矢印のように順次すべてのモジュール21を通って送られる。なおシフトデータの入力箇所は1か所に限らず、例えば図5の表示機の場合、3行に配置されたモジュール行の各行に入力してもよい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこのようなLED表示機において、いずれかのモジュール内のシフトレジスタを構成するD−FFのいずれかが故障した場合、シフトデータが次のD−FFに送られず、したがってシフトデータはそれ以降のモジュールに送られないことになり、故障したモジュール以降の表示がめちゃめちゃになってしまう。
【0008】指令室では、LED表示機の一番目のモジュールの入り口部分のシフトデータ入力と、最後のモジュールの出口部分のシフトデータ出力を検出して、LED表示機が適正に表示しているか管理しているので、故障が生じた場合はすぐに確認できるが、LED表示機を構成しているモジュールのうちいずれが故障しているかは、指令室では確認出来ない。
【0009】また、従来は故障の修理のためLED表示機が設置されている現場に行って、表示機の裏扉を開けてもいずれのモジュールが故障しているかすぐに確認出来ない。しかも、LED表示機は高速道路などの車線上にあるため、交通規制をする時間を短くするために修理を極力短時間で済ませなければならないという要請がある。
【0010】本発明は、点灯回路の故障を迅速に検出できる故障検出回路を有したLED表示装置及びこのLED表示装置を有したモジュールから構成されたLED表示機を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1のLED表示装置では、複数個のLED素子と、入力されたシフトデータに基づいてこれらのLED素子を点灯するためLED素子と同じ数のフリップフロップからなるシフトレジスタを少なくとも有する点灯回路と、この点灯回路のシフトレジスタに入力されシフトレジスタから出てきた故障検出用パルスのパルス数をカウントしてシフトレジスタを構成するフリップフロップの故障を検出する故障検出回路とを有するように構成されている。
【0012】請求項2の発明は、請求項1に記載のLED表示装置において、故障検出回路が、故障検出回路に入力される監視クロックに基づいてセット信号を出力し故障検出回路を監視状態にする監視セット手段と、故障検出回路が監視状態になった状態で、故障検出のため点灯回路のシフトレジスタを構成するフリップフロップの数だけ点灯回路のシフトレジスタに入力されてこのシフトレジスタから出てきた故障検出用パルスのパルス数をカウントするカウンタ手段と、カウンタ手段が規定の数の故障検出用パルスをカウントとしたか判定し適正ならOK信号を出力する判定手段と、監視セット手段のセット信号と、判定手段からのOK信号と、次の監視クロックの入力とに基づいて正常信号を出力する正常信号出力手段とを具備するように構成されている。
【0013】請求項3の発明は、請求項2に記載のLED表示装置において、正常信号出力手段からの正常信号に基づいて正常又は異常であることを示す表示手段をさらに有するように構成されている。
【0014】請求項4のLED表示機では、複数個のLED素子と、入力されたシフトデータに基づいてこれらのLED素子を点灯するためLED素子と同じ数のフリップフロップからなるシフトレジスタを少なくとも有する点灯回路と、点灯回路のシフトレジスタに入力されシフトレジスタから出てきた故障検出用パルスのパルス数をカウントしてシフトレジスタを構成するフリップフロップが故障していないか検出する故障検出回路とが、1つの筐体に収納されてモジュールを構成し、このようなモジュールが複数個接続されて構成されている。
【0015】請求項5の発明は、請求項4に記載のLED表示機において、各モジュールに点灯回路のシフトレジスタが正常又は異常であることを示す表示手段が配置されているように構成されている。
