説明

PDT用内視鏡

【課題】被検部のカラー撮像とPDTによる治療が行えるにも拘わらず、カラー撮像された映像の色再現性が良く、また、PDTによる治療がなされている様子もハレーションを起こすことなく観察できるPDT用内視鏡を、提供する。
【解決手段】内視鏡11の先端には、配光レンズ16,メイン対物レンズ15及びサブ対物レンズ50が嵌め込まれているとともに、処置具チャンネル11eが開口している。内視鏡11の内部には、体配光レンズ16の背後からコネクタ11dまで、ライトガイド20が引き通されている。メイン対物レンズ15による像が形成される位置には、撮像素子17が配置されている。この撮像素子17からの出力線は、内視鏡11の内部を、コネクタ11dまで引き通されている。サブ対物レンズ50による像が形成される位置から操作部内部までイメージガイド51が引き通されている。結像レンズ52は、イメージガイド51の基端面に表れた像を、撮像素子52の撮像面に再結像させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡を通じて撮像した腫瘍部位の画像をTVモニター上に表示しながら、同内視鏡の処置具チャンネルに挿通されたレーザー照射プローブを用いて患部をレーザ治療するために用いられる内視鏡に、関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡を通じて患者の体腔内に導入されたレーザー光を用いて、当該患者の体腔内壁に生じた腫瘍部位を治療する診断・治療法として、PDD(Photodynamic Diagnosis:光線力学的診断)及びPDT(Photodynamic Therapy:光線力学的治療)が開発されている。これらPDD及びPDTは、例えばヘマトポルフィリン誘導体のような物質が腫瘍に親和性を有するのに加えて、特定波長の光(以下、「PDD用レーザー光」という)によって励起されると特定波長の蛍光を発するとともに、特定波長のレーザー光(以下、「PDT用レーザー光」という)を照射されると殺細胞作用を生じることを利用した診断・治療法である(なお、このような性質を持った物質は、一般的に、「腫瘍親和性光感受性物質」と呼ばれている)。
【0003】
具体的には、PDD及びPDTによる診断・治療を行う場合には、術者は、予め患者に腫瘍親和性光感受性物質を投与して、当該患者の腫瘍部位にこの腫瘍親和性光感受性物質を蓄積させておく。しかる後に、患者の体腔内に電子内視鏡の体腔内挿入部を挿入して、腫瘍部位と思しき部位に上記特定波長のPDD用レーザー光を照射する。すると、腫瘍部位に蓄積した腫瘍親和性光感受性物質が蛍光を発するので、この体腔内挿入部の先端に組み込まれた対物レンズを通じて撮像素子によって撮像された映像内では、腫瘍部位のみが明るく映り込むことになる。このようにして腫瘍部位を確認した術者は、次に、この電子内視鏡の処置具チャンネルにレーザー照射プローブを挿入して、蛍光を発していた腫瘍部位にその先端を当て付けて、このレーザー照射プローブを通じてPDT用レーザー光を照射する。すると、腫瘍部位に蓄積している腫瘍親和性光感受性物質は、PDT用レーザー光の作用によって一重項酸素などの活性酸素を生成して、腫瘍部位の細胞に対して殺細胞作用を及ぼすのである。
【0004】
このようにPDT用レーザー光を照射している間、術者は、PDT用レーザー光の照射対象部位からレーザー照射プローブの先端がずれないように、TVモニター上に表示されている患部の様子を監視し続けなければならない。
【0005】
但し、PDT用レーザー光は高エネルギー光であるので、その反射光が対物レンズを通じて撮像素子に入射すると、撮像素子を構成する各画素に蓄積する電荷が広範囲に亘って飽和してしまうことにより、TVモニター上に表示される映像にハレーションが生じてしまって、肝心の腫瘍部位もレーザー照射プローブの先端も見えなくなってしまうという問題がある。この問題を解決する対策としては、例えば、PDT用レーザー光と同じ波長の波長帯域の光のみを遮断するバンドパスフィルターを対物レンズと撮像素子との間の光路中に介在させることが考えられる。
【特許文献1】特開2000−189527号公報
