説明

c−Kitキナーゼ阻害剤

下記一般式Iで表される化合物が強いc−Kitキナーゼ阻害活性を示し、in vitro及びin vivoでc−Kitキナーゼが活性化した癌細胞の増殖を抑制することが見出された。c−Kitキナーゼ阻害活性を示す新たな抗癌剤が見出された。
一般式I:


〔式I中、Rはメチル基等を、Rはシアノ基等を、Rは水素原子等を、Rは水素原子等を、それぞれ意味する。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、c−Kitキナーゼ阻害剤、及びc−Kitキナーゼ阻害剤を有効成分とするc−Kitキナーゼの過剰な活性化により引き起こされた疾患の治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
受容体型チロシンキナーゼによる細胞内情報伝達は、細胞増殖、分化および代謝に寄与し、その結果、癌を始めとした種々の疾患の原因となっている(Kolibaba K.S.et al.,B.B.A.1333,F217−F248,1997;Sheijen B.et al.,Oncogene 21,3314−3333,2002)。
【0003】
受容体型チロシンキナーゼの一つであるc−Kitキナーゼは、それに対する特異的なリガンドであるSCF(Stem cell factor)と結合することにより、それ自身の2量体化に引き続きキナーゼ活性が活性化され、その結果細胞内に存在する種々のc−Kitキナーゼの基質がリン酸化を受けることが知られている(Blume−Jensen P.et al.,EMBO J.10,4121−4128,1991;Lev S.et al.,EMBO J.,10,647−654,1991)。
【0004】
C−Kitキナーゼの異常な活性化は、ある種(例を下記に記載)の癌細胞で増殖シグナルとなって癌化や悪性化の原因になっていると考えられている。
【0005】
(1)急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia,AML):多くの(60−80%)急性骨髄性白血病の患者でc−Kitキナーゼの発現が見られ、それらの患者由来の芽球の増殖がSCF刺激で促進された。更に、13/18例の患者において、SCF刺激無しでc−Kitキナーゼの活性化が見られ、これらの患者ではc−Kitキナーゼに活性化変異が生じていると考えられた(Lev S.et al.,EMBO J.,10,647−654,1991;Wang C.et al.Leukemia 3,699−702,1989;Kanakura Y.et al.Leuk.Lymph.10,35−41,1993;Ikeda H.et al.Blood,78,2962−2968,1991;Ikeda H.et al.Exp.Hematol.21,1686−1694,1993)。
【0006】
(2)肥満細胞性白血病(mast cell leukemia):肥満細胞症患者が発症する肥満細胞性白血病の細胞株においてc−Kitキナーゼの活性化変異の存在が報告されている(Furitsu T.et al.,J.Clin.Invest.,92,1736−1744,1993)。
【0007】
(3)小細胞肺癌(small cell lung carcinoma,SCLC):SCLCの70%以上の細胞株でc−Kitキナーゼの高発現が見られた。一方、非小細胞肺癌(Non−small cell lung carcinoma)の細胞株ではc−Kitキナーゼの発現量は少ないか検出限界以下であった。また小細胞肺癌の細胞株ではリガンドであるSCFも発現しており、オートクラインで増殖が促進されている可能性が示唆された(Hibi K.et al.,Oncogene,6,2291−2296,1991;Sekido Y.et al.,Cacer Res.,51,2416−2419,1991)。
【0008】
(4)GIST(gastrointestinal stromal tumors):GISTはc−Kitキナーゼを発現している消化管に発生する間質系癌と定義される。GISTでは約半数で活性化変異が見られ、この変異は悪性度の高いGISTにおいてより高頻度に存在しており、予後因子となる可能性が示唆されている(Lasota J.et al.,Am.J.Pathol.,157,1091−1095,2000;Taniguchi M.et al.,Cancer Res.,59,4297−4300,1999)。
【0009】
(5)睾丸腫瘍(testicular cancer):睾丸腫瘍は、前癌病変と考えられるcarcinoma in situ(CIS)が進行してseminomaとnon−seminomaと呼ばれる腫瘍になる。c−Kitキナーゼは、CISとseminomaにおける高発現が報告されている(Strohmeyer T.et al.,Cancer Res.,51,1811−1816,1991)。更に近年、seminomaにおいて活性化変異を起こしたc−Kitキナーゼの発現が報告されている(Tian Q.,et al.Am.J.Pathol.,154,1643−1647,1999)。
【0010】
(6)卵巣癌(ovarian cancer):正常の卵巣上皮ではSCFが発現しているだけでc−Kitキナーゼの発現が見られないが、癌化初期で良性の卵巣癌ではc−KitキナーゼおよびSCFの両方が発現し、更に悪性化した卵巣癌では逆にc−Kitキナーゼの発現が低下する事が報告されている。この結果より、c−Kitキナーゼが卵巣癌の発生に重要な役割を果たしていることが示唆された(Tonary A.T.,Int.J.Cancer,89,242−250,2000)。
