説明

UV−C光により生きた植物または生きた植物部分またはキノコを処理する方法

本発明は、生きた植物およびキノコにおける病原体成育をUV-C光を用いて制御する方法およびかかる方法に使用する装置に関する。過剰な葉を除く方法および地下の根、塊茎または鱗茎の収穫に先立って空中植物部分を破壊する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に農業生産方法に関し、より具体的にはボトリチス属(Botrytis)、フィトフトラ属(Phytophthora)およびその他の植物病原体によってもたらされる生きた植物またはキノコに対する障害の低減または排除に関する。生きた植物または植物部分またはキノコに対する病原体成育は、植物またはキノコの成育、発達および収量に負の効果を与えずにUV-C光を用いて制御される。本発明はさらに病原性微生物の成育を制御するための装置にも関する。UV-C光を用いて生きた植物から過剰な葉を除く方法および地下の作物の収穫前に空中植物組織を破壊する方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
病原性微生物による感染および障害からの農作物の有効な保護は長年にわたり農業の難しい領域であった。特に、植物病原性真菌、例えば、ボトリチス属(Botrytis)、フィトフトラ属(Phytophthora)等の真菌による感染の結果、価値ある露地農作物、そして特に温室の作物に対する障害により重大な収穫の損失がもたらされうる。
【0003】
多くの栽培者は真菌による攻撃を殺真菌薬で処置している。これらは収穫に関しては値打ちがあるが、殺真菌薬の施用に必要な労力もかかる。さらに、長期作用の殺真菌薬使用の環境および人体の健康に対する公有財産の関心が高まっている。
【0004】
温室またはトンネル栽培(tunnel grown)作物の場合、病原体の攻撃は特に問題となり得る。というのは、制御された環境の高い相対湿度および良好な生育条件は植物だけでなく多くの病原体の成育も促進するためである。栽培者はしたがって、換気をよくすることにより温室またはトンネルの相対湿度を低めることにとりくんでいるが、それは多くの場合熱コストを高めてしまい、そして化学的病原体制御の総コストはかなり高くなってしまう。
【0005】
UV光が抗真菌作用を有しうることが知られるようになっている。注意深い温室栽培者はUVの非存在が (例えば、大きい植物の下部または温室/トンネルの被覆、例えば太陽光に通常存在するUV光の透過を遮るガラス、ポリエチレンまたはその他の材料の下)農作物の上での真菌成育の存在を上昇しうることを観察してきた。
【0006】
UV光は波長に基づいて様々なクラスに分けられ、約 350 nmの紫外線 A(UV-A)、約 300 nmの紫外線 B (UV-B)および約 250 nmの紫外線 C (UV-C)が挙げられる。生物学的変化をもたらすUV光の有効性は波長が異なると異なりうるのは驚くべきことではない。
【0007】
真菌処理のために、UV光の使用は作物や環境に残余毒性を残さない非化学的処理であるために魅力的である。 UV光は真菌成育を不活化しうることが示された。しかし、UV-AおよびUV-Bはヒトの皮膚およびヒトの眼に障害をもたらすことが示された。さらに、UV-AおよびUV-Bは発癌性であることが示されているが、UV-Cは報告されたところによると発癌性ではない。
【0008】
今日まで、 UV-C光は水または表面の殺菌あるいは生きた/成育中の/光合成をしている植物から除かれた収穫後植物材料、例えば収穫された果物や野菜の処理に用いられていた。例えば、 Marquenie et al(2002、Int T Food Microbiol 74: 27-35)はUV-C (254 nm)を用いて収穫後の病原体、 貴腐カビ(Botrytis cinerea)およびリンゴ灰星病菌(Monilinia fructigena)の分生子の生存度に対するUV-C および/または 熱処理の効果を試験している。かかる処理は長期保存および収穫された果物および野菜の輸送の際に病原体によってもたらされる収穫後障害の低減には有用である。
【0009】
EP0007459は、2-30OmW/m2という高用量での広い波長 (200-400nm)のUV光の使用を記載しており、ここでは低いレベルであっても0.17 J/cm2に相当する。UV-C光自体の使用 (その他のUV光、例えば UV-A および/または Bの実質的不在) も低用量での使用も示唆されていない。さらに実施例は純粋に理論上のものである。
【0010】
WO2004/039075はダイポール電気空気ジェット技術および湿潤剤を用いるUV-C およびオゾン処理水を用いる微生物の制御方法を記載している。したがって、2つの抗微生物薬が組み合わされており、混合感染および昆虫と闘う野外では明らかに有用である。この技術は屋外栽培植物にのみ好適である。UV-C のそのままの使用やどのような用量が有効であるかの記載はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の概要
本発明は、病原体に影響を与え、作物植物には永続的な負の効果をもたらさない、特に植物の通常の成育および発達に負の効果を与えない、生きた植物上の病原体成育の非化学的、非発癌性処理の提供を求める。
【0012】
温室/トンネル栽培者がその温室/トンネルにおいて高い相対湿度を採用できる抗病原体処理方法を提供することも本発明の目的である。植物の通常の成育および発達に影響を与えずに病原体成育が制御されるため、作物収量は顕著に上昇する(病原体によってもたらされる収量の損失が低下するため)。したがって、優れた作物収量および/または顕著に低い熱コストが本発明の方法の結果である。
【0013】
さらに望ましくない副作用、例えば、UV-AおよびUV-B光の発癌性作用なしにかかる処理を提供することも目的である。
【0014】
特定の病原体集団が化学物質に対して耐性を獲得したとしても有効である抗病原体処理方法を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0015】
栽培者が温室/トンネルにおける相対湿度を高めることが出来、したがって作物をより有効に成育させることが出来、エネルギー消費を実質的に削減するのに有効な、温室/トンネルにおける病原体成育を制御する処理を提供することも目的である。
【0016】
数日以内に収穫される予定の農作物に対する病原体を制御する処理を提供することも本発明の目的である。多くの殺真菌薬は3日またはそれ以上の収穫前間隔 (PHI)を有し、したがってかかる化学物質を用いる真菌の制御は不可能となる。
【0017】
本発明の目的はさらに、植物、または少なくともその部分での病原体成育を制御、特に低下させるための、本発明による方法に用いられる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によると、本発明による方法に使用するための植物 (または少なくともその部分) の上での病原体成育の制御のための装置は以下を含む:
- UV-C光源:ここで、光源は本質的に UV-A および UV-B 光を放射せず、少なくとも 90%、95%、98%、99%またはそれ以上UV-C 光のみを放射する;
- 所望により光源はさらに、UV-C 放射が低下せず、ほこりおよびよごれが光源自体の上に集まらず、石英管の上に集まるようにそのまわりに石英管またはケーシングを含む;ほこりおよびよごれは例えば、高圧噴霧器(例えば水の噴霧)を用いて容易に除くことが出来る;
- 所望により石英管はさらに石英管の破損または損傷の結果粒子散乱が起こらないように内側および/または外側にテフロン(登録商標)層を含みうる; 本質的にすべての壊れた粒子はテフロン(登録商標)層により互いに付着したままとなり、光源は容易に交換することができる;
-植物 (または少なくとも植物部分)を光源が通過する輸送手段、ここで植物の光源による1回の通過の間に、植物 (または植物部分)は該病原体によりもたらされる植物組織損傷を低下 (または防止)するのに十分に高いが、持続的に該植物を損傷するには十分に低い量のUV-C 光で処理される。一つの態様において、UV-C 光は病原体成育の制御 (特に低下)に十分に高く、同時に植物の成育、発達および/または収量に負の効果を有さない。
【0019】
