説明

ばら物原料用ヤードを走行する荷役移動機の走行位置検出方法および検出装置

【課題】従来に比べて安価で且つ複雑な構成や調整作業を必要とせずに精度の良いばら物原料用ヤードを走行する荷役移動機の走行位置を検出する。
【解決手段】ばら物原料用ヤード1を走行する荷役移動機が、移動区間の所定距離毎に設置したそれぞれ基準位置からの距離データを書き込んだRFIDタグ81の設置個所にきたときに、荷役移動機側に設置したRFIDシステム8の読取機82によりRFIDタグ81の基準位置からの距離データを読み出して基準距離として制御装置5の記憶回路に記憶させるともに可逆カウンタ51をゼロリセットとし、荷役移動機に設けられた走行中に一定の距離毎に距離信号を発する回転距離計により得られる信号を可逆カウンタ51によりカウントしたパルスを基準距離に加減して得られる荷役移動機械の走行位置データを加算することによりヤードの基準位置からの走行位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばら物原料用ヤードを走行してばら物原料の積付け作業又は払出し作業を行う例えばスタッカ又はリクレーマのような荷役移動機の走行位置検出方法および検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、運搬船によって運ばれてきた鉄鉱石又は石炭などのばら物は、スタッカを使用して、海岸近くに設置された原料ヤードに積付けられた後、この積付けられた原料が、リクレーマを使用して製造現場に払出されている。
【0003】
そして、前記スタッカやリクレーマ等の荷役移動機は、原料ヤード内を精度良く遠隔又は自動で運転して積付け作業や払出し作業を行うことが要求されており、原料の払出座標の積付け時における原料の山の頂点及び山裾の位置管理は、最重要課題であり、従来、例えば荷役移動機の単位走行毎に発生する走行パルスと、原料ヤード全長に対応したアナログ電圧信号とを併用して、道床側に設けられた複数個のストライカーによって作動する荷役移動機に設けられたリミットスイッチで検知する荷役移動機の位置検知装置を備えたものが、特開昭56−108629号公報等に呈示されている。
【0004】
この従来のスタッカ又はリクレーマ等の荷役移動機は、図2に示すように、ばら物などの原料用ヤード1に設置された走行レール11に沿って走行する荷役移動体(図示せず)に設置されたタッチローラ2(或いは車輪軸(図示せず)など)に設けられたシンクロ発信器3(或いはエンコーダ31)が回転することにより生じるシンクロ電圧信号をシンクロパルス変換器2により2相パルス信号に変換し、これらのパルスを荷役移動体に設置された制御装置5の可逆カウンタ51により積算することにより基点からの距離を継続して走行距離を測定可能とする回転距離計を構成している。
【0005】
また、例えば前記原料用ヤード1における走行レール11に沿って配置される荷役移動機によって払い出された原料を搬送するためのベルトコンベア6のフレーム側面61に長さ方向に所定の間隔でリミットスイッチ7構成するストライカ71が複数個設置されており、また、荷役移動機には前記ストライカ71に接触することによりリミットスイッチ7がオン作動するリミットスイッチ本体72が配置されている。
【0006】
そして、制御装置5の走行位置演算回路52からの信号により荷役移動機を所定の作業位置に移動させることにより、タッチローラ2からのパルスを可逆カウンタ41により積算して前記走行位置演算回路42に送り、荷役移動機の起点からの走行距離に基づく位置情報が求められて記憶回路53に記憶されるが、このとき、荷役移動機の走行に伴って前記予め原料ヤード1の走行レール11に沿って所定の位置に設置してあるストライカ71にリミットスイッチ本体72が接触してリミットスイッチ7がオン作動することにより生じるアナログ信号を前記制御回路5に備えた修正位置演算回路54によりストライカ71の設置位置情報による補正位置データを用いて荷役移動機を制御するものである。
【0007】
そのため、前記従来の荷役移動機の制御手段は、所定距離を通過する毎に発生するによるリミットスイッチ7による通過信号とタッチローラ11などの位置検出装置の組み合わせにより絶対位置を修正してことから、リミットスイッチ7による通過信号が絶対位置データでないことから信頼性に欠けるという問題点がある。
【0008】
更に、操業中やメンテナンスの際にストライカ71の位置とデータとの距離が僅かにずれるだけで修正動作が困難になってしまい、加えて、修正ポイント毎にストライカ71とリミットスイッチ本体72との感応距離間隔を常に正常値に調整しておく必要があり、多くの時間と労力とが必要であるという問題もある。
【0009】
そこで、前記従来の荷役移動機の制御手段における精度の改善や感応距離間隔の調整に伴う問題点を解決する目的で、前記ストライカの位置にIDタグを配置するとともにリミットスイッチ本体に代わって無線によって移動機との間で位置データの信号授受を行うIDタグを、移動機が走行するレールに沿って所定間隔で間隔で複数設けたばら物用ヤードを走行する荷役移動機の走行位置検出装置が特開2005−335877号公報に提示されている。
【0010】
