説明

PTCヒータを有するヒータユニットおよびその製造方法

【課題】 ヒータユニット組立の際にPTCヒータの破損が極めて少なく、量産性に優れ、且つ、導通不良の発生を減少させることができるPTCヒータを提供する。
【解決手段】 ヒータユニット(1)は、一対の電極兼放熱板(11,15)と、一対の電極兼放熱板の間に挟持され、一対の電極兼放熱板の内側表面と接触する略円板状のPTCヒータ(21,22,23,24)と、略円板状のPTCヒータの周縁側面部を包囲するように形成されたゴムパッキング体(30)と、一対の電極兼放熱板の少なくとも周縁部の間隙に充填されるゴム弾性体(40)と、を有し、ゴム弾性体によりユニット全体が一体化として構成されており、一対の電極兼放熱板は、第1の導電性金属板(11)と、第2の導電性金属板(15)とから構成され、ゴムパッキング体は、その外周端の厚さ方向の上下に突起リングを備えた断面T字形状またはY字形状をなしているように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体のLPG(液化石油ガス)を加熱・気化させるとともに所定圧力に調整した状態で吸気管路に送出し、エンジンに供給するLPG供給システムにおいて、LPG加熱装置に内装される電熱器の要部を構成しているPTCヒータを有するヒータユニット、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LPGを火花点火エンジンの燃料に使用することは広く知られており、ベーパライザ(レギュレータ)とミキサとを使用して大気圧程度に減圧した気化ガスを吸気管路に吸引させてエンジンに供給する、という方式が従来より行われている。また、例えば、特開平6−17709号公報に記載されているように、LPGを所定の正圧の気化ガスに調整して吸気管路に噴射させる方式も広く知られている。
【0003】
このような液体のLPGを加熱気化させる手段として、エンジン冷却水を利用した熱交換器をレギュレータに内蔵させるか、あるいはその入口側に配置して、エンジン冷却水の熱を利用してLPGを加熱・気化させる手段が一般的に良く知られ、使用されている。
【0004】
しかしながら、エンジン冷却水を使用する加熱気化手段においては、冷機時において冷却水が低温であるため、液体LPGを十分に気化させることができないという不都合がある。
【0005】
そこで、例えば、特開平5−223014号公報や、特開平11−324813号公報には、LPGを気化させ大気圧程度に減圧させるベーパライザの構成に関し、エンジン冷却水の熱を利用することに加えて、さらにLPG経路中にPTCヒータを備えた電熱器を配置し、冷却水が低温である場合においてもLPGを気化させることができるように構成した技術が開示されている。
【0006】
例えば、特開2007−309150号公報には、電熱器の構成単位であるPTCヒータを有するヒータユニットの公知の構成が開示されており、具体的な構成は、当該公知公報の図2の分解斜視図に示されるとおりである。これによれば、ヒータユニット31Aは、2つのPTCヒータ320と、ゴムシール体36と、電極兼放熱板314、315と、PTCヒータ押圧バネ体と、ユニット枠体37を備えている。PTCヒータ320は、一対の平面と、周側面を備える板状体であり、ゴムシール体36は、PTCヒータ320をその周側面と密着するように収納することができる2つの孔部を有している。そして、ゴムシール体36の2つの孔部の中に、PTCヒータ320を装着した一体化物を、電極兼放熱板314、315で挟持するように組立てた後、その組立後の外周部ユニット枠体37を嵌め込んで一体化固定するようになっている。なお、PTCヒータ320と電極兼放熱板314、315との接触は、片側の電極兼放熱板315の内面に配置されたPTCヒータ押圧バネ体により確実ならしめている。
【0007】
このような公知の構成からなるPTCヒータを有するヒータユニットは、(1)分解・組立が容易であるために単品部品の交換が可能であり、(2)押圧バネ体により抵抗値が維持できる、(3)PTCヒータの破損が少ない、等のメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−309150号公報
【特許文献2】特開平5−223014号公報
【特許文献3】特開平11−324813号公報
【特許文献4】特開平6−17709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところでPTCヒータユニットに用いられるPCTヒータは、薄板状の焼結体から構成され、特に局所的な応力に脆い性質を有しているために、ヒータユニット組立の際に外部応力を受けると、割れや欠け等の破損が生じやすく、量産する場合にPTCヒータへの押圧荷重を制御するだけでは十分な破損対策となりえない。
【0010】
また、通電によりユニット周囲を構成するゴム弾性体が加熱されて熱膨張を生じるので使用状況によっては、PTCヒータと電極との接触不良を起こす場合もある。
【0011】
さらに、ヒータユニット組立の際、PTCヒータの上に、その周囲を取り囲んでいるゴム部材の一部が乗り上げると導通性が悪化して導通不良等を招く恐れがあるので、十分に確認しながら組み立てることが必要であり、生産性に問題がある。
【0012】
このような課題を解決するために本発明は創案されたものであって、その目的は、ヒータユニット組立の際にPTCヒータの破損が極めて少なく、量産性に優れ、且つ、導通不良の発生を減少させることができるPTCヒータを有するヒータユニットおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を解決するために、本願発明は、液体LPGを加熱気化するとともに所定圧力に調整してエンジンの吸気通路に送出するLPG供給システムのLPG加熱装置に内装されるPTCヒータを有するヒータユニットであって、該ヒータユニットは、一対の電極兼放熱板と、一対の電極兼放熱板の間に挟持され、当該一対の電極兼放熱板の内側表面と接触する略円板状のPTCヒータと、略円板状のPTCヒータの周縁側面部を包囲するように形成されたゴムパッキング体と、一対の電極兼放熱板の少なくとも周縁部の間隙に充填されるゴム弾性体と、を有し、当該ゴム弾性体によりユニット全体が一体化として構成されており、前記一対の電極兼放熱板は、第1の導電性金属板と、第2の導電性金属板とを有し構成され、前記ゴムパッキング体は、その外周端の厚さ方向の上下に突起リングを備えた断面T字形状またはY字形状をなしているように構成される。
