説明

N−フェニルチオアルキルピラゾール−3−カルボキサミド誘導体および該誘導体を有効成分とする殺ダニ剤

【課題】殺ダニ剤を提供する。
【解決手段】式[I]により表される化合物。


式中、RおよびRは、水素原子、ハロゲン原子等を示し、R3は水素原子、C1〜C4のアルキル基等を示し、R3とXは一緒になって、


を形成し、R4は水素原子またはC1〜C4のアルキル基を示し、R5、R6、R7はC1〜C4のアルキル基等を示し、R8およびR9は、ハロゲン原子等を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-フェニルチオアルキルピラゾール-3-カルボキサミド誘導体および該誘導体を有効成分として含有する殺ダニ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
農園芸分野では、各種害虫の防除を目的とした様々な殺ダニ剤が開発され実用に供されている。
【0003】
しかしながら、従来汎用されている農園芸用殺ダニ剤は、殺ダニ効果、あるいは残効性等の点において必ずしも満足すべきものではない。また、施用回数や、施用薬量の低減等の要求を満足しているとは言えないものであった。
また、従来汎用の殺ダニ剤に対して抵抗性を獲得した各種ダニ類の出現も問題になっている。
従来汎用の農園芸用殺ダニ剤に抵抗性を獲得した各種ダニ類に対しても、低薬量で十分な防除効果を示し、しかも環境への悪影響が少ない新規な殺ダニ剤の開発が切望されている。
【0004】
これらの要望に応えるための新しい殺ダニ剤が種々提案されているが、必ずしも、上記要望に応えるものではない。
【0005】
本発明の化合物類縁化合物として、以下の化合物が開示されている(例えば、特許文献1〜2)。しかしながら、これらの化合物は、カルボキサミドのN-置換基がアルキル基であり、本発明の化合物とは異なる。また、これらの化合物は、殺菌活性化合物として単に開示されているに過ぎず、殺ダニ剤としての有用性については、全く開示されていない。しかも、農園芸の技術分野においては、殺菌活性化合物として開示されている化合物が、そのまま、殺ダニ剤として適用できるという技術常識はない。更に、ピラゾールカルボキサミド誘導体は、ピラゾール環上の3個の置換基とカルボキサミド部分のアミノ基の種類により、それぞれ、殺虫、殺ダニ、殺菌、除草活性あるいは医薬活性を有することが知られている。従って、ピラゾールカルボキサミド誘導体を殺ダニ剤として適用することができるか否かについては、実際に実験などを通して確認する必要がある。
【0006】
【化1】



【0007】
また、これらの化合物と類似した化合物も殺菌活性については開示されている(例えば、特許文献3〜7)が、殺ダニ活性については全く開示されていない。
【0008】
更に、1-フェニルピラゾール-3-カルボキサミド誘導体については、例えば、特許文献8には、殺虫及び殺ダニ活性を有するN-アラルキル-1-フェニルピラゾール-3-カルボキサミド誘導体が報告されている。この化合物は、カルボキサミドのN-置換基がアラルキル基であり、本発明の化合物とは異なる。
【0009】
また、除草剤の薬害軽減作用を有する物質として、例えば、特許文献9には、N-ヒドロキシ-4-ハロ-5-非置換-1-フェニルピラゾール-3-カルボキサミド誘導体が開示されているが、この化合物は、カルボキサミドのN-置換基がアルキル基や水酸基であり、本発明の化合物とは異なる。
また、例えば、特許文献10には、N-アルキル-4-非置換-5-アルキル-1-フェニルピラゾール-3-カルボキサミド誘導体が開示されているが、この化合物は、カルボキサミドのN-置換基がアルキル基であり、本発明の化合物とは異なる。また、この化合物は、除草剤と併用して、除草剤の植物毒性を緩和する化合物として開示されているに過ぎず、殺ダニ剤についての有用性については全く開示されていない。
また、例えば、特許文献11には、N-アルキル-4-非置換-1,5-ジフェニルピラゾール-3-カルボキサミド誘導体が記載されている。また、例えば、特許文献12には、N-アルキル-4-ハロ-1,5-ジフェニルピラゾール-3-カルボキサミドの除草活性に関する記載がある。これらの化合物は、5位にフェニル基を有し、除草作用に関するものであり、殺ダニ剤に関するものではない。
【0010】
更に、医薬活性を有するN-アルキル-4-非置換-5-アルコキシ-1-フェニルピラゾール-3-カルボキサミド誘導体が、非特許文献1及び非特許文献2に記載されているが、カルボキサミドのN-置換基の構造において本発明の化合物とは異なり、更に、この化合物について農薬活性に関する記載はない。また、N-メチル-4-ブロモ-5-メトキシ-1-フェニルピラゾール-3-カルボキサミドが、例えば、非特許文献3に記載されているが、カルボキサミドのN-置換基の構造において本発明の化合物とは異なり、更に、この化合物には医薬活性がないばかりか、農薬活性については全く記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11-171867号公報