植物が光源を通過するまたは光源が植物を通過することにより、 植物 (または植物部分)はあらかじめ決められた有限の時間曝露されることになる。この限られた時間の間、病原体成育は制御、特に低下される。その結果、病原体バイオマスおよび病原体による感染の総量は低下し、植物が感染から回復する時間が与えられる。この回復により植物はより健康に生育可能となり、その結果作物収量が優れることになる。
【0020】
本発明のさらなる態様においてUV-C 光の量は24 時間の期間中0.002 (または 0.0025) 〜0.16 J/cm2 であり、より好ましくは 0.002 (または 0.0025)〜 0.15 J/cm2、特に 0.16または0.15 J/cm2以下である。
【0021】
植物の組織におけるこの範囲のフルエンスは病原体の制御に好適であり、驚くべきことに制御の達成および有効化に必要なUV-C 用量は非常に低いことが見いだされた。フルエンスの最適値は、植物種、成育段階、病原体の種類および病原体の成育段階に依存する。
【0022】
定義
「UV-C 光」または「UV-C 照射」とは、240から260 nmの波長を有する紫外光 (または照射)をいう。243から255 nmの波長を有するUV-C 光が好ましい; ある態様において、約 245 から247 nmの波長が特に好ましい。というのはUV-C 光の抗病原体効果はこの波長範囲で最大となる傾向にあることが観察されているからである。この定義には240-260nmの波長も含まれ、上限または下限値自体、また、上限および下限の間の値または範囲、例えば 約 254 nmまたは約 260、261、262、263、264または265nmも含まれる。
【0023】
「生植物」または「生きた植物」は本明細書において用いる場合、実生段階から成熟植物の間のあらゆる成育段階の植物をいう。この用語は、収穫された植物や保存された植物部分(例えば、種子、果実等)を含めないよう用いられ、ただし例外的に、一つの態様において「植物カット(cutting)」はこの用語に含まれる。というのは、かかるカットは発根することができ、定植の後、植物へと成育するからである。
【0024】
「植物の部分」とは植物から切り離されていない生植物の部分をいう。例えば、茎または葉の下側は全植物の部分である。 また植物の下側75%、50%、25%または10% も植物の部分である。
【0025】
「複数の植物」とは、例えば作条または圃場において隣接しているような、互いに近接して成育している植物である。
【0026】
「空中組織」または「空中植物部分」は、地上の植物組織、特に、葉、茎、花および発育中の果実である。
【0027】
「キノコ」にはあらゆる種のキノコ(好ましくは可食、栽培のもの)が含まれ、例えば、マッシュルーム (Agaricus bisporus)、シイタケ (Lentinula edodes)、ヒラタケ (Pleurotus ostreatus)、ヤドリタケ種 (例えば、B. edulis)、アンズタケ (Cantharellus cibarius)等が挙げられる。
【0028】
「生キノコ」はあらゆる成育段階のキノコをいい、特に子実体のあらゆる成育段階のものをいう。
【0029】
「複数のキノコ」は、互いに隣接して成育しているキノコをいう。
【0030】
「病原体」または「植物病原体」とは、生植物、即ち宿主植物に対して疾患(例えば、症状としてみられるもの)を引き起こすことが出来る微生物、例えば、真菌、細菌、マイコプラズマおよびウイルスをいう。特に言及されるのは、少なくともその生活環の一部において、1以上の植物の空中部分の外面に存在する病原体である。この用語にはまた、病原性昆虫および線虫害虫が含まれる。
【0031】
「昆虫」とは、あらゆる昆虫種をいい、好ましくは植物害虫、即ち植物に損傷を与える昆虫をいう。
【0032】
UV-C 光との関係において「接触」または「接触させる」とは、光を表面に照らすこと、それゆえ表面のUV-C 光への曝露をいう。「〜と接触させる」および「〜に曝露する」なる用語は互換的に用いられる。
【0033】
「病原体成育の制御」とは、植物または1以上の植物部分の上の1以上の病原体の総量の低下をいう。殺傷、損傷または成育速度、繁殖および/または伝播が損なわれた病原体の部分に起因して病原体量が低下したかどうかは重要ではない。それはまた、疾患の植物に対する全圧力 (1以上の病原体のバイオマス) の低下による病原体-誘導収穫ロスの低下もいう。
【0034】
明細書および請求の範囲において、「含む」なる動詞およびその活用形は、後に続く文言が含まれることを非限定的に意図するために用いられ、明示されていない構成を排除するものではない。さらに、不定冠詞「ある」または「一つの」によって示される用語は、特に一つおよび一つの要素のみが要求されると特記する場合を除いて二以上の要素の存在可能性を否定するものではない。不定冠詞「ある」または「一つの」はしたがって通常「少なくとも一つの」という意味であり、例えば「ある植物」は数個の植物も含む。
【0035】
図面の簡単な説明
本発明を以下に、多数の例示的態様を用いて添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。図において:
【0036】
図1は、本発明による方法に使用するための植物(またはその部分)の上での病原体成育の制御のための装置の第一の例示的態様を示す。
【0037】
図2は、本発明による方法に使用するための植物(またはその部分)の上での病原体成育の制御のための装置の第二の例示的態様を示す。
【0038】
図3は、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)の胞子嚢発芽(%)に対するUV-Cの効果を示す。
【0039】
発明の詳細な説明
低レベルのUV-C 光が植物病原体の制御に高度に効果的であり、それによって植物の活力および収量が上昇することが驚くべきことに見いだされた。UV-C 光は過去に殺菌剤として用いられていたが、記載されてきた効果的な用量は高く、生きた植物組織への適用は、組織がろうによって覆われた厚いクチクラに保護されている場合のみ行われていた (例えば、収穫後の果実および野菜であって、成育および/または光合成をしないもの)。
【0040】
本発明により、生きた、活発に成育するおよび/または光合成する植物および/またはキノコ組織に対する病原体の効果的な制御が初めて可能となる。0.16または 0.15 J/cm2組織表面の用量(即ち、160または150m J/cm2)またはそれより有意に低い用量が本発明によって用いることが出来る。例えば、フィトフトラ・インフェスタンス損傷は24 時間の期間適用される0.002-0.01 J/cm2 組織 (2 10 mJ/cm2)の使用で顕著に低下され、最適用量は 約 0.01 J/cm2 (10 mJ/cm2)である。
【0041】
さらにUV-C 光のその他の用途も見いだされた。例えば一つの態様において、それ自体真菌であるキノコが、その他の真菌キノコ病原体によりもたらされる損傷から保護されうる。別の態様において、UV-C 光が葉が茎に付着している領域には損傷を与えず生植物の下位葉の除去(「除却」)に用いることが出来ることが見いだされ、保護層の形成により自然に下位葉を落とし、 (葉の手作業による除去を用いる)その他の方法では創傷を与える疾患の発症を抑えることが出来る。
【0042】
さらなる態様において、植物の空中地上部分を破壊する方法が提供される。
【0043】
様々な態様を以下にさらに詳細に説明する。
【0044】
本発明による植物病原体の制御方法
一つの態様において、本発明は、1以上の生きた植物、特に、複数の植物(またはその1以上の部分、例えば、植物の下側半分または下側3分の1または4分の1)の上の病原体成育を制御、特に、有意に低下させる方法を提供する。該方法は、1以上の病原体の制御に十分な近接性および強度をもって一定時間定期的に該植物の少なくとも1以上の空中部分とUV-C 光とを接触させることを含む。UV-C 光は特に病原体に対して負の効果を有し、好ましくは処置する領域での病原体の量を低下させる。例えば、UV-C 光と接触した真菌の菌糸体の全部または一部が殺傷され得、それによって複数の植物に対する全疾患圧力が低下する。したがって、病原体の成育、生存能力および/または感染性および/または繁殖がUV-C処理によって低下しうる。それゆえ、複数の植物の収量は同様に処理されなかった対照植物と比較して上昇する (ただし、植物が曝露される最初の疾患圧力は同様とする)。 好ましい態様において、植物または複数の植物の成育および発達は UV-C処理によって負の影響を受けず、収量も負の影響を受けず、もっとも好ましくは対照植物と比較して有意に上昇する。
