説明

NASHの評価方法、NASH評価装置、NASH評価方法、NASH評価プログラム、NASH評価システム、情報通信端末装置、およびNASHの予防・改善物質の探索方法

【課題】血液中のアミノ酸の濃度を利用して、NASHにおける肝線維化の状態を精度よく評価することができるNASHの評価方法など、およびNASHにおける肝線維化を予防させる又はNASHにおける肝線維化の状態を改善させる物質を精度よく探索することができるNASHの予防・改善物質の探索方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明にかかるNASHの評価方法によれば、評価対象から採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得し、取得したアミノ酸濃度データに基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液(例えば血漿、血清などを含む)中のアミノ酸濃度を利用したNASHの評価方法、NASH評価装置、NASH評価方法、NASH評価プログラム、NASH評価システム、および情報通信端末装置、ならびに非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non−alcoholic steatohepatitis)における肝線維化を予防させる又は非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を改善させる物質を探索するNASHの予防・改善物質の探索方法に関するものである。
【0002】
ここで、本明細書において、肝線維化とは、肝細胞の壊死や損傷に応答して起こる生体反応であり、細胞外基質の生成と分解の不均衡(アンバランス)に因って肝臓内で結合組織の蓄積が生じた状態を示す。そして、肝線維化は、既存の線維が崩壊し蓄積することでさらに進行する。
【背景技術】
【0003】
NASHは、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝疾患および飲酒歴が否定された原因不明の肝障害である。また、NASHの肝臓は、高度の脂肪肝に加えて、肝実質の炎症・変性・壊死・線維化を特徴とし、当該肝臓の組織像はアルコール性肝障害のものに類似する。NASHの基礎病変として、インスリン抵抗性や肥満が想定されている(非特許文献1参照)。飽食の時代の到来と共に、先進国では肥満や生活習慣病の人口が増大している。その結果、NASHの患者数は米国で560万人と推定されている。NASHの患者の半数では約十年の経過で肝病変に明らかな進展が認められ、その半数のうち2割の症例では肝硬変へ移行する(非特許文献2参照)ので、NASHの早期診断とNASH患者の治療が重要である。
【0004】
現在、NASHの確定診断とNASHの病態変化の把握に、肝生検は必要不可欠である。NASHの一般的な診断方法では、まず、アルコール摂取量が20g/日以下で、GOT・GPTが6ヶ月以上異常変動で、肝炎ウイルスが陰性で、既存の代表的な代謝疾患や自己免疫性肝炎が否定され、超音波で脂肪肝の所見が取れたものを、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:Non Alcoholic Fatty Liver Disease)と判定する。さらに、メタボリック・シンドロームの判断基準、内臓脂肪量、中性脂肪量、HDLコレステロール量、血圧、血糖値等を考慮し、肝生検を実施してNASHの組織学的評価を行う。肝生検によるNASHの組織学的評価において、Bruntらが作成したグレーデングとステージングによるスコアリングシステムが広く受け入れられている(非特許文献3参照)。特に、ステージングは、肝臓の線維化状態を示す指標でありNASHの病期を反映するので、重要である。ここで、ステ−ジングにおいて、ステージ0(S0)は、肝臓の線維化が認められない状態であり、ステージ1(S1)は、肝臓の細葉第3領域(ゾーン3)を中心に、血管周囲(perivascular)・類洞周囲(perisinusoidal)・細胞周囲(pericellular)の線維化が部分的にまたは広範囲に認められる状態であり、ステージ2(S2)は、S1の状態に加えて更に、肝臓の門脈域の線維化が部分的もしくは広範囲に認められる状態であり、ステージ3(S3)は、肝臓の線維性架橋形成(bridging fibrosis)が部分的もしくは広範囲に認められる状態であり、ステージ4(S4)は肝硬変の状態であると定められている。
【0005】
しかし、肝生検は侵襲度の高い検査であり、日本人の20〜30%に認められる脂肪肝の人全員に肝生検を施行するのは実際的でない。さらに、こうした侵襲的診断では、苦痛を伴うなど患者への負担があり、検査による出血などのリスクも起こりえる。
【0006】
そのため、肝硬変への移行が危惧されるNAFLDの症例を侵襲度の少ない手法で選択し、選択した症例から肝生検によりNASHの診断を行い、NASHと診断された症例を集学的治療の対象とすることが、患者に対する身体的負担および費用対効果の面から望ましい。さらに、現在、臨床現場では、肝硬変への移行や肝がんの発症が危惧され、定期的な経過観察や積極的な食事療法・運動療法・薬物療法が必要となるS3の集団を早期に鑑別して積極的に療法することが必要とされていて、本集団を確実に鑑別できる侵襲度の少ない手法の創出が望まれている。
【0007】
ここで、より広くNASHを判別する侵襲度の少ない手法として、GOT・GPT(非特許文献4参照)・レプチン(非特許文献5参照)・アディポネクチン(非特許文献6参照)・チオレドキシン(非特許文献7参照)などの指標に基づく手法が報告されている。さらに、肝硬変を含む高度線維化群を判別する手法として、TypeIVコラーゲン(非特許文献8参照)・ヒアルロン酸(非特許文献9参照、非特許文献10参照)などの線維化マーカーを用いた診断法が提案されている。
【0008】
ここで、肝疾患の臨床診断を対象とし血中のアミノ酸濃度を用いた指標として、Fischerが提案したFischer比“(Leu+Val+Ile)/(Phe+Tyr)”や、Fischer比を簡略化したBTR比“(Leu+Val+Ile)/Tyr”がある(非特許文献11参照)。これにより、肝硬変における肝性脳症を、これら指標に基づいて診断することができる。
【0009】
また、先行特許として、アミノ酸濃度と生体状態とを関連付ける方法に関する特許文献1、特許文献2、および特許文献3が公開されている。また、特許文献1には、血中アミノ酸を用いて肝炎を診断する方法、およびC型肝炎の非肝炎と肝炎の判別を目的とする指標が開示されている。また、アミノ酸の濃度を変数とする分数式からなる指標式を用いて肝疾患の病態の進行を評価する装置に関する特許文献4が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2004/052191号
【特許文献2】国際公開第2006/098192号
【特許文献3】国際公開第2009/054351号
【特許文献4】国際公開第2006/129513号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Reid AE. et al.,Gastroenterology,Vol.121,710−723,2001
【非特許文献2】Matteoni CA. et al.,Gastroenterology,Vol.116,1413−1419,1999
【非特許文献3】Brunt EM. et al.,American Journal of Gastroenterology,Vol.94,2467−2474
【非特許文献4】Angulo P.,Hepatology,30,1356,1999
【非特許文献5】Hepatology,36,403−409,2002
【非特許文献6】Hui JM. et al.,Hepatology,40,46−54,2004
【非特許文献7】Sumida Y. et al.,J Hepatol.,38,32−38,2003
【非特許文献8】Sakugawa H. et al.,World J Gastroenterol.,11,255−259,2005
【非特許文献9】金子浩幸ら,肝臓,45巻,suppl.(1)A316,P−326,2004
【非特許文献10】Suzuki A. et al.,Liver Int.,25,779−786,2005
【非特許文献11】Fischer JE.,Surgery,78,276−290,1975
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、非特許文献4や非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7などの指標に基づくNASHの判別手法によれば、積極的な治療を必要とするS3症例をS2症例から区別できるかが不明であり、また非特許文献8や非特許文献9、非特許文献10などの線維化マーカーを用いた診断法によれば、ヒアルロン酸については、若年層では正常範囲であり(「織部淳哉ら,肝臓,45巻,suppl.(2)A312,P−318,2004」参照)、採血条件の影響を受けやすく、TypeIVコラーゲンについては、高度線維化群でも低値のものが認められているので、これまでの技術では、NASHにおける肝線維化の状態に関する判別性能・診断性能は必ずしも十分ではなかったという問題点があった。
【0013】
また、非特許文献11や特許文献1、特許文献4などで開示されている血中のアミノ酸濃度をパラメータとした指標を用いた診断・評価方法によれば、診断・評価対象が肝硬変における肝性脳症やC型肝炎、肝疾患の病態進行であり、さらに、これまでNASHのステージ分類と末梢血のアミノ酸代謝パターンとに関する報告やNASHの診断方法へのアミノ酸代謝パターンの応用についての報告は皆無であるので、当該診断方法を用いても、これら診断対象とは全く成因の異なるNASHにおける肝線維化の状態を精度よく診断することは困難であるという問題点があった。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、血液中のアミノ酸の濃度を利用して、NASHにおける肝線維化の状態を精度よく評価することができるNASHの評価方法、NASH評価装置、NASH評価方法、NASH評価プログラム、NASH評価システム、および情報通信端末装置、ならびに、当該NASHの評価方法を用いて、NASHにおける肝線維化を予防させる又はNASHにおける肝線維化の状態を改善させる物質を精度よく探索することができるNASHの予防・改善物質の探索方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
アミノ酸の代謝は、主に肝臓で行われ、NASHの病態形成過程に重要な糖代謝・脂質代謝・炎症反応・レドックス調節機構と強く連関していると考えられる。そのため、NASH患者の末梢血等で肝臓の組織像変化に対応して特異的に変動するアミノ酸が発見され、さらに当該変動するアミノ酸の濃度をパラメータとして用いた指標式が創出できれば、NASHの背景にある代謝変化を反映した簡便かつ鋭敏な検査法として広く適用可能である。そこで、本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討した結果、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別、または、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用なアミノ酸を同定すると共に、同定したアミノ酸の濃度を変数に用いた、2群間の判別能を最適化するための多変量判別式(関数式、指標式)を見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるNASHの評価方法は、評価対象から採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した前記評価対象の前記アミノ酸濃度データに基づいて、前記評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価する濃度値基準評価ステップとを含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかるNASHの評価方法は、前記のNASHの評価方法において、前記濃度値基準評価ステップは、前記取得ステップで取得した前記アミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの前記濃度値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する濃度値基準判別ステップをさらに含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかるNASHの評価方法は、前記のNASHの評価方法において、前記濃度値基準評価ステップは、前記取得ステップで取得した前記アミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornうち少なくとも1つの前記濃度値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する濃度値基準判別ステップをさらに含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかるNASHの評価方法は、前記のNASHの評価方法において、前記濃度値基準評価ステップは、前記取得ステップで取得した前記アミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む予め設定した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する判別値算出ステップと、前記判別値算出ステップで算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価する判別値基準評価ステップとをさらに含むこと、を特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかるNASHの評価方法は、前記のNASHの評価方法において、前記多変量判別式は、ロジスティック回帰式、分数式、線形判別式、重回帰式、サポートベクターマシンで作成された式、マハラノビス距離法で作成された式、正準判別分析で作成された式、決定木で作成された式のいずれか1つであること、を特徴とする。
【0021】
また、本発明にかかるNASHの評価方法は、前記のNASHの評価方法において、前記判別値算出ステップは、前記取得ステップで取得した前記アミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの前記濃度値、およびMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを前記変数として含む前記多変量判別式に基づいて、前記判別値を算出し、前記判別値基準評価ステップは、前記判別値算出ステップで算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する判別値基準判別ステップをさらに含むこと、を特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかるNASHの評価方法は、前記のNASHの評価方法において、前記多変量判別式は、数式1、またはOrn、Glu、Ala、Cysを前記変数として含む前記ロジスティック回帰式であること、を特徴とする。
(Orn/Gln)+{Phe/(Val+Leu)}+(Met/Ala)
・・・数式1
【0023】
また、本発明にかかるNASHの評価方法は、前記のNASHの評価方法において、前記判別値算出ステップは、前記取得ステップで取得した前記アミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの前記濃度値、およびGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを前記変数として含む前記多変量判別式に基づいて、前記判別値を算出し、前記判別値基準評価ステップは、前記判別値算出ステップで算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する判別値基準判別ステップをさらに含むこと、を特徴とする。
【0024】
また、本発明にかかるNASHの評価方法は、前記のNASHの評価方法において、前記多変量判別式は、数式2、またはGly、Alaを前記変数として含む前記ロジスティック回帰式であること、を特徴とする。
{Gly/(Gln+Glu)}+(Tyr/Val)+(Pro/Ala)
・・・数式2
【0025】
また、本発明にかかるNASH評価装置は、制御手段と記憶手段とを備え、評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価するNASH評価装置であって、前記制御手段は、アミノ酸の濃度値に関する予め取得した前記評価対象のアミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む前記記憶手段で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する判別値算出手段と、前記判別値算出手段で算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価する判別値基準評価手段とを備えたこと、を特徴とする。
【0026】
なお、本発明にかかるNASH評価装置は、前記のNASH評価装置において、前記制御手段は、前記アミノ酸濃度データと前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を表す指標に関する肝線維化状態指標データとを含む前記記憶手段で記憶した肝線維化状態情報に基づいて、前記記憶手段で記憶する前記多変量判別式を作成する多変量判別式作成手段をさらに備え、前記多変量判別式作成手段は、前記肝線維化状態情報から所定の式作成手法に基づいて、前記多変量判別式の候補である候補多変量判別式を作成する候補多変量判別式作成手段と、前記候補多変量判別式作成手段で作成した前記候補多変量判別式を、所定の検証手法に基づいて検証する候補多変量判別式検証手段と、前記候補多変量判別式検証手段での検証結果から所定の変数選択手法に基づいて前記候補多変量判別式の変数を選択することで(ただし、前記検証結果を考慮せず、前記所定の変数選択手法に基づいて前記候補多変量判別式の変数を選択してもよい。)、前記候補多変量判別式を作成する際に用いる前記肝線維化状態情報に含まれる前記アミノ酸濃度データの組み合わせを選択する変数選択手段と、をさらに備え、前記候補多変量判別式作成手段、前記候補多変量判別式検証手段および前記変数選択手段を繰り返し実行して蓄積した前記検証結果に基づいて、複数の前記候補多変量判別式の中から前記多変量判別式として採用する前記候補多変量判別式を選出することで、前記多変量判別式を作成することを特徴としてもよい。
【0027】
また、本発明にかかるNASH評価方法は、制御手段と記憶手段とを備えた情報処理装置において実行される、評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価するNASH評価方法であって、前記制御手段において実行される、アミノ酸の濃度値に関する予め取得した前記評価対象のアミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む前記記憶手段で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する判別値算出ステップと、前記判別値算出ステップで算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価する判別値基準評価ステップとを含むこと、を特徴とする。
【0028】
また、本発明にかかるNASH評価プログラムは、制御手段と記憶手段とを備えた情報処理装置において実行させるための、評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価するNASH評価プログラムであって、前記制御手段において実行させるための、アミノ酸の濃度値に関する予め取得した前記評価対象のアミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む前記記憶手段で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する判別値算出ステップと、前記判別値算出ステップで算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価する判別値基準評価ステップとを含むこと、を特徴とする。
【0029】
また、本発明にかかる記録媒体は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記のNASH評価プログラムを記録したことを特徴とする。
【0030】
