説明

LED電源回路

【課題】LEDの駆動電流を断続させることなくゼロ・パーセントからの調光制御を可能とするLED電源回路を提供すること。
【解決手段】少なくともインダクタT2aとスイッチング素子Q1との直列接続を含み、スイッチング素子Q1のオンオフ駆動に連動するインダクタT2aの磁場エネルギーの蓄積・放出によって、直流電源を所望の大きさの直流電流に変換し出力する変換部8と、指定された調光度に基づいてスイッチング素子Q1の駆動を制御する制御回路14とを備える。制御回路14は、調光度が基準値以上の場合に、スイッチング素子Q1のオン幅を調光度に応じて定めてターン・オフし、インダクタT2aを流れる電流がほぼ零になるタイミングでターン・オンする。調光度が基準値以下の場合に、スイッチング素子Q1のオン幅を調光度に応じて定めてターン・オフし、駆動周期を固定してターン・オンする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルカラーLEDなどの発光ダイオード(LED)を点灯するための直流電流を供給するLED電源回路に関し、特にその調光制御の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年LEDの性能が高くなってきており、LEDを用いた照明器具は寿命が長いなどの理由によって、従来の光源から置き換えられる状態にある。今後LEDの性能がますます向上してゆけば、さらに汎用の照明器具分野で採用されると考えられる。さらに、フルカラーLEDは、自由な色温度設定、自由な色表現が可能であり、今後、ますます演出用の照明器具分野で採用されると考えられる。
【0003】
LED電源回路が、LEDの素子列への直流電流を断続的に供給することで、LEDは点灯と不点灯を繰り返す。この断続動作が所定以上の速度で繰り返されれば、人の目にはLEDが連続点灯を行っているように見える。このようなLED素子列への駆動電流の断続によって時間平均的な調光制御を行なう電源回路が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−70957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の電源回路技術においては、駆動電流の断続的供給によって発生するノイズが周辺電磁環境に与える影響、および、点滅する光が人の目の視神経細胞などに与える影響に関しては、詳細な検討がなされていなかった。
【0006】
本発明は上述のような点に鑑みてなされたものであり、周辺環境に与えるノイズレベルが小さく、人の目に優しく疲労感を生じさせにくいLED電源回路を提供することを目的とし、具体的には、LEDの駆動電流を断続させることなくゼロ・パーセントからの調光制御を可能とするLED電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、発明者は、フライバック・コンバータ回路や降圧チョッパー回路などの高周波スイッチング回路を利用して、外部電源などからの入力電流を所定の大きさの直流電流に変換してLED素子列に供給する技術に着目し、これに基づくLED照明器具の調光機能の完成に向けて鋭意努めてきた。
【0008】
一般的な高周波スイッチング回路は、少なくともインダクタとスイッチング素子の直列回路を含んでいる。スイッチング素子がターン・オンすると、全波整流後の直流電流がインダクタを流れ、インダクタに磁場エネルギーが蓄積される。スイッチング素子がターン・オフすると、インダクタから磁場エネルギーが放出される。放出された磁場エネルギーは出力コンデンサにて蓄積または平滑されて、LED素子列の駆動電流として使用される。
【0009】
スイッチング素子のオンオフ駆動によって、インダクタを流れる電流(IL)は増加と減少を繰り返す。スイッチング素子のオン幅(オン状態の期間)を変化させれば、インダクタから放出される磁場エネルギーを増減できて、駆動電流を所定の大きさに制御することができる。
【0010】
従来の高周波スイッチング回路では、インダクタの電流(IL)の休止期間を無くし、インダクタの電流が減少して零になるのとほぼ同時にターン・オンして再び電流が流れるように制御して、スイッチング素子を流れる電流に伴うスイッチングロスを小さくする、いわゆるソフトスイッチング制御が行なわれてきた。
【0011】
しかし、調光機能を付与するために駆動電流を増減させる場合、小さい調光度に対応して駆動電流を絞り過ぎると、ソフトスイッチング制御を維持するためにスイッチングの駆動周波数が上昇し過ぎて(駆動周期が短くなり過ぎて)、返って回路効率が低下してしまうという問題が生じた。
