説明

Y字背割付き木材およびその製造方法

【課題】本発明は、Y字背割付き木材およびその製造方法に関し、「背割り」を施した木製角材の背割り部分に亀裂の割れが発生するのを抑制すると共に、該背割り部分に亀裂や割れが発生した場合には、前記亀裂や割れの内部が露見することを防止して見映えの良好なY字背割を提供しようとする。
【解決手段】木材1の側面に、長手方向Xに沿って1本または複数本が設けられた木口端から見てV字状のV溝2と、該V溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺の略延長線P上に設けられたスリット3と、により構成されるY字背割4が施こされているY字背割り付き木材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はY字背割付き木材およびその製造方法に関し、木材、例えば屋外で公園、庭園、道路等の屋外で使用するパーゴラ、東屋、柵、案内板、橋、遊具等に使用する木材に、建設後において、乾燥により応力が加わって、亀裂が入るのを抑制したり、変形を防止するために優れた背割れ防止機能を発揮し、また、背割の一部を構成するスリットが隠れて外部から見え難く、不体裁が一掃され、木材の強度の低下がなく、構造簡単で加工性を優れたものにする。
【背景技術】
【0002】
従来、杉、檜、からまつのような未乾燥の針葉樹の樹芯持ち材を柱等に用いた場合に、建築後に乾燥による応力が加わることにより亀裂や割れを生ずるのを防ぐために、予め見えない柱の背の部分に、「背割り」と称する長手方向に沿って樹芯に達する割れ目を設けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−216700号公報
【0004】
従来、建築用の柱、桁、梁で代表される木製角材には、建築後に乾燥による応力が加わって亀裂や割れを生ずるのを防ぐために、スリット状の「背割り」を施したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたスリット状の「背割り」を施した木製角材は、柱、桁、梁等の材料として屋内で使用されるものであるが、パーゴラ、東屋、柵、案内板、橋、遊具等の材料として公園、庭園、道路、遊歩道、河川敷、森林等の屋外で使用されると、風雨、雪等に晒されたり、また季節の移り変わりによる温度および湿度の変化の影響を受けて、その背割り部分に亀裂や割れが入ること、その亀裂や割れが拡大して開かれて該亀裂や割れ部が露見すること等の問題があった。また、前記「背割り」の施された木製角材に塗装が施こされている場合には、前述したように、木製角材に塗装が施されている場合には、前述したように、木製角材の亀裂が拡大されて開かれると、前記「背割り」の内部が露見し、塗装前も際だって目立つことになり、そのために、見映えが悪くなり、不体裁になるという問題があった。
【0006】
本発明は上記従来の問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は「背割り」を施した木製角材の背割り部分に亀裂の割れが発生するのを抑制すると共に、該背割り部分に亀裂や割れが発生した場合には、前記亀裂や割れの内部が露見することを防止して見映えの良好なY字背割付き木材、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明は、木材の側面に、長手方向に沿って1本または複数本が設けられた木口端から見てV字状のV溝と、該V溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上に設けられたスリットと、により構成されるY字背割が施こされている
ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において、
前記Y字背割の前記スリットが、木材の部材径の1/8〜1/4の深さにより形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記木材が、縦木として木口端から見て平面正方形、平面多角形、または平面円形の柱に構成され、かつ、前記柱には前記Y字背割が前後または左右に線対称もしくは点対称に合計1〜4本設けられるか、あるいは、前後および左右に線対称もしくは点対称に合計1〜4本が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項において、前記木材が、木口端から見て側面正方形、側面多角形、または側面円形の横木に構成され、かつ、前記横木には前記Y字背割が天面部を除いて前後の側面および下面との合計3本設けられるとともに、前後の側面に設けられる前記スリットは上向きに設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項において、前記木材には、前記V溝および前記スリットを介して防腐性または防蟻性を有する薬液が含浸されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に記載の発明は、木材の側面に、その長手方向に沿って板面に直交する垂直線に対して幅方向へ所望の傾斜角度に傾けた鋸歯により木材の部材径の1/8〜1/4の深さのスリットを形成する工程と、