また、本発明にかかるNASH評価システムは、制御手段と記憶手段とを備え、評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価するNASH評価装置と、制御手段を備え、アミノ酸の濃度値に関する前記評価対象のアミノ酸濃度データを提供する情報通信端末装置とを、ネットワークを介して通信可能に接続して構成されたNASH評価システムであって、前記情報通信端末装置の前記制御手段は、前記評価対象の前記アミノ酸濃度データを前記NASH評価装置へ送信するアミノ酸濃度データ送信手段と、前記NASH評価装置から送信された、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の状態評価に関する前記評価対象の評価結果を受信する評価結果受信手段とを備え、前記NASH評価装置の前記制御手段は、前記情報通信端末装置から送信された前記アミノ酸濃度データを受信するアミノ酸濃度データ受信手段と、前記アミノ酸濃度データ受信手段で受信した前記アミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む前記記憶手段で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する判別値算出手段と、前記判別値算出手段で算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価する判別値基準評価手段と、前記判別値基準評価手段での前記評価対象の前記評価結果を前記情報通信端末装置へ送信する評価結果送信手段と、を備えたこと、を特徴とする。
【0031】
また、本発明にかかる情報通信端末装置は、評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価するNASH評価装置とネットワークを介して通信可能に接続された、制御手段を備え、アミノ酸の濃度値に関する前記評価対象のアミノ酸濃度データを提供する情報通信端末装置であって、前記制御手段は、前記評価対象の前記アミノ酸濃度データを前記NASH評価装置へ送信するアミノ酸濃度データ送信手段と、前記NASH評価装置から送信された、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の状態評価に関する前記評価対象の評価結果を受信する評価結果受信手段とを備え、前記評価結果は、前記NASH評価装置が、前記情報通信端末装置から送信された前記アミノ酸濃度データを受信し、受信した前記アミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む前記NASH評価装置で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出し、算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価した結果であること、を特徴とする。
【0032】
また、本発明にかかるNASH評価装置は、アミノ酸の濃度値に関する評価対象のアミノ酸濃度データを提供する情報通信端末装置とネットワークを介して通信可能に接続された、制御手段と記憶手段とを備え、前記評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価するNASH評価装置であって、前記制御手段は、前記情報通信端末装置から送信された前記アミノ酸濃度データを受信するアミノ酸濃度データ受信手段と、前記アミノ酸濃度データ受信手段で受信した前記アミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む前記記憶手段で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する判別値算出手段と、前記判別値算出手段で算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価する判別値基準評価手段と、前記判別値基準評価手段での前記評価対象の評価結果を前記情報通信端末装置へ送信する評価結果送信手段と、を備えたこと、を特徴とする。
【0033】
また、本発明にかかるNASHの予防・改善物質の探索方法は、1つ又は複数の物質から成る所望の物質群が投与された評価対象から採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した前記アミノ酸濃度データに基づいて、前記評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価する濃度値基準評価ステップと、前記濃度値基準評価ステップでの評価結果に基づいて、前記所望の前記物質群が、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化を予防させる又は前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を改善させるものであるか否かを判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、評価対象から採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得し、取得した評価対象のアミノ酸濃度データに基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を評価する。これにより、血液中のアミノ酸の濃度を利用して、NASHにおける肝線維化の状態を精度よく評価することができるという効果を奏する。
【0035】
また、本発明によれば、取得したアミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する。これにより、血液中のアミノ酸の濃度のうちNASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用なアミノ酸の濃度を利用して、この2群判別を精度よく行うことができるという効果を奏する。
【0036】
また、本発明によれば、取得したアミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornうち少なくとも1つの濃度値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する。これにより、血液中のアミノ酸の濃度のうちNASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用なアミノ酸の濃度を利用して、この2群判別を精度よく行うことができるという効果を奏する。
【0037】
また、本発明によれば、アミノ酸濃度データ、およびアミノ酸の濃度を変数として含む予め設定した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出し、算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を評価する。これにより、アミノ酸の濃度を変数として含む多変量判別式で得られる判別値を利用して、NASHにおける肝線維化の状態を精度よく評価することができるという効果を奏する。
【0038】
また、本発明によれば、多変量判別式は、ロジスティック回帰式、分数式、線形判別式、重回帰式、サポートベクターマシンで作成された式、マハラノビス距離法で作成された式、正準判別分析で作成された式、決定木で作成された式のいずれか1つである。これにより、アミノ酸の濃度を変数として含む多変量判別式で得られる判別値を利用して、NASHにおける肝線維化の状態をさらに精度よく評価することができるという効果を奏する。
【0039】
また、本発明によれば、アミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値、およびMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出し、算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別を精度よく行うことができるという効果を奏する。
【0040】
また、本発明によれば、多変量判別式は、数式1、またはOrn、Glu、Ala、Cysを変数として含むロジスティック回帰式である。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができるという効果を奏する。
(Orn/Gln)+{Phe/(Val+Leu)}+(Met/Ala)
・・・数式1
【0041】
また、本発明によれば、アミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの濃度値、およびGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出し、算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別を精度よく行うことができるという効果を奏する。
【0042】
また、本発明によれば、多変量判別式は、数式2、またはGly、Alaを変数として含むロジスティック回帰式である。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができるという効果を奏する。
{Gly/(Gln+Glu)}+(Tyr/Val)+(Pro/Ala)
・・・数式2
【0043】
なお、本発明によれば、アミノ酸濃度データとNASHにおける肝線維化の状態を表す指標に関する肝線維化状態指標データとを含む記憶手段で記憶した肝線維化状態情報に基づいて、記憶手段で記憶する多変量判別式を作成してもよい。具体的には、(1)肝線維化状態情報から所定の式作成手法に基づいて候補多変量判別式を作成し、(2)作成した候補多変量判別式を所定の検証手法に基づいて検証し、(3)その検証結果から所定の変数選択手法に基づいて候補多変量判別式の変数を選択することで(ただし、当該検証結果を考慮せず、所定の変数選択手法に基づいて候補多変量判別式の変数を選択してもよい。)、候補多変量判別式を作成する際に用いる肝線維化状態情報に含まれるアミノ酸濃度データの組み合わせを選択し、(4)(1)、(2)および(3)を繰り返し実行して蓄積した検証結果に基づいて、複数の候補多変量判別式の中から多変量判別式として採用する候補多変量判別式を選出することで、多変量判別式を作成してもよい。これにより、NASHにおける肝線維化の状態評価に最適な多変量判別式を作成することができるという効果を奏する。
【0044】
また、本発明によれば、当該記録媒体に記録されたNASH評価プログラムをコンピュータに読み取らせて実行することで、コンピュータにNASH評価プログラムを実行させるので、上記と同様の効果を得ることができるという効果を奏する。
【0045】
また、本発明によれば、1つ又は複数の物質から成る所望の物質群が投与された評価対象から採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得し、取得したアミノ酸濃度データに基づいて、評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価し、評価結果に基づいて、所望の物質群が、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化を予防させる又は非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を改善させるものであるか否かを判定するので、血液中のアミノ酸の濃度を利用してNASHにおける肝線維化の状態を精度よく評価することができるNASHの評価方法を用いて、NASHにおける肝線維化を予防させる又はNASHにおける肝線維化の状態を改善させる物質を精度よく探索することができるという効果を奏する。
【0046】
ここで、NASHの治療としては、まず運動療法・食事療法が行われているが、これらの継続はしばしば困難であり、さらに急速な体重減少は、肝線維化の病態を悪化させることが知られている。また、薬物療法としては、偵察的に、ウルソデオキシコール酸(「Lindor K.et al.,Hepatology,39,770−778,2004」参照)、ビタミンE(「Kawanaka M.,Hepatol Res.,29,39−41,2004」参照)、ベタイン(「Abdelmalek MF.,Am J Gastroenterol,96,2711−2717,2001」参照)、フィブレート系薬剤(「Lurin J.,Hepatology,23,1464−1467,1996」参照)、Thiazolinedione系薬剤(「Promrat K.,Hepatology,39,188−196,2004」、「Neuschwander−Tetri BA.,Hepatology,38,1008−1017,2003」参照)が投与されているが、効果は限定的で、大規模な比較試験で効果が判明したものは無い。さらに一部の薬物では副作用が懸念されている。
【0047】
一方、NASH患者の半数では約10年の経過で肝病変に明らかな進展が認められ、そのうち2割の症例では肝硬変に移行するので(「Matteoni CA.,Gastroenterology,116,1413−1419,1999」参照)、新薬の開発が急務である。
【0048】
しかし、生活習慣病を背景に脂肪肝から炎症・肝変性・線維化を起こすNASHを完全に反映した病態モデルが存在しないことが効果的な薬物評価を困難にしている。さらにNASHの肝生検をエンドポイントとした臨床試験は、Mayo Clinicにおけるウルソデオキシコーリックアシッドの臨床試験(「Lindor K.et al.,Hepatology,39,770−778,2004」参照)や、NIDDKのNASH Clinical Research Networkのアクトスの臨床試験(「http://www.nih.gov/news/pr/apr2005/niddk−01.htm」参照)をみてもわかるように、2年を要する。
【0049】
そこで、本発明にかかるNASHの予防・改善物質の探索方法を用いれば、NASHでの典型的なアミノ酸濃度変動パターンの情報やNASHの肝臓組織病態変化に対応する多変量判別式を利用して、NASHの病態を一部反映した既存の動物モデルや臨床で、早期に有効な薬物を選択することが可能になる。
【0050】
なお、本発明は、NASHにおける肝線維化の状態評価を行う際、アミノ酸の濃度以外に、他の生体情報(例えば糖類・脂質・タンパク質・ペプチド・ミネラル・ホルモン等の生体代謝物や、例えば血糖値・血圧値・性別・年齢・肝疾患指標・食習慣・飲酒習慣・運動習慣・肥満度・疾患歴等の生体指標、など)をさらに用いてもかまわない。また、本発明は、NASHにおける肝線維化の状態評価を行う際、多変量判別式における変数として、アミノ酸の濃度以外に、他の生体情報(例えば糖類・脂質・タンパク質・ペプチド・ミネラル・ホルモン等の生体代謝物や、例えば血糖値・血圧値・性別・年齢・肝疾患指標・食習慣・飲酒習慣・運動習慣・肥満度・疾患歴等の生体指標、など)をさらに用いてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明の基本原理を示す原理構成図である。
【図2】図2は、第1実施形態にかかるNASHの評価方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の基本原理を示す原理構成図である。
【図4】図4は、本システムの全体構成の一例を示す図である。
【図5】図5は、本システムの全体構成の他の一例を示す図である。
【図6】図6は、本システムのNASH評価装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【図7】図7は、利用者情報ファイル106aに格納される情報の一例を示す図である。
【図8】図8は、アミノ酸濃度データファイル106bに格納される情報の一例を示す図である。
【図9】図9は、肝線維化状態情報ファイル106cに格納される情報の一例を示す図である。
【図10】図10は、指定肝線維化状態情報ファイル106dに格納される情報の一例を示す図である。
【図11】図11は、候補多変量判別式ファイル106e1に格納される情報の一例を示す図である。
【図12】図12は、検証結果ファイル106e2に格納される情報の一例を示す図である。
【図13】図13は、選択肝線維化状態情報ファイル106e3に格納される情報の一例を示す図である。
【図14】図14は、多変量判別式ファイル106e4に格納される情報の一例を示す図である。
【図15】図15は、判別値ファイル106fに格納される情報の一例を示す図である。
【図16】図16は、評価結果ファイル106gに格納される情報の一例を示す図である。
【図17】図17は、多変量判別式作成部102hの構成を示すブロック図である。
【図18】図18は、判別値基準評価部102jの構成を示すブロック図である。
【図19】図19は、本システムのクライアント装置200の構成の一例を示すブロック図である。
【図20】図20は、本システムのデータベース装置400の構成の一例を示すブロック図である。
【図21】図21は、本システムで行うNASH評価サービス処理の一例を示すフローチャートである。
【図22】図22は、本システムのNASH評価装置100で行う多変量判別式作成処理の一例を示すフローチャートである。
【図23】図23は、本発明の基本原理を示す原理構成図である。
【図24】図24は、第3実施形態にかかるNASHの改善物質の探索方法の一例を示すフローチャートである。
【図25】図25は、肝線維化ステージ毎のアミノ酸変数の分布を示す箱ひげ図である。
【図26】図26は、数式1による肝線維化ステージの判別性能を評価するためのROC曲線を示す図である。
【図27】図27は、数式1を用いてS12群とS34群の2群判別を行った際の各カットオフ値に対応する、感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率、および正診率を示す図である。
【図28】図28は、数式1と同等の判別性能を持つ分数式の一覧を示す図である。
【図29】図29は、数式1と同等の判別性能を持つ分数式の一覧を示す図である。
【図30】図30は、数式2による肝線維化ステージの判別性能を評価するためのROC曲線を示す図である。
【図31】図31は、数式2を用いてS1群とS234群の2群判別を行った際の各カットオフ値に対応する、感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率、および正診率を示す図である。
【図32】図32は、数式2と同等の判別性能を持つ分数式の一覧を示す図である。
【図33】図33は、数式2と同等の判別性能を持つ分数式の一覧を示す図である。
【図34】図34は、Orn、Glu、Ala、およびCysから構成されるロジスティック回帰式による肝線維化ステージの判別性能を評価するためのROC曲線を示す図である。
【図35】図35は、Orn、Glu、Ala、およびCysから構成されるロジスティック回帰式と同等の判別性能を持つロジスティック回帰式の一覧を示す図である。
【図36】図36は、Orn、Glu、Ala、およびCysから構成されるロジスティック回帰式と同等の判別性能を持つロジスティック回帰式の一覧を示す図である。
【図37】図37は、GlyおよびAlaから構成されるロジスティック回帰式による肝線維化ステージの判別性能を評価するためのROC曲線を示す図である。
【図38】図38は、GlyおよびAlaから構成されるロジスティック回帰式と同等の判別性能を持つロジスティック回帰式の一覧を示す図である。
【図39】図39は、GlyおよびAlaから構成されるロジスティック回帰式と同等の判別性能を持つロジスティック回帰式の一覧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に、本発明にかかるNASHの評価方法の実施の形態(第1実施形態)、本発明にかかるNASH評価装置、NASH評価方法、NASH評価プログラム、記録媒体、NASH評価システム、および情報通信端末装置の実施の形態(第2実施形態)、ならびに本発明にかかるNASHの予防・改善物質の探索方法の実施の形態(第3実施形態)を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0053】
[第1実施形態]
[1−1.本発明の概要]
ここでは、本発明にかかるNASHの評価方法の概要について図1を参照して説明する。図1は本発明の基本原理を示す原理構成図である。
【0054】
まず、評価対象(例えば動物やヒトなどの個体)から採取した血液(例えば血漿、血清などを含む)中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得する(ステップS11)。なお、ステップS11では、例えば、アミノ酸濃度測定を行う企業等が測定したアミノ酸濃度データを取得してもよく、また、評価対象から採取した血液から、例えば以下の(A)または(B)などの測定方法でアミノ酸濃度データを測定することでアミノ酸濃度データを取得してもよい。ここで、アミノ酸濃度の単位は、例えばモル濃度や重量濃度、これらの濃度に任意の定数を加減乗除することで得られるものでもよい。
(A)採取した血液サンプルを遠心することにより血液から血漿を分離した。全ての血漿サンプルは、アミノ酸濃度の測定時まで−80℃で凍結保存した。アミノ酸濃度測定時には、アセトニトリルを添加し除蛋白処理を行った後、標識試薬(3−アミノピリジル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート)を用いてプレカラム誘導体化を行い、そして、液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MS)によりアミノ酸濃度を分析した(国際公開第2003/069328号、国際公開第2005/116629号を参照)。
(B)採取した血液サンプルを遠心することにより血液から血漿を分離した。全ての血漿サンプルは、アミノ酸濃度の測定時まで−80℃で凍結保存した。アミノ酸濃度測定時には、スルホサリチル酸を添加し除蛋白処理を行った後、ニンヒドリン試薬を用いたポストカラム誘導体化法を原理としたアミノ酸分析計によりアミノ酸濃度を分析した。
【0055】
つぎに、ステップS11で取得したアミノ酸濃度データに基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を評価する(ステップS12)。
【0056】
