説明

TWEAKのアンタゴニストおよびTWEAKレセプターのアンタゴニスト、ならびに免疫学的障害を処置するためのこれらの使用

【課題】効率的におよび特異的にGVHDの発症の局面をブロックすること。
【解決手段】本発明は、TWEAKの活性を改変する試薬、ならびに免疫学的障害の処置のための治療剤としての上記試薬の使用に関する。また、本発明は、動物における免疫学的障害の発症をブロックするかあるいは該障害の重篤度または効果を処置または減少するための方法を提供し、この方法は、治療上有効な量のTWEAKブロッキング剤および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。また、本発明は、治療上有効な量のTWEAKブロッキング剤および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、新規なタンパク質TWEAKに結合する試薬を含む組成物および方法、ならびに免疫学的障害の発症をブロックするためのTWEAK結合試薬の使用に関する。TWEAK結合試薬としては、慢性対宿主性移殖片病の発症をブロックするために本明細書中で使用されるようなモノクローナル抗体、可溶性TWEAKレセプター−Ig融合タンパク質、あるいはTWEAKレセプターへのTWEAKの結合を改変する他の分子が挙げられる。本発明の他の実施形態は、TWEAKレセプターに結合して、TWEAKレセプターの活性を改変するか、またはTWEAKレセプターの細胞内シグナル伝達を改変する、試薬を含む。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫学的障害は、広範な種類の疾患および病理(自己免疫疾患、急性炎症障害および慢性炎症障害、器官移植拒絶、対宿主性移殖片病(GVHD)、リンパ系細胞悪性疾患、敗血症および他の形態のショック、HIVおよびSCIDSにて見られる免疫応答性の喪失、ならびに腫瘍増殖に対する免疫応答の欠損を含む)として表される。
【0003】
多くの免疫学的障害は、抗原に対する異常な応答または制御されていない応答によって誘発される。自己免疫疾患は、自己抗原に対する免疫系の不適切な応答の結果であり、細胞および組織に対する損傷を生じる。GVHDは、骨髄移植片(BMT)由来のドナー細胞が宿主(すなわち、患者)の抗原に応答する場合に、発症する。器官移植拒絶は、その患者の免疫系が、移植された器官由来の抗原に対して応答する場合に、結果として生じる。急性炎症障害(例えば、過剰アレルギー性状態およびショック)は、惹起する抗原に対する制御されていない免疫応答の結果である。
【0004】
T細胞依存性免疫応答は、T細胞の抗原認識を必要とする。例えば、GVHDは、ドナーT細胞と宿主免疫系細胞との間の複雑な相互作用から生じる。この開始事象は、ドナーT細胞による非自己(すなわち、非宿主)抗原の認識である。これらは、同種抗原と呼ばれる。これらのドナー細胞による同種抗原認識は、免疫調節性および炎症性のサイトカインおよびケモカインの産生を生じ、これらは、ドナーの抗宿主免疫応答を発生および悪化させる。この疾患は、急性形態または慢性形態のいずれかで発症し得、その形態は、発生する免疫応答の型を制御する複雑なサイトカインネットワークの調節に依存する。免疫応答は、Th0、Th1、またはTh2として特徴付けられ得、これは、1)その応答の間に活性化したT細胞により産生されるサイトカインおよびケモカインの性質、ならびに2)その応答の間に補助細胞および他の細胞により産生されるサイトカインおよびケモカインの性質に依存する。免疫応答の間に重要な非T細胞の例は、B細胞、樹状細胞、単球およびマクロファージ、濾胞樹状細胞および内皮細胞である。共に、産生されたサイトカインは、種々の細胞型の分化に影響し、そして産生されたケモカインは、細胞の移動および限局化に影響する。Th0応答は、以前に刺激されていない(未刺激の)T細胞の短期刺激の特徴である。Th0 T細胞は、中程度の量の多数のサイトカイン(特に、Il−2およびTNF)を産生する。繰り返してかまたは慢性的に刺激されたTh0細胞は、Th1またはTh2のいずれかのT細胞へと分化し得、それは、多数の因子に依存する。このような因子としては、補助細胞のサイトカイン産生、T細胞レセプターの関与の強度、および例えば、CD28同時刺激レセプターを介して受けた二次シグナルの性質が挙げられるが、これらに限定されない。特に、主に活性化したマクロファージにより産生されるサイトカインIl−12に対する活性化したT細胞の曝露によって、Th1 T細胞への分化が支持されるが、Il−4およびIl−10への曝露によって、Th2 T細胞への分化が支持される。
【0005】
Th1 T細胞は、炎症応答、T細胞傷害性、およびマクロファージ活性化と関連するサイトカイン(例えば、Il−2およびIFN−γ)を産生する。Th1 T細胞は、組織炎症の部位へと細胞を誘引するケモカイン(例えば、Mip−1α、MIP−1β、RANTES、IP−10、およびMIG)に応答する。細胞傷害性T細胞および活性化したマクロファージは、損傷した細胞および感染した細胞を除去するように作用するので、そのTh1応答は、細胞内病原体に対する免疫応答を制御することを担う。重要なことに、マクロファージおよび内皮細胞によるTh1化学誘引物質ケモカイン(例えば、IP−10およびMIG)の産生は、IFN−yにより綿密に制御される。このIFN−yは、Th1 T細胞により産生される基本型ケモカインである。従って、フィードバックループが、活性化したT細胞とその環境との間に発生し得、これにより特定の時期および位置で特定の型の応答の発生が増強される。
【0006】
Th2 T細胞は、体液性免疫応答(IgE、IgA、およびIgGの産生を必要とする応答を含む)の発生を支持するサイトカイン(例えば、Il−4、Il−5、Il−6、およびIl−10)を産生する。これらのIg応答は、B細胞のT細胞媒介性活性化により駆動され、この応答は、そのIg表現型を表面結合IgMおよびIgDから分泌Igへと「変換」する。分泌Igは、循環において(IgG)、粘膜表面(例えば、腸および口腔(IgA)ならびに呼吸管(IgE))にて、病原体からの感染を制御するように通常は機能する。Igの過剰産生は、疾患(例えば、SLE(IgGおよびIgA)、アレルギー性(I型)過敏症(IgE)、およびGVHD(IgG、IgA、およびIgE)を生じ得る。Th2 T細胞はまた、好酸球およびマスト細胞の活性化を支持し得る。好酸球およびマスト細胞は、例えば、呼吸管における病原体に対する急性応答を媒介し得る。Th2 T細胞は、ケモカイン(例えば、エオタキシン(eotaxin)およびMDC)に応答し、その産生は、NK1.1細胞および活性化したT細胞により産生される基本型サイトカインである、Il−4により綿密に調製される。
【0007】
B細胞とのT細胞の相互作用は、複雑かつ綿密に調節されたプロセスである。活性化プロセスを始めるために、B細胞は、B細胞抗原レセプター(膜Ig)を介して抗原シグナルを受けなければならない。第2に、B細胞は、活性化したT細胞からの特定の接触依存性シグナルおよび接触非依存性シグナルを受けなければならない。1つの必要とされる接触依存性シグナルは、B細胞上のCD40へのT細胞上のCD40Lの結合を介して送達される。1つの必要とされる接触非依存性シグナルは、活性化したT細胞により分泌されるIl−4によって、そしてB細胞上のIl−4レセプターに結合するNK1.1細胞によって、送達される。これらのシグナルは、二次リンパ器官(例えば、脾臓)のT細胞領域内で生じるようである。脾臓、リンパ節、扁桃、パイアー斑および他の二次リンパ器官および三次リンパ器官は、T細胞およびB細胞が代表的に存在する、別個の組織学的領域を有する。すべてのリンパ球は、血液またはリンパからこれらの器官のT細胞領域へと移動し、それはまず、脾臓中の内皮細胞層(例えば、リンパ節およびパイアー斑中の高内皮性小静脈)ならびに内皮細胞層周縁洞を横切ることによる。次いで、このB細胞が、B細胞濾胞として知られるB細胞領域へと移動する。T細胞領域へと移動したが活性化していないB細胞は、2〜3日後にその濾胞を去る。活性化したB細胞は、分化のプロセスを経験する。いくつかの活性化したB細胞(形質細胞として知られる)は、多量の抗原特異的で低親和性のIgM抗体またはIgG抗体を分泌する。これらのB細胞は、代表的には、免疫応答の誘導の後早くに出現し、そして脾臓およびこれらのB細胞が存続する他の組織学的位置の赤色脾髄中に移動し、数日間、抗体を分泌する。他の活性化したB細胞は、二次濾胞として知られる濾胞の領域、または胚中心内で分化する。胚中心は、濾胞樹状細胞(FDC)として知られる、特化した抗原保持細胞のネットワークの周辺に形成し、この細胞は、この胚中心反応を駆動または改良するために抗原を提示すると考えられる。この胚中心内のB細胞は、そのIg表現型を「変換」し、そして「親和性成熟」を経験し、それらB細胞がその抗原標的について高い親和性を提示するという結果になる。通常は、その抗原標的は外来抗原であるが、疾患(例えば、慢性GVHDおよび自己免疫障害)において、そのIgは、自己抗原を認識する。最後に、B細胞はその濾胞を去り、T細胞領域を通って戻り、そしてその器官から輸出循環を介して血流中へと去る。
【0008】
完全に分化して高親和性Igを発現するB細胞は、芽細胞として知られ、そしてそれらは、B細胞濾胞が他の種々の環境(脾臓の赤色脾髄領域、骨髄、肝臓、または呼吸管および腸の内側を覆う粘膜細胞層を含む)に所在を定めるに任せる。これらの完全に分化したB細胞のうちのいくつかは、記憶細胞として知られ、そして長期間、同じ抗原に対して、再び遭遇する場合に応答する準備ができたままであり得る。
【0009】
