説明

アイオノマー製内側カバー、堅固なTPU製中間カバー、および注型熱硬化性外側カバーを具備するゴルフボール

【課題】コアおよび層の材料およびボール構造の組み合わせを見出す事により予め定めた性能基準を満たすゴルフボールを提供する。
【解決手段】ゴルフボールはコアおよびこのコアに隣接して配されたカバーを含む。カバーは硬度が55から60ショアDの熱可塑性内側カバー層、硬度が55から60ショアDの外側カバー層、並びに、内側および外側カバー層の間に配された非アイオノマー製の熱可塑性ポリウレタンまたはポリ尿素の中間カバー層を含む。中間カバー層の硬度は内側カバー層の硬度および外側カバー層の硬度よりも大きい。内側カバー層は部分的にまたは十分に中和されたアイオノマーから製造され、外側カバー層はポリウレタン、ポリ尿素、またはウレタン−尿素ブレンドから製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全般的にはコアを伴うゴルフボールに関し、より具体的には、少なくとも3つの層を含むカバーであって、中間カバー層が熱可塑性ポリウレタンまたはポリ尿素材料から製造されるものを具備するゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、商業的に入手可能な主たるゴルフボールはソリッド構造である。ソリッドゴルフボールはワンピース、ツーピース、および多層ゴルフボールを含む。ワンピースゴルフボールは、廉価で、構築しやすいけれども、プレイ特性が制約され、その使用は、最高のできでも、ドライブ範囲の制約を受ける。ツーピースゴルフボールは、ソリッドのポリブタジエンコアおよびカバーを具備して一般に構築され、典型的には、リクリエーションゴルファーに最も人気がある。それは、ツーピースゴルフボールは耐久性があり、良好な飛距離を実現するからである。このようなゴルフボールも比較的廉価で、製造しやすいけれども、トッププレーヤは、これらのゴルフボールも限定的なプレイ特性しか実現しないと考えている。多層ゴルフボールはソリッドコアおよびカバーを有して成り、そのいずれかが1または複数の層から形成されて良い。このようなボールは、プレイ特性の幅を広げるけれども、ワンピースおよびツーピースのゴルフボールと比べて高価であり、製造も困難である。
【0003】
糸巻ボールは、典型的には、テンションを付けて巻き付けた弾性材料の層、およびカバーにより包囲された液体充填センタを含んでおり、そのスピンおよび「フィーリング」の特性から好まれていたけれども、ソリッドゴルフボールに比べて製造するについて困難であり、高価であった。製造業者は、糸巻ボールの利点を同時に実現するソリッドボールを製造を常に求めてきた、
【0004】
製造業者は、広範囲の種々のプレイ能力の競技者に適合するように、ゴルフボールのプレイ特性、例えば、圧縮、速度、およびスピンを調整でき、最適化できる。例えば、製造業者は、種々のゴルフボール部品(すなわち、センタ、コア、中間層、およびカバー)の各々またはすべての材料および/または物理特性を変更することによって、これら特性のいずれかまたはすべてを変更することができる。コアおよび層の材料および理想的なボール構造の正しい組み合わせを見いだすことにより、予め定められた性能基準の組に適したゴルフボールを製造することが、課題である。
【0005】
マルチゴルフボールを構築する際の努力は、一般に、アイオノマーおよび/またはポリウレタン組成物から製造される1または2つのカバー層を使用することに向けられてきた。したがって、この発明によれば、ウレタンまたは尿素の外側カバー層、少なくとも2つの内側カバー層、および少なくとも1つのコア層により製造されるゴルフボールを構築することが望ましい。具体的には、この構造は、堅固な熱可塑性ポリウレタンまたはポリ尿素の中間カバー層を、堅固な、弾力性のある熱可塑性内側カバー層および熱硬化性の注型可能な外側カバー層と関連して含むことが望ましい。
【発明の開示】
【0006】
この発明は、コアと、このコアに隣接して配されたカバーとを含むゴルフボールに向けられている。カバーは、上記コアの回りに配され、55および60ショアDの間の硬度を伴う熱可塑性の内側カバー層と;55および60ショアDの間の硬度を伴う外側カバー層と;上記内側および外側カバー層の間に配され、その硬度が上記内側カバー層の硬度および上記外側カバー層の硬度より大きい、非アイオノマー性の熱可塑性ポリウレタンまたはポリ尿素の中間カバー層とを有する。上記内側カバーは部分的または完全に中和されたアイオノマーを有し、上記外側カバー層はポリウレタン、ポリ尿素、またはウレタン−尿素ブレンドである。