【特許文献2】特開2002−153414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、PDT用レーザー光として機能する光の波長は、腫瘍親和性光感受性物質の物性に依存するところ、現在発見されている腫瘍親和性光感受性物質に対して活性酸素生成作用を生じさせるレーザー光の波長は、何れの物質に対するもの(630nm,664nm)も、可視帯域に含まれている。従って、このような帯域の光を遮断するバンドパスフィルターを対物レンズと撮像素子との間に介在させると、撮像素子によって撮像される映像は、遮断される帯域の情報を含まない疑似カラー映像となってしまう。しかも、上述した630nm,664nmを含む赤色帯域は、内視鏡検査において重要な情報源であるヘモグロビンの色を含んでいるので、撮像される映像は、血管の状態や出血の状態すら写り込まないものとならざるを得ない。結局、かかるバンドパスフィルターを対物レンズと撮像素子との間に組み込んだ内視鏡は、PDT用レーザー光の照射用にしか利用できないものとなってしまうのである。
【0007】
そのため、従来のPDTによる治療の現場では、通常観察及びPDD診断に用いる通常の蛍光観察用電子内視鏡システム(励起光として紫外光を用いるとともに電子内視鏡の対物レンズと撮像素子との間に紫外光を遮断する励起光カットフィルターを介在させたもの)に加えて、PDT専用に、接眼部にPDT用レーザー光を遮断するフィルターを装着した従前のファイバースコープを用いていた。即ち、術者は、蛍光観察用電子内視鏡を用いて通常観察又はPDDによる診断を行って腫瘍部位を突き止めると、突き止めた腫瘍部位にマーキングを残してその体腔内挿入部を被検者の体腔から引き抜き、改めてファイバースコープを被検者の体腔内に挿入し、マーキングを手がかりに、処置具チャンネルに挿通させたレーザー照射プローブの先端を腫瘍部位に押し付け、PDT用レーザー光を腫瘍部位に照射するのである。
【0008】
このように、従来のPDTによる治療の現場では、被検部を観察する状態からPDTに移行する際に内視鏡を挿し換えなければならなかったので、患者に体腔内挿入管の挿抜に伴う苦痛を与え、また、施術の時間が長くなる事に依り患者に負担が掛かるという問題が生じていた。
【0009】
そこで、本発明は、被検部のカラー撮像とPDTによる治療が行えるにも拘わらず、カラー撮像された映像の色再現性が良く、また、PDTによる治療がなされている様子もハレーションを起こすことなく被検部を観察できるPDT用内視鏡の提供を、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために案出された本発明によるPDT用内視鏡は、腫瘍親和性光感受性物質が蓄積した被検者の腫瘍部位に対してPDT用レーザー光を照射することによって治療を行うために用いられるPDT用内視鏡であって、夫々第1及び第2の対物レンズが嵌め込まれた二つの撮像窓と配光レンズが嵌め込まれた照明窓が先端に形成されているとともに、全体として長尺状に形成された体腔内挿入部と、当該体腔内挿入部の基端に設けられた操作部と、前記体腔内挿入部の内部における前記第1の対物レンズによる結像位置に配置された撮像素子と、前記体腔内挿入部の内部における前記第2の対物レンズによる結像位置にその先端面が配置されているとともに、当該体腔内挿入部内を前記操作部まで引き通されたイメージガイドと、前記イメージガイドの基端面に表れた像を観察させるための観察光学系と、前記第2の対物レンズに入射した光のうち、前記腫瘍親和性光感受性物質に対するPDT用レーザー光と同じ波長帯の光を遮断するレーザー光カットフィルタと、前記体腔内挿入部の内部における前記配光レンズの背後にその先端面が配置されているとともに、当該体腔内挿入部内を前記操作部まで引き通されたライトガイドと、前記体腔内挿入部内を、その先端から前記操作部の側面まで引き通されることにより、前記体腔内挿入部の先端及び前記操作部の側面に夫々開口しているとともに、PDT用レーザー光を導光するレーザー照射プローブが挿通され得る内径を有する処置具チャンネルとを、備えたことを特徴とする。
【0011】
このように構成された本発明のPDT用内視鏡におけるライトガイドの基端を光源装置に接続し、撮像装置から出力される画像信号を画像プロセッサ装置に接続すれば、術者は、このPDT用内視鏡の体腔内挿入部を被検者の体腔内に挿入することにより、ライトガイドを通じて導入された照明光によって照らされた被検部の様子を、撮像素子によって得られた画像信号に基づいて画像プロセッサ装置がディスプレイ上に表示させた画像に基づいて、観察される。このとき、第1の対物レンズを介して撮像素子に至る光路上には、可視帯域の光を除去するためのバンドパスフィルターは設けられていない。従って、ディスプレイ上に表示される映像は色再現性に優れたカラー画像であるので、血管や出血に関する情報も表れるので、診断の用途には支障がない。また、この診断を通じて体腔内に腫瘍を発見した場合には、術者は、被検者の体腔内から体腔内挿入部を引き抜くことなく、操作部側の開口から処置具チャンネル内にレーザー照射プローブを挿入し、このレーザー照射プローブを通じて、腫瘍部位にPDT用レーザー光を照射する。