説明

せん断加工方法

【課題】 パンチとそのパンチとの間でせん断力を発生させる受けダイによる金属板のせん断加工において、だれや破断面の少ない平滑なせん断面を高い寸法精度で打ち抜きくこと。
【解決手段】 シェービングダイ7と、当該シェービングダイ7のせん断側面14に沿って摺動するシェービングパンチ6を備え、シェービングパンチ6における先端面15とせん断側面16との交差する角部に面取り部18を形成し、金属板打ち抜き時には面取り部18によって荷重を分散させて、材料の延性を高めた状態でせん断加工する。この結果、材料の延性が高い状態で打ち抜かれるので、だれや破断の発生が防がれて平滑なせん断面で形成された打ち抜き面が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料からなる板材から製品を打ち抜くせん断加工方法に関し、製品を打ち抜く際に発生するだれや破断面を極力低減したせん断加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
せん断側面と先端面を備えたパンチと、そのパンチとの間でせん断力を発生させる受けダイとを用いて、被加工材を所定の寸法に打ち抜くせん断加工方法が知られている。この通常のせん断加工方法では、たとえばパンチが下降しダイ上の金属材料に接触し加圧が進むと、まず、被加工材は曲げを受けて変形して打ち抜き面にだれが形成され、次にはせん断力が働きパンチが材料にくいこむことによりせん断が進んで打ち抜き面に平滑なせん断面が形成される。しかし、その途中からはパンチとダイスとの間にクリアランスがあるために、さらに加圧が進み荷重が増大すると、パンチとダイスのエッジに挟まれた間で材料が一気に破断して、打ち抜き面に破断面が形成されやすい。そのため、通常のパンチとダイによるせん断加工方法で打ち抜かれた製品の打ち抜き面は、通常その1/2以上が、だれや表面の粗い破断面で形成されてしまう。そのため、通常のせん断加工方法においては、打ち抜き面に「だれ、かえりが大きい」「破断面が多く、せん断面が少ない」「切断面が材料面に対して垂直でない」などの不具合があり、多くの場合二次加工が必要になっていた。
【0003】
このようなせん断加工方法で打ち抜かれた被加工材の打ち抜き面に対して、だれや破断面が少ないかまたは生じないような精密な打ち抜きのためのせん断加工方法としては、一般にはシェービング加工やファインブランキングなどの方法が提案されている。
【0004】
たとえばシェービング加工は、周知されるように必要な寸法に対して適当なシェービング取り代を残した寸法形状であらかじめ打ち抜き(荒抜き工程)を行い、次にその取り代の部分だけをシェービング工程で精度よく打ち抜く方法である。このシェービング加工においては、加工の難度または加工の精度によっては、シェービングの回数は1乃至数回実施して、だれや破断面の少ない平滑なせん断面の多い打ち抜き面が得られるようにしている。
【0005】
さらに、このシェービング加工において、製品の歩留まりを向上させるとともに寸法精度を高くするために、被加工材であるブランクの打ち抜き工程とシェービングの工程を分離せずに一つのプレス装置で加工する方法が、特許文献1で提案されている。
【0006】
上記特許文献1で提案されている加工方法について説明する。まず、製品材料を、プレス装置のプレス上型パンチと下型パンチで挟み込んだ状態で、プレスに設置されたプレスダイ内を通過させて、前記製品材料からシェービング取り代を残したブランクを打ち抜く。そして、前記ブランクを前記プレス上型パンチと下型パンチとの間に挟んだ状態で、前記ブランクを前記製品材料の打ち抜き穴に埋め戻して前記製品材料に保持させる。次に、前記製品材料に埋め戻した前記ブランクを次のシェービングプレス装置の下型に設置された上部ダイ上に送り込み、前記ブランクを前記シェービングプレス装置の上型パンチと下型パンチで挟んだ状態で、下型に設置された上部ダイ内を通過させて製品材料から前記ブランクを離脱させる。続いて前記ブランクを前記上型パンチと下型パンチで挟んだ状態で前記上部ダイと同心に設置された前記シェービング装置の下部ダイ内を通過させて、シェービング加工する。このように、ブランクの打ち抜きとシェービングの工程を分離せずに、一つのプレス装置でせん断加工する特許文献1に開示された方法においては、打ち抜きとシェービング工程を分離して、別々のプレス装置で加工する方法に比して、打ち抜き後の製品の整列や、打ち傷、変形など保管、移動時の製品劣化の問題は少なくなる。また、シェービング工程へ投入する際の位置決めも正確に行われて、取り代が均一となって歩留りも向上するものである。