【特許文献2】特開平11-199566号公報
【特許文献3】特開2000-103784号公報
【特許文献4】特開2000-169453号公報
【特許文献5】特開2001-240592号公報
【特許文献6】特開2002-205985号公報
【特許文献7】特開2002-265452号公報
【特許文献8】特開昭64-25763号公報
【特許文献9】特開昭63-91373号公報
【特許文献10】特開平1-283274号公報
【特許文献11】特開昭63-115867号公報
【特許文献12】特開平8-12654号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】薬学雑誌、97巻、719頁(1977)
【非特許文献2】Journal of Medical Chemistry, 20巻、80頁(1977)
【非特許文献3】名古屋市立大学薬学部研究年報、29巻、25頁(1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、各種ダニ類の防除に有用な新しい物質を提供することにあり、特に従来の殺ダニ剤に対して抵抗性を示す各種ダニ類に対しても高い防除効果を示し、更に、低薬量で効果を奏し、残留毒性や環境汚染等の問題が軽減された安全性の高い物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の式で規定されるN-フェニルチオアルキルピラゾール-3-カルボキサミド誘導体が、上記要望に応え得る特性を有する化合物であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下式[I]、
【0015】
【化2】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、シアノ基またはニトロ基を示し、R3は水素原子、C1〜C4のアルキル基またはC1〜C4のアルコキシ基を示し、Xは水素原子またはハロゲン原子を示し、或いは、R3とXは一緒になって、
【化3】

を形成し(式中、R10およびR11は水素原子、ハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基またはC1〜C4のアルコキシ基を示す。)、R4は水素原子またはC1〜C4のアルキル基を示し、R5、R6、R7はそれぞれ独立に水素原子またはC1〜C4のアルキル基を示し、R8およびR9はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基、トリフルオロメチル基、メチルチオ基、メチルスルホニル基、トリフルオロメトキシ基、シアノ基、ニトロ基またはエトキシカルボニル基を示し、nは0、1または2を示す。)で表されるN-フェニルチオアルキルピラゾール-3-カルボキサミド誘導体(本明細書において、「本発明の化合物」とも言う)、および該誘導体を有効成分として含有する殺ダニ剤に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化合物は、ダニに対して優れた防除効果、殺ダニ効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
式[I]で表される本発明の化合物において、R1、R2、R8、R9、R10、R11及びXで示されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11で示されるC1〜C4のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。R3、R10及びR11で示されるC1〜C4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基や、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が挙げられる。
【0018】
本発明の化合物は文献未記載の新規化合物であり、R5及びR7が水素原子であって、R6がC1〜C4のアルキル基である場合、2種の光学活性体を含む。また、R5が水素原子であって、R6及びR7がC1〜C4のアルキル基である場合、4種の光学活性体を含む。本化合物は、例えば、下記反応式1に従って製造することができる。
【0019】
反応式1
【化4】

【0020】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、Xおよびnは、前記式[I]で定義した通りであり、Yは、塩素原子又は臭素原子を示す。)
【0021】
