説明

RQL方式の低NOx燃焼器

【課題】RQL方式の低NOx燃焼器1の運転中におけるNOx、CO、THCの排出量の低減とスモークの排出量の低減を両立させること。
【解決手段】各二次空気導入孔25h,27h,29h,31hの主流方向の位置Pは、非燃焼状態において平均流速で流れる流れが燃焼室17内に滞留する滞留時間Tの1/3時間で到達する箇所からその上流側の位置に設定され、複数の二次空気導入孔25h,27h,29h,31hの総開口面積は、燃焼室17内に導入される全ての空気の流量に対する複数の二次空気導入孔25h,27h,29h,31hから導入される二次空気の流量の比が20〜70%になるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOx(窒素酸化物)の排出量を低減しつつ、燃料と空気との混合気を燃焼させて、燃焼ガスを生成するRQL(Rich burn Quick quench Lean burn: 過濃燃焼急速混合希薄燃焼)方式の低NOx燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ジェットエンジン等のガスタービンに用いられる燃焼器において、環境保護の観点からNOxの排出量の低減化が求められており、その要請に応えるために、簡易な構成からなるRQL方式の低NOx燃焼器が開発されている。このRQL方式の低NOx燃焼器は、燃焼器ライナの燃焼室内における一次燃焼領域において燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態(酸素不足状態)で過濃燃焼(一次燃焼)させて、燃焼器ライナの燃焼室内における二次燃焼領域において一次燃料領域からの燃焼ガスと二次空気との混合気を酸素過剰状態(燃料希薄状態)で希薄燃焼(二次燃焼)させることにより、火炎温度を下げて、NOxの排出量の低減を図る燃焼方式である。
【0003】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1から特許文献3に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−208938号公報
【特許文献2】特開2011−163626号公報
【特許文献3】特開2009−74798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一次燃焼領域における過濃燃焼によってRQL方式の低NOx燃焼器の運転中におけるNOxの排出量を低減するためには、燃焼室内において一次燃焼領域を十分に確保して、一次燃焼領域における混合気の均質性(混合度合い)を高める必要がある。一方、燃焼室内において一次燃焼領域を大きくすると、その分だけ二次燃焼領域が小さくなって、一次燃焼領域における過濃燃焼によって排出されたスモーク(煤煙)を二次燃焼領域において十分に燃焼(希薄燃焼)させることができず、低NOx燃焼器の運転中におけるスモークの排出量が増大する。つまり、低NOx燃焼器の運転中におけるNOxの排出量の低減とスモークの排出量の低減を両立させることが困難であるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のRQL方式の低NOx燃焼器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、前述の問題を解決するために、RQL方式の低NOx燃焼器を模擬した複数の試験品を試作し、二次空気導入孔の主流方向の位置、及び燃焼器ライナの燃焼室内に導入される全ての空気の流量に対する複数の二次空気導入孔から導入される二次空気の流量の比(二次空気の流量比)をパラメータとして変化させつつ、複数の試験品について燃焼試験を行った。そして、本発明の発明者は、その燃焼試験を行った結果、各二次空気導入孔を燃料噴射弁に近づけた場合でも、二次空気の流量比を20〜70%に設定することにより、低NOx燃焼器の運転中におけるNOx(窒素酸化物)、CO(一酸化炭素)、THC(未燃炭化水素)の排出量を低減できるという、新規な知見を得ることができ、本発明を完成するに至った。ここで、各二次空気導入孔を燃料噴射弁に近づけた場合とは、各二次空気導入孔の主流方向の位置を、非燃焼状態において平均流速(低NOx燃焼器の運転時の平均流速)で流れる流れ(主流)が燃焼室内に滞留する滞留時間の1/3時間で到達する箇所からその上流側の位置に設定した場合のことをいう。
