説明

ころ軸受

【課題】従来の加工技術でクラウニングを容易に施すことができ、従来のパーシャルクラウニングより広範囲の荷重に対して耐荷重性を有して軸受の長寿命化を図ることができるころ軸受を提供する。
【解決手段】円筒ころ13は、軸方向中央部に軸方向に沿って形成される平坦面13Aと、この平坦面13Aの軸方向外端部から軸方向外側に向かって形成される第1クラウニング面13Bと、この第1クラウニング面13Bの軸方向外端部から軸方向外側に向かって形成される第2クラウニング面13Cと、を有し、これらクラウニング面13B,13Cの曲率半径を2段階に変化させるので、面形状を対数クラウニングの形状に近づけることでき、転動体としての転がり接触の機能(高耐荷重性)と加工性とを同時に高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ころを転動体とするころ軸受に関し、特に、転動体にクラウニングが施されるころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
ころを転動体とするころ軸受は転がり接触を利用して、その機能が発揮される。この転がり接触では、この転がり接触を行う部分、例えば、内輪の内輪軌道面の両端部で過大接触圧力(以下、「エッジロード」ともいう)が発生することがあり、この過大なエッジロードが短寿命化を招く要因であることが知られる。
【0003】
そこで、一般的に、ころ軸受ではこの転がり接触部分の両端部を、このエッジロードから徐々に逃がすため、転動体にクラウニングを施すことが行われる。このクラウニングとして、転動体の軸方向に対し中央部に平坦部を形成すると共にこの両端部に単一曲率半径のクラウニング面をそれぞれ1つずつ設ける、所謂、パーシャルクラウニングが使用されてきた。
【0004】
しかし、このパーシャルクラウニングでは、ころ軸受が過大荷重の条件下で使用される場合には、クラウニング面と、転動体の両端部に位置する面取部と、の境界部分で過大なエッジロードが発生してしまい早期損傷に繋がる可能性があった。
【0005】
また、これを抑制すべく、例えば、クラウニング面の曲率半径を小さく、即ち、転動体の両端部に行くほどクラウニング量を大きくなるようにすると、次は転動体の平坦部とクラウニング面との境界で接触面圧が極大となり、依然として短寿命化を抑制することが難しいままであった。
【0006】
そこで、このパーシャルクラウニングの課題を解決する、理想的な転動体の形状としては対数クラウニング等がよく知られるようになった(例えば、非特許文献1及び特許文献1参照)。なお、特許文献1は非特許文献1を更に発展させた技術である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】P. M. Johns and R. Gohar, “Roller bearing under radial and eccentric loads”, TRIBOLOGY International, vol. 14, 1981, pp131-pp136.
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−65574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、本発明者らはこの上記特許文献1に基づきころ軸受を製作して評価試験を行ったところ、本発明者らの鋭意検討の結果、このころ軸受に関する3つの更なる改良点を見出すことができた。
【0010】
第1の改良点として、対数クラウニング面を施す転動体等の量産化を想定した場合、加工上その量産化が困難であることが挙げられる。転動体に平坦部がないために加工時に転動体の姿勢を安定させて保持することが難しく、この結果、加工精度や転動体径の測定精度を的確に把握及び維持管理することが難しい。また、曲率半径が連続的に変化する形状であるため、加工誤差の評価、特に転動体の対称性を評価するのが難しい。
【0011】
さらに、第2の改良点として、従来の単一曲率半径のパーシャルクラウニングにおいてクラウニング端部でのクラウニング量の変化が急激であるため仕上げ加工が困難であり、クラウニング端部付近の面粗さが中央部の面粗さよりも劣る傾向になることが挙げられる。
【0012】
そして、第3の改良点として、例えば、内外輪に鍔部が設けられる場合に、転動体の面取部の軸方向寸法が、鍔部の軸方向内方の端面と逃げ溝の軸方向内方の縁との間の軸方向寸法よりも大きくなる傾向がある。転動体の面取部の軸方向寸法は製造又は取り扱い時の打痕又は応力集中が発生しない程度で充分である一方、逃げ溝は軌道面又は鍔部の仕上げ研削、超仕上げ、又はポリッシングを一様にするため、ある程度の大きさが必要であることが知られる。このため、設計時においては加工上の制約を考慮する必要がある。
【0013】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の加工技術でクラウニングを容易に施すことができ、従来のパーシャルクラウニングより広範囲の荷重に対して耐荷重性を有して軸受の長寿命化を図ることができるころ軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)内輪軌道面を有する内輪と、外輪軌道面を有する外輪と、内輪軌道面と外輪軌道面との間に転動自在に配設される複数の転動体と、を備えるころ軸受において、転動体は、軸方向中央部に軸方向に沿って形成される平坦面と、平坦面の軸方向外端部から軸方向外側に向かって形成される第1クラウニング面と、第1クラウニング面の軸方向外端部から軸方向外側に向かって形成される第2クラウニング面と、を有し、第1クラウニング面の軸方向に沿う曲率半径は、第2クラウニング面の軸方向に沿う曲率半径よりも大きく、且つ転動体の中心位置を径方向に沿って通る中心線からの軸方向2点位置を位置xとするとき、転動体のクラウニング量と内輪軌道面のクラウニング量との総和δが以下の式を満足することを特徴とするころ軸受。
【数1】

