説明

ばら物運搬船の陸揚げ時における船体の位置調整システム

【課題】ばら物運搬船からセルフアンローディングシステムによりばら物を陸揚げする場合に埠頭に配置した搬入ホッパの中央位置に合わせた船体から突設した陸揚げコンベアの搬出端のずれを調整する。
【解決手段】運搬するばら物を陸揚げする埠頭4に所定の間隔を隔てて配置された一対の繋留柱41,42に繋ぐ繋留ロープ71、81とこの繋留ロープ71,81を巻き上げ及び繰り出し可能に且つ所定の繰り出し位置において固定可能に装備する船首及び船尾においてそれぞれ配置される巻取機72,82からなる繋留装置7、8と、船体2に配置されて船体2の埠頭4に対する前後方向位置を測定するための位置センサー9と、位置センサー9からの測定信号により前記各巻き取り機72,82を制御して繋留装置7、8の繋留ロープ71、81を繰り出し又は巻き取る伸縮させる制御装置10とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石炭、鉄鉱石、ウッドチップ、石灰石、穀物などのばら物を運搬する運搬船、特に、セルフアンローディングシステムを備えたばら物運搬船の陸揚げ時における船体の埠頭に対する位置を調整するシステムに関するものであり、詳しくは、船体に備えたばら物搬出に用いる陸揚げコンベアの搬出端が埠頭側に備えた搬入ホッパの中央部に位置するように調整するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セルフアンローディングシステムを備えたばら物運搬船が知られており、このようなばら物運搬船では搬送先における埠頭などの陸揚げ個所に着いた際に、図7に示すように、ばら物運搬船1の船体2に備えられた陸揚げコンベア3の搬出端31を、埠頭4側に備えた搬送コンベア5への搬入ホッパ6に合致させて船内に貯留したばら物を陸揚げするが、前記ばら物の陸揚げに際し、陸揚げコンベア3の搬出端31からこぼれたばら物が埠頭に堆積したり、或いは粉塵が飛散したりすることによる清掃作業や汚染などを防ぐ目的で船体2側の陸揚げコンベア3の搬出端31を、埠頭4側に備えた搬入ホッパ6の中央位置に合わせて正確に配置する必要がある。
【0003】
ところが、陸揚げコンベア3の搬出端31を搬入ホッパ6の中央位置に合わせて陸揚げを開始しても、埠頭4沿って繋留させたばら物運搬船1が潮位の変化や波浪、更には、船体自身の陸揚げに伴う重量減による喫水変化などにより繋留ロープが弛み、その際に波浪などにより船体が前後方向に移動することにより埠頭4との相対位置が変化してばら物搬出に用いる陸揚げコンベア3の搬出端31が前記埠頭4側に備えた搬入ホッパ6の中央位置からずれてしまうという問題がある。
【0004】
そこで、例えば特開平11−246051号公報にアンローダと船体との相対位置を調整する手段が開示されているが、この公報に開示されている調整手段は、船体にGPSを装備してその位置を絶対位置として特定するとともに、アンローダ側に地上の仮想座標系に対するアンローダの相対位置を検出するための移動量センサーを設け、この絶対位置と移動量センサーにより検出された仮想座標系の早退位置とから船舶とアンローダの相対位置を検出するものであり、装置並びに制御が複雑であるばかりか船舶は波浪や潮位などにより位置が変化することになり、特にセルフアンローディングシステムにより陸揚げする場合には高さ方向の変化にも対応する必要があり適用することはできない。
【0005】
また、従来から潮位や陸揚げに伴う重量減による喫水変化などにより船体の埠頭に対する位置が変化することに対してバラストによる調製がなされているが、これは主として航海中の喫水を保つためのものであって船体の上下方向の変化に対応するだけであり、埠頭に対する前後方向位置を調整することはできない。