【0012】
そこで、発明者は、調光度が小さい場合には、駆動周期を固定して、オン幅の増減だけで駆動電流の大きさを制御すれば、回路効率を低下させることなく調光制御を実行することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0013】
すなわち、本発明に係るLED電源回路は、LED負荷へ連続する直流電流を供給し、かつ、該直流電流の大きさを制御することで前記LED負荷の調光を行なうLED電源回路であって、
少なくともインダクタとスイッチング素子との直列接続を含み、該スイッチング素子のオンオフ駆動に連動する前記インダクタの磁場エネルギーの蓄積・放出によって、直流電源を所望の大きさの直流電流に変換し出力する変換手段と、
指定された調光度に基づいて前記スイッチング素子の駆動を制御する制御手段と、
を備える。
前記制御手段は、
前記調光度が基準値以上の範囲で変化する場合、前記スイッチング素子のオン幅を前記調光度に応じて定めてターン・オフし、ターン・オフ後に前記インダクタを流れる電流がほぼ零になるタイミングで前記スイッチング素子をターン・オンし、
また、前記調光度が前記基準値以下の範囲で変化する場合、前記スイッチング素子の前記オン幅を前記調光度に応じて定めてターン・オフし、ターン・オフ後に前記オン幅とオフ幅の合計である駆動周期を一定にして前記スイッチング素子をターン・オンする。
【0014】
ここで、オン幅を定めるにあたって、制御手段が調光度に応じたオン幅(一定値)を使用しても構わない。また、制御手段が調光度に応じた基準駆動電流値を用いて、この基準駆動電流値とLED素子列に流れる駆動電流の検出値とを比較して、差分が零に近づくようにオン幅を調整してもよい。
本発明によれば、インダクタとスイッチング素子の直列接続を含む高周波スイッチング回路を用いて、そのスイッチング素子のオン幅および駆動周期を調整するように構成したので、LED素子列への駆動電流の大きさを制御することができる。その結果、LEDの駆動電流を断続させることなく、所望の調光度に応じたLEDの調光制御を実行することができる。従って、周辺環境に与えるノイズレベルが小さく、人の目に優しく疲労感を生じさせにくいLED電源回路を提供することができる。
さらに、本発明によれば、調光度が小さくなった場合に駆動周期を固定して、オン幅の増減だけで駆動電流の大きさを制御するように構成した。駆動周期を固定するため、スイッチングの駆動周波数が上昇し過ぎることがなく回路効率の低下を避けることができる。つまり、調光度が低い状態において回路効率を低下させることなく調光制御を実行することができる。幸いなことに調光度が低い状態では、スイッチングロスは小さくて済み、かつ、駆動周期の調整(ソフトスイッチング制御)をしなくても、力率にはほとんど影響が出ない。このため、ゼロ・パーセントからの調光制御であっても効率良く調光できる。
【0015】
また、本発明において前記制御手段は、前記調光度が基準値以上の範囲から基準値以下の範囲へ移行する場合、移行直前の前記駆動周期の2倍以上、10倍以下の範囲で前記駆動周期を固定する。
【0016】
本発明によれば、駆動周期を固定する場合に、固定する直前の駆動周期の長さをそのまま使って駆動周期を固定しても構わない。しかし、固定する時点での駆動周期が比較的短い場合に、さらに調光度を小さくするにはオン幅をもっと短縮しなければならない。駆動周期が固定されているので、オン幅が短縮されるとオフ幅が長くなり、オフ期間で、インダクタからのエネルギー放出が終わってもすぐにはターン・オンしない。そのため、エネルギー放出が完了すると、スイッチング素子の出力容量に蓄えられた電荷がスイッチング素子とインダクタと間で自由振動を始める。スイッチング素子とインダクタとの接続点の電位差を検出することで、この自由振動を捕らえることができる(図4(B)のドレイン波形、および、図6(B)のソース波形を参照)。調光度が低い状態では、この電荷の自由振動の生じている間に、ターン・オンすると、回路動作が不安定になったり、変動が発生したり、リニアリティが得られなかったりという問題が生じる場合がある。そのため、本発明では、固定する直前の駆動周期の2倍〜10倍の値で駆動周期を固定するように構成した。この場合、LEDに流れる直流電流の大きさが不連続になることを避けるため、駆動周期を固定するのと同時にオン幅もほぼ同程度の倍率(2倍〜10倍)に拡大させることになる。このように、さらに調光度を小さくした場合でも、オフ幅の実長が比較的長い状態で維持されるので、上記の電荷の自由振動がある程度減衰してからターン・オンする(図4(B)および図6(B)のゲート信号を参照)。このため、調光度が低い状態における回路動作の不安定化、変動の発生、リニアリティの喪失といった問題を回避できる。