しかしながら、前記特開2005−335877号公報に提示されているIDタグを用いた制御手段は、所定の間隔で設置したIDタグに個別のID番号(位置データ)が記憶されているものの、前記公報に提示されているIDタグを用いた荷役移動機の走行位置検出装置は、それ以前に実施されていた特開昭56−108629号公報等に呈示されている移動機の単位走行毎に発生する走行パルスと、原料ヤード 全長に対応したアナログ電圧信号とを併用して、この原料ヤード 全長に対応したアナログ電圧信号は、道床側に設けられた複数個のストライカーによって作動する移動機に設けられたリミットスイッチで検知する荷役移動機の位置検知装置に比べて精度の向上を図ることができる。
【0011】
ところが、前記公報に提示されているIDタグを用いた荷役移動機の走行位置検出装置は、それ以前のリミットスイッチで検知する荷役移動機の位置検知装置と同様の制御をするものであって、ただ、所定の間隔で設置したIDタグに個別のID番号(位置データ)が記憶されているだけであり、基準点からの走行距離が長くなると、IDタグ設置区間の数が増していき、精度が落ちるという問題が生じる。特に、IDタグによる感知はリミットスイッチと異なり無接触でよいが反面、感度が良すぎると受信範囲が広がって誤差が大きくなるという事態が生じる。従って、特開2005−335877号公報に記載してある実施の形態においても従来のリミットスイッチ手段を併用して誤差が大きくなった時の対処を考慮しており、リミットスイッチ手段による前記不都合を解決することにならず却って高価で且つ複雑な構成で手間の掛かるものとなっている。
【特許文献1】特開昭56−108629号公報(第4図)
【特許文献2】特開2005−335877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、従来に比べて安価で且つ複雑な構成や調整作業を必要とせずに精度の良いばら物原料用ヤードを走行する荷役移動機の走行位置検出方法および装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するためになされた本発明であるばら物原料用ヤードを走行する荷役移動機の走行位置検出方法は、ばら物原料用ヤードを走行する荷役移動機が、移動区間の所定距離毎に設置したそれぞれ基準位置からの距離データを書き込んだRFIDタグの設置個所にきたときに、荷役移動機側に設置したRFIDシステムの読取機により前記RFIDタグの基準位置からの距離データを読み出して基準距離として制御装置の記憶回路に記憶させるともに可逆カウンタをゼロリセットとし、前記荷役移動機に設けられた走行中に一定の距離毎に距離信号を発する回転距離計により得られる信号を可逆カウンタによりカウントしたパルスを基準距離に加減して得られる荷役移動機械の走行位置データを加算することによりヤードの基準位置からの走行位置を検出することを特徴とし、また、本発明であるばら物原料用ヤードを走行する荷役移動機の走行位置検出装置は、ばら物原料用ヤードを走行する荷役移動機の走行位置検出装置であって、前記荷役移動機の移動区間の所定距離毎に設置したそれぞれ基準位置からの距離データを書き込んだRFIDタグと前記荷役移動機側に設置した前記RFIDタグとともにRFIDシステムを構成する読取機とからなる主位置検出装置と、前記荷役移動機に設けられた走行中に一定の距離毎に距離信号を発する回転距離計を有する副位置検出装置と、前記主位置検出装置によりから読み出した位置データを記憶する記録する記憶回路と、前記記憶回路に記憶された値を基準基準距離として前記副位置検出装置からのパルスをカウントする可逆カウンタと、前記可逆カウンタによりカウントしたパルスを基準距離に加減して前記荷役移動機械の走行位置データを演算する走行位置演算データを演算する走行位置演算回路とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の構成を有する本発明によれば、従来のリミットスイッチを用いるばら物原料用ヤードを走行する荷役移動機の走行位置検出手段に比べて、複雑な設備やリミットスイッチの調整のような困難な保守を必要としないばかりか、従来IDタグを用いた荷役移動機の走行位置検出手段に比較しても制御装置が簡単な構成で制御可能であるばかりか、より優れた精度で走行位置を検出することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、添付した図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態につき説明する。
【0016】
図1は、本発明である検出装置の好ましい実施の形態についての概略を示す説明図であって、全体の構成は、前記図2に示した従来の荷役移動機の走行位置検出手段(以下「従来例」という)とほぼ同様であり、同一の構成部分には同一符号を示した。また、同一符号を付した同一構成部分の作動や働きも、ほぼ同様であり、説明が重複するので詳細な説明は省略する。
【0017】
特に、本願発明において重要な構成につき前記図2に示した従来例と比較すると、従来例と異なる構成部分は、図2に示した従来例では原料用ヤード1における走行レール11に沿って配置される荷役移動機によって払い出された原料を搬送するためのベルトコンベア6のフレーム側面61に長さ方向に所定の間隔でリミットスイッチ7構成するストライカ71が複数個設置されていたのに対して、原料用ヤード1における走行レール11に沿って配置される荷役移動機によって払い出された原料を搬送するためのベルトコンベア6のフレーム側面61に長さ方向に所定の間隔で荷役移動機(図示せず)の移動区間の所定距離毎にそれぞれ基準位置からの距離データを書き込んだRFIDタグ81と前記荷役移動機側に設置したRFIDシステム8のアンテナを有する読取機82とからなる主位置検出装置Aを具備している点、並びに制御装置5が、可逆カウンタ51、走行位置演算回路52および記憶回路53とから構成される点が異なる。
