説明

π型フィルタ回路および複合回路部品

【課題】チョークコイルの実装スペースを節約し、外来ノイズの影響を受けないフィルタ回路を提供する。
【解決手段】入力側電解コンデンサ12と、入力側電解コンデンサ12に巻かれた第1巻線16と、出力側電解コンデンサ14と、出力側電解コンデンサ14に巻かれた第2巻線18と、基板上で分離形成された入力側プラスパターン20と出力側プラスパターン22からなるプラスパターンと、基板10上に形成され、入力側電解コンデンサ12のプラス端子及び第1巻線16の一端を入力側プラスパターンに接続し、出力側電解コンデンサ14のプラス端子及び第2巻線18の一端を出力側プラスパターン22に接続し、第1巻線16及び第2巻線18の他端のそれぞれをランドパターン28に接続し、入力側電解コンデンサ12及び出力側電解コンデンサ14のマイナス端子をマイナスパターンに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い周波数でスイッチング動作を行うスイッチング電源に用いられるπ型フィルタ回路および複合回路部品に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電圧を得る電源装置として、入力電源を断続制御してトランスにより電圧変換し、変圧後にπ型フィルタ回路等のフィル対回路でリップル成分を除去する平滑を行い、所望の直流電圧を得るようにしている。
【0003】
π型フィルタ回路は図6のように入力側電解コンデンサ1と出力側電解コンデンサと2の間にチョークコイル3を挿入してリップル成分を除去しており、このチョークコイルに
開磁路型インダクタを用いていた場合、実装スペースが部品点数が3点必要であり、外来ノイズがチョークコイルに作用すると、それがノイズ電圧に変換されてしまい、リップル成分となってしまう。
【0004】
外来ノイズがリップル成分となることを防止するには、チョークコイルにトロイダルコイルを用いれば、外来ノイズがあってもそれがチョークコイルに誘導電圧を発生することがなく、外来ノイズがリップル成分となることがないが、トロイダルコイルは高価であり部品点数は変わらないので、実装スペースも変わらない。
【特許文献1】特開平9−027425号公報
【特許文献2】実開平10−050534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トロイダルコイルを使用せず、図7に示すようにチョークコイルを開磁路インダクタ3a、3bと2個にし、外来ノイズにより開磁路インダクタのそれぞれに誘導される電圧の極性が逆方向になるように接続することで外来ノイズによるリップルへの影響をなくすこともできるが、部品点数が4個になり経済性が悪くなると共に、実装スペースは大きくなってしまう。
【0006】
したがって、本発明は、経済性を向上させかつ実装スペースを少なくするπ型フィルタ回路をを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために本発明は、入力側電解コンデンサ12と、入力側電解コンデンサ12に巻かれた第1巻線16と、出力側電解コンデンサ14と、出力側電解コンデンサ14に巻かれた第2巻線18と、基板上で分離形成された入力側プラスパターン20と出力側プラスパターン22からなるプラスパターン24と、基板10上に形成され、プラスパターン24に所定距離離して並べて配置されたマイナスパターン26と、基板10上に形成されマイナスパターン26を挟んでプラスパターン24の分離部分と同じ位置に配置されたランドパターン28とを有し、入力側電解コンデンサ12のプラス端子及び第1巻線16の一端を入力側プラスパターン20aに接続し、出力側電解コンデンサ14のプラス端子及び第2巻線18の一端を出力側プラスパターン22続し、第1巻線16及び第2巻線18の他端のそれぞれをランドパターン28に接続し、入力側電解コンデンサ12及び出力側電解コンデンサ14のマイナス端子をマイナスパターン26に接続したことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、入力側電解コンデンサ12と、入力側電解コンデンサ12に巻かれた第1巻線16と、出力側電解コンデンサ14と、出力側電解コンデンサ14に巻かれた第2巻線18と、基板10上で分離形成された入力側マイナスパターン20aと出力側マイナスパターン22aからなるマイナスパターン24aと、基板10上に形成され、マイナスパターン24aに所定距離離して並べて配置されたプラスパターン26aと、基板10上に形成されプラスパターン26aを挟んでマイナスパターン24の分離部分と同じ位置に配置されたランドパターン28とを有し、入力側電解コンデンサ12のマイナス端子及び第1巻線16の一端を入力側マイナスパターン20aに接続し、出力側電解コンデンサ14のマイナス端子及び第2巻線18の一端を出力側マイナスパターン22aに接続し、第1巻線16及び第2巻線18の他端のそれぞれをランドパターン28に接続し、入力側電解コンデンサ12及び出力側電解コンデンサ14のプラス端子を前記プラスパターンに接続したことを特徴とする。