【0007】
次にファインブランキングでは、これも周知されるようにナイフエッジ状の溝をもつ板押さえと逆押さえで、金属材料を押圧保持するとともに、クリアランスを極端に小さくした高精度なパンチとダイにより、材料の内部に高い圧縮応力を生じさせるようにして、金属材料の延性を高めてせん断加工するものである。このように金属材料の延性を高めることにより、打ち抜き時のわれの発生を防ぐようにした加工方法では、打ち抜かれた金属板の打ち抜き面は、だれや破断面の少なく平滑なせん断面が多い美しい打ち抜き面が得られる。
【特許文献1】特開2000−51964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記特許文献1に開示された加工法方法においては、打ち抜かれた被加工材の打ち抜き面には、だれや破断面が少なくなるとはいえまだ残っている場合が多く、製品の仕上がり品質が十分ではないという問題があった。
【0009】
したがってこのだれや破断面を減らして平滑なせん断面を増やすためには、シェービング加工の回数を多くしたり、金型をより精緻なものにしたりする必要があり生産コストのアップになるという課題があったしまた、このブランクの打ち抜きとシェービングの工程を分離せずに、一つのプレス装置として構成するので装置の一体化にともなって、構造も複雑になり大型化して高価な設備となる課題もあった。
【0010】
またファインブランキングにおいては、せん断部分における金属材料の延性を高めて、材料の流動制御を行って打ち抜く方法であるので、だれや破断面の少ない平滑なせん断面の多い美しい打ち抜き面が得られるが、ナイフエッジ状の溝を設けるため材料の歩留まりが低下する課題があったしまた、パンチやダイは高い精度を要求されナイフエッジ状の溝など特殊な構造とあわせて高価な金型となる課題もあった。
【0011】
さらにこのファインブランキングでは、パンチやダイの先端面とせん断側面とが交差する角部は、集中荷重をうけやすいエッジになっているので、この部位の型破損を生じやすく耐久性にも課題もあった。
【0012】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、パンチとそのパンチとの間でせん断力を発生させる受けダイとで、被加工材を所定の形状に打ち抜くせん断加工方法において、打ち抜き面に、だれや破断面が少なく平滑なせん断面が多くまた、寸法精度が高い打ち抜き製品を、低い生産コストで製作することを技術課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、ダイと前記ダイのダイ側せん断側面に沿って摺動するパンチ側せん断側面を有するパンチとにより被加工材を挟み込んで、該被加工材を所定の形状に打ち抜くせん断加工方法において、前記パンチは、該パンチの先端面と、前記パンチ側せん断側面とが交差する角部に面取り部が形成されているものであることを特徴とするせん断加工方法としたことである。
【0014】
また上記技術課題を解決するにあたり請求項2のように、前記パンチに形成された前記面取り部は、前記パンチの摺動方向に対し15度〜25度の角度で傾斜するテーパ面であることとが好ましい。
【0015】
また上記技術課題を解決するにあたり請求項3のように、前記パンチに形成された前記面取り部は、前記パンチの先端面と前記パンチ側せん断側面との間に形成される円弧面であることが好ましい。
【0016】
なお、本明細書において、「パンチ側せん断側面とダイ側せん断側面とが摺動する」とは、通常の摺動の意味に加えて、パンチ側せん断側面とダイ側せん断側面とが微小なクリアランスを保って互いに相対移動する場合を含むものとする。微小なクリアランスとは、被加工材の板厚をtとしたとき、0.005t程度のクリアランスのことをいうものとする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のせん断加工方法によれば、パンチの先端面とパンチ側せん断側面との交差する角部には、パンチの摺動方向に対して斜面状に形成したテーパ面や、円弧面などに代表される面取り部が形成されているので、パンチとダイとにより被加工材が挟み込まれ、パンチのパンチ側せん断側面とダイのダイ側せん断側面とが摺動して、被加工材の打ち抜きが進む際に、前記面取り部から前記ダイ側せん断側面に向かう圧縮力被加工材に加わるため、被加工材の打ち抜き部分に荷重が集中することがなく、被加工材内部に高い圧縮応力が生じ被加工材の延性を高かめた状態で打ち抜きが行われる。そのため、だれや破断面が少なく、平滑なせん断面の多い垂直な打ち抜き面を得ることができる。