【0045】
本発明の一つの態様において、UV-C 光に曝露された植物組織は損傷を受けず (以下参照)、別の態様において植物組織部分のいくらかはUV-C 光によって損傷されうるが (例えば UV-Cに曝露された下位葉はUV-C誘導症状を示し得、死滅または「除却」されうる; 以下参照)、全植物成育および収量は負の影響を受けない(即ち、植物は正常に成育を続け、収量は対照植物と少なくとも同一であり、しかし好ましくは 少なくとも 1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%以上対照植物よりも高い)。
【0046】
別の態様において、本発明は、1以上の生きた植物(複数の植物)の病原体損傷を有意に低下させる方法(即ち、植物を病原体損傷から保護する方法)を提供する。該方法は、植物組織に損傷を与えることなく、少なくとも病原体の感染に感受性の該植物の空中部分を1以上の回数(定期的に) 病原体成育に対する効果(即ち制御、特に、低下) (例えば、生存能力および/または感染性および/または繁殖の低下)を有するのに十分な近接性および強度にて UV-C 光に一定時間曝露することを含む。
【0047】
特に、1以上の植物病原体によってもたらされる植物組織損傷を低下させる方法が提供され、ここで該方法は、該病原体によってもたらされる植物組織損傷を低下させるのに十分に高いが、該植物組織の持続的損傷をもたらすには十分に低い量のUV-C 光に生植物(またはその部分)を1以上の回数曝露することを含む。特に、植物の成育および収量は負の影響を受けない。
【0048】
本明細書において、植物組織損傷とは、可視的な、肉眼で見える組織損傷であって、目視評価によってスコア付けできるものをいう。2つのタイプの組織損傷を識別可能である。第一のタイプの組織損傷は、1以上の植物病原体によって直接的または間接的にもたらされる損傷である。この損傷は典型的疾患症状としてみられ、例えば、斑点病、茎斑点病、白化、ネクローシス、またはがん腫病が挙げられる。「損傷」という用語は病原体、例えば生きたまたは生存可能な真菌の菌糸体による組織の外側被覆も含む。いずれのタイプの病原体も宿主種に対して規定されたセットの症状を引き起こすことが知られている。第二のタイプの組織損傷は、高すぎる用量が適用された場合にUV-C処理によりもたらされる損傷である。これらの症状も可視的に肉眼で見えるものであり、例えば、 病変部、白化等としてみられる。しかしながら、一つの態様において、本発明は可視的な損傷を植物にもたらさないUV-C 用量を用い、即ち、 UV-C誘導性症状も、成育および発達にその他の効果 (例えば、成長阻害、奇形等) もみられない。
【0049】
特に、0.002 (または0.0025)〜0.16 または0.15 J/cm2の間の24 時間の期間のUV-C 光の量は植物の成育および収量に負の効果を有する植物組織損傷を誘導せずに、抗病原体効果を有する、即ち、病原体成育の制御効果を有することができることが見いだされた。したがって、特に、複数の植物の正常の成育および収量は負の影響を与えられずに病原体成育が制御される。最適用量または用量範囲は以下にさらに記載するように植物種または植物組織/病原体の組合せに依存しうる。用量上限は、例えば、用量応答実験において判定でき、ここである種の植物または植物部分 (好ましくはすべて発達段階が同じで同じ条件下で成育したもの)が様々な量の UV-C 光に曝露され(と接触され)、可視的な症状を導かないか、あるいは少なくとも植物の成育および収量に負の効果を有さない用量を選択することによって判定される。 UV-C 光への曝露という場合、本質的にUV-C 光のみが組織と接触するのが好ましく、即ち、光源が実質的な量の UV-Aおよび UV-B 光を放射しないのが好ましい(即ち10%未満、好ましくは5% または2%未満、もっとも好ましくは1%未満または好ましくは 0%)。
【0050】
したがって、本発明の一つの態様によるUV-C処理は、処理された植物において対照植物 (UV-Cで処理されていない植物)と比較して病原体がもたらす損傷 (直接的および/または間接的症状)を有意に低下させ、処理された植物の成育および収量に影響を与えない用量のUV-Cを用いる。したがって、好ましくは、病原体によってもたらされる典型的疾患症状はUV-Cに曝露された全植物または部分のいずれかについて有意に低下する。「有意な低下」とは対照植物(または部分)と比較しての1以上の症状の少なくとも 5%、10%、15%、20%、30%、50%、60%またはそれ以上の低下をいう。この低下は、通常の可視的スコアリング、または、処理された植物の対照植物と比較しての収量の測定により間接的にアッセイおよび定量できる。
【0051】
一つの態様において、病原体により引き起こされる組織損傷の有意な低下には、病原体の成育の有意な低下も含まれる。これは、例えば、生きたまたは生存可能な病原体構造自体の量の評価により測定でき、例えば、空中植物部分の外側表面にみられる量、または植物/植物部分にみられる総病原体バイオマスにより測定できる。したがって、一つの態様において、植物または植物組織上での(特に植物または植物部分の外側表面上での) 生きたまたは生存可能な病原体の量を低下させる方法が提供される。例えば、(生きたまたは生存可能な)真菌の菌糸体および/または(生きたまたは生存可能な) 真菌の生殖構造、例えば、胞子(例えば、分生子、子嚢胞子、菌核粒子、胞子嚢、遊走子等)の量は好ましくは少なくとも 5%、10%、15%、20%、25%、30%、50% 60% またはそれ以上 (もっとも好ましくは 100%)対照と比較して UV-C 処理された植物または植物部分にて低下する。
【0052】
UV-Cの量が菌糸体の生存能力のみに影響するのか、または胞子または生殖構造、例えば、胞子嚢の生存能力にも影響するのかは、病原体によって生じる胞子および生殖構造のタイプに依存する。しかしながら、効果的な制御のためには栄養構造(菌糸体)の生存能力の有意な低下で十分であり、生殖構造のさらなる低下は望ましく、ある病原体、例えば P. infestansには可能であるが、必須ではない。驚くべきことに、低用量のUV-C 光の使用は、有意に菌糸体の生存能力を低下させるのに十分であるだけでなく (約 6 から10mJ/cm2のUV-C 光を用いた場合に% 発芽における有意な低下としてみられる;図3も参照)、フィトフトラ・インフェスタンスの胞子嚢および/または遊走子の生存能力も低下させることが見いだされた。「真菌の」および「真菌」という用語は、本明細書において用いる場合、卵菌、 例えば フィトフトラ・インフェスタンス(P. infestans)も含むことに注意されたい。
【0053】
上記は、その生活環の少なくとも一部において1以上の外側空中植物表面に存在する他の病原体、例えば、細菌またはウイルスにも同様に適用される。病原体成育自体の低下は植物組織における症状のアッセイまたは例えば、対照植物/組織と比較して1以上の時点で外側表面に存在する生存可能な胞子または胞子嚢および/または菌糸の量のアッセイにより評価できる。例えば、所与の植物または植物組織における病原体の存在または非存在は、例えば可視的手段、分子的方法 (例えば、 PCRに基づく方法)、免疫学的方法、顕微鏡的方法および/またはバイオアッセイを用いてアッセイでき、所望により定量できる。
【0054】
該方法において、植物または複数の植物の成育、発達および収量は負に影響されない。植物の成育および発達は非処理対照植物のものと比較でき、目視評価される。収量は様々な手段で測定でき、例えば、収穫部分の重量またはサイズの測定によって測定できる (例えば平均果実サイズおよび/または重量)。
【0055】
該方法は、それゆえ、以下を含む:(a)1以上の植物または植物部分とあらかじめ決められた用量の UV-C 光とを (1以上の回数) 接触させる工程、 所望によりさらに (b)組織損傷を目視で1以上の回数評価する工程および/または所望により (c)植物または植物部分上の病原体成育、特に 生きたまたは生存可能な病原体の量を評価する工程、および/または(d)植物の成育および収量を、対照と比較して評価する工程。