【0016】請求項6の発明は、請求項4または請求項5に記載のLED表示機において、通信回線を介して、複数個のモジュールの故障検出回路に順次監視セット信号を送って、各故障検出回路を順次監視状態にセットし、セットされたモジュールの点灯回路のシフトレジスタに故障検出用パルスとシフトクロックを送りシフトレジスタから出てきた故障検出用パルスのパルス数をカウントしてシフトレジスタを構成するフリップフロップが故障していないか順次検査してその正常信号を順次通信回線を介して受けることにより、遠隔地から不良モジュールの位置と故障の程度を検出できるように構成されている。
【0017】
【作用】請求項1の発明では、点灯回路のシフトレジスタにシフトレジスタを構成するフリップフロップの数と同じ数の故障検出用パルスを入力し、シフトレジスタから出てきた故障検出用パルスのパルス数を、故障検出回路がカウントすることにより、シフトレジスタを構成するフリップフロップが故障していないか検査する。
【0018】請求項2の発明では、故障検出回路に、故障検出回路を監視状態にするセット信号及び監視クロックを入力して、故障検出回路のセット手段をセットした後、点灯回路のシフトレジスタにそのシフトレジスタを構成するフリップフロップの数だけ故障検出用パルスとシフトクロックを入力し、シフトレジスタから出てきた故障検出用パルスのパルス数をカウンタ手段でカウントし、判定手段でカウンタ手段が規定の数の故障検出用パルスをカウントとしたか判定し適正ならOK信号を出し、この判定手段からのOK信号と、監視セット手段のセット信号と、次の監視クロックの入力とに基づいて正常信号出力手段が正常信号を出力する。
【0019】請求項3の発明では正常信号出力手段からの正常信号に基づいて表示手段が正常又は異常であることを表示する。
【0020】請求項4の発明では複数個のLED素子と、点灯回路と、故障検出回路が、1つの筐体に収納されてモジュールを構成し、このようなモジュールが複数個接続されてLED表示板が構成されている。
【0021】請求項5の発明では各モジュールに点灯回路のシフトレジスタが正常又は異常であることを示す表示手段が配置されている。
【0022】請求項6の発明では通信回線を介して各モジュールを順次検査していって、順次正常信号を通信回線を介して受けることにより、遠隔地から不良のモジュールを検査する。
【0023】
【実施例】図1においてLED表示機はそれぞれ256個のLED素子を有する、それぞれ筐体に収納されたN個のモジュール1により構成されている。モジュールはカスケード接続され、それぞれ図2のように、従来のモジュールと同じように、LED素子の他に、ラッチ回路、定電流回路、LED素子と同じ数(256個)のフリップフロップ(DーFF)2を従続してなるシフトレジスタ3などからなる点灯回路を具備するLED表示装置を有している。さらに本発明のLED表示装置は、故障検出回路4を有している。
【0024】故障検出回路4は、カウンタ手段としての8ビットのカウンタ5と、カウンタ5が128個(16進数の7F)の故障検出用パルスをカウントしたか判定する判定手段としての7F判定回路6と、監視セット手段としてのフリップフロップ(FF)7と、正常信号出力手段としての3入力ANDゲート8及びORゲート9と、表示手段としてのLED素子からなる正常モニタ10と、表示手段用駆動手段としてのリセット・セット・フリップフロップ(R−S−FF)11とから構成されている。8ビットのカウンタ5は、シフトレジスタ3から出てくる故障検出用パルスのパルス数をカウントする。7F判定回路6は、例えばANDゲートからなりカウンタ5の内容が7F(128)になったか判定する。
【0025】なお、図1及び図2において、SIはシフトデータ入力、SOはシフトデータ出力、SCKはシフトクロック、SCLRはクリア、OKIは正常信号入力、OKOは正常信号出力、SETは監視セット入力、SETOは監視セット出力、KCKは監視クロックをそれぞれ意味する。
【0026】以下図3及び図4のタイムチャートに従い図2の回路の動作を説明すると、まずSETを立てて、1番目のKCKを入力する。すると1番目のモジュール1の監視セット手段としてのフリップフロップ7がセットされ、出力Q(a)すなわちSETO(1)がHになる(図3(C))。その状態で、図4のg)のように1番目のモジュールのSI、SCKからシフトレジスタ3にそれぞれ256個の故障検出用パルスと256個のシフトクロックを入力する。1番目のモジュールのシフトレジスタ3のすべてのD−FF2が正常であれば、1番目のモジュールのSOから128個の故障検出用パルスが出てくる。