【0008】
本発明の特徴は、ガスタービンに用いられ、NOxの排出量を低減しつつ、燃料と空気(一次空気、二次空気)との混合気を燃焼させて、燃焼ガスを生成するRQL方式の低NOx燃焼器において、上流側に隔壁を備え、内側に混合気を燃焼させるための燃焼室を有した燃焼器ライナと、前記隔壁に設けられ、前記燃焼室内に燃料を噴射(噴霧)する燃料噴射弁と、前記隔壁に設けられ、前記燃焼室内に一次空気を導入する一次空気導入部材と、を具備し、前記燃焼器ライナの周面に二次空気を前記燃焼室内に導入する複数の二次空気導入孔が周方向に沿って間隔を置いて設けられ、前記燃焼室内における前記二次空気導入孔の上流側に燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態(酸素不足状態)で過濃燃焼(一次燃焼)させるための一次燃焼領域が形成されると共に、前記燃焼室内における前記二次空気導入孔の下流側に前記一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気との混合気を酸素過剰状態(燃料希薄状態)で希薄燃焼(二次燃焼)させるための二次燃焼領域が形成されるようになっており、各二次空気導入孔の前記主流方向の位置は、非燃焼状態において平均流速(前記低NOx燃焼器の運転時の平均流速)で流れる流れ(主流)が前記燃焼室内に滞留する滞留時間の1/3時間で到達する箇所(所定の箇所)からその上流側の位置に設定され、複数の前記二次空気導入孔の総開口面積は、前記燃焼室内に導入される全ての空気の流量に対する複数の前記二次空気導入孔から導入される二次空気の流量の比(二次空気の流量比)が20〜70%になるように設定されていることを要旨とする。
【0009】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。また、「主流方向」とは、空気、混合気、又は燃焼ガスの主流の流れ方向のことをいい、「上流側」とは、主流方向から見て上流側のことをいい、「下流側」とは、主流方向から見て下流側のことをいう。
【0010】
本発明の特徴によると、前記燃料噴射弁によって前記燃焼室内に燃料が噴射されると共に、前記一次空気導入部材から一次空気が前記燃焼室内に導入されることにより、前記一次燃焼領域において燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態で過濃燃焼させて、燃焼ガスを生成する。続いて、複数の前記二次空気導入孔から多量の二次空気が前記燃焼室内に導入されることにより、前記一次燃焼領域と前記二次燃焼領域の間で燃焼ガスと二次空気が急速に混合され、前記二次燃焼領域において燃焼ガスと二次空気との混合気を酸素過剰状態(燃料希薄状態)で希薄燃焼させて、燃焼ガスを生成して前記燃焼器ライナから排出する。そして、前記一次燃焼領域における過濃燃焼と前記二次燃焼領域における希薄燃焼が連続して行われることにより、前記低NOx燃焼器の下流側に配設されたタービンを駆動することができる。
【0011】
ここで、前記二次空気の流量比が20〜70%になるように複数の前記二次空気導入孔の総開口面積が設定されているため、各二次空気導入孔を前記燃料噴射弁に近づけることにより、具体的には、各二次空気導入孔の前記主流方向の位置が前記所定の箇所からその上流側の位置に設定されることにより、前記低NOx燃焼器の運転中におけるNOx、CO、THCの排出量を低減できる。換言すれば、前記一次燃焼領域により燃焼安定性を確保した上で、前記低NOx燃焼器の運転中におけるNOx、CO、THCの排出量の低減を図りつつ、前記燃焼室内において前記二次燃焼領域を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記一次燃焼領域により燃焼安定性を確保した上で、前記低NOx燃焼器の運転中におけるNOx、CO、THCの排出量の低減を図りつつ、前記燃焼室内において前記二次燃焼領域を十分に確保できるため、前記一次燃焼領域における過濃燃焼によって排出されたスモーク(煤煙)を前記二次燃焼領域において十分に燃焼(希薄燃焼)させて、前記低NOx燃焼器の運転中におけるスモークの排出量を低減することができる。よって、前記低NOx燃焼器の運転中におけるNOx、CO、THCの排出量の低減とスモークの排出量の低減を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るRQL方式の低NOx燃焼器の部分側断面図である。