前記スリットに交差するように、前記垂直線に対して前記傾斜角度とは反対側に所望の傾斜角度傾けた鋸歯にて切断してV溝を形成するとともに、前記スリットと前記V溝とよりなるY字背割を形成する工程と、
を順次有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされ、請求項1に記載の発明によれば、木材の側面に、長手方向に沿って1本または複数本が設けられた木口端から見てV字状のV溝と、該V溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上に設けられたスリットと、により構成されるY字背割が施こされているので、木材、例えば屋外で公園、庭園、道路、遊歩道、河川敷、森林等で使用するパーゴラ、東屋、柵、案内板、橋、遊具等に使用する木材に、建設後において、木材の側面に長手方向に沿って設けられた1本または複数本の木口端から見てV字状のV溝はデザイン的にスッキリと調和するとともに表面の研磨加工が容易であり、綺麗に仕上がる。さらに、V字状のV溝の中に斜めに入る鋸目が陰影ある奥行感を出し、立体的に見える。
【0014】
そして、経時に乾燥が進み、内部応力により木材は樹芯を囲むように収縮して仮に亀裂や割れが入ることがあっても、木材の側面に設けられたY字背割りは、木材の長手方向に沿って設けられた1本または複数本の木口端から見てV字状のV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上にスリットが設けられているので、亀裂や割れは木材の樹芯から前記スリットに繋がるように形成され、Y字背割部分に亀裂や割れが入るのが抑制され、木材の外部から隠れて見え難い。そのため、例えばパーゴラ、東屋、柵、案内板、橋、遊具等に使用する木材を戸外において使用するのに、風雨、雪による腐食を防止するために、木材に塗料を塗装している場合には、乾燥によりV溝が拡大して開かれ、V溝の内部が露見するのが、防止されるとともに、特許文献1に記載の如き従来の背割りでは、スリット状の細い鋸目だけなので、なかなか背割りの内部を塗装することは難しく、乾燥によってこの背割りが開いて来た場合、塗装されていない部分が露出されて来るため、見栄えが悪くなる。しかし、V溝を設けた場合、塗料はV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上に設けられたスリット内に入り込んで行くので、従来の背割りとは異なり、乾燥により背割りが開いて来た場合でも、塗装もれが目立つことなく、見栄えが良い。しかも、特許文献1に記載されたスリット状の「背割り」が施された木製角材とは異なり、木材の側面に設けられたV溝には、新たな亀裂が入ることにより開かれた際、V溝の内部が露見しないので、木材の内部に直接雨水が侵入するのが阻止される。さらに、木材の腐食を速めること、また、木材の変形や捻れが生ずるのが防止され、木材は強度が低下するのが防止される。
【0015】
さらに、前述のように、木材の側面に、長手方向に沿って設けられた1本または複数本のV字状のV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上にスリットが設けられているので、工場において防腐性または防蟻性を有する薬液が、V溝、およびこのV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上に設けられたスリットを通じて木材の表面だけではなく、木材の内部に深く浸透するため、薬液の効能が充分に発揮され、木材の高耐久性が向上される。
【0016】
さらにまた、前述のように、木材の側面には、長手方向に沿って1本または複数本が設けられた木口端から見てV字状のV溝は、デザイン的にシンプルに体裁が整えられ、このV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上に木材の内部に設けられたスリットは外部からは見えずに隠されているので、デザイン的にスッキリとして簡素化される。
さらに、V字状のV溝の中に斜めに入る鋸目が陰影ある奥行感を出し、立体的に見える。
