説明

Ni基焼結合金およびその製造方法

【課題】耐熱性、耐酸化性および耐食性をより一層向上させた焼結合金およびその製造方法を提供する。
【解決手段】Cr:15〜23質量%、希土類元素のうち少なくとも1種のOを含む化合物:0.5〜3.0質量%、残部がNiおよび不可避不純物からなり、最大結晶粒径が50μm以下であるNi−Cr合金基地中に、最大粒径が10μm以下の前記化合物の粒子が分散する金属組織を呈することを特徴とするNi基焼結合金を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温における耐酸化性や耐食性が要求される部材に好適なNi基焼結合金およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャーの構成部品等は、高温の腐食性ガスである排気ガスと接触することから耐熱性及び耐食性が要求される。このため、ターボチャージャーの構成部品においては、従来、たとえば、高Cr鋳鋼や、JIS規格で規定されているSCH22種に耐蝕性向上の目的でCr表面処理を施した材料等が使用されている。近年では、焼結材料(特許文献1、2等)の適用も行われている。
【0003】
また、固体電解質形燃料電池に用いられるセパレータにおいても、高い耐酸化性および耐食性が要求される。固体電解質形燃料電池は、多孔質の燃料電極および空気電極の間に電解質を挟み込むように積層するとともに、燃料/空気電極の外面にセパレータを密着させた単電池を連設して構成される。この燃料電池は、約1000℃の高温下において用いられ、燃料/空気電極および電解質を介してイオン交換が行われ、燃料電極と空気電極との間に電力が発生する。固体電解質形燃料電池用セパレータには、たとえば、Ni−Cr系合金やCr−5%Fe−1%Y合金(%は質量%)が適用されている。さらに、焼結材料(特許文献3等)の適用も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平05−041693号公報
【特許文献2】特許第3784003号公報
【特許文献3】特開平10−183315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の環境問題、省エネルギー問題等により、内燃機関には更なる高効率化が求められている。これに対応するため内燃機関の超希薄燃焼化が進んでおり、燃焼温度が高温となるため、排気ガスがより高温になってきている。このため、ターボチャージャーの構成部品等の排気ガスに曝される部品に対して、高温環境下における耐食性のより一層の向上が要求されている。
【0006】
また、固体電解質形燃料電池用セパレータにおいても、長時間運転により表層部の酸化が進行して電池特性が低下するため、耐酸化性および耐食性のより一層の向上が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、耐熱性、耐酸化性および耐食性をより一層向上させた焼結合金およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、焼結合金の基地として、Fe合金よりも耐熱性および耐酸化性の高いNi基合金を用いるとともに、基地組織を改良したことを骨子とする。すなわち、本発明のNi基焼結合金は、Cr:15〜23質量%、希土類元素のうち少なくとも1種のOを含む化合物:0.5〜3.0質量%、残部がNiおよび不可避不純物からなり、最大結晶粒径が50μm以下であるNi−Cr合金基地中に、最大粒径が10μm以下の前記化合物の粒子が分散する金属組織を呈することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のNi基焼結合金の製造方法は、Cr:15〜23質量%、および残部がNiおよび不可避不純物からなるNi−Cr合金粉末に、希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物の粉末を0.5〜3.0質量%添加した混合粉末に対して、機械的複合処理を行って最大結晶粒径が1μm以下の原料粉末を作製し、原料粉末を成形して圧粉体とし、圧粉体を1350℃以下で焼結することを特徴とする。以下、本発明の数値限定の根拠について本発明の作用とともに説明する。
【0010】
[Ni基焼結合金]
Crは、強固な保護被膜を形成して、酸化の進行を抑制する効果があり、NiにCrを合金化したNi−Cr合金とすると、Niの酸化がより一層抑制されて耐酸化性が向上する。しかしながら、Cr量が15質量%に満たないと保護被膜形成の効果が乏しくなる。一方、上記効果を基地全体に及ぼすため、CrはNi−Cr合金粉末の形態で付与されるが、Cr量が23質量%を超えるとNi−Cr合金粉末の硬さが増加して成形性が損なわれる。このため、Cr量は15〜23質量%とする。
【0011】
