説明

ねじのバリ取り装置

【課題】 位相割り出しや刃物送り量等で複雑な電気的制御を必要とせず、ワークの中間部に位置する雄ねじ部や軸端に位置する雄ねじ部にも対応でき、通常の工具が使用可能なねじのバリ取り装置を提供する。
【解決手段】 ワークWの雄ねじ部W1へ追加工をしたときに発生するバリを除去する装置であって、上記ワークWの同軸方向に移動して上記ワークWを支持固定する芯押軸12と、上記芯押軸12に回転可能、且つ軸方向移動可能に挿着された可動部材15と、上記ワークWの雄ねじ部W1に噛み合う工具20を一端に取り付けられ、他端を上記可動部材15に揺動支持、且つプランジャ18によりフローティング支持されたオルダム機構部19と、上記オルダム機構部19を装着した可動部材15を回転且つ軸方向へ可動せしめる駆動手段としての駆動モータ33,加工位置合わせ用シリンダ38,送り用シリンダ39,ストローク吸収部40とを備え、上記駆動手段の動作によって上記可動部材15を駆動することにより、上記工具20を上記ワークWの雄ねじ部W1に噛み合わせて往復動させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ねじのバリ取り装置に関し、更に詳しくは、ワークの雄ねじ部に追加工を行った際に発生するバリを除去するねじのバリ取り装置に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、ワークの雄ねじ部に、ネジロック用止め溝加工等の追加工を行った際に発生するバリを除去するねじのバリ取り装置は、バリを除去するダイスの芯とワークの芯を常に適切に合わせる芯合わせ機構や、ダイスとワークの雄ねじ部との位相を合わせるための位相決め装置や、ダイスの送り量をワークと同期させるためのマスターねじ機構等を電子制御した構成を備えたものがある。また、他のバリ取り装置の一例として、特開昭64−5722号公報に示されたものがある。これは、図5に示すように、ねじN1,N2を形成したバリ付きのワークWの両端を支持回転機構Aに支持させ、駆動機構BによりワークWを低速回転して、上記ねじN1,N2に対し、支持部材Cを移動機構Dにより近接させ、保持部材Eを介し分割型ダイスFを上記ねじN1,N2に押圧接触させれば、保持部材Eが支軸Gを中心に揺動しつつ分割型ダイスFはワークWと自動的に調芯され、上記分割型ダイスFの図示しない刃部が上記ねじN1,N2と噛合い、ワークWの回転につれて上記分割型ダイスFが軸線方向に移動して上記ねじN1,N2のバリ取りが行われるようにしたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記した従来のねじのバリ取り装置の前者のものにあっては、芯合わせ機構や位相決め装置やマスターねじ機構等を備えなければならないため、位相割りだしや刃物送り量などを調節する複雑な電気制御をする高額な制御機器を導入しなければならなかった。そのため、設備費にコストが掛かるという問題があった。また、後者のものにあっては、分割ダイスを保持する保持部材を左右動自在とし、かつ、支軸Gを中心にダイス保持部材Eをばね押圧力により押圧搖動可能としたメカニカルな構成で、芯出し位相決めを行うようにしたため、高価な制御装置は不要となるが、分割ダイスを単にワークのねじ部に押し当てながら芯出し位相合わせを行わせるだけのため、大きなバリが付着しているワーク等の場合では位相ずれによる工場廃棄品が発生しやすいという問題もある。更に、ワークを他種類のワークに交換して、その対象ワークのネジ諸元が変化した場合、分割ダイスの段取り替えが必要になり、ワークの芯と分割ダイスの芯とを芯合わせするために分割ダイスの高精度化と日常の芯だし作業が必要となり、作業前準備段階で手間と時間が掛かってしまう。一方、ワークの中間部にある雄ねじ部と、端部にある雄ねじ部との両方に対応するバリ取り装置でなければ、作業上不便である。