【図2】図2は、図1におけるII-II線に沿った図である。
【図3】図3は、図2におけるIII-III線に沿った図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図1から図3を参照して説明する。なお、図面中、「F」は、前方向(上流側)、「R」は、後方向(下流側)をそれぞれ指してある。
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係るRQL(Rich burn Quick quench Lean burn: 過濃燃焼急速混合希薄燃焼)方式の低NOx燃焼器1は、NOxの排出量を低減しつつ、燃料と空気(一次空気、二次空気)との混合気を燃焼させて、燃焼ガスを生成するものである。また、低NOx燃焼器1は、ジェットエンジン(図示省略)に用いられることの多い所謂アニュラ型の燃焼器である。
【0016】
低NOx燃焼器1は、中空環状の燃焼器ケース3を具備しており、この燃焼器ケース3は、環状のアウタケース5と、このアウタケース5の内側にジェットエンジンのエンジン軸心ECを中心とした同心円状に設けられた環状のインナケース7とを備えている。また、燃焼器ケース3の入口側は、ジェットエンジンにおける圧縮機(図示省略)からの空気(圧縮空気)を導入可能である。
【0017】
燃焼器ケース3内には、中空環状の燃焼器ライナ9が同心状に設けられており、この燃焼器ライナ9は、環状のアウタライナ11と、このアウタライナ11の内側に同心状に設けられた環状のインナライナ13と、上流側(前側)にアウタライナ11とインナライナ13を連結するように設けられた環状の隔壁(前壁)15とを備えている。また、燃焼器ケース3は、内側に、燃料と空気(一次空気、二次空気)との混合気を燃焼させるための環状の燃焼室17を有しており、換言すれば、アウタライナ11とインナライナ13との間には、環状の燃焼室17が区画形成されている。なお、アウタライナ11、インナライナ13、及び隔壁15には、フィルム冷却等を行うための複数の冷却孔(図示省略)が形成されている。
【0018】
隔壁15には、燃焼室17内に燃料を円錐状の噴霧流Sとして噴霧する複数の燃料噴射弁(燃料噴射ノズル)19が周方向に沿って間隔を置いて設けられており、各燃料噴射弁19は、例えば公知の構成からなる渦巻き噴射弁であって、中央(中心部)に、燃料を噴霧可能な噴射孔(ノズル孔)19hを有している。また、アウタケース5には、燃料を供給可能な複数の燃料供給管21が前記同心円の周方向に沿って間隔を置いて設けられており、各燃料供給管21の先端部は、対応する燃料噴射弁19の基部に接続されている。なお、アウタケース5の適宜位置には、燃焼室17内で燃料に着火(点火)する複数の点火栓(図示省略)が燃焼室17側へ突出して設けられている。
【0019】
隔壁15における各燃料噴射弁19の周りには、燃焼室17内に一次空気を旋回流として導入する一次空気導入部材としてのスワラ(軸流スワラ又は接線流スワラ)23が設けられている。また、スワラ23の総開口面積は、燃焼室17内に導入される全ての空気の流量に対するスワラ23から導入される一次空気の流量の比(一次空気の流量比)が20%以下になるように設定されている。前記一次空気の流量比が20%以下になるように設定されるようにしたのは、20%を超えてされると、後述の二次空気の流量比を十分に確保することが困難になり、NOxの排出量の低減効果が小さくなるからである。
【0020】
アウタライナ11の周面(燃焼器ライナ9の外周面)には、アウタスリーブ25とアウタスリーブ27が燃焼室17側へ突出しかつ周方向に沿って交互に設けられており、各アウタスリーブ25は、内側に、二次空気を燃焼室17内に導入するアウタ二次空気導入孔25hを有してあって、各アウタスリーブ27は、内側に、二次空気を燃焼室17内に導入するアウタ二次空気導入孔27hを有してある。換言すれば、アウタライナ11の周面には、アウタ二次空気導入孔25hとアウタ二次空気導入孔27hが複数のアウタスリーブ25,27を介して周方向に沿って交互に設けられている。同様に、インナライナ13の周面(燃焼器ライナ9の内周面)には、インナスリーブ29とインナスリーブ31が燃焼室17側へ突出しかつ周方向に沿って交互に設けられており、各インナスリーブ29は、内側に、二次空気を燃焼室17内に導入するインナ二次空気導入孔29hを有してあって、各インナスリーブ31は、内側に、二次空気を燃焼室17内に導入するインナ二次空気導入孔31hを有してある。換言すれば、インナライナ13の周面には、インナ二次空気導入孔29hとインナ二次空気導入孔31hが複数のインナスリーブ29,31を介して周方向に沿って交互に設けられている。