希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物を添加すると、例えば母材と保護被膜間の結合を高めることができる。また、それにともない保護被膜の厚さを小さくすることができる。保護被膜の厚さが小さいと、保護被膜内の内部応力が小さくなり,ブレークアウェイが起こり難くなる。希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物は、その添加量が0.5質量%未満では、上記効果を十分に得ることができない。一方、3.0質量%を超えると、母材であるNi−Cr合金の割合が減って全体の機械的強度が低下してしまう。このため、希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物量は0.5〜3.0質量%とする。なお、希土類元素は、Y、La、Sc、Gd、Yb、およびLuのうち少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
以上より、本発明のNi基焼結合金においては、Cr量が15〜23質量%および残部がNiおよび不可避不純物からなるNi−Cr合金粉末に、希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物を0.5〜3.0質量%添加する。
【0013】
ところで、結晶粒が大きく、粒界の幅が広い場合、酸化の進行は粒界に沿って行われるため、一旦酸化が進行すると、酸化が母材内部まで容易に進行し易くなる。一方、結晶粒が小さく、粒界の幅が狭い場合、酸素が進入し難いため、酸化が進行し難くなる。この粒界における不純物の希釈効果が現れることから、本発明においては、Ni−Cr合金基地の最大結晶粒径を50μm以下とする。
【0014】
また、上記効果を有する希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物は、その化合物粒子の粒径が大きいと、上記効果を基地全体に及ぼすことが難しい。このため、本発明においては、希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物の最大粒径を10μm以下とする。
【0015】
したがって、本発明のNi基焼結合金においては、最大結晶粒径が50μm以下であるNi−Cr合金基地中に、最大粒径が10μm以下の希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物の粒子が分散する金属組織とする。本発明のNi基焼結合金は、基地の最大結晶粒径が50μm以下と小さいため、酸化が進行し難く、耐酸化性に優れている。
【0016】
なお、Ni基焼結合金は、気孔が多いとその分表面積が大きくなり、酸化や腐食が生じ易くなるため、気孔量の少ない、すなわち、密度比の高い方が好ましい。この点で、Ni基焼結合金の密度比を85%以上とすることが好ましい。
【0017】
[Ni基焼結合金の製造方法]
上記のとおり、本発明のNi基焼結合金は、Cr量が15〜23質量%および残部がNiおよび不可避不純物からなるNi−Cr合金粉末に、希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物を0.5〜3.0質量%添加して混合粉末を作製し、製造する。このとき、上記のNi基焼結合金の金属組織を得るため、混合粉末に対して機械的複合処理を行って、最大結晶粒径が1μm以下の原料粉末を作製する。なお、原料粉末の最大結晶粒径が1μmを超えると、焼結時の結晶粒の成長によって、Ni−Cr合金基地の最大結晶粒径を50μm以下に抑えることが難しくなる。
【0018】
機械的複合処理は、粉末の微細化を容易に制御することができるボールミルを用いることが好ましい。処理容器に、Ni−Cr合金粉末と、希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物粉末と、メディアを投入し、処理容器に自転運動を与えつつ公転運動を与えて、上記粉末とメディアに回転運動を与えて混合処理を行う。このとき、これらの粉末はメディアの打撃を受け、粉砕されるとともに、Ni−Cr合金粉末においては結晶粒が砕かれて微細化するとともに、粉砕されて微細となった化合物粉末がNi−Cr合金粉末に機械的に埋め込まれ、複合粉末が形成される。このとき、最大結晶粒径が1μm以下の原料粉末を得るため、メディアに発生する最大加速度を98m/s以上として機械的複合処理を行うことが好ましい。
【0019】
