説明

[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの定量方法

【課題】試料液中の[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの定量方法を提供する。
【解決手段】試料液中の[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンのうち、モノ体は試料液を有機溶媒で抽出処理し、当該抽出物を分析用試料とし、ビス体は溶液を陽イオン交換樹脂で吸着処理し、酸性溶液で溶出した画分を分析用試料とし、それぞれを親水性相互作用クロマトグラフィーカラムを用いた液体クロマトグラフ/タンデム型質量分析計を用いて分析し、その濃度を合計することを特徴とする、試料液中の[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの定量方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酪農分野で広く使用される消毒剤の濃度の定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンは、第4級アンモニウム塩型の陽イオン性界面活性剤の一種であり、家畜、牛舎、乳牛の搾乳器の消毒の他、近年では鳥インフルエンザの拡大防止のために散布されるなど、国内で広く使用されている殺菌消毒剤である。当該殺菌消毒剤の国内での牛乳における残留基準値は、ヒトに対するリスク評価結果に基づいて1ppmと設定されている。
【0003】
当該殺菌消毒剤の分析方法としては、鳥インフルエンザの拡大防止の目的で使用されたことから、環境水中の分析法が報告されている(非特許文献1)。非特許文献1によれば、試料水を陰イオン交換カラム処理後に、液体クロマトグラフ/タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)で分析する方法により、当該殺菌消毒剤のうち、[モノ(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエン(以下、モノ体ともいう)のみが0.001μg/Lレベルで検出でき、[ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエン(以下、ビス体ともいう)については分析が困難であったと報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】岡山県環境保健センター年報 31,45−51,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記殺菌消毒剤は、最近、家畜、搾乳器や牛舎の消毒に広く使用されていることから、牛乳中に混入する可能性も考えられるため、当該殺菌消毒剤の定量方法の開発が強く要望されている。しかし、前述のように、環境水中の当該殺菌消毒剤の定量方法についてはモノ体の定量方法については知られているものの、ビス体については定量方法が知られておらず、従って、[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエン全体の濃度(モノ体とビス体を合計した濃度)を定量できていない。また、牛乳等のように、タンパク質や脂肪など、分析上、妨害物質となる物質(いわゆる夾雑物質)を多量に含む溶液中の当該殺菌消毒剤の定量方法については全く報告がない。
従って、本発明の課題は、液体状態にある試料中の[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの定量方法を提供することにある。特に、牛乳等の液状食品のように、タンパク質や脂肪などの夾雑物質を多量に含む溶液中の[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの定量方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、試料液中の前記殺菌消毒剤の定量手段について検討したところ、[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンのモノ体については、試料液中に含まれるモノ体を有機溶媒で抽出し、その抽出物を親水性相互作用クロマトグラフィーカラム(HILIC)を用いた液体クロマトグラフ/タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)を用いて分析することにより定量し、一方、ビス体については、試料液中に含まれるビス体を陽イオン交換樹脂で吸着処理し、その後に、酸性溶液で溶出した画分を、HILICを用いたLC/MS/MSを用いて分析することにより定量し、これらモノ体とビス体の定量値を合計することにより、[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエン全体の濃度(モノ体とビス体を合計した濃度)を正確に定量できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、試料液を有機溶媒で抽出処理し、当該抽出物を、HILICを用いたLC/MS/MSを用いて分析することを特徴とする、当該試料液中の[モノ(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの定量方法を提供するものである。