【0017】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、請求項1において、前記Y字背割の前記スリットが、木材の部材径の1/8〜1/4の深さにより形成されているので、木材、例えば屋外で公園、庭園、道路、遊歩道、河川敷、森林等で使用するパーゴラ、東屋、柵、案内板、橋、遊具等に使用する木材に、建設後において、V溝はデザイン的にスッキリと調和するとともに表面の研磨加工が容易であり、綺麗に仕上がる。しかも、乾燥により応力が加わっても、木材の側面に、長手方向に沿って設けられた1本または複数本の木口端から見てV字状のV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上には木材の内部にスリットが設けられたY字背割が施されているため、経時に乾燥が進み、内部応力がかかっても、該Y字背割部分に亀裂や割れが入るのがスリットにより抑制される。そして、経時に乾燥が進み、内部応力により木材は樹芯を囲むように収縮して仮に亀裂や割れが入ることがあっても、木材の側面に設けられたY字背割りは、長手方向に沿って設けられた1本または複数本の木口端から見てV字状のV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上にスリットが設けられているので、亀裂や割れは木材の樹芯から前記スリットに繋がるように形成され、木材の表面には達せずに、亀裂がV溝に入りV溝が開かれ、V溝の内部が露見されるという不体裁が防止されるとともに、木材の表面に入るのが防止される。しかも、木材の変形が防止されるという、優れた背割れ防止機能が発揮される。また、前記スリットは、木材の部材径の1/8〜1/4の深さにより形成されているので、木材の側面に長手方向に沿って1本または複数本が設けられた木口端から見てV字状の前記V溝と、前記V溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上に設けられたスリットと、により構成されるY字背割が施こされても、木材は引っ張り、圧縮、捻れ等の木材の強度が損なわれることはない。
【0018】
また、本発明の請求項3によれば、請求項1または2において、前記木材が、縦木として木口端から見て平面正方形、平面多角形、または平面円形の柱に構成され、かつ、前記柱には前記Y字背割が前後または左右に線対称もしくは点対称に合計1〜4本設けられるか、あるいは、前後および左右に線対称もしくは点対称に合計1〜4本が設けられているので、縦木として木口端から見て平面正方形、平面多角形、または平面円形の柱として構成される木材に、前記Y字背割が前後または左右に線対称もしくは点対称に合計1〜4本が設けられるか、あるいは前記Y字背割が前後および左右に線対称もしくは点対称に合計1〜4本が設けられたことにより、Y字背割のV字状のV溝はデザイン的にスッキリと調和するとともに表面の研磨加工が容易であり、綺麗に仕上がる。さらに、V字状のV溝の中に斜めに入る鋸目が陰影ある奥行感を出し、立体的に見える。そして、木材が乾燥された時に経時に乾燥が進み、内部応力により木材は樹芯を囲むように収縮して仮に亀裂や割れが入ることがあっても、木材の側面に設けられたY字背割りは、長手方向に沿って設けられた1本または複数本の木口端から見てV字状のV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上にスリットが設けられているので、亀裂や割れは木材の樹芯から前記スリットに繋がるように形成され、木材の表面に亀裂や割れが入るのが抑制される。しかも、亀裂や割れは、木材に対してスリットに均等に分散されて入るため、木材の高均等化がはかれ、木材の表面には達しない。そして、亀裂がV溝に入り、V溝が開かれるのが防止され、V溝の内部が露見されるという不体裁が防止されるとともに、木材の表面に入るのが防止される。しかも、木材の変形が防止されるという、優れた背割れ防止機能が発揮される。また、木口端から見て平面正方形、平面多角形、または平面円形の柱には、前記Y字背割が前後または左右に点対称または線対称に合計1〜4本設けられるか、あるいはY字背割が前後および左右に点対称または線対称に合計1〜4本設けられているので、柱を立てる場合に、Y字背割の設置個所に合わせて柱の向きを選定する必要はなくなる。
【0019】
また、本発明の請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れか1項において、前記木材が、木口端から見て側面正方形、側面多角形、または側面円形の横木に構成され、かつ、前記横木には前記Y字背割が天面部を除いて前後の側面および下面との合計3本設けられるとともに、前後の側面に設けられる前記スリットは上向きに設けられているので、横木として木口端から見て側面正方形、側面多角形、または側面円形に構成される木材は、雨や雪が降った場合に天面部が水に濡れても、前後の側面に設けられる前記スリットは上向きに設けられているため、V溝からスリットを通じて木材の内部には、雨水が侵入しない。そして、木材が乾燥された時に生ずる内部応力により該Y字背割部分に亀裂や割れが入るのが抑制される。そして、Y字背割のV字状のV溝はデザイン的にスッキリと調和するとともに表面の研磨加工が容易であり、綺麗に仕上がる。さらに、V字状のV溝の中に斜めに入る鋸目が陰影ある奥行感を出し、立体的に見える。