B細胞は、リンパ器官内の位置から位置へ移動するので、それらのB細胞は、それらのB細胞を案内する特定のシグナル、およびそれらのB細胞の生存を確実にする特定のシグナルを必要とする。例えば、複数のシグナルが、脾臓中のB細胞濾胞機構を維持するために必要とされる。これらのシグナルとしては、ケモカインレセプターBLR−1とBCAリガンドの相互作用、TNF−R55とTNFの相互作用、およびLTβ−RとLTβの相互作用が挙げられる(ChaplinおよびFu、Current Opin.Immunol.10:298〜297(1998)に概説される)。これらの分子経路のいずれかが欠損しているマウスは、脾臓におけるB細胞濾胞の完全性を失う。さらに、これらの遺伝子欠損マウスすべてがまた、脾臓において胚中心反応を経験する能力も失った。他の分子経路の破壊は、胚中心反応のみに影響する。例えば、CD40Lが欠損しているマウスは、B細胞濾胞を維持するが、胚中心は形成しない。胚中心環境内のB細胞は、CD40を介して、生存を維持するため、そしてIgMをダウンレギュレートし、そしてIg発現に変換するために、シグナルを必要とする。
【0010】
B細胞は、濾胞および胚中心内を移動するのみではなく、活性化の後にその濾胞から去り、そして身体中の他の部位へと移動する。記憶B細胞は、骨髄にて見出され得、そしてIgAを発現するB細胞は、腸および他の粘膜部位中の細胞層へ特に移動する。他のシグナルは、おそらく、リンパ画分内およびリンパ画分間の特定の部位へと活性化したT細胞を案内する。例えば、細胞傷害性T細胞は、感染部位または他の抗原攻撃部位へと移動して、その標的を見出し、そしてそれらを溶解し得る。異なる組織学的位置間のT細胞およびB細胞を案内するシグナルすべての正体は、未だ知られていない。しかし、複数の経路が、二次リンパ組織、および感染部位または炎症部位の両方において、抗原に対するT細胞応答およびB細胞応答を調和させるようである。
【0011】
GVHDは、抗原が駆動する免疫応答の十分に研究された例である。GVHDはしばしば、ヒト患者における骨髄移植(BMT)の致死的な結果である。この疾患は、急性形態かまたは慢性形態で生じ得る。GVHDの急性形態または慢性形態は、それぞれ、抗原特異的Th1応答および抗原特異的Th2応答の発生の、表現型の例である。この疾患の急性形態は、BMT後の最初の2ヶ月以内に生じ、そして皮膚、腸、肝臓および他の器官に対する、ドナー細胞傷害性T細胞媒介性損傷により特徴付けられる。この疾患の慢性形態は、より大いに遅く(BMT後100日を越えて)表れ、そして免疫グロブリン(Ig)(自己抗体を含む)の過剰産生、ならびにIg沈着により生じる皮膚、腎臓、および他の器官に対する損傷によって特徴付けられる。急性GVHDの発症は、後の慢性GVHDの発症の前兆となる。従って、同じ患者が、両方の疾患を次々と発症し得る。全BMT患者のうちの約50%が、急性GVHDまたは慢性GVHDのいずれかを発症する。急性GVHD患者のうちのほぼ90%が、続けて慢性GVHDを発症する。慢性GVHDの現在の治療は、患者の大多数にて成功していない。
【0012】
GVHDは、親からF1への細胞移殖レジメンを使用して、マウスにてモデル化され得る。本明細書中に記載されるモデルにおいて、マウスのDBA2系統由来の脾臓細胞が、(DBA2×C57B1/6)F1マウス中にiv注射される。このF1マウスは、B6D2F1と呼ばれる。注射された脾臓細胞は、移殖片を構成し、そしてDBA2マウスが、その移殖片のドナーである。この移殖片を受けるF1マウスは、宿主である。この移殖片中に存在するドナーT細胞は、宿主細胞上のMHCマーカー(ハプロタイプ)の半分を異種として認識する。なぜならば、これらは、もう一方の、C57B1/6親に由来するからである。これは、宿主に対するドナーT細胞応答を誘導して、GVHDが生じる。DBA/2親脾臓細胞が、B6D2F1宿主中に注入される場合、慢性GVHDが発症する。対照的に、C57B1/6脾臓細胞がB6D2F1宿主に注射される場合、急性GVHDが発症する。どのような基礎をなす機構が、これら2つの注射プロトコルを使用する別個の疾患結果の原因であるかは不明確なままであるが、DBA/2脾臓細胞移殖片内に含まれる細胞により発現されるサイトカインが、慢性GVHDの発症を支持し、一方、C57B1/6脾臓細胞移殖片内に含まれる細胞により発現されるサイトカインが急性GVHDの発症を支持することが、考えられる。抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、B細胞:APC)とのT細胞の相互作用を妨害する試薬は、急性GVHDおよび慢性GVHDの両方を効果的にブロックする。
【0013】
多くの分野の証拠が、急性GVHDがTh1媒介疾患であることを示唆している(KrengerおよびFerrara、Immunol.Res.15:50−73(1996)、Williamsonら、J.Immunol.157:689−699(1996))。CD4+T細胞およびCD8+T細胞による、ナチュラルキラー(NK)細胞による、およびマクロファージのような活性化された顆粒球による、細胞傷害性活性は、Th1媒介T細胞応答の十分に規定された結果であり、代表的なTh1サイトカインであるIl−2およびIFN−γの発現に特徴的な依存を示す。このような細胞傷害性は、急性GVHDの規定している特徴である。さらに、Th1 T細胞の分化に関与する重要なサイトカインをブロックする試薬(例えば、Il−2およびIl−12に対するmAb)は、急性GVHDの発症をブロックする。細胞傷害性は、直接的に細胞性である(例えば、宿主細胞の食作用による)かまたはアポトーシスすなわち細胞死を誘導し得るTNFのような分泌されるサイトカインの作用による。ドナーの抗宿主細胞傷害性の結果は、多くの様式で観察され得る。第1に、宿主リンパ球が急速に破壊され、その結果急性GVHDを経験しているマウスは、十分に免疫抑制される。第2に、ドナーリンパ球が宿主脾臓に植え付けられ、そして拡がり、それらの細胞傷害性活性は、ドナー宿主細胞により(異種として)認識され得る宿主抗原を発現する細胞株を利用することにより、インビトロで直接測定され得る。例えば、適切な抗原を発現する細胞株は、放射性クロム51同位体を用いて標識され得る。培養培地へのこの放射性同位体の放出は、標識された細胞の死の証拠である。第3に、この疾患は、付加された組織および細胞集団が破壊されることから致死となり、従って生存状態(survivorship)は疾患の測定可能な結果である。
【0014】
慢性GVHDは、Th2 T細胞媒介疾患のようである(De Witら、J.Immunol.150:361−366(1993))。マウスモデルにおいて、疾患の発症は、Th2サイトカインIl4に依存的で、そして抗Il4 mAbを用いて処置することによりブロックされ得る。このような処置は、宿主B細胞の拡大および付随する過剰Ig産生をブロックする。GVHDの発症が、多くの様式で引き続き得る。ドナーのT細胞集団および宿主B細胞集団の拡大が、脾臓の指数により測定され得、これはコントロール(非疾患)マウスに対して正規化される、体重に対する脾臓重量の比率である。疾患マウスのB細胞の活性化は、B細胞活性化マーカーの分析を用いて測定され得る。最終的に、B細胞の活性化の効果は、循環(例えば、血清中)におけるIgのレベルか、または疾患誘導の数週間後に回収される宿主脾臓細胞の培養物により産生されたIgのレベルに観察され得る。疾患動物における循環するIgは、抗自己抗体を含む。最終的に、疾患動物は、蓄積されたIgの沈着に起因して、腎不全および他の器官の不全で死に、従って生存状態は、疾患活性の適切な尺度である。
【0015】
本発明者らは、TWEAKに特異的なモノクローナル抗体が、慢性GVHDのマウスモデルを使用して、効率的におよび特異的にGVHDの発症の局面をブロックすることをここで示す。慢性GVHDの発症におけるブロックは、脾臓指数における低減、宿主B細胞における活性化マーカーの損失、および抗TWEAK処置動物の低減されたIg産生として示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本発明は、動物における免疫学的障害の発症をブロックするため、あるいはその障害の重篤度または効果を処置もしくは低減するための方法を提供し、この方法は、治療上有効な量のTWEAKブロッキング剤および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。この化合物は、TWEAKリガンドに対する抗体;TWEAKレセプターに対する抗体;TWEAKレセプターへのTWEAKリガンドの結合を改変する薬剤;細胞表面レセプターのクラスター形成を改変する薬剤;およびTWEAKレセプターの細胞内シグナルを妨害し得る薬剤であり得る。好ましい実施形態において、この抗体は、モノクローナル抗体である。より好ましい実施形態において、このモノクローナル抗体は、TWEAK表面リガンドに対する。この動物は、哺乳動物であり得、そしてヒトであり得る。このTWEAKブロッキング剤は、表面TWEAKリガンドに選択的に結合し得るリガンド結合ドメインを有する可溶性TWEAKレセプターであり得る。1つの実施形態において、この可溶性TWEAKレセプターとしては、ヒト免疫グロブリンIgGドメインが挙げられ得る。好ましい実施形態において、このヒト免疫グロブリンIgGドメインは、特異的抗原結合の能力がある領域を含む。
【0017】
本発明はさらに、動物における免疫応答を阻害するための方法(有効な量のTWEAKブロッキング剤および薬学的に有効なキャリアを含む薬学的組成物を投与する工程を包含する)を包含する。この免疫応答は、Th1細胞媒介免疫応答またはTh2細胞媒介免疫応答あるいはその両方であり得る。
【0018】