【0009】
また、第1巻線16と第2巻線18は磁束の方向が相互に逆方向としたことを特徴とする。
【0010】
また、第1巻線16と第2巻線18は、入力側電解コンデンサ12と出力側電解コンデンサ14に対してそれぞれ同方向に巻かれており、第1巻線16と第2巻線18の巻き始め端子を分離されたプラスパターン20,22又はマイナスパターン20a,22aに各々接続すると共に、第1巻線16と第2巻線18の巻き終わり端子をランドパターン28に接続して、第1巻線16と第2巻線18の電流方向を逆方向としたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、円筒形を有し円筒端部の一方にプラス端子とマイナス端子を設けた電解コンデンサ12,14の外周に巻線16,18を巻き、前記巻線16,18の一対の端子をプラス端子及びマイナス端子と同方向に引き出したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従えば、入力側電解コンデンサおよび出力側電解コンデンサにチョークコイルを巻いていており、その巻き方向を同一とし、巻き始め端子を共通接続しているので、チョークコイルが直列接続となりかつそれぞれのチョークコイルに発生するノイズ電圧は逆方向となって総合的にはノイズ電圧が打ち消され、リップルに影響を与えない。またチョークコイルの取付けスペースが不要となって実装スペースを小さくできると共に、チョークコイルは巻線だけで良いことから特別な実装部品が必要なくなるので、経済性が良くなると言う効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明のπ型フィルタ回路の基板実装を示す斜視図であり、実装部分を示している。
【0014】
基板10のランド10a、10bに円筒形の入力側電解コンデンサ12が実装され、ランド10c、10dに円筒形の出力側電解コンデンサ14が実装され、入力側電解コンデンサ12の外周に第1巻線16が、出力側電解コンデンサ14に第2巻線18が巻かれ、これら巻線の一対の端子が電解コンデンサ12,14のプラス端子及びマイナス端子と同一方向に引き出されている。なお、本発明の基板10は単独で存在するものではなく、他の回路と部品が共通に実装されている基板のうち、図の部分のみを取り出した断面を示している。
【0015】
入力側電解コンデンサ12のプラス端子までは基板の一方の端部に設けられたランド10eから入力側プラスパターン20が配線され、出力側電解コンデンサ14のプラス端子までは基板の他方の端部に設けられたランド10fから出力側プラスパターン22が配線され、入力側プラスパターン20と出力側プラスパターン22はプラスパターン24を構成し、それぞれの直線部分は同一直線上にならべられ、かつ分離されて配線されている。
【0016】
プラスパターン24に対して平行配置され、入力側電解コンデンサ12と出力側電解コンデンサ14のマイナス端子の双方を含む位置に、基板10の一端に設けられたランド10gから基板10の他端に設けられたランド10hへ、マイナスパターン26が配線されている。更にマイナスパターン26を挟んでプラスパターンの分離部分である入力プラスパターン20,出力プラスパターン22のランド10b、10cと同じ位置に配置されたランド10i,10jを含むようにランドパターン28が配線されている。
【0017】
入力側プラスパターン20は入力側電解コンデンサ12のプラス端子が接続されているランド10aから直交する方向にランド10kまで延びており、また出力側プラスパターン22は出力側電解コンデンサ14のプラス端子が接続されているランド10cから直交する方向にランド10mまで延びている。入力側電解コンデンサ12に巻かれた第1巻線16の巻き始め端子16aはランドパターン28のランド10iに接続され、巻き終わり端子12bは入力側プラスパターン20のランド10kに接続されている。同様に、出力側電解コンデンサ14に巻かれた第2巻線の18巻き始め端子18aはランドパターン28のランド10jに接続され、巻き終わり端子18bは出力側プラスパターン22のランド10mに接続されている。
