説明

PTPシート搬送装置

【課題】 搬送ライン全体の設置スペースを狭小化することのできるPTPシート搬送装置を提供する。
【解決手段】 PTPシート搬送装置10は、上流側搬送路12から供給された2枚のPTPシート14を向き合わせて下流側搬送路16へ搬送するものであり、上下2段に配置された2つの収容部Aを有する反転部48と、反転部48を180度回転させることによって収容部Aの位置を入れ替える回転手段26と、反転部48を上流側搬送路12の出口から下流側搬送路16の入口へ移送する移送手段13とを備えている。したがって、このPTPシート搬送装置10では、PTPシート14を反転させる工程と、2枚のPTPシート14を上下に振り分けて向き合わせる工程とを反転部48において実行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流側搬送路から供給された2枚のPTPシートを向き合わせて下流側搬送路へ搬送するPTPシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、錠剤等の包装には、ポケットに収容された錠剤を指で押し出すことのできるPTP(プレス・スルー・パッケージ)が一般に用いられており、1枚のシートに複数のポケットが設けられたものは、PTPシートと称されている。このPTPシートでは、複数のポケットが凸部を構成しているため、これを単純に積み重ねたのでは嵩高になり、保管や運搬に不便である。
【0003】
そこで、従来では、特許第2597533号(特許文献1)に開示されているような搬送装置を用いることによって、一方のPTPシートの凸部間に他方のPTPシートの凸部を配置した一対のPTPシートを準備し、これを必要な数だけ積み重ねて出荷するようにしていた。
【特許文献1】特許第2597533号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の搬送装置(特許文献1)は、PTPシートを上下の案内板に振り分けるリフトと、PTPシートを反転させる反転装置とが搬送ラインの異なる位置に別々に設けられていたので、搬送ラインの長さが長くなり過ぎていた。また、反転装置は、搬送ラインの長手方向に対して直交する方向へ延びて設けられていたので、反転装置を搬送路の幅内に納めることができず、搬送ラインの最大幅が広くなり過ぎていた。したがって、搬送ライン全体の設置スペースを広く確保しなければならず、設置スペースの狭小化の要請に応えることが困難であった。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、搬送ライン全体の設置スペースを狭小化することができる、PTPシート搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明は、「上流側搬送路12から供給された2枚のPTPシート14を向き合わせて下流側搬送路16へ搬送するPTPシート搬送装置10であって、上下2段に配置された2つの収容部Aを有する反転部48、反転部48を180度回転させることによって収容部Aの位置を入れ替える回転手段26、および反転部48を上流側搬送路12の出口から下流側搬送路16の入口へ移送する移送手段13を備えるPTPシート搬送装置10」である。
【0007】
この発明において、PTPシート14を搬送する際には、まず、上流側搬送路12から供給されたPTPシート14が反転部48の一方の収容部Aに収容され、続いて、反転部48が回転手段26によって180度回転されることによって2つの収容部Aの位置が入れ替えられる。そして、後続するPTPシート14が反転部48の他方の収容部Aに収容される。その後、反転部48が移送手段13によって上流側搬送路12の出口から下流側搬送路16の入口へ移送され、各PTPシート14が反転部48から下流側搬送路16へ与えられる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した「PTPシート搬送装置10」において、「移送手段は、複数の反転部48が放射状に取り付けられた回転枠32を有している」ことを特徴とする。
【0009】
この発明では、回転枠32が所定角度ずつ間欠的に回動されながら各反転部48が順に作動される。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した「PTPシート搬送装置10」において、「反転部48は、収容部Aに収容されたPTPシート14を挟持する可動挟持片76と、可動挟持片76を挟持方向へ付勢するバネ86とを有しており、PTPシート14を収容する際には可動挟持片76がバネ86の付勢に抗して押し戻される」ことを特徴とする。
【0011】
この発明において、可動挟持片76をバネ86の付勢に抗して押し戻すと、収容部Aが開かれてPTPシート14の収容が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜3に記載した発明によれば、一方のPTPシートを反転させる工程と、2枚のPTPシートを上下に振り分けて向き合わせる工程とを反転部において実行することができるので、搬送ラインの全長を短縮することができ、搬送ライン全体の設置スペースを狭小化することができる。また、請求項2に記載した発明によれば、複数の反転部が回転枠に放射状に取り付けられているので、回転枠を所定角度ずつ間欠的に回動させながら各反転部を順に作動させることができ、PTPシートの「反転および向き合わせの動作」と「送り出しの動作」とを異なる反転部において同時に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図3を参照して、本発明が適用されたPTPシート搬送装置10は、上流側搬送路12から供給された2枚のPTPシート14を向き合わせて下流側搬送路16へ搬送するものである。