【0007】
1実施例において、上記中間層の硬度は上記内側カバー層の硬度および上記外側カバー層の硬度より少なくとも5ショアDだけ、より好ましくは、少なくとも10ショアDだけ、大きい。他の実施例において、上記中間層の硬度は60ショアDまたはそれ以上であり、より好ましくは、75ショアDまたはそれ以上であり、最も好ましくは、80ショアDから90ショアDである。
【0008】
上記のポリウレタン、ポリ尿素、またはウレタン−尿素ブレンドは、注型可能な熱硬化性または反応性射出成型可能な熱硬化性材料である。上記外側カバーは、典型的には、注型可能な熱硬化性ポリ尿素であり、上記内側カバー層は異なる金属カチオンを具備する2またはそれ以上のアイオノマーからなるアイオノマーブレンドを有し、上記中間カバー層はポリカーボネート−ポリウレタン、ポリカーボネート−ポリ尿素、または、ポリウレタンまたはポリ尿素とのポリカーボネートブレンドを有する。
【0009】
上記コアはセンタおよび少なくとも1つの外側コア層を有する。好ましくは、上記センタおよび/またはセンタ(二重コア構造において)は均一な組成から製造される単一のソリッド層である。上記非アイオノマー性の熱可塑性ポリウレタンまたはポリ尿素の中間カバー層は、ポリオレフィン、ポリアミド、またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマーでブレンドされてもよい。
【0010】
1実施例において、上記外側カバーは熱可塑性のポリウレタンを有し、上記内側カバー層は異なる金属カチオンを具備する2またはそれ以上のアイオノマーからなるアイオノマーブレンドから製造され、上記中間カバー層は少なくとも1つの熱可塑性シリコーン−ポリウレタンまたは熱可塑性シリコーン−ポリ尿素を有する。上記熱可塑性の内側カバー層はさらにポリオレフィン、メタローセン、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性エラストマー、コポリエーテル−アミド、コポリエーテル−エステル、またはこれらの混合物を有してよい。
【0011】
他の代替的な実施例において、上記内側カバー層、上記中間カバー、および上記外側カバーの組み合わせは全体で0.125インチ以下、より好ましくは、0.115以下の厚さである。上記外側カバー層の硬度は好ましくは上記内側カバー層の硬度より小さい。
【0012】
この発明は、また、コアと、コアに隣接して配されたカバーとを有するゴルフボールに向けられている。上記カバーは、上記コアの回りに配され、55ショアDから60ショアDの硬度を伴うアイオノマー性で熱可塑性の内側カバー層と;55ショアDおよび60ショアDの間の硬度を伴う注型可能な熱硬化性の外側カバー層と;上記内側および外側カバー層の間に配された、非アイオノマー性の熱可塑性の中間カバー層とを有する。上記中間層の硬度は、上記内側カバー層の硬度および上記外側カバー層の硬度より大きい。上記内側カバー層は第1の厚さを伴い、上記外側カバー層は第2の厚さを伴い、上記中間カバー層は、上記第1または上記第2の厚さより少なくとも20%薄い第3の厚さを伴う。
【0013】
この発明は、さらに、コアと、コアに隣接して配されたカバーとを有するゴルフボールに向けられている。上記カバーは、上記コアの回りに配され、55ショアDから60ショアDの間の硬度を伴うアイオノマー性で熱可塑性の内側カバー層と;55ショアDおよび60ショアDの間の硬度を伴う注型可能な熱硬化性ポリウレタンの外側カバー層と;上記内側および外側カバー層の間に配された、非アイオノマー性で熱可塑性のポリカーボネート−ポリウレタンまたはポリカーボネート−ポリ尿素の中間カバー層とを有する。中間層の硬度は上記内側カバー層の硬度および上記外側カバー層の硬度より大きい。さらに、上記内側カバー層は第1の厚さを伴い、上記外側カバー層は第2の厚さを伴い、上記中間カバー層は、上記第1または上記第2の厚さより少なくとも20%薄い第3の厚さを伴う。好ましくは、上記中間層の硬度は60ショアD、より好ましくは、75ショアDより大きい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明のゴルフボールは、コアと、外側カバー、および、少なくとも2つの内側カバー層、例えば、1つの内側カバー層、並びに、外側カバー層およびその内側カバー層の間に配された中間カバー層を有するカバーとを含む。この発明のゴルフボールコアは種々の構造で製造して良い。例えば、コアは複数の層、例えば、センタおよび外側コア層を含んで良い。コアは好ましくはソリッドであるが、液体、発泡体、ゲル、または空洞センタを有して良い。ゴルフボールはテンション付けされた弾性材料の層を、例えば、コアおよび三重カバーの間に位置づけて含んでもよい。好ましい実施例では、コアはソリッドコアである。