【0056】
したがって、UV-C 用量下限も用量応答実験によって判定でき、ここで植物または植物部分 (この場合も好ましくは発達段階がすべて同じで同一条件下で成育されたもの)が様々な用量のUV-Cに曝露(接触)され、1以上の病原体および症状の発達および/または病原体成育自体がアッセイされる。
【0057】
植物組織損傷の低下は好ましくは収量の上昇を導くものであり、もっとも好ましくは少なくとも 2、5、10、15、20、30、40、50またはそれ以上の%収量、UV-Cに曝露(接触)されていない対照植物の収量と比較して上昇する。植物の活力も上昇し、それは目視評価できる。
【0058】
植物組織とUV-C光との接触方法は植物種/植物組織 -- 病原体の組合せや植物の構造に応じて変動しうる。例えば、植物種のある組織の処理の最適用量がいったん決定されると、該用量は単回用量で適用しても2以上の用量に分割して適用してもよく、後者の場合継続的に一定の時間間隔で適用され、例えば1以上の分、時間、または日数 (例えば1、2、3、4または5 回/週またはそれ以上)等の間隔で適用される。追加的または互換的に、組織とUV-C 光源との距離も以下に記載のように変動しうる。
【0059】
一つの態様において、制御された環境、例えば、温室またはトンネル(tunnel) (例えば、ポリエチレントンネル)で成育する作物または鑑賞植物は、UV-C 光と接触されるが、別の態様において、圃場作物または鑑賞植物が接触される。
【0060】
植物をUV-C 光に曝露する場合、光源は曝露が1以上の側面 (例えば、植物または植物の作条の2つの側面、左右) および/または頂部から起こるように設定するとよい。所望により、光は頂部に配置してもよく、植物へ降り注ぐようにしてもよい。例えば、トラクターにその後方で広いブーム(wide boom)を牽引させ、ここで噴霧用ノズルがUV-C 光と交換されている。UV-C 光は頂部からUV-C 光を植物に曝露させることができ、あるいは作物に光源が植物の間に存在するように降下させることが出来る。植物は光源の降下により屈曲しうる。例えばコムギ植物またはダイズ植物は柔軟であり、したがってブーム(boom)が降下すると屈曲し、ブームが通過すると跳ね返って元に戻る。植物の間に位置するようUV-C 光源を降下させ得る装置は以下に記載のように本発明の一態様である。
【0061】
本発明の方法によって処理されうる植物は、病原体、特に真菌の攻撃に感受性であって病原性微生物が少なくとも部分的には、植物の外側、即ち植物組織表面に位置するいずれの植物でもよい。したがって、本発明の処理に好適な植物には、温室またはトンネルで一般に成育する植物、例えば、野菜、花、果実、および薬用植物ならびに野外作物、例えば野菜、飼料、穀物、果実植物、樹木または樹木実生、鱗茎/花、および薬用植物が含まれる。一つの態様において、該方法が植物葉を動かす方法と組み合わせて使用され、したがって病原体成育をUV-C 光に曝露することも想定される。かかる装置にはファン、または葉を除く物理的移動体が含まれる。一つの態様において、UV-C 光はいくつかの植物組織、特に(下位)葉の死および/または白化/ネクローシスをもたらすのに有利に用いられ、それらは通常は手作業により除く必要がある (以下を参照)。
【0062】
植物にみられる害虫および昆虫損傷の量が、昆虫および植物または植物部分を上記のようにUV-C 光と同時に接触させることにより低下させることができ、益虫、例えば ミツバチには影響はないようであることも驚くべきことに見いだされた。昆虫 (またはそのいずれかの発達段階、例えば、卵または幼虫)は、植物上および/または植物の下の地表上に存在しうる。UV-C 光は、昆虫を遅れさせるか、または昆虫(または1以上の発達段階、例えば、卵および/または幼虫および/または成熟昆虫)、特にUV-C 光を感知しうる昆虫、例えば、ムカデ類、ヤスデ類、ガ類、シラミ類等を混乱させるおよび/または殺傷すると推定される。それゆえ、昆虫損傷を低下させることおよび害虫による収量ロスを低下させることも本発明の態様である。病原体について記載した態様は昆虫にも同じように適用される。
【0063】
上記のように線虫はUV-C 光に曝露されると殺傷されることが見いだされた。これは土壌が線虫によって汚染されうる土壌成育作物において有益である。この態様において、土壌および/または植物および/またはキノコの底部が組織について上記したようなUV-C 用量に1以上の回数曝露される。
【0064】
上記のように、いずれの植物種も本発明の方法に用いることが出来、好ましくは、野菜種、圃場作物種および鑑賞植物種が本発明の方法に用いられる。これらには以下の種の植物が含まれる: トウモロコシ/モロコシ(Zea 種)、コムギ (Triticum 種)、オオムギ (例えば、 Hordeum vulgare)、カラスムギ(例えば、 Avena sativa)、ソルガム (Sorghum bicolor)、ライムギ (Secale cereale)、ダイズ (Glycine spp、例えば、G. max)、ワタ (Gossypium 種、例えば、G. hirsutum、G. barbadense)、アブラナ種 (例えば、 B. napus、B. juncea、B. oleracea、B. rapa、等)、ヒマワリ (Helianthus annus)、ベニバナ、ヤムイモ、キャッサバ、タバコ (Nicotiana 種)、アルファルファ (Medicago sativa)、イネ (Oryza 種、例えば、O. sativa indica 栽培品種またはjaponica 栽培品種)、飼料草、トウジンビエ (Pennisetum spp.例えば、P. glaucum)、アサ (Cannabis sativa)、樹木種 (マツ属、ポプラ、モミ、プランテン、トウヒ属等)、チャ、コーヒーノキ属、アブラヤシ、ココヤシ、野菜種、例えば、トマト (Lycopersicon ssp、例えば、 Lycopersicon esculentum、別名Solanum lycopersicum)、ジャガイモ (Solanum tuberosum、その他のSolanum 種)、ナス (Solanum melongena)、コショウ (Capsicum annuum、Capsicum frutescens)、エンドウマメ、ズッキーニ、マメ(例えば、Phaseolus 種)、キュウリ、チョウセンアザミ、アスパラガス、ブロッコリー、キャベツ、ニンニク、ニラ、レタス、タマネギ、ダイコン、カブ、芽キャベツ、ニンジン、カリフラワー、チコリー、セロリ、ホウレンソウ、エンダイブ、フェンネル、テンサイ、果肉果実担持植物(ブドウ、モモ、プラム、イチゴ、マンゴー、リンゴ、プラム、サクランボ、アプリコット、バナナ、ブラックベリー、ブルーベリー、柑橘類、キウィ、イチジク、レモン、ライム、ネクタリン、ラズベリー、スイカ、オレンジ、グレープフルーツ等)、鑑賞種(例えば、バラ、ペチュニア、キク、ユリ、チューリップ、ガーベラ種)、香草類(ミント、パセリ、バジル、タイム等)、樹木(例えば、Populus、Salix Quercus、Eucalyptus種)、繊維種、例えば、アマ (Linum usitatissimum)。特に好ましい植物および植物部分は、ジャガイモ植物、コムギおよびその他の穀物 (特に冬コムギ)、圃場野菜、例えば、タマネギ、温室野菜(トマト、キュウリ、アマトウガラシ等)および果肉果実担持植物、例えば、果樹(リンゴ、ナシ、プラム、等)である。
【0065】
本発明の方法を使用すると、病原体成育および上記種に感染する1以上の病原体によって引き起こされる植物損傷が有意に低下または阻止される。病原体は真菌の種 (卵菌を含む)、細菌の種またはウイルスまたはウイロイドであり得る。 好ましい態様において、病原体は、屍体栄養性真菌、好ましくはボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)である。別の好ましい態様において、病原体はフィトフトラ(Phytophthora) 属のメンバー、特にフィトフトラ・インフェスタンスである。本発明の方法で処理される病原体のタイプにはすべての植物病原体が含まれ、特に、生活環のある部分の間に植物の外面に一般的にみられる真菌(特に、植物組織の外面に菌糸体または生殖構造を生ずる真菌)および実際的にUV-C 光に曝露されうる真菌、例えば、トマト植物の茎の上およびその他の植物種および植物部分の上のボトリチス属(Botrytis)、ジャガイモ上のフィトフトラ・インフェスタンス、または様々なサビ病種、例えばダイズ植物上のダイズサビ病(Asian soy rust)またはクロホ病種が挙げられる。
