説明

OCTプローブ

【課題】外部から力が加わっても破損が起きにくいOCTプローブを提供することである。
【解決手段】OCTプローブが、金属製の基端パイプ及び樹脂製の先端チューブと略同軸となるように基端パイプの少なくとも先端と先端チューブの基端との間に取り付けられる、基端パイプと前記先端チューブとの中間の剛性を有する中間パイプ部を有する構成として、上記目的を解決した。好ましくは、中間パイプ部の少なくとも基端側の外径を基端パイプの外径より大きく構成し、中間パイプの基端側に基端パイプの少なくとも先端が差し込まれることによって基端パイプと中間パイプ部とが接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔内の観察対象の断層像を取得する時に使用されるOCTプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低コヒーレンス光を使用して断層像を測定する光コヒーレンストーモグラフィ(Optical Coherence Tomography,OCT)が実用化され、利用されつつある。OCTにおいては低コヒーレント光を生体組織に照射する。そして、この光が生体組織内のどの位置でどの程度反射したのかをマイケルソン干渉計の原理に基づいて計測し、この計測結果に基づいて生体組織の断層像を演算によって作成する。
【0003】
OCTによる断層像取得を行う際には、OCTプローブが体腔内に挿入される。このようなOCTプローブとしては、非特許文献1に記載されているようなものが利用される。
【非特許文献1】M. Jafri, S. Farhang, R. Tang, N. Desai, P. Fishman, R. Rohwer, C. Tang, J. Schmitt, "Optical coherence tomography in the diagnosis and treatment of neurological disorders", J. of Biomedical Optics Vol. 10(5) 051603-1〜051603-11
【0004】
非特許文献1のOCTプローブは、特に管腔の断層像の取得に適したものである。すなわち、OCTプローブは低コヒーレント光を観察対象となる組織付近まで導く為の光ファイバと、この光ファイバが挿通されるチューブ部とを有している。この光ファイバの先端には反射ミラーが備えられており、光ファイバから出射した光線を90°屈曲させて観察対称となる組織に照射させると共に、組織表面や組織内で反射した光線を再び光ファイバ内に戻すように構成されている。さらに、光ファイバはその軸周りに回転可能に構成されている。従って、非特許文献1に記載のOCTプローブを使用することにより、先端付近の光ファイバの軸方向に垂直な一平面で切断した断層像を取得することができる。例えば、この種のOCTプローブを管腔内に挿通して断層像の取得を行う場合、先端付近の光ファイバの軸方向は管腔の軸方向とほぼ等しくなる。すなわち、このOCTプローブによって管腔の軸方向に略垂直な平面で管腔を切断した断層像を取得することができる。
【0005】
以上説明したように、この種のOCTプローブはチューブ部内で光ファイバをスムーズに回転させる必要がある。このため、チューブ部のうち、OCTプローブの先端部以外を覆う部分は比較的変形しにくく形成される。一方、OCTプローブの先端部付近は、径の小さい管腔に挿入できるよう、比較的細く、且つ柔軟なものとなっている。非特許文献1においては、チューブ部の基端側は比較的大径のステンレス管にて形成され、チューブ部の先端は小径の樹脂材料の管にて形成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来のOCTプローブのチューブ部は、大径のステンレスパイプなどによって形成された剛性の高い基端部に、小径の樹脂チューブなどによって形成された剛性の低い先端部を継ぎ足して形成されている。このため、基端部と先端部との継ぎ目の部分では剛性が急激かつ不連続に変化することになる。このように剛性が急激に変化する領域には応力集中が起こりやすい。すなわち、OCTプローブの先端に僅かな力が加わった場合であっても、継ぎ目の部分には大きな応力が加わり、この継ぎ目の部分でチューブ部の破損に至ることもある。例えば、OCTプローブの先端が管腔の壁面に当たって座屈が起こり、その際の応力集中によってOCTプローブが破損する可能性がある。
【0007】