【0011】
(7)乳癌(breast cancer):乳癌は周囲の正常組織に比べc−Kitキナーゼの発現が低下するという報告が有る(Natali P.et al.,Int.J.Cancer,52,713−717,1992)が、その後の研究で乳癌では正常組織で検出されなかったc−Kitキナーゼの発現が見られ、更にSCFの発現も検出され、オートクライン刺激で増殖が促進されている事が示唆された(Hines S.J.et al.,Cell Growth & Differentiation,6,769−779,1995)。
【0012】
(8)脳腫瘍(brain cancer):脳腫瘍の中で最も悪性度の高い神経膠芽腫(glioblastoma)の細胞株および組織においてc−Kitキナーゼの発現が見られ、c−Kitキナーゼを発現する神経膠芽腫の細胞株がSCF刺激により増殖が促進されたことが報告されている(Berdel W.E.et al.,Cancer Res.,52,3498−3502,1992)。
【0013】
(9)神経芽細胞腫(neuroblastoma):子供に発生する癌として有名な神経芽細胞腫の細胞株および組織標本において、SCFとc−Kitキナーゼが共に発現している例が多く、抗c−Kitキナーゼ抗体により神経芽細胞腫の細胞株の増殖が抑制され、オートクラインにより増殖が促進されている事が報告されている(Cohen P.S.,Blood,84,3465−3472,1994)。
【0014】
(10)大腸癌(colorectal cancer):c−KitキナーゼとそのリガンドであるSCFは大腸癌組織における共発現が見られたのに対し正常粘膜組織では両者の発現が見られなかった。また大腸癌細胞株はSCF刺激により増殖が促進された。(Bellone G.,et al.J.Cell.Physiol.,172,1−11,1997)。
【0015】
また、SCF刺激によるc−Kitキナーゼの活性化が肥満細胞の増殖と分化に必須である事が報告されている(Hamel et al.,J.Neuro−Onc.,35,327−333,1997;Kitamura et al.,Int.Arch.Aller.Immunol.,107,54−56,1995)。従って、c−Kitキナーゼの過剰な活性化は、肥満細胞の過剰によって引き起こされる肥満細胞症、喘息、慢性鼻炎などの免疫異常の原因となっていると考えられている。
【0016】
(1)肥満細胞症(Mastocytosis):肥満細胞の過剰増殖によって特徴付けられる色々な状態の病態の総称である。(Metcalfe,J.Invest.Derm.,93,2S−4S,1991;Golkar et al.,Lancet,349,1379−1385,1997)。肥満細胞症患者では、1)c−Kitキナーゼの過剰発現(Nagata et al.,Mastocytosis Leuk.,12,175−181,1998)、2)可溶型SCF量の増加(Longley et al.,New Engl.J.Med.,328,1302−1307,1993)、3)c−Kitキナーゼの活性化変異(Nagata et al.Mastcytosis Leuk.,12,175−181,1998;Longley et al.,Nat.Gen.,12,312−314,1996)などが報告されており、これらがc−Kitキナーゼを過剰に活性化して肥満細胞症を引き起こすと考えられている。
【0017】
(2)アレルギー、喘息:肥満細胞と好酸球は炎症、アレルギー喘息などの発症において重要な細胞である(Thomas et al.Gen.Pharmacol.,27,593−597,1996;Metcalfe et al.Physiol.Rev.,77,1033−1079,1997)。この事は慢性鼻炎やアレルギーに伴う炎症に対して現在最も効果が有るとされているコルチコステロイドが、循環および浸潤する肥満細胞と好酸球の数を減少させるという報告からも示唆される(Naclerio et al.,JAMA,278,1842−1848,1997;Meltzer,Aller.52,33−40,1997)。SCF刺激に伴うc−Kitキナーゼの活性化は、肥満細胞の分化、生存、増殖に必須であるだけでなく、mast cellからの種々の因子の誘導を促進し、これらの因子が好酸球の分化、生存、浸潤性に重要な機能を果たしている事が報告されている(Okayama et al.,Int.Arch.Aller.Immunol.,114,75−77,1997;Okayama et al.,Eur.J.Immunol.,28,708−715,1998;Metcalf et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,95,6408−6421,1998;Kay et al.,Int.Arch.Aller.Immunol.,113,196−199,1997;Hogaboam et al.J.Immunol.160,6166−6171,1998;Luckas et al.J.Immunol.156,3945−3951,1996)。従ってc−Kitキナーゼの阻害により喘息、アレルギーなどの患者において、活性化した肥満細胞と好酸球を阻害できると考えられる。
【0018】