【0014】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記ゴムパッキング体の断面T字形状またはY字形状を形成するための突起リングは、ゴムパッキング体の厚さ方向の押し圧に対する反発力を和らげる作用およびゴム弾性体がPTCヒータの平面上に乗り上げ防止する作用を発揮するように形成される。
【0015】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記ゴムパッキング体のデュロメータタイプA硬度は、55〜80度であるように構成される。
【0016】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記ゴムパッキング体のPTCヒータと接する側の厚さは、0.5〜0.8mmであり、前記ゴムパッキング体のゴム弾性体と接する側の突起リングを備える外周端の厚さは、1.5〜1.8mmであるように構成される。
【0017】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記ゴム弾性体は、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、HNBR、EPDMのグループから選ばれた少なくとも1種であるように構成される。
【0018】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記ゴム弾性体は、フッ素ゴムであり、当該ゴムの加硫剤としてポリオール系の化合物が用いられ、受酸剤として水酸化カルシウムと酸化マグネシウムを含有しており、フッ素ゴムのポリオール架橋反応で発生する水分を捕捉するための乾燥剤として酸化カルシウムが5〜10重量部配合されてなるように構成される。
【0019】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記第1の導電性金属板および第2の導電性金属板の材料が、銅またはりん青銅であるように構成される。
【0020】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記PTCヒータの高さをH1、潰された状態にあるゴムパッキング体の高さをH2、ゴム弾性体のゴムパッキング体と近接する内周部高さをH3、とした場合、H3>H2>H1であるように構成される。
【0021】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記PTCヒータの高さをH1、潰される前の初期状態のゴムパッキング体の断面T字形状またはY字形状の高さをH4とした場合、H4>H1であるように構成される。
【0022】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記PTCヒータの両平面は、その周縁部を除いて電極膜が形成されてなるように構成される。
【0023】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記PTCヒータの配置される枚数が4枚、または2枚であるように構成される。
【0024】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記電極兼放熱板の外側面は、フッ素樹脂コーティングされてなるように構成される。
【0025】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記電極兼放熱板の内側面と、前記ゴム弾性体との間には、プライマーとしてのシランカップリング剤が介在されてなるように構成される。
【0026】
また、本発明のヒータユニットの好ましい態様として、前記PTCヒータは4枚使用されるとともに、該PTCヒータは四角形状をなすように間隔を空けて配置される。
【0027】
本発明のヒータユニットの製造方法は、第1の導電性金属板を準備する工程と、第2の導電性金属板を準備する工程であって、前記第2の導電性金属板は、組み込み部材としての部品の状態で、予め反り部分が形成されており、当該反り部分は、第2の導電性金属板の中心線を基線として、この基線から両脇の端部に至るまでの間において、基線を中心として対称に形成されている第2の導電性金属板を準備する工程と、下金型のキャビティ中に、第1の導電性金属板を装着した後、プレフォーム上金型を被着させた状態で、前記第1の導電性金属板の上に、円板状のPTCヒータおよびゴムパッキング体の装着用孔部を残すようにゴム弾性体をプレフォームする工程と、プレフォーム上金型を除いた後に、前記装着用孔部に略円板状のPTCヒータおよびゴムパッキング体を装着する工程と、装着されたPTCヒータおよびゴムパッキング体を備えるゴム弾性体の上に、他方の電極兼放熱板である第2の導電性金属板を被せて蓋をする第2の導電性金属板の被着工程と、第2の導電性金属板の周縁を加圧させる本加硫用上金型を装着する工程と、金型を加温して、ゴム弾性体を本加硫する本加硫工程と、金型から本加硫後のヒータユニットを取り出してゴム弾性体を冷却する冷却工程と、を有して構成される。
【0028】
また、本発明のヒータユニットの製造方法の好ましい態様として、前記本加硫用上金型を装着した工程の後であって、本加硫する工程の前に、金型内を真空引きして、ヒータユニット内に残存する空気を除去する真空引き工程が設けられるように構成される。
【0029】
また、本発明のヒータユニットの製造方法の好ましい態様として、本加硫時の上金型は、当該上金型からの圧縮応力が第2の導電性金属板を経由して、PTCヒータには加わらず、ゴム弾性体に加わるようなキャビティ形態を備えて構成される。
【0030】
本発明のヒータユニット組み合わせ体は、前記のヒータユニットを少なくとも一対備えて構成され、前記一対のヒータユニットの第2の導電性金属板同士は、圧縮ばねを介して対向配置させられており、介在される圧縮ばねの付勢力によって、第2の導電性金属板がヒータユニットの内側に押圧された状態を維持したまま、当該一対のヒータユニットの外周がハウジングにより固定されてなるように構成される。
【発明の効果】
【0031】