本発明はまた、治療上有効な量のTWEAKブロッキング剤および薬学的に受容可能なキャリアを有する組成物を含む。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 動物における免疫学的障害の発症をブロックするかあるいは該障害の重篤度または効果を処置または減少するための方法であって、治療上有効な量のTWEAKブロッキング剤および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目2) 動物において免疫応答を阻害するための方法であって、有効量のTWEAKブロッキング剤および薬学的に有効なキャリアを含む薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目3) 項目1または2に記載の方法であって、前記TWEAKブロッキング剤が、以下:
(a)TWEAKリガンドに対する抗体;
(b)TWEAKレセプターに対する抗体;
(c)TWEAKレセプターへのTWEAKリガンドの結合を改変する薬剤;
(d)細胞表面レセプターのクラスター形成を改変する薬剤;および
(e)TWEAKレセプターの細胞内シグナル伝達を妨害し得る薬剤
からなる群より選択される、方法。
(項目4) 項目1または2に記載の方法であって、前記動物が哺乳動物である、方法。
(項目5) 項目4に記載の方法であって、前記哺乳動物がヒトである、方法。
(項目6) 項目1または2に記載の方法であって、前記TWEAKブロッキング剤が、表面TWEAKリガンドに選択的に結合し得るリガンド結合ドメインを有する可溶性TWEAKレセプターを含む、方法。
(項目7) 項目6に記載の方法であって、前記可溶性TWEAKレセプターがヒト免疫グロブリンIgGドメインを含む、方法。
(項目8) 項目7に記載の方法であって、前記ヒト免疫グロブリンIgGドメインが、特異的抗原結合の能力がある領域を含む、方法。
(項目9) 項目1または2に記載の方法であって、前記TWEAKレセプターに対する抗体がモノクローナル抗体を含む、方法。
(項目10) 項目1または2に記載の方法であって、前記TWEAKブロッキング剤が、TWEAK表面リガンドに対するモノクローナル抗体を含む、方法。
(項目11) 項目10に記載の方法であって、前記抗体がTWEAKリガンドのサブユニットに対するものである、方法。
(項目12) 項目2に記載の方法であって、前記免疫応答がTh1細胞媒介性免疫応答である、方法。
(項目13) 項目2に記載の方法であって、前記免疫応答がTh2細胞媒介性免疫応答である、方法。
(項目14) 項目2に記載の方法であって、前記免疫応答がTh1細胞媒介性免疫応答およびTh2細胞媒介性免疫応答の両方を含む、方法。
(項目15) 項目2に記載の方法であって、前記TWEAKブロッキング剤がTWEAKレセプターに対するモノクローナル抗体を含む、方法。
(項目16) 薬学的組成物であって、治療上有効な量のTWEAKブロッキング剤および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(項目17) 項目16に記載の組成物であって、前記TWEAKブロッキング剤が、以下:
(a)TWEAKリガンドに対する抗体;
(b)TWEAKレセプターに対する抗体;
(c)TWEAKレセプターへのTWEAKリガンドの結合を改変する薬剤;
(d)細胞表面レセプターのクラスター形成を改変する薬剤;および
(e)TWEAKレセプターの細胞内シグナル伝達を妨害し得る薬剤
からなる群より選択される、組成物。
(項目18) 項目16に記載の組成物であって、前記TWEAKブロッキング剤が、表面TWEAKリガンドに選択的に結合し得るリガンド結合ドメインを有する可溶性TWEAKレセプターを含む、組成物。
(項目19) 項目18に記載の組成物であって、前記可溶性TWEAKレセプターが、特異的抗原結合の能力がある領域が挿入されたヒト免疫グロブリンIgGドメインを含む、組成物。
(項目20) 項目16に記載の組成物であって、前記TWEAKブロッキング剤がTWEAKレセプターに対するモノクローナル抗体を含む、組成物。
(項目21) 項目16に記載の組成物であって、前記TWEAKブロッキング剤がTWEAK表面リガンドに対するモノクローナル抗体を含む、組成物。
(項目22) 項目21に記載の組成物であって、前記抗体がTWEAKリガンドのサブユニットに対するものである、組成物。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、可溶性の組換えマウスTWEAKタンパク質およびヒトTWEAKタンパク質の配列アライメントを示す。
【図2】図2は、無関係のタンパク質(キーホールリンペットヘモシアニン)を認識するハムスターmAbの結合と比較した、マウスTWEAKタンパク質またはヒトTWEAKタンパク質を発現するEBNA293細胞へのハムスター抗TWEAK mAb AB.D3の結合の蛍光表示式細胞分類(FACS)分析を示す。
【図3】図3は、FLAGタグ化組換え可溶性ヒトTWEAKの、TWEAKレセプター陽性細胞への結合をブロックするmAb AB.D3の能力のFACS分析を示す。
【図4a】慢性GVHDを経験して、抗TWEAK mAb AB.D3、抗CD40L mAb MR1、コントロール mAbで処置されたか、または処置されていない、マウスにおけるB細胞の活性化状態のFACS分析を示す。
【図4b】慢性GVHDを経験して、抗TWEAK mAb AB.D3、抗CD40L mAb MR1、コントロール mAbで処置されたか、または処置されていない、マウスにおけるB細胞の活性化状態のFACS分析を示す。
【図4c】慢性GVHDを経験して、抗TWEAK mAb AB.D3、抗CD40L mAb MR1、コントロール mAbで処置されたか、または処置されていない、マウスにおけるB細胞の活性化状態のFACS分析を示す。
【図4d】慢性GVHDを経験して、抗TWEAK mAb AB.D3、抗CD40L mAb MR1、コントロール mAbで処置されたか、または処置されていない、マウスにおけるB細胞の活性化状態のFACS分析を示す。
【図4e】慢性GVHDを経験して、抗TWEAK mAb AB.D3、抗CD40L mAb MR1、コントロール mAbで処置されたか、または処置されていない、マウスにおけるB細胞の活性化状態のFACS分析を示す。
【図4f】慢性GVHDを経験して、抗TWEAK mAb AB.D3、抗CD40L mAb MR1、コントロール mAbで処置されたか、または処置されていない、マウスにおけるB細胞の活性化状態のFACS分析を示す。
【図4g】慢性GVHDを経験して、抗TWEAK mAb AB.D3、抗CD40L mAb MR1、コントロール mAbで処置されたか、または処置されていない、マウスにおけるB細胞の活性化状態のFACS分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書中に記載される本発明が十分に理解され得るために、以下の詳細な説明が示される。
本明細書中で使用されるような用語「体液性応答」および「細胞性応答」は、抗原に対する動物の免疫学的応答をいい、これによってその動物は、抗原に対する抗体を産生するか、またはその抗原に対する細胞傷害性応答を生じるか、あるいはその両方を産生する。Tヘルパー細胞のTh1クラスは、細胞性応答の誘導のために重要であり、そしてTヘルパー細胞のTh2クラスは、高い親和性の抗体の有効な産生とって重要である。
【0021】
本明細書中で使用されるような用語「Tヘルパー(Th)細胞」は、細胞傷害性T細胞を生成するのを助け、そして抗体産生を刺激するためにB細胞と協力するT細胞の機能的なサブクラスをいう。ヘルパーT細胞は、クラスII MHC分子と関連して抗原を認識し、そしてエフェクター細胞に対する接触依存性シグナルおよび接触非依存性シグナル(サイトカインおよびケモカイン)を提供する。
【0022】
用語「Th1」は、TNF、インターフェロン−γおよびIL−2(および他のサイトカイン)を産生し、そして攻撃に対して細胞性(すなわち、非免疫グロブリン)応答と関連した炎症性反応を誘発するTヘルパー細胞のサブクラスをいう。
【0023】
用語「Th2」は、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、および他のサイトカインを産生するTヘルパー細胞のサブクラスをいい、これは免疫性攻撃に対する免疫グロブリン(体液性)応答と関連する。
【0024】
本明細書中で使用されるような用語「胚中心」は、二次B細胞濾胞をいい、これは抗原免疫化後に形成する。この組織学的部位の出現は、最適な記憶生成、アイソタイプの変換、体細胞の過剰変異に関連し、従って抗体応答の親和性成熟に関連する。
【0025】
用語「抗体産生細胞」は、Th細胞からの接触依存性シグナルおよび接触非依存性シグナルを受け、そしてIgMサブクラス、IgGサブクラス、IgAサブクラス、またはIgEサブクラスの免疫グロブリンを分泌している、B細胞をいう。
【0026】
用語、抗体の「Fcドメイン」は、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含むが、抗原結合部位を欠く、分子の一部をいう。この用語はまた、IgMアイソタイプまたは他の抗体アイソタイプの等価な領域を含むことが意味される。
【0027】
用語「抗TWEAK抗体」は、TWEAKタンパク質の少なくとも1つのエピトープと特異的に結合する任意の抗体をいう。
【0028】
用語「抗TWEAKレセプター抗体」とは、TWEAKレセプターの少なくとも1つのエピトープと特異的に結合する任意の抗体をいう。
【0029】
用語「TWEAKレセプターシグナル伝達」は、TWEAKレセプター経路と関連する分子反応およびそれから生じる後の分子反応をいう。
【0030】
用語「TWEAK改変剤またはTWEAKレセプター改変剤」および「TWEAK改変試薬またはTWEAKレセプター改変試薬」は、TWEAKレセプターへのリガンドの結合を改変し得るか、細胞表面TWEAKレセプタークラスター形成またはTWEAKレセプターシグナル伝達を改変し得るか、あるいはTWEAKレセプターシグナルが細胞内で翻訳される方法に影響し得る、任意の薬剤をいう。
【0031】