本発明は以下の問題を解決するために成されたものであり、外部から力が加わっても破損が起きにくいOCTプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するため、本発明のOCTプローブは、金属製の基端パイプ及び樹脂製の先端チューブと略同軸となるように基端パイプの少なくとも先端と先端チューブの基端との間に取り付けられる、基端パイプと前記先端チューブとの中間の剛性を有する中間パイプ部を有する。
【0009】
このように、本発明においては、中間パイプ部を基端パイプと先端チューブとの間に設けているため、応力集中が分散されることになり、外部からOCTプローブに力が加わっても、容易には破損しないようになっている。また、剛性が急激に変化する継ぎ目を有する部材に曲げ応力を加えると、継ぎ目の部分の曲率半径が小さくなる。曲率が小さくなると、光ファイバが回転しづらくなるという問題がある。本発明の構成によれば、中間パイプ部と基端パイプとの継ぎ目、及び中間パイプ部と先端チューブとの継ぎ目の剛性の変化は従来の構成よりも小さくなる。従って本発明の構成によれば、曲げ応力が加わっても継ぎ目の部分での曲率半径はあまり小さくなることは無く、OCTプローブが多少撓んだ状態であっても光ファイバをスムーズに回転させることができる。
【0010】
また、中間パイプ部と基端パイプとの剛性の差をより小さくするため、中間パイプ部の少なくとも基端側の内径を基端パイプの外径より大きく構成し、中間パイプの基端側に基端パイプの少なくとも先端が差し込まれることによって基端パイプと中間パイプ部とが接続されるようにしてもよい。
【0011】
また、基端パイプのほぼ全体が中間パイプ部の中に収められる構成としても良い。このような構成とすると、基端パイプが中間パイプ部によって補強されることになり、OCTプローブ全体の剛性を大きくすることができる。
【0012】
また、中間パイプ部は、夫々剛性の異なる複数のパイプを、基端側から先端側に向かって段階的に剛性が低下するように接続することによって形成される構成としても良い。このような構成とすると、中間パイプ部の剛性を基端から先端に向けて段階的に小さくすることが出来るようになり、各パイプ間の剛性の差、及びパイプと先端チューブとの剛性をより小さくすることができる。すなわち、この構成により、OCTプローブはより破損しにくくなり、且つ、光ファイバはより回転しやすくなる。
【0013】
なお、中間パイプ部が基端パイプと接続される基端側中間パイプに先端チューブと接続される先端側中間パイプを接続することによって形成されており、基端側中間パイプの断面二次モーメントとヤング率との積は基端パイプの断面二次モーメントとヤング率との積の15〜25%であり、先端側中間パイプの断面二次モーメントとヤング率との積は基端側中間パイプの断面二次モーメントとヤング率との積の55〜65%であり、先端チューブの断面二次モーメントとヤング率との積は先端側中間パイプの断面二次モーメントとヤング率との積の3〜8%である構成としても良い。このような特性を持つOCTプローブは、応力集中を効果的に緩和し、曲率半径の低下を抑え、且つプローブ全体の剛性も良好である。
【0014】
ここで、中間パイプ部は、例えばポリアミド系樹脂から形成されている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、外部から力が加わっても破損が起きにくいOCTプローブが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に付き説明する。図1は、本実施形態において、OCTを利用した断層像取得装置である、OCTシステムの全体的な構造を示すブロック図である。本実施形態のOCTシステム1は、OCTプローブ100と、光学駆動部200と、患者インターフェースユニット300と、表示部400と、を有する。なお、図1においては、電気信号の経路を破線、光ファイバによる光路を実線にて記載している。また、以下の説明においては、OCTシステムの光源に近づく光路の方向を基端側、遠ざかる方向を先端側と定義する。
【0017】
図1に示されているように、患者インターフェースユニット300はOCTプローブ100の光ファイバ122と光学駆動部200のファイバ干渉計206から光学駆動部200の外部に伸びる光ファイバ224を接続するものである。
【0018】
光学駆動部200側のプローブ用光ファイバ224とOCTプローブ100側の光ファイバ122の基端部とは、患者インターフェースユニット300に内蔵されるロータリージョイント302を介して接続されている。ロータリージョイント302は、OCTプローブ100側の光ファイバ122と光学駆動部200側のプローブ用光ファイバ224が光学的に接続された状態を維持しつつ、プローブ用光ファイバ224に対して光ファイバ122を回転可能に保持する。