以上に述べた通り、c−Kitキナーゼは幾つかの癌の発生や悪性化や、肥満細胞の過剰が原因と考えられる疾患に密接に関係していると考えられ、その阻害剤は、これら疾患の治療剤として有用であると考えられた。
【発明の開示】
【0019】
本発明の課題は、c−Kitキナーゼ阻害活性を示す新たな化合物を見出し、c−Kitキナーゼが原因となっている疾患の治療剤を開発することにある。
【0020】
c−Kitキナーゼ阻害作用を示す化合物として、これまでにインドリン骨格を有する化合物が、報告されている(WO 01/45689)。また、キナゾリン骨格を有する化合物のc−Kitキナーゼ阻害作用が報告され(WO 01/47890)、類縁の化合物(KRN633)もc−Kitキナーゼ阻害作用を持つことが報告されている(久保和生ら、第22回メディシナルケミストリーシンポジウム講演要旨集p275−277,2P−320,2002)。また最近、c−Kit阻害に基づいたGISTに対する治療剤としてグリーベック(STI571)が米国、欧州および日本で承認された(Drugs,63:513−22,2003)。
【0021】
我々は、下記一般式Iで表される化合物がVEGF受容体のkinase活性を抑制し、VEGF,FGF2,HGF刺激による内皮細胞の管腔形成を阻害することを報告した(WO 02/32872)。そして、下記一般式Iで表される化合物がVEGF kinaseのみならず、c−Kitキナーゼに対し強い阻害作用を有する事を見出し、更にc−Kitキナーゼを発現する癌細胞に対して増殖を抑制する活性を有することを見出した。
【0022】
すなわち本発明は、以下に関する。
1. 一般式I:

〔式I中、
はメチル基、2−メトキシエチル基または式II:

(式II中、Ra3はメチル基、シクロプロピルメチル基またはシアノメチル基を意味する;Ra1は水素原子、フッ素原子または水酸基を意味する;Ra2は、1−ピロリジニル基、1−ピペリジニル基、4−モルフォリニル基、ジメチルアミノ基またはジエチルアミノ基を意味する。)の何れかで表される基を意味する;
はシアノ基または式−CONHRa4(式中、Ra4は水素原子、C1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基、C1−6アルコキシ基またはC3−8シクロアルコキシ基を意味する。)で表される基を意味する;
は水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、塩素原子またはフッ素原子を意味する;
は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、シクロプロピル基、2−チアゾリル基または4−フルオロフェニル基を意味する。〕で表される化合物もしくはその塩またはそれらの水和物を有効成分とするc−Kitキナーゼ阻害剤。
2. Rがメチル基である、1記載のc−Kitキナーゼ阻害剤。
3. Rがメチル基、エチル基またはシクロプロピル基である1または2記載のc−Kitキナーゼ阻害剤。
4. Rが水素原子、塩素原子またはフッ素原子である1〜3いずれか1に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤。
5. Rが式−CONHRa4(式中、Ra4は水素原子またはメトキシ基を意味する。)で表される基である、1〜4いずれか1に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤。
6. 一般式Iで表される化合物が、
(1)4−(3−クロロ−4−(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミド、
(2)4−(3−クロロ−4−(エチルアミノカルボニル)アミノフェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミド、
(3)N6−メトキシ−4−(3−クロロ−4−(((シクロプロピルアミノ)カルボニル)アミノ)フェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミドおよび
(4)N6−メトキシ−4−(3−クロロ−4−(((エチルアミノ)カルボニル)アミノ)フェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミド
からなる群から選ばれるいずれか1の化合物である、1〜5いずれか1に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤。
7. 1〜6いずれか1に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤を有効成分とする、c−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現する癌を治療する抗癌剤。
8. c−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現する癌が、急性骨髄性白血病、肥満細胞性白血病、小細胞肺癌、GIST、睾丸腫瘍、卵巣癌、乳癌、脳腫瘍、神経芽細胞腫または大腸癌である7に記載の抗癌剤。
9. c−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現する癌が、急性骨髄性白血病、小細胞肺癌またはGISTである7に記載の抗癌剤。
10. 患者から取り出した癌細胞がc−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現することを確認した後に投与することを特徴とする、7〜9いずれか1に記載の抗癌剤。