【0021】
ここで、燃焼室17内における二次空気導入孔25h,27h,29h,31hの上流側(前側)には、燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態(酸素不足状態)で過濃燃焼(一次燃焼)させるための一次燃焼領域A1が形成されようになっている。また、燃焼室17内における二次空気導入孔25h,27h,29h,31hの下流側(後側)には、一次燃焼領域A1からの燃焼ガスと二次空気との混合気を酸素過剰状態(燃料希薄状態)で希薄燃焼(二次燃焼)させるための二次燃焼領域A2が形成されるようになっている。
【0022】
各二次空気導入孔25h,27h,29h,31hの主流方向の位置(本発明の実施形態にあっては、燃焼器ライナ9の軸方向の位置)Pは、非燃焼状態において平均流速(低NOx燃焼器1の運転時の平均流速)で流れる流れ(主流)が燃焼室17内に滞留する滞留時間Tの1/3時間で到達する箇所、望ましくは、滞留時間Tの1/4時間で到達する箇所からその上流側の位置でかつ滞留時間Tの1/5時間で到達する箇所からその下流側の位置に設定されている。各二次空気導入孔25h,27h,29h,31hの主流方向の位置Pが滞留時間Tの1/5時間で到達する箇所からその下流側の位置に設定されるようにしたのは、滞留時間Tの1/5時間で到達する箇所よりも上流側の位置に設定されると、低負荷時における燃焼安定性を十分に確保することが困難になるからである。なお、非燃焼状態において平均流速で流れる流れが燃焼室17内に滞留する滞留時間Tで到達する箇所は、燃焼器ライナ9の出口端である。
【0023】
複数の二次空気導入孔25h,27h,29h,31hの総開口面積は、燃焼室17内に導入される全ての空気の流量に対する複数の二次空気導入孔25h,27h,29h,31hから導入される二次空気の流量の比(二次空気の流量比)が20〜70%、好ましくは30〜50%になるように設定されている。前記二次空気の流量比が20%以上になるように設定されようにしたのは、20%未満になるように設定されると、一次燃焼領域A1からの燃焼ガスと二次空気との混合気の希薄化を促進できず、低NOx燃焼器1の運転中におけるNOx(窒素酸化物)NOxを低減することが困難になるからである。一方、前記二次空気の流量比が70%以下になるように設定されようにしたのは、70%を超えるように設定されると、二次燃焼領域A2における燃焼効果が十分に発揮されず、CO(一酸化炭素)、THC(未燃炭化水素)の排出量を低減することが困難になるからである。
【0024】
複数のアウタ二次空気導入孔25h,27h及び複数のインナ二次空気導入孔29h,31hは、非対向になるように周方向に沿って互い違いに配置されている。ただし、二次空気の流量比が40%以下になるように設定された場合には、複数のアウタ二次空気導入孔25h,27h及び複数のインナ二次空気導入孔29h,31hが対向になるように配置されてあっても構わない。また、アウタ二次空気導入孔25hの開口面積は、アウタ二次空気導入孔27hの開口面積よりも大きくなるように設定されており、インナ二次空気導入孔29hの開口面積は、インナ二次空気導入孔31hの開口面積よりも大きくなるように設定されている。換言すれば、燃料噴射弁19に近い側の二次空気導入孔25h,29hの開口面積は、燃料噴射弁19に遠い側の二次空気導入孔27h,31hの開口面積よりも大きくなるように設定されている。
【0025】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0026】
複数の燃料噴射弁19によって燃焼室17内に燃料が円錐状の噴霧流Sとして噴射されると共に、複数のスワラ23から一次空気が旋回流として導入される。これにより、一次燃焼領域A1において燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態で過濃燃焼させて、燃焼ガスを生成する。なお、燃料と一次空気との混合気を燃焼させる直前に、点火栓によって混合気中の燃料を着火する。