【0004】そこで、本発明の目的は、上記従来のねじのバリ取り装置における問題に鑑み、ワークの雄ねじ部へ追加工をしたときに発生するバリを除去するねじのバリ取り装置において、位相割り出しや刃物送り量等で複雑な電気的制御を必要とせず、更に、ワークの中間部に位置する雄ねじ部や軸端に位置する雄ねじ部にも対応できて、しかも通常の工具(丸ダイス等)が使用可能なバリ取り装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ワークの雄ねじ部へ追加工をしたときに発生するバリを除去する装置であって、上記ワークの同軸方向に移動して上記ワークを支持固定する芯押軸と、上記芯押軸に回転可能、且つ軸方向進退可能に挿着された可動部材と、上記ワークの雄ねじ部に噛み合う工具を一端に取り付けられ、他端を上記可動部材に揺動支持、且つプランジャによりフローティング支持されたオルダム機構部と、上記オルダム機構部を装着した可動部材を回転且つ軸方向へ可動せしめる駆動手段とを備え、上記駆動手段の駆動によって上記可動部材を動作させることにより、上記工具を上記ワークの雄ねじ部に噛み合わせて往復動させることを特徴としている。
【0006】請求項2記載の発明は、上記駆動手段は、上記可動部材を軸方向へ進退可能に取り付けた加工位置合わせ用シリンダと、上記可動部材を更に軸方向へ進退させて、上記工具をワークの雄ねじ部に付勢させる送り用シリンダと、上記送り用シリンダと上記可動部材との間に介在して、上記工具がワークの雄ねじ部に噛み合うまでの位相合わせと加工中の送りストロークを吸収するコイルスプリング、又はエアーを有するストローク吸収部と、上記可動部材に対し、中間歯車を介して回転可能に設けた駆動モータとを備え、上記駆動手段の駆動によって、上記可動部材を軸方向いずれかに進退移動させ、且つ正逆回転方向のいずれかに回転させることを特徴としている。
【0007】請求項3記載の発明は、請求項2記載のねじのバリ取り装置において、上記加工位置合わせシリンダと上記送りシリンダとを同軸上に配置すると共に一体化させたことを特徴としている。
【0008】請求項4記載の発明は、請求項2記載のねじのバリ取り装置において、上記駆動モータに、回転駆動中の異常トルクを検知するトルク検知手段を取り付けて、異常トルクが生じたとき加工を中止することを特徴としている。
【0009】請求項5記載の発明は、請求項1記載のねじのバリ取り装置において、上記芯押軸は、一端に上記ワークの軸端に係合するセンタを固着すると共に、上記装置の機台上に設けられたレール上の可動台に設けられ、上記機台上に移動自在にボルト締着されたワーク支持シリンダによりレールの長手方向に沿って往復動可能に配置されていることを特徴としている。
【0010】
【作用】請求項1記載の発明では、ワークの雄ねじ部に工具が軽く接触すると、この工具を取り付けてある工具保持部がプランジャを介してオルダム機構部に揺動自在に取り付けられているので、当接初期段階では、工具とワークの芯が不一致でも、工具が揺動してワークの芯と一致することができると共に、複雑な機構を用いることなくワークの雄ねじ部に工具の刃部を噛み合わせることができる。また、これにより、通常の精度を有する丸ダイスを工具として使用可能とすることができる。
【0011】請求項2記載の発明では、可動部材の軸方向の移動と回転駆動とを分離し、且つワークとの回転位相が合うまで上記ストローク吸収部が送り量を吸収するので、何ら複雑な機構を用いることなく、工具とワークの雄ねじ部との位相合わせが可能となる。
【0012】請求項3記載の発明では、可動部材を往復動させる構造が簡略化されて、低コストに構成することができる。
【0013】請求項4記載の発明では、ワーク加工時にて、二重ねじ切りや二重食いつき等の異常が発生しそうな場合、駆動モータに組み込んだトルク検出器の値が上昇して異常発生を予想することができるので、駆動モータを停止させてワーク加工を直ちに中止することができる。