【0017】
さらに、本発明において前記制御手段は、前記調光度が基準値以上の範囲から基準値以下の範囲へ移行する場合に、前記基準値として減少用基準値を使用し、
前記調光度が基準値以下の範囲から基準値以上の範囲へ移行する場合に、前記基準値として増加用基準値を使用し、
前記増加用基準値は、前記減少用基準値よりも大きい値に設定されている。
【0018】
本発明では、調光度が基準値以上である範囲を、ソフトスイッチング制御の範囲として、調光度が基準値以下である範囲を、周波数固定制御の範囲としている。本発明によれば、ソフトスイッチング制御から周波数固定制御へ移行する場合の減少用基準値と、周波数固定制御からソフトスイッチング制御へ移行する場合の増加用基準値とに差を設けて、増加用基準値を減少用基準値よりも大きい値にした。このため、調光度を増加させた場合の制御方式の移行と、調光度を減少させた場合の制御方式の移行との間に、ヒステリシス特性が付与される。すなわち、調光度が基準値に一致する値に指定されたとしても、制御方式の移行が頻繁に生じることがなく、移行回数が減少して、安定した制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。
【図2】前記LED照明器具における調光度とスイッチング制御方式との関係を説明するグラフである。
【図3】前記調光度のレベル毎のFET駆動波形を示す波形図である。
【図4】本実施形態における前記FET駆動波形をスイッチング素子に与えた場合のドレイン波形、駆動電圧、駆動電流を示す図であり、(A)はソフトスイッチング制御時、(B)は周波数固定制御時を示す。
【図5】本発明の第2実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。
【図6】本実施形態におけるFET駆動波形をスイッチング素子に与えた場合のドレイン波形、駆動電圧、駆動電流を示す図であり、(A)はソフトスイッチング制御時、(B)は周波数固定制御時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1実施形態
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は第1実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。LED照明器具は、LED素子列2と、このLED素子列に直流電源を供給するLED電源回路4とを有して構成されている。なお、LED電源回路には交流電源ACが供給される。
【0021】
<LED電源回路の全体構成>
LED電源回路4は、入力部6、変換部8、電圧検出部(R2、R3)、電流検出部(R5,OA)、および、スイッチング周期終了検出部16を備える。入力部は、ノイズ除去回路(C1,T1,C2)と全波整流回路DBとバイパスコンデンサC3とを有する。
【0022】
ノイズ除去回路は、1組のノイズ防止用コンデンサC1,C2と、チョークコイルを有する。チョークコイルは1組のコイルT1からなる。2つのコイルT1は、交流電源ACの入力端子10、11に接続される各ラインに1つずつ挿入されている。また、第1のノイズ防止用コンデンサC1はコイルT1の交流電源側の端子間に接続され、第2のノイズ防止用コンデンサC2はコイルT1のLED素子列側の端子間に接続されている。これにより、交流電力に含まれるノーマルモードのノイズがノイズ防止用コンデンサC1,C2で除去され、コモンモードのノイズの変換部への進入がチョークコイルT1により阻止される。
【0023】
全波整流回路DBは、ダイオードブリッジなどで構成され、第2のノイズ除去用コンデンサC2の両端子間電圧を入力電圧として印加される。バイパスコンデンサC3は、全波整流回路DBの出力端同士を結ぶもので、全波整流回路DBからの整流電流を部分平滑するため、および、後述のスイッチング素子Q1のオンオフ駆動により断続された電流の影響がAC側に及ぶことを防止するバイパスとして設けられている。
【0024】
変換部8は、全波整流回路DBの出力端子間に接続されたフライバック・コンバータである。この変換部8の機能は、全波整流回路DBからの整流電流を電力変換して、変換部8の出力端子12,13間に接続された出力コンデンサC5(電解コンデンサ)を充電することである。また、変換部8の出力端子12,13に接続されたLED素子列2へ、出力コンデンサC5に蓄えられたエネルギーを用いて、所定の大きさの連続する直流電流を供給することである。さらに、変換部8は、力率改善回路としても機能し、全波整流回路DBに入力される交流電流を歪みのない正弦波に整形できる。