【0018】
また本発明のせん断加工方法によれば、ファインブランキングのように複雑で精度の高い金型を必要とせずに一般的なプレス技術の延長上で実施することが出来るので、ファインブランキングに比して設備費も安価でかつ、打ち抜き工程のスピードも速くすることが出来て生産性も向上する。
【0019】
また本発明のせん断加工方法によれば、パンチの先端面とパンチ側せん断側面とが交差する角部には、面取り部が形成されているので、せん断加工時におけるパンチやダイなどの金型への、過度の集中荷重や衝撃荷重が緩和されて、パンチやダイなど型破損に対する耐久性が向上する。
【0020】
このように、本発明は、パンチの先端面とパンチ側せん断側面とが交差する角部に面取り部を形成し、これにより、被加工材の内部に圧縮応力を発生させることにより、被加工材の延性を向上させ、その状態で打ち抜き加工を行うことにより打ち抜き面における破断面の形成を抑制することを特徴とし、ファインブランキングのように複雑な装置を使用しなくても、寸法精度の高い打ち抜き面を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明に係わる実施の形態を、図面に基づいて説明する
図1(a)(b)(c)は、本発明の第1実施形態におけるパンチとそのパンチとの間でせん断力を発生させる受けダイとで構成されるせん断加工方法の主要な工程と構成を示す説明図で、(a)荒抜き工程、(b)シェービング工程、(c)抜き落としの各工程を示す。
【0022】
図1にもとづき、まずせん断加工方法の各工程を説明する。
【0023】
本発明の第1実施形態である、パンチとそのパンチとの間でせん断力を発生させる受けダイとで被加工材を所定の形状に精密に打ち抜くせん断加工方法の工程としては、まず(a)荒抜き工程後で被加工材が荒抜きされ、前記荒抜きされた被加工材が、仕上げ工程である(b)シェービング工程を経て、最後に(c)抜き落とし工程によって、被加工材から所定の寸法に打ち抜かれた製品がぬきおとされて完了する。
【0024】
(a)の荒抜き工程は、シェービングの取り代を残した被加工材4を金属材料3から打ち抜く工程で、1は荒抜きパンチ、2は荒抜きダイ、3は金属材料を示し、前記荒抜きパンチ1と前記荒抜きダイ2で挟まれた前記金属材料3を、前記荒抜きパンチ1と前記荒抜きダイ2とによって、シェービングの取り代をもつような被加工材4として打ち抜く工程である。
【0025】
すなわち被加工材4は、図示しないがエジェクターなどの板押さえと前記荒抜きダイ2によって押圧保持されており、荒抜きパンチ1が荒抜きダイ2に向かって下降して、荒抜きされたシェービングの取り代をもった被加工材4が打ち抜かれる。
【0026】
このとき前記荒抜きパンチ1は、シェービングの取り代としては、通常約0.1mm程度を見越して位置決めされている。
【0027】
なお5はシェービング用の被加工材4を荒抜きした時の抜きかすである。
【0028】
(b)シェービング工程は、シェービングの取り代をもった被加工材4をシェービング加工する工程で、6はシェービングパンチ、7はシェービングダイを示し、前記シェービングパンチ6と前記シェービングダイ7で挟まれたシェービングの取り代をもった被加工材4を、前記シェービングパンチ6と前記シェービングダイ7とによって打ち抜く工程である。
【0029】
すなわちシェービングの取り代をもった被加工材4は、図示しないがエジェクターなどの板押さえと前記シェービングダイ7によって押圧保持されて前記シェービングダイ7上に戴置されており、前記シェービングパンチ6がシェービングダイ7にむかって下降して、シェービングの取り代をもった被加工材4が打ち抜かれる
なお8は、被加工材4に対するシェービングの取り代を示めすが、シェービング工程で打ち抜かれた後では、抜きかすとなるものである。
【0030】
このシェービング工程は、シェービングの取り代をもった被加工材4に対して、材料の加工難度や加工精度に応じて、所定の寸法形状をもった製品になるように1乃至数回程度実施される。
【0031】