【0015】
ソリッドコア用の材料は、ベースゴム、フィラー、開始剤、および架橋剤を具備する組成物を含む。ベースゴムは典型的には天然または合成ゴム、例えばポリブタジエンゴムを含む。好ましいベースゴムは、少なくとも40%のcis−構造を有する1,4−ポリブタジエンである。ただし、最も好ましくは、ソリッドコアは、高ムーニー粘度ゴムおよび架橋剤を有する弾性ゴムベースの成分から製造される。
【0016】
この発明のコアを製造するための他の適切なゴムはtrans−ポリブタジエンである。このポリブタジエン異性体は、成型サイクルの間に、ポリブタジエンのcis−異性体をtrans−異性体に変換することにより製造される。ポリマー、cis−to−trans触媒、フィラー、架橋剤、およびフリーラジカル源、の種々の組み合わせを採用できる。cis−trans変換を実現するための種々の方法および材料は米国特許第6,162,135号、同第6,465,578号、同第6,291,592号、および同第6,458,895号に開示されており、参照してここに組み入れる。
【0017】
さらに、いずれの具体的な理論に拘束されることを望まないが、1,2−ポリブタジエン異性体(「ビニルポリブタジエン」)が当初のポリブタジエン中に少量あることが、trans−異性体への変換に好ましい。典型的にはビニルポリブタジエン異性体の量は、約7%未満、より好ましくは約4%未満、最も好ましくは約2%未満である。
【0018】
ゴルフボールの1またはそれ以上の部分に添加されるフィラーは、典型的には、処理助剤、すなわち、レオロジー特性および混合特性、比重(すなわち密度調整用フィラー)、弾性率、引き裂き強度、強化性、その他に影響を与える化合物を含む。フィラーは一般に無機物であり、適切なフィラーは多数の金属または金属酸化物を含み、例えば酸化亜鉛及び酸化スズ、ならびに硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、クレイ、タングステン、炭化タングステン、シリカのアレイ、及びこれらの混合物を含む。フィラーは種々の発泡剤又はブローイング剤、炭酸亜鉛、リグリンド(粒子サイズが典型的には約30メッシュ以下に粉砕されたリサイクルされたコア材料)、高ムーニーゴムリグリンド、その他を含んでも良い。ポリマー、セラミック、金属およびガラスの微小球はソリッドまたは空洞でよく、充填でも非充填でも良い。フィラーも典型的にはゴルフボールの1部又は複数部分に添加されてその密度を調整し、均一なゴルフボール標準に適合させる。フィラーを使用してセンタ又は特別なボールのための少なくとも一つの追加的な層の質量を調整することもできる。
【0019】
開始剤は硬化サイクルで分解する重合開始剤として知られている。適切な開始剤は、ペルオキシド化合物、例えば、ジクミルペルオキシド、1,1−ジ−(t−ブチルペロキシ)、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、a−aビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンまたはジ−t−ブチルペルオキシドおよびこれらの混合物である。
【0020】
架橋剤は、反応生成物の硬度および弾力性を増大させるために含まれる。架橋剤は、不飽和脂肪酸の金属塩、例えば、3〜8の炭素原子の不飽和脂肪酸、例えばアクリル酸またはメタクリル酸の亜鉛塩またはマグネシウム塩である。適切な架橋剤は金属塩ジアクリレート、ジメタクリレートおよびモノメタクリレートであり、金属はマグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、ナトリウム、リチウムまたはニッケルである。好ましいアクリレートはアクリレート亜鉛、ジアクリレート亜鉛、メタクリレート亜鉛、およびジメタクリレート亜鉛、ならびにその混合物である。
【0021】