【0066】
トマトの病原体としては、例えば、以下の種が挙げられる: Botrytis cinerea Colletotrichum coccodes、Corynebacterium michiganense、Bacterial speck (Pseudomonas syringae)、Clavibacter、Xanthomonas campesiris pv vesicatoria または Xanthomonas vesicatoria、タバコまたはトマトモザイクウイルス(TobMV、TomMV)、Alternaria alternate、Early Blight (Alternaria solani)、Glay Leaf Spot (Stemphylium solani)、Late Blight (フィトフトラ・インフェスタンス)、Septoria Leaf Spot (Septoria lycopersici)、Cladosporium fulvum、Phytophthora parasitica、Fusarium oxysporum、Sclerotium rolfsii、Pythium およびRhizoctonia、tomato spotted wilt virus (TSWV)。
【0067】
キュウリの病原体としては、例えば、以下の種が挙げられる: Botrytis cinerea、Erwinia carotovora、Colletotrichum orbiculare、Phomopsis sclerotioides、Rhizoctonia solani、Pseudoperonospora cubensis、Fusarium oxysporum f. sp. Cucumerinum、Didymella bryoniae、Phoma cucurbitacearum、Cladosporium cucumerinum、Corynespora cassiicola、Pseudomonas syringae pv. lachrymans、Erwinia tracheiphila、キュウリモザイクウイルス、Papaya Ringspot Virus (PRSV)、スイカモザイクウイルス (WMV)、ズッキーニキイロモザイクウイルス (ZYMV)。
【0068】
コショウの病原体としては、例えば、以下の種が挙げられる:Xanthomonas campestris pv. vesicatoria、Leveillula taurica、Cercospora capsici、Sclerotium rolfsii、Rhzoctonia solani、Pythium sp.、Phytophthora capsici、キュウリモザイクウイルス (CMV)、タバコモザイクウイルス (TMV)、tobacco etch virus (TEV)、tomato spotted wilt virus (TSWV)、アルファルファモザイクウイルス (AMY)、ジャガイモウイルスY (PVY)、コショウ斑点ウイルス (PeMV)。
【0069】
野菜種については、作物種毎の疾患はhttp://vegetablemdonline.ppath.cornell.edu/Home.htmにみられ;その他の植物種については、病原体およびその症状は当該技術分野で周知である。
【0070】
本発明による方法は、好ましくは以下の属の種によってもたらされる収量ロスを防止する(例えば、損傷または感染を低下する)ために用いられる: ボトリチス、スクレロティニア、フィチウム、フサリウム、フィトフトラ、アルテルナリア、セルコスポラ(Cercospora)、エリシフェ(Erysiphe)、スファエロテカ(Sphaerotheca)、ベルチシリウム、キサントモナス、シュードモナス、ステムフィリウム(Stemphylium)、セプトリア(Septoria)、ペロノスポラ(Peronospora)、エルウィニア(Erwnia)、マイコスファエレラ(Mycosphaerella)、アルブゴ(Albugo)、クラドスポリウム(Cladosporium)、マイクロドクム(Microdochum)、およびコレトトリカム、クラビバクター(Clavibacter)、ならびに様々な真菌のサビ病種(Uredinales)、例えば 、ダイズサビ病 (Phakospora pachyrhizi) およびその他のサビ病、例えば、穀物サビ病またはクロホ病種 (Ustilaginales)。
【0071】
好ましくは、全植物または植物部分(例えば、茎の全部または一部、葉の上側または下側表面、花、発育中の果実)が適当な用量の UV-C に1以上の発達段階にて曝露 (接触)される。例えば、種子は温室で播かれ得、処理は若い実生の出芽後に既に開始しうる。あるいは、より成熟した植物のみが処理される。用量は古い組織よりも若い組織についての方が低い必要があり得、当業者であれば、適当な用量と適用の頻度を容易に決定できる。組織タイプも最適用量に影響しうる。例えば茎は若い葉よりもより高い用量に耐容性を示しうる。常套の実験を用いて最適用量または最小/最大用量範囲を決定しうる。用量はしたがって24 時間の間に、少なくとも 約 0.002、0.0025、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.1、0.15、0.16 J/cm2 またはそれ以上であり得、しかし約 0.17、0.2 または 0.25 J/cm2 未満である。
【0072】
好ましいUV-C 光の範囲には、それゆえ 0.002-0.15 J/cm2 または 0.16; 0.0025 - 0.15 または 0.16 J/cm2; 0.002-0.006 J/cm2; 0.002-0.01 J/cm2; 0.0025-0.006 J/cm2; 0.0025-0.01 J/cm2が含まれる。1 cm2 当たり低用量の狭い波長 (240-260nmのUV-C 光またはエンドポイントまたはこの波長の間のあらゆる具体的な値、例えば 254m、即ち、本質的に240未満で260 nmを超える波長以外であってオゾン化水またはオゾン生成を生じない) を1以上のあらかじめ選択された植物の部分に適用するかかる特定の用量範囲は、特に有利である。というのはそれらは特に効果的であり、植物に害を与えず、植物のまわりの環境、例えばヒトまたは動物に害を与えないからである。さらにエネルギーが節約され、適用を完全に自動化する可能性が労働コストを低下させる。
【0073】
本発明の方法は、定期的に作物の間を通る2から100 ワットの強度のUV-Cランプを用いて実施されると特に効果的であり、効果的な曝露期間は1秒から1分であり、病原体成育への近接は2 cmから200 cmである。かかるUV-C 光の適用は100 % の真菌の菌糸体の植物の上での成育を殺傷することができることが観察され、それによって植物がより良好に成育可能となり、優れた生産物を作ることが出来るようになる。上記のように、UV-C 光はまた生殖構造、例えば、胞子および/または胞子嚢も殺傷 (または生存能力を低下)させ得、生殖構造の少なくとも 10、20、30、50、60、70 または80%またはそれ以上が殺傷されるか、非生存可能となる。
【0074】
本発明の範囲を制限することなく、UV-C 光の病原体成育への適用は致死的であると考えられる。というのは UV-C 波長がDNAの最大吸光度(約 260 nm)と近いからである。したがってUV-Cの適用は、直接的に死をもたらすか、生物の繁殖を阻害するDNAの光化学的変化をもたらしうる。ほとんどの微生物の生殖周期は正常の細胞よりかなりはやいため、植物の細胞よりもそれらの方がUV-Cの有害効果により感受性である。
【0075】
別の態様において生植物または植物部分の上の1以上の植物病原体の制御(特に1以上の病原体の量の低下)のためのUV-C 光の使用が提供され、これにより植物成育および収量は負の影響を受けない。好ましくは、UV-C 処理された植物の収量は本明細書に記載のように上昇する。
【0076】
キノコ病原体の制御方法