用語「TWEAKリガンド」または「TWEAKタンパク質」は、TWEAKレセプターに特異的に結合し得る、任意のTWEAKモノマー複合体、TWEAKポリマー複合体、またはTWEAKヘテロマー複合体あるいはそれらの誘導体をいう。
【0032】
用語「被験体」は、動物、または動物由来の1つ以上の細胞をいう。好ましくは、動物は哺乳動物である。細胞は、任意の形態であり得、組織に保持される細胞、細胞クラスター、不死化細胞、トランスフェクトされた細胞、または形質転換された細胞、および物理的に改変されたかまたは表現型に関して改変された動物由来の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
(TWEAKリガンド)
TWEAKは、TNFファミリーの最近発見されたメンバーのタンパク質である(Chicheporticheら、J.Biol.Chem.51:32401−32410(1997))。TNFファミリーのメンバーのタンパク質は、TNFレセプター(TNF−R)ファミリーのタンパク質のレセプターに結合する。TNFファミリーのタンパク質の、それらのレセプターとの相互作用は、免疫系内の広範な種々の機能に影響する。周知の例としては、CD40Lタンパク質(これは、抗体産生細胞へのB細胞の分化を促進するために、CD40レセプターと結合する(GrewalおよびFlavell、Immunol.Res.16:59−70(1997)))、リンホトキシン−βリガンド(LT−β)(濾胞樹状細胞の分化状態を調節することにより体液性免疫応答に影響するリンホトキシン−βレセプターに結合する(MackayおよびBrowning、Nature 395:26−27(1998)))およびOX40L(T細胞シグナルに対するB細胞応答の応答を調節するためにOX40レセプターに結合する(Flynnら、J.Exp.Med.188:297−304(1998)))が挙げられる。免疫系において決定的な役割を果たすことが公知であるTNF/TNF−Rファミリー内の他のリガンド/レセプター対としては、TNF/TNF−R55、FasL/Fas、およびCD27/CD70が挙げられる。
【0034】
TWEAK生物学は、まだほんの一部が理解されているだけである。精製された可溶性TWEAKタンパク質は、いくつかの腫瘍細胞株(HT29腺癌細胞(アポトーシスを介した細胞死)、HeLa頸部腺癌細胞(形態学的変化)、およびA375黒色腫細胞(抗増殖))を含む)の分化および/または死を誘導するために使用された。TWEAKはまた、HT29細胞株およびA375細胞株を誘導し、ケモカインIL−8を分泌し、そして線維芽細胞株(WI−38)に対して同じ効果を有した(Chicheporticheら、J.Biol.Chem.51:32401−32410(1997))。さらに、TWEAKは、種々の正常な内皮細胞株の増殖を誘導した(Lynchら、J.Interferon Cytokine Res.18:A−46(1998))。
【0035】
TWEAKに対する推定されたレセプターが記載されている(Marstersら、Curr.Biol.8:525−528(1998))。このレセプター(TRAMP、Apo3、WSL−1、DR−3、またはLARDとして変化して公知)は、TNF−Rファミリーメンバーである。TRAMPの活性化は、カスパーゼ依存性細胞死シグナル伝達経路またはNF−kBシグナル伝達経路を介した細胞活性化のいずれかを保証することによりアポトーシスを誘導し得る(AshkenaziおよびDixit、Science 281:1305−1308(1998))。
【0036】
マウス組織およびヒト組織におけるTWEAKの発現は広く行き渡り、組織の中でもとりわけ心臓、脳、肺、肝臓、および二次リンパ器官(例えば、脾臓、リンパ節、および末梢血単核細胞(PBMC))にてメッセンジャーRNA(mRNA)が見出される。TWEAKは、免疫系細胞が発生する一次リンパ器官(例えば、胸腺、骨髄および胎児の肝臓)では発現しないようである。従って、TWEAKが免疫系において果たし得る役割は、免疫系の発生においてではなく、おそらく免疫応答においてであろう。
【0037】
タンパク質のリガンドとそれらのレセプターとの相互作用は、多くの特異的手段を用いて改変され得る。例えば、そのリガンドを特異的に認識するモノクローナル抗体(mAb)が、結合部位の認識によってか、またはその相互作用を物理的に妨げることによって、リガンド/レセプター結合を防止または改変するために使用され得る。あるいは、抗リガンドmAbは、複数のリガンドが1つのレセプターに対して存在する場合、他のリガンドの結合に影響を及ぼすことによってレセプターシグナル伝達に影響を及ぼし得る。このような複雑な効果は、CD28リガンドのB7ファミリーに対するmAbについて注目されている(Lenschowら、J.Exp.Med.181:1145−1155(1995))。抗リガンドmAbは、複数のレセプターが1つの特定のリガンドについて存在する系において、例えば、1つのレセプターへのリガンドの結合を改変するが、別のレセプターへの結合を変えないままにすることにより、さらにより微妙な効果を有し得る。そのレセプターを認識するmAbもまた、リガンドの結合を改変するために使用され得るか、あるいはmAb自身がレセプターシグナル伝達を誘導し得るか、または改変し得る。従って、抗レセプターmAbは、アゴニスト性またはアンタゴニスト性であり得る。TNF/TNF−Rファミリーメンバーのリガンド/レセプター相互作用を改変するためにマウス系またはヒト系において使用されるmAbの例としては、とりわけ、TNFに対して特異的なmAb、CD40Lに対して特異的なmAb、LT−βに対して特異的なmAb、Fas−Lに対して特異的なmAbおよびTR2/HVEMに対して特異的なmAbが挙げられる。mAbは、免疫学的疾患および他の疾患の開始または発症をブロックするために使用され得る。例えば、抗CD40Lは、全身性エリテマトーデス(SLE)の処置において、および器官移植不全を制御するのに使用されている。
【0038】
リガンド/レセプター相互作用のタンパク質インヒビタ−はまた、ヒト免疫グロブリン(Ig)重鎖をコードする配列に、レセプター配列の細胞外部分をコードする配列をクローニングすること、次いで、適切な細胞株において適切な遺伝子プロモーターを使用して、そのハイブリッド遺伝子を発現することによって、作製され得る。精製されるレセプター−Ig融合タンパク質は、利用可能なタンパク質リガンドに結合し、従ってネイティブな、細胞結合レセプターとこのリガンドの相互作用を改変するために、インビトロおよびインビボで使用され得る。
改変は、抗リガンドmAbについて上で概説された機構と類似の、種々の機構によって起こり得る。TNF/TNF−Rファミリーメンバーのリガンド/レセプター相互作用を改変するために、マウス系またはヒト系において使用されるレセプター−Ig融合タンパク質の例としては、とりわけ、TNF−R55−Ig、TNF−R75−Ig、TLβ−R−Ig、およびOX40−Igが挙げられる。レセプター−Ig融合タンパク質は、免疫学的疾患および他の疾患の開始または発症をブロックするために使用され得る。例えば、TNF−R75−Igは、炎症性腸疾患(IBD)を処置するために使用されている。
【0039】
本明細書中で本発明者らは、マウスTWEAKおよびヒトTWEAKに特異的に結合するmAbが、基本型の抗原駆動型免疫学的障害である、対宿主性移植片病の発症をブロックすることを示す。本発明者らの発明は、患者への異種抗原の導入により生じる種々の免疫学的障害(例えば、骨髄移植または幹細胞移植により生じるGVHD、および移植片拒絶により生じる器官移植不全)を処置するためのTWEAK改変試薬およびTWEAKレセプター改変試薬の使用を期待する。さらに、本発明は、種々の自己免疫障害(例えば、他の例のうちとりわけ、SLE、特発性血小板減少性紫斑病、ヴェゲナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎、網膜性のブドウ膜炎、急速進行性半月体糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、および潰瘍性大腸炎)を処置するためのTWEAK改変試薬およびTWEAKレセプター改変試薬の使用を期待する。他の期待される使用としては、急性炎症性状態および慢性炎症性状態(例えば、とりわけ、アレルギー性炎症、喘息、好酸球増加症、グレーヴス病、およびシャーガス病)の処置が挙げられる。
【0040】
(材料および方法)
(マウス)DBA/2系統およびC57B1/6系統、ならびに(DBA/2×C57B1/6)F1交雑の6〜8週齢の雌のマウスをJackson Laboratory(Bar Harbor、ME USA)から購入し、従来の仕切り保護下に収容し、そして業務的指針に従って取り扱った。
【0041】
(モノクローナル抗体)ヒトTWEAKタンパク質およびマウスTWEAKタンパク質を認識するモノクローナル抗体は、バキュロウイルス中で産生された可溶性ヒトTWEAKタンパク質を使用して、Armenianハムスター中で産生され、そして記載される(Chicheporticheら、J.Biol.Chem.51:32401−32410(1997))ように精製された。初めの免疫化については、各々のハムスターは、完全フロイントアジュバント(CFA)中の50μgのTWEAKを受けた(腹腔内に注射された)。引き続く免疫化(最初の免疫化の後14、28および42日目)については、各々のハムスターは、不完全フロイントアジュバント(IFA)中の50μg(14および28日目)または33μg(42日目)のTWEAKを腹腔内に受けた。ハイブリドーマ形成のための脾細胞の融合前の最後の免疫化は、アジュバントなしで100μgのTWEAKを腹腔内に用いた。ハイブリドーマの生成は、標準の手順(Lerner、Yale J.Biol.Med.54:387−402(1981))を使用して実施した。
【0042】
抗マウスCD40L mAb MR1を産生するハイブリドーマ(Noelleら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6550−6554(1992))は、ATCC(Rockville、MD USA)から購入した。抗KLH mAb Ha4/8を産生するハイブリドーマは、Mendrick博士(Human Genome Sciences,Inc.Rockville、MD USA)から入手した。
【0043】
(mAb活性のELISA分析)抗ヒトTWEAK mAbを、種々の実験形式においてヒトTWEAKおよびマウスTWEAKへの結合能力について試験した。ヒトTWEAKタンパク質に対して惹起されたいくつかのmAbはまた、ELISA形式アッセイを使用して行われた、mAb活性の最初のスクリーニングにおいて、マウスTWEAKタンパク質を認識した。マウスTWEAKタンパク質を、ヒトTWEAKタンパク質について記載された方法(Chicheporticheら、J.Biol.Chem.51:32401−32410(1997))と類似の方法を使用して、バキュロウイルス中で作製した。精製されたヒトTWEAKタンパク質およびマウスTWEAKタンパク質を96ウェルプレート上にコートし、そして種々のハムスターmAbを、これらの固定化タンパク質への結合能力について試験した。固定化TWEAKタンパク質によるハムスターmAbの捕獲を、ペルオキシダーゼ結合ロバ抗ハムスターIgG(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA USA)および適切なペルオキシダーゼ依存的酵素反応を使用して可視化した。
【0044】
(mAb活性のFACS分析)可溶性TWEAKタンパク質は、HT29細胞においてアポトーシスを誘導し、このことは、これらの細胞がTWEAKレセプターを発現することを示す(Chicheporticheら、J.Biol.Chem.51:32401−32410(1997))。ビオチン化抗FLAG抗体、ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ、および適切な酵素基質により検出されるので、精製したmAb(10μg/ml)を、HT29細胞に対するFALG−タグ化マウスTWEAKおよびヒトTWEAKの結合をブロックする能力について試験した。
【0045】
(慢性GVHDの誘発)6〜8週齢のDBA/2およびB6D2F1の雌のマウスを屠殺し、そして脾臓を無菌技術を使用して取り出した。脾臓を粗いガラススライドの間で穏やかに粉砕し、大きい破片を鎮静させ、次いで清澄な上清をペレット化することにより、単一の細胞の懸濁液を作成した。この細胞のペレットをGey緩衝化高張液に再懸濁し、そして氷上で3分間インキュベートし、赤血球を溶解させた。各々の破壊した脾臓あたり5mlのGey溶液を使用した。この細胞溶液を再度ペレット化し、無菌の、パイロジェンを含まないPBSに再懸濁し、ペレット化し、そして無菌の、パイロジェンを含まないPBS中にて二度目の再懸濁を行った。細胞数を、血球計数器を使用して決定し、そして細胞密度を2×108/mlに調整した。次いで、この溶液を滅菌70um(μm)セルフィルターを通し、そして使用するまで氷上に保った。6〜8週齢のB6D2F1の雌マウスをレシピエントとして使用した。各々のレシピエントに、500μl(1×108)の細胞を静脈中に注射した。実験群は、DBA/2移植片(DBA/2>F1)を受け、一方、コントロール動物のセットは、B6D2F1移植片(F1>F1)を受けた。動物を、注射の14日後に慢性GVHDの発生についてアッセイした。
【0046】
(慢性GVHDのブロッキング)マウスは、抗TWEAK mAb AB.D3、抗−CD40L mAb MR1、コントロール mAb Ha4/8を受けるか、または処置を受けなかった。処置スケジュールは、移植片の注射4時間前、ならびにその後2、4および6日目に、腹腔内への250μgのmAbであった。
【0047】
(疾患の発症のアッセイ)実験の14日目に、マウスを屠殺し、そして秤量した。次いで、脾臓を無菌的に取り出し、そして秤量した。脾臓の指数を、コントロールF1>F1群における各々の動物について、体重に対する脾臓の割合として計算し、平均して、群の値を得た。他の全ての群についての平均脾臓指数を、コントロール値に対して標準化する。次いで、上記のように、脾細胞を、これらの脾臓から単離し、次いで、滅菌PBS中で1×107細胞/mlの濃度に希釈した。FACS分析のために、100μlの細胞を、以下の細胞表面マーカーについて染色した。記載されるすべてのmAbをPharmingen(San Diego、CA.USA)から購入した。ストレプトアビジンの試薬をSouthern Biotechnology Corp(Birmingham、AL.、USA)から購入した。Fcレセプターへの非特異的結合を妨げるために、10μg/mlのFcBlocktm(Pharmingen)を含むPBS/0.5%ウシ血清アルブミン(BAS)/0.1%アジ化ナトリウム(FACS緩衝液)中で、脾細胞を、ビオチン化抗H−2Kb(直接的に接合したFITC標識化またはPE標識化の抗CD4、抗CD8、抗B220、抗CD69、抗I−Ad、抗L−セレクチンおよび抗H2Ddとの種々の組み合わせで、宿主細胞(H−2Kb+)からドナー細胞(H−2Kb−)を区別し得る、ハプロタイプのマーカー)を用いて染色した。この細胞を、1時間氷上でmAbと共にインキュベートした。次いで、各々のサンプルを2mlのFACS緩衝液に再懸濁して洗浄し、次いで遠心分離して細胞をペレット化した。この細胞を、ビオチン化mAbに結合し、FACS分析のために第三のチャネルを提供する、CyChrome標識化ストレプトアビジンを含むFACS緩衝液中に再懸濁し、最終回の洗浄を行い、そしてFACscan装置およびCellquestソフトウェア(Becton Dickenson、San Jose、CA.USA)を使用して分析した。
【0048】
Ig分泌のインビトロ分析のために、細胞をペレット化し、そして、1×107細胞/mlの濃度で、10%のウシ胎仔血清(FBS)/4mMグルタミンを含むDMEM中に再懸濁した。ウェルあたり1mlを6ウェルプレートに分配した。細胞上清を24時間後に回収した。
【0049】
(抗TWEAK抗体の供給源)本発明の1つの実施形態では、TWEAKに対する抗体(Ab)が、TWEAKブロッキング剤として機能する。Abは、異種サブユニットが存在する場合、異種サブユニットを有するかまたは有さないTWEAKタンパク質の、モノマー形態、ダイマー形態またはトリマー形態に対して惹起され得る。さらに、Abは、TWEAKタンパク質の可溶性形態、変異体形態、変更された形態、またはキメラ形態に対して惹起され得る。本発明の抗TWEAK Abは、ポリクローナルまたはモノクローナル(mAb)であり得、そして改変され、TWEAKのそのレセプターへの結合をブロックする能力、インビボでの生物学的利用能、安定性、または他の所望の形質を最適化され得る。
【0050】
TWEAKに対するポリクローナル抗体血清は、完全フロイントアジュバント(CFA)中のヒトTWEAKを用いて動物(例えば、ヤギ、ウサギ、ラット、ハムスターまたはマウス)に皮下注射し、次いで、追加免疫(不完全フロイントアジュバント(IFA)中の腹腔内注射または皮下注射)することによる、従来の技術を使用して調製される。TWEAKに対する所望のAbを含むポリクローナル抗血清は、従来の免疫学的手順によりスクリーニングされる。
【0051】
ヒトTWEAKに対するハムスターモノクローナル抗体(mAb)は、CFA中の組換え可溶性ヒトTWEAKを用いてアルメニアン(armenian)ハムスターに皮下注射し、次いで追加免疫(IFA中の腹腔内注射または皮下注射)することによる、従来の技術を使用して調製される。ハムスター抗TWEAK mAb AB.D3を産生するハイブリドーマ細胞株(AB.D3.7.2)は、ブタペスト条約の規定に従い、Amerian Type Culture Collection(ATCC)(Rockville、MD)に、−−−で寄託され、そして、ATCC受託番号−−−を付与された。上記のATCC寄託の公への入手可能性の全ての制限は、本出願の特許の認可に際して、変更不可能に除去される。
【0052】
抗TWEAK Abの種々の形態はまた、標準の組換えDNA技術を使用して作成され得る(WinterおよびMilstein、Nature、349、293−299頁(1991))。例えば、「キメラ」抗体は、動物の抗体由来の抗原結合ドメインがヒト定常ドメインに連結されて構築され得る(例えば、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、81、6851〜6855頁(1984))。キメラAbは、ヒトの臨床的処置において用いられる場合、動物Abにより誘発される、観察される免疫原性応答を減少する。
【0053】
さらに、TWEAKを認識する組換え「ヒト化抗体」は、合成され得る。ヒト化Abは、特異的抗原結合に対して応答性の領域が挿入されている、ほとんどのヒトIgG配列を含むキメラである(例えば、WO94/04679)。動物は所望の抗原で免疫化され、対応するAbは単離され、そして特異的抗原結合に応答性の種々の領域配列の部分は除去される。次いで、動物由来抗原結合領域は、抗原結合領域が欠失しているヒト抗体遺伝子の適切な部分にクローンニングされる。ヒト化Abは、ヒトAbにおける異種(種間)配列の使用を最小化し、そして処置された被験体における免疫応答をほとんど誘発しないようである。
【0054】
異なるクラスの組換え抗TWEAK Abの構築物はまた、異なるクラスの免疫グロブリンから単離された抗TWEAK可変ドメインおよびヒト定常ドメイン(CH1、CH2、CH3)を含む、キメラAbまたはヒト化Abを作成することにより達成され得る。例えば、増加した抗原結合部位の結合価を有する抗TWEAK IgM Abは、ヒトIgMの重鎖定常領域を保有するベクターに、この抗体結合部位をクローニングすることにより組換え的に産生され得る(Arulanandamら、J.Exp.Med.、177、1439−1450頁(1993);Laneら、Eur.J.Immunol.、22、2573−2578(1993);Trauneckerら、Nature、339、68−70頁(1989))。
