説明

ひずみクラック計測装置

【課題】装置の大型化を抑え、取り付け作業が容易で、コストを低減することができる操作の簡便なひずみクラック計測装置を提供する。
【解決手段】対象部の変位を高感度に検出する変位センサ1と、変位センサ1の両端部にそれぞれ固定される固定部材2と、間隔を持って被測定面Sに固着される2枚のベース板3と、ベース板3,3間に介在し変位センサ1が背面から受ける外力により影響を受けないように弾性体から構成した絶縁体5とからなり、ベース板3は必要面積を有しており、接着剤6により被測定面に固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみクラック計測装置に係り、詳細には現場取り付け作業の簡便化とひずみ測定範囲を拡大してクラックの発生後にも追従測定可能としたひずみクラック計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歪みやクラック等を測定する計測装置としては、センサを被測定面に埋め込みやアンカーボルトにより取り付けるとか溶接により取り付けるものであった。
【0003】
また、測定データの処理方法としては、センサから測定制御装置にデータを集めると共に測定制御装置でセンサの調整、設定、表示、操作、制御し、データを収録する。そして収録したデータを測定制御装置を操作することにより出力し、それを遠隔地の中央処理制御装置に整理し格納・分析する方式があった。ここで、センサと測定制御装置間を接続する方法としてコード配線方式が知られている。また、測定制御装置から商用無線電話で中央処理制御装置にデータを送信し、そこでデータの集積、分析や表示、警報発信等を行う方式も知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のセンサを被測定面に埋め込みやアンカーボルトにより取り付けるものや溶接により取り付けるものは、通常、取り付け位置が高所とか足場が悪いとかで取り付け作業が容易でない。そのため、取り付け作業できるように大がかりな足場などを組む必要があり、大変なコストがかかった。また、ひずみとクラックとは数値の計測単位が大きく変わることから1つのセンサで測定することが困難で、装置が大型化した。
【0005】
さらに、センサと測定制御装置間の接続で、コードで接続する配線方式では、センサとコード配線が大変大がかりとなり、コストも大きかった。測定制御装置の設置数を増やしてセンサとの距離を短くするようにしても、コード配線はコンパクトにできるが、測定制御装置としての測定器本体の数が増えてコストを大きくしていた。
また、全部を無線方式とする場合には、無線装置が大型であるため、大変高価になると共に、電力消費も大きく、AC100Vの引き込み線がなければ電池交換も多くしなければならないなどで現実的でなかった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、取り付け作業が容易で、装置の大型化を抑え、コストを低減することができるひずみクラック計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明に係るひずみクラック計測装置は、対象部の変位を検出する変位センサと、該変位センサの両端部にそれぞれ固定される固定部材と、該固定部材に連結され且つ中央部位を標点として間隔を持って被測定面に固着される2枚のベース板と、前記変位センサが外力により影響を受けないように保護する弾性体から構成された防水保護体とからなり、前記ベース板は必要面積を有しており、接着剤により被測定面の所定個所に標点間隔と方向を確保して固着されることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明に係るひずみクラック計測装置は、請求項1記載の発明の構成において、前記変位センサはストレインゲージが薄帯状部材に貼り付けられてなり、前記ベース板間に介在して前記変位センサが被測定面の直接的影響を受けないように弾性体から構成された絶縁体を備え、前記ベース板と前記変位センサと前記固定部材と前記防水保護体と絶縁体とは一体化されて、現場取り付け作業の簡便化とひずみ測定範囲を拡大してクラックの発生後にも追従測定可能としたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明に係るひずみクラック計測装置は、請求項1又は2のいずれかに記載の発明の構成において、前記ベース板の固着面の反対側面に温度センサを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明に係るひずみクラック計測装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明の構成において、前記変位センサに近接又は一体化して設けられて、前記変位センサを作動すると共に測定データを収集して送信する測定装置を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明に係るひずみクラック計測装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明の構成において、前記変位センサに近接又は一体化して設けられて、前記変位センサを作動すると共に測定データを収集して測定値の評価を表示する表示装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、計測装置を小型にでき、コストを低減でき、現場取り付け作業が簡単にできる。