本発明PTCヒータを有するヒータユニットは、一対の電極兼放熱板と、一対の電極兼放熱板の間に挟持され、一対の電極兼放熱板の内側表面と接触する略円板状のPTCヒータと、略円板状のPTCヒータの周縁側面部を包囲するように形成されたゴムパッキング体と、一対の電極兼放熱板の少なくとも周縁部の間隙に充填されるゴム弾性体と、を有し、当該ゴム弾性体によりユニット全体が一体化として構成されており、一対の電極兼放熱板は、第1の導電性金属板と、第2の導電性金属板とを有し構成され、前記ゴムパッキング体は、その外周端の厚さ方向の上下に突起リングを備えた断面T字形状またはY字形状をなしているので、PTCヒータの破損が極めて少なく、量産性にも優れ、且つ、導通不良の発生を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、PTCヒータユニットの構成を分り易く説明するための概略分解斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるβ−β矢視端面図を描いた図面である。
【図3】図3は、第2の導電性金属板と略円板状のPTCヒータとの接触状態を模式的に示す平面図(PTCヒータのみ描いてある)である。
【図4】図4(a)〜(d)は、本発明のPTCヒータユニットの組み立て手法を経時的に説明するための平面図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、本発明のPTCヒータユニットの製造方法の要部を経時的に説明するための断面図である。
【図6】図6(a)は、図4(d)におけるB−B矢視端面と同じ方向から見た断面図であり、図6(b)は、ヒータユニット内部へ浸入したLPGを内圧上昇に伴い逆止弁を介して外部に放散させる状態を概念的に示した断面図である。なお、これらの図面において、第2の導電性金属板は最終的にフラットの板体になる場合が示されている。
【図7】図7は、一対のヒータユニットを備えてなるヒータユニット組み合わせ体を記載した断面図であって、図4(d)におけるB−B矢視端面と同じ方向から見た図面である。
【図8】図8は、第2の実施形態における第2の導電性金属板と略円板状のPTCヒータとの接触状態を模式的に示す平面図(PTCヒータのみ描いてある)である。
【図9】図9(a)〜(c)は、第2の実施形態における本発明のPTCヒータユニットの製造方法の要部を経時的に説明するための断面図である。
【図10】図10は、LPG供給システムの一例を示す概略図面である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明のヒータユニットは、液体LPGを加熱気化するとともに所定圧力に調整してエンジンの吸気通路に送出するLPG供給システムの一部を構成するLPG加熱装置に内装される。
【0034】
LPG供給システムの一例を図10を参照しつつ説明する。
図10に示されるLPG供給システムにおいて、ボンベ101に液体の状態で貯留されたLPGは、液体LPG流路91、気体LPG流路92を通ってエンジン104の吸気通路114に設置された気体噴射弁105に供給される。この経路中に閉止弁102、LPG加熱装置300としての温水加熱手段310と加熱気化手段320が設けられている。
図示のごとく加熱気化手段320には、電気加熱装置321、圧力調整器322(レギュレータ)が設けられている。
【0035】
例示されているLPG供給システムは、電子制御式装置110で閉止弁102の開閉を行うものであり、バッテリー115から電気加熱装置321への通電をリレー112を介して制御するものである。バッテリー115とリレー112との間にはメインヒューズ116が設けられている。
【0036】
ボンベ101に液体の状態で貯留されているLPGは、液体LPG流路91を通って(閉止弁102を経由)温水加熱装置310に入り、エンジン104に設けた冷却水ジャケット104aから冷却水送出器108を経由して導入されているエンジン冷却水で加熱される。
【0037】
しかしながら、エンジン104の冷機時にはエンジン冷却水の温度が低く、液体LPGが十分に加熱されないため、気体の状態にして気体LPG流路92に送出することができない。
【0038】
このようにエンジンの冷却水の熱だけでは加熱が不十分となる場合に、電子式制御装置110が判断して後続の電気加熱装置321に通電し、内部に配置されている電熱器321aでLPGを加熱するようになっている。
【0039】
電熱器321aの構成単位は、本願発明のPTCヒータを有するヒータユニット(以下、単に、『PTCヒータユニット』と称すこともある)から構成される。以下、PTCヒータユニットの構成について説明する。
【0040】
PTCヒータユニットの構成についての説明
本願発明のPTCヒータユニットは、液体LPGを加熱気化するとともに所定圧力に調整してエンジンの吸気通路に送出するLPG供給システムのLPG加熱装置に内装されて用いられる。
【0041】
図1〜図7に示される図面は、PTCヒータを4個、四角形状を形成するように配置した場合(四角形状の角部にPTCヒータを配置した形態)における好適な一実施例である。図1〜図7に示される図面において、説明の便宜上、横(幅)方向をX軸方向、縦(高さ)方向をY軸方向、厚さ方向をZ軸方向として表示してある。
【0042】
図1の分解斜視図に示されるように、本願発明のPTCヒータユニット1は、一対の電極兼放熱板である第1の導電性金属板11と、第2の導電性金属板15と、これら第1および第2の導電性金属板11,15の間に挟持され、一対の導電性金属板11,15の内側表面11a,15aと接触する4個の略円板状のPTCヒータ21,22,23,24と、略円板状のPTCヒータ21,22,23,24の周縁側面部をそれぞれ個別に包囲するように形成されたゴムパッキング体30と、一対の導電性金属板11,15の間隙に充填されたゴム弾性体40と、を有して構成されている。
【0043】
ゴム弾性体40は、いわゆる接合機能を有し、ユニット全体を一体化させるように働いている。
【0044】
なお、ゴム弾性体40の形態に関して、当該ゴム弾性体40は、予備型を用いてプレフォームを行い、次いで本型を用いて本加硫が行われて形成されるものであり、最初から図1に示されるような形が部材として成形されているわけではない。また、本加硫後のPTCヒータユニットの形状から無理に分解斜視図を起こしているので、あくまでも概略図として認識して頂きたい。
【0045】
PTCヒータ21,22,23,24の説明
PTCヒータは、正の温度特性(Positive Temperature Coefficient)を持つサーミスタであり、温度上昇とともに電気抵抗値が上昇する特性を備えている。電気抵抗値の上昇とともにミクロの膨張が起こり、このため導電物質が離れ、電流が流れにくくなり、消費電力を下げるシステムが作り出される。