植物病原体を制御する上記方法は、キノコ病原体の制御にも適用される。キノコは、1以上の用量のUV-C 光をキノコ、特に子実体の全部または一部に(例えば、カサ(cap)および/または柄(stalk)および/または鰓(gill)またはラメラ(lamella))1以上の時点で適用することにより病原体から保護されうることが驚くべきことに判明した。
【0077】
植物についての上記方法はしたがってキノコ、例えば、栽培キノコ、例えば、担子菌または子嚢菌にも同様に適用できる。 特に以下の種の病原体の制御のための使用が本発明に含まれる: Agaricus bisporus、Lentinula edodes、Pleurotus spp.、Auricularia spp. Volvariella volvacea、Flammulina velutipes、Tremella fuciformis、Hypsizygus marmoreus、Pholiota nameko、Grifola fondosaなど。
【0078】
UV-C 光の適用方法および時間は、キノコの栽培方法に依存する。Agaricus bisporusは、例えば一般にトレイのなかで成育し、一方シイタケは天然または合成の丸太で成育する。一方イネワラキノコである Volvariella volvaceaは湿ったイネワラ床で野外で成育する。光源は、それゆえ、上からおよび/または側方から1以上の時点で適用するとよい。Agaricus bisporusの子実体は例えば放卵の約 6週間後に現れ始め、約 7-10日間隔をあけて次の 6-8週間現れ続ける。UV-C 光はしたがって子実体出現前および/または最中に適用するとよい。
【0079】
キノコの病原体には主に真菌、細菌、ウイルスおよび昆虫が含まれる。真菌の病原体には例えば以下の属の種が含まれる:
【表1】

【0080】
細菌病原体にはシュードモナス種が含まれ、ウイルス病原体には、例えば MVX (キノコウイルスX)が含まれる。害虫には、様々な小さいハエおよび小昆虫種が含まれる。
【0081】
特に、キノコはそれ自体真菌であるため真菌病原体の効果的なUV-C 制御は驚くべきである。本発明の方法はキノコ自体には損傷を与えずに適用でき、それにより収量が有意に上昇し(収量ロスが低下し)、キノコ生産物 (特に生鮮市場向けの子実体)の質が向上する。
【0082】
植物「カット」の上の病原体の制御方法
さらなる態様において、生植物部分はクローン性に植物を繁殖させるために用いられる「カット(cutting)」であり、例えば、草本および木本種(針葉樹、半広葉樹または広葉樹)の茎カットが含まれる。バラ、キクおよびダリアは、例えば、カットを用いて繁殖する。広葉樹段階でカットにより繁殖する植物の例としては、レンギョウ、イボタ、イチジク、ブドウおよびシモツケが挙げられる。カット茎 (またはシュート)片は一般に付着した葉を有さず、開いた創傷を残す。もちろん、カットの一方または両方の末端も開いた創傷を有する。
【0083】
植物について上記した態様はしたがって同様にカットの処理に適用される。好適には、カットは、ストック (親) 植物から除去された後、それらが土壌または好適な成育または発根培地に植えられる前に好適な用量のUV-C 光と1以上の時点で接触される。処理はカットが土壌または好適な成育または発根培地に植えられた後の1以上の時点でも適用されうる。 発根する時は種に応じて異なる。特に、発根の前および/または最中、および/または所望により発根の後のさらなる成育中の接触は、病原体損傷の制御および/またはカットの生存能力の喪失の低下に好適である。発根率 (根の形成に成功し、成熟植物へと発達しうるカットの%)もまたUV-C 光を用いて、非処理カットと比較して好ましくは少なくとも 5%、10%、20%、またはそれ以上有意に上昇しうる。
【0084】
したがって、一つの態様においてカット全体および/またはカットの空中部分は(好適な培地に入れた後、またはその他の培地または圃場に移植した後)、1以上の回数、上記の用量のUV-C 光と接触される。
【0085】
余剰植物部分、特に葉の除去、および植物活力の上昇方法
本発明のさらに別の態様において、余剰植物組織、特に下位葉を除去する方法が提供される。この方法は温室/トンネルで成育する植物に特に適している。この方法は現在の手作業による葉の除去と比べて顕著な利点を有する。手作業による下位葉の除去は、下位葉が疾患のソースであり、植物の活力および成育を低下させるために行われている。さらに、古い下位葉は、温室およびトンネルの空気循環を阻害し、光を遮る。手作業による下位葉の除去はそれゆえ一般的に週に約1回、例えば、トマト植物、キュウリまたはコショウ植物において行われる。さらに、除いた葉は病原体のソースを提供しうるために、植物の近くから除去しなくてはならない。
【0086】
好適な用量のUV-C 光の本質的に下位葉のみへの適用の結果、葉が褐色となり乾燥し、植物からおよそ数日で離れることが判明した。保護層が離層帯に形成されるために開いた創傷は残らない。植物はそれゆえ創傷を受けず、疾患発生率が低下する。さらに、離れ落ちた葉は (手作業によるか、またはファンまたはその他の物理的装置を用いて) 容易に除去できる。離れ落ちた葉は新鮮でも緑色でもないため、それらの病原体の貯蔵所を形成する能力は低下している。特定の態様においてそれらはしたがってまったく除去する必要がない。
【0087】
この方法は上記のものと同じ工程を含み、好適な用量のUV-C 光が、植物の下位葉に1以上の時点で、葉が褐色となって乾燥するまで、好ましくはそれらが茎から自然に離れ落ちるまで適用される。好ましい UV-C 用量は上記の通りであり、常套の実験を用いて決定することが出来る。例えば 約 0.05 J/ cm2 が24 時間適用され、所望によりこれが数回繰り返される。
【0088】
好ましくは低用量または用量範囲が(上記のように)適用されるが、所望によりこの態様においてはより高用量、例えば 0.2、0.25 J/cm2 またはそれより高用量、例えば 0.3、0.4、0.5、0.7、0.8、1.0、1.5、2.0 J/cm2 またはそれ以上を用いてもよい。
【0089】
この方法は、葉が「自然に」離脱するのを誘導し、病原体感染を有意に低下させることにより、労力コストをおさえ、植物の活力を上昇させる。植物の収量または成育はそれゆえ負にではなく正に影響を受ける。
【0090】
収穫前の空中地上植物部分を破壊する方法
地下作物(可食保存器官)、例えば、塊茎(ジャガイモ)、根または鱗茎の収穫に先だって、空中部分を化学物質 (殺草剤) 噴霧により殺傷することが慣行である。化学物質の使用は望ましくない。本発明は、地下作物の収穫に先だってUV-C 光を用いて空中植物部分を除去する環境に優しい方法を提供する。所望によりUV -C 光への曝露は化学物質と組み合わせてもよく、それによって化学物質の量が低下する。
【0091】
空中植物部分全体の1以上の好適な用量の UV-C 光への曝露が迅速且つクリーンに空中組織を破壊するのに非常に効果的であることが見いだされ、それによって組織は乾燥し、褐色がかった色となる (そして病原体の好適なソースとならない)。 UV-C 用量は好ましくは収穫日の前に1、2または3週間、1以上の回数適用される。いったん組織が乾燥して褐色になると、それは容易に圃場から除去される。除去は化学物質により処理された植物部分と比べてかなり容易であり、同じ装置を用いて行うことが出来る。
【0092】
好ましくは低用量または用量範囲が (上記のように)適用されるが、この態様においても所望によりより高用量、例えば 0.2、0.25 J/cm2 またはより高用量、例えば 0.3、0,4、0.5、0.7、0.8、1.0、1.5、2.0 J/cm2 またはそれ以上用いてもよい。
【0093】
本発明による装置
上記方法は好ましくは自動化され、組織とUV-Cとの接触は好ましくは以下を含む装置を用いて行われる: UV-C 放射源および放射の量および持続時間、ならびに組織と UV-C源との距離の制御手段。
【0094】
図 1は、上記の方法に使用される植物の上での病原体の成育を低下させる装置の第一の例示的態様を示す。装置は少なくとも1つのUV-C 光源2を含む。光源 2は0.0025から0.25 J/cm2 の量のUV-C 光を24 時間の期間または上記特定用量または用量範囲、例えば、0.02 -- 0.15 J/cm2を 24 時間の期間提供することが出来るいずれの市販の UV-C 光源であってもよい。好ましくは、所望の UV-C 用量が光源の一回通過(single pass)にて放射され、即ち、好ましくは例えば0.02 - 0.15 J/cm2 の UV-C (または本発明の態様に記載したいずれかのその他の用量)が一回通過の間に放射される。