以上、本発明によれば、評価対象から採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得し、取得した評価対象のアミノ酸濃度データに基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を評価する。これにより、血液中のアミノ酸の濃度を利用して、NASHにおける肝線維化の状態を精度よく評価することができる。
【0057】
ここで、ステップS12を実行する前に、ステップS11で取得したアミノ酸濃度データから欠損値や外れ値などのデータを除去してもよい。これにより、NASHにおける肝線維化の状態をさらに精度よく評価することができる。
【0058】
また、ステップS12では、ステップS11で取得したアミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値に基づいて、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別してもよい。これにより、血液中のアミノ酸の濃度のうちNASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用なアミノ酸の濃度を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。
【0059】
また、ステップS12では、ステップS11で取得したアミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの濃度値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別してもよい。これにより、血液中のアミノ酸の濃度のうちNASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用なアミノ酸の濃度を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。
【0060】
また、ステップS12では、ステップS11で取得したアミノ酸濃度データ、およびアミノ酸の濃度を変数として含む予め設定した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出し、算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を評価してもよい。これにより、アミノ酸の濃度を変数として含む多変量判別式で得られる判別値を利用して、NASHにおける肝線維化の状態を精度よく評価することができる。
【0061】
なお、多変量判別式は、ロジスティック回帰式、分数式、線形判別式、重回帰式、サポートベクターマシンで作成された式、マハラノビス距離法で作成された式、正準判別分析で作成された式、決定木で作成された式のいずれか1つでもよい。これにより、アミノ酸の濃度を変数として含む多変量判別式で得られる判別値を利用して、NASHにおける肝線維化の状態をさらに精度よく評価することができる。
【0062】
また、ステップS12では、ステップS11で取得したアミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値、およびMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出し、算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別してもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。なお、多変量判別式は、数式1、またはOrn、Glu、Ala、Cysを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。
(Orn/Gln)+{Phe/(Val+Leu)}+(Met/Ala)
・・・数式1
【0063】
また、ステップS12では、ステップS11で取得したアミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの濃度値、およびGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出し、算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別してもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。なお、多変量判別式は、数式2、またはGly、Alaを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。
{Gly/(Gln+Glu)}+(Tyr/Val)+(Pro/Ala)
・・・数式2
【0064】
ここで、上記した各多変量判別式は、本出願人による国際出願である国際公開第2004/052191号に記載の方法または本出願人による国際出願である国際公開第2006/098192号に記載の方法(後述する第2実施形態に記載の多変量判別式作成処理)で作成してもよい。なお、これら方法で得られた多変量判別式であれば、入力データとしてのアミノ酸濃度データにおけるアミノ酸濃度の単位に因らず、当該多変量判別式をNASHにおける肝線維化の状態評価に好適に用いることができる。
【0065】
また、多変量判別式とは、一般に多変量解析で用いられる式の形式を意味し、例えば分数式、重回帰式、多重ロジスティック回帰式、線形判別関数、マハラノビス距離、正準判別関数、サポートベクターマシン、決定木などを包含する。また、異なる形式の多変量判別式の和で示されるような式も含まれる。また、重回帰式、多重ロジスティック回帰式、正準判別関数においては各変数に係数および定数項が付加されるが、この場合の係数および定数項は、好ましくは実数であること、より好ましくはデータから判別を行うために得られた係数および定数項の99%信頼区間の範囲に属する値、さらに好ましくはデータから判別を行うために得られた係数および定数項の95%信頼区間の範囲に属する値であればかまわない。また、各係数の値、及びその信頼区間は、それを実数倍したものでもよく、定数項の値、及びその信頼区間は、それに任意の実定数を加減乗除したものでもよい。ロジスティック回帰、線形判別、重回帰分析などの表示式を指標に用いる場合、表示式の線形変換(定数の加算、定数倍)や単調増加(減少)の変換(例えばlogit変換など)は判別性能を変えるものではなく同等であるので、表示式はそれらを含むものである。
【0066】
なお、分数式とは、当該分数式の分子がアミノ酸A,B,C,・・・の和で表わされ及び/又は当該分数式の分母がアミノ酸a,b,c,・・・の和で表わされるものである。また、分数式には、このような構成の分数式α,β,γ,・・・の和(例えばα+βのようなもの)も含まれる。また、分数式には、分割された分数式も含まれる。なお、分子や分母に用いられるアミノ酸にはそれぞれ適当な係数がついてもかまわない。また、分子や分母に用いられるアミノ酸は重複してもかまわない。また、各分数式に適当な係数がついてもかまわない。また、各変数の係数の値や定数項の値は、実数であればかまわない。分数式で、分子の変数と分母の変数を入れ替えた組み合わせは、目的変数との相関の正負の符号は概して逆転するが、それらの相関性は保たれるので、判別性では同等と見なせるので、分子の変数と分母の変数を入れ替えた組み合わせも、包含するものである。
【0067】
そして、本発明は、NASHにおける肝線維化の状態評価を行う際、アミノ酸の濃度以外に、他の生体情報(例えば糖類・脂質・タンパク質・ペプチド・ミネラル・ホルモン等の生体代謝物や、例えば血糖値・血圧値・性別・年齢・肝疾患指標・食習慣・飲酒習慣・運動習慣・肥満度・疾患歴等の生体指標、など)をさらに用いてもかまわない。また、本発明は、NASHにおける肝線維化の状態評価を行う際、多変量判別式における変数として、アミノ酸の濃度以外に、他の生体情報(例えば糖類・脂質・タンパク質・ペプチド・ミネラル・ホルモン等の生体代謝物や、例えば血糖値・血圧値・性別・年齢・肝疾患指標・食習慣・飲酒習慣・運動習慣・肥満度・疾患歴等の生体指標、など)をさらに用いてもかまわない。
【0068】
[1−2.第1実施形態にかかるNASHの評価方法]
ここでは、第1実施形態にかかるNASHの評価方法について図2を参照して説明する。図2は、第1実施形態にかかるNASHの評価方法の一例を示すフローチャートである。
【0069】
まず、動物やヒトなどの個体から採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得する(ステップSA11)。なお、ステップSA11では、例えば、アミノ酸濃度測定を行う企業等が測定したアミノ酸濃度データを取得してもよく、また、評価対象から採取した血液から例えば上述した(A)または(B)などの測定方法でアミノ酸濃度データを測定することでアミノ酸濃度データを取得してもよい。
【0070】
つぎに、ステップSA11で取得した個体のアミノ酸濃度データから欠損値や外れ値などのデータを除去する(ステップSA12)。
【0071】
つぎに、ステップSA12で欠損値や外れ値などのデータが除去された個体のアミノ酸濃度データに基づいて、個体につき、以下に示す11.または12.の判別を実行する(ステップSA13)。
【0072】
11.肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かの判別
(i)アミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値と予め設定された閾値(カットオフ値)とを比較することで、個体につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する、または、(ii)アミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値、およびMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出し、算出した判別値と予め設定された閾値(カットオフ値)とを比較することで、個体につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する。
【0073】
12.肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かの判別
(i)アミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの濃度値と予め設定された閾値(カットオフ値)とを比較することで、個体につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する、または、(ii)アミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの濃度値、およびGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出し、算出した判別値と予め設定された閾値(カットオフ値)とを比較することで、個体につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する。
【0074】
[1−3.第1実施形態のまとめ、およびその他の実施形態]
以上、詳細に説明したように、第1実施形態にかかるNASHの評価方法によれば、(i)個体から採取した血液中のアミノ酸濃度データを取得し、(ii)取得した個体のアミノ酸濃度データから欠損値や外れ値などのデータを除去し、(iii)欠損値や外れ値などのデータが除去された個体のアミノ酸濃度データに基づいて、個体につき、上述した11.または12.の判別を実行する。これにより、血液中のアミノ酸の濃度のうちNASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別、または、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用なアミノ酸の濃度を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。また、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別、または、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。
【0075】
ここで、ステップSA13で用いられる多変量判別式は、ロジスティック回帰式、分数式、線形判別式、重回帰式、サポートベクターマシンで作成された式、マハラノビス距離法で作成された式、正準判別分析で作成された式、決定木で作成された式のいずれか1つでもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別、または、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。
【0076】
具体的には、上述した11.の判別で用いられる多変量判別式は、数式1、またはOrn、Glu、Ala、Cysを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。また、上述した12.の判別で用いられる多変量判別式は、数式2、またはGly、Alaを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。
(Orn/Gln)+{Phe/(Val+Leu)}+(Met/Ala)
・・・数式1
{Gly/(Gln+Glu)}+(Tyr/Val)+(Pro/Ala)
・・・数式2
【0077】
なお、上記した各多変量判別式は、本出願人による国際出願である国際公開第2004/052191号に記載の方法または本出願人による国際出願である国際公開第2006/098192号に記載の方法(後述する第2実施形態に記載の多変量判別式作成処理)で作成してもよい。なお、これら方法で得られた多変量判別式であれば、入力データとしてのアミノ酸濃度データにおけるアミノ酸濃度の単位に因らず、当該多変量判別式をNASHにおける肝線維化の状態評価に好適に用いることができる。
【0078】
[第2実施形態]
[2−1.本発明の概要]
ここでは、本発明にかかるNASH評価装置、NASH評価方法、NASH評価プログラム、記録媒体、NASH評価システム、および情報通信端末装置の概要について、図3を参照して説明する。図3は本発明の基本原理を示す原理構成図である。
【0079】
まず、本発明は、制御部で、アミノ酸の濃度値に関する予め取得した評価対象(例えば動物やヒトなどの個体)のアミノ酸濃度データ、およびアミノ酸の濃度を変数する記憶部で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する(ステップS21)。
【0080】
つぎに、本発明は、制御部で、ステップS21で算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を評価する(ステップS22)。
【0081】
以上、本発明によれば、評価対象のアミノ酸濃度データ、およびアミノ酸の濃度を変数として含む多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出し、算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を評価する。これにより、アミノ酸の濃度を変数として含む多変量判別式で得られる判別値を利用して、NASHにおける肝線維化の状態を精度よく評価することができる。
【0082】
なお、多変量判別式は、ロジスティック回帰式、分数式、線形判別式、重回帰式、サポートベクターマシンで作成された式、マハラノビス距離法で作成された式、正準判別分析で作成された式、決定木で作成された式のいずれか1つでもよい。これにより、アミノ酸の濃度を変数として含む多変量判別式で得られる判別値を利用して、NASHにおける肝線維化の状態をさらに精度よく評価することができる。
【0083】
また、ステップS21では、アミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値、およびMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出し、ステップS22では、ステップS21で算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別してもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。なお、多変量判別式は、数式1、またはOrn、Glu、Ala、Cysを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。
(Orn/Gln)+{Phe/(Val+Leu)}+(Met/Ala)
・・・数式1
【0084】
また、ステップS21では、アミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの濃度値、およびGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出し、ステップS22では、ステップS21で算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別してもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。なお、多変量判別式は、数式2、またはGly、Alaを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。
{Gly/(Gln+Glu)}+(Tyr/Val)+(Pro/Ala)
・・・数式2
【0085】
ここで、上記した各多変量判別式は、本出願人による国際出願である国際公開第2004/052191号に記載の方法または本出願人による国際出願である国際公開第2006/098192号に記載の方法(後述する多変量判別式作成処理)で作成してもよい。なお、これら方法で得られた多変量判別式であれば、入力データとしてのアミノ酸濃度データにおけるアミノ酸濃度の単位に因らず、当該多変量判別式をNASHにおける肝線維化の状態評価に好適に用いることができる。
【0086】
また、多変量判別式とは、一般に多変量解析で用いられる式の形式を意味し、例えば分数式、重回帰式、多重ロジスティック回帰式、線形判別関数、マハラノビス距離、正準判別関数、サポートベクターマシン、決定木などを包含する。また、異なる形式の多変量判別式の和で示されるような式も含まれる。また、重回帰式、多重ロジスティック回帰式、正準判別関数においては各変数に係数および定数項が付加されるが、この場合の係数および定数項は、好ましくは実数であること、より好ましくはデータから判別を行うために得られた係数および定数項の99%信頼区間の範囲に属する値、さらに好ましくはデータから判別を行うために得られた係数および定数項の95%信頼区間の範囲に属する値であればかまわない。また、各係数の値、及びその信頼区間は、それを実数倍したものでもよく、定数項の値、及びその信頼区間は、それに任意の実定数を加減乗除したものでもよい。ロジスティック回帰、線形判別、重回帰分析などの表示式を指標に用いる場合、表示式の線形変換(定数の加算、定数倍)や単調増加(減少)の変換(例えばlogit変換など)は判別性能を変えるものではなく同等であるので、表示式はそれらを含むものである。
【0087】
なお、分数式とは、当該分数式の分子がアミノ酸A,B,C,・・・の和で表わされ及び/又は当該分数式の分母がアミノ酸a,b,c,・・・の和で表わされるものである。また、分数式には、このような構成の分数式α,β,γ,・・・の和(例えばα+βのようなもの)も含まれる。また、分数式には、分割された分数式も含まれる。なお、分子や分母に用いられるアミノ酸にはそれぞれ適当な係数がついてもかまわない。また、分子や分母に用いられるアミノ酸は重複してもかまわない。また、各分数式に適当な係数がついてもかまわない。また、各変数の係数の値や定数項の値は、実数であればかまわない。分数式で、分子の変数と分母の変数を入れ替えた組み合わせは、目的変数との相関の正負の符号は概して逆転するが、それらの相関性は保たれるので、判別性では同等と見なせるので、分子の変数と分母の変数を入れ替えた組み合わせも、包含するものである。
【0088】
そして、本発明は、NASHにおける肝線維化の状態評価を行う際、アミノ酸の濃度以外に、他の生体情報(例えば糖類・脂質・タンパク質・ペプチド・ミネラル・ホルモン等の生体代謝物や、例えば血糖値・血圧値・性別・年齢・肝疾患指標・食習慣・飲酒習慣・運動習慣・肥満度・疾患歴等の生体指標、など)をさらに用いてもかまわない。また、本発明は、NASHにおける肝線維化の状態評価を行う際、多変量判別式における変数として、アミノ酸の濃度以外に、他の生体情報(例えば糖類・脂質・タンパク質・ペプチド・ミネラル・ホルモン等の生体代謝物や、例えば血糖値・血圧値・性別・年齢・肝疾患指標・食習慣・飲酒習慣・運動習慣・肥満度・疾患歴等の生体指標、など)をさらに用いてもかまわない。
【0089】
ここで、多変量判別式作成処理(工程1〜工程4)の概要について詳細に説明する。なお、ここで説明する処理はあくまでも一例であり、多変量判別式の作成方法はこれに限定されない。
【0090】
まず、本発明は、制御部で、アミノ酸濃度データとNASHにおける肝線維化の状態を表す指標(例えば肝線維化ステージなど)に関する肝線維化状態指標データとを含む記憶部で記憶した肝線維化状態情報から所定の式作成手法に基づいて、多変量判別式の候補である候補多変量判別式(例えば、y=a+a+・・・+a、y:肝線維化状態指標データ、x:アミノ酸濃度データ、a:定数、i=1,2,・・・,n)を作成する(工程1)。なお、事前に、肝線維化状態情報から欠損値や外れ値などを持つデータを除去してもよい。
【0091】