【0014】請求項5記載の発明では、ワークの全長が変化しても芯押軸を備えた可動台を移動することができるので、長さの異なるワークにも簡単に対処できて加工することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図示実施の形態により本発明の詳細を説明する。図1は、本発明実施の形態による、ねじのバリ取り装置を設置した一例を示す全体構成の側面図である。同図において、ねじのバリ取り装置1は、基礎床上に形成されている機台2に固定され、ワークWの軸心と同軸で、且つワークWの一端を係合支持するドライビングセンタ3を備えた支持台1Aと、機台2に設けられたガイドレール4の長手方向に進退移動する装置本体1Bと、この装置本体1Bを、ワークWの他端に付勢して係合支持させる伸縮自在なロッド5を有するワーク支持シリンダ6を備えた支持台1Cと、ワークWを保持して昇降するワーク脱着用リフタ1Dとを備えている。上記支持台1Cは、機台2に設けられたねじ溝7に沿って移動可能であり、このねじ溝7に係合するボルト8を締着させることにより、任意のねじ溝7の箇所で支持台1Cを機台2にボルト締着して固定することができる。
【0016】装置本体1Bの基部には、機台2に設けられたガイドレール4の長手方向に沿って進退移動可能な可動台9が摺動部10を介して配置されており、この可動台9の上面には、枠体をなすフレーム部材で構成されたフレーム11が設けられている。このフレーム11の一側面外側には、支持台1Cに取り付けられているワーク支持シリンダ6のロッド5がボルト固定されており、前記ロッド5の伸縮作動により上記可動台9がカイドレール4に沿って進退移動可能となっている。上記のフレーム11の一側面内側には、芯押軸12の一端がボルト締着されており、この芯押軸12の他端には、ワークWと同軸係合するセンタ13が取り付けられている。そして、芯押軸12の外周面には、ボールブッシュ14を介して摺動自在な筒体の可動部材15が挿着されている。この可動部材15の一端には、芯押軸12と摺動可能なオルダム保持部材16がボルト固定されて一体化されており、このオルダム保持部材16には、ボール支持機構17により径方向に搖動自在、且つ複数個のプランジャ18によりフローティング支持されたオルダム機構部19が取り付けてある。
【0017】図2に示すように、上記オルダム機構部19は、ワークWの雄ねじ部W1に対し、後述する工具20の径方向をワークWに追従させて合わせるものであって、オルダム保持部材16にボルト固定されているオルダム入力部材21,22と、このオルダム入力部材22の内周側に設けられたオルダム係合突部23との間に位置させたボール24a,24bによるボール支持機構17により揺動自在で、且つ複数個のプランジャ18によりフローティング支持されたオルダム出力部材25と、このオルダム出力部材25に、工具保持部材26をボルト固定した工具保持台27を取り付けて一体化したものとからなるもので、工具保持部材26の一側面に設けられた嵌合部26aには、ワークWの雄ねじ部W1に噛み合う工具20が装着される。このバリ取り用の工具20には、通常の丸ダイスが用いられ、上記嵌合部26aの形状もそれに適した形状をなしている。
【0018】図3に示すように、工具保持部材26の外周面には、工具20を固着させる複数のダイスセットビス28が設けられ、その先端が工具20の図示しない嵌合孔に嵌合して工具20を位置固定すると共に、工具保持部材26の端面には、取り付けた工具20が回転駆動中に工具保持部材26から浮き上がらないようにするための工具浮き上がり防止プレート29がボルト締着されている。
【0019】また、図4に示すように、オルダム入力部材21の外周面には、プランジャ18により工具20をフローティング支持するフローティング量を許容内とするための調整ねじ30がプランジャ18に近接して設けられている。
【0020】また、上記の可動部材15の他端の外周面には、後述する受動節としてのカムフォロア31と摺動係合する被動節としての環状の凹溝32と、駆動手段としての駆動モータ33の駆動軸34にボルト固定され、軸方向に歯面が延設形成されている中間歯車35と噛み合う従動歯車36とが設けられている。上記駆動モータ33は、フレーム11外側の下端位置に取り付けられており、上記駆動モータ33の他端には、トルク検知手段としてのトルクリミッタ37を取り付けて、上記トルク検知手段が駆動モータ33の異常トルクを検知したときに、駆動モータ33を直ちに停止させて、バリ取り加工を中止するようにする。また、上記駆動モータ33には、所定位置まで工具20が前進したら、駆動モータ33を一旦停止させ、それから逆回転始動させることにより可動部材15を逆回転駆動させるようにした図示しないリミットスイッチ、或いは、近接スイッチが装着されている。