【0019】
また、患者インターフェースユニット300には、モータ304が内蔵されている。このモータ304の図示しない回転軸はOCTプローブ100側の光ファイバ122の基端部分と係合可能に構成されている。従って、モータ304の回転軸を光ファイバ122に係合させ、次いでモータ304を駆動することによって、光ファイバ122をOCTプローブ100内でその長軸周りに回転させることができる。
【0020】
また、図示されているように、OCTプローブ100の光ファイバ122の先端には、マイクロミラー124が固定されている。マイクロミラー124は、光ファイバ122から出射する光線を約90°屈曲させてOCTプローブ100の先端部付近の管腔の組織Tに照射すると共に、管腔の組織Tの表面または組織Tの内部で反射した光を再度屈曲させて光ファイバ122内に戻すものである。マイクロミラー124は光ファイバ122と一体となっており、モータ304によって光ファイバ122を回転させると、マイクロミラー124から出射する光の方向は、マイクロミラー124と交差し且つ光ファイバ122の軸に垂直な面内で周期的に変動する。すなわちモータ304を駆動することによって、円周方向の走査を行うことができる。
【0021】
光学駆動部200には、低コヒーレント光源204、ファイバ干渉計206、信号処理回路208、供給用光ファイバ226、参照用光ファイバ222、レンズ212、ダハミラー214が内蔵されている。OCTプローブ100の光ファイバ122に供給される低コヒーレント光は、低コヒーレント光源204によって生成される。低コヒーレント光源204が生成する低コヒーレント光は、供給用光ファイバ226を介してファイバ干渉計206にまず送られる。ファイバ干渉計206は、ハーフミラー等を用いて供給された低コヒーレント光を2つの光線に分け、その一方を物体光としてプローブ用光ファイバ224に送り、他方を参照光として参照用光ファイバ222に送る。
【0022】
前述のように、プローブ用光ファイバ224に送られた物体光は患者インターフェースユニット300のロータリージョイント302を介してOCTプローブ100の光ファイバ122に送られる。そして、管腔の生体組織Tの表面または内部で反射した物体光は光ファイバ122、ロータリージョイント302、プローブ用光ファイバ224を介してファイバ干渉計206に戻る。
【0023】
また、参照用光ファイバ222に送られる参照光は、参照用光ファイバ222の先端から出射してレンズ212に入射する。このレンズ212によって参照光は平行光となる。すなわち、レンズ212は往路においてはコリメートレンズとして機能する。レンズ212から出射した参照光は、ダハミラー214によって折り返され、再びレンズ212に入射する。レンズ212はダハミラー214からの参照光を集光して参照用光ファイバ222の先端に入射させる。すなわち、復路においては、レンズ212は集光レンズとして機能する。そして、参照用光ファイバ222に戻された参照光はファイバ干渉計206に戻る。
【0024】
ファイバ干渉計206はプローブ用光ファイバ224から戻ってきた物体光と、参照用光ファイバ222から戻ってきた参照光とを干渉させ、干渉縞の挙動を計測する。この計測結果は物体光の光路長と、参照光の光路長との差に基づいたものである。これによって、生体組織Tのどの部分でどの程度物体光の反射が起こっているのかを検出することができる。すなわち、ファイバ干渉計206、低コヒーレント光源204、供給用光ファイバ226、参照用光ファイバ222、レンズ212、ダハミラー214、プローブ用光ファイバ224、OCTプローブ100の光ファイバ122は、全体としてマイケルソン干渉計を構成していることになる。なお、ダハミラー214はレンズ212に離接する方向(図1中白抜き矢印部分)に移動可能に構成されている。ダハミラー214を移動させることによって、参照光の光路長を変動させることができる。これによって、生体組織Tの深さ方向の走査を行うことができる。
【0025】
このように、本実施形態のOCTシステム1においては、周方向と深さ方向の走査が出来るようになっているので、走査を行って得られたファイバ干渉計206の一連の計測結果を用いて数値演算を行うことによって、OCTプローブ100の光ファイバ122の先端を通り且つ光ファイバの軸に垂直な面における断層像を演算し、出力することができる。具体的には、ファイバ干渉計による計測結果は信号処理回路208に送られ、信号処理回路208が数値演算を行って断層像を作成する。生成された断層像のデータは表示部400に送られる。本実施形態においては、表示部400は光学駆動部200の信号処理回路208と接続されたPC402と、このPC402に接続されたモニタ404とを有し、PC402は断層像を画像としてモニタ404に表示させる。