また、経時に乾燥が進み、内部応力により木材は樹芯を囲むように収縮して仮に亀裂や割れが入ることがあっても、木材の側面に設けられたY字背割りは、長手方向に沿って設けられた1本または複数本の木口端から見てV字状のV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上にスリットが設けられているので、亀裂や割れは木材の樹芯から前記スリットに繋がるように、均等に分散されて入るため、木材の高均等化がはかれ、木材の表面には達しない。そして、亀裂がV溝に入り、V溝が開かれ、V溝の内部が露見されるという不体裁は防止されるとともに、木材の表面に入るのが防止される。しかも、木材の変形が防止されるという、優れた背割れ防止機能が発揮される。
【0020】
また、本発明の請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4の何れか1項において、前記木材には、前記V溝および前記スリットを介して防腐性または防蟻性を有する薬液が含浸されているので、工場において防腐性または防蟻性を有する薬液が、V溝、およびこのV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上に設けられたスリットを通じて木材の表面だけではなく、木材の内部に浸透され、薬液の防腐性または防蟻性の効能を発揮して木材の高耐久性が向上される。
【0021】
また、本発明の請求項6に記載の発明によれば、木材の側面に、その長手方向に沿って板面に直交する垂直線に対して幅方向へ所望の傾斜角度に傾けた鋸歯により木材の部材径の1/8〜1/4の深さのスリットを形成する工程と、前記スリットに交差するように、前記垂直線に対して前記傾斜角度とは反対側に所望の傾斜角度傾けた鋸歯にて切断してV溝を形成するとともに、前記スリットと前記V溝とよりなるY字背割を形成する工程と、を順次有するので、得られたY字背割付き木材は、例えば屋外で公園、庭園、道路、遊歩道、河川敷、森林等でパーゴラ、東屋、柵、案内板、橋、遊具等に使用する場合に、木材に、建設後において、Y字背割のV字状のV溝はデザイン的にスッキリと調和するとともに表面の研磨加工が容易であり、綺麗に仕上がる。さらに、V字状のV溝の中に斜めに入る鋸目が陰影ある奥行感を出し、立体的に見える。
【0022】
そして、経時に乾燥が進み、内部応力により木材は樹芯を囲むように収縮して仮に亀裂や割れが入ることがあっても、木材の側面に設けられたY字背割りは、長手方向に沿って設けられた1本または複数本の木口端から見てV字状のV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上にスリットが設けられているので、亀裂や割れは木材の樹芯から前記スリットに繋がるように形成され、亀裂や割れが木材の表面に入るのが抑制され、外部から隠れて見え難い。そのため、例えばパーゴラ、東屋、柵、案内板、橋、遊具等に使用する木材を戸外において使用するのに、風雨、雪、埃の侵入による腐食を防止するために、木材に塗料を塗装している場合には、乾燥によりV溝が拡大して開かれ、V溝の内部が露見されるのが、防止されるとともに、特許文献1に記載の如き従来の背割りでは、スリット状の細い鋸目だけなので、なかなか背割りの内部を塗装することは難しく、乾燥によってこの背割りが開いて来た場合、塗装されていない部分が露出されて来るため、見栄えが悪くなる。しかし、V溝を設けた場合、塗料はV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上に設けられたスリット内に入り込んで行くので、従来の背割りとは異なり、乾燥により背割りが開いて来た場合でも、塗装もれが目立つことなく、見栄えが良い。しかも、特許文献1に記載されたスリット状の「背割り」が施された木製角材とは異なり、木材の側面に設けられたV溝には、新たな亀裂が入ることにより開かれた際、V溝の内部が露見しないので、木材の内部に直接雨水が侵入するのが阻止される。さらに、木材の腐食を速めること、また、木材の変形や捻れが生ずるのが防止され、木材は強度が低下するのが防止される。
【0023】
さらに、前述のように、木材の側面に、長手方向に沿って設けられた1本または複数本のV字状のV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上にスリットが設けられているので、工場において防腐性または防蟻性を有する薬液が、V溝、およびこのV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上に設けられたスリットを通じて木材の表面だけではなく、木材の内部に浸透するため、防腐性または防蟻性を有する薬液の効能が発揮され、木材の高耐久性が向上される。
【0024】