【0018】
次に、本実施の形態における走行位置検出方法について説明する。
【0019】
本実施の形態において、荷役移動機(図示せず)が移動して、主位置検出装置Aを構成するRFIDタグ81の設置個所にさしかかると、そのRFIDタグ81に書き込んである基準位置からの距離データを読取機82により読み取って制御装置5に配置してある記憶装置53に基準距離として記憶するとともに可逆カウタ51をゼロリセットする。
【0020】
一方、原料用ヤード1に設置された走行レール11に沿って走行する荷役移動体(図示せず)に設置された、タッチローラ2(或いは車輪軸(図示せず)など)に設けられたシンクロ発信器3(或いはエンコーダ31)と前記タッチローラ2などが回転することにより生じるシンクロ電圧信号を2相パルス信号に変換するシンクロパルス変換器器2とからなる副位置検出装置Bにより得られたパルスを、荷役移動体に設置された制御装置5の可逆カウンタ51により積算或いは減算することにより直前のRFIDタグ81の設置個所からの走行位置値を得る。
【0021】
そして、前記記憶回路53に記憶させてある基準距離と前記可逆カウンタ51の前記基準値からの走行位置のデータを制御装置5に配置してある走行位置演算回路522より加算することにより原料用ヤード1における基準位置からの走行位置値を得ることができる。
【0022】
従って、全走行範囲にわたって絶対位置を基準とした走行位置が得られること、更には、幅広い交信領域を有するRFIDタグシステムを採用することによりRFIDタグの位置が少々ずれても位置データを読み出すことが可能であることと相俟って、誤差の累積がなく信頼性の高い位置検出を行うことができる。
【0023】
更に、RFIDタグシステムを採用したことにより、従来のリミットスイッチのような取付や調整に多大な労力や時間を費やすこともない。
【0024】
尚、本実施の形態では、RFIDタグ81をベルトコンベア6のフレーム側面61に約20m毎に配置する構成としたが、配置間隔を20m毎にとしたのは、例えば現在、実際に使用されているスタッカなどの荷役移動機の長さが50m程度であり、配置間隔が20mであれば積み付け作業中に必ず1乃至2個所のRFIDタグ81より位置データを読み出すことができるためである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明における実施の形態についての概要を示す説明図。
【図2】従来例の概要を示す説明図。
【符号の説明】
【0026】
1 原料用ヤード、2 タッチローラ、3 シンクロ発振器、4 シンクロパルス変換器、5 制御装置、6 ベルトコンベア、8 RFIDタグシステム、11 走行レール、51 可逆カウンタ、52 走行位置演算回路、53 記憶回路、81 RFIDタグ、82 読取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばら物原料用ヤードを走行する荷役移動機が、移動区間の所定距離毎に設置したそれぞれ基準位置からの距離データを書き込んだRFIDタグの設置個所にきたときに、荷役移動機側に設置したRFIDシステムの読取機により前記RFIDタグの基準位置からの距離データを読み出して基準距離として制御装置の記憶回路に記憶させるともに可逆カウンタをゼロリセットとし、前記荷役移動機に設けられた走行中に一定の距離毎に距離信号を発する回転距離計により得られる信号を可逆カウンタによりカウントしたパルスを基準距離に加減して得られる荷役移動機械の走行位置データを加算することによりヤードの基準位置からの走行位置を検出することを特徴とするばら物原料用ヤードを走行する荷役移動機の走行位置検出方法。
【請求項2】
ばら物原料用ヤードを走行する荷役移動機の走行位置検出装置であって、前記荷役移動機の移動区間の所定距離毎に設置したそれぞれ基準位置からの距離データを書き込んだRFIDタグと前記荷役移動機側に設置した前記RFIDタグとともにRFIDシステムを構成する読取機とからなる主位置検出装置と、前記荷役移動機に設けられた走行中に一定の距離毎に距離信号を発する回転距離計を用いた副位置検出装置と、前記主位置検出装置によりから読み出した位置データを記憶する記録する記憶回路と、前記記憶回路に記憶された値を基準基準距離として前記副位置検出装置からのパルスをカウントする可逆カウンタと、前記可逆カウンタによりカウントしたパルスを基準距離に加減して前記荷役移動機械の走行位置データを演算する走行位置演算データを演算する走行位置演算回路とを具備したことを特徴とするばら物原料用ヤードを走行する荷役移動機の走行位置検出装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−70286(P2010−70286A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237367(P2008−237367)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)