なお、工程1において、肝線維化状態情報から、複数の異なる式作成手法(主成分分析や判別分析、サポートベクターマシン、重回帰分析、ロジスティック回帰分析、k−means法、クラスター解析、決定木などの多変量解析に関するものを含む。)を併用して複数の候補多変量判別式を作成してもよい。具体的には、多数の正常群およびNASH患者群から得た血液を分析して得たアミノ酸濃度データおよび肝線維化状態指標データから構成される多変量データである肝線維化状態情報に対して、複数の異なるアルゴリズムを利用して複数群の候補多変量判別式を同時並行的に作成してもよい。例えば、異なるアルゴリズムを利用して判別分析およびロジスティック回帰分析を同時に行い、2つの異なる候補多変量判別式を作成してもよい。また、主成分分析を行って作成した候補多変量判別式を利用して肝線維化状態情報を変換し、変換した肝線維化状態情報に対して判別分析を行うことで候補多変量判別式を作成してもよい。これにより、最終的に、診断条件に合った適切な多変量判別式を作成することができる。
【0092】
ここで、主成分分析を用いて作成した候補多変量判別式は、全てのアミノ酸濃度データの分散を最大にするような各アミノ酸変数からなる一次式である。また、判別分析を用いて作成した候補多変量判別式は、各群内の分散の和の全てのアミノ酸濃度データの分散に対する比を最小にするような各アミノ酸変数からなる高次式(指数や対数を含む)である。また、サポートベクターマシンを用いて作成した候補多変量判別式は、群間の境界を最大にするような各アミノ酸変数からなる高次式(カーネル関数を含む)である。また、重回帰分析を用いて作成した候補多変量判別式は、全てのアミノ酸濃度データからの距離の和を最小にするような各アミノ酸変数からなる高次式である。ロジスティック回帰分析を用いて作成した候補多変量判別式は、尤度を最大にするような各アミノ酸変数からなる一次式を指数とする自然対数を項に持つ分数式である。また、k−means法とは、各アミノ酸濃度データのk個近傍を探索し、近傍点の属する群の中で一番多いものをそのデータの所属群と定義し、入力されたアミノ酸濃度データの属する群と定義された群とが最も合致するようなアミノ酸変数を選択する手法である。また、クラスター解析とは、全てのアミノ酸濃度データの中で最も近い距離にある点同士をクラスタリング(群化)する手法である。また、決定木とは、アミノ酸変数に序列をつけて、序列が上位であるアミノ酸変数の取りうるパターンからアミノ酸濃度データの群を予測する手法である。
【0093】
多変量判別式作成処理の説明に戻り、本発明は、制御部で、工程1で作成した候補多変量判別式を、所定の検証手法に基づいて検証(相互検証)する(工程2)。候補多変量判別式の検証は、工程1で作成した各候補多変量判別式に対して行う。
【0094】
なお、工程2において、ブートストラップ法やホールドアウト法、N−フォールド法、リーブワンアウト法などのうち少なくとも1つに基づいて候補多変量判別式の判別率や感度、特異度、情報量基準、ROC_AUC(受信者特性曲線の曲線下面積)などのうち少なくとも1つに関して検証してもよい。これにより、肝線維化状態情報や診断条件を考慮した予測性または頑健性の高い候補多変量判別式を作成することができる。
【0095】
ここで、判別率とは、全入力データの中で、本発明で評価したNASHにおける肝線維化の状態が正しい割合である。また、感度とは、入力データに記載されたNASHにおける肝線維化の状態になっているものの中で、本発明で評価したNASHにおける肝線維化の状態が正しい割合である。また、特異度とは、入力データに記載されたNASHにおける肝線維化の状態が正常になっているものの中で、本発明で評価したNASHにおける肝線維化の状態が正しい割合である。また、情報量基準とは、工程1で作成した候補多変量判別式のアミノ酸変数の数と、本発明で評価したNASHにおける肝線維化の状態および入力データに記載されたNASHにおける肝線維化の状態の差異と、を足し合わせたものである。また、ROC_AUC(受信者特性曲線の曲線下面積)は、2次元座標上に(x,y)=(1−特異度,感度)をプロットして作成される曲線である受信者特性曲線(ROC)の曲線下面積として定義され、ROC_AUCの値は完全な判別では1となり、この値が1に近いほど判別性が高いことを示す。また、予測性とは、候補多変量判別式の検証を繰り返すことで得られた判別率や感度、特異性を平均したものである。また、頑健性とは、候補多変量判別式の検証を繰り返すことで得られた判別率や感度、特異性の分散である。
【0096】
多変量判別式作成処理の説明に戻り、本発明は、制御部で、工程2での検証結果から所定の変数選択手法に基づいて候補多変量判別式の変数を選択することで(ただし、工程2での検証結果を考慮せず、所定の変数選択手法に基づいて候補多変量判別式の変数を選択してもよい。)、候補多変量判別式を作成する際に用いる肝線維化状態情報に含まれるアミノ酸濃度データの組み合わせを選択する(工程3)。アミノ酸変数の選択は、工程1で作成した各候補多変量判別式に対して行う。これにより、候補多変量判別式のアミノ酸変数を適切に選択することができる。そして、工程3で選択したアミノ酸濃度データを含む肝線維化状態情報を用いて再び工程1を実行する。
【0097】
なお、工程3において、工程2での検証結果からステップワイズ法、ベストパス法、近傍探索法、遺伝的アルゴリズムのうち少なくとも1つに基づいて候補多変量判別式のアミノ酸変数を選択してもよい。
【0098】
ここで、ベストパス法とは、候補多変量判別式に含まれるアミノ酸変数を1つずつ順次減らしていき、候補多変量判別式が与える評価指標を最適化することでアミノ酸変数を選択する方法である。
【0099】
多変量判別式作成処理の説明に戻り、本発明は、制御部で、上述した工程1、工程2および工程3を繰り返し実行し、これにより蓄積した検証結果に基づいて、複数の候補多変量判別式の中から多変量判別式として採用する候補多変量判別式を選出することで、多変量判別式を作成する(工程4)。なお、候補多変量判別式の選出には、例えば、同じ式作成手法で作成した候補多変量判別式の中から最適なものを選出する場合と、すべての候補多変量判別式の中から最適なものを選出する場合とがある。
【0100】
以上、説明したように、多変量判別式作成処理では、肝線維化状態情報に基づいて、候補多変量判別式の作成、候補多変量判別式の検証および候補多変量判別式の変数の選択に関する処理を一連の流れで体系化(システム化)して実行することにより、NASHにおける肝線維化の状態評価に最適な多変量判別式を作成することができる。換言すると、多変量判別式作成処理では、アミノ酸濃度を多変量の統計解析に用い、最適でロバストな変数の組を選択するために変数選択法とクロスバリデーションとを組み合わせて、診断性能の高い多変量判別式を抽出する。多変量判別式としては、ロジスティック回帰、線形判別、サポートベクターマシン、マハラノビス距離法、重回帰分析、クラスター解析などを用いることができる。
【0101】
[2−2.システム構成]
ここでは、第2実施形態にかかるNASH評価システム(以下では本システムと記す場合がある。)の構成について、図4から図20を参照して説明する。なお、本システムはあくまでも一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0102】
まず、本システムの全体構成について図4および図5を参照して説明する。図4は本システムの全体構成の一例を示す図である。また、図5は本システムの全体構成の他の一例を示す図である。本システムは、図4に示すように、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態評価を行うNASH評価装置100と、アミノ酸の濃度値に関する評価対象のアミノ酸濃度データを提供するクライアント装置200(本発明の情報通信端末装置に相当)とを、ネットワーク300を介して通信可能に接続して構成されている。
【0103】
なお、本システムは、図5に示すように、NASH評価装置100やクライアント装置200の他に、NASH評価装置100で多変量判別式を作成する際に用いる肝線維化状態情報や、NASHにおける肝線維化の状態評価を行うために用いる多変量判別式などを格納したデータベース装置400を、ネットワーク300を介して通信可能に接続して構成されてもよい。これにより、ネットワーク300を介して、NASH評価装置100からクライアント装置200やデータベース装置400へ、あるいはクライアント装置200やデータベース装置400からNASH評価装置100へ、NASHにおける肝線維化の状態に関する情報などが提供される。ここで、NASHにおける肝線維化の状態に関する情報とは、ヒトを含む生物のNASHにおける肝線維化の状態に関する特定の項目について測定した値に関する情報である。また、NASHにおける肝線維化の状態に関する情報は、NASH評価装置100やクライアント装置200や他の装置(例えば各種の計測装置等)で生成され、主にデータベース装置400に蓄積される。
【0104】
つぎに、本システムのNASH評価装置100の構成について図6から図18を参照して説明する。図6は、本システムのNASH評価装置100の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0105】
NASH評価装置100は、当該NASH評価装置を統括的に制御するCPU等の制御部102と、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して当該NASH評価装置をネットワーク300に通信可能に接続する通信インターフェース部104と、各種のデータベースやテーブルやファイルなどを格納する記憶部106と、入力装置112や出力装置114に接続する入出力インターフェース部108と、で構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。ここで、NASH評価装置100は、各種の分析装置(例えばアミノ酸アナライザー等)と同一筐体で構成されてもよい。また、NASH評価装置100の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、本明細書の実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。例えば、処理の一部をCGI(Common Gateway Interface)を用いて実現してもよい。
【0106】
記憶部106は、ストレージ手段であり、例えば、RAM・ROM等のメモリ装置や、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等を用いることができる。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPUに命令を与え各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。記憶部106は、図示の如く、利用者情報ファイル106aと、アミノ酸濃度データファイル106bと、肝線維化状態情報ファイル106cと、指定肝線維化状態情報ファイル106dと、多変量判別式関連情報データベース106eと、判別値ファイル106fと、評価結果ファイル106gと、を格納する。
【0107】
利用者情報ファイル106aは、利用者に関する利用者情報を格納する。図7は、利用者情報ファイル106aに格納される情報の一例を示す図である。利用者情報ファイル106aに格納される情報は、図7に示すように、利用者を一意に識別するための利用者IDと、利用者が正当な者であるか否かの認証を行うための利用者パスワードと、利用者の氏名と、利用者の所属する所属先を一意に識別するための所属先IDと、利用者の所属する所属先の部門を一意に識別するための部門IDと、部門名と、利用者の電子メールアドレスと、を相互に関連付けて構成されている。
【0108】
図6に戻り、アミノ酸濃度データファイル106bは、アミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを格納する。図8は、アミノ酸濃度データファイル106bに格納される情報の一例を示す図である。アミノ酸濃度データファイル106bに格納される情報は、図8に示すように、評価対象である個体(サンプル)を一意に識別するための個体番号と、アミノ酸濃度データとを相互に関連付けて構成されている。ここで、図8では、アミノ酸濃度データを数値、すなわち連続尺度として扱っているが、アミノ酸濃度データは名義尺度や順序尺度でもよい。なお、名義尺度や順序尺度の場合は、それぞれの状態に対して任意の数値を与えることで解析してもよい。また、アミノ酸濃度データに、他の生体情報(例えば糖類・脂質・タンパク質・ペプチド・ミネラル・ホルモン等の生体代謝物や、例えば血糖値・血圧値・性別・年齢・肝疾患指標・食習慣・飲酒習慣・運動習慣・肥満度・疾患歴等の生体指標、など)を組み合わせてもよい。
【0109】
図6に戻り、肝線維化状態情報ファイル106cは、多変量判別式を作成する際に用いる肝線維化状態情報を格納する。図9は、肝線維化状態情報ファイル106cに格納される情報の一例を示す図である。肝線維化状態情報ファイル106cに格納される情報は、図9に示すように、個体番号と、NASHにおける肝線維化の状態を表す指標(指標T、指標T、指標T・・・)に関する肝線維化状態指標データ(T)と、アミノ酸濃度データと、を相互に関連付けて構成されている。ここで、図9では、肝線維化状態指標データおよびアミノ酸濃度データを数値(すなわち連続尺度)として扱っているが、肝線維化状態指標データおよびアミノ酸濃度データは名義尺度や順序尺度でもよい。なお、名義尺度や順序尺度の場合は、それぞれの状態に対して任意の数値を与えることで解析してもよい。また、肝線維化状態指標データは、NASHにおける肝線維化の状態のマーカーとなる既知の単一の状態指標であり、数値データを用いてもよい。
【0110】
図6に戻り、指定肝線維化状態情報ファイル106dは、後述する肝線維化状態情報指定部102gで指定した肝線維化状態情報を格納する。図10は、指定肝線維化状態情報ファイル106dに格納される情報の一例を示す図である。指定肝線維化状態情報ファイル106dに格納される情報は、図10に示すように、個体番号と、指定肝線維化状態指標データと、指定したアミノ酸濃度データと、を相互に関連付けて構成されている。
【0111】
図6に戻り、多変量判別式関連情報データベース106eは、後述する候補多変量判別式作成部102h1で作成した候補多変量判別式を格納する候補多変量判別式ファイル106e1と、後述する候補多変量判別式検証部102h2での検証結果を格納する検証結果ファイル106e2と、後述する変数選択部102h3で選択したアミノ酸濃度データの組み合わせを含む肝線維化状態情報を格納する選択肝線維化状態情報ファイル106e3と、後述する多変量判別式作成部102hで作成した多変量判別式を格納する多変量判別式ファイル106e4と、で構成される。
【0112】
候補多変量判別式ファイル106e1は、後述する候補多変量判別式作成部102h1で作成した候補多変量判別式を格納する。図11は、候補多変量判別式ファイル106e1に格納される情報の一例を示す図である。候補多変量判別式ファイル106e1に格納される情報は、図11に示すように、ランクと、候補多変量判別式(図11では、F(Gly,Leu,Phe,・・・)やF(Gly,Leu,Phe,・・・)、F(Gly,Leu,Phe,・・・)など)とを相互に関連付けて構成されている。
【0113】
図6に戻り、検証結果ファイル106e2は、後述する候補多変量判別式検証部102h2での検証結果を格納する。図12は、検証結果ファイル106e2に格納される情報の一例を示す図である。検証結果ファイル106e2に格納される情報は、図12に示すように、ランクと、候補多変量判別式(図12では、F(Gly,Leu,Phe,・・・)やF(Gly,Leu,Phe,・・・)、F(Gly,Leu,Phe,・・・)など)と、各候補多変量判別式の検証結果(例えば各候補多変量判別式の評価値)と、を相互に関連付けて構成されている。
【0114】
図6に戻り、選択肝線維化状態情報ファイル106e3は、後述する変数選択部102h3で選択した変数に対応するアミノ酸濃度データの組み合わせを含む肝線維化状態情報を格納する。図13は、選択肝線維化状態情報ファイル106e3に格納される情報の一例を示す図である。選択肝線維化状態情報ファイル106e3に格納される情報は、図13に示すように、個体番号と、後述する肝線維化状態情報指定部102gで指定した肝線維化状態指標データと、後述する変数選択部102h3で選択したアミノ酸濃度データと、を相互に関連付けて構成されている。
【0115】
図6に戻り、多変量判別式ファイル106e4は、後述する多変量判別式作成部102hで作成した多変量判別式を格納する。図14は、多変量判別式ファイル106e4に格納される情報の一例を示す図である。多変量判別式ファイル106e4に格納される情報は、図14に示すように、ランクと、多変量判別式(図14では、F(Phe,・・・)やF(Gly,Leu,Phe)、F(Gly,Leu,Phe,・・・)など)と、各式作成手法に対応する閾値と、各多変量判別式の検証結果(例えば各多変量判別式の評価値)と、を相互に関連付けて構成されている。
【0116】
図6に戻り、判別値ファイル106fは、後述する判別値算出部102iで算出した判別値を格納する。図15は、判別値ファイル106fに格納される情報の一例を示す図である。判別値ファイル106fに格納される情報は、図15に示すように、評価対象である個体(サンプル)を一意に識別するための個体番号と、ランク(多変量判別式を一意に識別するための番号)と、判別値と、を相互に関連付けて構成されている。
【0117】
図6に戻り、評価結果ファイル106gは、後述する判別値基準評価部102jでの評価結果(具体的には、後述する判別値基準判別部102j1での判別結果)を格納する。図16は、評価結果ファイル106gに格納される情報の一例を示す図である。評価結果ファイル106gに格納される情報は、評価対象である個体(サンプル)を一意に識別するための個体番号と、予め取得した評価対象のアミノ酸濃度データと、多変量判別式で算出した判別値と、NASHにおける肝線維化の状態評価に関する評価結果と、を相互に関連付けて構成されている。
【0118】
図6に戻り、記憶部106には、上述した情報以外にその他情報として、Webサイトをクライアント装置200に提供するための各種のWebデータや、CGIプログラム等が記録されている。Webデータとしては後述する各種のWebページを表示するためのデータ等があり、これらデータは例えばHTMLやXMLで記述されたテキストファイルとして形成されている。また、Webデータを作成するための部品用のファイルや作業用のファイルやその他一時的なファイル等も記憶部106に記憶される。記憶部106には、必要に応じて、クライアント装置200に送信するための音声をWAVE形式やAIFF形式の如き音声ファイルで格納したり、静止画や動画をJPEG形式やMPEG2形式の如き画像ファイルで格納したりすることができる。
【0119】
通信インターフェース部104は、NASH評価装置100とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信を媒介する。すなわち、通信インターフェース部104は、他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。
【0120】
入出力インターフェース部108は、入力装置112や出力装置114に接続する。ここで、出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる(なお、以下では、出力装置114をモニタ114として記載する場合がある。)。入力装置112には、キーボードやマウスやマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。
【0121】
制御部102は、OS(Operating System)等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。制御部102は、図示の如く、大別して、要求解釈部102aと閲覧処理部102bと認証処理部102cと電子メール生成部102dとWebページ生成部102eと受信部102fと肝線維化状態情報指定部102gと多変量判別式作成部102hと判別値算出部102iと判別値基準評価部102jと結果出力部102kと送信部102mとを備えている。制御部102は、データベース装置400から送信された肝線維化状態情報やクライアント装置200から送信されたアミノ酸濃度データに対して、欠損値のあるデータの除去・外れ値の多いデータの除去・欠損値のあるデータの多い変数の除去などのデータ処理も行う。
【0122】
要求解釈部102aは、クライアント装置200やデータベース装置400からの要求内容を解釈し、その解釈結果に応じて制御部102の各部に処理を受け渡す。閲覧処理部102bは、クライアント装置200からの各種画面の閲覧要求を受けて、これら画面のWebデータの生成や送信を行なう。認証処理部102cは、クライアント装置200やデータベース装置400からの認証要求を受けて、認証判断を行う。電子メール生成部102dは、各種の情報を含んだ電子メールを生成する。Webページ生成部102eは、利用者がクライアント装置200で閲覧するWebページを生成する。
【0123】
受信部102fは、クライアント装置200やデータベース装置400から送信された情報(具体的には、アミノ酸濃度データや肝線維化状態情報、多変量判別式など)を、ネットワーク300を介して受信する。肝線維化状態情報指定部102gは、多変量判別式を作成するにあたり、対象とする肝線維化状態指標データおよびアミノ酸濃度データを指定する。
【0124】
多変量判別式作成部102hは、受信部102fで受信した肝線維化状態情報や肝線維化状態情報指定部102gで指定した肝線維化状態情報に基づいて多変量判別式を作成する。具体的には、多変量判別式作成部102hは、肝線維化状態情報から、候補多変量判別式作成部102h1、候補多変量判別式検証部102h2および変数選択部102h3を繰り返し実行させることにより蓄積された検証結果に基づいて、複数の候補多変量判別式の中から多変量判別式として採用する候補多変量判別式を選出することで、多変量判別式を作成する。