【0025】
変換部8の具体的な構成は以下の通りである。変換部8は、フライバック・トランスT2と、スイッチング素子Q1と、2次側ダイオードD2と、出力コンデンサC5と、スイッチング素子Q1を制御する制御回路14とを有する。トランスT2は、全波整流後の整流電圧を一次電圧として用いて二次電圧を出力コンデンサC5に印加する。
【0026】
スイッチング素子Q1とトランスT2の一次巻線T2aとの直列回路は、全波整流回路DBの出力端子間に接続されている。この直列回路は、本発明のインダクタとスイッチング素子との直列接続に相当する。スイッチング素子Q1のドレイン側端子は、一次巻線T2aに接続され、Q1のソース側端子は、全波整流回路DBの負極端子側であるグラウンドラインに接続されている。スイッチング素子Q1にはNチャネルのエンハンスメント形のMOSFETを使用する。制御回路14に設けられている駆動回路からスイッチング素子Q1のゲートに駆動電流が供給されてゲート電圧が生じると、ドレイン−ソース間に電流が流れる。この状態をスイッチング素子Q1のオン状態という。一方、ゲートに駆動電流が供給されず、ドレイン電流が流れない状態をオフ状態という。そして、スイッチング素子Q1のオンオフ駆動により二次巻線T2bに二次電圧が誘起される。
【0027】
二次巻線T2bの端子間には、二次側ダイオードD2と出力コンデンサC5の直列回路が接続されている。二次側ダイオードD2は、発生した二次電流を整流する。整流後の二次電流は、出力コンデンサC5の正極に供給され、これを充電する。なお、LED素子列2と抵抗R5の直列回路が、出力コンデンサC5の両端子間を結ぶように接続されている。
【0028】
変換部8にもノイズ除去回路(D1,C4,R4)が設けられている。ノイズ除去回路は、一次側ダイオードD1およびノイズ除去コンデンサC4の直列回路と、抵抗R4とを有している。D1とC4の直列回路は、トランスの一次巻線T2aの両端子を結ぶように接続されている。つまり、一次側ダイオードD1のアノード側端子は、一次巻線T2aとスイッチング素子Q1の接続点につながれ、カソード側端子はノイズ除去コンデンサC4に接続される。ノイズ除去コンデンサC4および抵抗R4は並列回路を形成している。
【0029】
電圧検出部は、抵抗R2,R3の直列回路であり、全波整流回路DBの出力端子間に設けられている。全波整流回路DBの出力端子間に発生する全波整流波形を制御回路14で認識可能な電圧値まで抵抗R2,R3で分圧し、その分圧波形を制御回路14に送る。制御回路14は、抵抗R2,R3の抵抗値に基づいて、入力された分圧信号波形から実質的な全波整流波形を取得することができる。
【0030】
電流検出部は、出力コンデンサC5の負極側端子とLED素子列2の負側端子とを結ぶ抵抗R5と、絶縁型オペアンプOAからなる。そして、抵抗R5のLED素子側の端子電圧が、絶縁型オペアンプOAを介して検出されて、検出値が制御回路14へ送られる。制御回路14では、抵抗R5の抵抗値に基づいて、抵抗R5の電圧の検出値より駆動電流が取得される。
【0031】
スイッチング周期終了検出部16は、スイッチング素子Q1のドレイン側の電位を取得するため、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間の電位差を検出し、その検出値を制御回路14に与える。制御回路14では、送られてきた電位差の検出値に基づいて、スイッチング駆動周期の終了タイミングを取得する。
【0032】
次に、制御回路14の具体的な構成例を説明する。制御回路14は、マイクロコンピュータ(CPU)と、電圧などの検出用のADコンバータと、スイッチング素子Q1に駆動電流を供給するMOSFET駆動回路と、ROMおよびRAMとを有する。
【0033】
CPUは、電流検出部(R5,OA)からの検出値に基づいてLED素子列2の駆動電流値を算出する。この駆動電流値が、調光度に応じた駆動電流値になるように、オン幅(オン状態の期間)が決定される。また、CPUは、スイッチング周期終了検出部16からの電位差の検出値に基づいて、スイッチング駆動周期の終了タイミングを取得する。例えば、スイッチング素子Q1のオフ状態において、電位差がほぼ最小値になるタイミングを検出して、ターン・オンのタイミングとして用いてもよい。
【0034】