【特許文献1】特開平11−246051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記従来の問題点であるばら物運搬船からセルフアンローディングシステムによりばら物を陸揚げする場合に陸揚げ時における船体の位置を調節することにより埠頭に配置した搬入ホッパの中央に合わせた船体から突設した陸揚げコンベアの搬出端がずれるという問題点を解決することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた本発明であるばら物運搬船の陸揚げ時における船体の位置調整システムは、運搬するばら物を陸揚げする埠頭に所定の間隔を隔てて配置された一対の繋留柱に繋ぐ繋留ロープとこの繋留ロープを巻き上げ及び繰り出し可能に且つ所定の繰り出し位置において固定可能に装備する船首及び船尾においてそれぞれ配置される巻取機からなる繋留装置と、船体に配置されて船体の埠頭に対する前後方向位置を測定するための位置センサーと、前記位置センサーからの測定信号により前記各巻き取り機を制御して前記繋留装置の繋留ロープを繰り出し又は巻き取る伸縮させる制御装置とからなり、船体に備えたばら物搬出に用いる陸揚げコンベアの搬出端が前記埠頭側に備えた搬入ホッパの中央部に位置するように前記各繋留装置における繋留ロープを張架して船体を接岸させた際の前記位置センサーによる測定値を基準測定値として前記制御装置の記憶装置に記憶させておき、陸揚げ中に船体が前後方向に移動したときに前記制御装置により位置センサーの測定値が常に前記基準測定値になるように前記少なくとも一方の繋留装置における繋留ロープを繰り出し又は巻き取ることで船体を前方又は後方へ所定の距離だけ修正移動させて前記位置センサーによる測定値が基準測定値に復帰させ前記陸揚げコンベアの搬出端を前記搬入ホッパの中央部からずれることを防止することを特徴とする。
【0008】
また、前記船体の前方及び後方にそれぞれ配置されている船舶と埠頭との間の高さを測定するための第2位置センサーと、給排水機を備えて前記船体に形成されるバラストタンクと、前記第2位置センサーからの測定信号により前記給排水機を制御して船体の喫水を変化させる制御装置とからなる喫水位置調節装置を備えた場合には、荷卸しに伴って変化する喫水についても調製することができる。
【0009】
更に、前記陸揚げコンベアの搬出端に伸縮機構により伸縮する伸縮シュートが付設されているとともに陸揚げコンベアの搬出端にその搬出端と前記搬入ホッパとの間の距離を測定するための第3位置センサーと、前記第3位置センサーからの測定信号により前記伸縮機構を制御して前記伸縮シュートを伸縮させる制御装置とからなる伸縮シュート装置を備えた場合には例えば喫水の変化により陸揚げコンベアの搬出端が上昇して搬出端と前記搬入ホッパとの間の距離が開いたときに伸縮シュートが伸縮して隙間なく調製するので粉塵が飛散する心配がない。
【0010】
加えて、前記陸揚げコンベアがシャトルコンベアであり、その陸揚げコンベヤの搬出端に、前記搬入ホッパとの間の距離を測定するための第4位置センサーと、前記第4位置センサーからの測定信号により前記陸揚げコンベアの伸縮機構を制御して前記陸揚げコンベアを伸縮させる制御装置とからなる陸揚げコンベア伸縮装置を備えた場合には陸揚げコンベアにおける船体の前後方向へのずれを容易に解消することができる。
【0011】
また、バラストタンクの給排水機、伸縮シュートの伸縮機構(又は陸揚げコンベアの伸縮機構)を1つの制御装置で全てを制御することができ、特に、制御装置が前記繋留装置、バラストタンクの給排水機、或いは伸縮シュートの伸縮機構(又は陸揚げコンベアの伸縮機構)の制御の内で最も効率のよい少なくとも1つの制御を選択して実行することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明であるばら物運搬船の陸揚げ時における船体の位置調整システムによれば、ばら物運搬船に装備されるセルフアンローディングシステムにより陸揚げする際に、陸揚げコンベアの搬出端を埠頭に配置した搬入ホッパの中央に合わせて陸揚げを開始するだけで、ばら物運搬船が潮位の変化や波浪、更には、船体自身の陸揚げに伴う重量減による喫水変化などによる変化を少ない部品と確実な制御により自動的に調整して船体の位置を陸上げ開始時に設置した位置に常に復帰させて陸揚げコンベアの搬出端と搬入ホッパとのずれを防止してばら物が埠頭にこぼれたり粉塵などが飛散するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の好ましい実施の形態における平面概略を示すものであり、本実施の形態に用いられるばら物運搬船1は船体2に例えば運搬するばら物の貨物室並びに貨物室(図示せず)に貯蔵したばら物をブームコンベアにより形成される陸揚げコンベア3から埠頭4に設置した陸側コンベア5の基端に配置した搬入ホッパ6へ自動的に搬出するセルフアンローディングシステム(図示せず)を備えている。