(c)抜き落とし工程は、仕上げのシェービングの工程を終えて所定の寸法形状をもった製品を抜き落とす工程で、9は仕上げのシェービングパンチ、10は仕上げのシェービングダイを示し、前記仕上げのシェービングパンチ9と前記仕上げのシェービングダイ10で挟まれた、仕上げのシェービングの取り代をもって前の(b)工程でうちぬかれた被加工材4を、前記仕上げのシェービングパンチ9と前記仕上げのシェービングダイ10とによって、所定の寸法に打ち抜いて、製品11として抜き落とす工程である。
【0032】
なお12はシェービングの仕上げの取り代をもった被加工材4を、上記の仕上げシェービングした時の抜きかすである。
【0033】
上記のような、工程を経て金属材料から製品を打ち抜きせん断加工する装置において、各パンチの先端面とせん断側面とが交差する角部に面取り部が形成されている。
【0034】
図2にもとづき、前記面取り部を説明する。
【0035】
図2は本発明の1実施形態である図1の(b)シェービング工程での装置主要部の構成を示す縦断面図で、シェービングパンチ6とシェービングダイ7による打ち抜き機構については、パンチとの間でせん断力を発生させる受けダイとで被加工材を所定の寸法に打ち抜く通常のせん断加工方法と同じように、適当な与圧機構20を備えたエジェクター17に押圧されて、シェービングダイ7の上面の先端面13に戴置されたシェービングの取り代8を持った被加工材4を、前記シェービングパンチ6と前記シェービングダイ7とではさみこみ、前記取り代8を打ち抜くようになっている。
【0036】
なお前記取りしろ8は、図2では、シェービングパンチ6が下降してシェービング工程が進んだ状態にあり、抜きかすとして抜き落とされる直前の状態を示している。
【0037】
すなわち前記取り代8は、シェービングによる打ち抜きが終わった後では抜きかすとして示される。
【0038】
前記シェービングダイ7は、その上面に先端面13と側面にダイ側せん断側面14がそれぞれ形成されており、前記シェービングダイ7には、前記シェービングの取リ代8をもった被加工材4がその取り代8を、前記せん断側面14から突出させるように、エジェクター17に押圧されて戴置されている。
【0039】
前記シェービングパンチ6は、前記シェービングダイ7に対して、矢印Aの方向に往復移動するようになっており、前記シェービングパンチ6の下面に先端面15と側面にパンチ側せん断側面16が形成されるとともに、前記先端面15と前記パンチ側せん断側面16とが交差する角部には、面取り部18が形成されている。ここで、ダイ側せん断側面14とパンチ側せん断側面16とは上下移動方向に摺動するようになっている。
【0040】
前記面取り部18は、図2では、前記シェービングパンチ6の上下移動方向に対する面取部の傾斜面の角度αを、ほぼ45度程度とした面取り部18が形成されている。
【0041】
また前記面取り部18と前記シェービングパンチ6の先端面15との交差する角部19は、前記シェービングの取り代8をもった被加工材4の取り代8より突出するような大きさにすることがこのましい。
【0042】
以上のような前記シェービングダイ7と前記シェービングパンチ6で構成されるシェービング工程の加工装置において、前記シェービングダイ7上面の先端面13に、シェービングの取リ代をもった被加工材料4を、シェービング取り代8を前記せん断側面14から突出させた状態でエジェクター17によって押圧するように戴置し、上方から前記シェービングパンチ6を下降させて、前記シェービングの取り代8をもった被加工材4を打ち抜き、その取り代8の部位を抜きかすとして切り落とす。
【0043】
このシェービングの取り代8を持った被加工材4を打ち抜く工程において、前記シェービングパンチ6の先端面15と前記パンチ側せん断側面16との交差する角部には面取り部18が形成されているので、被加工材4を打ち抜いていくとシェービングパンチ6が下降して、シェービングダイ7の先端面13に戴置された金属材料部に接触し加圧が進すむが、加圧が進んでもシェービングパンチ6とシェービングダイ7で挟まれた被加工材に発生する荷重は、従来のパンチの先端面とせん断側面との交差する角部がエッジになっている時のように集中することなく分散されるので、金属材料で形成された被加工材は一気に破断することなく内部の圧縮応力が高まって延性が増大していく。
【0044】