【0021】そして、装置本体1Bには、上記駆動モータ33の以外の駆動手段として、上記可動部材15を軸方向へ進退移動させて上記工具20をワークWの雄ねじ部W1に合わせる加工位置合わせ用シリンダ38と、上記工具20をワークWの雄ねじ部W1に付勢させる送り用シリンダ39と、この送り用シリンダ39と上記可動部材15との間に介在して、上記工具20がワークWの雄ねじ部W1に噛み合うまでの位相合わせと加工中の送りストロークを吸収するコイルスプリング、又はエアーを有するストローク吸収部40とを備えるようにする。
【0022】上記加工位置合わせ用シリンダ38と送り用シリンダ39とは、同軸体をなすように一体化されてフレーム11の上方位置に配置されており、2ピストン2作動をなすように設定されている。一方の送り用シリンダ39のロッド41は、固定具42を介してフレーム11上部に固定され、他方の加工位置合わせ用シリンダ38のロッド43の一端は、ストローク吸収部40の軸体44と連結されている。
【0023】上記ストローク吸収部40の内部の軸体44には、ボールブッシュ45を介して搖動自在に配置された連結ブラケット46が設けられ、この連結ブラケット46を左右両側からスプリング47にて支持させると共に、下方に連結ブラケット46を延設してその下端に、フレーム11側に延設された軸方向を有する送りロッド48が設けられている。この送りロッド48は、ボールブッシュ49を介してフレーム11を摺動可能に貫通しており、その端部に駆動節としてのカムフォロア31が下方に向かって設けられており、これが、上記可動部材15の外周面に設けた環状の被動節としての凹溝32に摺動係合している。
【0024】なお、上記芯押軸12の軸心長手方向には、ワークの切粉をブローするためのエアー穴49が穿設されており、上記芯押軸12の一端に装着されているセンタ13の細孔13aからワークW側へ加工中のみ図示しないエアー供給用のコンプレッサによりエアーを吹き出すようになっている。
【0025】本実施形態は、以上のような構成であり、このねじのバリ取り装置1の作用について説明する。先ず、ワークWの全長に対応できる適宜位置に支持台1Cを位置させて機台2にボルト固定しておく。ワーク脱着用リフタ1Dによって保持搬送されてきたワークWは、昇降移動されて、支持台1Aに取り付けられているドライビングセンタ3と装置本体1Bの芯押軸12の一端に取り付けられているセンタ13との同軸上に配置される。その状態で、上記支持台1Cのワーク支持シリンダ6によってロッド5を伸長作動させて、装置本体1Bの可動台9をワークW側に付勢させる。この可動台9のフレーム11に配置されている芯押軸12のセンタ13と図中左端の支持台1Aのドライビングセンタ3とにより、同軸上にワークWが支持固定されると、ロッド5の伸長作動は停止される。その際、工具20を取り付けた可動部材15は、加工位置合わせ用シリンダ38の伸長により図中右方向後退端に位置させてある。
【0026】ワークWの軸端に雄ねじ部W1が位置している場合は、上記の状態で、駆動モータ33を回転駆動させて可動部材15を回転させると共に、加工位置合わせ用シリンダ38を短縮作動させて、可動部材15の一端に装着されている工具20を雄ねじ部W1に合わせるようにする。次いで、上記加工位置合わせ用シリンダ38と一体化している送り用シリンダ39を作動して図中左方向に軸移動し、それに伴って、この加工位置合わせ用シリンダ38のロッド43と連接しているストローク吸収部40と送りロッド48とを介して、送りロッド48の先端下向きに位置しているカム31が可動部材15の凹溝32を図中左方向移動することにより、工具20を回転させながら雄ねじ部W1に押し当てる。