溶媒として、例えば、ベンゼンや、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;アセトンや、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロロホルムや、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;水;酢酸メチルや、酢酸エチル等のエステル類;又はテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン又はジメチルスルホキシド等の極性溶媒等を用い、例えば、0℃〜30℃、好ましくは、0℃〜5℃で塩基の存在下、上記反応を行うことが出来る。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウムや、水酸化カリウム、ピリジン又はトリエチルアミン等を用いることが出来る。光学活性なアミン[III]を用いさえすれば、容易に光学活性な化合物[I]を得ることができる。
【0022】
反応後、目的物である式[I]で表される本発明の化合物を単離するには、水に溶解する溶媒を用いた場合は、減圧下、溶媒を留去し、水を加えた後、水に不溶のベンゼンや、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル等のエステル類で抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウム等の乾燥剤で乾燥した後、溶媒を減圧下で留去すれば良い。水に不溶の溶媒を用いた場合は、水を加えた後分液し、有機相を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウム等の乾燥剤で乾燥した後、溶媒を減圧下で留去すれば良い。溶媒留去後、得られた残渣はそのままでも十分純品であることもあるが、不純な場合には目的物をあまり溶解しないヘキサン、ヘプタン等の炭化水素で洗浄するか、再結晶又はカラムクロマトグラフィーで精製すれば純品が得られる。
【0023】
出発原料である[II]の化合物は、下式[IV]から下記反応式2に従って合成することができる。下記[IV]は、例えば、Journal of Chemical Society, 3262頁(1958)、Journal of Chemical Society, 2769頁(1961)、Annalen Der Chemie, 716巻,160頁(1968)、特開昭63-91373号公報(特許文献9)及び特開平1-283274号公報(特許文献10)、薬学雑誌、97巻、719頁(1979)(非特許文献1)、Journal of Medical Chemistry,20巻、80頁(1977)(非特許文献2)に記載された方法に準じて合成することができる。
【0024】
反応式2
【化5】

【0025】
(上記式中、R1、R2、R3、R10、R11及びXは、前記式[I]で定義した通りであり、Yは、塩素原子や、臭素原子を示す。)
式[IV]の化合物をハロゲン化剤と反応させると、式[II]の化合物が得られる。上記反応は、溶媒の存在下又は非存在下に行うことができる。溶媒としては、本反応に直接関与しないものならば特に限定されず、例えば、ベンゼンや、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロホルムや、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。ハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニルや、臭化チオニル、塩化オキサリル、臭化オキサリル、五塩化リン、五臭化リン、三塩化リン等が挙げられる。反応温度は、例えば、5〜100℃、好ましくは、20〜90℃である。反応後、目的物である式[II]で表される化合物を単離するには、反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣を、目的物をあまり溶解しないヘキサン、ヘプタン等の炭化水素で洗浄後乾燥すればよい。
【0026】
また、出発原料であるフェニルチオアルキルアミン誘導体[III]は、特開2001-163854号公報、特表2005-526858号公報、蘭国特許出願公開6404644号明細書、米国特許出願公開2002-55631号明細書、米国特許出願公開2002-86887号明細書、米国特許出願公開2005-272744号明細書、特開2002-105046号公報、Journal of American Chemical society, 73巻、2121頁(1951)、Journal of Organic Chemistry, 28巻、2587頁(1963)、Tetrahedron letters, 24巻、2131頁(1983)、Tetrahedron, 48巻、2359頁(1992)、Journal of Organic Chemistry, 57巻、6257頁(1992)、Journal Medicinal Chemistry, 27巻、1354頁(1984)に記載された方法に準じて合成することができる。
【0027】