架橋剤は、弾力性のあるポリマー成分中のポリマーの鎖部分を架橋するのに十分な量だけ存在する必要がある。例えば、当業者に周知な架橋剤のタイプおよび量、方法を変更して、これを実現できる。
【0022】
コアが、高ムーニー粘度ゴムを有する単一のソリッド層から製造されるときには、架橋剤が、100部あたり約15から約40部存在し、より好ましくは、100部あたり約30から約38部存在し、最も好ましくは、100部あたり約37部存在する。
【0023】
この発明の他の実施例において、コアはソリッドセンタおよび少なくとも1つの外側コア層を有する。オプションの外側コア層があるときには、センタは、好ましくは高ムーニー粘度ゴム、および、ゴムの100部に対して約10部から約30部の量だけ、好ましくはゴムの100部に対して約19部から約25部の量だけ、最も好ましくはゴムの100部に対して約20部から24部だけ存在する架橋剤を有する。適切な商業的に入手可能なポリブタジエンゴムは、これに限定されないが、Laxess社からのCB23、CB22、Takene(商標)220、Karbochem社からのNeodene(商標)40およびNeodene(商標)45、韓国のLG社からのLG1208、およびインドのBasstech社からのCissamer(商標)1220を含む。他のゴム、例えば、ブチルゴム、クロロまたはブロミルブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、またはトランスポリイソプレンを、ポリブタジエンに添加して特性または処理を修正して良い。
【0024】
さらに、非加硫ゴム、例えば、ポリブタジエンは、典型的には、約40から約80、より好ましくは、約40から約60、最も好ましくは約40から約55のムーニー粘度を有する。ムーニー粘度は典型的にはASTM D−1646に従って測定される。
【0025】
この発明に従って、ゴルフボールセンタまたはコアの任意の部分を形成するために用いられる、ポリマー、遊離基開始剤、フィラー、架橋剤、および、任意の他の材料が組みあわされて、当業者に知られている任意のタイプの混合により混合物を形成できる。適切なタイプの混合は単一パスおよびマルチパス、その他を含む。ゴルフボールセンタまたは付加的な層(複数でも良い)の特性を修正するために用いられる架橋剤、および任意の他の添加物を、任意のタイプの混合により同様に組みあわせても良い。単一パス混合処理では成分を順次的に加えるが、このタイプの混合は処理の効率を向上させコストを減少させるので、好ましいものである。この好ましい混合サイクルは、ポリマー、cis−to−trans触媒、フィラー、亜鉛ジアクリレート、および過酸化物を順次的に加える、単一ステップである。
【0026】
ゴルフボールのカバーは、好ましくは、少なくとも3つの層、例えば、内側カバー層、中間カバー層、および外側カバー層からなる多層カバーである。この発明の種々のカバー層は個々に任意の厚さを伴って良いけれども、カバー層の厚さの組み合わせは約0.125インチ、より好ましくは約0.105インチ、最も好ましくは約0.09インチ以下であることが好ましい。
【0027】
このような少なくとも3つのカバー層の任意の1つの厚さは、約0.05インチ未満、より好ましくは、約0.010インチおよび約0.045インチの間である。最も好ましくは、これらの層の任意の1つの厚さは約0.02インチおよび約0.04インチの間である。
【0028】
内側カバーは当業者に知られている任意の材料を含んで良く、これは、熱可塑性および熱硬化性材料を含むけれども、好ましくは、エチレンと不飽和モノカルボン酸のイオン性コポリマーを含み、これは、例えば、ウィルミントンのデュポン(E.I.DuPont de Nemours & Co.,Wilmington,DE)から商業的に入手できるSURLYN(商標)、またはエクソン(Exxon)から商業的に入手できるIOTEK(商標)またはESCOR(商標)を含む。これらは亜鉛、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、マンガン、ニッケル等の塩により部分的に中和したメタクリル酸またはアクリル酸とエチレンとのコポリマーまたはターポリマーであり、これらの塩は2〜8の炭素原子を有するオレフィンと3〜8の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸との反応生成物である。コポリマーのカルボン酸基は全て又は部分的に中和されていてもよく、かつメタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸又はイタコン酸を含むことができる。