【0027】
続いて、複数のアウタ二次空気導入孔25h,27h及び複数のインナ二次空気導入孔29h,31hから多量の二次空気が燃焼室17内に高い貫通度(径方向の貫通度)で導入される。これにより、一次燃焼領域A1と二次燃焼領域A2の間で燃焼ガスと二次空気が急速に混合され、二次燃焼領域A2において燃焼ガスと二次空気との混合気を酸素過剰状態で希薄燃焼させて、燃焼ガスを生成して燃焼器ライナ9から排出する。
【0028】
ここで、複数のアウタ二次空気導入孔25h,27hがアウタライナ11の外周面に複数のアウタスリーブ25,27を介して設けられかつ複数のインナ二次空気導入孔29h,31hがインナライナ13の内周面に複数のインナスリーブ29,31を介して設けられているため、前述のように、燃焼室17内に導入される二次空気の貫通度を高く設定することができる。また、複数のアウタ二次空気導入孔25h,27h及び複数のインナ二次空気導入孔29h,31hが非対向になるように周方向に沿って互い違いに配置されているため、複数のアウタ二次空気導入孔25h,27hから導入された二次空気と複数のインナ二次空気導入孔29h,31hから導入された二次空気との衝突による強い逆流を阻止できる。更に、燃料噴射弁19に近い側の二次空気導入孔25h,29hの開口面積が燃料噴射弁19に遠い側の二次空気導入孔27h,31hの開口面積よりも大きくなるように設定されているため、燃焼室17内における周方向の燃料の濃淡分布に応じて、燃焼室17内に二次空気が導入されることになる。
【0029】
前述の一次燃焼領域A1における過濃燃焼と二次燃焼領域A2における希薄燃焼が連続して行われることにより、低NOx燃焼器1の下流側に配設されたタービン(図示省略)を駆動して、ジェットエンジンの稼動を継続することができる。
【0030】
ここで、前記二次空気の流量比が20〜70%になるように複数の二次空気導入孔25h,27h,29h,31hの総開口面積が設定されているため、各二次空気導入孔25h,27h,29h,31hを燃料噴射弁19に近づけることにより、具体的には、各二次空気導入孔25h,27h,29h,31hの主流方向の位置Pが前記所定の箇所からその上流側の位置に設定されることにより、低NOx燃焼器1の運転中におけるNOx、CO、THCの排出量を低減できる。換言すれば、一次燃焼領域A1により燃焼安定性を確保した上で、低NOx燃焼器1の運転中におけるNOx、CO、THCの排出量の低減を図りつつ、燃焼室17内において二次燃焼領域A2を十分に確保することができる。
【0031】
従って、本発明の実施形態によれば、一次燃焼領域A1により燃焼安定性を確保した上で、低NOx燃焼器1の運転中におけるNOx、CO、THCの排出量の低減を図りつつ、燃焼室17内において二次燃焼領域A2を十分に確保できるため、一次燃焼領域A1における過濃燃焼によって排出されたスモーク(煤煙)を二次燃焼領域A2において十分に燃焼(希薄燃焼)させて、低NOx燃焼器1の運転中におけるスモークの排出量を低減することができる。よって、低NOx燃焼器1の運転中におけるNOx、CO、THCの排出量の低減とスモークの排出量の低減を両立させることができる。
【0032】
特に、複数のアウタ二次空気導入孔25h,27hから導入された二次空気と複数のインナ二次空気導入孔29h,31hから導入された二次空気との衝突による強い逆流を阻止できるため、一次燃焼領域A1が希釈されて、一次燃焼領域A1の火炎温度が局所的に高くなることを抑えることができる。また、燃焼室17内における周方向の燃料の濃淡分布に応じて、燃焼室17内に二次空気が導入されるため、二次燃焼領域A2における混合気の均質性(混合度合い)を高めることができる。よって、低NOx燃焼器1の運転中におけるNOxの排出量を十分に低減することができる。
【0033】
具体的には、燃焼試験の結果、低NOx燃焼器1の運転中におけるNOxの排出量及びスモークの排出量をICAO規制値(2004年施行基準)の半分以下に低減できることが確認された。また、低NOx燃焼器1の出口温度不均一率PTF(PTF=(燃焼器出口最大温度−燃焼器出口平均温度)/燃焼器平均温度上昇)が0.2よりも小さくできることが確認された。
【0034】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、例えばアニュラ型の低NOx燃焼器1に適用した技術的思想をカン型の低NOx燃焼器(図示省略)に適用する等、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0035】