11. 1〜6いずれか1に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤を有効成分とする、肥満細胞症、アレルギーまたは喘息の治療剤。
12. c−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現する癌を治療する抗癌剤の製造のための、1〜6いずれか1に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤の使用。
13. c−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現する癌が、急性骨髄性白血病、肥満細胞性白血病、小細胞肺癌、GIST、睾丸腫瘍、卵巣癌、乳癌、脳腫瘍、神経芽細胞癌または大腸癌である、12に記載の使用。
14. c−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現する癌が、急性骨髄性白血病、小細胞肺癌またはGISTである、12に記載の使用。
15. 肥満細胞症、アレルギーまたは喘息の治療剤の製造のための、1〜6いずれか1に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤の使用。
【0023】
強いc−Kitキナーゼ阻害活性を示す化合物が見出され、c−Kitキナーゼの活性化が原因と考えられる、ある種の癌の癌化や悪性化を抑制する治療剤、あるいはc−Kitキナーゼが原因と考えられるMastocytosis、アレルギー、喘息などの疾患に対する治療剤が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1は、SCF刺激によるリン酸化c−Kitキナーゼのイムノブロットの結果を示した図である。
【0025】
図2は、H562をヌードマウスに移植した場合の、移植後の日数と主要体積の関係を示したグラフである。
【0026】
図3は、H562をヌードマウスに移植した場合の、リン酸化c−Kitキナーゼ、c−Kitキナーゼおよびβ−アクチンのイムノブロットの結果を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
本明細書中においては、化合物の構造式が便宜上一定の異性体を表すことがあるが、本発明には化合物の構造上生ずる全ての、幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体、互変異性体などの総ての異性体および異性体混合物を含み、便宜上の式の記載に限定されるものではない。また、本発明化合物が生体内で酸化、還元、加水分解、抱合などの代謝を受けてなお所望の活性を示す化合物をも包含し、さらに本発明は生体内で酸化、還元、加水分解などの代謝を受けて本発明化合物を生成する化合物をも包含する。さらに、水をはじめとする溶媒和物も本発明に含まれる。
【0029】
本明細書中において「C1−6アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基を示し、具体的には例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基などが挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基であり、もっとも好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基である。
【0030】
本明細書中において「C3−8シクロアルキル基」とは、炭素数3〜8の環状のアルキル基を意味し、具体的には例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。好ましくはシクロプロピル基である。
【0031】
本明細書中において「C1−6アルコキシ基」とは、酸素原子に前記「C1−6アルキル基」が結合した置換基を意味し、具体的には例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、i−ペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、t−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−メチルブトキシ基、2−メチルブトキシ基、1,1−ジメチルプロポキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、i−ヘキシルオキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、1−エチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、1,1,2−トリメチルプロポキシ基、1,2,2−トリメチルプロポキシ基、1−エチル−1−メチルプロポキシ基、1−エチル−2−メチルプロポキシ基などが挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、i−ペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、t−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−メチルブトキシ基、2−メチルブトキシ基、1,1−ジメチルプロポキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、i−ヘキシルオキシ基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、i−ペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、t−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−メチルブトキシ基、2−メチルブトキシ基、1,1−ジメチルプロポキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、さらに好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、もっとも好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基である。
【0032】
本明細書中において「C3−8シクロアルコキシ基」とは、炭素数3〜8の環状のアルコキシ基を意味し、具体的には例えば、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。好ましくはシクロプロポキシ基である。
【0033】
本発明にかかる一般式Iで表される化合物は、WO 02/32872に記載の方法によって製造することができる。
【0034】
本明細書中において「薬理学的に許容できる塩」としては、特に種類は限定されないが、たとえば塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩などの無機酸の付加塩;酢酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、トリフルオロ酢酸塩などの有機カルボン酸の付加塩;メタンスルホン酸塩、ヒドロキシメタンスルホン酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、タウリン塩などの有機スルホン酸の付加塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、プロカイン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタン塩、フェネチルベンジルアミン塩などのアミンの付加塩;アルギニン塩、リジン塩、セリン塩、グリシン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などのアミノ酸の付加塩などを挙げることができる。
【0035】
本発明に係る医薬の投与量は症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態、疾患の種類などにより異なるが、通常成人1日当たり100μg〜10gであり、1〜数回に分けて投与される。
【0036】
本発明に係る医薬の投与形態は特に限定されず、通常用いられる方法により経口または非経口的に投与することができる。
【0037】
これら製剤化には通常用いられる賦形剤,結合剤,滑沢剤,着色剤,矯味矯臭剤など、および必要により安定化剤,乳化剤,吸収促進剤,界面活性剤などを使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化される。
【0038】
これらの成分としては例えば、動植物油(大豆油、牛脂、合成グリセライドなど)、炭化水素(流動パラフィン、スクワラン、固形パラフィンなど)、エステル油(ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピルなど)、高級アルコール(セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなど)、シリコン樹脂、シリコン油、界面活性剤(ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなど)、水溶性高分子(ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロースなど)、アルコール(エタノール、イソプロパノールなど)、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトールなど)、糖(グルコース、ショ糖など)、無機粉体(無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウムなど)、精製水などが挙げられる。pH調製のためには無機酸(塩酸、りん酸など)、無機酸のアルカリ金属塩(りん酸ナトリウムなど)、無機塩基(水酸化ナトリウムなど)、有機酸(低級脂肪酸、クエン酸、乳酸など)、有機酸のアルカリ金属塩(クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムなど)、有機塩基(アルギニン、エタノールアミンなど)などを用いることができる。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤などを添加することができる。
【実施例】
【0039】
以下に、具体的な例をもって本発明を示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【0040】
[実施例1]SCF刺激の細胞増殖に対する影響
【0041】