CPUは、決定したスイッチングの駆動周期とオン幅の情報を有する指令信号をスイッチング素子用のMOSFET駆動回路に送る。この駆動回路は、指令信号に基づく駆動電流をスイッチング素子Q1へ供給し、スイッチング素子Q1をオンオフ駆動させる。スイッチング素子Q1のオンオフ駆動によって、出力コンデンサC5に整流電流に基づくエネルギーが蓄積される。そして出力コンデンサC5に蓄積されたエネルギーによってLED素子列2に所定の大きさの駆動電流が供給される。
【0035】
本実施形態では変換部8に内蔵されたICチップが制御回路14に相当する。制御回路14としては、ICチップではなく、変換部8から独立して設けられた回路などでも良い。
【0036】
図1のように制御回路14を機能ブロックで表現すると、制御回路14は、調光度判断部20、駆動周期決定部22、オン幅決定部24を有する。以下の説明では、これらの機能ブロックを用いることにする。調光度判断部20は、予め設定された2種類の基準値(減少用基準値および増加用基準値)を使って、指定された調光度がいずれか一方の基準値よりも大きいか、あるいは小さいかを判断する。
【0037】
図2は、縦軸を調光度とし横軸を時間軸として、時間経過に伴って調光度を山状に変化させた場合を表わしている。また、縦軸に調光度の基準値を2つ設けている。低い方の設定値Loは減少用基準値であり、高い方の設定値Hiは増加用基準値である。
【0038】
<調光度が基準値より大きい場合のソフトスイッチング制御について>
まず、調光度が設定値Hiより大きい範囲(図2で調光度を最大設定値から徐々に減少させていく過程)で変化する場合について説明する。
オン幅決定部24は、指定された調光度に対応する駆動電流値をデータテーブルから読み取り、駆動電流の検出値がデータテーブルの駆動電流値に近づくようにスイッチング素子Q1のスイッチングのオン幅を調整する。
また、駆動周期決定部22は、スイッチング周期終了検出部16からの電位差の検出値に基づいて、スイッチング駆動周期の終了タイミングを取得し、この終了タイミングでターン・オンする。これによって、スイッチングの駆動周波数は検出値に応じて変化し、ソフトスイッチング制御が実行される。
【0039】
図3に、スイッチング素子Q1のゲートに送られるFET駆動波形を示す。調光度「大」の場合の駆動波形を同図(A)に示し、調光度「中」の場合の駆動波形を同図(B)に示す。いずれもソフトスイッチング制御の領域での駆動波形であり、調光度が減少するにつれて駆動周期が短くなる。また、駆動周期に対するオン幅の割合(オンデューティ)については、調光度が減少するにつれてオンデューティも小さくなる。
【0040】
スイッチング素子Q1のオン状態では、全波整流電流がトランスT2の磁性体に磁場のエネルギーとして蓄積され、オフ状態では二次側に誘起される二次電圧に基づいて電流が流れ、出力コンデンサC5が充電される。制御回路14によるオン幅の調整により、LED素子列2の駆動電流を所定の大きさに制御することができる。
【0041】
<調光度が基準値より小さい場合のスイッチング周波数固定制御について>
図2で、調光度が設定値Loより小さくなった場合について説明する。
オン幅決定部24は、指定された調光度に対応する駆動電流値をデータテーブルから読み取り、駆動電流の検出値がデータテーブルの駆動電流値に近づくようにスイッチング素子Q1のスイッチングのオン幅を制御する。
【0042】
一方、駆動周期決定部22は、駆動周期を固定する。本実施形態では、駆動周期を固定する場合に、固定する直前の駆動周期をそのまま使わないで、固定する直前の駆動周期の2倍〜10倍の値で駆動周期を固定する。また、LEDに流れる直流電流の大きさが不連続になることを避けるため、駆動周期決定部22が駆動周期を固定するのと同時に、オン幅決定部24がオン幅をほぼ同程度の倍率(2倍〜10倍)に拡大させる。さらに調光度が小さくなった場合でも、オフ幅の実長が比較的長い状態で維持されるので、回路動作の不安定化、変動の発生、リニアリティの喪失といった問題を回避できる。
【0043】
図3(B)、(C)を用いて、スイッチング素子Q1の制御方式が移行した場合のFET駆動波形の変化を示す。同図(B)の調光度「中」が、設定値Loに達する直前の調光度であるとする。そして、調光度が減少して設定値Loに達し、制御方式がソフトスイッチ制御から周波数固定制御に移行した後の調光度「小」での駆動波形を同図(C)に示す。
【0044】
制御方式の移行によって、移行直後の駆動周期は、移行直前の駆動周期のほぼ7倍に広がっている。その後、調光度が減少しても駆動周期は変化しないで一定となる。移行直後のオン幅についても、移行直前のオン幅のほぼ7倍に広がる(同図(C)の破線で示す)。その後、調光後が減少するに従って、オン幅も狭くなる(同図(C)の実線で示す)。