【0125】
なお、多変量判別式が予め記憶部106の所定の記憶領域に格納されている場合には、多変量判別式作成部102hは、記憶部106から所望の多変量判別式を選択することで、多変量判別式を作成してもよい。また、多変量判別式作成部102hは、多変量判別式を予め格納した他のコンピュータ装置(例えばデータベース装置400)から所望の多変量判別式を選択しダウンロードすることで、多変量判別式を作成してもよい。
【0126】
ここで、多変量判別式作成部102hの構成について図17を参照して説明する。図17は、多変量判別式作成部102hの構成を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。多変量判別式作成部102hは、候補多変量判別式作成部102h1と、候補多変量判別式検証部102h2と、変数選択部102h3と、をさらに備えている。候補多変量判別式作成部102h1は、肝線維化状態情報から所定の式作成手法に基づいて多変量判別式の候補である候補多変量判別式を作成する。なお、候補多変量判別式作成部102h1は、肝線維化状態情報から、複数の異なる式作成手法を併用して複数の候補多変量判別式を作成してもよい。候補多変量判別式検証部102h2は、候補多変量判別式作成部102h1で作成した候補多変量判別式を所定の検証手法に基づいて検証する。なお、候補多変量判別式検証部102h2は、ブートストラップ法、ホールドアウト法、N−フォールド法、リーブワンアウト法のうち少なくとも1つに基づいて候補多変量判別式の判別率、感度、特異度、情報量基準、ROC_AUC(受信者特性曲線の曲線下面積)のうち少なくとも1つに関して検証してもよい。変数選択部102h3は、候補多変量判別式検証部102h2での検証結果から所定の変数選択手法に基づいて候補多変量判別式の変数を選択することで、候補多変量判別式を作成する際に用いる肝線維化状態情報に含まれるアミノ酸濃度データの組み合わせを選択する。なお、変数選択部102h3は、検証結果からステップワイズ法、ベストパス法、近傍探索法、遺伝的アルゴリズムのうち少なくとも1つに基づいて候補多変量判別式の変数を選択してもよい。
【0127】
図6に戻り、判別値算出部102iは、多変量判別式作成部102hで作成した多変量判別式、および受信部102fで受信した評価対象のアミノ酸濃度データに基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する。なお、多変量判別式は、ロジスティック回帰式、分数式、線形判別式、重回帰式、サポートベクターマシンで作成された式、マハラノビス距離法で作成された式、正準判別分析で作成された式、決定木で作成された式のいずれか1つでもよい。
【0128】
具体的には、後述する判別値基準判別部102j1でNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する場合、判別値算出部102iは、アミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値、およびMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出してもよい。なお、判別値基準判別部102j1でNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する場合、多変量判別式は、数式1、またはOrn、Glu、Ala、Cysを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。
(Orn/Gln)+{Phe/(Val+Leu)}+(Met/Ala)
・・・数式1
【0129】
また、具体的には、後述する判別値基準判別部102j1でNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する場合、判別値算出部102iは、アミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの濃度値、およびGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出してもよい。なお、判別値基準判別部102j1でNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する場合、多変量判別式は、数式2、またはGly、Alaを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。
{Gly/(Gln+Glu)}+(Tyr/Val)+(Pro/Ala)
・・・数式2
【0130】
判別値基準評価部102jは、判別値算出部102iで算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を評価する。判別値基準評価部102jは、判別値基準判別部102j1をさらに備えている。ここで、判別値基準評価部102jの構成について図18を参照して説明する。図18は、判別値基準評価部102jの構成を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。判別値基準判別部102j1は、判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かの判別、またはNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かの判別を実行する。具体的には、判別値基準判別部102j1は、判別値と予め設定された閾値(カットオフ値)とを比較することで、評価対象につき、この判別のうちのいずれかを実行する。
【0131】
図6に戻り、結果出力部102kは、制御部102の各処理部での処理結果(判別値基準評価部102jでの評価結果(具体的には判別値基準判別部102j1での判別結果)を含む)等を出力装置114に出力する。
【0132】
送信部102mは、評価対象のアミノ酸濃度データの送信元のクライアント装置200に対して評価結果を送信したり、データベース装置400に対して、NASH評価装置100で作成した多変量判別式や評価結果を送信したりする。
【0133】
つぎに、本システムのクライアント装置200の構成について図19を参照して説明する。図19は、本システムのクライアント装置200の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0134】
クライアント装置200は、制御部210とROM220とHD230とRAM240と入力装置250と出力装置260と入出力IF270と通信IF280とで構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0135】
制御部210は、Webブラウザ211、電子メーラ212、受信部213、送信部214を備えている。Webブラウザ211は、Webデータを解釈し、解釈したWebデータを後述するモニタ261に表示するブラウズ処理を行う。なお、Webブラウザ211には、ストリーム映像の受信・表示・フィードバック等を行う機能を備えたストリームプレイヤ等の各種のソフトウェアをプラグインしてもよい。電子メーラ212は、所定の通信規約(例えば、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)やPOP3(Post Office Protocol version 3)等)に従って電子メールの送受信を行う。受信部213は、通信IF280を介して、NASH評価装置100から送信された評価結果などの各種情報を受信する。送信部214は、通信IF280を介して、評価対象のアミノ酸濃度データなどの各種情報をNASH評価装置100へ送信する。
【0136】
入力装置250はキーボードやマウスやマイク等である。なお、後述するモニタ261もマウスと協働してポインティングデバイス機能を実現する。出力装置260は、通信IF280を介して受信した情報を出力する出力手段であり、モニタ(家庭用テレビを含む)261およびプリンタ262を含む。この他、出力装置260にスピーカ等を設けてもよい。入出力IF270は入力装置250や出力装置260に接続する。
【0137】
通信IF280は、クライアント装置200とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)とを通信可能に接続する。換言すると、クライアント装置200は、モデムやTAやルータなどの通信装置および電話回線を介して、または専用線を介してネットワーク300に接続される。これにより、クライアント装置200は、所定の通信規約に従ってNASH評価装置100にアクセスすることができる。
【0138】
ここで、プリンタ・モニタ・イメージスキャナ等の周辺装置を必要に応じて接続した情報処理装置(例えば、既知のパーソナルコンピュータ・ワークステーション・家庭用ゲーム装置・インターネットTV・PHS端末・携帯端末・移動体通信端末・PDA等の情報処理端末など)に、Webデータのブラウジング機能や電子メール機能を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより、クライアント装置200を実現してもよい。
【0139】
また、クライアント装置200の制御部210は、制御部210で行う処理の全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈して実行するプログラムで実現してもよい。ROM220またはHD230には、OS(Operating System)と協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。当該コンピュータプログラムは、RAM240にロードされることで実行され、CPUと協働して制御部210を構成する。また、当該コンピュータプログラムは、クライアント装置200と任意のネットワークを介して接続されるアプリケーションプログラムサーバに記録されてもよく、クライアント装置200は、必要に応じてその全部または一部をダウンロードしてもよい。また、制御部210で行う処理の全部または任意の一部を、ワイヤードロジック等によるハードウェアで実現してもよい。
【0140】
つぎに、本システムのネットワーク300について図4、図5を参照して説明する。ネットワーク300は、NASH評価装置100とクライアント装置200とデータベース装置400とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやイントラネットやLAN(有線/無線の双方を含む)等である。なお、ネットワーク300は、VANや、パソコン通信網や、公衆電話網(アナログ/デジタルの双方を含む)や、専用回線網(アナログ/デジタルの双方を含む)や、CATV網や、携帯回線交換網または携帯パケット交換網(IMT2000方式、GSM(登録商標)方式またはPDC/PDC−P方式等を含む)や、無線呼出網や、Bluetooth(登録商標)等の局所無線網や、PHS網や、衛星通信網(CS、BSまたはISDB等を含む)等でもよい。
【0141】
つぎに、本システムのデータベース装置400の構成について図20を参照して説明する。図20は、本システムのデータベース装置400の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0142】
データベース装置400は、NASH評価装置100または当該データベース装置で多変量判別式を作成する際に用いる肝線維化状態情報や、NASH評価装置100で作成した多変量判別式、NASH評価装置100での評価結果などを格納する機能を有する。図20に示すように、データベース装置400は、当該データベース装置を統括的に制御するCPU等の制御部402と、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回路を介して当該データベース装置をネットワーク300に通信可能に接続する通信インターフェース部404と、各種のデータベースやテーブルやファイル(例えばWebページ用ファイル)などを格納する記憶部406と、入力装置412や出力装置414に接続する入出力インターフェース部408と、で構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0143】
記憶部406は、ストレージ手段であり、例えば、RAM・ROM等のメモリ装置や、ハードディスクのような固定ディスク装置や、フレキシブルディスクや、光ディスク等を用いることができる。記憶部406には、各種処理に用いる各種プログラム等を格納する。通信インターフェース部404は、データベース装置400とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信を媒介する。すなわち、通信インターフェース部404は、他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。入出力インターフェース部408は、入力装置412や出力装置414に接続する。ここで、出力装置414には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる(なお、以下で、出力装置414をモニタ414として記載する場合がある。)。また、入力装置412には、キーボードやマウスやマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。
【0144】
制御部402は、OS(Operating System)等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。制御部402は、図示の如く、大別して、要求解釈部402aと閲覧処理部402bと認証処理部402cと電子メール生成部402dとWebページ生成部402eと送信部402fとを備えている。
【0145】
要求解釈部402aは、NASH評価装置100からの要求内容を解釈し、その解釈結果に応じて制御部402の各部に処理を受け渡す。閲覧処理部402bは、NASH評価装置100からの各種画面の閲覧要求を受けて、これら画面のWebデータの生成や送信を行う。認証処理部402cは、NASH評価装置100からの認証要求を受けて、認証判断を行う。電子メール生成部402dは、各種の情報を含んだ電子メールを生成する。Webページ生成部402eは、利用者がクライアント装置200で閲覧するWebページを生成する。送信部402fは、肝線維化状態情報や多変量判別式などの各種情報を、NASH評価装置100へ送信する。
【0146】
[2−3.本システムの処理]
ここでは、以上のように構成された本システムで行われるNASH評価サービス処理の一例を、図21を参照して説明する。図21は、NASH評価サービス処理の一例を示すフローチャートである。
【0147】
なお、本処理で用いるアミノ酸濃度データは、個体から予め採取した血液(例えば血漿、血清などを含む)を、以下の(A)または(B)などの測定方法で専門業者が分析又は独自に分析して得たアミノ酸の濃度値に関するものである。ここで、アミノ酸濃度の単位は、例えばモル濃度や重量濃度、これらの濃度に任意の定数を加減乗除することで得られるものでもよい。
(A)採取した血液サンプルを遠心することにより血液から血漿を分離した。全ての血漿サンプルは、アミノ酸濃度の測定時まで−80℃で凍結保存した。アミノ酸濃度測定時には、アセトニトリルを添加し除蛋白処理を行った後、標識試薬(3−アミノピリジル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート)を用いてプレカラム誘導体化を行い、そして、液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MS)によりアミノ酸濃度を分析した(国際公開第2003/069328号、国際公開第2005/116629号を参照)。
(B)採取した血液サンプルを遠心することにより血液から血漿を分離した。全ての血漿サンプルは、アミノ酸濃度の測定時まで−80℃で凍結保存した。アミノ酸濃度測定時には、スルホサリチル酸を添加し除蛋白処理を行った後、ニンヒドリン試薬を用いたポストカラム誘導体化法を原理としたアミノ酸分析計によりアミノ酸濃度を分析した。
【0148】
まず、Webブラウザ211を表示した画面上で利用者が入力装置250を介してNASH評価装置100が提供するWebサイトのアドレス(URLなど)を指定すると、クライアント装置200はNASH評価装置100へアクセスする。具体的には、利用者がクライアント装置200のWebブラウザ211の画面更新を指示すると、Webブラウザ211は、NASH評価装置100が提供するWebサイトのアドレスを所定の通信規約でNASH評価装置100へ送信することで、アミノ酸濃度データ送信画面に対応するWebページの送信要求を、当該アドレスに基づくルーティングでNASH評価装置100へ行う。
【0149】
つぎに、NASH評価装置100は、要求解釈部102aで、クライアント装置200からの送信を受け、当該送信の内容を解析し、解析結果に応じて制御部102の各部に処理を移す。具体的には、送信の内容がアミノ酸濃度データ送信画面に対応するWebページの送信要求であった場合、NASH評価装置100は、主として閲覧処理部102bで、記憶部106の所定の記憶領域に格納されている当該Webページを表示するためのWebデータを取得し、取得したWebデータをクライアント装置200へ送信する。より具体的には、利用者からアミノ酸濃度データ送信画面に対応するWebページの送信要求があった場合、NASH評価装置100は、まず、制御部102で、利用者IDや利用者パスワードの入力を利用者に対して求める。そして、利用者IDやパスワードが入力されると、NASH評価装置100は、認証処理部102cで、入力された利用者IDやパスワードと利用者情報ファイル106aに格納されている利用者IDや利用者パスワードとの認証判断を行う。そして、NASH評価装置100は、認証可の場合にのみ、閲覧処理部102bで、アミノ酸濃度データ送信画面に対応するWebページを表示するためのWebデータをクライアント装置200へ送信する。なお、クライアント装置200の特定は、クライアント装置200から送信要求と共に送信されたIPアドレスで行う。
【0150】
つぎに、クライアント装置200は、NASH評価装置100から送信されたWebデータ(アミノ酸濃度データ送信画面に対応するWebページを表示するためのもの)を受信部213で受信し、受信したWebデータをWebブラウザ211で解釈し、モニタ261にアミノ酸濃度データ送信画面を表示する。
【0151】
つぎに、モニタ261に表示されたアミノ酸濃度データ送信画面に対し利用者が入力装置250を介して個体のアミノ酸濃度データなどを入力・選択すると、クライアント装置200は、送信部214で、入力情報や選択事項を特定するための識別子をNASH評価装置100へ送信することで、評価対象の個体のアミノ酸濃度データをNASH評価装置100へ送信する(ステップSA21)。なお、ステップSA21におけるアミノ酸濃度データの送信は、FTP等の既存のファイル転送技術等により実現してもよい。
【0152】
つぎに、NASH評価装置100は、要求解釈部102aで、クライアント装置200から送信された識別子を解釈することによりクライアント装置200の要求内容を解釈し、NASHにおける肝線維化の状態評価用の多変量判別式(具体的には、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かの判別用の多変量判別式、またはNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かの判別用の多変量判別式)の送信要求をデータベース装置400へ行う。
【0153】
つぎに、データベース装置400は、要求解釈部402aで、NASH評価装置100からの送信要求を解釈し、記憶部406の所定の記憶領域に格納した多変量判別式(例えばアップデートされた最新のもの)をNASH評価装置100へ送信する(ステップSA22)。例えば、ステップSA26にてNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する場合、ステップSA22では、Met、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式をNASH評価装置100へ送信する。また、ステップSA26にてNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する場合、ステップSA22では、Gly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式をNASH評価装置100へ送信する。
【0154】
つぎに、NASH評価装置100は、受信部102fで、クライアント装置200から送信された個体のアミノ酸濃度データおよびデータベース装置400から送信された多変量判別式を受信し、受信したアミノ酸濃度データをアミノ酸濃度データファイル106bの所定の記憶領域に格納すると共に、受信した多変量判別式を多変量判別式ファイル106e4の所定の記憶領域に格納する(ステップSA23)。
【0155】
つぎに、NASH評価装置100は、制御部102で、ステップSA23で受信した個体のアミノ酸濃度データから欠損値や外れ値などのデータを除去する(ステップSA24)。
【0156】
つぎに、NASH評価装置100は、判別値算出部102iで、ステップSA24で欠損値や外れ値などのデータが除去された個体のアミノ酸濃度データ、およびステップSA23で受信した多変量判別式に基づいて、判別値を算出する(ステップSA25)。
【0157】