c−Kitキナーゼを発現している小細胞肺癌細胞株H526(ATCCより購入、CRL−5811)の増殖に対する下記の化合物1、化合物2、化合物3および化合物4の影響を調べた。
化合物1:4−(3−クロロ−4−(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミド
化合物2:4−(3−クロロ−4−(エチルアミノカルボニル)アミノフェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミド
化合物3:N6−メトキシ−4−(3−クロロ−4−(((シクロプロピルアミノ)カルボニル)アミノ)フェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミド
化合物4:N6−メトキシ−4−(3−クロロ−4−(((エチルアミノ)カルボニル)アミノ)フェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミド
【0042】
化合物1〜4の構造式を以下に示す。

【0043】
化合物1はWO 02/32872の実施例368に記載の方法に従って製造した。化合物2はWO 02/32872の実施例583に記載の方法に従って製造した。化合物3はWO 02/32872の実施例417に記載の方法に従って製造した。化合物4はWO 02/32872の実施例702に記載の方法に従って製造した。
【0044】
H526は、10% FCS(Cell Culture Technologies社より購入)を含むRPMI1640培地(日水製薬株式会社製)で5% COインキュベーター(37℃)で培養した。培養後、H526細胞をPBSで3回洗浄し、0.1% BSA(Sigma社製)を含むRPMI1640培地(以下、BSA−RPMI1640)で1.0x10cells/mlに懸濁し、この細胞懸濁液を50μlづつ丸底96ウェルプレートに播種して、5% COインキュベーター(37℃)で一晩培養した。一晩培養後、200ng/ml SCF(R & D社製)を含むBSA−RPMI1640 50μl、及び希釈した被検物質を含むBSA−RPMI1640 100μlを添加した。
【0045】
被検物質添加開始日より7日目に、Cell Counting Kit−8(同仁化学研究所製)20μlを加え、5%COインキュベーター(37℃)で約2時間培養した。発色後、測定波長450nm、対照波長660nmで各ウェルの吸光度をプレートリーダーMTP−32(コロナ電気社製)を用いて測定した。各ウェルの吸光度をSCFを添加していないウェルの吸光度で引き、被検物質を添加していないウェルの吸光度に対する、被検物質を添加したウェルの吸光度の比を求め、この比の値から細胞増殖を50%阻害するのに必要な被検物質の濃度(IC50)を求めた。
【0046】
その結果下表に示す通り、化合物1、化合物2、化合物3及び化合物4は、SCFで刺激される細胞増殖を抑制し、c−Kitキナーゼ阻害活性を有していると考えられた。また、久保和生ら、第22回メディシナルケミストリーシンポジウム講演要旨集p275−277,2P−320,2002に記載の化合物KRN633のIC50は301nMで、化合物1、化合物2、化合物3及び化合物4と比較して、弱い活性しか示さなかった。また、c−Kitキナーゼ阻害剤として知られるSTI571のIC50は190nMであった。
【0047】

【0048】
[実施例2]SCF刺激よるc−Kitキナーゼリン酸化に対する化合物1の影響
【0049】
c−Kitキナーゼ発現小細胞肺癌細胞株H526細胞c−Kitキナーゼ分子の、SCF刺激によるリン酸化に対する化合物1の影響を調べた。
【0050】
H526は、10% FCSを含むRPMI1640培地で5% COインキュベーター(37℃)で培養した。培養後、H526細胞をPBSで3回洗浄し、BSA−RPMI1640で5.0×10cells/mlに懸濁し、この細胞懸濁液を1mlづつ24ウェルプレートに播種して、5% COインキュベーター(37℃)で6時間培養した。6時間培養後、希釈した被検物質を含むBSA−RPMI1640 1mlを添加し5% COインキュベーター(37℃)で1時間培養した後、10μg/ml SCF(R & D社製)10μlを添加して、5% COインキュベーター(37℃)で更に5分間培養した。5分間培養後、PBSで洗浄し、SDSサンプルローディングバッファー100μlを添加してcell lysateサンプルを調整し、94℃・10分間熱処理を行った後−20℃で凍結保存した。
【0051】
その後、cell lysateサンプル20μlを4−20% gradient polyacrylamide gel(第一化学薬品株式会社製)で電気泳動を行った。泳動後、PVDF membrane(Amersham pharmacia biotech社製)に3時間でトランスファーし、トランスファーしたメンブレンを、1次抗体としてphospho−c−kit(Tyr719)antibody(Cell Signaling社製)、2次抗体としてanti−rabbit IgG,HRP−linked antibody(Cell Signaling社製)を用いてイムノブロットを行った。メンブレンを洗浄後、Super Signal(PIERCE社製)で発色させた。
【0052】
その結果、図1に示す通り、SCF非存在下ではc−Kitキナーゼはリン酸化されず(一番左のレーン)、SCFの存在下で起こるc−Kitキナーゼのリン酸化は、化合物1の添加により濃度依存的に抑制された。c−Kitキナーゼ阻害剤として知られるSTI571のリン酸化阻害活性は化合物1の約1/10であった。