これにより、PDTによる治療がなされるのであるが、この際に体腔内壁にて反射した照明光とともにPDT用レーザー光が第1の対物レンズに入射してしまうので、撮像素子によって撮像される画像にはハレーションが生じ得る。しかしながら、これらの光は、第2の対物レンズにも入射して被検部の像を結び、この像はイメージガイドを通じて操作部内まで伝送される。このとき、第2の対物レンズに入射した光のうち、PDT用レーザー光はレーザーカットフィルタにより除去されている。よって、術者は、観察光学系を介して観察すれば、被検部の様子を視認することができ、プローブの先端が適切な位置及び方向にあることを確認することができる。なお、観察光学系を介して観察される被検部の像は、レーザーカットフィルタによりPDT用レーザー光と同じ波長成分を除去されたものであるので、血管や出血についての情報が含まれていない。しかしながら、術者は、レーザー照射プローブの位置及び方向を認識できさえすればPDTの治療を続行でき、PDT用レーザー光の照射を停止しさえすれば、直ちに、被検部のカラー画像がディスプレイ上で視認できるようになるので、支障はない。
【0012】
本発明において、観察光学系は、従前のファイバースコープにおいて用いられている接眼レンズであっても良いし、イメージガイドの基端面に表れた像を第2の撮像素子に結像させる結像レンズであっても良い。
【0013】
また、白色光から切り換えて、生体組織中の蛍光物質又は被検者に投与された腫瘍親和性光感受性物質を励起させて蛍光を生じさせる励起光を、ライトガイドを通じて照明窓から照射できるようになっていても良い。その場合、撮像素子の撮像面上に設けられるカラーフィルターが励起光をカットする特性を有しているか別途第1の対物レンズに入射する光から励起光を除去するフィルターが設けられていれば、撮像素子によって撮像されてディスプレイ上に表示される画像は、被検部における腫瘍部位の分布を示す蛍光画像となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように構成された本発明のPDT用内視鏡によると、被検部のカラー撮像とPDTによる治療が行えるにも拘わらず、カラー撮像された映像の色再現性が良く、また、PDTによる治療がなされている様子もハレーションを起こすことなく観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて、本発明を実施するための形態について、説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例である内視鏡システムの外観図である。図1に示されるように、この内視鏡システム10は、蛍光観察内視鏡11,光源プロセッサ装置12,PDT用レーザ装置13,レーザー照射プローブ14及び、TVモニター60を、備えている。
【0017】
図1及び図2に示される蛍光観察内視鏡11は、具体的には、体腔内に挿入されるために細長く形成されている体腔内挿入部11a,その体腔内挿入部11aの先端部分を湾曲操作するためのアングルノブや切換スイッチ56等を有する操作部11b,操作部11bと光源プロセッサ装置12とを接続するための可撓管11c,及び、この可撓管11cの基端に設けられたコネクタ11dを、備えている。そして、体腔内挿入部11aの先端面には、配光レンズ16が組み込まれた照明窓と、メイン対物レンズ15,サブ対物レンズ50が夫々嵌め込まれたメイン撮影窓及びサブ撮影窓とが、形成されている。そして、この体腔内挿入部11aの内部には、メイン対物レンズ(第1の対物レンズ)15によって形成された被検部の像を撮影して画像信号に変換する電子内視鏡撮像素子(カラーCCD)17,メイン対物レンズ15を透過した光から励起光を除去するための励起光カットフィルタ18が、組み込まれている。なお、この励起光カットフィルタ18は、励起光のみをカットして他の可視帯域の光を透過させる機能を有せば足りるので、電子内視鏡撮像素子17の各画素上に被せられるカラーフィルターによって代用されても良い。
【0018】
電子内視鏡撮像素子17から出力された画像信号を伝送するための画像信号ケーブル19は、体腔内挿入部11a,操作部11b及び可撓管11c内を引き通されて、コネクタ11dの端面から突出する電気コネクタ11gに含まれる何れかの端子に導通している。
【0019】