また、本発明は、試料液を陽イオン交換樹脂で吸着処理し、酸性溶液で溶出した画分を、HILICを用いたLC/MS/MSを用いて分析することを特徴とする、当該試料液中の[ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの定量方法を提供するものである。
さらに、本発明は、上記の定量方法により得られた試料液中の[モノ(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエン濃度と、上記の定量の方法により得られた試料液中の[ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエン濃度とを合計することを特徴とする、試料液中の[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの定量方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
前記非特許文献1には、迅速分析法として、強塩基性陰イオン交換樹脂を用いて試料溶液を精製し、LC/MS/MSで分析する方法、及び高感度分析法として、親水性ビニルポリマーを基材とする陰イオン交換樹脂を用いて試料溶液を精製し、LC/MS/MSで分析する方法が開示されている。しかし、当該方法は、
(1)迅速分析法では、試料溶液の陰イオン交換樹脂処理時に、一部のモノ体が試料水のろ液中に溶出する(つまり、モノ体の一部は樹脂に吸着しない)ことから、ろ液と陰イオン交換樹脂のメタノール溶出液とを合わせて分析機器(LC/MS/MS)に注入する必要があり、試料水中の夾雑物質が液体クロマトグラフィーのカラムやLC/MS/MSを汚染する可能性がある;
(2)高感度分析法では、陰イオン交換樹脂からの溶出に多量のメタノールを必要とするため、測定対象物の濃度が低下する。このため、LC/MS/MSの分析前に試料溶液を濃縮する必要があり、手間と時間が余分に掛かるため、簡略な方法とは言えない;
(3)両方法とも、環境水のように夾雑物質の比較的少ない試料に対する適用例しかなく、牛乳に代表される食品のように夾雑物質の多い試料を分析できるか否かは全く不明である;
(4)両方法とも、モノ体しか分析できておらず、ビス体を分析できた前例は全くなく、そのため、[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエン全体の濃度を分析できた事例は開示されていない;
等の不都合があり、十分なものと言えなかった。
本発明の定量方法によれば、モノ体では、抽出のみの簡易な処理の後に、機器分析を実施することにより、定量することが可能になった。また、ビス体では、これまで適切な分析方法が知られていなかったが、陽イオン交換樹脂の処理の後に、機器分析を実施することにより、定量することが可能になった。さらに、LC/MS/MSの機器分析時にHILICカラムを使用することで、モノ体及びビス体を正確に定量することが可能になった。さらに、本発明の定量方法によれば、例えばタンパク質や脂肪等の夾雑物質を多量に含有する液状食品中のモノ体及びビス体をそれぞれ正確に定量できるため、これまで分析が非常に困難であった液状食品中に残留する[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエン全体の濃度が定量でき、それら液状食品の安全性を確認する方法を提供することが初めて可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の測定対象である[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンは、下記の化学式で表される陽イオン界面活性剤であり、殺菌消毒剤として市販されている(商品名:「パコマ」等)。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、RはC1225を主成分とするアルキル基を示す)
【0012】
牛乳中の上記成分の残留基準値は1ppmと設定されているが、測定方法は定められていない。
【0013】
また、本発明の試料液(測定対象となる液)には、環境水や液状食品等が含まれる。環境水には、河川水、湖沼水、海水、溜池水等が含まれる。そして、例えば土壌を水道水と混合して調製した上澄液等も含まれる。また、液状食品には、ミネラルウォーターや清涼飲料水、各種の乳製品等が含まれ、乳製品には、生乳、牛乳、成分調整牛乳、加工乳、乳飲料、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、牛乳以外の乳そのものや乳の加工品等が含まれる。
【0014】
まず、試料液中のモノ体の定量方法について説明する。試料液中のモノ体は、試料液を有機溶媒で抽出処理し、当該抽出物を、親水性相互作用クロマトグラフィーカラムを用いたLC/MS/MS(HILIC−LC/MS/MS)を用いて分析することにより定量することができる。
【0015】
試料液を有機溶媒で抽出処理すると、モノ体は抽出されるが、ビス体はほとんど抽出されない。有機溶媒としては、アセトニトリル、アセトン、メタノール等が挙げられるが、本発明においてはアセトニトリル、アセトン等の非プロトン性極性溶媒が好ましく、抽出効率の点でアセトニトリルがより好ましい。抽出処理は、試料液1容量部に対し有機溶媒を2〜20容量部を用いて、室温で行うのが好ましい。得られた抽出物は、必要に応じてフィルターろ過を行う。ろ過に用いるフィルターのふるい目は、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。