【0015】
船体2の船首及び船尾には、ばら物を陸揚げする埠頭4に所定の間隔を隔てて配置された一対の繋留柱41,42に繋ぐ繋留ロープ71,81とこの繋留ロープ71,81を巻き上げ及び繰り出し可能に且つ所定の繰り出し位置において固定可能に装備する巻取機72,82とからなる繋留装置7,8が配置されている。
【0016】
尚、繋留装置7(8)を構成する巻き取り機72(82)は例えば図2に示すように、繋留ロープ71(81)の巻き取りリール73(83)とこの巻き取りリール73(83)を可逆回転が可能な電動機74(84)と、巻き取りリール73(83)と電動機74(84)との間に介設した電動機電動機74(84)が停止状態の時に前記巻き取りリール73(83)の回転を阻止する減速機75(85)とからきわめて簡単に構成することができるが、前記制御装置10からの信号により繋留ロープ71(81)を繰り出し及び巻き取り可能で且つ所定の巻きとり位置で繋留ロープ71(81)を固定できればよく、例えば巻き上げ電動機とブレーキ装置により構成する(図示せず)等、他の構成を採用することも可能である。
【0017】
更に、船体2の中央部には埠頭4に対する船体2の埠頭4に対する前後方向位置を定めるための位置センサー9が配置されているとともに、船体2の例えば操舵室(図示せず)等や甲板に、前記位置センサー9からの測定信号を受信して前記繋留装置7,8を制御する制御装置10が配置されている。尚、前記位置センサー9は例えば赤外線、電磁波など従来周知のセンサー手段を用いることが可能であり、埠頭4における前記位置センサー9の前後方向における所定位置に配置した前記センサー9に対応するターゲット91が配置されている。
【0018】
本実施の形態を使用するには、ばら物運搬船1の船体2を埠頭4に沿って接岸させて船首及び船尾に配置した繋留装置7,8の繋留ロープ71,81を埠頭4に配置された繋留柱41,42にそれぞれ張架させた状態で繋ぎ船体2を繋留し、船体2に備えたばら物搬出に用いる陸揚げコンベア3の搬出端31が埠頭4側に備えた搬入ホッパ6の中央部に位置させて運搬してきたばら物を陸揚げする。
【0019】
このとき、位置センサー9により前記埠頭4に配置したターゲット91との間の距離Lを船体2の埠頭に対する所定の前後方向の位置を特定するための基準測定値として制御装置10の記憶装置(図示せず)に記憶しておく。
【0020】
そして、陸揚げを継続して行っている際に、潮位の変化が生じたり積荷の減少等により喫水が変化して繋留ロープ71,81が弛み、潮流などにより船体2が前後方向(図示する矢印A又はB方向)に移動すると最初に配置した陸揚げコンベア3の搬出端31が搬入ホッパ6の中央部からずれてしまう事態が生じることになる。このとき、同時に位置センサー9による船体2の埠頭4に対する前後位置の測定値であるターゲット91との間の距離Lが変化して前記基準測定値と異なる測定信号が制御装置10に送信される。
【0021】
そこで、前記制御装置10が前記繋留装置7,8における繋留ロープ71,81を繰り出し又は巻き取ることで船体2を前方(図示する矢印A方向)又は後方(図示する矢印B方向)へ所定の距離だけ移動させて前記位置センサー9からの送信される測定信号が前記基準測定値になるように制御して陸揚げコンベア3の搬出端31が搬入ホッパ6の中央部からずれることを防止する。
【0022】
従って、本実施の形態によれば、陸揚げ開始時に陸揚げコンベア3の搬出端31を搬入ホッパ6の中央部に位置するようにして繋留ロープ71,81を張架させた状態で船体2を埠頭の所定位置に停留させておくだけで、陸揚げが終了するまで潮位や喫水の変化が生じても船体が自動的に最初の繋留位置に復帰して常に陸揚げコンベア3の搬出端31が搬入ホッパ6の中央部に位置してずれることがない。
【0023】