この画像信号ケーブル19と並行して、体腔内挿入部11a,操作部11b及び可撓管11c内には、多数の光ファイバを束ねてなるライトガイドファイババンドル(以下、単に「ライトガイド」という)20が、引き通されている。このライトガイド20の先端は、体腔内挿入部11aの先端部内において配光レンズ16に対向し、その基端は、コネクタ11dの端面から突出した金属製のパイプである口金21内に、挿入されて固定されている。
【0020】
さらに、これら信号ケーブル19及びライトガイド20と並行して、体腔内挿入部11aから操作部11bまで、イメージガイドファイババンドル(以下、単に「イメージガイド」という)51が引き通されており、その先端は、体腔内挿入部11aの先端部内におけるサブ対物レンズ(第2の対物レンズ)50が被検部の像を結ぶ位置に配置されている。このイメージガイド51は、多数本の光ファイバーを、その両端での並び位置が同じとなるように両端のみで束ねてなるものである。従って、イメージガイド51の解像度は、光ファイバーの本数に依存するが、体腔内挿入部11aの大径化を極力抑えるべくイメージガイド51自身の外径を細くするために、その解像度(即ち、光ファイバーの本数)は、撮像素子17の解像度(即ち、画素数)よりも低く(少なく)なっている。
【0021】
操作部11b内におけるイメージガイド51の基端面の後方には、順番に、結像レンズ52,レーザーカットフィルタ53及びイメージガイド撮像素子54が、配置されている。観察光学系としての結像レンズ52は、イメージガイド51の基端面に表れた被検部の像をイメージガイド撮像素子54の撮像面上に再結像するレンズである。また、レーザーカットフィルタ53は、後述するPDT用レーザー装置13が発するレーザー光と同じ波長帯域の光のみを遮断するバンドパスフィルターである。なお、PDT用レーザー装置13が発すべきレーザー光の波長は、PDTに用いられる腫瘍親和性光感受性物質(例えば、ヘマトポルフィリン)の種類毎に異なるので、レーザー光の波長(630nm,664nm等)に合わせて、遮断する波長帯域が相互に異なる複数のレーザーカットフィルター53を交換可能となっていることが望ましい。また、第2の撮像素子としてのイメージガイド撮像素子54は、結像レンズ52によって結像されたイメージガイド51の基端面上の像を撮像し、画像信号に変換する。
【0022】
イメージガイド撮像素子54から出力された画像信号を伝送するための画像信号ケーブル55は、操作部11b及び可撓管11c内を引き通されて、コネクタ11dの端面から突出する電気コネクタ11fに含まれる他の何れかの端子に導通している。
【0023】
操作部11b上に設けられた切換スイッチ56は、そのオンオフに応じた信号を、信号線57に印加する。この信号線57は、操作部11b及び可撓管11c内を引き通されて、コネクタ11dの端面から突出する電気コネクタ11gに含まれる他の何れかの電極に導通している。
【0024】
また、体腔内挿入部11a内には、イメージガイド51と並行に、処置具チャンネル11eが引き通されている。この処置具チャンネル11eの先端は、体腔内挿入部11aの先端面に開口し、その基端は、操作部11bの側面に突出して設けられた鉗子口11fに連通している。
【0025】
この処置具チャンネル11eには、各種の処置具を挿入可能であるが、その一つが、PDT用レーザー装置13に接続されているレーザー照射プローブ14である。即ち、この処理具チャンネル11eは、PDT用レーザー光を導光するレーザー照射プローブ14が挿通され得る内径を有している。
【0026】
レーザー照射プローブ14は、多数の光ファイバーを束ねた繊維束若しくは単繊維から構成される。但し、PDT用のレーザー光としては、可視帯域のレーザー光が用いられるので、レーザー照射プローブ14を構成する光ファイバーは、通常のガラス製でも良い。
【0027】
PDT用レーザー装置13は、光源プロセッサ装置12を構成する後述するシステムコントロール回路40に接続され、このシステムコントロール回路40からの指示によって励起する図示せぬレーザー光源を内蔵し、このレーザー光源が励起することによって発したPDT用レーザー光を、図示せぬ集光光学系を通じて、レーザー照射プローブ14の基端面に導入する。このようにして、レーザー照射プローブ14の基端面に導入されたPDT用レーザー光は、このレーザー照射プローブ14によって導光されて、その先端面から射出される。
【0028】
光源プロセッサ装置12は、内視鏡11のライトガイド20の基端面に白色光及び励起光を選択的に導入する機能,PDT用レーザー装置13を制御することによってPDT用レーザ装置13からレーザー照射プローブ14にPDT用レーザー光を導入させる機能,及び、蛍光観察内視鏡11の図示せぬ端子を通じて撮像素子17から受信した画像信号に対して画像処理を行うことによって白色光導入時におけるビデオ信号を生成してTVモニター60へ出力する機能を、基本的な機能として備えている。