上記複合粉末を原料粉末として用いて、所望の形状に成形し、得られた圧粉体を焼結することにより、Ni基焼結合金を製造することができる。焼結は、従来から行われている不活性ガス、窒素ガス、アンモニア分解ガスやこれらの混合ガス等の非酸化性雰囲気中で行う。焼結温度は、1350℃を超えると結晶粒の成長が著しくなることから1350℃以下の温度範囲とする。なお、通常の無加圧での焼結を行う場合、焼結温度が1000℃に満たないと、焼結が進行し難いため、1000℃以上とする。ただし、圧粉体を加圧しながら焼結する方法、すなわちホットプレス法、放電プラズマ焼結法等を用いる場合、加圧により焼結が進行し易くなるため、焼結温度は485℃以上とすればよい。
【0020】
なお、成形にあたっては、一旦、原料粉末を密度比65%以上に予備成形し、600〜1350℃の温度範囲で予備焼結した後、再度成形を行うことが好ましい。すなわち、成形時の緻密化は粉末の変形によるものであるが、粉末がある程度変形すると、この変形にともない歪みが粉末に蓄積して粉末が加工硬化する。このため、粉末を高密度に成形するためには多大な成形圧力が必要となる。そこで、一旦、原料粉末を予備成形し、その後予備焼結を行うことにより、一部の粉末の焼結を行うとともに、粉末に蓄積した歪みの除去を行う。これにより、密度比が65%以上であり、かつ歪みが除去され変形能の回復した予備焼結体を得ることができる。この予備焼結体を成形することにより、高密度の圧粉体を得易くなり、この圧粉体を焼結することで密度比85%以上のNi基焼結合金を容易に得ることができる。また、機械的複合処理を行ったままの原料粉末を焼鈍処理してから、成形に供しても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐熱性、耐酸化性および耐食性をより一層向上させた焼結合金を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例で作製した原料粉末の断面を示し、(A)は全体写真、(B)は中央部を拡大した写真である。
【図2】実施例で作製した試料の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のNi基焼結合金の製造方法をさらに詳細に説明する。まず、Cr:15〜23質量%、および残部がNiおよび不可避不純物からなるNi−Cr合金粉末に、希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物の粉末を0.5〜3.0質量%添加した混合粉末に対して、機械的複合処理を行う。
【0024】
機械的複合処理は、混合粉末を機械的に混合するとともに、Ni−Cr合金粉末および希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物粉末を機械的に微細に粉砕する処理である。この処理において、Ni−Cr合金粉末中に希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物粉末を機械的に埋め込むことで複合化するとともに、Ni−Cr合金粉末の結晶粒を機械的に破砕して微細化を行う。この機械的複合処理は、メカニカルアロイ、メカニカルミリング等と称される。機械的複合処理により、Ni−Cr合金粉末中に、微細な希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物が機械的に埋め込まれ、最大結晶粒径が1μm以下の原料粉末が得られる。
【0025】
機械的複合処理は、ボールミルを用いて行う。遊星型ボールミルを用いる場合、処理容器に、Ni−Cr合金粉末と、化合物粉末とともに、メディアとなる硬質のボールを投入し、処理容器に自転運動を与えつつ公転運動を与えて、上記粉末とボールに回転運動を与えて混合処理を行う。また、処理容器内部に撹拌のためのロータを具備し、ロータを回転させることにより上記の粉末とボールに回転運動を与える縦型ボールミルを用いてもよい。
【0026】
このようなボールミルを用いる場合、原料粉末の最大結晶粒径を1μm以下とするため、ボールに発生する最大加速度が98m/s以上となるよう処理容器および/またはロータを回転させて機械的複合処理を行う。
【0027】
遊星型ボールミルにおいては、ボールに発生する加速度:G(m/s)は、公転半径(公転の中心から処理容器の中心までの距離):R(m)、処理容器の半径:r(m)、処理容器の自転と公転の比:i、公転の回転数:x(rpm)としたとき、下記の数1により求めることができる。ここで、公転半径R、処理容器の半径rは装置によって決まるため、処理容器の自転と公転の比iおよび公転の回転数xを調整することにより、ボールに発生する加速度Gを調整することができる。
【0028】
【数1】

【0029】
上記のようにして得られた原料粉末に対し、密度比65%以上に予備成形し、600〜1350℃の温度範囲で予備焼結を行って、一部の粉末の焼結および粉末に蓄積した歪みの除去を行う。さらに、得られた予備焼結体を所望の形状に成形して圧粉体とした後、圧粉体を焼結して密度比85%以上のNi基焼結合金を作製する。このときの焼結は、従来から行われている不活性ガス、窒素ガス、アンモニア分解ガスやこれらの混合ガス等の非酸化性雰囲気中において1350℃以下において行う。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