【0045】
なお、移行直後の駆動周期を直前の1倍のままにする場合は、その後、オン幅の調整だけで調光制御すると、一次巻線T2aに流れるピーク電流が断続することになり、これによって、スイッチング素子Q1の発熱が大きくなってしまう。駆動周期を移行直前の1〜2倍にする場合は、一次巻線T2aの自由振動の状態の振幅がまだ大きい状態でターン・オンするので、LEDに流れる電流に振動成分が含まれてしまう。一方、移行直前の10倍を越える駆動周期にする場合は、スイッチングの駆動周波数が低くなり過ぎて可聴周波数の帯域に入ってしまい、異音が生じてしまう。また、一次巻線T2aに流れるピーク電流が大きくなり過ぎて、磁気飽和を起こす可能性もある。そのため、本発明では、駆動周期を固定する場合には、移行直前の駆動周期の2倍〜10倍の値で固定する。また、この駆動周期の固定範囲は、マイクロコンピュータ(MCU)を用いて駆動制御する場合に容易に制御できる範囲内でもある。
【0046】
スイッチング素子Q1のオン状態では、全波整流電流がトランスT2の磁性体に磁場のエネルギーとして蓄積され、オフ状態では二次側に誘起される二次電圧に基づいて電流が流れ、出力コンデンサC5が充電される。制御回路14によるオン幅の調整により、LED素子列2の駆動電流を所定の大きさに制御することができる。
【0047】
<ヒステリシス特性について>
次に、本発明のスイッチング駆動制御におけるヒステリシス特性について説明する。
図2に示すように、調光度が減少する場合は、設定値Hiを減少用基準値として用いる。また、調光度が増加する場合は、設定値Hiよりも低く設定された設定値Loを増加用基準値として用いる。すなわち、ソフトスイッチング制御から周波数固定制御へ移行する場合の減少用基準値と、周波数固定制御からソフトスイッチング制御へ移行する場合の増加用基準値とに差を設けて、増加用基準値が減少用基準値よりも大きい値にした。
【0048】
本実施形態では、調光度を増加させた場合の制御方式の移行と、調光度を減少させた場合の制御方式の移行との間に、ヒステリシス特性が付与される。すなわち、増加用基準値と減少用基準値とが同じ値である場合に、調光度が基準値と一致する値に指定されると、制御方式がソフトスイッチング制御と周波数固定制御との間を行ったり来たりして、その都度、制御方式の移行のための計算をMCUが実行することになり、ちらつき発生の原因になる可能性がある。ヒステリシス特性が付与されていれば、調光度が基準値と一致するような場合であっても、制御方式の移行が頻繁に生じることがなく、移行回数が減少して、安定した制御を実行することができる。
【0049】
以上のように、本実施形態では、インダクタとスイッチング素子の直列接続を含む高周波スイッチング回路を用いて、そのスイッチング素子のオン幅および駆動周期を調整するように構成したので、LED素子列への駆動電流の大きさを制御することができる。その結果、LEDの駆動電流を断続させることなく、所望の調光度に応じたLEDの調光制御を実行することができる。従って、周辺環境に与えるノイズレベルが小さく、人の目に優しく疲労感を生じさせにくいLED電源回路を提供することができる。
さらに、本実施形態によれば、調光度が小さくなった場合に駆動周期を固定して、オン幅の増減だけで駆動電流の大きさを制御するように構成したので、回路効率を低下させることなく調光制御を実行することができる。このため、ゼロ・パーセントからの調光制御を効率良く実行できる。
【0050】
さらに、図1の本実施形態のLED電源回路4によれば、低力率で直流電流を供給することも、高力率で直流電流を供給することもできる。低力率とは力率改善制御を実行しない場合の供給方式を示し、高力率とは力率改善制御を実行した場合の供給方式を示す。
【0051】
低力率の供給方式では、バイパスコンデンサC3に容量の大きいものを採用することにより、コンデンサC3にてリップル電圧が平滑化されて小さくなる。この状態で、定電流制御(調光)を行なえば、リップル成分の比較的少ない直流電流をLED素子列2に供給することができる。
【0052】