また、ひずみが大きくなってクラックが発生しても、測定範囲を切り替えてクラックを容易に追従測定することが可能となる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、薄板状の全体仕上がりが可能となるため、一層容易に確実に被測定面に取り付けることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、温度の影響との相関性によるデータも把握して正確なひずみの測定ができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、測定のための長尺配線が不要となり、測定業務の簡便化と多数個所に対応した測定装置の小型化、低価格化を図ることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、多数の特定個所のひずみとクラックの測定が計測装置を大型化させることなく可能となり、未熟練者でも目視により容易に測定個所の状況を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のひずみクラック計測装置について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0018】
図1は本発明に係るひずみクラック計測装置の実施の形態を示す断面図、図2はその1部省略し、1部破断した平面図である。
【0019】
この実施の形態のひずみクラック計測装置(以下単に計測装置ともいう)は、橋、道路、トンネル等の建造物や岩盤、地中等の地盤等における歪みやクラック等を測定する変位センサ1と、変位センサ1の端部が固定される固定部材2と、間隔を持って被測定面Sに固着される2枚のベース板3とから構成されている。さらに、この計測装置は変位センサ1を固定部材2間に間隔を一定に保持して、防水保護する防水保護体4を備えると共に、1対のベース板3間に介在して変位センサ1が被測定面からの直接的な影響を受けないように弾性体から形成された絶縁体5とを備えている。
【0020】
変位センサ1は、起歪部のストレインゲージ11と、ストレインゲージ11が貼り付けられた薄帯状の鋼板12から構成されている。ストレインゲージ11は変形するとひずみ出力を発生する等の起歪部材からなり、薄帯状鋼板12の表裏に固定されている。薄帯状鋼板12はリング状に形成され、リングが変形することで起歪部材が変形するようにされている。リングの直径方向の端部が固定部材2に取り付けられている。1対の固定部材2間のほぼ中央部の鋼板12の中心を挟んだ直径方向の2個所にストレインゲージ11が固定されている。
【0021】
固定部材2は変位センサ1の端部を取り付ける取付部材21と、変位センサ1を所定の位置に維持して被測定面Sの変位を忠実に伝えるようにした連結部材22と、連結部材22をベース板3に取り付ける締結部材23とから構成されている。
【0022】
連結部材22は、容易に変形しないで被測定面Sの変位をストレインゲージ11に伝達するように、均質な鉄、アルミ、合金又はプラスチック等から形成されている。そして、連結部材22は締結部材23を取り付ける挿通穴22aを有している。連結部材22間に設けられたストレインゲージ11を防水保護し、連結部材22の変位伝達機能を確保して、防水保護体4が設けられている。防水保護体4はストレインゲージ11と固定部材2が外力を受けるのを絶縁し且つ防水するように形成されている。
【0023】
また、1対のベース板3間に介在して弾性体から形成された絶縁体5が設けられている。絶縁体5はベース板3の変位に影響を及ぼさないように、ストレインゲージ11と固定部材2が外力を受けるのを絶縁するように形成されている。また、防水機能と貼付簡便化機能をも有して形成されている。
【0024】
締結部材23はボルトとナット等から構成している。ベース板3に連結部材22を締結部材23によって固定する。これによって、ベース板3間の変位を締結部材23、連結部材22、取付部材21を経て変位センサ1に伝達する。
【0025】
ベース板3は均質な鉄、アルミ、合金、プラスチック等から形成され、被測定面Sの変位に追従するように接着剤6で被測定面Sに固着される。その固着層を均一な接着力の分布状態に形成することで各ベース板3の中央点をひずみ測定時の標点とすることができる。このことを根拠にベース板3の中央に挿通穴22aを設けている。
【0026】
被測定面Sの標点間隔Lはベ−ス板3の中央部に設けた連結部材22の固定位置間(挿通穴22a間)とすることができる。
【0027】
そして、変位センサ1が取付部材21に取り付けられ、取付部材21と固着した連結部材22がボルトナット等からなる締結部材23によりベース板3に強固に固着されて一体化されている。そのため、取り付けが容易にでき、変位センサ1が被測定面Sの変位に対応して変位を計測することができる。
【0028】
ベース板3、又は被測定面Sに接触して温度計7を設けている。このように被測定面Sの温度を計測して変位を温度で補正するようにひずみクラック計測装置を構成すると、温度の影響との相関関係を把握して正確なひずみの測定ができる。図2中符号8はストレインゲージ11のひずみ信号を伝達するケーブルである。
【0029】
次に、上記のように構成するクラック計測装置の組立から被測定面に取り付けて測定する操作について説明する。
【0030】
防水保護体4で封止した変位センサ1に固定部材2を取り付け、これを絶縁体5を介在させて締結部材23の中心間の距離を所定の距離になるようにしてベース板3に固着して一体化形成する。ベース板3および絶縁体5の下側露出面に接着剤を塗布して接着剤6層を形成する。接着剤6層は剥離紙等により運搬時に接着しないようにしておき、使用直前に剥がして貼付する。また、接着剤6層は事前形成せずに使用直前に接着剤を塗布して貼付固着するようにすることが可能であることは勿論である。
【0031】
そして、所要の被測定面Sに変位センサ1を貼付固着後は、必要な配線を施すと共に、0点設定を行って測定準備をする。そして、ひずみを測定する。ひずみが増加してクラックが発生したら、そこで、出力データは段差的変化が現れるので換算係数を変位対応にし、測定する。