このようにシェービングパンチ6の先端面15と前記せん断側面16との交差する角部に面取り部18があると、打ち抜き部の金属材料内部の圧縮応力が高まって延性が増大した状態、すなわち塑性的に変形しやすい状態で金属材料からなる被加工材は打ち抜かれるので、われや破断面の発生を低減することが出来て、平滑なせん断面をもった打ち抜き面がえられる。
【0045】
このシェービング工程は、加工の難度や要求される加工精度に応じて1〜数回程度おこなわれて、最後の仕上げのシェービング工程を完了したあとダイから被加工材が抜き落とされる。
【0046】
なお金属材料は、一般に材料に圧力を加えると延性が高まり、これは塑性工学では静水圧効果といわれている。
【0047】
すなわち本発明の第1の実施形態では、シェービングパンチ6の先端面15と前記パンチ側せん断側面16との交差する角部に面取り部18が設けることにより加工力を分散させて、金属材料が弾性限度を超えた力で破壊されることなく引き延ばされるという塑性的に変形する延性効果を最大限に利用して打ち抜きせん断加工を行うものである。
【0048】
これに対し、従来の先端面とせん断側面との交差する角部に面取り部がなくエッジになったパンチとダイとを用いるせん断加工方法においては、パンチが下降しダイ上に戴置された製品材料に接触し加圧されると、パンチの先端面とせん断側面との角部はエッジになっているので、被加工材の打ち抜き面に加工力が集中して弾性限度を超えた大きな荷重がかかり、パンチとダイとの間にクリアランスがあるために、この時パンチとダイスのエッジに挟まれた間で材料が一気に破断し、パンチが製品材料を通り抜けない内に打ち抜きが完了する。そのため打ち抜いた金属板の打ち抜き面は、だれや破断面が多く、平滑なせん断面がすくないものとなっていた。
【0049】
図4は、従来のパンチの先端面とパンチ側せん断側面との交差する角部に面取り部がなくエッジになっている状態で、金属材料から被加工材4を打ち抜いた時の打ち抜き面の一部を示す斜視図で、22はだれ、23はせん断面、24は破断面をそれぞれ示すが、通常このような打ち抜きでは、図4で示すように打ち抜き面の1/2以上にだれと表面の荒い破断面が形成される。
【0050】
一方、図5(a)(b)は、本発明の実施形態における荒抜き工程後の打ち抜き面の断面図と、シェービング工程後の打ち抜き面の断面図を示す。
【0051】
図5(a)は荒抜き工程後の打ち抜き面の断面図で、4は仕上げのためのシェービングの取り代:Lを残した被加工材、25はだれ、26はせん断面、27は破断面である。
【0052】
なお前記シェービングの取り代:Lは、通常約0.1mm前後に設定されている。
【0053】
またこの荒抜き工程においても、本発明第1実施形態が適用されて、荒抜きパンチ1の先端面とせん断側面との交差する角部に、面取り部を形成することにより、上記図2のシェービング工程で説明したように、荒抜きパンチ1と荒抜きダイ2で挟まれた打ち抜き部への荷重が分散されて内部の圧縮応力が高まり、延性が増大した状態で金属材料を打ち抜くことができるので、荒抜きパンチ1の先端面とせん断側面との交差する角部に面取り部をエッジの状態で打ち抜いた時に比べて、だれや破断面のすくなく平滑なせん断面が多い打ち抜き面がえられることは言うまでもない。
【0054】
図5(b)はシェービング工程後の打ち抜き面の断面図で、図5(a)の荒抜き工程後の打ち抜き面の断面図に対して、仕上げのための取り代:Lの部位を、上記のように先端面15とせん断側面16との交差する角部に面取り部18を備えた、シェービングパンチ6とシェービングダイ7で構成されたせん断加工方法で、打ち抜いた後の製品11の打ち抜き面の断面を示すが、だれや破断面のない平滑で、製品11の板面に垂直なせん断面28が形成されている。
【0055】
なお上記シェービングパンチ6の先端面15とせん断側面16との交差する角部に形成した面取り部18の形状については、本発明の第1実施形態では図2で示すように、前記シェービングパンチ6の上下移動方向に対しほぼ45度の角度αを有する傾斜面とした面取り部18を形成したもので説明したが、金属材料の種類や硬さなどによっては、シェービングパンチ6の上下移動方向に対するこの面取り部18の傾斜面の角度αを15度〜25度にした変形実施形態でもよい。
【0056】
この変形実施形態の場合にも、シェービングパンチ6の先端面15とパンチ側せん断側面16との交差する角部には、面取り部18が形成されていることになり、打ち抜き時の加圧に伴うシェービングパンチ6とシェービングダイ7で挟まれた金属材料部に発生する荷重は集中することなく分散され、第1の実施形態の時と同じように、延性が増大した状態で金属材料は打ち抜かれるので、われや破断の発生を低減することが出来、平滑なせん断面をもった打ち抜き面がえられる。