また、高力率の供給方式では、バイパスコンデンサC3に容量の小さいものを採用する。そして、リップル電圧を以下のようにして抑制する。まず、スイッチングのオン幅を調整するため、交流電源ACの一周期(例えば50Hzの場合は10msecになる)の整数倍の期間における、LED素子列2の駆動電流の平均値を検出する。この平均値が調光度に応じた駆動電流値になるように、オン幅が調整される。制御回路14は、このオン幅を用いてスイッチング素子Q1をターン・オフする。これによって定電流制御(調光制御)が実行される。しかし、このままでは、LED素子列2に流れる直流電流のリップル成分が大きくなるので、さらにソフトスイッチング制御を実行する。ソフトスイッチング制御では、制御回路14はスイッチング周期終了検出部16からの電位差の検出値に基づいて、スイッチング駆動周期の終了タイミングを取得し、このタイミングでスイッチング素子Q1をターン・オンする。以上のソフトスイッチング制御により、交流電源ACからの入力電流は正弦波に近い波形になり、力率90%以上の高力率を実現することができる。
【0053】
図4に本実施形態におけるFET駆動波形(ゲート信号)をスイッチング素子に与えた場合のドレイン波形、駆動電圧、駆動電流を示す。同図(A)はソフトスイッチング制御時、同図(B)は周波数固定制御時を示す。ドレイン波形は、スイッチング周期終了検出部16が検出するスイッチング素子Q1の両端子間の電位差の波形である。同図(B)では、周波数を固定してオン幅のみで調光を実行しているため、オフ期間の後半にてドレイン波形に乱れが生じている。これは、一次巻線T2aのエネルギー放出が完了した後、スイッチング素子Q1の出力容量に蓄えられた電荷がスイッチング素子Q1と一次巻線T2aと間で自由振動を始めるからである。本実施形態では、制御方式の移行によって、移行直後の駆動周期が、移行直前の駆動周期のほぼ7倍に広がっている。オフ幅も同様にほぼ7倍に広がっている。そのため、上記の自由振動がある程度減衰してから、ターン・オンすることになり、回路動作の不安定化、変動の発生、リニアリティの喪失といった問題が回避される。従って、スイッチングの駆動周期を固定しても、LEDの駆動電流が受ける影響は小さく、ほぼ一定の電流制御を実行できる。
【0054】
第2実施形態
図5は第2実施形態に係るLED照明器具の全体構成図である。LED照明器具は、LED素子列102と、このLED素子列に直流電源を供給するLED電源回路104とを有して構成されている。なお、LED電源回路には交流電源ACが供給される。
【0055】
LED電源回路104は、入力部106、変換部108、電流検出部R5、および、スイッチング周期終了検出部116を備える。入力部106は、交流電源ACの交流出力を整流する全波整流回路DBと、DBの出力端間に接続されDBの出力を平滑する平滑コンデンサC0とで構成され、交流電源ACの交流電圧を直流電圧に整流平滑する。
【0056】
変換部108は、降圧チョッパー回路であり、全波整流回路DBからの整流電流を電力変換して、変換部108の出力端子間に接続された出力コンデンサC6を充電することである。また、変換部108の出力端子に接続されたLED素子列102へ、出力コンデンサC6に蓄えられたエネルギーを用いて、所定の大きさの連続する直流電流を供給することである。
【0057】
具体的には変換部108は、スイッチング素子Q1と、インダクタL1と、ダイオードD1と、出力コンデンサC6と、スイッチング素子Q1のオンオフを制御する制御回路114とで構成され、出力コンデンサC6の両端にLED素子列102が接続される。ここで、スイッチング素子Q1と、ダイオードD1と、インダクタL1とで降圧チョッパー回路を構成している。全波整流回路DBの一方の出力端にスイッチング素子Q1の一端を接続し、DBの他方の出力端とスイッチング素子Q1の他端の間にインダクタL1および出力コンデンサC6を直列に接続する。スイッチング素子Q1をオンにしてDBからの整流電流によってインダクタL1に磁気エネルギーを蓄積させ、スイッチング素子Q1をオンからオフに切り替えた際、磁気エネルギーの放出によるインダクタL1からの電流をLED素子列経由で再びインダクタL1に戻すように、インダクタL1およびコンデンサC6の直列回路の両端間を、インダクタL1に戻る方向のみ電流を流すダイオードD1で接続することによって構成されている。
【0058】
制御回路114は、抵抗R5を介してLED素子列102の駆動電流を検出し、駆動電流の検出値に応じてスイッチング素子Q1のオン幅を調整する。これによってLED素子列102に供給する直流電流が所定の大きさになるように制御している。
【0059】
スイッチング周期終了検出部116は、スイッチング素子Q1のソース側の電位を取得するため、ダイオードD1の端子間の電位差を検出して、その検出値を制御回路114に与える。制御回路114では、送られてきた検出部116の検出値に基づいて、スイッチング駆動周期の終了タイミングを取得する。例えば、スイッチング素子Q1のオフ状態において、ダイオードD1の端子間の電位差が上昇するタイミングを検出して、ターン・オンのタイミングとして用いてもよい。
【0060】