本発明の化合物は、農作物、例えば、食用作物(稲、大麦、小麦、ライ麦、オート麦等の麦類、とうもろこし、馬鈴薯、甘藷、里芋、大豆、小豆、そら豆、えんどう豆、いんげん豆、落花生等の豆類等)、野菜(キャベツ、白菜、大根、蕪、ブロッコリー、カリフラワー、こまつな等のアブラナ科作物、かぼちゃ、きゅうり、すいか、まくわうり、メロン等のうり類、なす、トマト、ピーマン、ペッパー、おくら、ほうれんそう、レタス、れんこん、にんじん、ごぼう、にんにく、たまねぎ、ねぎ等のねぎ類等)、果樹・果実類(林檎、柑橘類、梨、葡萄、桃、梅、桜桃、胡桃、栗、アーモンド、バナナ、いちご等)、香料等鑑賞用作物(ラベンダー、ローズマリー、タイム、パセリ、胡椒、生姜等)、特用作物(たばこ、茶、甜菜、サトウキビ、ホップ、綿、麻、オリーブ、ゴム、コーヒー等)、牧草・飼料用作物(チモシー、クローバー、アルファルファ、とうもろこし、ソルガム類、オーチャードグラス、イネ科牧草、豆科牧草等)、芝類(高麗芝、ベントグラス等)、林木(トドマツ類、エゾマツ類、松類、ヒバ、杉、桧等)や鑑賞用植物(きく、ばら、カーネーション、蘭等の草本・花卉類、いちょう、さくら類、あおき等の庭木等)に損害を与える節足動物類等の害生物を防除するためにも使用し得る。
【0028】
具体的な害生物として、節足動物門クモ綱のダニ目(Acari)、例えば、ホコリダニ科のチャノホコリダニ(Polyphagotarsonemus latus)、シクラメンホコリダニ(Phytonemus pallidus)等、ハシリダニ科のムギダニ(Penthaleus major)等、ヒメハダニ科のブドウヒメハダニ(Brevipalpus lewisi)、ミナミヒメハダニ(Brevipalpus phoenicis)等、ハダニ科のミカンハダニ(Panonychus citri)、リンゴハダニ(Panonychus ulmi)、ナミハダニ(Tetranychus urticae)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)、オウトウハダニ(Tetranychus viennensis)、トドマツノハダニ(Oligonychus ununguis)、ミヤケハダニ(Eotetranychus kankitus)、クローバーハダニ(Bryobia praetiosa)等、フシダニ科のミカンサビダニ(Aculops pelekassi)、ニセナシサビダニ(Eriophyes chibaensis)、チューリップサビダニ(Aceria tulipae)、ブドウハモグリダニ(Colomerus vitis)、モモサビダニ(Aculus fockeui)、チャノサビダニ(Calacarus carinatus)等、コナダニ科のケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae) 、ロビンネダニ(Rhizoglyphus robini)等の成虫、幼虫及び卵等が好適に挙げられる。
【0029】
式[I]を有する本発明の化合物は、他の活性化合物との混合剤として使用することもできる。特に、殺虫活性や、殺ダニ活性農園芸用、殺センチュウ活性を有する化合物(殺虫剤)と混合して使用することにより、植物に損害を与える節足動物類、腹足類、線虫類等の害生物の防除に対して、防除対象病害虫の拡大が可能となり、薬量の低減等の相乗効果等も期待できる。
当業界で汎用される農薬補助剤を用いて製造した組成物の形態の農園芸用殺ダニ剤の形態は、特に限定されないが、例えば、乳剤や、水和剤、粉剤、フロアブル剤、細粒剤、粒剤、錠剤、油剤、噴霧剤、煙霧剤等の形態とすることが好適である。上記の化合物の1種又は2種以上を有効成分として配合することができる。
【0030】
上記の農園芸用殺ダニ剤を製造するために用いられる農薬補助剤は、例えば、農園芸用殺ダニ剤の効果の向上、安定化、分散性の向上等の目的で使用することができる。例えば、坦体(希釈剤)や、展着剤、乳化剤、湿展剤、分散剤、崩壊剤等を用いることができる。液体坦体としては、水や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、ブタノール、グリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、メチルナフタレン、シクロヘキサン、動植物油、脂肪酸等を挙げることができる。また、固体坦体としては、クレーや、カオリン、タルク、珪藻土、シリカ、炭酸カルシウム、モンモリナイト、ベントナイト、長石、石英、アルミナ、鋸屑、ニトロセルロース、デンプン、アラビアゴム等を用いることができる。
【0031】
乳化剤や、分散剤としては、通常の界面活性剤を使用することが出来、例えば、高級アルコール硫酸ナトリウムや、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ラウリルベタイン等の陰イオン系界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤等を用いることが出来る。また、展着剤;ジアルキルスルホサクシネート等の湿展剤;カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の固着剤;リグニンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等の崩壊剤等を用いることが出来る。