【0029】
光源プロセッサ装置12の筐体の正面のパネルには、内視鏡11の口金21がその外面側から挿入されて保持される貫通孔であるソケット12aが、設けられている。このソケット12aの貫通孔は、光源プロセッサ装置12の内部空間に通じている。この光源プロセッサ装置12の内部空間内には、ソケット12aの中心線(即ち、ソケット12aに挿入された口金21中のライトガイド20の中心軸の延長線)に沿って順番に、集光レンズ28,ビームスプリッタ27,赤外カットフィルタ26,シャッタ25及び白色光光源33が、配置されている。
【0030】
白色光光源33は、白色光用電源回路41によって電源電流が供給されて可視帯域の白色光を発する電球(図示略)と、この電球から発散光として発した白色光を平行光として反射するリフレクター(図示略)とから構成されている。そして、白色光光源33は、白色光を、集光レンズ28へ向けてその光軸に沿って射出するように、配置されている。
【0031】
シャッタ25は、白色光光源33から射出された白色光の光路に挿入され、白色光の進行を断続させる。
【0032】
赤外カットフィルタ26は、白色光光源33から発した白色光から、赤外成分を除去するためのバンドパスフィルターである。
【0033】
ビームスプリッタ27は、図示せぬスライド機構によって、集光レンズ28の光軸に対して45度傾いた状態を維持しつつ同光軸に直交する方向にのみ移動可能に保持されており、入射角45度で入射した励起光の波長帯域の光を反射するとともに、入射角45度で入射した上記励起光の波長帯域を除く可視光帯域の光を透過する。このビームスプリッタ27は、かかるダイクロイックミラーの他、偏光ビームスプリッタでも、部分反射鏡でも良い。ビームスプリッタドライブ回路23は、図示せぬスライド機構を駆動することにより、ビームスプリッタ27を、白色光の光路外に退避した位置(通常観察位置)と、白色光の光路中に侵入させた位置(蛍光観察位置)との間で、移動させる。
【0034】
集光レンズ28は、その光軸に沿って入射した平行光を、ソケット12aに挿入された口金21内に保持されているライトガイド20の基端面に、収束させる。このように集光レンズ28の光軸に沿ってこの集光レンズ28に入射しうる平行光としては、ビームスプリッタ27を透過した白色光光源33からの白色光の他、ビームスプリッタ27によって反射された光がありうる。即ち、ビームスプリッタ27での反射により、集光レンズ28の光軸が、光源側において直角に折り曲げられているのである。このように折り曲げられた集光レンズ28の光軸上には、ビームスプリッタ27側から順番に、励起光コリメートレンズ37及び励起光光源38が、配置されている。
【0035】
励起光光源38は、励起光用電源回路43から駆動電流を供給されることにより、励起光を、発散光として励起光コリメートレンズ37に向けて射出する。
【0036】
励起光コリメートレンズ37は、励起光光源38から発散光として発っせられた励起光を平行光に変換する正レンズである。
【0037】
また、光源プロセッサ装置12の筐体の正面側パネルには、内視鏡11の口金21がソケット12aに挿入された状態において内視鏡11の電気コネクタ11fに設けられた各端子と夫々導通する多数の端子からなる電気ソケット12bが、設けられている。
【0038】
上述した画像信号ケーブル19,55及び信号線57は、電気ソケット12bを構成する個々の端子を通じて、システムコントロール回路40に接続される。このシステムコントロール回路40には、更に、上述したPDT用レーザ装置13,白色光用電源回路41,ビームスプリッタドライブ回路23,励起光用電源回路43及びシャッタ25の他、電子内視鏡撮像素子用CCU(Camera Control Unit)39,イメージガイド撮像素子用CCU36及びセレクタ35が、接続されている。
【0039】
電子内視鏡撮像素子17からの画像信号は、システムコントロール回路40を通じて電子内視鏡撮像素子用CCU39に入力される。この電子内視鏡撮像素子用CCU39は、入力された画像信号に対して所定の処理を施すことにより、システムコントロール回路40から通常観察モードでの動作を指示されている間は、被検部の可視像(白色光の体腔内壁表面での反射光による像)を単独で表示させるためのビデオ信号を生成し、セレクター35へ向けて出力する。また、PDDモードでの動作を指示されている間は、画像信号を、被検部に白色光が照射されている間に得られたフィールドと、被検部に励起光が照射されている間に得られたフィールドとに分離し、前者に基づく被検部の可視像と後者に基づく被検部の蛍光像(励起光によって励起された腫瘍親和性光感受性物質が発する蛍光からなる像)とを並べて表示させるためのビデオ信号を生成し、セレクター35に向けて出力する。