【0053】
[実施例3]ヌードマウスに移植したH562腫瘍増殖に対する化合物1の影響
【0054】
H526は、10% FCSを含むRPMI1640培地で5% COインキュベーター(37℃)で培養した。培養液を回収後、PBSで2回洗浄し、PBSで5.0×10cells/mlに懸濁した。この細胞懸濁液を6週齢の雌Balb/c nu/nu mice(チャールズリバー社より購入)の右脇腹皮下部に0.1mlで移植した。移植後、腫瘍体積が約150mmになった時点から、被検物質の投与を開始し、1日2回、14日間の経口投与を行った。被検物質は0.1ml/10g体重の投与量になるように、0.5%メチルセルロース(和光純薬工業株式会社製)溶液に懸濁した。
【0055】
投与期間中に、1週間に2回、腫瘍体積をキャリパーで測定した。腫瘍体積はキャリパーで腫瘍の長径と短径を測定し、1/2×長径×短径×短径で計算した。なお、実験はビークルコントロール群(溶媒投与群)を10匹、被検物質投与群を1群5匹で行った。
【0056】
その結果、図2に示す通り、化合物1は用量依存的にヌードマウスに移植したH526腫瘍の増殖を抑制した。また、c−Kitキナーゼ阻害剤として知られるSTI571は160mg/kgの投与においても殆ど抗腫瘍効果を示さなかった。
【0057】
[実施例4]ヌードマウスに移植したH562腫瘍増殖のc−Kitリン酸化に対する化合物1の影響
【0058】
5.0×10cells/mlの濃度に調製したH526の細胞懸濁液0.1mlを、6週齢の雌Balb/c nu/nu mice(チャールズリバー社より購入)の右脇腹皮下部に移植した後、腫瘍体積が300〜1000mmになった時点で、ビークルコントロール群(溶媒投与群)と被検物質投与群に分けて被検物質の投与を行った。摘出した腫瘍をcell lysate buffer(50mM HEPES(pH7.4),150mM NaCl,10% gycerol,1% Triton X−100,1.5mM MgCl,1mM EDTA,100mM NaF,1mM PMSF,10μg/ml aprotinin,50μg/ml leupeptin,1μg/ml peptatin A,1mM NaVO,25mM β−glycerophosphate,phophatase inhibitor cocktail II)に入れてホモジナイズした。遠心した後に上清をタンパク定量し、3×SDSサンプルローディングバッファーを添加してcell lysateサンプルを作った。その後、cell lysateサンプルを94℃・10分間熱処理をし、−20℃で凍結保存した。
【0059】
その後、タンパク量として30μg相当のcell lysateサンプルを4−20% gradient polyacrylamide gel(第一化学薬品株式会社製)で電気泳動を行った。泳動後、PVDF membrane(Amersham pharmacia biotech社製)に3時間でトランスファーした。リン酸化c−Kit、c−Kit及びβアクチンを定量するために、それぞれ、phospho−c−kit(Tyr719)antibody(Cell Signaling社製)、抗c−Kit抗体(Cell Signaling社製)及び抗βアクチン抗体(Sigma社製)を1次抗体として用い、anti−rabbit IgG,HRP−linked antibody(Cell Signaling社製)を2次抗体として用いてイムノブロットを行った。メンブレンを洗浄後、Super Signal(PIERCE社製)で発色させた。
【0060】
その結果、図3に示すように、化合物1は30,100mg/kg投与で腫瘍組織におけるリン酸化c−Kitの量を減少させたが、c−Kit及びβアクチンの量は変化させなかった。化合物1が30,100mg/kg投与で完全なリン酸化の抑制を示したのに対し、c−Kitキナーゼ阻害剤として知られるSTI571は160mg/kgでも部分的な抑制しか示さなかった。
【0061】
このことから、化合物1はc−Kitのin vivoでのリン酸化を抑制することが示され、化合物1はin vivoにおいてもc−Kitキナーゼの活性を抑制し、抗腫瘍活性を示していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
一般式Iで表される化合物が強いc−Kitキナーゼ阻害活性を示し、in vitro及びin vivoで、c−Kitキナーゼが活性化した癌細胞の増殖を抑制することが見出された。したがって、一般式Iで表される化合物は、c−Kitキナーゼの活性化により悪性化した癌に対する抗癌剤として利用可能であることが明らかとなった。また、一般式Iで表される化合物を有効成分として含有するc−Kitキナーゼ阻害剤は、c−Kitキナーゼが原因と考えられるMastocytosis、アレルギー、喘息などの疾患に対する治療剤としても有効であることが示唆される。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:

〔式I中、
はメチル基、2−メトキシエチル基または式II:

(式II中、Ra3はメチル基、シクロプロピルメチル基またはシアノメチル基を意味する;Ra1は水素原子、フッ素原子または水酸基を意味する;Ra2は、1−ピロリジニル基、1−ピペリジニル基、4−モルフォリニル基、ジメチルアミノ基またはジエチルアミノ基を意味する。)の何れかで表される基を意味する;