【0015】
(2)さらに総和δが以下の式を満足することを特徴とする(1)に記載のころ軸受。
【0016】
【数2】

【0017】
(3)内輪軌道面の軸方向の少なくとも一端側に鍔部が設けられると共に、内輪軌道面と鍔部との間に周方向に亘って逃げ溝がそれぞれ形成され、転動体の軸方向縁部に形成される面取部の軸方向寸法は、鍔部の軸方向内方の端面と逃げ溝の軸方向内方の縁との間の軸方向寸法よりも小さいことを特徴とする(1)又は(2)に記載のころ軸受。
【0018】
(4)平坦面の面粗さは、第1クラウニング面及び第2クラウニング面の面粗さよりも小さいことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載のころ軸受。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、転動体は、転動体は、軸方向中央部に軸方向に沿って形成される平坦面と、平坦面の軸方向外端部から軸方向外側に向かって形成される第1クラウニング面と、第1クラウニング面の軸方向外端部から軸方向外側に向かって形成される第2クラウニング面と、を有する。即ち、転動体は平坦面、第1及び第2クラウニング面を有し、これらクラウニング面の曲率半径を2段階に変化させるので、面形状を対数クラウニングの形状に近づけることでき、転動体としての転がり接触の機能(高耐荷重性)と加工性とを同時に高めることができる。
【0020】
さらに、本発明によれば、クラウニング面の曲率半径を2段階に変化させる構成であるため、このクラウニング面の形状評価を軸方向2点位置でのクラウニング量を用いて管理すればよい。これにより、転動体の加工精度を効率的に管理することができる。
【0021】
さらに、本発明によれば、転動体のクラウニング量と内輪軌道面のクラウニング量との総和δが上記1式を満足するので、従来のパーシャルクラウニングより広範囲の荷重に対して耐荷重性を有して軸受の長寿命化を図ることができる。特に、この総和δが上記2−1及び2−2式を満足するように接触形状が規定される場合には耐荷重性を更に高めて一層の長寿命化を図ることができる。
【0022】
そして、本発明では、第2クラウニング面の両端部が、対数クラウニングの軸方向に沿った線より凹側、即ち、内輪軌道面より遠いところに位置することになる。このため、例えば、転動体の面取部の軸方向寸法が、鍔部の軸方向内方の端面と逃げ溝の軸方向内方の縁との間の軸方向寸法よりも小さい、或いは平坦面の面粗さが第1クラウニング面及び第2クラウニング面の面粗さよりも小さい場合等の加工上の制約により、エッジロードが発生しやすい状況下であっても軸受の高耐荷重性を損なうことがない。換言すれば、本発明によれば、これらエッジロードが発生しやすい状況下において、転がり接触の機能低下の抑制効果が顕著に発揮されることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るころ軸受の要部断面図である。
【図2】本発明に係る、無負荷状態のころ軸受のころの模式図である。
【図3】図1に示すA領域の要部拡大図である。
【図4】本発明に係るクラウニングを施した場合における、ころ軸方向位置と接触荷重との関係を示す説明図である。
【図5】パーシャルクラウニングを施した場合における、ころ軸方向位置と接触荷重との関係を示す説明図である。