【0055】
さらに、標準の組換えDNA技術は、抗原結合部位の近傍のアミノ酸残基を変化させることにより、組換えAbの抗原との結合親和性を変化させるために使用され得る。ヒト化Abの抗原結合親和性は、分子モデリングに基づく変異誘発により増加され得る(Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、86、10029−10033頁(1989);WO94/04679)。
【0056】
標的された組織のタイプまたは想像される特定の処置スケジュールに依存して、TWEAKに対する抗TWEAK Abの親和性を増加または減少することは、望ましくあり得る。例えば、半予防的処置のためにTWEAK経路を改変する減少した能力で、抗TWEAK Abの一定のレベルを有する患者を処置することは、有利であり得る。同様に、TWEAKに対する増加した親和性を有する抗TWEAK Abは、短期間の処置のために有利であり得る。
【0057】
ハムスター抗ヒトTWEAKモノクローナル抗体の産生は、実施例1において例示される。
【0058】
(慢性GVHD(抗原誘導免疫学的疾患)の発症をブロックするための抗TWEAK mAbの使用)ここで、本発明者らは、慢性対宿主性移植片病(GVHD)のマウスモデルにおける免疫学的応答の発生に対するTWEAKブロッキング剤(mAb AB.D3)の効果を示す。慢性GVHDをブロックする能力は、B細胞の活性化および増殖、ならびに分泌されるIgGの産生に対する効果を含む。マウスは、250μgの抗TWEAK mAb AB.D3、抗KLHコントロールmAb Ha4/8、抗CD40L mAb MR1で腹腔内(ip)に処置されるか、または無処置のままにされた。4時間後、マウスは、静脈内(iv)に与えられた0.5mlの注射内の、DBA/2マウスから単離された1×108の脾細胞を受けた。静脈内注射されたDBA/2脾細胞は、同種移植片から構築された。移植片を与えられた2日、4日および6日後、マウスは、再び250μgの抗TWEAK mAb AB.D3、抗KLHコントロールmAb Ha4/8、または抗CD40L mAb MR1で処置された。コントロール群のマウスは、B6D2F1レシピエントにおいて疾患を誘導し得ない、1×108のB6D2F1の脾細胞を受けた。あるいは、移植されない、または無処置のB6D2F1マウスは、コントロールとして使用された。移植片が与えられた14日後、マウスは、屠殺され、そして疾患の証拠のために実験された。
【0059】
無処置の移植片レシピエントであるマウスは、慢性GVHDの発症を示す種々の症状を明示する。巨脾腫症、または脾臓の膨張は、ドナーT細胞および宿主B細胞が活性化されたことの証拠であり、そして、細胞数における劇的な増加を有するポリクローナルな膨張を受けている。B細胞のサブセット上の細胞表面タンパク質(例えば、CD69)の出現は、B細胞の活性化を示す。CD4+T細胞およびCD8+T細胞からのL−セレクチン分子の欠失は、T細胞の活性化の証拠である。血清中またはインビトロの細胞培養アッセイ中のいずれかにおける、Ig分子(例えば、IgGクラス、IgAおよびIgE)の分泌は、B細胞が活性化し、そしてこれらのIgクラスを切り換えたことを示す。この点に関して、血清中またはインビトロ細胞培養アッセイにおける抗自己Igの出現は、産生されたIgが不適切な自己抗原認識を有することを示す。結局、生存率は、異なる処置のレジメンの結果として測定され得る。
【0060】
本発明者らは、GVHDの間の、巨脾腫症の拡張、B細胞の活性化およびIgの分泌を試験するために、コントロールマウスを無処置の同種移植片レシピエントであるマウスと比較した。抗CD40L mAb MR1は、これらの実験においてポジティブコントロールとして使用された。なせなら、CD40L/CD40相互作用をブロックすることは、慢性GVHDの発症を妨害する効果的な手段であることが、以前に示されていたからである(Durieら、J.Clin.Invest.94:1333−1338(1994))。ハムスターmAb(Ha4/8)は、ネガティブコントロール処置として機能するキーホールリンペット(Keyhole Limpet)ヘモシアニン(KLH)に惹起された。2つの実験からの結果を、表2に示す。両方の実験において、抗TWEAK mAb AB.D3での処置は、巨脾腫症の量を(無処置の同種移植片レシピエントと比較して)約33%減少した。ネガティブコントロールのmAb Ha4/8での処置は、効果を有さなかったが、抗CD40L mAb MR1での処置は、巨脾腫症をほぼ70%までブロックした。抗TWEAK mAb AB.D3 FACSでの処置により影響される細胞集団を研究するために、移植片注射の14日後のレシピエントであるマウスから取り出した脾細胞に対して、分析を実施した。群あたり3〜4匹のマウス由来の脾細胞を単離し、そしてプールした。レシピエントのB細胞の活性化は、慢性GVHDを規定する特徴である。無処置およびコントロールのmAb処置されたマウスにおいて、小さいが容易に見られる割合の、B200+B細胞が、活性化マーカーCD69を発現する(図4および表3)。対照的に、MR1またはAD.B3で処置したマウスにおけるB200+B細胞は、実質的にはCD69を発現しなかった。AB.D3マウスの脾臓における、測定可能なB細胞の活性化の欠失は、T細胞活性化不全、B細胞活性化不全、または細胞死(アポトーシス)を含む作用のいくつかの機構のうちの1つ以上に起因し得た。次いで、本発明者は、B細胞集団由来CD69活性化マーカーの欠失が機能的な読出し(すなわち、IgG産生)と相関するか否かを決定するために、異なる処置群由来のマウスにおける脾細胞の培養物中の総IgGを測定した。無処置のコントロールマウス(MR1処置のマウス)およびAB.D3処置マウスは、無処置またはHa4/8処置の同種移植片レシピエントであるマウスが産生するよりも、劇的により低い量の総IgGを産生した(表4)。この結果は、活性化B細胞によるIg分泌(慢性GVHDを規定する特徴)が抗TWEAK mAbで処置されることによりブロックされることを示す。慢性GVHDの発症をブロックするための抗TWEAK mAbの使用を、実施例2に例示する。
【0061】
(抗体が媒介する他の疾患)多くの器官特異的疾患および全身性自己免疫疾患は、病理学的抗体応答を含む。このような状態としては、以下が挙げられる:重症筋無力症、自己免疫溶血性貧血、シャーガス病、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ヴェーゲナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎および急速進行性半月体形成性糸球体腎炎(Benjaminiら、Immunology,A Short Course,Wiley−Liss,New York 第三版(1996)より)。
【0062】
SLEの病因学は定義されていないが、観察される病理学の原因である免疫学的機構について、かなりの量が既知である。未知の理由に対して、SLEを有する患者は、身体の核成分に対する(ネイティブな二重鎖DNAに対する)抗体(抗核抗体(ANA))を著しく産生する。臨床的に、これらの抗体の存在は、SLEにおいて発達する腎臓病理学に最も相関する。これらの抗体は、明らかに正常な組織の崩壊由来であるDNAと複合体化し、そして任意の免疫凝集疾患における場合、このような複合体は、細動脈壁および関節の滑液のスペースにおいて、糸球体の基底膜に対して捕捉される沈着物を形成する。これらの複合体は、補体カスケードを活性化し、そして顆粒球を誘引する。引き続く炎症反応は、腎臓にダメージを生じさせて、タンパク尿および血尿を誘発する、糸球体腎炎として特徴付けられる。
【0063】
SLEは、数十年間、マウスモデルにおいて研究されてきた。SLEの発症は、T細胞およびB細胞の活性化における重要な工程を妨げる試薬(例えば、CTLA4−Ig融合タンパク質および抗CD40L)を使用してブロックされ得る(GrewalおよびFlavell、Immunol.Rev.153:85−106(1996))。最近、マウスCD40リガンドに特異的な試薬の治療的効力が、いくつかのモデルにおいて評価された(Mohanら、J.Immunol.、154、1470−1480頁(1995))。インビボで病原性抗体の産生を誘導する細胞の移動による狼瘡の促進は、CD40/CD40リガンドの相互作用をブロックするモノクローナル抗体の投与により阻害されることが示された。さらに、抗CD40リガンド抗体での、狼瘡のマウスの簡潔な処置は、抗体がこれらの系から一掃されたかなり後に、自発性疾患に対する持続性の有利な効果を有した。実験は、病原性B細胞が治療の9ヶ月後でさえ抗体を産生し得なかったことを示し、このことは、長期的治療の利点を生じる自己免疫記憶B細胞の拡張が遅延したことを示唆する。さらに、抗CD40Lの処置は、自発的に生じているマウスモデルにおいて確立されたSLEの進行を停止または遅延し得た(Kalledら、L.Immunol.160:2158−2165(1998))。本発明者らが、インビボでのTWEAK/TWEAKレセプター相互作用を改変する試薬が、B細胞活性化およびIg産生を阻害することを示したように、本発明の試薬は、SLEを処置または予防するために有用である。
【0064】