【0026】
以上のように、本実施形態のOCTシステム1を用いることによって、生体組織の断層像を観察することが出来るようになる。なお、低コヒーレント光源204の点灯/消灯、ダハミラー214及び患者インターフェースユニット300のモータ304の駆動や、信号処理回路208の制御は、光学駆動部200に内蔵されているコントローラ202によって成される。
【0027】
次いで、本実施形態のOCTプローブについて説明する。図2はOCTプローブ100の側面図である。図2に示されているように、OCTプローブ100は、患者側インターフェースと接続される基部102と、管腔内に挿入されるチューブ部130とを有する。このチューブ部は夫々剛性の異なる4つの部分から構成されている。すなわち、基端側から先端側(図2中左から右に向かう方向)に向かって、基端部132、基端側中間部134、先端側中間部136、及び先端部138が形成されている。チューブ部130の剛性は、先端部138、先端側中間部136、基端側中間部134、基端部132の順に大きくなっている。すなわち、チューブ部130のうち、先端部138が最も撓みやすく、基端部132が最も撓みにくい。
【0028】
チューブ部130の具体的な構成に付き、以下説明する。図3は、本実施形態のチューブ部130の側断面図である。図3に示されるように、基端部132は、基端パイプ142を基端側中間パイプ144の基端部に根本まで差し込まれることによって形成されている。基端側中間パイプ144の長さは、基端パイプ142に比べて充分に長く、基端側中間パイプ144のうち、基端パイプ142が差し込まれていない部分が基端側中間部134となる。基端側中間パイプ144の先端には、先端側中間パイプ146が差し込まれており、この先端側中間パイプ146が先端側中間部136を構成する。先端側中間パイプ146の先端部には、先端チューブ148が差し込まれており、この先端チューブ148が先端部138となる。なお、基端パイプ142、基端側中間パイプ144、先端側中間パイプ146、先端チューブ148は共に円筒形状の部材である。また、基端パイプ142の材料はステンレス鋼であり、基端側中間パイプ144、先端側中間パイプ146、先端チューブ148は共にポリアミド系エンジニアリングプラスチックである。
【0029】
なお、基端パイプ142と基端側中間パイプ144、基端側中間パイプ144と先端側中間パイプ146、先端側中間パイプ146と先端チューブ148とは、夫々接着剤によって接合されている。また、基端パイプ142の外径、先端側中間パイプ146の外径と基端側中間パイプの内径は略等しく、且つ先端側中間パイプ146の内径は先端チューブの外径に略等しい。また、先端チューブ148の先端は塞がれており、OCTによる断層像取得時に体液が先端チューブ148の中に入らないようになっている。
【0030】
このように、本実施形態においては、基端パイプ142と先端チューブ148との間に基端側中間パイプ144及び先端側中間パイプ146が設けられている。このため、基端パイプ142の先端に直接先端チューブ148が設けられているような従来の構成と異なり、曲げ応力がOCTプローブ100に加わった時の応力集中が分散されることになり、外部からOCTプローブ100に力が加わっても、容易には破損しないようになっている。また、外部からOCTプローブ100に力が加わったときの先端チューブ148の基端部の曲率半径があまり小さくならず、OCTプローブ100が多少撓んだ状態であっても光ファイバをスムーズに回転させることができる。
【0031】
特に、基端側中間パイプ144の断面二次モーメントとヤング率との積が基端パイプ142の断面二次モーメントとヤング率との積の15〜25%であり、先端側中間パイプ146の断面二次モーメントとヤング率との積が基端側中間パイプ144の断面二次モーメントとヤング率との積の55〜65%であり、先端チューブ148の断面二次モーメントとヤング率との積が前記先端側中間パイプ146の断面二次モーメントとヤング率との積の3〜8%である場合に、先端チューブ148の基端部の曲率半径の低下が効果的に抑えられることが確認されている。
【実施例】
【0032】
上記の効果を確認するため、以下のようなモデルを用いてOCTプローブの撓み量の検討を行った。
【0033】
[実施例のモデル]