【0029】
この発明の内側カバー層は同様にホモポリマーまたはコポリマー材料とブレンドされてよく、この材料は、例えば、つぎのものである。(1)ビニル樹脂、例えば塩化ビニルの重合によって製造したもの、又は塩化ビニルと酢酸ビニル、アクリルエステル又は塩化ビニリデンとの共重合によって製造したもの;(2)ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン及びコポリマー、例えばエチレンメチルアクリレート、エチレンエチルアクリレート、エチレンビニルアセテート、エチレンメタクリル酸又はエチレンアクリル酸又はプロピレンアクリル酸及び単一サイト触媒を使用して製造したコポリマー及びホモポリマー;(3)ポリエステルおよびポリアミドを含む非弾性熱可塑性材料、例えばポリ(ヘキサメチレンアジパミド)及びその他のジアミンと二塩基酸から製造したもの、及びアミノ酸、例えばポリ(カプロラクタム)から製造したもの;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/グリコール、ポリエチレン酸化物樹脂を含む非弾性熱可塑性材料;および、非弾性熱可塑性材料と、Surlyn(商標)、ポリエチレン、エチレンコポリマー、エチレン−プロピレンジエンターポリマー、その他とのブレンド;(4)熱可塑性ゴム、例えば、ポリオレフィンのエチレン−プロピレンジエンターポリマーとのブレンドを含むオレフィン系熱可塑性ゴム;(5)スチレンとブタジエン、イソプレン又はエチレン−ブチレンゴムのブロックコポリマー、コポリ(エーテル−アミド)、例えばELF Atochem社が市販するPEBAX(商標)、Dupont社からHytel(商標)として、またはGeneral Electric社からLomod(商標)として市販されているコポリ(エステル−エーテル)ブロックコモリマーを含む、熱可塑性エラストマー;(6)2個〜8個の炭素原子のオレフィン系モノマーを具備する第1のモノマー成分、4個〜22個の炭素原子を具備する不飽和カルボン酸ベースのアクリレートクラスのエステルを有する第2のモノマー成分、および、少なくとも1つのモノマー、例えば一酸化炭素、二酸化硫黄、無水物、ギリシジル基およびビニルエステルを有し、十分な量の無機金属塩基を伴うオプションの第3のモノマー成分を具備するコポリマーまたはターポリマーを反応させて得る鹸化ポリマーを含む、鹸化ポリマーおよびそのブレンド;(7)グリシジルアルキルアクリレートおよび無水マレイン酸で、2個〜8個の炭素原子のオレフィン系モノマーを具備する第1のモノマー成分、4個〜22個の炭素原子を具備する不飽和カルボン酸ベースのアクリレートクラスのエステルを有する第2のモノマー成分、および、一酸化炭素、二酸化硫黄、無水物、ギリシジル基およびビニルエステルからなるグループから選択された少なくとも1つの要素を有するオプションの第3のモノマー成分を伴う、グリシジルアルキルアクリレートおよび無水マレイン酸基を含む、グリシジルアルキルアクリレートおよび無水マレイン酸基を含有するコポリマーおよびターポリマー;(8)約5〜35重量%のアクリルまたはメタクリル酸を有するカルボン酸コポリマーとエチレンから製造される、酸コポリマーまたはアイオノマー誘導体で、コポリマーが約130°C〜200°Cの温度、および約20,000psi〜50,000psiの圧力でコポリマーが重合され、約70%までの酸基が金属イオンで中和されているもの、を含む高結晶性酸コポリマーおよびそのアイオノマー;および(9)つぎの化学式を有する主鎖中にオキサ部分を含有し、
【化1】

ここでRはつぎの化学式を具備する部分、アルキル、炭素環および複素環の基を有する有機部分であり、
【化2】

R’はアルキル、炭素環、炭素環酸、および複素環の基を有する基であり、nは1を超える整数であるところの蓚酸化合物を含む、蓚酸化合物。
また、R’はつぎの化学式を伴ってもよい。
【化3】

【0030】