図3は本実施の形態における側面概略を示すものであり、前記船体2の前方及び後方に船体2と埠頭4の作業ステージ43との間の高さを測定するための第2位置センサー9a,9bが配置されている。これらの第2位置センサー9a,9bは、前記位置センサー9(図1参照)と同様に例えば赤外線、電磁波など従来周知のセンサー手段を用いるものであって、埠頭4の作業ステージ43に配置されたターゲット91a,91bとの間の距離La,Lbを測定してその測定信号が前記制御装置10に送信される。
【0024】
また、船体2内には、前記制御装置10により給水操作又は排水操作が制御される給排水機111a,111bを備えたバラストタンク11a,11bが備えられており、これらの給排水機111a,111bを備えたバラストタンク11a,11b及び前記第2位置センサー9a,9bと制御装置10により喫水位置調節装置12が構成されている。
【0025】
特に、本実施の形態では、陸揚げの開始時に陸揚げコンベア3の排出端31が排出ホッパ6の中央部に位置するとともに両者が例えば陸揚げ作業中に粉塵の飛散が生じない間隔に配置させるように調製する。このときの船体2の喫水位置を前記第2位置センサー9a,9bと埠頭に配置したターゲット91a,91bとの間の距離La,Lbを測定した第2位置センサー9a,9bからの測定信号を制御装置に送信して基準喫水値として記憶しておく。
【0026】
そして、陸揚げを継続して行っている際に、潮位の変化が生じたり積荷の減少等により喫水が変化して船体2が埠頭4の作業ステージ43に対して上昇したときに、最初に配置した陸揚げコンベア3の搬出端31が搬入ホッパ6との間隔が拡ることにより粉塵が飛散したりするようになる。このとき、同時に第2位置センサー9a,9bによる船体2の埠頭4に対する高さの測定値であるターゲット91a,91bとの間の距離La,Lbが変化して前記基準喫水値と異なる測定信号が制御装置10に送信される。
【0027】
そこで、前記制御装置10が前記給排水機111a,111bを制御してバラストタンク11a,11bに給水或いはバラストタンク11a,11bから排水することにより船体2の喫水を変化させて前記第2位置センサー9a,9bによる船体2の埠頭4に対する高さの測定値であるターゲット91a,91bとの間の距離La,Lbが常に基準喫水値になるように制御して陸揚げコンベア3の搬出端31が搬入ホッパ6に所定の間隔を有して配置された状態を保つことができる。
【0028】
尚、本実施の形態では、船体2の前後方向にバラストタンク11a,11bを内蔵するとともに、これらのバラストタンク11a,11bを給排水機111a,111bを用いて制御装置10によりそれぞれ個別に制御することが可能であり、例えば荷卸しの際の作業手順などにより船体2の前後において喫水のずれが生じて船体2に傾きが生じるような場合にも給排水機111a,111bを個別に制御して船体2を水平状態に保ちながら喫水制御をすることができる。
【0029】
更に、図4は、本発明の異なる実施の形態の側面概略を示すものであり、平面については前記図1に示した構成とほぼ同一構成であり、陸揚げコンベア3の搬出端31に伸縮機構131により伸縮する伸縮シュート13が付設されているとともに陸揚げコンベア3の搬出端31にその搬出端と前記搬入ホッパとの間の距離を測定するための第3位置センサー9cとからなる伸縮シュート装置14を備えている。
【0030】
また、第3位置センサー91cは前記位置センサー9(図1参照)、第2位置センサー9a,9b(図3参照)と同様に例えば赤外線、電磁波など従来周知のセンサー手段を用いるものであって、搬出ホッパ6における第3位置センサー91cの対向面に配置されたターゲット91cとの間の距離Lcを測定してその測定信号が前記制御装置10に送信される。
【0031】
本実施の形態では、陸揚げの開始時に伸縮シュート13の先端132が排出ホッパ6と隙間がないようにして作業中に粉塵の飛散が生じない間隔に配置されるように調製する。このときの伸縮シュート13の先端132と排出ホッパ6と配置したターゲット91cとの間の距離Lcを測定して制御装置10に送信した測定信号を基準隙間値として記憶しておく。
【0032】
そして、陸揚げを継続して行っている際に、潮位の変化が生じたり積荷の減少等により喫水が変化して第3位置センサー9cと排出ホッパ6との距離Lcが拡がって伸縮シュート13の先端132とホッパ6との間隔が拡がると粉塵が飛散したりするようになる。このとき、第3位置センサー9cとターゲット9cとの間の距離Lcが自動的に変化して前記基準隙間値と異なる測定信号が制御装置10に送信される。