具体的には、ステップSA26にてNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する場合、NASH評価装置100は、判別値算出部102iで、アミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値、およびMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出する。
【0158】
また、ステップSA26にてNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する場合、NASH評価装置100は、判別値算出部102iで、アミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの濃度値、およびGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出する。
【0159】
つぎに、NASH評価装置100は、判別値基準判別部102j1で、ステップSA25で算出した判別値と予め設定された閾値(カットオフ値)とを比較することで、個体につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かの判別、またはNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かの判別を実行し、その判別結果を評価結果ファイル106gの所定の記憶領域に格納する(ステップSA26)。
【0160】
つぎに、NASH評価装置100は、送信部102mで、ステップSA26で得た判別結果を、アミノ酸濃度データの送信元のクライアント装置200とデータベース装置400とへ送信する(ステップSA27)。具体的には、まず、NASH評価装置100は、Webページ生成部102eで、判別結果を表示するためのWebページを作成し、作成したWebページに対応するWebデータを記憶部106の所定の記憶領域に格納する。ついで、利用者がクライアント装置200のWebブラウザ211に入力装置250を介して所定のURLを入力し上述した認証を経た後、クライアント装置200は、当該Webページの閲覧要求をNASH評価装置100へ送信する。ついで、NASH評価装置100は、閲覧処理部102bで、クライアント装置200から送信された閲覧要求を解釈し、判別結果を表示するためのWebページに対応するWebデータを記憶部106の所定の記憶領域から読み出す。そして、NASH評価装置100は、送信部102mで、読み出したWebデータをクライアント装置200へ送信すると共に、当該Webデータ又は判別結果をデータベース装置400へ送信する。
【0161】
ここで、ステップSA27において、NASH評価装置100は、制御部102で、判別結果を電子メールで利用者のクライアント装置200へ通知してもよい。具体的には、まず、NASH評価装置100は、電子メール生成部102dで、利用者IDなどを基にして利用者情報ファイル106aに格納されている利用者情報を送信タイミングに従って参照し、利用者の電子メールアドレスを取得する。ついで、NASH評価装置100は、電子メール生成部102dで、取得した電子メールアドレスを宛て先とし利用者の氏名および判別結果を含む電子メールに関するデータを生成する。ついで、NASH評価装置100は、送信部102mで、生成した当該データを利用者のクライアント装置200へ送信する。
【0162】
また、ステップSA27において、NASH評価装置100は、FTP等の既存のファイル転送技術等で、判別結果を利用者のクライアント装置200へ送信してもよい。
【0163】
図21の説明に戻り、データベース装置400は、制御部402で、NASH評価装置100から送信された判別結果またはWebデータを受信し、受信した判別結果またはWebデータを記憶部406の所定の記憶領域に保存(蓄積)する(ステップSA28)。
【0164】
また、クライアント装置200は、受信部213で、NASH評価装置100から送信されたWebデータを受信し、受信したWebデータをWebブラウザ211で解釈し、個体の判別結果が記されたWebページの画面をモニタ261に表示する(ステップSA29)。なお、判別結果がNASH評価装置100から電子メールで送信された場合には、クライアント装置200は、電子メーラ212の公知の機能で、NASH評価装置100から送信された電子メールを任意のタイミングで受信し、受信した電子メールをモニタ261に表示する。
【0165】
以上により、利用者は、モニタ261に表示されたWebページを閲覧することで、「NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かの判別」または「NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かの判別」に関する個体の判別結果を確認することができる。なお、利用者は、モニタ261に表示されたWebページの表示内容をプリンタ262で印刷してもよい。
【0166】
また、判別結果がNASH評価装置100から電子メールで送信された場合には、利用者は、モニタ261に表示された電子メールを閲覧することで、「NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かの判別」または「NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かの判別」に関する個体の判別結果を確認することができる。利用者は、モニタ261に表示された電子メールの表示内容をプリンタ262で印刷してもよい。
【0167】
これにて、NASH評価サービス処理の説明を終了する。
【0168】
[2−4.第2実施形態のまとめ、およびその他の実施形態]
以上、詳細に説明したように、NASH評価システムによれば、クライアント装置200は個体のアミノ酸濃度データをNASH評価装置100へ送信し、データベース装置400はNASH評価装置100からの要求を受けて、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かの判別用の多変量判別式またはNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かの判別用の多変量判別式をNASH評価装置100へ送信する。そして、NASH評価装置100は、(1)クライアント装置200からアミノ酸濃度データを受信すると共にデータベース装置400から多変量判別式を受信し、(2)受信したアミノ酸濃度データおよび多変量判別式に基づいて判別値を算出し、(3)算出した判別値と予め設定した閾値とを比較することで個体につき、「NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かの判別」または「NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かの判別」を実行し、(4)この判別結果をクライアント装置200やデータベース装置400へ送信する。そして、クライアント装置200はNASH評価装置100から送信された判別結果を受信して表示し、データベース装置400はNASH評価装置100から送信された判別結果を受信して格納する。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別、または、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。
【0169】
ここで、NASH評価システムによれば、ステップSA25で用いられる多変量判別式は、ロジスティック回帰式、分数式、線形判別式、重回帰式、サポートベクターマシンで作成された式、マハラノビス距離法で作成された式、正準判別分析で作成された式、決定木で作成された式のいずれか1つでもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別、または、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。
【0170】
具体的には、ステップSA26にてNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する場合、ステップSA25で用いられる多変量判別式は、数式1、またはOrn、Glu、Ala、Cysを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。また、ステップSA26にてNASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する場合、ステップSA25で用いられる多変量判別式は、数式2、またはGly、Alaを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。
(Orn/Gln)+{Phe/(Val+Leu)}+(Met/Ala)
・・・数式1
{Gly/(Gln+Glu)}+(Tyr/Val)+(Pro/Ala)
・・・数式2
【0171】
なお、上記した各多変量判別式は、本出願人による国際出願である国際公開第2004/052191号に記載の方法または本出願人による国際出願である国際公開第2006/098192号に記載の方法(後述する多変量判別式作成処理)で作成してもよい。なお、これら方法で得られた多変量判別式であれば、入力データとしてのアミノ酸濃度データにおけるアミノ酸濃度の単位に因らず、当該多変量判別式をNASHにおける肝線維化の状態評価に好適に用いることができる。
【0172】
また、本発明にかかるNASH評価装置、NASH評価方法、NASH評価プログラム、記録媒体、NASH評価システム、および情報通信端末装置は、上述した第2実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。例えば、上述した第2実施形態で説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種の登録データおよび検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、NASH評価装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。また、NASH評価装置100の各部または各装置が備える処理機能(特に制御部102にて行なわれる各処理機能)については、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて、その全部または任意の一部を実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。また、NASH評価装置100は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、該情報処理装置に任意の周辺装置を接続して構成してもよい。また、NASH評価装置100は、該情報処理装置に本発明の方法を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0173】
ここで、「プログラム」とは任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は、必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものを含む。なお、プログラムは、記録媒体に記録されており、必要に応じてNASH評価装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部106などには、OS(Operating System)と協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。また、このコンピュータプログラムは、NASH評価装置100に対して任煮のネットワーク300を介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部又は一部をダウンロードすることも可能である。記録媒体に記録されたプログラムを各装置で読み取るための具体的な構成や読み取り手順や読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0174】
また、「記録媒体」とは任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。なお、「可搬用の物理媒体」とは、メモリーカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、MO、DVD、およびBlu−ray Disc等である。本発明に係るプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。
【0175】
最後に、NASH評価装置100で行う多変量判別式作成処理の一例について図22を参照して詳細に説明する。なお、ここで説明する処理はあくまでも一例であり、多変量判別式の作成方法はこれに限定されない。図22は多変量判別式作成処理の一例を示すフローチャートである。なお、当該多変量判別式作成処理は、肝線維化状態情報を管理するデータベース装置400で行ってもよい。
【0176】
なお、本説明では、NASH評価装置100は、データベース装置400から事前に取得した肝線維化状態情報を、肝線維化状態情報ファイル106cの所定の記憶領域に格納しているものとする。また、NASH評価装置100は、肝線維化状態情報指定部102gで事前に指定した肝線維化状態指標データおよびアミノ酸濃度データを含む肝線維化状態情報を、指定肝線維化状態情報ファイル106dの所定の記憶領域に格納しているものとする。
【0177】
まず、多変量判別式作成部102hは、候補多変量判別式作成部102h1で、指定肝線維化状態情報ファイル106dの所定の記憶領域に格納されている肝線維化状態情報から所定の式作成手法に基づいて候補多変量判別式を作成し、作成した候補多変量判別式を候補多変量判別式ファイル106e1の所定の記憶領域に格納する(ステップSB21)。具体的には、まず、多変量判別式作成部102hは、候補多変量判別式作成部102h1で、複数の異なる式作成手法(主成分分析や判別分析、サポートベクターマシン、重回帰分析、ロジスティック回帰分析、k−means法、クラスター解析、決定木などの多変量解析に関するものを含む。)の中から所望のものを1つ選択し、選択した式作成手法に基づいて、作成する候補多変量判別式の形(式の形)を決定する。つぎに、多変量判別式作成部102hは、候補多変量判別式作成部102h1で、肝線維化状態情報に基づいて、選択した式選択手法に対応する種々(例えば平均や分散など)の計算を実行する。つぎに、多変量判別式作成部102hは、候補多変量判別式作成部102h1で、計算結果および決定した候補多変量判別式のパラメータを決定する。これにより、選択した式作成手法に基づいて候補多変量判別式が作成される。なお、複数の異なる式作成手法を併用して候補多変量判別式を同時並行(並列)的に作成する場合は、選択した式作成手法ごとに上記の処理を並行して実行すればよい。また、複数の異なる式作成手法を併用して候補多変量判別式を直列的に作成する場合は、例えば、主成分分析を行って作成した候補多変量判別式を利用して肝線維化状態情報を変換し、変換した肝線維化状態情報に対して判別分析を行うことで候補多変量判別式を作成してもよい。
【0178】
つぎに、多変量判別式作成部102hは、候補多変量判別式検証部102h2で、ステップSB21で作成した候補多変量判別式を所定の検証手法に基づいて検証(相互検証)し、検証結果を検証結果ファイル106e2の所定の記憶領域に格納する(ステップSB22)。具体的には、多変量判別式作成部102hは、候補多変量判別式検証部102h2で、指定肝線維化状態情報ファイル106dの所定の記憶領域に格納されている肝線維化状態情報に基づいて候補多変量判別式を検証する際に用いる検証用データを作成し、作成した検証用データに基づいて候補多変量判別式を検証する。なお、ステップSB21で複数の異なる式作成手法を併用して候補多変量判別式を複数作成した場合には、多変量判別式作成部102hは、候補多変量判別式検証部102h2で、各式作成手法に対応する候補多変量判別式ごとに所定の検証手法に基づいて検証する。ここで、ステップSB22において、ブートストラップ法やホールドアウト法、N−フォールド法、リーブワンアウト法などのうち少なくとも1つに基づいて候補多変量判別式の判別率や感度、特異度、情報量基準、ROC_AUC(受信者特性曲線の曲線下面積)などのうち少なくとも1つに関して検証してもよい。これにより、肝線維化状態情報や診断条件を考慮した予測性または頑健性の高い候補指標式を選択することができる。
【0179】
つぎに、多変量判別式作成部102hは、変数選択部102h3で、ステップSB22での検証結果から所定の変数選択手法に基づいて、候補多変量判別式の変数を選択することで(ただし、ステップSB22での検証結果を考慮せず、所定の変数選択手法に基づいて、候補多変量判別式の変数を選択してもよい。)、候補多変量判別式を作成する際に用いる肝線維化状態情報に含まれるアミノ酸濃度データの組み合わせを選択し、選択したアミノ酸濃度データの組み合わせを含む肝線維化状態情報を選択肝線維化状態情報ファイル106e3の所定の記憶領域に格納する(ステップSB23)。なお、ステップSB21で複数の異なる式作成手法を併用して候補多変量判別式を複数作成し、ステップSB22で各式作成手法に対応する候補多変量判別式ごとに所定の検証手法に基づいて検証した場合には、ステップSB23において、多変量判別式作成部102hは、変数選択部102h3で、候補多変量判別式(例えば、ステップSB22での検証結果に対応する候補多変量判別式)ごとに所定の変数選択手法に基づいて候補多変量判別式の変数を選択してもよい。ここで、ステップSB23において、検証結果からステップワイズ法、ベストパス法、近傍探索法、遺伝的アルゴリズムのうち少なくとも1つに基づいて候補多変量判別式の変数を選択してもよい。なお、ベストパス法とは、候補多変量判別式に含まれる変数を1つずつ順次減らしていき、候補多変量判別式が与える評価指標を最適化することで変数を選択する方法である。また、ステップSB23において、多変量判別式作成部102hは、変数選択部102h3で、指定肝線維化状態情報ファイル106dの所定の記憶領域に格納されている肝線維化状態情報に基づいてアミノ酸濃度データの組み合わせを選択してもよい。
【0180】
つぎに、多変量判別式作成部102hは、指定肝線維化状態情報ファイル106dの所定の記憶領域に格納されている肝線維化状態情報に含まれるアミノ酸濃度データの全ての組み合わせが終了したか否かを判定し、判定結果が「終了」であった場合(ステップSB24:Yes)には次のステップ(ステップSB25)へ進み、判定結果が「終了」でなかった場合(ステップSB24:No)にはステップSB21へ戻る。なお、多変量判別式作成部102hは、予め設定した回数が終了したか否かを判定し、判定結果が「終了」であった場合には(ステップSB24:Yes)次のステップ(ステップSB25)へ進み、判定結果が「終了」でなかった場合(ステップSB24:No)にはステップSB21へ戻ってもよい。また、多変量判別式作成部102hは、ステップSB23で選択したアミノ酸濃度データの組み合わせが、指定肝線維化状態情報ファイル106dの所定の記憶領域に格納されている肝線維化状態情報に含まれるアミノ酸濃度データの組み合わせまたは前回のステップSB23で選択したアミノ酸濃度データの組み合わせと同じであるか否かを判定し、判定結果が「同じ」であった場合(ステップSB24:Yes)には次のステップ(ステップSB25)へ進み、判定結果が「同じ」でなかった場合(ステップSB24:No)にはステップSB21へ戻ってもよい。また、多変量判別式作成部102hは、検証結果が具体的には各候補多変量判別式に関する評価値である場合には、当該評価値と各式作成手法に対応する所定の閾値との比較結果に基づいて、ステップSB25へ進むかステップSB21へ戻るかを判定してもよい。
【0181】
つぎに、多変量判別式作成部102hは、検証結果に基づいて、複数の候補多変量判別式の中から多変量判別式として採用する候補多変量判別式を選出することで多変量判別式を決定し、決定した多変量判別式(選出した候補多変量判別式)を多変量判別式ファイル106e4の所定の記憶領域に格納する(ステップSB25)。ここで、ステップSB25において、例えば、同じ式作成手法で作成した候補多変量判別式の中から最適なものを選出する場合と、すべての候補多変量判別式の中から最適なものを選出する場合とがある。
【0182】
これにて、多変量判別式作成処理の説明を終了する。
【0183】
[第3実施形態]
[3−1.本発明の概要]
ここでは、本発明にかかるNASHの予防・改善物質の探索方法の概要について図23を参照して説明する。図23は本発明の基本原理を示す原理構成図である。
【0184】
まず、1つまたは複数の物質から成る所望の物質群を、NASHの評価対象(例えば動物やヒトなどの個体)に投与する(ステップS31)。例えば、病状に応じて、ヒトに投与可能な既存の薬物(具体的にはNASH治療に効果がある薬物であるウルソデオキシコーリックアシッド、ベタイン、グリタゾン、メトホルミン、抗肥満薬など)・アミノ酸・食品・サプリメントを適宜組み合わせたものを、所定の期間(例えば1日から12ヶ月の範囲)にわたり、所定量ずつ所定の頻度・タイミング(例えば1日3回・食後)で、所定の投与方法(例えば経口投与)により投与してもよい。ここで、投与方法や用量、剤形は、病状に応じて適宜組み合わせてもよい。なお、剤形は、公知の技術に基づいて決めてもよい。また、用量は、特に定めは無いが、例えば有効成分として1ugから100gを含有した形態で与えてもよい。
【0185】
つぎに、ステップS31で物質群が投与された評価対象から血液を採取する(ステップS32)。
【0186】