【0027】この故障検出用パルスの数をカウンタ5で数え、カウンタ5の内容が7F(128)になったことを7F判定回路6が判定すると7F判定回路6からH(OK信号)が出力され、3入力ANDゲート8に送られる。ここで2番目のKCKが入力されると(図3(b))、3入力ANDゲート8の出力(b)はHとなる。(b)がHになるとR−S−FF11がセットされ正常モニタ10が点灯する。一方、ORゲート9の出力(c)がHとなり、1番目のモジュールが正常であることを示す1番目の正常信号(OKO)(図4(j))が出力される。これで1番目のモジュールのチェックが完了する。この正常信号は通信回線を介して指令室に送られる。
【0028】2番目のKCKが入力されると同時に、2番目のモジュールの故障検出回路の監視セット手段としてのFF7がセットされ、SETO(2)がHになる(図3(d))。この状態で1番目のモジュールのSIから128個の故障検出用パルスと、SCKから256個のシフトクロックがそれぞれ入力され、上記と同様に2番目のモジュールのシフトレジスタが正常かどうか検査され、正常であれば、3番目のKCKが入力されると同時に、2番目のモジュールの正常モニタ10が点灯するとともに、2番目の正常信号が出力される。
【0029】以後、同様にして順次すべてのモジュールが検査される。これらの検査はすべて指令室のコンピュータにより制御されて行なわれる。もし、正常信号が出力されないモジュールがあれば、そのモジュールが故障していることになり、そのモジュール以降のモジュールにおいては異常点灯になっていることがわかり、LED表示機における異常点灯の範囲が推定できる。
【0030】これにもとずいて、修理者が現場に向かい、表示機の裏扉を開け、マザーボード上にある正常モニタ10をデータの流れに沿ってチェックしていけば、各モジュールのうち正常モニタ10が点灯していない最初のモジュールが少なくとも不良であることがわかるのでそのモジュールを交換すればよい。それ以降のモジュールが故障しているかは、故障したモジュールを交換後、あるいはその不良モジュールを飛ばして接続し、現場で或いは指令室から上記と同様に検査のための故障検出用パルスを送って検査すればよい。
【0031】なお、上記実施例では、LED素子は1色の場合を示したが、2色用のLED素子を使用する場合には、同じモジュール内にもう1組の、LED表示装置が配置される。また正常モニタ10は、異常な時に点灯する異常モニタとしてもよい。
【0032】
【発明の効果】請求項1のLED表示装置によれば、LED素子一つ一つの故障はチェックできないが、点灯回路のシフトレジスタにシフトレジスタを構成するフリップフロップの数と同じ数の故障検出用パルスを入力し、シフトレジスタから出てきた故障検出用パルスのパルス数を、故障検出回路がカウントすることにより、シフトレジスタを構成するフリップフロップが故障していないか検査できるので、メンテナンスの上から極めて便利である。
【0033】請求項2のLED表示装置によれば、故障検出回路の回路構成が簡単で、確実性の高い動作性能が得られる。
【0034】請求項3のLED表示装置によれば、正常信号出力手段からの正常信号に基づいて表示手段が正常又は異常であることを表示するので、故障が目視的に確認できる。
【0035】請求項4のLED表示機によれば、複数個のLED素子と、点灯回路と、故障検出回路が、1つの筐体に収納されてモジュールを構成し、このようなモジュールが複数個接続されているので、故障が生じた場合にはモジュール単位で交換すればよく、現場でのメンテナンスにかかる時間が短くてすむ。
【0036】請求項5のLED表示機によれば、各モジュールに点灯回路のシフトレジスタが正常又は異常であることを示す表示手段が配置されているので、現場に行ってLED表示機の裏扉を開ければどのモジュールが故障しているか一目で分かる。