【0057】
とくにシェービングパンチ6の上下移動方向に対しする面取り部18の傾斜面の角度αを、15度〜25度程度に小さくして、打ち抜くので、角度αが大きい時にくらべて、取り代8が下方に、よりずれやすい状態でせん断加工が進むので、一層だれや破断面が少なくなる。
【0058】
図3は本発明の第2の実施形態を示し、シェービングパンチの先端面とせん断側面とが交差する角部に形成した前記面取り部が、円弧面であるシェービング工程の装置主要部構成を示す縦断面図である。
【0059】
前記の第1の実施形態と等価な部位には同一符号を付してある。
【0060】
この第2の実施形態では、シェービングパンチ6とそのシェービングパンチ6との間でせん断力を発生させるシェービングダイ7とで板材を打ち抜く基本構成は、第1の実施形態と同じであるが、シェービングパンチ6の先端面15とせん断側面16との交差する角部に形成した面取り部については、円弧状に形成した円弧面18’が形成されている。
【0061】
この第2の実施形態おいても、シェービングパンチ6が下降して、シェービングダイ7上にエジェクター7で押圧されて戴置された金属材料に、シェービングパンチ6が接触し加圧が進んでも、シェービングパンチ6の先端面15とせん断側面16との交差する角部には円弧面18’が形成されているので、シェービングパンチ6とシェービングダイ7で挟まれた被加工材に発生する荷重は、第1実施形態の時と同じように分散されて、延性が高い状態で打ち抜くことができるので、われや破断の発生を低減することが出来て破断面のすくない平滑なせん断面が多い打ち抜き面が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の1実施形態におけるパンチとそのパンチとの間でせん断力を発生させる受けダイとで構成されるせん断加工方法の主要な工程と構成を示す説明図。
【図2】図1の(b)シェービング工程での装置主要部構成を示す縦断面図。
【図3】本発明の2実施形態におけるシェービングパンチの先端面とせん断側面とが交差する角部に形成した面取り部が、円弧面であるシェービング工程の装置主要部構成を示す縦断面図。
【図4】従来のパンチの先端面とせん断側面との交差する角部に面取り部がない状態で、金属板を打ち抜いた時の打ち抜き面の一部を示す斜視図。
【図5】本発明の1実施形態における荒抜き工程後の打ち抜き面の断面図と、シェービング工程後の打ち抜き面の断面図。
【符号の説明】
【0063】
4・・・被加工材
6・・・シェービングパンチ
7・・・シェービングダイ
8・・・取りしろ(抜きかす)
13・・シェービングダイの先端面
14・・シェービングダイのせん断側面
15・・シェービングパンチの先端面
16・・シェービングパンチのせん断面
17・・エジェクター
18・・面取り部
19・・面取り部とシェービングパンチ先端面とが交差する角部
20・・与圧機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイと該ダイのダイ側せん断側面に沿って摺動するパンチ側せん断側面を有するパンチとにより被加工材を挟み込んで、該被加工材を所定の形状に打ち抜くせん断加工方法において、前記パンチは、該パンチの先端面と、前記パンチ側せん断側面とが交差する角部に面取り部が形成されているものであることを特徴とするせん断加工方法。
【請求項2】
請求項1において、前記パンチに形成された前記面取り部は、前記パンチの摺動方向に対し15度〜25度の角度で傾斜するテーパ面であることを特徴とするせん断加工方法。
【請求項3】
請求項1において、前記パンチに形成された前記面取り部は、前記パンチの先端面と前記パンチ側せん断側面との間に形成される円弧面であることを特徴とするせん断加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−7268(P2006−7268A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187348(P2004−187348)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】