はシアノ基または式−CONHRa4(式中、Ra4は水素原子、C1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基、C1−6アルコキシ基またはC3−8シクロアルコキシ基を意味する。)で表される基を意味する;
は水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、塩素原子またはフッ素原子を意味する;
は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、シクロプロピル基、2−チアゾリル基または4−フルオロフェニル基を意味する。〕で表される化合物もしくはその塩またはそれらの水和物を有効成分とするc−Kitキナーゼ阻害剤。
【請求項2】
がメチル基である、請求項1記載のc−Kitキナーゼ阻害剤。
【請求項3】
がメチル基、エチル基またはシクロプロピル基である請求項1または2記載のc−Kitキナーゼ阻害剤。
【請求項4】
が水素原子、塩素原子またはフッ素原子である請求項1〜3いずれか1項に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤。
【請求項5】
が式−CONHRa4(式中、Ra4は水素原子またはメトキシ基を意味する。)で表される基である、請求項1〜4いずれか1項に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤。
【請求項6】
一般式Iで表される化合物が、
(1)4−(3−クロロ−4−(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミド、
(2)4−(3−クロロ−4−(エチルアミノカルボニル)アミノフェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミド、
(3)N6−メトキシ−4−(3−クロロ−4−(((シクロプロピルアミノ)カルボニル)アミノ)フェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミドおよび
(4)N6−メトキシ−4−(3−クロロ−4−(((エチルアミノ)カルボニル)アミノ)フェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミド
からなる群から選ばれるいずれか1の化合物である、請求項1〜5いずれか1項に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤を有効成分とする、c−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現する癌を治療する抗癌剤。
【請求項8】
c−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現する癌が、急性骨髄性白血病、肥満細胞性白血病、小細胞肺癌、GIST、睾丸腫瘍、卵巣癌、乳癌、脳腫瘍、神経芽細胞腫または大腸癌である請求項7に記載の抗癌剤。
【請求項9】
c−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現する癌が、急性骨髄性白血病、小細胞肺癌またはGISTである請求項7に記載の抗癌剤。
【請求項10】
患者から取り出した癌細胞がc−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現することを確認した後に投与することを特徴とする、請求項7〜9いずれか1項に記載の抗癌剤。
【請求項11】
請求項1〜6いずれか1項に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤を有効成分とする、肥満細胞症、アレルギーまたは喘息の治療剤。
【請求項12】
c−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現する癌を治療する抗癌剤の製造のための、請求項1〜6いずれか1項に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤の使用。
【請求項13】
c−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現する癌が、急性骨髄性白血病、肥満細胞性白血病、小細胞肺癌、GIST、睾丸腫瘍、卵巣癌、乳癌、脳腫瘍、神経芽細胞腫または大腸癌である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
c−Kitキナーゼを過剰発現する、または変異型c−Kitキナーゼを発現する癌が、急性骨髄性白血病、小細胞肺癌またはGISTである、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
肥満細胞症、アレルギーまたは喘息の治療剤の製造のための、請求項1〜6いずれか1項に記載のc−Kitキナーゼ阻害剤の使用。

【国際公開番号】WO2004/080462
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503539(P2005−503539)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003087
【国際出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】