【図6】対数クラウニングを施した場合における、ころ軸方向位置と接触荷重との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るころ軸受の各実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
(第1実施形態)
本実施形態の円筒ころ軸受(ころ軸受)10は、図1に示すように、外周面に内輪軌道面11Aを有する内輪11と、内周面に外輪軌道面12Aを有する外輪12と、この内輪軌道面11Aとこの外輪軌道面12Aとの間に転動自在に配設される複数の円筒ころ(転動体)13と、この複数の円筒ころ13を周方向に略等間隔に保持する保持器14と、を備える。また、この内輪11の軸方向の一端側及びこの外輪12の軸方向両端側には、1つの内輪鍔部(鍔部)21と、一対の外輪鍔部22,22がそれぞれ設けられる。そして、図1及び図3に示すように、内輪軌道面11A及び外輪軌道面12Aと鍔部21,22との間のそれぞれには、逃げ溝11B,12Bが周方向に亘って形成される。
【0026】
円筒ころ13は、図2に示すように、軸方向中央部に軸方向に沿って形成される平坦面13Aと、この平坦面13Aの軸方向外端部から軸方向外側に向かって形成される第1クラウニング面13Bと、この第1クラウニング面13Bの軸方向外端部から軸方向外側に向かって形成される第2クラウニング面13Cと、を有する。また、円筒ころ13の軸方向縁部には面取部13Dが形成される。また、転動体13の平坦面13Aと第1クラウニング面13Bとの境界部分は仕上げ加工により滑らかな曲面に加工される。このことより、この境界での面圧上昇を抑制することができる。
【0027】
また、図3に示すように、面取部13Dの軸方向寸法d1は、内輪鍔部21の軸方向内方の端面と内輪11側の逃げ溝11Bの軸方向内方の縁との間の軸方向寸法d2よりも小さくなっている。
【0028】
さらに、対数クラウニングの形状を近似するように、第1クラウニング面13Bの軸方向に沿う曲率半径R1は、第2クラウニング面13Cの軸方向に沿う曲率半径R2よりも大きくなるように設定される。また、第1クラウニング面13Bと第2クラウニング面13Cとの境界での、軸方向に沿う接線それぞれが一致するように、第1クラウニング面13Bの曲率半径R1の中心位置P1、及び第2クラウニング面13Cの曲率半径R2の中心位置P2がそれぞれ設定される。具体的には、図2に示すように、第1クラウニング面13Bの曲率半径R1の中心位置P1は、円筒ころ13の軸方向中心を通る径方向中心線上に設けられる。第2クラウニング面13Cの曲率半径R2の中心位置P2は、第1クラウニング面13Bの曲率半径R1の中心位置P1と、第1クラウニング面13Bと第2クラウニング面13Cとの境界となる点(交点)P3と、を結ぶ線上に設けられる。
【0029】
そして、平坦面13Aの面粗さは、第1クラウニング面13B及び第2クラウニング面13Cの面粗さよりも小さくなっている。
【0030】
ここで、円筒ころ13と内輪軌道面11Aとの転がり接触において、円筒ころ13のクラウニング量と内輪軌道面11Aのクラウニング量との総和δが次の3式を満足するように接触形状が規定される。なお、3式は、軸受荷重を0.5C(C:軸受の基本動定格荷重を示す単位)と仮定して導き出される式である。そして、この値「0.5C」は好適な荷重設定範囲の中央値として上記特許文献1で見出された値である。また、円筒ころ13の中央部付近のクラウニング面13B,13Cは対数クラウニングの軸方向に沿う線よりも小さく設けられる。このことにより寿命上のバランスをとることができる。
【0031】
【数3】