さらにまた、前述のように、木材の側面には、長手方向に沿って1本または複数本が設けられた木口端から見てV字状のV溝は、デザイン的にシンプルに体裁が整えられ、このV溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上に木材の内部に設けられたスリットは外部からは見えずに隠されているので、デザイン的にスッキリとして簡素化される。さらに、V字状のV溝の中に斜めに入る鋸目が陰影ある奥行感を出し、立体的に見える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明のY字背割付き木材の実施形態1を示し、平面正方形の木材の平面図である。
【図2】図2は同じく正面図である。
【図3】図3は同じく木材の側面に形成されるY字背割を構成するスリットを形成している状態を示す平面図である。
【図4】図4は同じく木材の側面に形成されるY字背割のV溝を構成する状態を示す平面図である。
【図5】図5は同じく平面円形の木材を示す平面図である。
【図6】図6は同じく正面図である。
【図7】図7は本発明のY字背割付き木材の実施形態2を示し、平面正方形の木材の平面図である。
【図8】図8は変形例を示し、平面円形の木材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施形態1>
以下、図面に従って本発明を実施するための最良の形態につき、詳細に説明する。
【0027】
本実施形態1は、木材1の側面に、長手方向Xに沿って1本または複数本が設けられた木口端から見てV字状のV溝2と、該V溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺2aの略延長線P上に設けられたスリット3と、により構成されるY字背割4が施こされている。前記木材1は、例えば屋外で公園、庭園、道路、遊歩道、河川敷、森林等において、パーゴラ、東屋、柵、案内板、橋、遊具等に使用される。また、木材1の材質は、例えば杉、檜、松、或いは外国産材のような未乾燥の針葉樹であっても良いし、樫、クヌギ、楓などの広葉樹であっても良く、制限されるものではない。
【0028】
前記木材1が、図1、および図2に示すように縦木として木口端から見て平面正方形の柱5に構成され、該柱5には前記Y字背割4が前後対称的におよび左右対称的に4本設けられる。なお、図示する本実施形態1では、柱5には、前後および左右の側面に、1本づつ、合計4本のY字背割4が設けられているが、これは代表的な例示であり、柱5の側面に設けられるY字背割4の設置個数、および設置場所は、図示するものに限られない。
【0029】
そして、前記木材1が、前記V溝2および前記スリット3を介して薬液が含浸される。この際、木材1の側面に、長手方向Xに沿って設けられた4本の、木口端から見てV字状のV溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺2aの略延長線P上に設けられたスリット3を通じて工場において防腐性または防蟻性を有する薬液が、V溝2から、このV溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺2aの略延長線P上に設けられたスリット3を通じて木材1の表面だけではなく、木材1の内部に深く浸透することにより、防腐性または防蟻性を有する薬液の効能が発揮され、木材1の高耐久性が向上される。
【0030】
前記Y字背割4が、図1乃至図4に示す実施形態1では、前記V溝2は、木材1の部材径Lの15%〜16%の長さlをその一辺2aとして形成されているとともに、前記スリット3は、木材1の部材径Lの1/8〜1/4の深さfにより形成されている。このように、スリット3が、木材1の部材径Lの1/8〜1/4の深さfに形成されるのは、スリット3の深さfを、木材1の部材径Lの1/4より大きくすると、スリット3が深くなり、乾燥に伴う応力により生ずる木材1の樹芯Oから発生される亀裂Kや割れをスリット3にて抑制する効能が充分になるが、反面、Y字背割4はスリット3の設置部分において木材1から分割され、Y字背割4部分が木材1から分割されて欠落し易くなり、木材1の強度が損なわれるからである。反対に、スリット3の深さfを、木材1の部材径Lの1/8より小さく形成すると、スリット3の深さfが浅く、Y字背割4部分が小さくなるので、木材1の強度が充分になるが、反面、木材1が乾燥し、内部応力がかかると、木材1の樹芯Oからの亀裂や割れがスリット3に繋がるというY字背割4における亀裂や割れに対する抑制機能が不十分になるからである。
【0031】
前記木材1の部材径Lは、例えば90mm、100mm、120mm、150mm、180mm、200mmの数種類がある。
【0032】