本発明の農園芸用殺ダニ剤における有効成分の含有量は、例えば、0.01〜99.5%であり、例えば、0.5〜90%の範囲から選ばれ、製剤形態、施用方法等の種々の条件により適宜決定すればよいが、例えば、粉剤では、約0.5〜20質量%程度、好ましくは、1〜10質量%、水和剤では、約1〜90質量%程度、好ましくは、10〜80質量%、乳剤では、約1〜90質量%程度、好ましくは、10〜40質量%の有効成分を含有するように製造することが好適である。
【0032】
例えば、乳剤の場合、有効成分である本発明の化合物に対して、溶剤及び界面活性剤を混合して原液の乳剤を製造することが出来、更に、この原液を使用に際して所定濃度まで水で希釈して施用することが出来る。水和剤の場合、有効成分の本発明の化合物、固形担体、及び界面活性剤を混合して原液を製造し、更に、この原液を使用に際して所定濃度まで水で希釈して施用することが出来る。粉剤の場合、有効成分である本発明の化合物、固形担体等を混合して、そのまま施用することが出来、粒剤の場合には、有効成分としての本発明の化合物、固形担体、及び界面活性剤等を混合して造粒することにより製造し、そのまま施用することが出来る。もっとも、上記の各製剤形態の製造方法は上記のものに限定されることはなく、有効成分の種類や施用目的等に応じて当業者が適宜選択することができるものである。
【0033】
本発明の農園芸用殺ダニ剤には、有効成分である本発明の化合物以外に、他の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、昆虫成育調整剤、肥料、土壌改良剤等の任意の有効成分を配合してもよい。本発明の殺ダニ剤の施用方法は特に限定されるものではなく、茎葉散布、土壌処理等のいずれの方法でも施用することが出来る。例えば、茎葉散布の場合、例えば、5〜1000ppm、好ましくは、10〜500ppmの濃度範囲の溶液を、10アール当たり、例えば、100〜700リットル程度の施用量で用いることが出来る。土壌処理の場合、5〜1000ppmの濃度範囲の溶液を1m2当たり、1〜10リットル程度の施用量で用いることが出来る。
【実施例】
【0034】
以下、本発明について、更に、実施例、製剤例及び試験例を使用して、詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例、製剤例及び試験例によって何ら限定されるものではない。
【0035】
<実施例1> N-[1-(4-クロロフェニル)チオ-2-メチル-2-プロピル]-1-(4-クロロフェニル)-4-クロロ-5-メチルピラゾール-3-カルボキサミドの合成
1-(4-クロロフェニル)-4-クロロ-5-メチルピラゾール-3-カルボン酸0.41gを塩化チオニル5ml中で1時間加熱還流後、減圧下濃縮した。得られた残渣を、1-(4-クロロフェニルチオ)-2-メチル-2-プロピルアミン0.32gとトリエチルアミン0.30gの酢酸エチル5ml溶液中に加え、室温で1時間撹拌した。水を加えた後、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下濃縮し、得られた残渣をヘキサンで洗浄して表1に記載の本発明の化合物(No.1)0.65gを得た。融点は、123-125℃であった。その他、同様にして、本発明の化合物を調製した。以下の表1には、実施例1と同様にして製造された本発明の化合物を記載する。
【0036】
表1















【0037】
上記表の「mp」欄における「オイル」に付された括弧の番号は、以下の括弧の番号と対応する。
【0038】
1) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.51(6H,s)、2.32(3H,s)、3.50(2H,s)、6.66(1H,bs)、7.07(2H,d
)、7.32(2H,d)、7.36-7.39(1H,m)、7.46-7.51(3H,m)。
2) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.04(3H,t)、1.51(6H,s)、2.24(3H,s)、2.61(2H,q)、3.51(2H,s)、6.82(1H,bs)、7.09(2H,d)、7.30(2H,d)、7.32(2H,d)、7.48(2H,d)。
3) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.35(6H,d)、1.48(6H,s)、2.95(1H,qq)、3.49(2H,s)、6.71(1H,bs)、7.12(2H,d)、7.24(2H,d)、7.34(2H,d)、7.51(2H,d)。
4) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.33(3H,t)、1.55(6H,s)、3.50(2H,s)、4.32(2H,q)、6.73(1H,bs)、7.12(2H,d)、7.33(2H,d)、7.45(2H,d)、7.61(2H,d)。
5) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.51(6H,s)、1.78-1.82(4H,m)、2.61-2.69(2H,m)、2.71-2.80(2H,m)、3.51(2H,s)、6.75(1H,bs)、7.05(2H,d)、7.32(2H,d)、7.46(2H,d)、7.48(2H,d)。
6) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.49+1.51(6H,s)、1.84-1.94(1H,m)、1.99-2.05(1H,m)、2.60-2.71(1H,m)、2.78-2.89(2H,m)、2.91-3.09(2H,m)、3.38+3.56(2H,d)、3.42(3H,s)、3.70-3.79(1H,m)、6.79(1H,bs)、7.07(2H,d)、7.31(2H,d)、7.40(2H,d)、7.42(2H,d)。
7) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.60(6H,s)、2.32(3H,s)、3.06(3H,s)、3.77(2H,s)、7.21(2H,d)、7.36(2H,d)、7.39(2H,d)、7.45(2H,d)。
8) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.58(6H,s)、2.31(3H,s)、3.51(2H,s)、6.73(1H,bs)、7.06-7.12(2H,m)、7.35-7.40(1H,m)、7.41(2H,d)、7.52(2H,d)。
9) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.52(6H,s)、2.33(3H,s)、3.50(2H,s)、6.64(1H,bs)、7.12(2H,d)、7.36(2H,d)、7.41(2H,d)、7.50(2H,d)。
10) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.55(6H,s)、2.26(3H,s)、2.87(3H,s)、3.62(2H,s)、6.67(1H,bs)、7.38(2H,d)、7.49(2H,d)、7.52(2H,d)、7.66(2H,d)。
11) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.52(6H,s)、2.32(3H,s)、3.51(2H,s)、6.58(1H,s)、6.75(1H,bs)、7.11(2H,d)、7.32(2H,d)、7.39(2H,d)、7.48(2H,d)。
12) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.55(6H,s)、2.09-2.32(2H,m)、2.83-2.87(2H,m)、3.22-3.38(2H,m)、6.68(1H,bs)、7.05(2H,d)、7.31(2H,d)、7.42(2H,d)、7.49(2H,d)。
13) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.52(3H,s)、2.29(3H,s)、3.50(2H,s)、6.69(1H,bs)、7.07(2H,d)、7.31(2H,d)、7.34-7.43(2H,m)、7.48-7.54(3H,m)。
14) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.52(6H,s)、2.29(3H,s)、3.51(2H,s)、6.65(1H,bs)、7.07(2H,d)、7.30(2H,d)、7.33(2H,d)、7.60(2H,d)。
15) 1H-NMR(CDCl3)δppm:1.52(6H,s)、2.28(3H,s)、3.51(2H,s)、6.55(1H,bs)、7.08(2H,d)、7.31(2H,d)、7.36(2H,d)、7.49(2H,d)。
【0039】
次に製剤例を示す。なお、部は質量部を表す。
【0040】
製剤例1 乳剤
本発明の化合物(10部)、キシレン(60部)、N-メチル-2-ピロリドン(20部)及びソルポール3005X(非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤の混合物、東邦化学工業株式会社、商品名)(10部)を均一に混合溶解して、乳剤を得た。
【0041】
製剤例2 水和剤−1
本発明の化合物(20部)、ニップシールNS-K(ホワイトカーボン、東ソー・シリカ株式会社、商品名)(20部)、カオリンクレー(カオリナイト、竹原化学工業株式会社、商品名)(20部)、サンエキスP−252(リグニンスルホン酸ナトリウム、日本製紙ケミカル株式会社、商品名)( 5部)及びルノックスP−65L(アルキルアリルスルホン酸塩、東邦化学工業株式会社、商品名)(5部)をエアーミルにて均一に混合粉砕して、水和剤を得た。