【0095】
病原体(例えば、真菌)、植物、植物部分またはキノコに適用されるUV-C 光は典型的にはUV-C 殺菌灯により供給されるが、その他のUV-C 光源も好適であり得る。殺菌 UV-Cランプは一般に小さい蛍光灯の配置をとり、同じタイプの周辺または補助装置を必要とする。UV-Cランプは典型的にはリンを含まず、アルゴンガス真空に分散された液体水銀の液滴を有する。水銀がアルゴン内に浮かぶ;電気をかけると、水銀原子はUV-C 光をおよそ 260 nmにて放電する。UV-Cランプは、水銀アークにより生じるほとんどのUV-C 光の透過を可能とする特別の電球、カバーまたはレンズを含みうる(UV-C エネルギーの74 %までがガラスを透過しうる)。光源 2の強度は2以上のUV-Cランプを互いに隣接して配置することにより上昇させることができる。好ましくは、UV-C 光源は本質的にUV-Aや UV-B 光を放射しない。例えば、本質的にUV-C 光のみを、好ましくは狭いまたは特定の波長(例えば、本質的に254nmのみまたは265nmのみ)で放射する1以上の低圧力水銀放電ランプを用いるとよい。
【0096】
好ましい態様においてUV-C 光源は(好ましくは完全に)、UV-C 光は透過できる石英遮蔽体または管により囲まれている。この態様はほこりまたはよごれの多い環境、例えば圃場または温室/トンネルでの使用に特に好ましく、光源の容易な洗浄を可能にする。
【0097】
別の態様において、石英管は内側表面 (光源近く)または好ましくは外側表面にテフロン(登録商標)層を含む。石英管または光源が損傷した場合、テフロン(登録商標)-石英管は環境汚染が確実に起こらないようにし、光源の容易な交換を可能にする。
【0098】
本発明の装置はさらに、植物、植物部分またはキノコを光源が通過するための輸送手段 4を含み、ここで好ましくは、植物、植物部分またはキノコの光源による1回の一回通過の間に、植物、植物部分またはキノコは(記載のような) 所望の効果の達成に十分な、例えば少なくとも植物の部分の上での病原体の成育の制御に十分であって植物成育または収量に負に影響を与えない量のUV-C 光で処理される。収量という用語は、植物の作物またはポット植物、樹木、花等の経済的価値をいう。図 1において輸送手段 4は台車である。温室またはトンネルにおける加熱管6は台車のためのレールとして機能しうる。台車は台車を動かすためのエンジンを含みうる。使用可能な加熱管が温室の上で使える場合は、輸送手段は植物にそって光源を動かすよう上からつるす。輸送手段 4はその他の好適な輸送手段、例えば、コンベアベルトまたは自動ナビゲート可能ビヒクルでもよく、これらは植物にそってナビゲーションするのを可能にするセンサーを含んでいてもよく、また、トラクターまたはその他の移動を可能とするビヒクルでもよい。本発明の特定の態様において、UV-C源は静止していてもよく (例えば、輸送手段を有さない)、UV-C 光の適用は適用位置および時間を変えることによって制御される(例えば、オン/オフスイッチを用いる)。
【0099】
光源 2は、少なくとも処理すべき領域、例えば、病原体による感染に感受性の植物領域が接触されるような位置で台車に載せる。トマトの場合、これは例えば地上の周知の特定の範囲における茎であり得る。さらに、光源と植物、植物部分またはキノコとの距離は植物組織、植物部分またはキノコがUV-C 光によって持続的に損傷されないようにし、ただし、余剰の葉の持続的損傷によって余剰の葉を除去すべき上記の態様は例外であり、また、空中植物部分を破壊する態様も例外である。組織と接触させるUV-C 光のフルエンス (J/cm2) は光源の強度 (W/cm2)、光源との相対速度(cm/s) および光源と植物の距離 (cm)に依存する。温室またはトンネルまたは野外で適用すべき好適な速度は0.01 1 m/sの範囲であるが、その他の速度も所望の用量が所望の組織に到達する限り使用可能である。
【0100】
装置を、植物またはキノコの昆虫および/または線虫による損傷の低下に用いる場合、光源は昆虫または線虫の生きる領域がUV-C 光に曝露されるように載せるべきである。地上に成育する昆虫または線虫については、特別の光源を載せるべきである。反射体、スクリーン等を用いて光を地上に向けて植物やキノコにはあたらないようにすることができる。これによって地表により高用量のUV-C 光を与えつつ植物またはキノコに負に影響を与えないようにでき、その結果昆虫による損傷の低下が促進される。その他の周知の光システムもUV-C 光を様々な強度で様々な領域に分布させるために利用できる。
【0101】
最適および制御可能なフルエンスを得るために、装置はフルエンス制御のための制御ユニットを含む。フルエンス制御を可能にするため、制御ユニットは光源 2の強度、植物 8 または植物部分またはキノコの領域と光源 2との距離または接触される植物、植物部分またはキノコの領域に対しての光源の相対速度を制御することができる。
【0102】
図 2は、植物、植物部分またはキノコの上での病原体成育の低下のための上記の方法に用いる装置の第二の例示的態様を示す。この装置は少なくとも1つのUV-C 光源 12を含む。装置は (例えば、トレイまたは丸太における)植物またはキノコを少なくとも1つのランプを通過させるためのコンベアベルト 14をさらに含む。図 2において、コンベアベルト 14の各側方に光源 12が位置している。好適であれば光源はコンベアベルト 14の上に載せてもよい。コンベアベルト 14の代わりにいずれの好適な輸送手段を植物またはキノコを光源が通過するために用いてもよい。
【0103】
光源 12は、光源と植物 16との距離が植物組織またはキノコが 持続的にUV-C 光によって損傷されないようになる位置に配置する。
【0104】
植物組織またはキノコの上に最適および制御可能なフルエンスを得るために、装置はフルエンス制御のための制御ユニットを含む。フルエンス制御を可能とするために、制御ユニットは、光源12の強度、植物 16またはキノコの領域と光源 12との距離または照らすべき植物/キノコの領域に関しての光源 12の相対速度を制御することができる。
【0105】
装置はあらかじめ決められた用量のUV-Cを所望の植物またはキノコ組織、例えば、 茎、上位葉表面または下位葉表面またはキノコのカサまたは柄の上側または下側に適用するのに好適であるべきである。装置の設計はある程度、植物/キノコ種の成育特性および生産システム(圃場または温室、トレーまたは丸太等)に依存する。
【0106】
高用量 のUV-C 光は植物またはキノコを損傷し得、低用量では病原体(例えば、真菌)成育を十分に損傷できないので、光源の自動化制御を備えることが望ましく、それによって強度、適用時間、病原体(例えば、真菌) 成育からの距離を正確に制御できる。それゆえ、作物の間、作物の上または植物作条またはキノコ作条の間を移動する台車またはトレイに光を載せて処理すべき作物に応じたあらかじめ決められた速度で動かすのが望ましい。例えばオランダにおける温室中のトマトおよび緑色コショウに特に好適な速度は 5 〜 50m/分であり得る。これにより装置が通常の作業時間の前および後に作動することが可能となり、かつ植物の概日リズムを損なわず、温室の通常の作動に干渉しない一方、各植物を典型的な温室において栽培者によって適宜決めうる、週1回、または1日1回処理することが可能となる。
【0107】
植物またはキノコに対するUV-C 光の適用の間、UV-Cランプは好ましくは抗真菌または抗病原体効果 (成育、繁殖、感染および/または伝播に影響する)を有するのに十分に近く位置させ、かつ、植物またはキノコに損傷を与える程近くには位置させない(余剰の葉が除去される場合を除く、上記参照)。この位置は典型的には植物またはキノコから2 cm〜 200 cmであり、5、10、20、30、40、50、100 cm の距離が想定される。
【0108】