【0033】
そこで、本実施の形態では、前制御機構10において前記第3位置センサー9cから送信される測定信号が前記隙間基準値となるように前記伸縮機構131を制御する。そのため、陸揚げ作業の間は伸縮シュート13の先端132が排出ホッパ6と隙間のない所定の間隔に配置され、伸縮シュート13の先端132と搬出ホッパ6との隙間から生じる粉塵の飛散などを防ぐことができる。
【0034】
図5は、本発明のさらに異なる実施の形態の平面面概略を示すものであり、陸揚げコンベア3がシャトルコンベアにより形成される点が異なるものであり、同一の構成である繋留装置7,8(図1参照)についての説明は省略する。
【0035】
本実施の形態では、前述の如く船体2に配置される陸揚げコンベア3が長さ方向に伸縮可能なシャトルコンベアにより形成され、その搬出端31に、搬入ホッパ6との間の距離を測定するための第4位置センサー9dと、この第4位置センサー9dからの測定信号により陸揚げコンベア3に装備された伸縮機構151を制御して陸あげコンベア3を伸縮させる制御装置10とからなる陸揚げコンベア伸縮装置15を備えている。特に、本実施の形態では、第4位置センサー91dはその対向面に配置されたターゲット91dとの間の距離Ldを測定してその測定信号が前記制御装置10に送信される。
【0036】
従って、本実施の形態によれば、陸揚げの開始時における陸揚げコンベア3の搬出端31が排出ホッパ6の中央位置に合致して調製し、このときの搬出端31の排出ホッパ6に配置したターゲット91dとの間の距離Ldを測定して制御装置10に送信した測定信号を基準隙間値として記憶しておき、陸揚げを継続して行っている際に、潮位の変化が生じたり積荷の減少等により船体2が幅方向に移動して第4位置センサー9dと排出ホッパ6との距離Ldが拡がって搬出端31とホッパ6との間隔が拡がると第4位置センサー9dからの信号が制御装置10に送られて、伸縮機構151により陸揚げコンベア3が伸縮して第4位置センサー9dとターゲット91dとの間の距離Ldcが元の前記基準隙間値に復帰するので陸揚げ作業中は陸揚げコンベア3の排出端31が船体2の幅方向については常に排出ホッパ6の中央部に位置することになる。
【0037】
尚、本発明は、前記図1に示した実施の形態を単独で実施することが可能であることはいうまでもなくも、前記図1に示した実施の形態に加えて図3に示した喫水調節装置12、更には前記図4に示した伸縮シュート装置14、図5に示した陸揚げコンベア伸縮装置15を適宜組み合わせて同時に実施することも可能である。
【0038】
図6は前記実施の形態を適宜、組み合わせて実施した場合の制御例を示すブロック回路図であり、陸揚げ時に陸揚げコンベア3の搬出端31と前記搬入ホッパ6との間のずれが生じたときに、前記繋留装置7,8、喫水位置調節装置12、伸縮シュート装置14の何れかを使用して修正した場合が現時点並びにその後の制御が時間的並びにエネルギー的に有利か否かを判断して実効することによりきわめて迅速に且つ経済的な制御が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す平面概略図である。
【図2】図1に示した実施の形態に用いられる巻きとり機を示す斜視図である。
【図3】図1に示した実施の形態の側面概略図である。
【図4】本発明における異なる実施の形態における側面概略図である。
【図5】本発明における異なる実施の形態を示す平面概略図である。
【図6】本発明における実施の形態の制御例を示すブロック回路図である。