【0032】
以上説明したように、本実施形態の円筒ころ軸受10によれば、円筒ころ13は、軸方向中央部に軸方向に沿って形成される平坦面13Aと、この平坦面13Aの軸方向外端部から軸方向外側に向かって形成される第1クラウニング面13Bと、この第1クラウニング面13Bの軸方向外端部から軸方向外側に向かって形成される第2クラウニング面13Cと、を有する。即ち、円筒ころ13は平坦面13A、第1及び第2クラウニング面13B,13Cを有し、これらクラウニング面13B,13Cの曲率半径を2段階に変化させるので、面形状を対数クラウニングの形状に近づけることでき、転動体としての転がり接触の機能(高耐荷重性)と加工性とを同時に高めることができる。
【0033】
また、本実施形態の円筒ころ軸受10によれば、クラウニング面13B,13Cの曲率半径を2段階に変化させる構成であるため、このクラウニング面13B,13Cの形状評価を軸方向2点位置でのクラウニング量を用いて管理すればよい。これにより、円筒ころ13の加工精度を効率的に管理することができる。
【0034】
さらに、本実施形態の円筒ころ軸受10によれば、円筒ころ13のクラウニング量と内輪軌道面11Aのクラウニング量との総和δが上記3式を満足するので、従来のパーシャルクラウニングより広範囲の荷重に対して耐荷重性を有して軸受10の長寿命化を図ることができる。
【0035】
そして、本実施形態では、第2クラウニング面13Cの両端部が、対数クラウニングの軸方向に沿った線より凹側、即ち内輪軌道面11Aより遠いところに位置することになる。このため、円筒ころ13の面取部13Dの軸方向寸法d1が、鍔部21の軸方向内方の端面と逃げ溝11Bの軸方向内方の縁との間の軸方向寸法d2よりも小さい、或いは平坦面13Aの面粗さが第1クラウニング面13B及び第2クラウニング面13Cの面粗さよりも小さいことにより、エッジロードが発生しやすい状況下であっても、軸受10の高耐荷重性を損なうことがない。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るころ軸受の第2実施形態について説明する。
【0037】
本実施形態では、円筒ころ(13)の面取部(13D)の軸方向寸法(d1)が、内輪鍔部(21)の軸方向内方の端面と内輪(11)側の逃げ溝(11B)の軸方向内方の縁との間の軸方向寸法(d2)よりも小さくなる傾向があることを考慮して、第2クラウニング面(13C)の両端部(x=0.5Leの位置)でのクラウニング量の総和を対数クラウニングよりも大きくなるように設定する。そして、円筒ころ(13)及び内輪軌道面(11A)のクラウニング量の総和は、x=0.425Leの位置で軸受荷重を0.3Cと仮定して設定すると同時に、x=0.5Leの位置で軸受荷重を0.6Cと仮定して設定する。
【0038】
また、特許文献1で見出されたクラウニング量の総和の許容範囲が0.2C{特許文献1では0.4C〜0.6Cの範囲が好適とされるため0.2C(=0.6C−0.4C)を採用}であることを考慮すると、x=0.425Leの位置で軸受荷重0.2C〜0.4C、そしてx=0.5Leの位置で軸受荷重0.5C〜0.7Cに相当するように設定する。
【0039】
このように、本実施形態では、円筒ころ(13)と内輪軌道面(11A)との転がり接触において、円筒ころ(13)のクラウニング量と内輪軌道面(11A)のクラウニング量との総和δが次の4−1式及び4−2式を満足するように接触形状が規定される。
【0040】
【数4】