つぎに、ステップS32で採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得する(ステップS33)。なお、ステップS11では、例えば、アミノ酸濃度測定を行う企業等が測定したアミノ酸濃度データを取得してもよく、また、評価対象から採取した血液(例えば血漿、血清などを含む)から、例えば以下の(A)または(B)などの測定方法でアミノ酸濃度データを測定することでアミノ酸濃度データを取得してもよい。ここで、アミノ酸濃度の単位は、例えばモル濃度や重量濃度、これらの濃度に任意の定数を加減乗除することで得られるものでもよい。
(A)採取した血液サンプルを遠心することにより血液から血漿を分離した。全ての血漿サンプルは、アミノ酸濃度の測定時まで−80℃で凍結保存した。アミノ酸濃度測定時には、アセトニトリルを添加し除蛋白処理を行った後、標識試薬(3−アミノピリジル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート)を用いてプレカラム誘導体化を行い、そして、液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MS)によりアミノ酸濃度を分析した(国際公開第2003/069328号、国際公開第2005/116629号を参照)。
(B)採取した血液サンプルを遠心することにより血液から血漿を分離した。全ての血漿サンプルは、アミノ酸濃度の測定時まで−80℃で凍結保存した。アミノ酸濃度測定時には、スルホサリチル酸を添加し除蛋白処理を行った後、ニンヒドリン試薬を用いたポストカラム誘導体化法を原理としたアミノ酸分析計によりアミノ酸濃度を分析した。
【0187】
つぎに、ステップS33で取得した評価対象のアミノ酸濃度データに基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を評価する(ステップS34)。
【0188】
つぎに、ステップS34での評価結果に基づいて、ステップS31で投与した物質群が、NASHにおける肝線維化を予防させる又はNASHにおける肝線維化の状態を改善させるものであるか否かを判定する(ステップS35)。
【0189】
そして、ステップS35での判定結果が「予防させる又は改善させる」というものであった場合、ステップS31で投与した物質群が、NASHにおける肝線維化を予防させる又はNASHにおける肝線維化の状態を改善させるものとして探索される。
【0190】
以上、本発明によれば、所望の物質群を評価対象に投与し、当該物質群が投与された評価対象から血液を採取し、採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得し、取得したアミノ酸濃度データに基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を評価し、その評価結果に基づいて、所望の物質群が、NASHにおける肝線維化を予防させる又はNASHにおける肝線維化の状態を改善させるものであるか否かを判定する。これにより、血液中のアミノ酸の濃度を利用してNASHにおける肝線維化の状態を精度よく評価することができるNASHの評価方法を用いて、NASHにおける肝線維化を予防させる又はNASHにおける肝線維化の状態を改善させる物質を精度よく探索することができる。
【0191】
ここで、ステップS34を実行する前に、アミノ酸濃度データから欠損値や外れ値などのデータを除去してもよい。これにより、NASHにおける肝線維化の状態をさらに精度よく評価することができる。
【0192】
また、ステップS34では、ステップS33で取得したアミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別してもよい。これにより、血液中のアミノ酸の濃度のうちNASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用なアミノ酸の濃度を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。
【0193】
また、ステップS34では、ステップS33で取得したアミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの濃度値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別してもよい。これにより、血液中のアミノ酸の濃度のうちNASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用なアミノ酸の濃度を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。
【0194】
また、ステップS34では、ステップS33で取得したアミノ酸濃度データ、およびアミノ酸の濃度を変数として含む予め設定した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出し、算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を評価してもよい。これにより、アミノ酸の濃度を変数として含む多変量判別式で得られる判別値を利用して、NASHにおける肝線維化の状態を精度よく評価することができる。
【0195】
なお、多変量判別式は、ロジスティック回帰式、分数式、線形判別式、重回帰式、サポートベクターマシンで作成された式、マハラノビス距離法で作成された式、正準判別分析で作成された式、決定木で作成された式のいずれか1つでもよい。これにより、アミノ酸の濃度を変数として含む多変量判別式で得られる判別値を利用して、NASHにおける肝線維化の状態をさらに精度よく評価することができる。
【0196】
また、ステップS34では、ステップS33で取得したアミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値、およびMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出し、算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別してもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。なお、多変量判別式は、数式1、またはOrn、Glu、Ala、Cysを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。
(Orn/Gln)+{Phe/(Val+Leu)}+(Met/Ala)
・・・数式1
【0197】
また、ステップS34では、ステップS33で取得したアミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの濃度値、およびGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出し、算出した判別値に基づいて、評価対象につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別してもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別を精度よく行うことができる。なお、多変量判別式は、数式2、またはGly、Alaを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。
{Gly/(Gln+Glu)}+(Tyr/Val)+(Pro/Ala)
・・・数式2
【0198】
ここで、上記した各多変量判別式は、本出願人による国際出願である国際公開第2004/052191号に記載の方法または本出願人による国際出願である国際公開第2006/098192号に記載の方法(上述した第2実施形態に記載の多変量判別式作成処理)で作成してもよい。なお、これら方法で得られた多変量判別式であれば、入力データとしてのアミノ酸濃度データにおけるアミノ酸濃度の単位に因らず、当該多変量判別式をNASHにおける肝線維化の状態評価に好適に用いることができる。
【0199】
また、多変量判別式とは、一般に多変量解析で用いられる式の形式を意味し、例えば分数式、重回帰式、多重ロジスティック回帰式、線形判別関数、マハラノビス距離、正準判別関数、サポートベクターマシン、決定木などを包含する。また、異なる形式の多変量判別式の和で示されるような式も含まれる。また、重回帰式、多重ロジスティック回帰式、正準判別関数においては各変数に係数および定数項が付加されるが、この場合の係数および定数項は、好ましくは実数であること、より好ましくはデータから判別を行うために得られた係数および定数項の99%信頼区間の範囲に属する値、さらに好ましくはデータから判別を行うために得られた係数および定数項の95%信頼区間の範囲に属する値であればかまわない。また、各係数の値、及びその信頼区間は、それを実数倍したものでもよく、定数項の値、及びその信頼区間は、それに任意の実定数を加減乗除したものでもよい。ロジスティック回帰、線形判別、重回帰分析などの表示式を指標に用いる場合、表示式の線形変換(定数の加算、定数倍)や単調増加(減少)の変換(例えばlogit変換など)は判別性能を変えるものではなく同等であるので、表示式はそれらを含むものである。
【0200】
なお、分数式とは、当該分数式の分子がアミノ酸A,B,C,・・・の和で表わされ及び/又は当該分数式の分母がアミノ酸a,b,c,・・・の和で表わされるものである。また、分数式には、このような構成の分数式α,β,γ,・・・の和(例えばα+βのようなもの)も含まれる。また、分数式には、分割された分数式も含まれる。なお、分子や分母に用いられるアミノ酸にはそれぞれ適当な係数がついてもかまわない。また、分子や分母に用いられるアミノ酸は重複してもかまわない。また、各分数式に適当な係数がついてもかまわない。また、各変数の係数の値や定数項の値は、実数であればかまわない。分数式で、分子の変数と分母の変数を入れ替えた組み合わせは、目的変数との相関の正負の符号は概して逆転するが、それらの相関性は保たれるので、判別性では同等と見なせるので、分子の変数と分母の変数を入れ替えた組み合わせも、包含するものである。
【0201】
そして、本発明は、NASHにおける肝線維化の状態評価を行う際、アミノ酸の濃度以外に、他の生体情報(例えば糖類・脂質・タンパク質・ペプチド・ミネラル・ホルモン等の生体代謝物や、例えば血糖値・血圧値・性別・年齢・肝疾患指標・食習慣・飲酒習慣・運動習慣・肥満度・疾患歴等の生体指標、など)をさらに用いてもかまわない。また、本発明は、NASHにおける肝線維化の状態評価を行う際、多変量判別式における変数として、アミノ酸の濃度以外に、他の生体情報(例えば糖類・脂質・タンパク質・ペプチド・ミネラル・ホルモン等の生体代謝物や、例えば血糖値・血圧値・性別・年齢・肝疾患指標・食習慣・飲酒習慣・運動習慣・肥満度・疾患歴等の生体指標、など)をさらに用いてもかまわない。
【0202】
[3−2.第3実施形態にかかるNASHの予防・改善物質の探索方法の一例]
ここでは、第3実施形態にかかるNASHの予防・改善物質の探索方法の一例について図24を参照して説明する。図24は第3実施形態にかかるNASHの予防・改善物質の探索方法の一例を示すフローチャートである。
【0203】
まず、1つまたは複数の物質から成る所望の物質群を、例えばNASHの動物やヒトなどの個体に投与する(ステップSA31)。
【0204】
つぎに、ステップS31で物質群が投与された個体から血液を採取する(ステップSA32)。
【0205】
つぎに、ステップS32で採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得する(ステップSA33)。なお、ステップSA33では、例えば、アミノ酸濃度測定を行う企業等が測定したアミノ酸濃度データを取得してもよく、また、評価対象から採取した血液から例えば上述した(A)または(B)などの測定方法でアミノ酸濃度データを測定することでアミノ酸濃度データを取得してもよい。
【0206】
つぎに、ステップS33で取得した個体のアミノ酸濃度データから欠損値や外れ値などのデータを除去する(ステップSA34)。
【0207】
つぎに、ステップS34で欠損値や外れ値などのデータが除去された個体のアミノ酸濃度データに基づいて、個体につき、以下に示す31.または32.の判別を実行する(ステップSA35)。
【0208】
31.肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かの判別
(i)アミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値と予め設定された閾値(カットオフ値)とを比較することで、個体につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する、または、(ii)アミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの濃度値、およびMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出し、算出した判別値と予め設定された閾値(カットオフ値)とを比較することで、個体につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する。
【0209】
32.肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かの判別
(i)アミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの濃度値と予め設定された閾値(カットオフ値)とを比較することで、個体につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する、または、(ii)アミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの濃度値、およびGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを変数として含む多変量判別式に基づいて、判別値を算出し、算出した判別値と予め設定された閾値(カットオフ値)とを比較することで、個体につき、NASHにおける肝線維化の状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する。
【0210】
つぎに、ステップSA35での判別結果に基づいて、ステップSA31で投与した物質群が、NASHにおける肝線維化を予防させる又はNASHにおける肝線維化の状態を改善させるものであるか否かを判定する(ステップSA36)。
【0211】
そして、ステップSA36での判定結果が「予防させる又は改善させる」であった場合、ステップSA31で投与した物質群が、NASHにおける肝線維化を予防させる又はNASHにおける肝線維化の状態を改善させるものとして探索される。なお、本探索方法によって探索された物質として、例えば、「Met、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを含むアミノ酸群」および「Gly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを含むアミノ酸群」が挙げられる。
【0212】
[3−3.第3実施形態のまとめ、およびその他の実施形態]
以上、詳細に説明したように、第3実施形態にかかるNASHの改善物質の探索方法によれば、(i)所望の物質群を個体に投与し、(ii)物質群が投与された個体から血液を採取し、(iii)採取した血液中のアミノ酸濃度データを取得し、(iv)取得した個体のアミノ酸濃度データから欠損値や外れ値などのデータを除去し、(v)欠損値や外れ値などのデータが除去された個体のアミノ酸濃度データに基づいて、個体につき、上述した31.または32.の判別を実行し、(vi)この判別結果に基づいて、投与した物質群が、NASHにおける肝線維化を予防させる又はNASHにおける肝線維化の状態を改善させるものであるか否かを判別する。これにより、上述した第1実施形態のNASHの評価方法を用いて、NASHにおける肝線維化を予防させる又はNASHにおける肝線維化の状態を改善させる物質を精度よく探索することができる。
【0213】
ここで、ステップSA35で用いられる多変量判別式は、ロジスティック回帰式、分数式、線形判別式、重回帰式、サポートベクターマシンで作成された式、マハラノビス距離法で作成された式、正準判別分析で作成された式、決定木で作成された式のいずれか1つでもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別、または、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。
【0214】
具体的には、上述した31.の判別で用いられる多変量判別式は、数式1、またはOrn、Glu、Ala、Cysを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0、ステージ1、およびステージ2を包含する群とステージ3およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。また、上述した32.の判別で用いられる多変量判別式は、数式2、またはGly、Alaを変数として含むロジスティック回帰式でもよい。これにより、NASHにおける肝線維化ステージの2群判別(具体的には、ステージ0およびステージ1を包含する群とステージ2、ステージ3、およびステージ4を包含する群との2群判別)に特に有用な多変量判別式で得られる判別値を利用して、この2群判別をさらに精度よく行うことができる。
(Orn/Gln)+{Phe/(Val+Leu)}+(Met/Ala)
・・・数式1
{Gly/(Gln+Glu)}+(Tyr/Val)+(Pro/Ala)
・・・数式2
【0215】
なお、上記した各多変量判別式は、本出願人による国際出願である国際公開第2004/052191号に記載の方法または本出願人による国際出願である国際公開第2006/098192号に記載の方法(上述した第2実施形態に記載の多変量判別式作成処理)で作成してもよい。なお、これら方法で得られた多変量判別式であれば、入力データとしてのアミノ酸濃度データにおけるアミノ酸濃度の単位に因らず、当該多変量判別式をNASHにおける肝線維化の状態評価に好適に用いることができる。
【0216】
また、第3実施形態にかかるNASHの予防・改善物質の探索方法は、「Met、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを含むアミノ酸群」および「Gly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを含むアミノ酸群」の濃度値や上記した各多変量判別式の判別値を正常化させる物質を、上述した第1実施形態のNASHの評価方法や第2実施形態のNASH評価装置を用いて選択することができる。
【0217】
また、第3実施形態にかかるNASHの予防・改善物質の探索方法において、「予防・改善物質を探索する」とは、NASHにおける肝線維化の予防・改善に有効な新規物質を見出すことのみならず、公知物質のNASHにおける肝線維化の予防・改善用途を新規に見出すことや、NASHにおける肝線維化の予防・改善に有効性を期待できる既存の薬剤・サプリメント等を組み合わせた新規組成物を見出すことや、上記した適切な用法・用量・組み合わせを見出し、それをキットとすることや、食事・運動等も含めた予防・治療メニューを提示することや、当該予防・治療メニューの効果をモニタリングし、必要に応じて個人ごとにメニューの変更を提示すること等が含まれる。
【実施例1】
【0218】
実施例1では、統計的手法を用いて、NASH特有のアミノ酸濃度値の変動パターンを明らかにした。
【0219】
まず、肝生検による肝線維化ステージの診断(判別)が行われたNASH患者の血液サンプルから、上述した実施形態で説明した(A)の測定方法により、血中のアミノ酸濃度データを測定した。なお、サンプル総数は58であり、肝線維化ステージ毎のサンプル数は、ステージ1(S1)が20、ステージ2(S2)が19、ステージ3(S3)が15、そしてステージ4(S4)が4である。図25は、肝線維化ステージ毎のアミノ酸変数の分布を示す箱ひげ図である。
【0220】
そして、ステージ1とステージ2をまとめた群(S12群)のアミノ酸濃度データ、およびステージ3とステージ4をまとめた群(S34群)のアミノ酸濃度データに基づいて、2群間のノンパラメトリック解析であるMann−Whitney検定を実施して、2群間でのアミノ酸濃度値の変動パターンを明らかにした。また、ステージ1の群(S1群)のアミノ酸濃度データ、およびステージ2とステージ3とステージ4をまとめた群(S234群)のアミノ酸濃度データに基づいて、Mann−Whitney検定を実施して、2群間でのアミノ酸濃度値の変動パターンを明らかにした。なお、本検定における有意差確率Pは、0.05未満である。
【0221】
検定の結果、S12群に比べてS34群では、Met、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cysの濃度値が有意に増加した。また、S12群に比べてS34群では、Alaが有意に減少した。これにより、Met、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Alaが、S12群とS34群の2群間の判別性能を持つことが判明した。また、検定の結果、S1群に比べてS234群では、Glyの濃度値が有意に増加した。これにより、GlyがS1群とS234群の2群間の判別性能を持つことが判明した。またTyr、Gln、ValがS1群とS234群の2群間で変化する傾向(p<0.1)、すなわちTyr、GlnはS234群で増加し、ValはS234群で減少する傾向を持つことが判明した。ここで、Met、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Gly、Tyr、Gln、Valは、それぞれ、methionine、phenylalanine、tyrosine、ornithine、citrulline、arginine、serine、cystine、glycine、tyrosine、glutamine、valineを表す。