Kは経時に木材1の乾燥が進み、応力により木材1が樹芯Oを囲むように収縮する場合に入る亀裂であり、この亀裂Kは木材1の樹芯Oから木材1の側面に、長手方向Xに沿って設けられた木口端から見て4本の、V字状のV溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺2aの略延長線P上に設けられたスリット3に繋がるように設けられ、外部からは隠れて直接には見え難い。なお、図示においては、説明の便宜のため、木目は実際の木材1よりも簡素化されて描かれ、しかも木口の略中心部に樹芯Oが表示されているが、これは代表的例示であり、木材1は必ずしも木口の略中心部に樹芯Oが表示されるものに限られない。
【0033】
本発明のY字背割付き木材の実施形態1は以上の構成からなり、その作用を本実施形態1を実施する場合のY字背割付き木材の製造方法とともに以下工程順に説明する。
【0034】
本製造方法は、先ず、第1の工程として、図3に示すように、木材1には、その側面に長手方向Xに沿って板面に直交する垂直線Hに対して幅方向W,W′へ所望の傾斜角度θ1に傾けた鋸歯20により木材1の部材径Lの1/8〜1/4の深さfのスリット3を形成する。
【0035】
次いで、第2工程として、図4に示すように、前記スリット3に交差するように、前記垂直線Hに対して前記傾斜角度θ1とは反対側に所望の傾斜角度θ2傾けた鋸歯20にて切断してV溝2を形成するとともに、前記スリット3と前記V溝2とよりなるY字背割4を形成する工程と、を順次有する。
【0036】
上記第1工程および第2工程を有する製造方法により得られた木材1、例えば屋外で公園、庭園、道路、遊歩道、河川敷、森林等において、パーゴラ、東屋、柵、案内板、橋、遊具等を建設するのに使用される木材1は、建設後において、Y字背割4のV字状のV溝2は、デザイン的にスッキリと木材1に調和する。さらに、断面V字状のV溝2の中に斜めに入る鋸目が陰影ある奥行感を出し、立体的に見える。
【0037】
そして、経時の乾燥により応力が加わっても、木材1の側面に、長手方向Xに沿って複数本、図示する本実施形態1では、図1に示すように、木口端から見てV字状の4本のV溝2が設けられ、該V溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺2aの略延長線P上には木材1の内部にスリット3が設けられたY字背割4が施されているため、経時に乾燥が進み、内部応力がかかっても、Y字背割4部分に亀裂Kや割れが入るのが抑制される。
【0038】
そして、図3,および図4に示すように、鋸歯20を木材1の幅方向W,W′に前記垂直線Hに対して所望の傾斜角度θ1に傾けることにより、鋸歯20により木材1の部材径Lのおよそ1/8〜1/4の深さfのスリット3を形成するのと、スリット3に交差するように、前記垂直線Hに対して前記傾斜角度θ1とは反対側に所望の傾斜角度θ2傾けて鋸歯20にて切断することにより、V溝2を形成するのとから、木材1の側面に長手方向Xに沿って迅速かつ簡単にY字背割4を製作かつ加工することができる。また、V溝2は垂直線Hに対して傾斜角度θ12外側に開かれているので、V溝2の内面をグラインダーやサンド・ペーパーを用いて研磨加工するための広い空間を有し、作業がし易く、表面は綺麗に仕上がる。
【0039】
そして、木材1の樹芯Oから木材1の側面に、長手方向Xに沿って設けられた4本の、木口端から見てV字状のV溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺2aの略延長線P上にスリット3が設けられているので、経時に木材1の乾燥が進み、応力により木材1は樹芯Oを囲むように収縮すると、木材1の樹芯Oから生ずる亀裂Kや割れはV溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺2aの略延長線P上に設けられたスリット3に繋がり、V溝2に亀裂Kや割れが入るのが防止されるとともに、V溝2が開かれ、内部が露見するのが防止され、不体はなくなる。従って、木材1の樹芯Oからスリット3へと繋がる亀裂Kや割れは、木材1の表面には達しないとともに、スリット3に繋がるように設けられた亀裂Kは外部から隠れて直接には見え難い。
【0040】
この際、前記Y字背割4が、図1乃至図4に示す実施形態1では、Y字背割4の前記V溝2は、木材1の部材径Lの15%〜16%の長さlをその一辺2aとして形成されているとともに、前記スリット3は、木材1の部材径Lの1/8〜1/4の深さfにより形成されているが、このように、スリット3が、木材1の部材径Lの1/8〜1/4の深さfに形成されるのは、スリット3の深さfを、木材1の部材径Lの1/4より大きくすると、スリット3が深くなり、乾燥に伴う応力により生ずる木材1の樹芯Oから発生される亀裂Kや割れを木材1の表面に到るのを阻止してスリット3にて抑制する効能が充分になるが、反面、Y字背割4はスリット3の設置部分において木材1から分割され、欠落し易くなり、木材1の強度が損なわれるからである。反対に、スリット3の深さfを、木材1の部材径Lの1/8より小さく形成すると、スリット3の深さfが浅いため、Y字背割4部分が小さくなり、木材1の強度が充分になるが、反面、木材1が乾燥し、内部応力がかかると、木材1の樹芯Oからの亀裂や割れがスリット3に繋がるというY字背割4における亀裂や割れに対する抑制機能が不十分になるからである。