【0027】ワークWの雄ねじ部W1に工具20が軽く接触すると、この工具20と雄ねじ部W1の回転位相が合うまでの回動部材15のストローク変量がストローク吸収部40で吸収されると共に、上記回動部材15のオルダム保持部材16に搖動自在、且つプランジャ18にフローティング支持されているオルダム機構部19にボルト締着されている工具20の芯とワークWの芯とが一致するまで、上記オルダム機構部19が変位して、工具20の芯とワークWの芯とを一致させようとする。そして、その工具20の芯とワークWの芯との位相合わせが行われ、芯が一致すると、工具20の刃部はワークWのねじ形状にならう形で無理なく噛み合って、雄ねじ部W1のリードによりそれの最深部まで進んでいく。
【0028】そして、所定位置まで工具20が前進したら、図示しないリミットスイッチ、或いは、近接スイッチ等が作動して駆動モータ33を一旦停止させ、それから逆回転始動させることにより可動部材15を逆回転駆動する。そして、工具20を逆転させると共に、送り用シリンダ39を後退動作させて雄ねじ部のW1のバリ取りが完了する。この加工中は、図示しないエアーブロー切換手段によりエアーが加工位置に吹き付けられて切粉が除去される。更に加工位置合わせ用シリンダ38を作動し、可動部材15を後退端に位置させる。
【0029】バリ取り除去が行われたワークWの下側から、ワーク脱着用リフタ1Dが上昇してワークWを保持すると、支持台1Cのワーク支持シリンダ6の作動によりロッド5が短縮作動して装置本体1Bを図中右方向に移動させて、芯押軸12をワークWの軸端から離脱させる。そうして、ドライビングセンタ3及びセンタ13とから離脱したバリ取り済のワークWは、ワーク脱着リフタ1Dに保持されたまま所定箇所に離脱搬送されていく。上記作業終了後に、同一、又は別のワーク脱着リフタ1Dに支持されたワークWが、上記ねじのバリ取り装置1に搬送されてきて、上記と同様の作業が繰り返し行われる。
【0030】一方、ワークWの雄ねじ部W1が、そのワークWの軸端ではなくて、中間部付近等にある場合は、以下のようになる。ワークWが両支持台1A,1Cとに支持固定された後に、送り用シリンダ39と同軸上に一体となって配置されている加工位置合わせ用シリンダ38を短縮動作させる。それに伴って、この加工位置合わせ用シリンダ38のロッド43と連接しているストローク吸収部40と送りロッド48とを介して、送りロッド48の先端下向きに位置しているカムフォロア31が可動部材15の凹溝32を図中左方向移動することにより、工具20をワークWの雄ねじ部W1まで近づけて停止させる。次に、送り用シリンダ39を作動させて上記と同様の加工動作が行われる。上記加工位置合わせ用シリンダ38と上記送り用シリンダ39とを別作動するように設けたことによって、加工位置合わせと工具送り量とを制御する複雑な電子制御機器を必要とすることはない。そして、ワークWの中間部に位置する雄ねじ部W1のバリ取りにも簡単に対応できて、バリ取り作業の効率を高めることができる。
【0031】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の発明によれば、ワークの雄ねじ部に工具が軽く接触すると、この工具を取り付けてある工具保持部がプランジャを介してオルダム機構部に揺動自在に取り付けられているので、当接初期段階では、工具とワークの芯が不一致でも、工具が揺動してワークの芯と一致することができると共に、複雑な機構を用いることなくワークの雄ねじ部に工具の刃部を噛み合わせることができる。これにより、通常の精度を有する丸ダイスを工具として使用可能となる。そして、丸ダイスを対象ワークによって交換するだけで、機械本来の段取り替えを行うことなく多種のワークに対応できる。また、ワーク端部にある雄ねじ部だけでなく、ワークの中間位置に設けられた雄ねじ部のバリをとることも可能である。
【0032】請求項2記載の発明では、可動部材の軸方向の移動と回転駆動を分離し、且つワークとの回転位相が合うまで上記ストローク吸収部が送り量を吸収するので、何ら複雑な機構を用いることなく、工具とワークの雄ねじ部との位相合わせが可能となり、バリ取り作業の効率を向上させることができる。
【0033】請求項3記載の発明では、可動部材を往復動させる構造が簡略化されて、低コストに構成することができる。
【0034】請求項4記載の発明では、ワーク加工時にて、二重ねじ切りや二重食いつき等の異常が発生しそうな場合、駆動モータに組み込んだトルク検出器の値が上昇して異常発生を予想することができるので、駆動モータを停止させてワーク加工を直ちに中止することができる。