【0042】
製剤例3 水和剤−2
【0043】
本発明の化合物(20部)、ニップシールNS-K(20部)、カオリンクレー(50部)、ルノックス1000C(ナフタレンスルホン酸塩縮合物、東邦化学工業株式会社、商品名)(5部)及びソルポール5276(非イオン性界面活性剤、東邦化学工業株式会社、商品名)(5部)をエアーミルにて均一に混合粉砕して、水和剤を得た。
【0044】
製剤例4 フロアブル剤−1
予め混合しておいたプロピレングリコール(5部)、ソルポール7933(アニオン性界面活性剤、東邦化学工業株式会社、商品名)(5部)、水(50部)に本発明の化合物(20部)を分散させ、スラリー状混合物とし、次にこのスラリー状混合物を、ダイノミル(シンマルエンタープライゼス社)で湿式粉砕した後、予めキサンタンガム(0.2部)を水(19.8部)によく混合分散させたものを添加し、フロアブル剤−1を得た。
【0045】
製剤例5 フロアブル剤−2
本発明の化合物(20部)、ニューカルゲンFS-26(ジオクチルスルホサクシネートとポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルの混合物、竹本油脂株式会社、商品名)(5部)、プロピレングリコール(8部)、水(50部)を予め混合しておき、このスラリー状混合物を、ダイノミル(シンマルエンタープライゼス社)で湿式粉砕した。次にキサンタンガム(0.2部)を水(16.8部)によく混合分散させゲル状物を作成し、粉砕したスラリーと十分に混合して、フロアブル剤−2を得た。
【0046】
次に、本発明の化合物がダニ防除剤の有効成分として有用であることを試験例により示す。なお、本発明の化合物は、表1に記載の化合物番号で示す。
【0047】
試験例1:ナミハダニに対する殺成虫試験
【0048】
水を入れた90ml容量のポリエチレンカップに、中央に穴(径約5mm)を開けた蓋をした。径6.5cmの円形の濾紙に幅5mm程度の切れ込みを入れ、下方に垂らした短冊状の部分を蓋の穴からカップ内の水に浸るように差し込み、その濾紙の上に脱脂綿をのせた。このようにして、カップ内の水が常時補給される状態にした脱脂綿上にいんげん初生葉から作成したリーフ・ディスク(径20mm)を4枚のせ、そのリーフ・ディスクにナミハダニ雌成虫4頭を接種した。このカップを高さ50cm、10cm径のアクリル製円筒内に置き、本発明の化合物の水希釈液をエアーブラシを用いて1カップ当り1.35ml散布した(1濃度、1反復)。散布後は25℃の恒温室内に保持した。処理3日後にビノキュラーの下で成虫の生死及び苦悶を調査し、苦悶虫を死として殺成虫率(%)を求めた。結果を表2に示す(以下の表中、化合物番号は表1の番号に対応する)。
【0049】
表2
殺成虫率(%)=[死虫数/(死虫数+生存虫数)]×100




【0050】
上記表2に示した通り、本発明の化合物は、著しく殺ダニ活性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式[I]
【化1】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、シアノ基またはニトロ基を示し、R3は水素原子、C1〜C4のアルキル基またはC1〜C4のアルコキシ基を示し、Xは水素原子またはハロゲン原子を示し、或いは、R3とXは一緒になって、
【化2】

を形成し(式中、R10およびR11は水素原子、ハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基またはC1〜C4のアルコキシ基を示す。)、R4は水素原子またはC1〜C4のアルキル基を示し、R5、R6、R7はそれぞれ独立に水素原子またはC1〜C4のアルキル基を示し、R8およびR9はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基、トリフルオロメチル基、メチルチオ基、メチルスルホニル基、トリフルオロメトキシ基、シアノ基、ニトロ基またはエトキシカルボニル基を示し、nは0、1または2を示す。)で表されるN-フェニルチオアルキルピラゾール-3-カルボキサミド誘導体。
【請求項2】
請求項1に記載の式[I]で表されるN-フェニルチオアルキルピラゾール-3-カルボキサミド誘導体を有効成分として含有することを特徴とする殺ダニ剤。

【公開番号】特開2012−56871(P2012−56871A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200856(P2010−200856)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000101123)アグロカネショウ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】