【0046】
用いられるPTCヒータの個数については、4個使用の場合が好適例として例示されているが、2個での使用でもよく、特に制限はない。略円板状の形態とは、その平面形態において、円、楕円、角を丸めた多角形等を含む意味である。ただし、PTCヒータの歪等を均等に分散させて破損を防止するという観点からは、実施の形態のごとく平面形態において、円形状(全体からみて円板状)とするのがよい。後述するゴムパッキング体との嵌着との面からも平面形態において、円形状とするのがよい。
【0047】
また、前記略円板状のPTCヒータの周縁平面部(半径Rとした場合、5〜15%Rの周縁エリア内)は、PTCヒータの中央主要部と比べて、厚さがわずか(1〜5%減)に薄く形成するようにすることが望ましい。挟持される一対の電極兼放熱板11,15とPTCヒータとの電気的な接続を確実にするためである。このような形態は、例えば、PTCヒータの両平面に、周縁部を除いてAg等の電極材料ペーストを塗布して電極膜を形成することにより容易に実現できる。
【0048】
なお、PTCヒータは、その素材特性として硬度が硬く、衝撃に弱く脆弱破損する傾向がある。特に、局部的な応力によって、比較的簡単に破損する特性がある。
【0049】
PTCヒータの厚さは、例えば、1.0〜1.4mm程度とされる。
【0050】
ゴムパッキング体30の説明
ゴムパッキング体30は、図1に示される好適例では、4つの略円板状のPTCヒータを装着するための装着穴31,32,33,34を備える一体ゴム成型物として形成されている。ゴムパッキング体30は、すでに加硫済みのゴム体であって、部品として存在している。ゴムパッキング体30の略中央にも、開口孔37を形成させてもよい。このように必要に応じて設けられる開口孔37は、後述するアンブレラ形状の逆止弁50を設置するため、および逆止弁の通気孔の周辺箇所を空けておくために形成することができる。なお、この開口孔37の大きさをさらに図示されている大きさよりも大きくして、一体ゴム成型物の連結されている中央部を部分的に分断するようにしてもよい。
【0051】
図1に示されるような一体ゴム成型物からなるゴムパッキング体30に代えて、装着穴31,32,33,34を個別に有する4つの分離されたリング状のゴムパッキング体を用意して用いることも可能である。しかしながら、本実施形態のごとく4つのPTCヒータを備えるユニットタイプでは、組立の作業性、部品の管理等の利便性を考慮すると、図1に示されるような一体ゴム成型物とすることが望ましい。
【0052】
ゴムパッキング体30は、図1の図面の下方において特別に引き出されて描かれた部分拡大断面図(α―α矢視端面)に示されるように、外周端の厚さ方向の上下に突起リング35a,35bを備えた断面T字形状をなしていることが望ましい。断面T字形状は、断面Y字形状であってもよい。突起リング35a,35bの上端および下端がやや外周側に倒れ掛かった場合にY字状を構成することになる。
【0053】
このような断面T字形状またはY字形状を形成するための突起リング35a,35bは、ゴムパッキング体30の厚さ方向の押し圧に対する反発力を和らげる作用(衝撃を緩和させることができ、衝撃に弱く脆弱で破損し易いPTCヒータを保護する)、およびゴム弾性体40がPTCヒータ21〜24の平面上に乗り上げることを防止する作用を発現させる。
このようなゴムパッキング体30のPTCヒータと接する側(内周側)の厚さh1(図1参照)は、例えば0.5〜0.8mm、より好ましくは0.6〜0.7mm程度とされ、ゴムパッキング体30のゴム弾性体40と接する側(外周側)の突起リング35a,35bを備える外周端の厚さH4(図1参照(潰される前の初期状態のゴムパッキング体の断面T字形状またはY字形状の高さ))は、1.5〜1.8mm程度とされる。
【0054】
また、ゴムパッキング体の断面T字形状またはY字形状の高さをH4とPTCヒータの高さH1との関係では、H4>H1の関係が維持されることが望ましい(図5(a)を参照)。
【0055】
前述したように、ゴムパッキング体30は、すでに、加硫済みのゴム部品であり、好適にはフッ素ゴムから構成するのがよい。そのデュロメータタイプA硬度は、55〜80度程度とするのがよい。硬度が55度未満のゴムパッキング体30は、フッ素ゴムを使用する場合にゴムとしての存在させることが困難であり、硬度が80度を越えると反発力が大きくなって本願所望のゴム変形作用ができなくなってしまうおそれが生じる。
【0056】
ゴム弾性体40の説明
ゴム弾性体40は、図1に示されるように成形後の形態において、ゴムパッキング体30およびPTCヒータ21,22,23,24を装着するための装着用孔部41を備えている。
【0057】
装着用孔部41に装着された4個のPTCヒータ21,22,23,24の各両平面は、ゴム弾性体40と一体化して固着される一対の電極兼放熱板11,15の内側表面11a,15aと最終製品の形態で接触する。
【0058】
ゴム弾性体40は、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、HNBR、EPDMのグループから選ばれた少なくとも1種から構成される。また、予備成形(プレフォーム)および本成形(本加硫)可能なように2元系フッ素ゴムの材料とするのがよい。
【0059】
特に好適に使用されるフッ素ゴムの場合における配合組成中には、加硫剤としてのポリオール系加硫剤;受酸剤(加硫促進剤)としての水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート等;乾燥剤(気泡発生防止剤)としての酸化カルシウム(含有量5〜10重量部程度)含有させることが望ましい。すなわち、ゴム弾性体40の好ましい態様としては、フッ素ゴムから構成され、当該ゴムの加硫剤としてポリオール系の化合物が用いられ、受酸剤として水酸化カルシウムと酸化マグネシウムを含有しており、フッ素ゴムのポリオール架橋反応で発生する水分を捕捉するための乾燥剤として酸化カルシウムが5〜10重量部配合される態様とするのがよい。
なお、成型手法は真空成型とすることが望ましい。
【0060】
一対の導電性金属板11,15の説明
本発明における一対の電極兼放熱板である第1の導電性金属板11および第2の導電性金属板15は、好適には銅またはりん青銅から構成される。第1の導電性金属板11はフラットな板体とされ、第2の導電性金属板15は反り形態(そり部分)を備えた板体として構成される。すなわち、第2の導電性金属板15は、PTCヒータユニットに組み込まれる前の、組み込み部材の状態で(部品の状態で)、予め反り部分が形成されている。