【0016】
次に得られた抽出物中のモノ体を、HILIC−LC/MS/MSにより分析する。ここで、HILICは、親水性相互作用クロマトグラフィーカラムであり、親水性の固定相表面に水和相が形成され、移動相と水和相の間で分散が生じるカラムである。このようなカラムとしては、XBridge HILIC(Warers)、COSMOSIL HILIC(ナカライテスク)、Develosil ANDIUS(野村化学)、Wakopak Wakosil−II 5SIL−AQ(和光純薬)、PC HILIC(資生堂)、NUCLEODUR HILIC(ケムコ)、ZIC−HILIC(Merck)等が挙げられる。
【0017】
液体クロマトグラフィー(LC)部における移動相としては、有機溶媒と水系溶媒とを用いることができる。有機溶媒としては、アセトニトリルやメタノール等が好ましく、より具体例にはアセトニトリルが好ましい。水系溶媒としては、酢酸アンモニウムやギ酸アンモニウムの水溶液が好ましく、より具体的にはギ酸アンモニウム水溶液が好ましい。ここで、ギ酸アンモニウム水溶液の濃度は、一般に0.01〜100mM、好ましくは1〜50mMの範囲内とすることができ、また、アセトニトリルとギ酸アンモニウム水溶液の混合割合(v:v)は、一般に50:50〜100:1、特に70:30〜95:5の範囲内が好ましい。
【0018】
タンデム型質量分析(MS/MS)は、例えば、四重極型質量分析法、四重極イオントラップ型質量分析法、飛行時間型質量分析法などを用いて行うことができ、この中でも四重極型質量分析法が好適に用いられる。質量分析における試料のイオン化法としては、例えば、エレクトロスプレーイオン化法、大気圧化学イオン化法等が挙げられるが、この中でもエレクトロスプレーイオン化法が好適に用いられる。
【0019】
次に、試料液中のビス体の定量方法について説明する。試料液中のビス体は、試料液を陽イオン交換樹脂に通して、ビス体を当該樹脂に吸着処理し、その後に酸性溶液でカラムから溶出させた画分を、HILIC−LC/MS/MSで分析することにより定量することができる。
【0020】
用いられる陽イオン交換樹脂としては、ビス体が吸着し、溶出できるものであればよく、例えば、弱陽イオン交換樹脂及び強陽イオン交換樹脂が用いられるが、溶出性の点から、弱陽イオン交換樹脂が好ましい。弱陽イオン交換樹脂としてはカルボン酸型弱陽イオン交換樹脂が好ましい。陽イオン交換樹脂の市販品としては、Oasis WCX(Waters)、Oasis MCX(Waters)、Bond Elut CBA(Agilent)、Bond Elut SCA(Agilent)、Supelclean LC−SCX(スペルコ)、Supelclean LC−WCX(スペルコ)、STRATA SCA(フェノメネクス)、STRATA WCX(フェノメネクス)、Presep S(ベーカーボンド)、Presep CM(ベーカーボンド)等が挙げられる。
【0021】
ビス体を陽イオン交換樹脂に吸着させるには、メタノール、アンモニア水等の適切な溶液でコンディショニングした陽イオン交換樹脂に溶液を通液させればよい。陽イオン交換樹脂と試料液の接触により、試料液中のビス体が陽イオン交換樹脂に吸着し、適当な洗浄液で樹脂を洗浄後、酸性溶液を用いてカラムから溶出させることで吸着したビス体が効率よく溶出される。他方、試料液中のモノ体は陽イオン交換樹脂へ吸着しにくく、本法での分析は困難であった。
【0022】
溶出液として用いられる酸性溶液としては、強酸溶液が好ましく、鉱酸溶液がより好ましい。具体例には、塩酸、硫酸、硝酸等の溶液が挙げられるが塩酸溶液が好ましい。鉱酸溶液としては、鉱酸水溶液、鉱酸アルコール溶液等が挙げられ、塩酸、塩酸メタノール溶液等が好ましい。鉱酸溶液中の鉱酸濃度は、0.01〜5v/v%が好ましく、0.1〜1v/v%がより好ましい。得られた溶出液は、必要に応じてフィルターろ過を行う。ろ過に用いるフィルターのふるい目は、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。
【0023】
次に得られた溶出液中のビス体を、HILIC−LC/MS/MSにより分析する。ビス体のHILIC−LC/MS/MSの条件は、前記モノ体の場合と同様にして行うことができる。
【0024】
試料液中のモノ体とビス体の濃度は、前記の方法により得られた溶液中のモノ体濃度と試料液中のビス体濃度とを合計すればよい。
【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0026】
実施例1(HILIC−LC/MS/MSによるモノ体及びビス体の測定)
濃度が0.1ppmの[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエン溶液(溶媒は0.1Mギ酸アンモニウム水溶液1容量とアセトニトリル9容量の混液)をLC/MS/MS(AB Sciex社製、API−3200型)にて分析した。分析条件は、以下の通りであった。
【0027】
LC条件
カラム :Waters XBridge HILIC 3.5μm 2.1×150mm(40℃)
移動相A:10mM ギ酸アンモニウム
移動相B:アセトニトリル
移動相比:B=95%(0min.)-50%(16min.)