【0040】
イメージガイド撮像素子54からの画像信号は、システムコントロール回路40を通じてイメージガイド撮像素子用CCU36に入力される。このイメージガイド撮像素子用CCU36は、入力された画像信号を処理することにより被検部の可視像(PDT用レーザー光と同じ波長成分が欠落した可視帯域全域の光からなる疑似カラー像)を単独で表示させるためのビデオ信号を生成し、セレクター35へ向けて出力する。
【0041】
セレクター35は、システムコントロール回路40からの指示に応じて、電子内視鏡撮像素子用CCU39から出力されたビデオ信号及びイメージガイド撮像素子用CCU36から出力されたビデオ信号のうち何れか一方を選択して、TVモニター60へ出力する。
【0042】
TVモニター60は、入力されたビデオ信号に基づいて、動画を表示する。
【0043】
システムコントロール回路40は、切り換えスイッチ56からオン信号が入力される毎に、光源プロセッサ装置12全体の動作モードを、通常観察モード,PDDモード,PDTモードに、切り換える。なお、切り換えスイッチ56は、光源プロセッサ装置12の筐体の正面側パネルに設けられていても良い。
【0044】
システムコントローラ40は、通常観察モード下においては、白色光源用電源41に対して白色光光源33から白色光を射出させ、シャッタ25を開放するとともに、ビームスプリッタドライブ回路23に対して、ビームスプリッタ27を通常観察位置へ退避させる。すると、白色光光源33から射出された白色光は、ビームスプリッタ27の脇を通過して、直接集光レンズ28に入射し、ライトガイド20及び配光レンズ16を通じて被検部に照射され続ける。この間に電子内視鏡撮像素子17から電子内視鏡撮像素子用CCU39に入力される画像信号は、各フレームにおける両フィールドが、ともに、白色光の反射光により結像された被検部の可視像を示す画像信号(以下、「通常観察画像信号」という)となる。その結果、上述したように、電子内視鏡撮像素子用CCU39は、被検部の可視像(白色光の体腔内壁表面での反射光による像)を単独で表示させるためのビデオ信号を生成する。そして、システムコントロール回路40は、セレクタ35に対して、電子内視鏡撮像素子用CCU39からのビデオ信号を選択させて、TVモニター60上に、被検部の可視像動画を単独で表示させる。
【0045】
また、システムコントローラ40は、PDDモード下においては、白色光源用電源41に対して白色光光源33から白色光を射出させ、また、シャッタ25に対して、各フレームにおける第1フィールドに相当する期間のみ白色光を通過させるとともに第2フィールドに相当する期間のみ白色光を遮断させる。また、ビームスプリッタドライブ回路23に対して、ビームスプリッタ27を蛍光観察位置へ進出させる。さらに、励起光用電源回路43に対して、シャッタ25が閉じている間(各フレームにおける第2フィールドに相当する期間)のみ、励起光光源38から励起光を射出させる。すると、白色光と励起光とが、交互に集光レンズ28に入射し、更にライトガイド20及び配光レンズ16を通じて被検部に照射される。この間に電子内視鏡撮像素子17から電子内視鏡撮像素子用CCU39に入力される画像信号は、各フレームにおける第1フィールドが、通常観察画像信号となり、同第2フィールドが、励起光によって励起された腫瘍親和性光感受性物質から発した蛍光により結像された被検部の蛍光像を示す画像信号(以下、「PDD画像信号」という)となる。その結果、上述したように、電子内視鏡撮像素子用CCU39は、被検部の可視像と蛍光像とを並べて表示させるためのビデオ信号を生成する。そして、システムコントロール回路40は、セレクタ35に対して、電子内視鏡撮像素子用CCU39からのビデオ信号を選択させて、TVモニター60上に、被検部の可視像動画及び蛍光像動画を並べて表示させる。
【0046】