【0061】
反り部分は、図1におけるβ−β矢視端面図を描いた図2に示されるように、好適には第2の導電性金属板15の中心線を基線Mとして、この基線Mから両脇の端部に至るまでの間において、基線Mを中心として対称に形成される。なお、反り部分は、基線から両脇の端部に至るまでの全ての間において、形成される場合もあるが、図1に示されるPTCヒータを4個配置する場合には、図2に示されるように、通常、基線Mからある距離L1はフラットなエリア15aで、そのフラットなエリア15aが過ぎて両脇の端部に至るまでの間L2において反り部分15bを形成するのがよい。
【0062】
反り部分15bの形成による反り量δ(図2参照)は、後述する製造方法が確実に実現できるように適宜、実験を試みて、決定することができる。
【0063】
図2に示されるフラットなエリア15aおよび反り部分15bの形態は、紙面の奥域に向けて(Y軸方向に向けて)同じ形態が続いている。つまり、一枚の板を中心軸に沿って湾曲させた形態となっている。
【0064】
後の製造方法の説明を参照すれば理解が容易となるが、本願発明におけるヒータユニットの完成後において、第2の導電性金属板15の反り部分15bの形態はわずかに残存してもよいし、完全にフラットになっていてもよい。
【0065】
反り部分がわずかに残る場合には、図3に示される第2の導電性金属板と略円板状のPTCヒータとの接触状態模式図(PTCヒータのみ描いてある)に示されるように、略円板状のPTCヒータの第2の導電性金属板の基線Mから遠く離れた周縁部の一部21b、22b、23b、24bの各部位は、第2の導電性金属板と非接触の部分である浮き部分となっている。符号21a、22a、23a、24aの各部位(斜線で描かれている部位)は、第2の導電性金属板と接触している部分である。
【0066】
第2の導電性金属板15の厚さは0.2〜0.4mm、より好ましくは0.3mmとするのが良い。
【0067】
第1の導電性金属板11は、フラットな板体であり、第1の導電性金属板11は、各PTCヒータ21,22,23,24と浮きのない状態で実質的に密着された状態にある。
【0068】
第1の導電性金属板11の厚さは0.6〜0.8mm、より好ましくは0.7mmとするのが良い。
【0069】
上述してきたような一対の導電性金属板11,15の外側面(内側表面11a,15aと反対の面)は、好ましい態様として、フッ素樹脂コーティングされて構成される。このような樹脂潤滑コーティングは、導電性の異物が混入した際のヒータユニット間のショート防止、ユニット表面の汚染防止、絶縁性を確保するために行われる。
【0070】
上述してきた本発明のヒータユニットの反り部分の形態が実質的に残存してなる場合、PTCヒータの高さをH1、潰された状態にあるゴムパッキング体の高さをH2、ゴム弾性体のゴムパッキング体と近接する内周部高さをH3、とした場合、H3>H2>H1の関係が保たれる(図5(c)参照)。また、ヒータユニットの組立前の状態を考慮する必要があるが、潰される前の初期状態のゴムパッキング体の高さをH4とした場合(図5(a)参照)、H4>H3>H2>H1での関係が保たれる。
【0071】
このような関係が保たれることによって、略円板状のPTCヒータの周縁部の一部は、第2の導電性金属板と非接触の部分的な浮き部分G(図5(c)参照)が形成される。そして、このような構造を有するヒータユニットは、第2の導電性金属板15からPTCヒータに過度の押圧がかからないので、PTCヒータの破損が極めて少なく、しかも量産性に優れたものとなる。
【0072】
なお、図1に示されるように、第1の導電性金属板11には、ユニット内部の圧力が上昇した場合に、内部流体をユニット外部に放出できるように逆止弁50を設置できるようにしてもよい。逆止弁作用が発揮できるように、第1の導電性金属板11には、ユニット内部との通気を図る通気孔12とともに、後述するアンブレラタイプの逆止弁50の棒状の柄部55を係止コブ56側から強制的に挿入させるための柄部挿入孔13を形成させてもよい。なお、逆止弁50の設置状態は図6(a)を参照されたい。
【0073】
また、逆止弁50の固定方法にもよるが、アンブレラタイプの逆止弁50の棒状の柄部55を第2の導電性金属板15まで挿通させるように構成する場合には、図1に示されるように、第2の導電性金属板15には、第1の導電性金属板11の柄部挿入孔13を通過して伸びる棒状の柄部55をさらに第2の導電性金属板15の外部まで挿通させるための第2の柄部挿入孔16を形成させてもよい。このような構成の場合、アンブレラタイプの逆止弁50の係止固定が容易にできる。
【0074】
第1の導電性金属板の外面に設置される逆止弁50の説明
図1に示されるように第1の導電性金属板11の外面には逆止弁50が形成され、ユニット内部の圧力が上昇した場合に当該逆止弁から内部流体がユニット外部に放出できるように構成されてもよい。この場合、逆止弁50は、アンブレラ形状を有するゴム弾性体から構成される。
【0075】
すなわち、アンブレラ形状を有するゴム弾性体からなる逆止弁50は、第1の導電性金属板に形成された通気孔12を封止可能とする傘部51と、この傘部51を支えるように中央からのびる棒状の柄部55と、その先端に形成されたストッパー拡張部56(抜き止め用の係止コブ56)を有して構成される。ストッパー拡張部56(抜き止め用の係止コブ56)を先端に備えた棒状の柄部55は、ストッパー拡張部56の径を小さくするように変形させつつ第1の導電性金属板11に形成された柄部挿入孔13、ゴムパッキング体30の略中央に形成された開口孔37、および第2の導電性金属板15に形成された第2の柄部挿入孔16を順次挿通させ、第2の導電性金属板15の外側にストッパー拡張部56飛び出させた後に、ゴム弾性により拡張したストッパー拡張部56(抜き止め用の係止コブ56)により固定される(図6(a)参照)。つまり、ストッパー拡張部56はアンブレラ部品状態で、予めコブ状に形成されている。
【0076】
また、本実施例では示していないが、ストッパー拡張部56(抜き止め用の係止コブ56)を先端に備えた棒状の柄部55は、ストッパー拡張部56の径を小さくするように変形させつつ、第1の導電性金属板11に形成された柄部挿入孔13に挿通させ、第1の導電性金属板11の内側に、ストッパー拡張部56飛び出させた後に、ゴム弾性により拡張したストッパー拡張部56(抜き止め用の係止コブ56)により固定するようにしてもよい。すなわち、第1の導電性金属板11の内面側11aに接するようにストッパー拡張部が形成される。この場合には、第2の導電性金属板15に第2の柄部挿入孔16を形成する必要はなくなる。