A1 一次燃焼領域
A2 二次燃焼領域
G 定在渦
S 噴霧流
1 燃焼器
3 燃焼器ケース
5 アウタケース
7 インナケース
9 燃焼器ライナ
11 アウタライナ
13 インナライナ
15 隔壁
17 燃焼室
19 燃料噴射弁
21 燃料供給管
23 スワラ
25 アウタスリーブ
25h アウタ二次空気導入孔
27 アウタスリーブ
27h アウタ二次空気導入孔
29 インナスリーブ
29h インナ二次空気導入孔
31 インナスリーブ
31h インナ二次空気導入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンに用いられ、NOxの排出量を低減しつつ、燃料と空気との混合気を燃焼させて、燃焼ガスを生成するRQL方式の低NOx燃焼器であって、
上流側に隔壁を備え、内側に混合気を燃焼させるための燃焼室を有した燃焼器ライナと、
前記隔壁に設けられ、前記燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記隔壁に設けられ、前記燃焼室内に一次空気を導入する一次空気導入部材と、を具備し、
前記燃焼器ライナの周面に二次空気を前記燃焼室内に導入する複数の二次空気導入孔が周方向に沿って間隔を置いて設けられ、前記燃焼室内における前記二次空気導入孔の上流側に燃料と一次空気との混合気を燃料過濃状態で過濃燃焼させるための一次燃焼領域が形成されると共に、前記燃焼室内における前記二次空気導入孔の下流側に前記一次燃焼領域からの燃焼ガスと二次空気との混合気を酸素過剰状態で希薄燃焼させるための二次燃焼領域が形成されるようになっており、
各二次空気導入孔の前記主流方向の位置は、非燃焼状態において平均流速で流れる流れが前記燃焼室内に滞留する滞留時間の1/3時間で到達する箇所からその上流側の位置に設定されていることを特徴とするRQL方式の低NOx燃焼器。
【請求項2】
複数の前記二次空気導入孔の総開口面積は、前記燃焼室内に導入される全ての空気の流量に対する複数の前記二次空気導入孔から導入される二次空気の流量の比が20〜70%になるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のRQL方式の低NOx燃焼器。
【請求項3】
前記燃焼器ケース及び前記燃焼器ライナは中空環状を呈し、前記隔壁は環状を呈してあって、前記燃料噴射弁が前記隔壁に周方向に沿って間隔を複数設けられ、前記一次空気導入部材が前記隔壁における各燃料噴射弁の周囲に設けられ、
複数の前記二次空気導入孔は、前記燃焼器ライナの外周面に周方向に沿って間隔を置いて設けられた複数のアウタ二次空気導入孔と、前記燃焼器ライナの内周面に周方向に沿って間隔を置いて設けられた複数のインナ二次空気導入孔とからなり、複数の前記アウタ二次空気導入孔及び複数の前記インナ二次空気導入孔は、非対向になるように周方向に沿って互い違いに配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のRQL方式の低NOx燃焼器。
【請求項4】
前記燃料噴射弁に近い側の前記アウタ二次空気導入孔の開口面積は、前記燃料噴射弁に遠い側の前記アウタ二次空気導入孔の開口面積よりも大きくなるように設定され、前記燃料噴射弁に近い側の前記インナ二次空気導入孔の開口面積は、前記燃料噴射弁に遠い側の前記インナ二次空気導入孔の開口面積よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項3に記載のRQL方式の低NOx燃焼器。
【請求項5】
各二次空気導入孔は、前記燃焼器ライナに設けられたスリーブの内側に有していることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載のRQL方式の低NOx燃焼器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−104595(P2013−104595A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247617(P2011−247617)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)