好ましくは、内側カバーはつぎのようなポリマーを有する。すなわち、エチレン、プロピレン、ブテン−1またはヘキサン−1をベースとするホモポリマーまたはコポリマーであって官能性モノマー、例えばアクリル酸およびメタクリル酸を含むものおよび完全にまたは部分的に中和したアイオノマー樹脂およびこれらのブレンド、メチルアクリレート、メチルメタクリレートホモポリマーおよびコポリマー、イミド化した、アミノ基を含むポリマー、ポリカーボネート、強化ポリアミド、ポリフェニレンオキシド、高耐衝撃性ポリスチレン、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリ(フェニレンスルフィド)、アクリロニトリル−ブタジエン、アクリル−スチレン−アクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(テトラフルオロエチレン)およびこれらのコポリマーであって官能性コモノマーを含むもの、およびこれらのブレンドを有する。さらに、適切な内側カバー層は、好ましくは、ポリエーテルまたはポリエステル熱可塑性ウレタン、熱硬化性ポリウレタン、アイオノマー、例えば酸を含むエチレンコポリマーアイオノマーを含み、Eがエチレンであり、Xが0〜50重量%存在するアクリレートまたはメタクリレートをベースとする柔軟化コモノマーであり、かつYが5〜35重量%存在するアクリル酸またはメタクリル酸であるE/X/Yターポリマーを含む。アクリル酸またはメタクリル酸が約10〜12重量%存在すると、アイオノマーは低モジュラスアイオノマーにでき、アクリル酸またはメタクリル酸が約16〜35重量%存在すると、アイオノマーは高モジュラスアイオノマーにできアクリル酸またはメタクリル酸が約13〜15重量%存在すると、アイオノマーは標準的なアイオノマーにできる。
【0031】
好ましくは、内側カバー層は、つぎのようなポリマーを含む。すなわち、エチレン、プロピレン、ブテン−1またはヘキサン−1をベースとするホモポリマーまたはコポリマーであって官能性モノマー、例えばアクリル酸およびメタクリル酸を含むものおよび完全にまたは部分的に中和したアイオノマー樹脂およびこれらのブレンド、メチルアクリレート、メチルメタクリレートホモポリマーおよびコポリマー、イミド化した、アミノ基を含むポリマー、ポリカーボネート、強化ポリアミド、ポリフェニレンオキシド、高耐衝撃性ポリスチレン、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリ(フェニレンスルフィド)、アクリロニトリル−ブタジエン、アクリル−スチレン−アクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(テトラフルオロエチレン)およびこれらのコポリマーであって官能性コモノマーを含むもの、およびこれらのブレンドを含む。
【0032】
適切な内側カバー層は、また、ポリエーテルまたはポリエステル熱可塑性ウレタン、熱硬化性ポリウレタン、低モジュラスアイオノマー、例えば酸を含むエチレンコポリマーアイオノマーを含み、Eがエチレンであり、Xが約0〜50重量%存在するアクリレートまたはメタクリレートをベースとする柔軟化コモノマーであり、かつYが約5〜35重量%存在するアクリル酸またはメタクリル酸であるE/X/Yターポリマーを含む。より好ましくは、飛距離を最大化するように設計された低スピンレートの実施例では、アクリル酸またはメタクリル酸を約16〜35重量%含み、アイオノマーを高弾性率のアイオノマーにする。より大きなスピンの実施例においては、内側カバー層は、酸が約10〜15重量%だけ存在するアイオノマーを含む、また、軟化コモリマーを含む。
【0033】
この発明のゴルフボールの中間層は好ましくは堅固な熱可塑性ポリウレタンまたはポリ尿素から製造される。典型的な熱可塑性ウレタン(TPU)の分子構造は、互い違いとされた、高溶融の「ハード」ウレタンセグメントおよび液状の「ソフト」セグメントからなる。
【0034】
ハードセグメントは典型的には、芳香族または脂肪族ジイソシアネートおよび低分子量、鎖延長ジアルコールまたはジオールの反応生成物である。適切なジイソシアネートはアルキルジイソシアネート、アリールアルキルジイソシアネート、シクロアルキルアルキルジイソシアネート、アルキルアリールジイソシアネート、シクロアルキルジイソシアネート、アリールジイソシアネート、シクロアルキルアリールジイソシアネート、酸素で置換されたそれらすべて、およびこれらの混合物を含む。コポリマーの準備に使用される鎖延長体は、脂肪族ポリオール、または脂肪族あるいは芳香族ポリアミン、例えば、ポリウレタンおよびポリ尿素の準備に使用されるものとして知られているものであってよい。ハードセグメント用のポリオールはアルキレン、シクロアルキレン、アリーレンジオール、トリオール、テトラアルコール、およびペンタアルコール、ならびにこれらの混合物であってよい。ハードセグメントのポリアミンは、アルキル、シクロアルキル、アリールアミンであってよく、これは、さらに、窒素、酸素、ハロゲン、そのアルカリ金属塩の錯体で置換したものでもよく、またこれらの混合物であってよい。