【0077】
ヒータユニットの製造方法についての説明
以下、図1、図4(a)〜(d)、図5(a)〜(c)、および図6を参照しつつ、上述した本発明のヒータユニットの製造方法を説明する。
【0078】
本発明のヒータユニットの製造方法は、(1)一方の電極兼放熱板である第1の導電性金属板を準備する工程と、(2)他方の電極兼放熱板である第2の導電性金属板を準備する工程と、(3)第1の導電性金属板の上に、ゴム弾性体をプレフォームする工程と、(4)装着用孔部に略円板状のPTCヒータおよびゴムパッキング体を装着する工程と、(5)装着されたPTCヒータおよびゴムパッキング体を備えるゴム弾性体の上に、第2の導電性金属板を被着させる被着工程と、(6)本加硫用上金型を装着する工程と、(7)ゴム弾性体を本加硫する本加硫工程と、(8)金型から本加硫後のヒータユニットを取り出して、ゴム弾性体を冷却させPTCヒータと第2の導電性金属板を接触させる冷却工程と、好ましい態様として好適に付加することができる(9)第1の導電性金属板に逆止弁を設置する逆止弁取り付け工程と、を順次、有して構成されている。
【0079】
以下、工程ごとに説明する。
一方の電極兼放熱板である第1の導電性金属板を準備する工程
第1の導電性金属板11(好適には銅板から構成)を予め準備する。この第1の導電性金属板11は、フラットな板体から構成される。
【0080】
他方の電極兼放熱板である第2の導電性金属板を準備する工程
第2の導電性金属板15(好適には銅板から構成)を予め準備する。この第2の導電性金属板15は、前述したように予め反り部分が形成されている板体から構成される。
【0081】
第1の導電性金属板の上に、ゴム弾性体をプレフォームする工程
図4(a)に示されるように、準備された第1の導電性金属板11の上に、ゴム弾性体40がプレフォームされる。
【0082】
詳しくは、トランスファー成形用の下金型のキャビティ中に、第1の導電性金属板11を装着(インサート)した後、プレフォーム上金型を被着させた状態で、第1の導電性金属板11の上に、円板状のPTCヒータおよびゴムパッキング体の装着用孔部41を残すように(装着用孔部41を形成するためのコアピンが板11の表面と当接するように配置される)、ゴム弾性体40のプレフォームが行われる。孔部41の底には、第1の導電性金属板11の内側表面11aが見える。
【0083】
プレフォームに際しては、例えば,予備型の温度を110℃とし、2元系のFKM(フッ素)ゴムをプレフォームする。圧力は例えば15トン(86kgf/cm2)程度、時間は例えば10秒程度とする。
【0084】
なお、第1の導電性金属板11がゴム弾性体40と接合するエリア(PTCヒータが接する部分を除く)には、接着性を向上させるために予めシランカップリング剤等のプライマーを塗布しておくことが望ましい。
【0085】
装着用孔部に略円板状のPTCヒータおよびゴムパッキング体を装着する工程
プレフォーム上金型を除いた後に、図4(b)に示されるように、装着用孔部41にPTCヒータ21,22,23,24およびゴムパッキング体30を装着する。
【0086】
PTCヒータ21,22,23,24およびゴムパッキング体30の装着は、装着用孔部41に、ゴムパッキング体30を先に装着し、その後、各PTCヒータを装着するようにするのがよい。また、PTCヒータとゴムパッキング体を一体化させた状態で、装着用孔部41に装着することもできる。
【0087】
ゴム弾性体の上に、第2の導電性金属板を被着させる被着工程
図4(c)に示されるように、装着されたPTCヒータ21,22,23,24およびゴムパッキング体30を備えるゴム弾性体40の上に、PTCヒータ21,22,23,24と第2の導電性金属板15とが接触しない状態を保ったまま第2の導電性金属板15を被せる、第2の導電性金属板15の被着工程が実施される。
【0088】
図4(c)のA−A矢視断面に順ずる図面が、経時的なずれを含んで図5(a)および図5(b)に示される。すなわち、図5(a)に示される状態がまさに今から第2の導電性金属板15が被着されようとする状態であり、図5(b)に示される状態が第2の導電性金属板15を被着させた後の状態である。この時、図5(b)に示されるように、PTCヒータ21,22,23,24と第2の導電性金属板15とが接触しない状態を保たれるように各部材の仕様が定められている。
【0089】
なお、第2の導電性金属板15がゴム弾性体40と接合するエリア(PTCヒータが接する部分を除く)には、接着強度を向上させるために予めシランカップリング剤等のプライマーを塗布しておくことが望ましい。
【0090】
本加硫用上金型を装着する工程、およびゴム弾性体を本加硫する本加硫工程
これらの工程においては、好ましい態様として、第2の導電性金属板15の周縁のみを加圧してPTCヒータと第2の導電性金属板とが強い力で押圧されないように構成された本加硫用上金型が装着されて使用されるのがよい。つまり、本加硫用上金型の押圧するキャビティ形態は、できるだけゴム弾性体40の周縁のみ押圧できるように構成されていることが望ましい。換言すれば、本加硫時の上金型は、上金型からの圧縮応力が第2の導電性金属板15を経由して、PTCヒータにはあまり押圧力が加わらず、ゴム弾性体40に加わるようなキャビティ形態を備えていることが望ましいと言える。
【0091】
次いで、金型を加熱して、PTCヒータ21,22,23,24と第2の導電性金属板15とが接触しない状態を保ったまま、ゴム弾性体40を本加硫する本加硫工程が実施される。前述したように本加硫が行なわれる高温時においては、PTCヒータ21,22,23,24と第2の導電性金属板15とが接触しない状態が保たれている。このような本加硫工程において、保持されるPTCヒータ21,22,23,24と第2の導電性金属板15との間隔(最も近接する箇所)は、0.05〜0.15mmの範囲とされることが望ましい。
【0092】
本加硫の条件は、例えば、加硫温度170℃程度、加硫時間10分程度とすればよい。
【0093】
<金型から本加硫後のヒータユニットを取り出して、ゴム弾性体を冷却させる冷却工程>