【0014】
ここで、PTPシート14は、図2に示すように、複数のポケット14aを有しており、各ポケット14aの開口部が一枚の封止シートで塞がれている。また、上流側搬送路12と下流側搬送路16(図1)とは所定の間隔を隔てて一直線上に配設されており、下流側搬送路16の入口は上下2段に分かれている。そして、上流側搬送路12の出口近傍には、クランク式の押込み装置18が配設されており、下流側搬送路16の入口近傍には、クランク式の引出し装置20が配設されている。
【0015】
搬送装置10は、図3に示すように、上流側搬送路12と下流側搬送路16との間に配設されたフレーム22を有しており、フレーム22の上部には回転軸24が回転自在に架け渡されており、フレーム22の下部には動力部26が配設されている。そして、回転軸24の周囲には2つの搬送部28が併設されている。
【0016】
各搬送部28は、図4に示すように、回転軸24の周囲に固定的に配設された固定枠30と、固定枠30の周囲に回転可能に配設された回転枠32とを有している。固定枠30は固定フランジ部30aによりフレーム22に固定されており(図3)、回転枠32は軸受34を介して回転軸24の外周面に取り付けられており、回転軸24および回転枠32にはプーリ36および38が取り付けられている。
【0017】
そして、回転軸24には、主動傘歯車40が回転可能に取り付けられており、固定枠30には、主動傘歯車40と噛み合う従動傘歯車42が取り付けられており、従動傘歯車42の回転軸には、先端面に溝44aを有する動力伝達部44が取り付けられている。また、固定枠30の軸受フランジ部30bには、動力伝達部44の溝44aと連続する周方向溝46aを有するガイド円盤46が取り付けられており、回転枠32には、動力伝達部44から伝達された回転力によって回転される複数(この実施例では4個)の反転部48が放射状に配設されており、フレーム22には、図5に示すように、反転部48を開閉操作するための押圧装置50が取り付けられている。
【0018】
各反転部48は、図6〜図9に示すように、略コ状の本体部52と2つの可動挟持部54とを備えており、本体部52の内側には、各可動挟持部54によって上下2段の収容部Aが構成されている。なお、図6〜図8は、収容部Aを開いた状態を示したものであり、図9は、収容部Aを閉じた状態を示したものである。
【0019】
本体部52は、対向する2つの固定片56と、固定片56どうしを連結する連結部58とを有しており、連結部58の所定箇所には、可動挟持部54をガイドするガイド孔60およびガイド軸62が設けられており、連結部58の背面中央部には、回転軸64が一体的に設けられている。そして、回転軸64の外周面には、軸受66を介して筒状の固定部68が取り付けられており、固定部68の外周面には、雄ネジ70が形成されている。また、回転軸64の先端面には、動力伝達部44(図4)の溝44aに嵌合される2つのカムフォロア72が取り付けられている。
【0020】
可動挟持部54は、本体部52の連結部58に組み込まれた基礎プレート74を有しており、基礎プレート74には、固定片56と対向する可動挟持片76と、ガイド軸62の外周に配設されたリニアブッシュ78を保持するブロック79と、固定片56の外面より外側に突出した位置に配設されたカムフォロア80と、L状金具82とが取り付けられており、L状金具82には、ガイド孔60に摺動自在に挿入されたピン84が取り付けられている。さらに、ガイド孔60の内部におけるピン84の外周には、可動挟持片76を挟持方向(収容部Aを閉じる方向)へ付勢するバネ86が配設されている。
【0021】
押圧装置50は、図5に示すように、電磁ソレノイドによって進退自在に構成された押圧部材88を有しており、この押圧部材88の上面すなわち押圧面88aは、先端へ向かうにつれて降下するように傾斜されている。そして、押圧部材88が前進したときに、押圧面88aが反転部48のカムフォロア80に押し当てられ、バネ86(図6)の付勢に抗して可動挟持片76が押し戻され、収容部Aが開かれる。
【0022】
反転部48を構成する2つの可動挟持部54は、図7および図8に示すように、回転軸64を中心として対象となるように構成されている。したがって、動力伝達部44(図4)から付与された回転力によって反転部48が180度回転された場合でも、各可動挟持部54のカムフォロア80は同じ位置に位置決めされることとなり、一つの押圧装置50(図5)によって各収容部Aを開閉することができる。
【0023】
動力部26は、図10に示すように、モータ90と、減速装置92と、2つのインデックス94および96とによって構成されている。インデックス94は、反転部48を所定のタイミングで180度回転させるように、出力タイミングと回転角度とが設定されたものであり、インデックス96は、回転枠32を所定のタイミングで90度回転させるように、出力タイミングと回転角度とが設定されたものである。そして、インデックス94および96の各出力軸には、プーリ98および100が取り付けられており、プーリ98と回転軸24のプーリ36とがベルト102を介して連結されており、プーリ100と回転枠32のプーリ38とがベルト104を介して連結されている(図3)。
【0024】