本実施形態のLED照明器具においても、調光度が基準値より大きい場合にソフトスイッチング制御を実行し、調光度が基準値より小さい場合にスイッチング周波数固定制御を実行して、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0061】
図6に本実施形態におけるFET駆動波形をスイッチング素子Q1に与えた場合のソース波形、駆動電圧、駆動電流を示す。同図(A)はソフトスイッチング制御時、同図(B)は周波数固定制御時を示す。ソース波形は、スイッチング周期終了検出部116が検出するダイオードD1の両端子間の電位差の波形である。同図(B)では、周波数を固定してオン幅のみで調光を実行しているため、オフ期間の後半にてドレイン波形に乱れが生じているが、第1実施形態と同様に、乱れの原因である自由振動がある程度減衰してから、ターン・オンすることになり、回路動作の不安定化、変動の発生、リニアリティの喪失といった問題が回避される。従って、スイッチングの駆動周期を固定しても、LEDの駆動電流が受ける影響は小さく、ほぼ一定の電流制御を実行できる。
【0062】
変形例
交流電源ACの代わりに直流電源DCを用いたLED照明器具に対しても、本発明のLED電源回路を適用できる。この場合、ダイオードブリッジDBを省略してバイパスコンデンサC1のみとすればよい。
【0063】
また、第2実施形態においてソフトスイッチング制御に用いるスイッチング周期終了検出部116の配置について、例えば図5のスイッチング素子Q1の両端子間の電位差を検出するように配置しても構わない。ただし、検出部116のグランドレベルと制御回路114のマイクロコンピュータのグランドレベルとが異なるため、検出信号を伝達する際にフォトカプラーなどの素子を使用する必要がある。本実施形態のようにスイッチング素子Q1のソース側の電位を検出するように検出部116を配置すれば、フォトカプラーなどの素子が不要になる。
【符号の説明】
【0064】
2,102 LED素子列(LED負荷)
4,104 LED電源回路
6,106 入力部
8,108 変換部(変換手段)
14,114 制御回路(制御手段)
16,116 スイッチング周期終了検出部
20 調光度判断部
22 駆動周期決定部
24 オン幅決定部
L1 インダクタ
Q1 スイッチング素子
R2、R3 電圧検出部の抵抗
R5 電流検出部の抵抗
T2a 一次側巻線(インダクタ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED負荷へ連続する直流電流を供給し、かつ、該直流電流の大きさを制御することで前記LED負荷の調光を行なうLED電源回路であって、
少なくともインダクタとスイッチング素子との直列接続を含み、該スイッチング素子のオンオフ駆動に連動する前記インダクタの磁場エネルギーの蓄積・放出によって、直流電源を所望の大きさの直流電流に変換し出力する変換手段と、
指定された調光度に基づいて前記スイッチング素子の駆動を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記調光度が基準値以上の範囲で変化する場合、前記スイッチング素子のオン幅を前記調光度に応じて定めてターン・オフし、ターン・オフ後に前記インダクタを流れる電流がほぼ零になるタイミングで前記スイッチング素子をターン・オンし、
また、前記調光度が前記基準値以下の範囲で変化する場合、前記スイッチング素子の前記オン幅を前記調光度に応じて定めてターン・オフし、ターン・オフ後に前記オン幅とオフ幅の合計である駆動周期を一定にして前記スイッチング素子をターン・オンすることを特徴とするLED電源回路。
【請求項2】
請求項1記載のLED電源回路において、
前記制御手段は、前記調光度が基準値以上の範囲から基準値以下の範囲へ移行する場合、移行直前の前記駆動周期の2倍以上、10倍以下の範囲で前記駆動周期を固定することを特徴とするLED駆動回路。
【請求項3】
請求項1または2記載のLED電源回路において、
前記制御手段は、前記調光度が基準値以上の範囲から基準値以下の範囲へ移行する場合に、前記基準値として減少用基準値を使用し、
前記調光度が基準値以下の範囲から基準値以上の範囲へ移行する場合に、前記基準値として増加用基準値を使用し、
前記増加用基準値は、前記減少用基準値よりも大きい値に設定されていることを特徴とするLED駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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