以下、実施例を用いてさらに具体的に本発明を説明する。表1に示すようにCr量を変化させたNi−Cr合金粉末を用意し、表1に示す割合でLa粉末を添加して混合粉末を得た。そして、メディアの加速度を98m/sとしてボールミルによって混合粉末を微細化して原料粉末を作製した。次に、原料粉末を金型に充填し、成形圧力1250MPaにおいて密度6.0Mg/mに予備成形して、焼結温度1250℃で予備焼結を行って予備焼結体を得た。さらに、予備焼結体を、成形圧力1250MPaにて成形して、直径:10mm、高さ:10mmの柱体形状の圧粉体を作製した。そして、圧粉体に対して、真空雰囲気中、1250℃において120分間の焼結を行い、Ni基焼結合金の試料01〜12を得た。
【0031】
各試料に対して以下のような測定を行い、Ni基焼結合金の評価を行った。各種測定結果を表1に併記する。
(1)原料粉末およびNi基焼結合金の最大結晶粒径、Laの最大粒径
走査イオン顕微鏡(SIM;Scanning Ion Microscope)により得られたSIM画像を観察して、原料粉末およびNi基焼結合金の最大結晶粒径、Laの最大粒径を求めた。一例として、図1に試料03の原料粉末の断面写真を示す。図1(A)は、原料粉末の全体写真、図1(B)は、図1(A)の中央部拡大写真である。また、図2に焼結後の試料03の断面写真を示す。
【0032】
(2)密度比
JIS Z2501に規定の方法に従い、アルキメデス法を用いて密度の測定を行うとともに、全体組成より計算される理論密度に対する測定された密度の比を密度比として求めた。
【0033】
(3)酸化増量
各試料をアルミナ製るつぼに投入し、全るつぼをマッフル炉に入れて大気雰囲気中1100℃において12時間加熱して酸化試験を行った。酸化増量は、試験前後の重量増分を測定し表面積で除して算出した。
【0034】
【表1】

【0035】
図1に示すように、原料粉末は、Ni−Cr合金粉末中に微細なLa粉末が機械的に埋め込まれ、複合試料となっていることがわかる。表1より、各試料では、原料粉末の最大結晶粒径は1μmであり、Ni基焼結合金の最大結晶粒径およびLaの最大粒径も、それぞれ30、10μm程度と小さく抑えられていた。Ni基焼結合金の組織は、一例として図2に示すように、微細な結晶粒径のNi−Cr合金基地中に、最大粒径が10μmのLaの粒子が分散する金属組織を呈することがわかる。
【0036】
試料番号01〜05より、Cr量の耐酸化性への影響が分かる。Cr量が15%未満の試料番号01においては、Cr量が乏しいため、保護被膜(Cr)を十分に形成できなかったため酸化増量が大きくなった。一方、Cr量が15〜23%である試料番号02〜04においては、Cr量が十分であるため、保護被膜(Cr)を十分に形成できたため酸化増量が非常に小さくなり、高耐酸化性が得られた。また、Cr量が23%を超える試料番号05においては、Cr量が多過ぎるため原料粉末の成形性が低下し、密度比の低下によって空隙が多くなり、酸素が母材内部に侵入しやすかったため酸化増量が増加した。このことから、Cr量が15〜23%であると、耐酸化性に優れたNi基焼結合金を得られることが分かる。
【0037】
試料番号03および06〜12より、La粉末の耐酸化性への影響が分かる。La粉末が0.5%未満の試料06では、保護被膜(Cr)が脱落しやすかったため、酸化増量が大きくなった。一方、La粉末が0.5〜3.0%の試料03、07〜11では、酸化増量は非常に小さくなり、高耐酸化性が得られた。La粉末が3.0%を超える試料12では、ペロブスカイト型複合酸化物が過剰に生成され、母材のCr量が減ったため耐酸化性が低下し、酸化増量が大きくなった。このことから、La粉末の添加量が0.5〜3.0%であると、高耐酸化性が得られることが分かる。
【0038】
[実施例2]
Ni−Cr合金粉末のCr量を20%とし、La粉末を1.5%添加した混合粉末を用意し、表2に示すようにメディア加速度を変えて原料粉末の作製を行った。次に、実施例1と同様の条件で、予備成形、予備焼結を行ってから、さらに、成形、焼結を行って試料13および14を得た。また、実施例1と同様な方法で試料の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。なお、実施例1における試料03の結果も表2に併記する。
【0039】
【表2】

【0040】