【0018】
図2はこのように構成されたフィルタ回路の回路図であり、入力側電解コンデンサ12,出力側電解コンデンサ14に巻かれた第1巻線16と第2巻線18はそれぞれ同方向に巻かれており、第1巻線16と第2巻線18の巻き始め端子をランドパターン28に接続し、第1巻線16と第2巻線18の巻き終わり端子を分離されたプラスパターン20,22に接続している。
【0019】
このように構成された回路は外来ノイズNによって第1巻線16及び第2巻線18に逆方向のノイズ電圧vが誘導され、入力側プラスパターン20と出力側プラスパターン22の間では相殺されてゼロになるため、外来ノイズが出力に与える影響を除去でき、外来ノイズがリップルとして影響することはない。
【0020】
すなわち、第1巻線16および第2巻線18を上側から見ると図3のようになっており、巻き始め端子16a及び18aが共通接続されていることから、両コイルは直列接続されており、外来ノイズがあると同じ電流が双方のコイルに流れるが、第1巻線16に巻き終わり端子16bから巻き始め端子16aの方向に電流が流れると第2巻線は巻き始め端子18aから巻き終わり端子18b方向にノイズ電流が流れることになり、第1巻線16、第2巻線18は同一方向に巻かれているので、磁束の向きは図3の方向となって、各コイルに誘導される電圧は逆方向になりるため、ランド10k、10m間ではノイズ電圧は相殺され発生しない。
【0021】
またこのように構成することによって第1巻線16,18からなるチョークコイルは電解コンデンサ12,14に巻かれることによって基板10上にスペースを取る必要がないから実装スペースは実質ゼロにでき、小型化が実現できる。なお、このような構造のチョークコイルは磁性体に巻かれていないのでインダクタンスは小さいが、スイッチング周波数が十分高い周波数になる場合は実用上必要十分なインダクタンスが確保でき、フィルタ回路として実用上十分の性能を発揮する。
【0022】
図4は他の実施例を示す斜視図であり、基板10のランド10a、10bに円筒形の入力側電解コンデンサ12が実装され、ランド10c、10dに円筒形の出力側電解コンデンサ14が実装され、入力側電解コンデンサ12の外周に第1巻線16が、出力側電解コンデンサ14に第2巻線18を巻かれ、これら巻線の一対の端子が電解コンデンサ12,14のプラス端子及びマイナス端子と同一方向に引き出されている。
【0023】
入力側電解コンデンサ12のマイナス端子までは基板の一方の端部に設けられたランド10eから入力側マイナスパターン20aが配線され、出力側電解コンデンサ14のマイナス端子までは基板の他方の端部に設けられたランド10fから出力側プラスパターン22aが配線され、入力側マイナスパターン20aと出力側マイナスパターン22aはマイナスパターン24aを構成し、それぞれの直線部分は同一直線上にならべられ、かつ分離されて配線されている。
【0024】
マイナスパターン24aに対して平行配置され、入力側電解コンデンサ12と出力側電解コンデンサ14のプラス端子の双方を含む位置に、基板10の一端に設けられたランド10gから基板10の他端に設けられたランド10hへ、プラスパターン26aが配線されている。更にプラスパターン26aを挟んでマイナスパターンの分離部分である入力マイナスパターン20a,出力マイナスパターン22aのランド10b、10cと同じ位置に配置されたランド10i,10jを含むようにランドパターン28が配線されている。
【0025】
入力側マイナスパターン20aは入力側電解コンデンサ12のマイナス端子が接続されているランド10aから直交する方向にランド10kまで延びており、また出力側マイナスパターン22aは出力側電解コンデンサ14のマイナス端子が接続されているランド10cから直交する方向にランド10mまで延びている。入力側電解コンデンサ12に巻かれた第1巻線16の巻き始め端子16aはランドパターン28のランド10iに接続され、巻き終わり端子12bは入力側マイナスパターン20のランド10kに接続されている。同様に、出力側電解コンデンサ14に巻かれた第2巻線の18巻き始め端子18aはランドパターン28のランド10jに接続され、巻き終わり端子18bは出力側マイナスパターン22のランド10mに接続されている。
【0026】
図6はこのように構成されたフィルタ回路の回路図であり、入力側電解コンデンサ12
,出力側電解コンデンサ14に巻かれた第1巻線16と第2巻線18はそれぞれ同方向に巻かれており、第1巻線16と第2巻線18の巻き始め端子をランドパターン28に接続し、第1巻線16と第2巻線18の巻き終わり端子を分離されたマイナスパターン20a,22aに接続している。
【0027】