図2を参照して、実施例のOCTプローブの寸法及び物性に付き説明する。実施例においては、基端部132の長さはlであり、基端部132と基端側中間部134の長さの和はlであり、基端部132と基端側中間部134と先端側中間部136の長さの和はlである。また、実施例のモデルにおいては、チューブ部130の基端側を原点として距離l離れた位置に、曲げ荷重Wが加わるものとする。なお、l>lであり、曲げ荷重は先端部138に加わる。
【0034】
また、図3に示されるように、基端側中間パイプ144の外径はdであり、基端側中間パイプ144の内径及び基端パイプ142の外径及び先端側中間パイプ146の外径は共にdであり、基端パイプ142の内径はdであり、先端側中間パイプ146の内径及び先端チューブ148の外径は共にdであり、先端チューブ148の内径はdである。
【0035】
実施例のモデルにおいては、チューブ部130が基端側を固定端とする片持ちばりであると見なして、基端部132、基端側中間部134、先端側中間部136及び先端部138の撓み量w、w、w及びwを計算する。このモデルにおいては、撓み量w、w、w及びwは数1の条件を満たすことが知られている。
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、xは固定端を原点とするはりの長さ方向に沿った座標である。また、C21、C22、C31、C32、C41及びC42のそれぞれは境界条件から定まる定数である。また、定数Bs、Bs、Bs、Bsはそれぞれ基端部132、基端側中間部134、先端側中間部136及び先端部138の曲げ剛性を示す定数である。より具体的には、Bs、Bs、Bs、Bsは、基端パイプ142、基端側中間パイプ144、先端側中間パイプ146及び先端チューブ148のヤング率と、寸法とを考慮して求められる。本実施例においては、基端パイプ142のヤング率はE=200[GPa]であり、基端側中間パイプ144、先端側中間パイプ146及び先端チューブ148のヤング率はE=20[GPa]である。この時、Bs、Bs、Bs、Bsは数2によって算出される。
【0038】
【数2】

【0039】
ここで、以下の計算においては式を見やすくするため、W/Bs=A、W/Bs=A、W/Bs=A、W/Bs=Aとする。
【0040】
x=lの時、w=w、dw/dx=dw/dxが成立する。また、x=lの時、w=w、dw/dx=dw/dxが成立する。同様に、x=lの時、w=w、dw/dx=dw/dxが成立する。これらの境界条件から定数C21、C22、C31、C32、C41及びC42は数3の値をとることが分る。
【0041】
【数3】

【0042】
以上求めた定数を数1に代入し、且つ所望の値を数1のxに代入することにより、0≦x≦lの範囲内での所望の位置における撓み量を算出することができる。
【0043】
[比較例]
図4に従来のOCTプローブに相当する比較例を示す。比較例のOCTプローブ1100のチューブ部1130は、本実施形態の基端パイプ142(図3)と同様の材料及び断面形状を有する基端パイプ1142のみから構成された基端部1132と、本実施形態の先端チューブ148(図3)と同様の材料及び寸法の先端チューブ1148のみから構成された先端部1138によって形成される。すなわち、基端パイプ1142の外径及び内径は夫々d及びdである。また、先端チューブ1148の外径及び内径は夫々d及びdである。ここで、基端パイプ1142の先端側に先端チューブ1148の基端側を差し込んで接着することによって、比較例のチューブ部1130が形成される。なお、比較例における基端部1132の全長はlである。すなわち、基端部1132の全長は、実施例における基端部132と基端側中間部134と先端側中間部136の長さの和に等しい。また、比較例のモデルにおいても、チューブ部1130の基端側を原点として距離l離れた位置に、曲げ荷重Wが加わるものとする。
【0044】
比較例のモデルにおいても、チューブ部1130が基端側を固定端とする片持ちばりであると見なして、基端部1132及び先端部1138の撓み量w及びwを計算する。このモデルにおいては、撓み量w及びwは数4の条件を満たすことが知られている。
【0045】
【数4】

【0046】
ここで、xは固定端を原点とするはりの長さ方向に沿った座標である。また、C及びCのそれぞれは境界条件から定まる定数である。また、定数BsおよびBsはそれぞれ基端部1132及び先端部1138の曲げ剛性を示す定数である。Bs、Bsは数5によって算出される。
【0047】
【数5】

【0048】
ここで、以下の計算においては式を見やすくするため、W/Bs=A、W/Bs=Aとする。
【0049】
x=lの時、w=w、dw/dx=dw/dxが成立する。これらの境界条件から定数C及びCは数6の値をとることが分る。
【0050】
【数6】