【0032】
上記のように構成した本願発明のひずみクラック計測装置は、取り付け作業が容易で、装置の大型化を抑え、コストを低減することができる。
【0033】
なお、本願発明は上記実施の形態に限られないことは勿論である。例えば、上記において変位センサをストレインゲージと薄帯状鋼板を有する構成としているが、均質な鉄、アルミ、合金又はプラスチック等から薄帯状に形成したものであってもよいし、容量、光、電磁気等の変化を検出するようなものであってもよく、材料、種類等特に制限されない。
【0034】
また、ひずみクラック計測装置は、上記のように構成してなる計測装置を単位センサとし、多数の単位センサから構成するものであっても良い。例えば、図3に示すように、変位センサ1で測定したデータを一時格納する記憶手段を備えた測定装置10と、測定装置10を操作制御してデータを無線伝送にて集める測定制御器20と、測定したデータを処理するホスト処理制御器30とから構成する。そして、所定数の変位センサ1と測定装置とはケーブルで接続又は一体化し、変位センサ1で測定したデータを測定装置10で格納し、この格納したデータを測定制御器20で受信して集積・処理・格納し、さらにホスト処理制御器30においてデータを最終処理する。
【0035】
この図3に示すようなひずみクラック計測装置によれば、配線を必要最小限にすることで、リード線の抵抗値補正やノイズ対策が軽減できると共に、省資源化と省労力化が大きく図られ、且つ、複数の測定装置10を1台の測定制御器20の操作表示部にて制御することによりコストを低減できる。また、回路の調整機構のシンプル化や節電回路を設けることにより装置の小型化と太陽発電による省エネルギー化、低価格化が図れる。
【0036】
さらに、ひずみクラック計測装置は、図4に示すように、変位センサ1と、変位センサ1を操作してその測定データ信号を入力すると共にデータ処理して評価を表示する表示装置40とから構成する。測定データ処理したその評価の表示は、例えば、変位センサ1の測定値に基づき段階毎に表示ランプ41に表示する。
【0037】
表示装置40は、トンネルの内部などの暗空間で使用できるように、電源として、例えば、2次電池とソーラパネルとを備え、エネルギーを自給する。例えば、スポットライト42からソーラパネルに起動信号を送ると共にエネルギーを供給し、表示装置40及び変位センサ1を操作し、データを収集して演算し、評価段階毎に色別ランプにて表示する。
【0038】
この図4に示すようなひずみクラック計測装置によれば、配線を必要最小限にすることで、装置の大型化を抑え、電力消費を小さくでき、電池交換を少なくでき、コストを低減することができる。また、操作が簡単、明瞭であり、未経験者でもモニタができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態におけるひずみクラック計測装置を示す断面図である。
【図2】その1部を省略し、1部破断した平面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態におけるひずみクラック計測装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明のさらに他の実施の形態におけるひずみクラック計測装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
1 変位センサ
2 固定部材
3 ベース板
4 防水保護体
5 絶縁体
6 接着剤
11 ストレインゲージ
12 薄帯状鋼板
21 取付部材
22 連結部材
22a 挿通穴
23 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象部の変位を検出する変位センサと、該変位センサの両端部にそれぞれ固定される固定部材と、固定部材に連結され且つ中央部位を標点として間隔を持って被測定面に固着される2枚のベース板と、前記変位センサが外力により影響を受けないように保護する弾性体から構成された防水保護体とからなり、前記ベース板は必要面積を有しており、接着剤により被測定面の所定個所に標点間隔と方向を確保して固着されることを特徴とするひずみクラック計測装置。
【請求項2】
前記変位センサはストレインゲージが薄帯状部材に貼り付けられてなり、前記ベース板間に介在して前記変位センサが被測定面の直接的影響を受けないように弾性体から構成された絶縁体を備え、前記ベース板と前記変位センサと前記固定部材と前記防水保護体と絶縁体とは一体化されて、現場取り付け作業の簡便化とひずみ測定範囲を拡大してクラックの発生後にも追従測定可能としたことを特徴とする請求項1に記載のひずみクラック計測装置。
【請求項3】
前記ベース板の固着面の反対側面に温度センサを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のひずみクラック計測装置。
【請求項4】
前記変位センサに近接又は一体化して設けられて、前記変位センサを作動すると共に測定データを収集して送信する測定装置を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のひずみクラック計測装置。
【請求項5】
前記変位センサに近接又は一体化して設けられて、前記変位センサを作動すると共に測定データを収集して測定値の評価を表示する表示装置を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のひずみクラック計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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