金型から本加硫後のヒータユニットを取り出して、ゴム弾性体40を冷却するとともにそのゴム弾性体40の収縮特性を利用してPTCヒータ21,22,23,24と第2の導電性金属板15とを接触させる冷却過程が行われる。この冷却過程において始めてPTCヒータ21,22,23,24と第2の導電性金属板15とが接触して、図5(c)に示される構造に至る。
【0094】
なお、上記の一連の製造工程において、本加硫用上金型を装着した工程の後であって、本加硫する工程の前に、金型内を真空引きして、ヒータユニット内に残存する空気を除去する真空引き工程が設けられるようにすることが望ましい。これによって、例えば、ゴム弾性体のアウトガスを除去し、ボイドを防ぐことができる。
【0095】
好適な態様として第1の導電性金属板に逆止弁を設置する場合の逆止弁取り付け工程
アンブレラ形状を有するゴム弾性体からなる逆止弁50を準備する。このような逆止弁50は、前述したように第1の導電性金属板11に形成された通気孔12を封止可能とする傘部51と、この傘部51を支えるように中央からのびる棒状の柄部55(先端に行くほど細くなるようなテーパー形状をなす形態が好ましい)と、その先端に形成されたストッパー拡張部56(抜き止め用の係止コブ56)を有して構成される。傘部51の下面側(柄部55の基部が存在する面)は平面となっており、当該平面が通気孔12の片端を塞いており、内圧が上昇していない通常の状態で通気孔12は閉じられている。
【0096】
ストッパー拡張部56(抜き止め用の係止コブ56)を先端に備えた棒状の柄部55は、ストッパー拡張部56の径を小さくするように変形させつつ第1の導電性金属板11に形成された柄部挿入孔13、ゴムパッキング体30の略中央に形成された開口孔37、および第2の導電性金属板15に形成された第2の柄部挿入孔16を順次挿通させ、第2の導電性金属板15の外側にストッパー拡張部56飛び出させた後に、ゴム弾性により拡張したストッパー拡張部56(抜き止め用の係止コブ56)により固定される。その状態が図6(a)に示される。
【0097】
なお、図6(b)には、ユニット内部の圧力が上昇した場合に、逆止弁の傘部51の周辺の一部が捲れ上がり通気孔12を介して内部流体がユニット外部に放出される状態が概念図として示される。
【0098】
図7に、上記のヒータユニットを一対備えてなるヒータユニット組み合わせ体の断面図が示されている。断面位置は図4(d)に示されるのと同様な中央位置(B−B断面相当)である。
【0099】
図7に示されるように、一対のヒータユニット1,1は、それらのユニットを構成している第2の導電性金属板15,15同士が対向するように配置されている。そして、第2の導電性金属板15,15同士が対向配置されている空間には、圧縮ばね61,61が介在されており、当該圧縮ばね61,61の付勢力によって、第2の導電性金属板がヒータユニットの内側に押圧された状態が維持できるように、一対のヒータユニット1,1の外周がハウジング70により固定されている。なお、圧縮ばね61,61を安定した状態で設置できるように、圧縮ばね61,61は、補強板65によって、遊嵌ないしは固着された状態で実質的に一体化されているように構成されることが望ましい。前述したように圧縮ばね61,61の付勢力によって、第2の導電性金属板がヒータユニットの内側に押圧された状態が維持でき、その結果、PTCヒータと第2の導電性金属板との接触状態、さらには、PTCヒータと第1の導電性金属板との接触状態を良好に維持することができる。これによって、通電時の発熱量を増加・安定させることができる。
【0100】
本発明の変形例の説明
上述してきた本発明の第1の実施形態の変形例として、PTCヒータが2枚使用され、これらのPTCヒータが縦列に間隔を空けて配置されている第2の実施形態に関する図面が図8〜図9に示されている。
【0101】
図8は前述した第1の実施形態の図3に相当する図面であり、図9は前述した第1の実施形態の図5に相当する図面である。図8〜図9の図面において、図1〜図5において用いた符号と、同一符号の部材は、同様な作用を発揮する部材である。
【0102】
PTCヒータが2枚使用され縦列に間隔を空けて配置される第2の実施形態では、図8に示される第2の導電性金属板と略円板状のPTCヒータとの接触状態模式図(PTCヒータのみ描いてある)に示されるように、略円板状のPTCヒータの第2の導電性金属板の基線M付近の符号21a、22aの各部位(斜線で描かれている部位)は、第2の導電性金属板と接触している部分である。基線Mから遠く離れた周縁部の一部21b、22bの各部位は、第2の導電性金属板と非接触の部分である浮き部分となっている。
【0103】
第2の実施形態においても、基本的な製造方法の要部は、図9(a)〜(c)に示されるように第1の実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の産業上の利用可能性として、本発明は、液体のLPG(液化石油ガス)を加熱・気化するとともに所定圧力に調整して吸気管路に送出してエンジンに供給するLPG供給システムに関連する技術に利用できる。
【符号の説明】
【0105】
1…ヒータユニット
11…電極兼放熱板である第1の導電性金属板
15…電極兼放熱板である第2の導電性金属板
11a,15a…一対の電極兼放熱板の内側表面
21,22,23,24…PTCヒータ
30…ゴムパッキング体
40…ゴム弾性体
41…ゴムパッキング体およびPTCヒータを装着するための装着用孔部
50…逆止弁
51…傘部
55…柄部
56…ストッパー拡張部
61…圧縮ばね
65…補強板
70…ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体LPGを加熱気化するとともに所定圧力に調整してエンジンの吸気通路に送出するLPG供給システムのLPG加熱装置に内装されるPTCヒータを有するヒータユニットであって、
該ヒータユニットは、
一対の電極兼放熱板と、
一対の電極兼放熱板の間に挟持され、当該一対の電極兼放熱板の内側表面と接触する略円板状のPTCヒータと、
略円板状のPTCヒータの周縁側面部を包囲するように形成されたゴムパッキング体と、
一対の電極兼放熱板の少なくとも周縁部の間隙に充填されるゴム弾性体と、を有し、
当該ゴム弾性体によりユニット全体が一体化として構成されており、
前記一対の電極兼放熱板は、第1の導電性金属板と、第2の導電性金属板とを有し構成され、
前記ゴムパッキング体は、その外周端の厚さ方向の上下に突起リングを備えた断面T字形状またはY字形状をなしていることを特徴とするヒータユニット。
【請求項2】