また、システムコントローラ40は、PDTモード下においては、白色光源用電源41に対して白色光光源33から白色光を射出させ、シャッタ25を開放するとともに、ビームスプリッタドライブ回路23に対して、ビームスプリッタ27を通常観察位置へ退避させる。また、PDT用レーザ装置13に対してPDT用レーザー光を、レーザー照射プローブ14の基端に導入する。その結果、被検部に対して、白色光及びPDT用レーザー光が同時に照射されることになる。すると、このPDT用レーザー光の腫瘍親和性光感受性物質に対する作用により、腫瘍部位の細胞を滅却するとともに、その被検部表面での白色光及びPDT用レーザー光の一部が、サブ対物レンズ50に入射して被検部の可視像を結び、この可視像が、イメージガイド51及び結像レンズ52によって伝送される。但し、レーザーカットフィルタ53により、PDT用レーザー光及び白色光中PDT用レーザー光と同じ波長成分のみが除去されるので、白色光中の残りの波長成分のみからなる可視像(疑似カラー像)が、イメージガイド撮像素子54によって撮像されることになる。よって、この間にイメージガイド撮像素子54からイメージガイド撮像素子用CCU36に入力される画像信号は、各フレームにおける両フィールドが、ともに、被検部の疑似カラー像を示す画像信号(以下、「PDT画像信号」という)となる。その結果、上述したように、イメージガイド撮像素子用CCU36は、被検部の疑似カラー像を単独で表示させるためのビデオ信号を生成する。そして、システムコントロール回路40は、セレクタ35に対して、イメージガイド撮像素子用CCU36からのビデオ信号を選択させて、TVモニター60上に、被検部の疑似カラー像動画を表示させる。
【0047】
以上のように構成される本実施形態の内視鏡システムを用いてPDD及びPDTによる検査・治療を行う場合には、術者は、事前に被検者に対してヘマトポルフィリン誘導体等の腫瘍親和性光感受性物質を投与する。そして、この腫瘍親和性光感受性物質が当該被検者の腫瘍部位に十分に蓄積すると、術者は、蛍光観察内視鏡11の切換スイッチ56を適宜操作することによって、光源プロセッサ装置12の動作モードを通常観察モードに設定して(但し、レーザー照射プローブ14は処置具チャンネル11eから抜いたままとする)、蛍光観察内視鏡11の体腔内挿入部11aを、当該腫瘍が生じている体腔内に挿入する。すると、上述したように、この体腔内挿入部11aの照明窓からは白色光が継続的に照射され、TVモニター60上には、可視像の動画が単独で表示される。この際、被写体の表面にて反射した白色光は、その被写体の表面の色に対応した分光特定の光として対物光学系12に入射し、励起光カットフィルタ18を介して電子内視鏡撮像素子17の撮像面に入射する。しかしながら、励起光カットフィルタ18は、可視帯域の光はほぼ全て透過するし、その他に、可視帯域の光を遮断する光学フィルタはメイン対物レンズ15と電子内視鏡撮像素子17との間に設置されていないので、この撮像素子17から出力される通常観察画像信号に基づいてTVモニター60上に表示される可視像は、色再現性に優れたカラー画像となっている。
【0048】
術者は、TVモニター60上に表示されている可視像を見ながら、電子内視鏡11を操作することによって、その体腔内挿入部11aの先端面を腫瘍部位と思しき体腔内壁に対向させる。
【0049】
次に、術者は、切換スイッチ56を適宜操作することによって、光源プロセッサ装置12の照明動作モードをPDDモードに切り換える。すると、上述したように、体腔内挿入部11aの照明窓からは、1フィールドに相当する期間毎に白色光と励起光とが交互に射出され、TVモニター60上には、可視像と蛍光像とが並べて表示される。このうち後者の蛍光像中では、腫瘍部位が特に明るく光って見える。従って、術者は、両画像を見比べることによって、腫瘍部位の位置,大きさ,形状,程度を、正確に認識することができる。
【0050】
しかる後に、術者は、レーザー照射プローブ14を電子内視鏡の鉗子孔11fから処置具チャンネル11cに挿入して、その先端を、腫瘍部位に当て付ける。そして、切換スイッチ56を適宜操作することによって、光源プロセッサ装置12の動作モードをPDTモードに切り換える。すると、上述したように、体腔内挿入部11aの先端面における照明窓から白色光が照射され、同時に、レーザー照射プローブ14の先端からPDT用レーザー光が照射され、TVモニター60上には、レーザー照射プローブ14からレーザー光を腫瘍部位に照射している状態を表す疑似カラー像が表示される。この疑似カラー像には、白色光と比較して強度が強いPDT用レーザー光の成分が含まれていないので、PDTによる治療中の腫瘍部位の様子を、視認することができる。
【0051】
なお、この疑似カラー像には、PDT用レーザー光そのものは写り込んでいないものの、術者は、レーザー照射プローブ14先端の位置及び方向によって、PDT用レーザー光が照射されている箇所を知ることができる。また、この疑似カラー像には、PDT用レーザー光と同じ波長帯域に含まれる血液の情報が含まれておらず、その解像度も低いものであるが、PDT用レーザー光が照射されている部位を確認できれば足りるものであるので、PDT治療のためには支障がない。