【0037】請求項6のLED表示機によれば、LED表示機から離れた指令室で正常信号をチェックすることにより、LED表示機の不良モジュールの場所が特定できるので、現場のLED表示機の表示がどの程度だめになっているのかがわかり迅速に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のLED表示装置を有するモジュールが従続された状態を示す図。
【図2】本発明のLED表示装置の一実施例を示す回路図。
【図3】タイムチャート。
【図4】タイムチャート。
【図5】複数個のモジュールからなるLED表示機を示す図。
【図6】1つのモジュールに配置されたLED素子の配列を示す図。
【図7】従来のLED素子用点灯回路を示す図。
【図8】従来のLED素子用点灯回路の一部を示す図。
【符号の説明】
1 モジュール
2 フリップフロップ(DーFF)
3 シフトレジスタ
4 故障検出回路
5 カウンタ手段(カウンタ)
6 判定手段(7F判定回路)
7 監視セット手段(フリップフロップ)
8 正常信号出力手段(3入力ANDゲート)
9 正常信号出力手段(ORゲート)
10 表示手段(正常モニタ)
11 表示手段用駆動手段(R−S−FF)

【特許請求の範囲】
【請求項1】複数個のLED素子と、入力されたシフトデータに基づいてこれらのLED素子を点灯するためLED素子と同じ数のフリップフロップからなるシフトレジスタを少なくとも有する点灯回路と、この点灯回路のシフトレジスタに入力されシフトレジスタから出てきた故障検出用パルスのパルス数をカウントしてシフトレジスタを構成するフリップフロップの故障を検出する故障検出回路とを有するLED表示装置。
【請求項2】故障検出回路が、故障検出回路に入力される監視クロックに基づいてセット信号を出力し故障検出回路を監視状態にする監視セット手段と、故障検出回路が監視状態になった状態で、故障検出のために点灯回路のシフトレジスタを構成するフリップフロップの数だけ点灯回路のシフトレジスタに入力されてこのシフトレジスタから出てきた故障検出用パルスのパルス数をカウントするカウンタ手段と、カウンタ手段が所定の数の故障検出用パルスをカウントとしたか判定し適正ならOK信号を出力する判定手段と、監視セット手段のセット信号及び判定手段からのOK信号及び次の監視クロックの入力に基づいて正常信号を出力する正常信号出力手段とを具備することを特徴とする、請求項1に記載のLED表示装置。
【請求項3】正常信号出力手段からの正常信号に基づいて正常又は異常であることを示す表示手段をさらに有する、請求項2に記載のLED表示装置。
【請求項4】複数個のLED素子と、入力されたシフトデータに基づいてこれらのLED素子を点灯するためLED素子と同じ数のフリップフロップからなるシフトレジスタを少なくとも有する点灯回路と、点灯回路のシフトレジスタに入力されシフトレジスタから出てきた故障検出用パルスのパルス数をカウントしてシフトレジスタを構成するフリップフロップの故障を検出する故障検出回路とが、1つの筐体に収納されてモジュールを構成し、このようなモジュールが複数個接続されて構成されてなるLED表示機。
【請求項5】各モジュールに、点灯回路のシフトレジスタが正常又は異常であることを示す表示手段が配置されていることを特徴とする請求項4に記載のLED表示機。
【請求項6】通信回線を介して、複数個のモジュールの故障検出回路に順次監視セット信号を送って、各故障検出回路を順次監視状態にセットし、セットされたモジュールの点灯回路のシフトレジスタに故障検出用パルスとシフトクロックを送りシフトレジスタから出てきた故障検出用パルスのパルス数をカウントしてシフトレジスタを構成するフリップフロップが故障していないか順次検査してその正常信号を順次通信回線を介して受けることにより、遠隔地から不良モジュールの位置と故障の程度を検出できる請求項4または請求項5に記載のLED表示機。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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