【0051】
以上求めた定数を数4に代入し、且つ所望の値を数4のxに代入することにより、0≦x≦lの範囲内での所望の位置における撓み量を算出することができる。
【0052】
[実施例と比較例との比較]
比較に当たって、d〜d、l〜l、Wを表1に示す値に定めた。
【0053】
【表1】

【0054】
このような条件下で撓み量を演算したところ、図5の様な結果となった。すなわち、実施例は比較例と比べて撓み量は全体的に増大する傾向にあるものの、x=lにおいても15mm程度であり、許容範囲内であるといえる。一方、比較例のx=l付近(すなわち先端チューブの基端付近)に発生している急激な(すなわち曲率半径の小さい)カーブの程度が、実施例においては軽減されていることがわかる。従って、比較例と比べて実施例は、光ファイバの回転のしやすさという点において改善されていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態のOCTシステムのブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態のOCTプローブの側面図である。
【図3】本発明の実施の形態のOCTプローブのチューブ部の側断面図である。
【図4】比較例のOCTプローブの側面図である。
【図5】実施例と比較例のOCTプローブの撓み量の比較結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0056】
1 OCTシステム
100 OCTプローブ
122 光ファイバ
124 マイクロミラー
130 チューブ部
132 基端部
134 基端側中間部
136 先端側中間部
138 先端部
142 基端パイプ
144 基端側中間パイプ
146 先端側中間パイプ
148 先端チューブ
200 光学駆動部
300 患者インターフェースユニット
400 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の基端パイプと、
前記基端パイプよりも剛性の低い先端チューブと、
前記基端パイプ及び先端チューブと略同軸となるように前記基端パイプの少なくとも先端と前記先端チューブの基端との間に接続される、前記基端パイプと前記先端チューブとの中間の剛性を有する中間パイプ部と、
前記基端パイプ、中間パイプ部及び先端チューブの中に回転可能に挿通される光ファイバと、
を有する、OCTプローブ。
【請求項2】
前記中間パイプ部の少なくとも基端側の外径は、前記基端パイプの外径より大きく、前記中間パイプの基端側に前記基端パイプの少なくとも先端が差し込まれることによって、前記基端パイプと前記中間パイプ部とが接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のOCTプローブ。
【請求項3】
前記基端パイプのほぼ全体が前記中間パイプ部の中に収められる、ことを特徴とする請求項2に記載のOCTプローブ。
【請求項4】
前記中間パイプ部は、夫々剛性の異なる複数のパイプを、基端側から先端側に向かって段階的に剛性が低下するように接続することによって形成されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のOCTプローブ。
【請求項5】
前記中間パイプ部は、前記基端パイプと接続される基端側中間パイプに先端チューブと接続される先端側中間パイプを接続することによって形成されており、
前記基端側中間パイプの断面二次モーメントとヤング率との積は、前記基端パイプの断面二次モーメントとヤング率との積の15〜25%であり、
前記先端側中間パイプの断面二次モーメントとヤング率との積は、前記基端側中間パイプの断面二次モーメントとヤング率との積の55〜65%であり、
前記先端チューブの断面二次モーメントとヤング率との積は、前記先端側中間パイプの断面二次モーメントとヤング率との積の3〜8%である、
ことを特徴とする請求項4に記載のOCTプローブ。
【請求項6】
前記中間パイプ部がポリアミド系樹脂から形成されている、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のOCTプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−136686(P2008−136686A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326268(P2006−326268)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】