このように構成された回路は外来ノイズNによって第1巻線16及び第2巻線18に逆方向のノイズ電圧vが誘導され、入力側マイナスパターン20aと出力側マイナスパターン22aの間では相殺されてゼロになるため、外来ノイズが出力に与える影響を除去でき、外来ノイズがリップルとして影響することはない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施態様を示す斜視図
【図2】図1の回路構成を示す回路図
【図3】第1巻線、第2巻線の接続状態を示す平面図
【図4】本発明の他の実施態様を示す斜視図
【図5】図4の回路構成を示す回路図
【図6】従来のフィルタ回路を示す回路図
【図7】従来の他のフィルタ回路を示す回路図
【符号の説明】
【0029】
10: 基板
12: 入力側電解コンデンサ
12a:巻き始め端子
12b:巻き終わり端子
14: 出力側電解コンデンサ
16: 第1巻線
18: 第2巻線
20: 入力側プラスパターン
22: 出力側プラスパターン
24: プラスパターン
26: マイナスパターン
28: ランドパターン
20a:入力側マイナスパターン
22a:出力側マイナスパターン
24a:マイナスパターン
26a:プラスパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側電解コンデンサと、
前記入力側電解コンデンサに巻かれた第1巻線と、
出力側電解コンデンサと、
前記出力側電解コンデンサに巻かれた第2巻線と、
基板上で分離形成された入力側プラスパターンと出力側プラスパターンからなるプラスパターンと
前記基板上に形成され、前記プラスパターンに所定距離離して並べて配置されたマイナスパターンと、
前記基板上に形成され前記マイナスパターンを挟んで前記プラスパターンの分離部分と同じ位置に配置されたランドパターンとを有し、
前記入力側電解コンデンサのプラス端子及び第1巻線の一端を前記入力側プラスパターンに接続し、
前記出力側電解コンデンサのプラス端子及び第2巻線の一端を前記出力側プラスパターンに接続し、
前記第1巻線及び第2巻線の他端のそれぞれを前記ランドパターンに接続し、
前記入力側電解コンデンサ及び出力側電解コンデンサのマイナス端子を前記マイナスパターンに接続したことを特徴とするπ型フィルタ回路。
【請求項2】
入力側電解コンデンサと、
前記入力側電解コンデンサに巻かれた第1巻線と、
出力側電解コンデンサと、
前記出力側電解コンデンサに巻かれた第2巻線と、
基板上で分離形成された入力側マイナスパターンと出力側マイナスパターンからなるマイナスパターンと
前記基板上に形成され、前記マイナスパターンに所定距離離して並べて配置されたプラスパターンと、
前記基板上に形成され前記プラスパターンを挟んで前記マイナスパターンの分離部分と同じ位置に配置されたランドパターンとを有し、
前記入力側電解コンデンサのマイナス端子及び第1巻線の一端を前記入力側マイナスパターンに接続し、
前記出力側電解コンデンサのマイナス端子及び第2巻線の一端を前記出力側マイナスパターンに接続し、
前記第1巻線及び第2巻線の他端のそれぞれを前記ランドパターンに接続し、
前記入力側電解コンデンサ及び出力側電解コンデンサのプラス端子を前記プラスパターンに接続したことを特徴とするπ型フィルタ回路。
【請求項3】
請求項1又は2記載のπ型フィルタに於いて、前記第1巻線と第2巻線は磁束の方向が相互に逆方向としたことを特徴とするπ型フィルタ回路。
【請求項4】
請求項1又は2記載のπ型フィルタに於いて、前記第1巻線と第2巻線は、前記入力側電解コンデンサと出力側電解コンデンサに対してそれぞれ同方向に巻かれており、
前記第1巻線と第2巻線の巻き始め端子を分離されたプラスパターン又はマイナスパターンに各々接続すると共に、前記第1巻線と第2巻線の巻き終わり端子を前記ランドパターンに接続して、前記第1巻線と第2巻線の電流方向を逆方向としたことを特徴とするπ型フィルタ回路。
【請求項5】
円筒形を有し円筒端部の一方にプラス端子とマイナス端子を設けた電解コンデンサの外周に巻線を巻き、前記巻線の一対の端子を前記プラス端子及びマイナス端子と同方向に引き出したことを特徴とする複合回路部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−148519(P2006−148519A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335503(P2004−335503)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】