表2に示すように、各試料の密度比は93%以上と高密度であった。また、表2より、メディア加速度の影響を調べることができる。試料13では、メディア加速度が98m/s未満であるため、原料粉末の微細化効果が十分得られず、原料粉末の最大結晶粒径が50μmと大きくなった。その結果、Ni基焼結合金の最大結晶粒径およびLaの最大粒径も大きくなり、酸化増量が大きくなった。一方、メディア加速度が98m/s以上の試料03および14では、原料粉末が十分に微細化されており、焼結後の各結晶粒径も小さいものとなり、酸化増量が小さくなった。したがって、機械的複合処理によって原料粉末の結晶粒径を1μm以下とすることにより、高耐酸化性を得られることが判った。また、ボールミルによる処理の場合、メディア加速度を98m/s以上とすればよいことを確認できた。
【0041】
[実施例3]
実施例2で用いた混合粉末を用意し、メディア加速度を98m/sとして原料粉末を作製した。実施例1と同様の条件で予備成形、予備焼結を行ってから、さらに、1250MPaにおいて成形を行い、表3のように焼結温度を変えて焼結を行い、Ni基焼結合金の試料15〜23を得た。これらの試料に対して、実施例1と同様な方法で測定および評価を行った。その結果を表3に示す。なお、実施例1における試料03の結果も表3に併記する。
【0042】
【表3】

【0043】
表3より、焼結温度の酸化増量への影響を調べることができる。焼結温度が1000℃未満の試料15においては、焼結温度が低すぎるため、焼結が進み難くなり、密度比が85%未満となった。このため、酸化増量が大きくなり、耐酸化性が低くなった。一方、焼結温度が1000〜1350℃の試料03、16〜22では、焼結が十分に進んだため、密度比が85%以上の高密度となり、酸化増量が非常に小さくなって耐酸化性が向上した。また、焼結温度が高くなるにつれて、Ni基焼結合金の最大結晶粒径が大きくなる傾向が見られ、焼結温度が1400℃の試料23では、100μmと粗大化した。また、試料23では、Laの最大粒径も20μmと大きくなった。この結果、試料23の酸化増量は大きくなり、耐酸化性が低くなった。これらのことから、焼結温度が1000〜1350℃の範囲であれば、Ni基焼結合金の最大結晶粒径およびLaの最大粒径が粗大化せず、高耐酸化性を得ることができることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のNi基焼結合金は、高温の排気ガスに曝されるターボチャージャーの構成部品や、固体電解質形燃料電池用セパレータ等の高い耐熱性、耐酸化性および耐食性が望まれる部品に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cr:15〜23質量%、希土類元素のうち少なくとも1種のOを含む化合物:0.5〜3.0質量%、残部がNiおよび不可避不純物からなり、最大結晶粒径が50μm以下であるNi−Cr合金基地中に、最大粒径が10μm以下の前記化合物の粒子が分散する金属組織を呈することを特徴とするNi基焼結合金。
【請求項2】
前記希土類元素が、Y、La、Sc、Gd、Yb、およびLuのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のNi基焼結合金。
【請求項3】
密度比85%以上を有することを特徴とする請求項1または2に記載のNi基焼結合金。
【請求項4】
Cr:15〜23質量%、および残部がNiおよび不可避不純物からなるNi−Cr合金粉末に、希土類元素の少なくとも1種のOを含む化合物の粉末を0.5〜3.0質量%添加した混合粉末に対して、機械的複合処理を行って最大結晶粒径が1μm以下の原料粉末を作製し、前記原料粉末を成形して圧粉体とし、前記圧粉体を1000〜1350℃で焼結することを特徴とするNi基焼結合金の製造方法。
【請求項5】
前記希土類元素が、Y、La、Sc、Gd、Yb、およびLuのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載のNi基焼結合金の製造方法。
【請求項6】
前記機械的複合処理をボールミルにより行うとともに、メディアに発生する最大加速度を98m/s以上として行うことを特徴とする請求項4または5に記載のNi基焼結合金の製造方法。
【請求項7】
前記成形において、前記原料粉末を密度比65%以上に予備成形し、600〜1350℃の温度範囲で予備焼結した後、再度成形を行うことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のNi基焼結合金の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−1997(P2013−1997A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138149(P2011−138149)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000233572)日立粉末冶金株式会社 (272)
【Fターム(参考)】