【実施例2】
【0222】
実施例2では、本出願人による国際出願である国際公開第2004/052191号に記載の方法を用いて、肝線維化ステージに関する2群間の判別性能を最大化する多変量判別式(分数式)を探索した。なお、実施例2で用いたアミノ酸濃度データは、実施例1で用いたものと同じである。
【0223】
まず、S12群とS34群の2群間の判別性能を最大化する多変量判別式を鋭意探索した結果、同等の判別性能を持つ複数の多変量判別式が探索された。そして、判別性能の最も高い多変量判別式として、数式1が探索された。
(Orn/Gln)+{Phe/(Val+Leu)}+(Met/Ala)
・・・数式1
【0224】
そして、S12群とS34群の2群判別に関する、数式1による肝線維化ステージの判別性能を、ROC曲線(Receiver Operating Characteristic Curve:受信者動作曲線)のAUC(Area Under Curve:曲線下面積)で評価した。図26は、数式1による肝線維化ステージの判別性能を評価するためのROC曲線を示す図である。
【0225】
評価した結果、数式1のAUCは、0.904±0.039(95%信頼区間は0.827〜0.981)であった。また、数式1を用いてS12群とS34群の2群判別を行う際の最適なカットオフ値を、S3とS4の有症率を0.35として求めたところ、0.47であった。そして、カットオフ値を0.47とした場合、感度は68%、特異度は97%、陽性適中率は93%、陰性適中率は85%、正診率は87%であった。図27は、数式1を用いてS12群とS34群の2群判別を行った際の各カットオフ値に対応する、感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率、および正診率を示す図である。このことから、数式1は、S12群とS34群の2群判別において判別性能が高く有用な指標であることが判明した。なお、数式1と同等の判別性能を持つ複数の分数式が探索された。これらの分数式の一部を図28および図29に示す。図28および図29に含まれる式における変数の出現頻度を多い順に10位まで列挙すると、「Ala、Orn、Met、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Cys、Ile」である。
【0226】
つぎに、S1群とS234群の2群間の判別性能を最大化する多変量判別式を鋭意探索した結果、同等の判別性能を持つ複数の多変量判別式が探索された。そして、判別性能の最も高い多変量判別式として、数式2が探索された。
{Gly/(Gln+Glu)}+(Tyr/Val)+(Pro/Ala)
・・・数式2
【0227】
そして、S1群とS234群の2群判別に関する、数式2による肝線維化ステージの判別性能を、ROC曲線のAUCで評価した。図30は、数式2による肝線維化ステージの判別性能を評価するためのROC曲線を示す図である。
【0228】
評価した結果、数式2のAUCは、0.830±0.062(95%信頼区間は0.708〜0.951)であった。また、数式1を用いてS1群とS234群の2群判別を行う際の最適なカットオフ値を、S2・S3・S4の有症率を0.65として求めたところ、1.01であった。そして、カットオフ値を1.01とした場合、感度は89%、特異度は65%、陽性適中率は83%、陰性適中率は76%、正診率は81%であった。図31は、数式2を用いてS1群とS234群の2群判別を行った際の各カットオフ値に対応する、感度、特異度、陽性適中率、陰性適中率、および正診率を示す図である。このことから、数式2は、S1群とS234群の2群判別において判別性能が高く有用な指標であることが判明した。なお、数式2と同等の判別性能を持つ複数の分数式が探索された。これらの分数式の一部を図32および図33に示す。図32および図33に含まれる式における変数の出現頻度を多い順に10位まで列挙すると、「Ala、Val、Tyr、Pro、Gly、His、Phe、Gln、Cys、Ile」である。
【実施例3】
【0229】
実施例3では、本出願人による国際出願である国際公開第2006/098192号に記載の方法(上述した第2実施形態で説明した多変量判別式の作成方法(図22参照))を用いて、肝線維化ステージに関する2群間の判別性能を最大化する多変量判別式(ロジスティック回帰式)を探索した。なお、実施例3で用いたアミノ酸濃度データは、実施例1で用いたものと同じである。
【0230】
まず、S12群とS34群の2群間の判別性能を最大化する多変量判別式を、ロジスティック解析(Wald検定のステップワイズ法による変数選択)により探索した結果、Orn、Glu、Ala、およびCysから構成されるロジスティック回帰式(Orn、Glu、Ala、およびCysの数係数と定数項は、順に、0.328±0.122、−0.151±0.059、−0.051±0.018、0.520±0.191、−34.201±12.581)が探索された。
【0231】
そして、S12群とS34群の2群判別に関する、このロジスティック回帰式による肝線維化ステージの判別性能を、ROC曲線のAUCで評価した。図34は、このロジスティック回帰式による肝線維化ステージの判別性能を評価するためのROC曲線を示す図である。
【0232】
評価した結果、このロジスティック回帰式のAUCは、0.960±0.024(95%信頼区間は0.912〜1.008)であった。このことから、このロジスティック回帰式は、S12群とS34群の2群判別において判別性能が高く有用な指標であることが判明した。なお、このロジスティック回帰式と同等の判別能を持つ複数のロジスティック回帰式が探索された。これらのロジスティック回帰式の一部を図35および図36に示す。図35および図36に含まれる式における変数の出現頻度を多い順に10位まで列挙すると、「Ala、Cys、Orn、Leu、Phe、Arg、Glu、Met、Lys、Ile」である。
【0233】
つぎに、S1群とS234群の2群間の判別性能を最大化する多変量判別式を、ロジスティック解析(Wald検定のステップワイズ法による変数選択)により探索した結果、GlyおよびAlaから構成されるロジスティック回帰式(GlyおよびAlaの数係数と定数項は順に、0.0148±0.0065、−0.0056±0.0028、−0.4468±1.5987)が探索された。
【0234】
そして、S1群とS234群の2群判別に関する、このロジスティック回帰式による肝線維化ステージの判別性能を、ROC曲線のAUCで評価した。図37は、このロジスティック回帰式による肝線維化ステージの判別性能を評価するためのROC曲線を示す図である。
【0235】
評価した結果、このロジスティック回帰式のAUCは、0.7736±0.066(95%信頼区間は0.606〜0.865)であった。このことから、このロジスティック回帰式は、S1群とS234群の2群判別において判別性能が高く有用な指標であることが判明した。なお、このロジスティック回帰式と同等の判別能を持つ複数のロジスティック回帰式が探索された。これらのロジスティック回帰式の一部を図38および図39に示す。図38および図39に含まれる式における変数の出現頻度を多い順に10位まで列挙すると、「Ala、Gly、Pro、Gln、Tyr、Leu、Orn、Cys、Ile、Phe」である。
【産業上の利用可能性】
【0236】
以上のように、本発明にかかるNASHの評価方法などは、産業上の多くの分野、特に医薬品や食品、医療などの分野で広く実施することができ、特に、NASHにおける肝線維化の状態の進行予測や疾病リスク予測やプロテオームやメタボローム解析などを行うバイオインフォマティクス分野において極めて有用である。
【符号の説明】
【0237】
100 NASH評価装置
102 制御部
102a 要求解釈部
102b 閲覧処理部
102c 認証処理部
102d 電子メール生成部
102e Webページ生成部
102f 受信部
102g 肝線維化状態情報指定部
102h 多変量判別式作成部
102h1 候補多変量判別式作成部
102h2 候補多変量判別式検証部
102h3 変数選択部
102i 判別値算出部
102j 判別値基準評価部
102j1 判別値基準判別部
102k 結果出力部
102m 送信部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 利用者情報ファイル
106b アミノ酸濃度データファイル
106c 肝線維化状態情報ファイル
106d 指定肝線維化状態情報ファイル
106e 多変量判別式関連情報データベース
106e1 候補多変量判別式ファイル
106e2 検証結果ファイル
106e3 選択肝線維化状態情報ファイル
106e4 多変量判別式ファイル
106f 判別値ファイル
106g 評価結果ファイル
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 クライアント装置(情報通信端末装置)
300 ネットワーク
400 データベース装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象から採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記評価対象の前記アミノ酸濃度データに基づいて、前記評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価する濃度値基準評価ステップと
を含むことを特徴とするNASHの評価方法。
【請求項2】
前記濃度値基準評価ステップは、前記取得ステップで取得した前記アミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの前記濃度値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する濃度値基準判別ステップをさらに含むこと
を特徴とする請求項1に記載のNASHの評価方法。
【請求項3】
前記濃度値基準評価ステップは、前記取得ステップで取得した前記アミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornうち少なくとも1つの前記濃度値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する濃度値基準判別ステップをさらに含むこと
を特徴とする請求項1に記載のNASHの評価方法。
【請求項4】
前記濃度値基準評価ステップは、
前記取得ステップで取得した前記アミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む予め設定した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する判別値算出ステップと、
前記判別値算出ステップで算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価する判別値基準評価ステップと
をさらに含むこと、
を特徴とする請求項1に記載のNASHの評価方法。
【請求項5】
前記多変量判別式は、ロジスティック回帰式、分数式、線形判別式、重回帰式、サポートベクターマシンで作成された式、マハラノビス距離法で作成された式、正準判別分析で作成された式、決定木で作成された式のいずれか1つであること、
を特徴とする請求項4に記載のNASHの評価方法。
【請求項6】
前記判別値算出ステップは、前記取得ステップで取得した前記アミノ酸濃度データに含まれるMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つの前記濃度値、およびMet、Phe、Tyr、Orn、Cit、Arg、Ser、Cys、Ala、Gln、Val、Leu、Glu、Trp、Ile、Lysのうち少なくとも1つを前記変数として含む前記多変量判別式に基づいて、前記判別値を算出し、
前記判別値基準評価ステップは、前記判別値算出ステップで算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を表す肝線維化ステージの値がステージ3以上又は未満であるか否かを判別する判別値基準判別ステップをさらに含むこと、
を特徴とする請求項4または5に記載のNASHの評価方法。
【請求項7】
前記多変量判別式は、数式1、またはOrn、Glu、Ala、Cysを前記変数として含む前記ロジスティック回帰式であること、
(Orn/Gln)+{Phe/(Val+Leu)}+(Met/Ala)
・・・数式1
を特徴とする請求項6に記載のNASHの評価方法。
【請求項8】
前記判別値算出ステップは、前記取得ステップで取得した前記アミノ酸濃度データに含まれるGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つの前記濃度値、およびGly、Tyr、Gln、Val、Ala、Pro、His、Phe、Cys、Ile、Leu、Ornのうち少なくとも1つを前記変数として含む前記多変量判別式に基づいて、前記判別値を算出し、
前記判別値基準評価ステップは、前記判別値算出ステップで算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を表す肝線維化ステージの値がステージ2以上又は未満であるか否かを判別する判別値基準判別ステップをさらに含むこと、
を特徴とする請求項4または5に記載のNASHの評価方法。
【請求項9】
前記多変量判別式は、数式2、またはGly、Alaを前記変数として含む前記ロジスティック回帰式であること、
{Gly/(Gln+Glu)}+(Tyr/Val)+(Pro/Ala)
・・・数式2
を特徴とする請求項8に記載のNASHの評価方法。
【請求項10】
制御手段と記憶手段とを備え、評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価するNASH評価装置であって、
前記制御手段は、
アミノ酸の濃度値に関する予め取得した前記評価対象のアミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む前記記憶手段で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する判別値算出手段と、
前記判別値算出手段で算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価する判別値基準評価手段と
を備えたこと、
を特徴とするNASH評価装置。
【請求項11】
制御手段と記憶手段とを備えた情報処理装置において実行される、評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価するNASH評価方法であって、
前記制御手段において実行される、
アミノ酸の濃度値に関する予め取得した前記評価対象のアミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む前記記憶手段で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する判別値算出ステップと、
前記判別値算出ステップで算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価する判別値基準評価ステップと
を含むこと、
を特徴とするNASH評価方法。
【請求項12】
制御手段と記憶手段とを備えた情報処理装置において実行させるための、評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価するNASH評価プログラムであって、
前記制御手段において実行させるための、
アミノ酸の濃度値に関する予め取得した前記評価対象のアミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む前記記憶手段で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する判別値算出ステップと、
前記判別値算出ステップで算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価する判別値基準評価ステップと
を含むこと、
を特徴とするNASH評価プログラム。
【請求項13】
制御手段と記憶手段とを備え、評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価するNASH評価装置と、制御手段を備え、アミノ酸の濃度値に関する前記評価対象のアミノ酸濃度データを提供する情報通信端末装置とを、ネットワークを介して通信可能に接続して構成されたNASH評価システムであって、
前記情報通信端末装置の前記制御手段は、
前記評価対象の前記アミノ酸濃度データを前記NASH評価装置へ送信するアミノ酸濃度データ送信手段と、
前記NASH評価装置から送信された、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の状態評価に関する前記評価対象の評価結果を受信する評価結果受信手段と
を備え、
前記NASH評価装置の前記制御手段は、
前記情報通信端末装置から送信された前記アミノ酸濃度データを受信するアミノ酸濃度データ受信手段と、
前記アミノ酸濃度データ受信手段で受信した前記アミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む前記記憶手段で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する判別値算出手段と、
前記判別値算出手段で算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価する判別値基準評価手段と、
前記判別値基準評価手段での前記評価対象の前記評価結果を前記情報通信端末装置へ送信する評価結果送信手段と、
を備えたこと、
を特徴とするNASH評価システム。
【請求項14】
評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価するNASH評価装置とネットワークを介して通信可能に接続された、制御手段を備え、アミノ酸の濃度値に関する前記評価対象のアミノ酸濃度データを提供する情報通信端末装置であって、
前記制御手段は、
前記評価対象の前記アミノ酸濃度データを前記NASH評価装置へ送信するアミノ酸濃度データ送信手段と、
前記NASH評価装置から送信された、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の状態評価に関する前記評価対象の評価結果を受信する評価結果受信手段と
を備え、
前記評価結果は、前記NASH評価装置が、前記情報通信端末装置から送信された前記アミノ酸濃度データを受信し、受信した前記アミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む前記NASH評価装置で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出し、算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価した結果であること、
を特徴とする情報通信端末装置。
【請求項15】
アミノ酸の濃度値に関する評価対象のアミノ酸濃度データを提供する情報通信端末装置とネットワークを介して通信可能に接続された、制御手段と記憶手段とを備え、前記評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価するNASH評価装置であって、
前記制御手段は、
前記情報通信端末装置から送信された前記アミノ酸濃度データを受信するアミノ酸濃度データ受信手段と、
前記アミノ酸濃度データ受信手段で受信した前記アミノ酸濃度データ、および前記アミノ酸の濃度を変数として含む前記記憶手段で記憶した多変量判別式に基づいて、当該多変量判別式の値である判別値を算出する判別値算出手段と、
前記判別値算出手段で算出した前記判別値に基づいて、前記評価対象につき、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を評価する判別値基準評価手段と、
前記判別値基準評価手段での前記評価対象の評価結果を前記情報通信端末装置へ送信する評価結果送信手段と、
を備えたこと、
を特徴とするNASH評価装置。
【請求項16】
1つ又は複数の物質から成る所望の物質群が投与された評価対象から採取した血液中のアミノ酸の濃度値に関するアミノ酸濃度データを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記アミノ酸濃度データに基づいて、前記評価対象につき、非アルコール性脂肪肝炎における肝線維化の状態を評価する濃度値基準評価ステップと、
前記濃度値基準評価ステップでの評価結果に基づいて、前記所望の前記物質群が、前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化を予防させる又は前記非アルコール性脂肪肝炎における前記肝線維化の前記状態を改善させるものであるか否かを判定する判定ステップと、
を含むことを特徴とするNASHの予防・改善物質の探索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2013−40923(P2013−40923A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156651(P2012−156651)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLU−RAY DISC
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】