【0041】
そして、例えばパーゴラ、東屋、柵、案内板、橋、遊具等を戸外において建設するのに、木材1を使用するのに、風雨、雪による木材1の腐食を防止するために、木材1に塗料を塗装している場合には、前述のように、乾燥によりV溝2が拡大して開かれるのが、V溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺2aの略延長線P上に設けられたスリット3に、新たな亀裂Kは繋がるように形成されるとともに、特許文献1に記載の如き従来の背割りでは、スリット状の細い鋸目だけなので、なかなか背割りの内部を塗装することは難しく、乾燥によってこの背割りが開いて来た場合、塗装されていない部分が露出されて来るため、見栄えが悪くなる。しかし、本実施形態では、V溝2を設けた場合、塗料はV溝2の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上に設けられたスリット3内に入り込んで行くので、従来の背割りとは異なり、乾燥により背割りが開いて来た場合でも、塗装もれが目立つことなく、見栄えが良い。
【0042】
さらに、前述のように、木材1の側面に、長手方向Xに沿って設けられた4本のV字状のV溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺2aの略延長線P上にスリット3が設けられているので、工場において防腐性または防蟻性を有する薬液が、V溝2、およびこのV溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺2aの略延長線P上に設けられたスリット3を通じて木材1の表面だけではなく、木材1の内部に浸透し、防腐性または防蟻性を有する薬液の効能が発揮され、木材1の高耐久性が向上される。
【0043】
さらにまた、前述のように、木材1の側面には、長手方向Xに沿って4本設けられた木口端から見てV字状のV溝2は、デザイン的にシンプルに体裁が整えられ、このV溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺2aの略延長線P上に木材1の内部に設けられたスリット3は外部からは見えずに隠れるので、デザイン的にスッキリとして簡素化される。さらに、V字状のV溝の中に斜めに入る鋸目が陰影ある奥行感を出し、立体的に見える。
【0044】
図5、および図6に示すものは、本発明のY字背割付き木材の変形例を示し、図1乃至図4に示すものは、柱5のような縦木としての木材1が、木口端から見て平面正方形のものについて説明したが、本例では木材1が木口端から見て平面円形の柱5として構成されている点が異なる構成であるほかは、図1乃至図4に示すものと、同様の構成、および作用を奏する。なお、本例で用いる柱5には、その部材径Lが120mm、150mm、180mm、200mm、240mm、250mm、300mm等の数種がある。
【0045】
<実施形態2>
また、図7、および図8に示すものは、本発明のY字背割付き木材の実施形態2を示し、この実施形態2では、前記木材1が、木口端から見て側面正方形の横木30に構成され、かつ、前記横木30には前記Y字背割4が天面部1aを除いて前後の側面および下面とに合計3本設けられるとともに、前後の側面に設けられる前記スリット3,3は上向きに設けられている点が前記実施形態1とは異なる構成である。
【0046】
そして、本実施形態2では、横木30として図7に示すように木口端から見て側面正方形または図8に示すように側面円形に構成される木材1は、雨や雪が降った場合に天面部1aが水に濡れても、木材1の内部には水が侵入しないとともに、前記Y字背割4が天面部1aを除いて前後の側面および下面との合計3本設けられ、前後の側面に設けられる前記スリット3,3は上向きに設けられているため、V溝2,2からスリット3,3を通じて木材1の内部には、雨水、雪、埃が侵入しない。そして、木材1が乾燥された時に生ずる内部応力により木材1の樹芯Oに向いて入る亀裂KはY字背割4のV溝2の交差する二辺2a,2aのうちの少なくとも一辺2aの略延長線P上に設けられたスリット3に繋がるように、均等に分散されて入るため、木材1の高均等化がはかれるという優れた作用、効果を奏する点が前記実施形態1とは異なる作用・効果であるほかは、前記実施形態1と同様の構成、作用・効果を奏する。
【0047】
なお、図1乃至図6に示す前記実施形態1では、木材1の前後および左右の側面に、1本づつ、合計4本のY字背割4が設けられ、また、図7、図8に示す実施形態2では、木材1の前後および下面に3本のY字背割4が設けられているが、これは代表的な例示であり、木材1の側面に設けられるY字背割4は、図には示さないが、前後の側面に点対称または線対称にまたは左右の側面に点対称または線対称に設けられる等、Y字背割4の設置個数、および設置場所は、図示するものに限られず、自由に設定される。