前記ゴムパッキング体の断面T字形状またはY字形状を形成するための突起リングは、ゴムパッキング体の厚さ方向の押し圧に対する反発力を和らげる作用およびゴム弾性体がPTCヒータの平面上に乗り上げ防止する作用を発揮するように形成されてなる請求項1に記載のヒータユニット。
【請求項3】
前記ゴムパッキング体のデュロメータタイプA硬度は、55〜80度である請求項1または請求項2に記載のヒータユニット。
【請求項4】
前記ゴムパッキング体のPTCヒータと接する側の厚さは、0.5〜0.8mmであり、前記ゴムパッキング体のゴム弾性体と接する側の突起リングを備える外周端の厚さは、1.5〜1.8mmである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のヒータユニット。
【請求項5】
前記ゴム弾性体は、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、HNBR、EPDMのグループから選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のヒータユニット。
【請求項6】
前記ゴム弾性体は、フッ素ゴムであり、当該ゴムの加硫剤としてポリオール系の化合物が用いられ、受酸剤として水酸化カルシウムと酸化マグネシウムを含有しており、フッ素ゴムのポリオール架橋反応で発生する水分を捕捉するための乾燥剤として酸化カルシウムが5〜10重量部配合されてなる請求項5に記載のヒータユニット。
【請求項7】
前記第1の導電性金属板および第2の導電性金属板の材料が、銅またはりん青銅である請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のヒータユニット。
【請求項8】
前記PTCヒータの高さをH1、潰された状態にあるゴムパッキング体の高さをH2、ゴム弾性体のゴムパッキング体と近接する内周部高さをH3、とした場合、H3>H2>H1である請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のヒータユニット。
【請求項9】
前記PTCヒータの高さをH1、潰される前の初期状態のゴムパッキング体の断面T字形状またはY字形状の高さをH4とした場合、H4>H1である請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のヒータユニット。
【請求項10】
前記PTCヒータの両平面は、その周縁部を除いて電極膜が形成されてなる請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のヒータユニット。
【請求項11】
前記PTCヒータの配置される枚数が4枚、または2枚である請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のヒータユニット。
【請求項12】
前記電極兼放熱板の外側面は、フッ素樹脂コーティングされてなる請求項1ないし請求項11のいずれかに記載のヒータユニット。
【請求項13】
前記電極兼放熱板の内側面と、前記ゴム弾性体との間には、プライマーとしてのシランカップリング剤が介在されてなる請求項1ないし請求項12のいずれかに記載のヒータユニット。
【請求項14】
前記PTCヒータは4枚使用されるとともに、該PTCヒータは四角形状をなすように間隔を空けて配置されている請求項1ないし請求項13のいずれかに記載のヒータユニット。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14のいずれかに記載のヒータユニットの製造方法であって、
該方法は、
第1の導電性金属板を準備する工程と、
第2の導電性金属板を準備する工程であって、前記第2の導電性金属板は、組み込み部材としての部品の状態で、予め反り部分が形成されており、当該反り部分は、第2の導電性金属板の中心線を基線として、この基線から両脇の端部に至るまでの間において、基線を中心として対称に形成されている第2の導電性金属板を準備する工程と、
下金型のキャビティ中に、第1の導電性金属板を装着した後、プレフォーム上金型を被着させた状態で、前記第1の導電性金属板の上に、円板状のPTCヒータおよびゴムパッキング体の装着用孔部を残すようにゴム弾性体をプレフォームする工程と、
プレフォーム上金型を除いた後に、前記装着用孔部に略円板状のPTCヒータおよびゴムパッキング体を装着する工程と、
装着されたPTCヒータおよびゴムパッキング体を備えるゴム弾性体の上に、他方の電極兼放熱板である第2の導電性金属板を被せて蓋をする第2の導電性金属板の被着工程と、
第2の導電性金属板の周縁を加圧させる本加硫用上金型を装着する工程と、
金型を加温して、ゴム弾性体を本加硫する本加硫工程と、
金型から本加硫後のヒータユニットを取り出してゴム弾性体を冷却する冷却工程と、
を有してなることを特徴とするヒータユニットの製造方法。
【請求項16】
前記本加硫用上金型を装着した工程の後であって、本加硫する工程の前に、金型内を真空引きして、ヒータユニット内に残存する空気を除去する真空引き工程が設けられる請求項15に記載のヒータユニットの製造方法。
【請求項17】
本加硫時の上金型は、当該上金型からの圧縮応力が第2の導電性金属板を経由して、PTCヒータには加わらず、ゴム弾性体に加わるようなキャビティ形態を備えて構成されている請求項15または請求項16に記載のヒータユニットの製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし請求項14のいずれかに記載のヒータユニットを少なくとも一対備えてなるヒータユニット組み合わせ体において、
前記一対のヒータユニットの第2の導電性金属板同士は、圧縮ばねを介して対向配置させられており、介在される圧縮ばねの付勢力によって、第2の導電性金属板がヒータユニットの内側に押圧された状態を維持したまま、当該一対のヒータユニットの外周がハウジングにより固定されてなることを特徴とするヒータユニット組み合わせ体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−7355(P2013−7355A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141808(P2011−141808)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【Fターム(参考)】