流速 :0.2mL/分
注入量 :10μL
【0028】
質量分析条件
プリカーサーイオン プロダクトイオン
モノ体(定量用) 332 119
(確認用) 332 147
ビス体(定量用) 202 145
(確認用) 202 131
イオン源
Lon Spray Voltage 5,500V
Temperature 500℃
Collision Gas 6
測定モード Positive
【0029】
その結果、モノ体の定量用イオン332/119のピークは、リテンションタイム9.44分に、ピーク面積3510000で観察された。モノ体の確認用イオン332/147のピークは、リテンションタイム9.45分に、ピーク面積2300000で観察された。
また、ビス体の定量用イオン202/145のピークは、リテンションタイム14.7分に、ピーク面積167000で観察された。ビス体の確認用イオン202/131は、リテンションタイム14.6分に、ピーク面積116000で観察された。
以上より、HILIC−LC/MS/MSを用いて、[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンのモノ体及びビス体の両方が測定できることが明らかとなった。つまり、環境水のような不純物の比較的少ない水溶液において、以上の方法を適用すれば、[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンのモノ体及びビス体の両方を安定して測定できると考えられた。
【0030】
実施例2(モノ体の定量)
牛乳1mLにアセトニトリル9mLを加えて撹拌しタンパク質成分等を凝集させた後、遠心分離(3000rpm、5分間)して上清の水/アセトニトリル層を得た。この水/アセトニトリル層をフィルターろ過(φ0.22μm)し、ろ液をLC/MS/MS(AB Sciex社製、API−3200型)にて分析した。分析条件は、実施例1と同じ。
【0031】
実施例3(ビス体の定量)
弱陽イオン交換樹脂Oasis WCXカラム(樹脂量60mg、カラムサイズ3cc、樹脂粒子径60μm)にメタノール2mL、5%アンモニア水2mLを順に通液させコンディショニングし、その後、試料である牛乳2mLを通液させた。5%アンモニア水2mLでカラムを洗浄した後、塩酸/メタノール混液(塩酸0.15容量/メタノール10容量)2mLで溶出した。フィルターろ過(φ0.22μm)した後、0.1Mギ酸アンモニウム水溶液/アセトニトリルの混液(0.1Mギ酸アンモニウム水溶液1容量/アセトニトリル9容量)にて10倍希釈した。この溶液をLC/MS/MS(AB Sciex社製、API−3200型)にて分析した。分析条件は、実施例1と同じ。
【0032】
試験例1
牛乳に対し、最終濃度が0.1ppmになるように[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの標準品を添加し、実施例2及び3の方法により、モノ体及びビス体を定量し、当初の添加濃度である0.1ppmに対する回収率を求めた。なお、[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの標準品はモノ体:ビス体:水=4:1:5の混合物であるため、回収率の計算は、この混合比を考慮して行った。
その結果、モノ体の回収率は97%、ビス体の回収率は88%であった。従って、本発明方法により牛乳中の[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンが、検出下限を0.1ppmとして定量可能であることが判明した。つまり、牛乳のような不純物の比較的多い液状食品において、以上の方法を適用すれば、[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンのモノ体及びビス体の両方を安定して測定できると考えられた。
【0033】
比較試験例
(1)実施例2のアセトニトリル抽出液のLC/MS/MS分析では、ビス体は全く検出されなかった。従って、ビス体はアセトニトリルでは抽出されないと考えられる。
(2)LCカラムとして液体クロマトグラフィー分析で汎用されるODSカラム(ODS−100S、東ソー製)を用い、試料として[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエン標準品の0.1ppm溶液を用いて、LC/MS/MSで分析を行った。LC/MS/MSの条件は実施例1と同一とした。その結果、モノ体は良好なピークを示したが、ビス体は有意なピークが検出できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液を有機溶媒で抽出処理し、当該抽出物を、親水性相互作用クロマトグラフィーカラムを用いた液体クロマトグラフ/タンデム型質量分析計を用いて分析することを特徴とする、当該試料液中の[モノ(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの定量方法。
【請求項2】
有機溶媒が、非プロトン性極性溶媒である請求項1記載の定量方法。
【請求項3】
有機溶媒が、アセトニトリルである請求項1記載の定量方法。
【請求項4】
試料液を陽イオン交換樹脂で吸着処理し、酸性溶液で溶出した画分を、親水性相互作用クロマトグラフィーカラムを用いた液体クロマトグラフ/タンデム型質量分析計を用いて分析することを特徴とする、当該試料液中の[ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの定量方法。
【請求項5】
陽イオン交換樹脂が、弱陽イオン交換樹脂である請求項4記載の定量方法。
【請求項6】
酸性溶液が、鉱酸アルコール溶液である請求項4又は5記載の定量方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか記載の方法により得られた試料液中の[モノ(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエン濃度と、請求項4〜6のいずれか記載の方法により得られた試料液中の[ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエン濃度とを合計することを特徴とする、試料液中の[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]アルキルトルエンの定量方法。
【請求項8】
試料液が、環境水である請求項1〜7のいずれかに記載の定量方法。
【請求項9】
試料液が、液状食品である請求項1〜7のいずれかに記載の定量方法。
【請求項10】
試料液が、牛乳である請求項1〜7のいずれかに記載の定量方法。

【公開番号】特開2013−32969(P2013−32969A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169148(P2011−169148)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000006138)株式会社明治 (265)
【Fターム(参考)】