【0048】
また、図1乃至図6に示す上記実施形態1、および図7、図8に示す上記実施形態2では、木材1の前後および左右の側面に、1本づつ、合計4本設けられたY字背割4には、木口端から見て平面または側面V字状に形成されるV溝2、乃至は該V溝2の交差する二辺2a,2aのうちの一辺2aの略延長線P上にスリット3が設けられたものが図示されているが、これには代表的な例示であり、これに限ることなく、V溝2の交差する二辺2a,2aの双方の略延長線P,P上にスリット3,3が設けられている場合も本発明の適用範囲を逸脱するものではない。
【0049】
また、図1乃至図6に示す上記実施形態1において、図1乃至図4に示すものは平面正方形の木材1が使用されるとともに、図5および図6に示すものは平面円形の木材1が使用され、また、図7および図8に示す実施形態2において、図7に示すものは側面正方形の木材1が使用されるとともに、図8に示すものは側面円形の木材1が使用されている場合を代表的に説明しているが、これら使用される木材1は上記説明に限ることなく、図には示さないが、例えば平面乃至は側面が四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形に形成される場合も前記平面正方形もしくは前記平面円形の木材、或いは側面正方形もしくは側面円形の木材と同様に説明でき、本発明の適用範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、「背割り」を施した木製角材の背割り部分に亀裂の割れが発生するのを抑制すると共に、該背割り部分に亀裂や割れが発生した場合には、前記亀裂や割れの内部が露見することを防止して見映えを良好になすという用途、機能に適する。
【符号の説明】
【0051】
1 木材
1a 天面部
2 V溝
2a 一辺
3 スリット
4 Y字背割
5 柱
20 鋸歯
H 垂直線
K 亀裂
L 部材径
P 延長線
X 長手方向
W 幅方向
W′ 幅方向
f 深さ
θ1 傾斜角度
θ2 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材の側面に、長手方向に沿って1本または複数本が設けられた木口端から見てV字状のV溝と、該V溝の交差する二辺のうちの少なくとも一辺の略延長線上に設けられたスリットと、により構成されるY字背割が施こされている
ことを特徴とするY字背割付き木材。
【請求項2】
前記Y字背割の前記スリットが、
木材の部材径の1/8〜1/4の深さにより形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のY字背割付き木材。
【請求項3】
前記木材が、縦木として木口端から見て平面正方形、平面多角形、または平面円形の柱に構成され、かつ、前記柱には前記Y字背割が前後または左右に線対称もしくは点対称に合計1〜4本設けられるか、あるいは、前後および左右に線対称もしくは点対称に合計1〜4本が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のY字背割付き木材。
【請求項4】
前記木材が、木口端から見て側面正方形、側面多角形、または側面円形の横木に構成され、かつ、前記横木には前記Y字背割が天面部を除いて前後の側面および下面との合計3本設けられるとともに、前後の側面に設けられる前記スリットは上向きに設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のY字背割付き木材。
【請求項5】
前記木材には、前記V溝および前記スリットを介して防腐性または防蟻性を有する薬液が含浸されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のY字背割付き木材。
【請求項6】
木材の側面に、その長手方向に沿って板面に直交する垂直線に対して幅方向へ所望の傾斜角度に傾けて鋸歯により木材の部材径の1/8〜1/4の深さのスリットを形成する工程と、
前記スリットに交差するように、前記垂直線に対して前記傾斜角度とは反対側に所望の傾斜角度傾けて鋸歯にて切断してV溝を形成するとともに、前記スリットと前記V溝とよりなるY字背割を形成する工程と、
を順次有することを特徴とするY字背割付き木材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−116046(P2011−116046A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276326(P2009−276326)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000180081)株式会社ザイエンス (11)
【Fターム(参考)】