【0041】
本実施形態によれば、前述の総和δが4−1式及び4−2式の式を満足するように接触形状が規定されるので、上記第1実施形態と比較して耐荷重性を更に高めて一層の長寿命化を図ることができる。
その他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態と同様である。
【0042】
(第3実施形態)
次に、本発明に係るころ軸受の第3実施形態について説明する。
【0043】
本実施形態では、クラウニング量の総和δを、円筒ころ(13)のクラウニング量と外輪軌道面(12A)のクラウニング量との総和として規定する。即ち、上記第1及び第2実施形態ではクラウニング量の総和δを、円筒ころ(13)のクラウニング量と内輪軌道面(11A)のクラウニング量との総和とするが、本実施形態では、内輪軌道面(11A)に代えて外輪軌道面(12A)のクラウニング量を用いる。この場合、等価弾性率E´及び等価半径Rを次の5式及び6式を用いて算出し直す。この算出結果を、上記第1実施形態に示した3式、又は上記第2実施形態に示した4−1式及び4−2式に適宜代入し、円筒ころ(13)及び外輪軌道輪(12A)の接触形状をそれぞれ規定する。
その他の構成及び作用効果については、上記第1又は第2実施形態と同様である。
【0044】
【数5】

【0045】
【数6】

【0046】
なお、本発明は上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、本発明は、上記円筒ころ軸受の他に、線接触タイプのころ軸受である円すいころ軸受、棒状ころ軸受、ニードルころ軸受などにも適用することができる。
【0047】
さらに、本発明のころ軸受が適用される好適な使用箇所としては、風力発電機の増速機に使用される円筒ころ軸受が挙げられる。例えば、発電容量1〜2MWの風力発電機に使用される増速機として、1段の遊星歯車と2段の斜歯歯車の合計3段で増速するものが知られている。このうち、遊星歯車のピニオン部又は斜歯歯車の最終段(高速軸)は最も計算寿命が短くなる傾向にある部位である。特に、遊星歯車のピニオン部は半径方向の空間的制約があり、軸受サイズの割に大きい負荷を支持する必要がある。このため、設計上、このピニオン部は計算寿命又は接触面圧で厳しい部位であるが、本発明のころ軸受をこのピニオン部に適用することにより計算寿命の低下又は接触面圧の増加を抑制することができる。このように、本発明は、厳しい使用条件下で優れた効果を得ることができる。なお、上記のような部位には、円筒ころ軸受だけではなく円すいころ軸受も使用されることがある。従って、本発明を円すいころ軸受に適用した場合も、この部位での寿命延長、耐荷重性向上に優れた効果を発揮する。
【実施例】
【0048】
次に、表1、表2、及び図4〜図6を参照して、本発明に係るころ軸受の実施例について説明する。ここでは、本発明例と、単一曲率半径のクラウニングを設ける従来のパーシャルクラウニング(以下、「P/C」とも言う)と、対数クラウニング(以下、「L/C」とも言う)と、を比較評価するため、これらの計算寿命及び接触面圧の計算をそれぞれ行った。
【0049】
計算寿命及び接触面圧の計算を行うための、それぞれの諸元を表1に示す。また、従来のパーシャルクラウニングにおいて内輪に超過大なエッジロード(5.48GPa)が発生する荷重条件下で比較計算を行った。この計算により得られた結果について、本発明例の結果を図4に、P/Cの結果を図5に、L/Cの結果を図6に、そしてこれら結果を整理したものを表2に示す。
【0050】
なお、計算は、ISO281に規定される手法に基づき、転動体の軌道面のクラウニングの形状を考慮して寿命計算を行う手法を用いた。ただし、この計算手法では転動体の軌道面幅を十分に長いと仮定しているが、実際には、転動体の面取部の軸方向寸法が、内輪鍔部の軸方向内方の端面と内輪側の逃げ溝の軸方向内方の縁との間の軸方向寸法よりも小さくなる傾向がある。このため、内輪にさらに大きなエッジロードが発生する場合が想定されるが、本発明例ではx=0.5Leの位置で対数クラウニングよりクラウニング量が大きくなるため、この影響を抑制することができる。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
表2に示すように、本発明例及び対数クラウニングは同様に内輪エッジロードが発生しているものの、その程度はパーシャルクラウニングよりも小さく、4.54〜4.65GPa程度である。計算寿命も比較してもパーシャルクラウニングの110hに対し、本発明例は159hと大幅な長寿命化を図ることができる。また、対数クラウニングよりも長寿命になっていることがわかる。
【符号の説明】
【0054】
10 円筒ころ軸受(ころ軸受)
11 内輪
11A 内輪軌道面
11B 逃げ溝
12 外輪
12A 外輪軌道面
12B 逃げ溝
13 円筒ころ(転動体)
13A 平坦面
13B 第1クラウニング面
13C 第2クラウニング面
13D 面取部
21 内輪鍔部(鍔部)
22 外輪鍔部
R1 第1クラウニング面の軸方向に沿う曲率半径
R2 第2クラウニング面の軸方向に沿う曲率半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪軌道面を有する内輪と、外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配設される複数の転動体と、を備えるころ軸受において、
前記転動体は、軸方向中央部に軸方向に沿って形成される平坦面と、前記平坦面の軸方向外端部から軸方向外側に向かって形成される第1クラウニング面と、前記第1クラウニング面の軸方向外端部から軸方向外側に向かって形成される第2クラウニング面と、を有し、
前記第1クラウニング面の軸方向に沿う曲率半径は、前記第2クラウニング面の軸方向に沿う曲率半径よりも大きく、且つ
前記転動体の中心位置を径方向に沿って通る中心線からの軸方向2点位置を位置xとするとき、前記転動体のクラウニング量と前記内輪軌道面のクラウニング量との総和δが以下の式を満足することを特徴とするころ軸受。
【数1】

【請求項2】
さらに前記総和δが以下の式を満足することを特徴とする請求項1に記載のころ軸受。
【数2】

【請求項3】
前記内輪軌道面の軸方向の少なくとも一端側に鍔部が設けられると共に、前記内輪軌道面と前記鍔部との間に周方向に亘って逃げ溝がそれぞれ形成され、
前記転動体の軸方向縁部に形成される面取部の軸方向寸法は、前記鍔部の軸方向内方の端面と前記逃げ溝の軸方向内方の縁との間の軸方向寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のころ軸受。
【請求項4】
前記平坦面の面粗さは、前記第1クラウニング面及び前記第2クラウニング面の面粗さよりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のころ軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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