【図7】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ばら物運搬船、2 船体、3 陸揚げコンベア、4 埠頭、6 搬入ホッパ、7,8 繋留装置、9 位置センサー、9a,9b 第2位置センサー、9c 第3位置センサー、9d 第4位置センサー、10 制御装置、31 搬出端、11a,11b バラストタンク、12 喫水位置調整装置、13 伸縮シュート、14 伸縮シュート装置、15 陸揚げコンベア伸縮装置、41,42 繋留柱、71,81 繋留ロープ、73,83 巻きとりリール、74,84 電動機、75,85 減速機、111a,111b 給排水機、131伸縮機構、151 伸縮機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬するばら物を陸揚げする埠頭に所定の間隔を隔てて配置された一対の繋留柱に繋ぐ繋留ロープとこの繋留ロープを巻き上げ及び繰り出し可能に且つ所定の繰り出し位置において固定可能に装備する船首及び船尾においてそれぞれ配置される巻取機からなる繋留装置と、船体に配置されて船体の埠頭に対する前後方向位置を測定するための位置センサーと、前記位置センサーからの測定信号により前記各巻き取り機を制御して前記繋留装置の繋留ロープを繰り出し又は巻き取る伸縮させる制御装置とからなり、船体に備えたばら物搬出に用いる陸揚げコンベヤの搬出端が前記埠頭側に備えた搬入ホッパの中央部に位置するように前記各繋留装置における繋留ロープを張架して船体を接岸させた際の前記位置センサーによる測定値を基準測定値として前記制御装置の記憶装置に記憶させておき、陸揚げ中に船体が前後方向に移動したときに前記制御装置により位置センサーの測定値が常に前記基準測定値になるように前記少なくとも一方の繋留装置における繋留ロープを繰り出し又は巻き取ることで船体を前方又は後方へ所定の距離だけ修正移動させて前記位置センサーによる測定値が基準測定値に復帰させ前記陸揚げコンベヤの搬出端を前記搬入ホッパの中央部からずれることを防止することを特徴とするばら物運搬船の陸揚げ時における船体の位置調整システム。
【請求項2】
前記船体の前方及び後方にそれぞれ配置されている船舶と埠頭との間の高さを測定するための第2位置センサーと、給排水機を備えて前記船体に形成されるバラストタンクと、前記第2位置センサーからの測定信号により前記給排水機を制御して船体の喫水を変化させる制御装置とからなる喫水位置調節装置を備えたことを特徴とする請求項1記載のばら物運搬船の陸揚げ時における船体の位置調整システム。
【請求項3】
前記陸揚げコンベヤの搬出端に伸縮機構により伸縮する伸縮シュートが付設されているとともに前記陸揚げコンベヤの搬出端にその搬出端と前記搬入ホッパとの間の距離を測定するための第3位置センサーと、前記第3位置センサーからの測定信号により前記伸縮機構を制御して前記伸縮シュートを伸縮させる制御装置とからなる伸縮シュート装置を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のばら物運搬船の陸揚げ時における船体の位置調整システム。
【請求項4】
前記陸揚げコンベアがシャトルコンベアであり、その陸揚げコンベヤの搬出端に、前記搬入ホッパとの間の距離を測定するための第4位置センサーと、前記第4位置センサーからの測定信号により前記陸揚げコンベアの伸縮機構を制御して前記陸あげコンベアを伸縮させる制御装置とからなる陸揚げコンベア伸縮装置を備えたことを特徴とする請求項1,2又は3記載のばら物運搬船の陸揚げ時における船体の位置調整システム。
【請求項5】
前記制御装置が前記繋留装置、バラストタンクの給排水機、伸縮シュートの伸縮機構、陸揚げコンベアの伸縮機構を制御することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のばら物運搬船の陸揚げ時における船体の位置調整システム。
【請求項6】
前記制御装置が前記繋留装置、バラストタンクの給排水機、陸揚げコンベアにおけるシュートの伸縮機構又はシャトルコンベアの伸縮機構の制御の内で最も効率のよい少なくとも1つの制御を選択して実行することを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載のばら物運搬船の陸揚げ時における船体の位置調整システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−143256(P2010−143256A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319308(P2008−319308)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)
【Fターム(参考)】