【0035】請求項5記載の発明では、ワークの全長が変化しても芯押軸を備えた可動台を移動することができるので、長さの異なるワークにも簡単に対処できて加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のねじのバリ取り装置の全体構成を示す側面図である。
【図2】図1中のAの範囲を説明する断面図である。
【図3】図2中、B−B矢視図である。
【図4】図2中、C−C矢視図である。
【図5】従来のねじのバリ取り装置の構成を説明するためのもので、(a)は、正面図で、(b)は、側面図である。
【符号の説明】
W ワーク
W1 雄ねじ部
1 ねじのバリ取り装置
1A 支持台
1B 装置本体
1C 支持台
1D ワーク脱着用リフタ
9 可動台
12 芯押軸
15 可動部材
16 オルダム保持部材
17 ボール支持機構
18 プランジャ
19 オルダム機構部
20 工具
25 オルダム出力部
26 工具保持部材
27 工具保持台
33 駆動モータ
35 中間歯車
37 トルクリミッタ
38 加工位置合わせ用シリンダ
39 送り用シリンダ
40 ストローク吸収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ワークの雄ねじ部へ追加工をしたときに発生するバリを除去する装置であって、上記ワークの同軸方向に移動して上記ワークを支持固定する芯押軸と、上記芯押軸に回転可能、且つ軸方向進退可能に挿着された可動部材と、上記ワークの雄ねじ部に噛み合う工具を一端に取り付けられ、他端を上記可動部材に揺動支持、且つプランジャによりフローティング支持されたオルダム機構部と、上記オルダム機構部を装着した可動部材を回転且つ軸方向へ可動せしめる駆動手段とを備え、上記駆動手段の駆動によって上記可動部材を動作させることにより、上記工具を上記ワークの雄ねじ部に噛み合わせて往復動させることを特徴とするねじのバリ取り装置。
【請求項2】 請求項1記載のねじのバリ取り装置において、上記駆動手段は、上記可動部材を軸方向へ進退可能に取り付けた加工位置合わせ用シリンダと、上記可動部材を更に軸方向へ進退させて、上記工具をワークの雄ねじ部に付勢させる送り用シリンダと、上記送り用シリンダと上記可動部材との間に介在して、上記工具がワークの雄ねじ部に噛み合うまでの位相合わせと加工中の送りストロークを吸収するコイルスプリング、又はエアーを有するストローク吸収部と、上記可動部材に対し、中間歯車を介して回転可能に設けた駆動モータとを備え、上記駆動手段の駆動によって上記可動部材を軸方向いずれかに進退移動させ、且つ正逆回転方向のいずれかに回転させることを特徴とするねじのバリ取り装置。
【請求項3】 請求項2記載のねじのバリ取り装置において、上記加工位置合わせシリンダと上記送りシリンダとを同軸上に配置すると共に一体化させたことを特徴とするねじのバリ取り装置。
【請求項4】 請求項2記載のねじのバリ取り装置において、上記駆動モータに、回転駆動中の異常トルクを検知するトルク検知手段を取り付けて、上記トルク検知手段が異常トルクを検出したときには、駆動モータを停止させ、加工を直ちに中止することを特徴とするねじのバリ取り装置。
【請求項5】 請求項1記載のねじのバリ取り装置において、上記芯押軸は、一端に上記ワークの軸端に当接係合するセンタを固着すると共に、上記装置の機台に設けられたレールに沿って移動する可動台のフレームに設けられ、上記可動台は、上記機台に移動自在にボルト締着された支持台のワーク支持シリンダによりレールの長手方向に沿って往復動可能に配置されていることを特徴とするねじのバリ取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平11−254236
【公開日】平成11年(1999)9月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−56978
【出願日】平成10年(1998)3月9日
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)