いくつかの病原性の病原体(infecious agent)に対する正常な免疫応答は、過剰になり得る自己抗体応答を誘発し、そして医学的問題を提示する。1つの例は、シャーガス病(慢性クルーズトリパノソーマ(T.cruzi)感染を有するヒトおよび実験動物において発症する炎症性心筋症)である。最近、いくつかの研究は、シャーガス病患者の血清中の抗自己抗体を同定した(Bach−Eliasら、Parasitol.Res.84:796−799(1998))。さらに、心臓特異的自己免疫応答の誘導は、最近、ヒトシャーガス心筋症の病因学に関連する可能な機構として、実質的な実験的支持を受けた。最近の研究(Tibbettsら、J.Immunol.、152、1493−1499頁(1994))は、心臓の抗原特異的抗体が、心臓病を有するT.Cruzi感染C57B1/6マウスにおいて産生されることを決定した。T.CruziのBrazil系統での感染に際して、C57B1/6マウスは、慢性的に感染したヒトにおいて観察される心筋症に組織学的に類似する心筋症を発症させる。これらのマウス由来の抗血清は、3つの心臓の抗原と反応するが、心筋症を発症させない、T.CruziのGuayas系統で感染したC57B1/6マウスは、このような抗体を産生しなかった。これらのデータは、これらの抗体が、心筋症の特異的マーカーであることを示す。B細胞活性化およびIg産生をブロックする、TWEAK改変剤の能力は、シャーガス病患者において起こる心臓のダメージをブロックすることにおいて有用である。
【0065】
特定の感染疾患の結果として作製される自己抗体によるか、または他の未知の理由のための細胞破壊の別の例は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)である。この状態において、血小板に対する抗体は、出血の原因となり得る(補体、またはFcもしくはC3bレセプターを有する食細胞による)血小板破壊を生じる。インビボで自己免疫反応を媒介するこのような抗体を阻害する治療薬(例えば、本発明のTWEAK改変剤)−−抗体の産生を阻害する−−は、これらの自己免疫疾患を処置または予防するためにさらに有用である。
【0066】
いくつかの病原性の病原体(infecious agent)に対する正常な免疫応答はまた、過剰になり得る過敏性反応を誘発し得、そしてそれら自体を医学的問題として提示し得る。I型過感受性の最も流行性の例は、アレルギー反応である。これらは、肥満細胞上および好塩基球上のレセプターにFc部分を介して結合するIgE抗体により媒介され、アナフィラキシーを媒介する薬学的に活性な因子の放出を引き起こす。ITPおよびグッドパスチャー症候群は時々、IgM抗体またはIgG抗体が細胞表面上の抗原に結合し、補体カスケードを活性化する場合に生じる、II型反応であると考えられる。次いで、顆粒球は、活性化部位に誘引され、そしてこれらの顆粒細胞由来の溶解酵素の放出からのダメージは、細胞の破壊を生じる。リウマチ性動脈炎は、正常なIgGのFc部分に結合する抗原(この場合は、リウマチ因子(IgM自己抗体))の免疫複合体により媒介されるIII型過敏性反応から生じると考えられる。これらの免疫複合体は、関節の炎症を引き起こすことおよびこの疾患に特徴的なダメージに関与する。これらの病理学が抗体により部分的に媒介される場合、抗体の産生を阻害する治療薬(例えば、本発明のTWEAK改変剤)はこれらの疾患を処置または予防するためにさらに有用である。
【0067】
患者に対する有意な抗体媒介性損傷を生じる疾患のさらなる例としては、グレーヴズ病および急性溶血性貧血が挙げられる。TWEAK改変剤がこのような疾患を予防または処置する際に有効性を示すことが、予測される。
【0068】
(細胞性免疫応答の阻害)本発明者らは、インビボにおいてTWEAKタンパク質の活性を改変する試薬の投与が、抗体媒介性(体液性)免疫障害である慢性GVHDの発症をブロックすることを示した。慢性GVHDの発症をブロックし得る他の強力な免疫系改変剤(modifier)としては、抗CD40LおよびCTLA4−Ig融合タンパク質が挙げられる。これらの試薬は、T細胞活性化およびB細胞活性化における重大な工程をブロックする(GrewalおよびFlavell,Immunol.Rev.153:85−106(1996))。従って、これらの他の強力な免疫系経路の治療的操作は、体液性免疫応答に限定されていない。例えば、抗CD40LおよびCTLA4−Igは、動物モデルにおいて器官移植拒絶を制御するために、別々におよび一緒に使用されている(Kirkら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.94:8789−8794(1997))。移植された器官に対する多くの免疫応答は、Th1 T細胞媒介性であり、そして細胞傷害性細胞性免疫応答からなる。このような細胞性免疫応答は、自己免疫疾患のような種々の他の免疫障害(例としては、例えば、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、糖尿病、潰瘍性大腸炎およびクローン病)における細胞媒介性損傷の原因である。慢性GVHDの発症をブロックする能力に基づいて、本発明者らの発明は、細胞性免疫障害の治療的処置におけるTWEAK改変試薬またはTWEAKレセプター改変試薬の使用を予測する。
【0069】
(TWEAK改変剤およびTWEAKレセプター改変剤を使用する処置)本発明の組成物は、検討される特定の臨床的状態を処置するために有効な用量で投与される。所定の適用について好ましい薬学的処方物および治療上有効な用量レジメントの決定は、例えば、患者の状態および体重、所望の処置の程度ならびに処置についての患者の寛容を考慮して、十分に当該分野の技術内にある。
【0070】
約5mg/kgのTWEAK改変剤またはTWEAKレセプター改変剤の用量は、処置用量を最適化するための適切な開始点であることが予測される。
【0071】
治療上有効な用量の決定はまた、インビトロ実験を実施することによって評価され得る。この実験は、(治療上)適切な時間の間に標的細胞(改変剤に依存するTWEAK陽性細胞またはTWEAKレセプター陽性細胞)をコーティングするために必要である改変剤の濃度を測定する。本明細書中に記載されるFACSおよびELISAレセプター−リガンド結合アッセイは、細胞コーティング反応をモニターするために使用され得る。このようなインビトロ結合アッセイの結果に基づいて、適切な改変剤濃度の範囲が、動物において試験するために選択され得る。
【0072】
本発明の可溶性改変剤(天然に存在する試薬または化学的に誘導された試薬、およびそれらの塩または薬学的に受容可能なそれらの誘導体を含む、単離された形態および精製された形態の抗TWEAK抗体および抗TWEAK R抗体、レセプター−Ig融合タンパク質、他のTWEAK改変試薬およびTWEAKレセプター改変試薬を、単独でまたは組み合わせて含む)の投与は、免疫抑制活性を示す薬剤の投与の、従来の受容される任意の様式を使用して達成され得る。
【0073】
これらの治療において使用される薬学的組成物はまた、種々の形態であり得る。これらとしては、例えば、固体、半固体および液体の投薬形態(例えば、錠剤、丸剤、散剤、液体溶液または懸濁液、坐剤、ならびに注射用溶液および注入用溶液)が挙げられる。好ましい形態は、投与および治療的適用の意図される様式に依存する。投与の様式としては、経口投与、非経口投与、皮下投与、静脈内投与、病変内投与、または局所的投与が挙げられ得る。
【0074】
本発明のTWEAK改変剤およびTWEAKレセプター改変剤は、例えば、取り込みまたは安定性を刺激する補因子を有するかまたは有さない、滅菌された等張処方物中に配置され得る。処方物は、好ましくは液体であるか、または凍結乾燥された粉末であり得る。例えば、本発明のTWEAK改変剤およびTWEAKレセプター改変剤は、5.0mg/mlのクエン酸一水和物、2.7mg/mlのクエン酸三ナトリウム、41mg/mlのマンニトール、1mg/mlのグリシンおよび1mg/mlのポリソルベート20を含む処方緩衝液を用いて希釈され得る。この溶液は、凍結乾燥され得、冷蔵下で保存され得、そして投与される前に、滅菌された注射用水(Water−For−Injection)(USP)を用いて再構成され得る。
【0075】
この組成物はまた、好ましくは、当該分野で周知の従来の薬学的に受容可能なキャリアを含む(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,1980,Mac Publishing Companyを参照のこと)。このような薬学的に受容可能なキャリアとしては、他の医薬用薬剤、キャリア、遺伝的キャリア、アジュバント、賦形剤など(例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿調製物)が挙げられ得る。この組成物は、好ましくは、単位用量の形態であり、そして通常1日に1回以上投与される。
【0076】
本発明の薬学的組成物はまた、罹患された組織または血流に置かれるか、罹患された組織または血流の近傍に置かれるか、そうでなければ罹患された組織または血流に連絡する、ミクロスフェア、リポソーム、他の微粒子送達システムまたは徐放性処方物を使用して投与され得る。徐放性キャリアの適切な例としては、成形物品(例えば、坐剤またはミクロカプセル)の形態の半透性ポリマーマトリクスが挙げられる。移植可能な徐放性マトリクスまたはミクロカプセル徐放性マトリクスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,319号;EP 58,481)、L−グルタミン酸およびエチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら,Biopolymers,22,547−56頁(1985));ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはエチレンビニルアセテート(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.,15,167−277頁(1981);Langer,Chem.Tech.,12,98−105頁(1982))が挙げられる。