【0052】
術者は、PDT治療の効果を確認したいときには、電子内視鏡11の体腔内挿入部11aを引き抜くことなく、そのまま、切換スイッチ56を押下することにより、適宜通常観察モード又はPDDモードに切り換えて、血液の情報を含む可視像又は蛍光像をTVモニター60上に表示させる。術者は、これらの画像を適宜確認して、治療が未完であると判断した場合には、再度PDTモードに切り換えて、PDT用レーザー光の照射を継続し、治療が完了したと判断した場合には、通常観察モードに切り換えた上で、体腔内挿入部11aを体腔内から引き抜いて、施術を終了する。
【0053】
このように、本例によれば、同一の電子内視鏡を用いて、被検部の可視像のTVモニター上への表示,及び、PDT用レーザー光の照射時における被検部のTVモニター上への表示が、可能になる。よって、従来のように、PDT用レーザー光照射時のみファイバースコープに交換するという手間を掛ける必要がないので、体腔内挿入部の挿抜に伴う苦痛及び施術時間が延びることによる負担から、患者を解放することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態である内視鏡システムの外観を示す外観図
【図2】内視鏡システムを構成する内視鏡の内部構成を示す概略図
【図3】内視鏡システムを構成する光源プロセッサ装置の内部構成を示す概略図
【符号の説明】
【0055】
10 内視鏡システム
11 電子内視鏡
12 光源プロセッサ装置
13 PDT用レーザー装置
14 レーザー照射プローブ
15 メイン対物レンズ
17 電子内視鏡撮像素子
20 ライトガイド
21 口金
28 集光レンズ
33 白色光光源
36 イメージガイド撮像素子用CCU
39 電子内視鏡撮像素子用CCU
40 システムコントロール回路
50 サブ対物レンズ
51 イメージガイド
52 結像レンズ
53 レーザーカットフィルター
54 イメージガイド撮像素子
60 TVモニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍親和性光感受性物質が蓄積した被検者の腫瘍部位に対してPDT用レーザー光を照射することによって治療を行うために用いられるPDT用内視鏡であって、
夫々第1及び第2の対物レンズが嵌め込まれた二つの撮像窓と配光レンズが嵌め込まれた照明窓が先端に形成されているとともに、全体として長尺状に形成された体腔内挿入部と、
当該体腔内挿入部の基端に設けられた操作部と、
前記体腔内挿入部の内部における前記第1の対物レンズによる結像位置に配置された撮像素子と、
前記体腔内挿入部の内部における前記第2の対物レンズによる結像位置にその先端面が配置されているとともに、当該体腔内挿入部内を前記操作部まで引き通されたイメージガイドと、
前記イメージガイドの基端面に表れた像を観察させるための観察光学系と、
前記第2の対物レンズに入射した光のうち、前記腫瘍親和性光感受性物質に対するPDT用レーザー光と同じ波長帯の光を遮断するレーザー光カットフィルタと、
前記体腔内挿入部の内部における前記配光レンズの背後にその先端面が配置されているとともに、当該体腔内挿入部内を前記操作部まで引き通されたライトガイドと、
前記体腔内挿入部内を、その先端から前記操作部の側面まで引き通されることにより、前記体腔内挿入部の先端及び前記操作部の側面に夫々開口しているとともに、PDT用レーザー光を導光するレーザー照射プローブが挿通され得る内径を有する処置具チャンネルと
を備えたことを特徴とするPDT用内視鏡。
【請求項2】
前記操作部に組み込まれた第2の撮像素子を、更に備えるとともに、
前記観察光学系は、前記イメージガイドの基端面に表れた像を、前記第2の撮像素子の撮像面に再結像させるレンズである
ことを特徴とする請求項1記載のPDT用内視鏡。
【請求項3】
前記操作部にその先端が接続されているとともに、前記ライトガイド及び前記撮像素子から伸びた画像信号ケーブルが内部に引き通されている可撓管と、
前記可撓管の基端に設けられ、その端面から、前記ライトガイドの基端及び前記画像信号ケーブルに導通した端子が突出しているコネクタとを、
更に備えたことを特徴とする請求項1記載のPDT用内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−86680(P2008−86680A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273688(P2006−273688)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】