搬送装置10を上流側搬送路12と下流側搬送路16との間に配設して、搬送ライン全体の駆動スイッチを「ON」にすると、図2に示すように、上流側搬送路12の上流側から下流側へ向けてPTPシート14が順次搬送され、このPTPシート14が押込み装置18によって搬送装置10に与えられる。そして、搬送装置10においてPTPシート14が反転されるとともに、2枚のPTPシート14が向き合わされ、これらのPTPシート14が下流側搬送路16の入口へ移送された後、引出し装置20によって下流側搬送路16に与えられる。下流側搬送路16は入口において上下に分かれているが、その先方では統合されており、統合部において2枚のPTPシート14が抱き合わされる。
【0025】
搬送装置10では、図2に示すように、反転部48の下側の収容部Aが上流側搬送路12の出口に対して位置決めされ、PTPシート14が押込み装置18によって下側の収容部Aに押し込まれる。このとき、押込み装置18に同期して押圧装置50(図5)が作動され、押圧部材88によって反転部48のカムフォロア80が押し上げられ、バネ86の付勢に抗して可動挟持片76が押し戻されて収容部Aが開かれる。
【0026】
そして、反転部48が動力部26、回転軸24および動力伝達部44等を含む「回転手段」によって180度回転され、上側の収容部Aが下側に移動され、この収容部Aに次のPTPシート14が押し込まれる。反転部48において2枚のPTPシート14が向き合わされると、動力部26および回転枠32等を含む「移送手段13」によって反転部48が90度回転され、上流側搬送路12の出口に対して次の反転部48が位置決めされる。そして、PTPシート14が収容された反転部48が下流側搬送路16の出口に到達すると、PTPシート14が引出し装置20によって引き出される。なお、回転枠32が回転される際には、反転部48のカムフォロア72がガイド円盤46の周方向溝46aに案内されるので、カムフォロア72を動力伝達部44(図4)の溝44aに位置決めするのは容易である。
【0027】
この実施例によれば、一方のPTPシート14を反転させる工程と、2枚のPTPシート14を上下に振り分けて向き合わせる工程とを反転部48において実行することができるので、搬送ラインの全長を短縮することができ、搬送ライン全体の設置スペースを狭小化することができる。
【0028】
なお、上述の実施例では、一つのモータ90の出力をインデックス94および96に振り分けて回転軸24および回転枠32を回転させるようにしているが、回転軸24および回転枠32を独立した2つのモータによって個別に回転させるようにしてもよい。ただし、回転のタイミングを正確に制御するためには、一つのモータの出力をインデックスで振り分けて取り出すことが望ましい。
【0029】
また、上述の実施例では、回転軸24を水平方向に配置することによって、各反転部48を鉛直面内で回転させるようにしているが、回転軸24を鉛直方向に配置することによって、各反転部48を水平面内で回転させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】PTPシート搬送装置が組み込まれた搬送ラインを示す図である。
【図2】PTPシート搬送装置の動作を示す図である。
【図3】PTPシート搬送装置を示す正面図である。
【図4】PTPシート搬送装置の要部を示す拡大図である。
【図5】「押圧手段」としての押圧装置を示す図である。
【図6】反転装置(開状態)を示す側面図である。
【図7】反転装置(開状態)を示す左側面図である。
【図8】反転装置(開状態)を示す右側面図である。
【図9】反転装置(閉状態)を示す側面図である。
【図10】動力部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
10… 搬送装置
12… 上流側搬送路
14… PTPシート
16… 下流側搬送路
18… 押込み装置
20… 引出し装置
22… フレーム
24… 回転軸
26… 動力部
28… 搬送部
30… 固定枠
32… 回転枠
44… 動力伝達部
48… 反転部
50… 押圧装置(押圧手段)
54… 可動挟持部
76… 可動挟持片
80… カムフォロア
86… バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側搬送路から供給された2枚のPTPシートを向き合わせて下流側搬送路へ搬送するPTPシート搬送装置であって、
上下2段に配置された2つの収容部を有する反転部、
前記反転部を180度回転させることによって前記収容部の位置を入れ替える回転手段、および
前記反転部を前記上流側搬送路の出口から前記下流側搬送路の入口へ移送する移送手段を備えるPTPシート搬送装置。
【請求項2】
前記移送手段は、複数の前記反転部が放射状に取り付けられた回転枠を有している、請求項1に記載のPTPシート搬送装置。
【請求項3】
前記反転部は、前記収容部に収容されたPTPシートを挟持する可動挟持片と、前記可動挟持片を挟持方向へ付勢するバネとを有しており、PTPシートを収容する際には前記可動挟持片がバネの付勢に抗して押し戻される、請求項1または2に記載のPTPシート搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−16169(P2006−16169A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197219(P2004−197219)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(591206108)マルホ発條工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】