【0077】
(TWEAK改変剤またはTWEAKレセプター改変剤を含む治療組成物の利点)本発明のTWEAK改変剤およびTWEAKレセプター改変剤は、慢性GVHDモデルにおけるB細胞活性化およびIg産生の阻害によって示されるように、免疫応答を阻害し得る。このような免疫媒介性応答を選択的に阻害する能力は、免疫障害(種々の自己免疫疾患、器官移植拒絶、ならびに急性および慢性の炎症状態を含む)の処置に有用である。このような病理学的免疫障害の処置は、一般に、広範な種々の細胞型および免疫学的応答に対して多面発現性効果を有する免疫調節剤および免疫抑制剤を使用する。これらの非特異的免疫抑制剤は、一般に、有害な副作用を生じる高用量で、およびしばしば細胞傷害性用量で、必要とされる。例えば、現在使用される3つの一般的な免疫抑制剤としては、ステロイド、シクロホスファミドおよびアザチオプリンが挙げられる。ステロイドは、多面発現性抗炎症薬剤であり、これは、活性化マクロファージを抑制し、そして多くの病理T細胞効果を逆にする方法で抗原提示細胞の活性を阻害する。シクロホスファミド(アルキル化剤)は、DNAの複製および修復を阻害することによって細胞死を媒介する。アザチオプリンは、抗増殖性薬剤であり、これは、DNA合成を阻害する。これらの非特異的免疫抑制剤は、一般に、これらの毒性(例えば、腎毒性および肝毒性)を増大しかつ有害な副作用を生じる高用量で必要とされる。従って、これらは、長期間の治療の間には不適切である。
【0078】
従って、従来の処置によって生じる問題を克服するさらなる薬剤および治療のまだ満たされていない必要性が存在する。
【0079】
以下は、本発明の抗TWEAK mAb、このmAbの特徴において使用される方法、および抗原駆動免疫学的障害をブロックするためのこのmAbの使用を例示する実施例である。これらの実施例は、限定されると解釈されるべきではない:この実施例は、例示の目的のために含まれ、そして本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0080】
(実施例)
(実施例1:TWEAKタンパク質に対するモノクローナル抗体の産生)
ヒトTWEAKタンパク質およびマウスTWEAKタンパク質を認識するモノクローナル抗体を、記載されるように、バキュロウイルスにおいて生成された可溶性ヒトTWEAKタンパク質を使用して、アルメニアハムスター(Armenian hamster)において生成した(Chicheporticheら、J.Biol.Chem.51:32401−32410(1997))。最初の免疫について、各ハムスターは、ipで、完全フロイントアジュバント(CFA)中で50μgのTWEAKを受けた。引き続く免疫(最初の免疫の14日後、28日後および42日後)について、各ハムスターは、ipで、不完全フロイントアジュバント(IFA)中で50μgのTWEAK(14日および28日)または33μgのTWEAK(42日)を受けた。ハイブリドーマ形成のための脾臓細胞の融合の前の最後の免疫は、ipで、アジュバントを有さない100μgのTWEAKを用いた。ハイブリドーマ生成を、標準的な手順を使用して実施した(Lerner,Yale J.Biol.Med.54:387−402(1981))。
【0081】
mAb活性の最初のスクリーニングを、ELISA形式アッセイを使用して行った。マウスTWEAKタンパク質を、ヒトTWEAKタンパク質について記載される方法と類似の方法を使用して、バキュロウイルスにおいて生成した(Chicheporticheら、J.Biol.Chem.51:32401−32410(1997))。精製したヒトTWEAKタンパク質および精製したマウスTWEAKタンパク質を、96ウェルプレート上にコーティングし、そして種々のハムスターmAbを、このmAbが、これらの固定化されたタンパク質に結合する能力について、試験した。固定化されたTWEAKタンパク質によるハムスターmAbの捕捉を、HRPを結合したロバ抗ハムスターIgG(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA USA)、および適切な酵素反応を使用して可視化した。23のmAbのうちの8つが、マウスTWEAKタンパク質およびヒトTWEAKタンパク質の両方を認識した(表1)。
【0082】
【表1】

TWEAKのマウス形態とヒト形態との間に見られるタンパク質相同性の程度を考えれば、種系統を超える抗原性エピトープの保存は、驚くほどではなかった。(図1)。FACS分析を使用して、抗TWEAK mAbが、細胞の表面上に発現されるTWEAKタンパク質に結合し得るかどうかを決定した。ヒトTWEAK cDNA配列およびマウスTWEAK cDNA配列を、発現ベクターCH269中にクローニングし(Chicheporticheら、J.Biol.Chem.51:32401−32410(1997))、そしてこれらの構築物をトランスフェクションにおいて使用して、EBNA293細胞における一過性のタンパク質発現を生成した。4つのmAb(AB.D3を含む)は、マウスTWEAKを発現するEBNA293細胞に十分結合した(図2)。これら4つのmAbはまた、ヒトTWEAKのHT29細胞(これは、1つ以上のTWEAKレセプターを発現することが公知である)への結合を妨げ得た(例えば、図3)。これらのFACS分析とともに、抗TWEAK mAbが特異的にTWEAKタンパク質を認識し、そしてTWEAKタンパク質が1つ以上のTWEAKレセプターに結合する能力を改変し得たことを、示した。
【0083】
(実施例2)
(慢性GVHDのマウスモデルにおける巨脾腫症の発症、活性化B細胞およびIg産生をブロックするための抗TWEAK mAb AB.D3の使用)
慢性GVHDを、6〜8週齢のB6D2F1雌性マウスに、方法において記載されるDBA/2脾細胞移植片を使用して誘導した。各レシピエントを、尾静脈において500μl(1×108)の細胞を用いて注射した。実験群は、DBA/2移植片(DBA/2>F1)を受け、一方、コントロール動物のセットは、B6D2F1移植片(F1>F1)を受けた。マウスは、抗TWEAK mAb AB.D3、抗CD40L mAb MR1、コントロールmAb Ha4/8を受けたか、または処置を受けなかった。動物は、移植片注入の4時間前、ならびに2日後、4日後および6日後に、250μg mAb ipを投薬された。実験の14日目に、マウスを屠殺し、そして脾臓指数(spleen index)を、コントロールF1>F1群における各動物の体重に対する脾臓重量の比として計算し、1つの値を与えるために平均化した。全ての他の群についての平均脾臓指数を、コントロール値に対して正規化する。2つの独立実験からの結果を、表2に示す。DBA/2移植片(DBA/2>F1)を受ける動物、および未処置のままかまたはコントロールmAb Ha4/8を用いて処置された動物は、F1>F1移植片コントロールと比較した場合に、脾臓重量の劇的な増大を示した。この結果は、脾臓指数に反映され、これは、1.0〜2.6の正規化されたコントロール値からの増大を示した。抗CD40L mAb MR1を用いるマウスの処置は、脾臓指数をコントロールレベルの近く(1.1)に減少させ、そして抗TWEAK mAb AB.D3を用いる処置は、巨脾腫症を35%、1.7に減少させた(表2)。
【0084】
【表2】

FACS分析を使用して、コントロールマウスおよび疾患を有するマウスの脾臓におけるリンパ球集団の活性化状態を分析し、種々の処置群を示した。最初に、本発明者らは、種々の群のマウスにおけるドナー細胞移植の量を分析した。ドナー細胞を、全てのDBA/2>F1処置群における宿主マウスの脾臓において、ほぼ同じ割合(平均=6.2%)で検出した(表3)。この結果は、異なるmAb処置が、ドナー細胞移植に影響を及ぼさなかったことを示した。
【0085】
【表3】

次に、リンパ球活性化の2つのマーカーを使用した:B220+B細胞上のCD69発現、ならびにCD4+T細胞およびCD8+T細胞のL−セレクチン発現。コントロールおよび未処置のDBA/2>F1マウスを比較した場合、本発明者らは、2.5%から6.2%へのCD69+B細胞の増大に注目する(表4)。CD69+B細胞の数におけるこの増加を、MR1(3.3%)またはAB.D3(2.1%)のいずれかを用いる処置によって妨げたが、Ha4/8(6.5%)を用いる処置によっては妨げなかった(図4および表3)。2つの実験からのデータを、表4に示す。
【0086】
【表4】

Ig分泌のインビトロ分析について、ELISA分析を、種々の処置群から収集した脾臓由来の脾細胞細胞培養上清上で実施した。表5における結果は、第2の実験(1群あたり3匹のマウスからの結果の平均)からである。MR1またはAB.D3を用いる処置は、未処置およびHa4/8で処置したDBA/2>F 1群において観察された自発的なIgG産生において、4〜6倍の増大を妨げた。
【0087】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【図4f】
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【図4g】
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【公開番号】特開2013−75916(P2013−75916A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−6243(P2013−6243)
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2010−188938(P2010−188938)の分割
【原出願日】平成12年1月14日(2000.1.14)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】