UV-C 光の適用は効果的であるのに十分であらなければならず、かつ植物またはキノコに損傷を与えるほど長くてはならない。典型的には、光の持続時間は1秒から1分であり得る。この結果通過の最小および最大速度が決定される。明らかに、2以上のUV-C 光源 を用いてもよく、例えば 2、3、4、5、6、8、10、16、20 またはそれ以上、好ましくは望ましいUV-C 用量が一回通過で提供されるようにするとよい。例えば光源をトラクターまたはその他の移動可能装置に備えられたブームにつける場合、1以上の列の光源が存在しうる。より小さい装置、例えば図 1または2に示すものについては、2以上のUV-C 光 が各側面に備えられていてもよく、例えば 3つのライトを各側面に備えてもよい。
【0109】
明らかに、UV-Cランプエネルギー、距離および放射の持続時間(および装置の速度および位置)は植物またはキノコ組織との接触に供される総用量 (J/cm2)を決定する。
【0110】
装置はさらに送風機を含んでいてもよく (図示せず)、植物の葉を動かしてより効果的に茎または植物のその他の領域を処理することを可能としうる。
【0111】
実施例
実施例 1 -トマト植物の上のボトリチスの制御
トマト植物を温室中で作条において成育させる。装置の前方のそれぞれの側面に2つのUV-Cランプを含む装置をいくつかの作条の間のレール(例えば、加熱管)に載せ、その高さは、UV-C 光を茎の約 2/3 に接触させるものである。
【0112】
UV-C 処理された植物および対照植物の両方における茎表面に存在するボトリチス・シネレア菌糸体の量を一定間隔で評価する。評価によってボトリチスに損傷を与え、処理された植物の生産性を向上させる最適UV-C 用量が判明する。
【0113】
トマトを定期的に処理することにより、ボトリチスの成育は低下し、これによりボトリチスが完全にトマトの茎をおおってしまうことが延期または防止され、したがってトマトの生育期間および収量が上昇する。
【0114】
実施例 2 -フィトフトラ・インフェスタンスの胞子嚢の発芽の低下
フィトフトラ・インフェスタンスの胞子嚢の発芽に対するUV-C 線量率の効果を水寒天上で評価した。フィトフトラ・インフェスタンスの胞子嚢を1% 水寒天に入れ、様々な用量のUV-Cに曝露した。発芽を1プレート当たり100 胞子嚢につき判定した。各線量率について4連を含めた。
【0115】
結果を図 3に示す。データ地点は4連のプレートの平均を表す。実験を繰り返した。黒い丸は実験1からのデータを、白い丸は実験2からのデータを表す。エラーバーは標準偏差を表す。
【0116】
結果はフィトフトラ・インフェスタンス生殖構造の生存能力がUV-C 光を用いて有意に低下され得たことを示す。発芽のパーセンテージは約 6-10 mJ/cm2 UV-Cを用いて少なくとも 80%低下した。
【0117】
本発明の上記の詳細な説明は例示および説明の目的でなされたものである。それは開示された正確な形態に本発明を完全に記載するものでも限定するものでもなく、上記教示から多くの改変および変更が可能であることが明らかである。例えば野外圃場の作条において植えられた小さい樹木の処理については、装置は2以上の作条にわたってあるであろう。かかる場合には、光源は樹木の2つの作条の間の各作条に光源が存在するよう位置し、それによって、2以上の作条を同時に処理することが可能となる。記載された態様は本発明の原理およびその実践的適用を最良に説明するために選択されたものであり、それによって当業者であれば本発明を様々な態様において最良に利用でき、様々な改変が想定される特定の使用に適している。本発明の範囲は添付の請求の範囲によって規定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、本発明による方法に使用するための植物(またはその部分)の上での病原体成育の制御のための装置の第一の例示的態様を示す。
【図2】図2は、本発明による方法に使用するための植物(またはその部分)の上での病原体成育の制御のための装置の第二の例示的態様を示す。
【図3】図3は、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)の胞子嚢発芽(%)に対するUV-Cの効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生植物、またはその部分、またはキノコを定期的にUV-C 光と接触させることを含む病原体成育の制御方法であって、該UV-C 光の量は、24 時間の期間の間に0.002〜 0.15 J/cm2組織である方法。
【請求項2】
1以上の病原体の成育が、該 UV-C 光と接触していない対照植物またはその部分またはキノコと比較して少なくとも 5%低下する請求項1の方法。
【請求項3】
該生植物部分が植物カット、好ましくは茎カットである請求項1または2の方法。
【請求項4】
該病原体が、真菌、卵菌、ウイルス、細菌、昆虫または線虫の1以上の種である請求項1-3のいずれかの方法。
【請求項5】
該病原体が、ボトリチス、スクレロチナ、フィチウム、フサリウム、フィトフトラ、アルテルナリア、セルコスポラ、エリシフェ、スファエロテカ、ベルチシリウム、タバコ モザイクウイルス、キサントモナス、シュードモナス、ステムフィリウム、セプトリア、ペロノスポラ、エルウィニア、マイコスファエレラ、アルブゴ、クラドスポリウム、ミクロドチウム、コレトトリカム、クラビバクターからなる群から選択される植物病原体である請求項 4の方法。
【請求項6】
植物が、野菜植物種、果実担持種、圃場作物種または鑑賞植物種であるか、または該キノコが、栽培、可食キノコ種、好ましくは担子菌または子嚢菌である請求項1-5いずれかの方法。
【請求項7】
植物が、温室、トンネルまたは圃場で成育している請求項1-6いずれかの方法。
【請求項8】
該接触が該植物またはキノコの1以上の発達段階にて行われる請求項1-7いずれかの方法。
【請求項9】
請求項1-8いずれかの方法に使用するための植物、植物部分またはキノコの上での病原体成育を制御するための以下を含む装置:
- 本質的に UV-AまたはUV-B 光を放射しない1以上のUV-C 光源;および
-光源を、植物、植物部分またはキノコに通過させる輸送手段、ここで一回通過の間に放射されるUV-C 光の量は 0.002〜 0.15 J/cm2である。
【請求項10】
該1以上の光源が少なくとも1つの石英管で囲まれている請求項 9の装置。
【請求項11】
該石英管がさらにテフロン(登録商標)層を含む請求項10の装置。
【請求項12】
該光源が該輸送手段に載っている請求項 9 - 11いずれかの装置。
【請求項13】
輸送手段が植物、植物部分またはキノコを光源にそって運ぶように設計されている請求項 9 - 12いずれかの装置。
【請求項14】
輸送手段の速度を制御する制御ユニットをさらに含む請求項9 - 13いずれかの装置。
【請求項15】
該一回通過の間に放射されるUV-C 光の量を制御する制御ユニットをさらに含む請求項9 -14いずれかの装置。
【請求項16】
少なくとも6つのUV-C 光源が存在する請求項 9 - 15いずれかの装置。
【請求項16】
生植物の下位葉を1以上の回数、24 時間の期間の間に0.002〜1.00 J/cm2葉組織の量の UV-C 光と接触させることを含む植物から余剰の葉を除去する方法。
【請求項17】
空中部分を1以上の回数、24 時間の期間の間に0.002〜 1.0 J/cm2 植物組織の量の UV-C 光と接触させることを含む収穫前に植物の空中部分を破壊する方法。
【請求項18】
請求項 1 - 8、16または17のいずれかの方法を実施するための請求項9 - 16のいずれかの装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−512457(P2009−512457A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537616(P2008−537616)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/NL2006/050188
【国際公開番号】WO2007/049962
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508125715)クリーン・ライト・ベスローテン・フェンノートシャップ (1)
【氏名又は名称原語表記】CLEAN LIGHT BV
【Fターム(参考)】