【0035】
ハードセグメントは方向族でも脂肪族であってもよい。芳香族TPUは慣用的にはメチレンジフェニル4,4’−ジイソシアネート(「MDI」)をベースにするが、脂肪族PTUは慣用的にはジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(「H12MDI」)をベースにする。
【0036】
ソフトセグメントは末端ヒドロキシル基(−OH)を伴うポリオールから構築して良い。ヒドロキシル基がウレタン基を生成する一方で、イソシアネートおよび既存のウレタン基との反応により、TPU中にわずかな量の共有結合性架橋を生成するアオファネートが形成される。水素結合されたハードセグメントおよび任意のアロファネート架橋の双方はその使用温度において一緒にポリマーを保持し、TPUが加熱されるとき、これらが解離してポリマーを溶融させて流れるようにする。極性溶媒への溶解でも、隣接鎖においてハードセグメントを一緒に保持する水素結合が分離可能になる。これらの実質的な架橋が一旦崩壊すると、ポリマーはゴルフボールへと製造可能になる。冷却または蒸発時に、ハードセグメントがソフトセグメントから分離されて水素結合により連結する。これにより、ポリウレタンエラストマーの当初の機構的な特性が復元される。ポリエーテルおよびポリカーボネートのTPUは、一般に、高伸長性および高引張強度を組みあわせながら、良好な高弾性を具備する優れた物理特性を有する。合成中にTPUのハードセグメントを可変することにより、関連する化学特性の全体のファミリーでありながら広範囲の硬度、弾性、引張強度の特性および伸長性を実現できる。ゴルフボールを製造する際に、単一のファミリーにおいて異なる硬度値のTPUを使用して製造の柔軟性を著しく向上させることができる。
【0037】
一般の熱可塑性ポリ尿素の分子構造は、堅固な「ハードセグメント」および柔軟な「ソフトセグメント」からなる。ハードセグメントは典型的には、芳香族または脂肪族ジイソシアネートを、芳香族または脂肪族の鎖延長性ジアミンと反応させて尿素リンクを形成することにより形成される。ソフトセグメントはアミン末端性のポリエーテル、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、または他の適切な長鎖骨格から構築できる。ソフトセグメントのハードセグメントすなわちジイソシアネートとの反応生成物により尿素リンクが形成される。
【0038】
他の適切なTPUは、これに限定されないが、芳香族または脂肪族ウレタンハードセグメントにシリコーンベースのソフトセグメントを加えて熱可塑性シリコーン−ウレタンコポリマーを形成するようなシリコーン−ウレタン材料を含み、これは、そのハードセグメントおよびソフトセグメントをポリカーボネートで組みあわせて熱可塑性シリコーン−ポリカーボネートウレタンコポリマーを形成し、そのハードセグメントおよびソフトセグメントをポリエチレン酸化物で組みあわせて熱可塑性シリコーン−ポリエチレン酸化物ウレタンコポリマーを形成する。
【0039】
今日入手可能な熱可塑性シリコーン−ポリエーテルウレタンコポリマーは、PurSil(商標)を含み、入手可能な熱可塑性シリコーン−ポリカーボネートウレタンコポリマーは、CarboSil(商標)を含み、熱可塑性シリコーン−ポリエチレン酸化物ウレタンコポリマーはHydrosil(商標)を含む。米国特許第5,863,627号および同第5,530,830号はPurSil(商標)、CarboSil(商標)、およびHydrosil(商標)がどのように処理されるかを説明しており、これらは参照してここに組み入れる。シリコーンをソフトセグメント中に含有する熱可塑性エラストマー、例えば、PurSil(商標)は、マルチステップバルク合成により準備される。この合成では、ハードセグメントは、低分子量グリコール伸長ブタンジオールを伴う芳香族ウレタンMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート−ブタンジオール)であり、ソフトセグメントはポリジメチルシロキサンを含むポリテトラメチレン酸化物を有する。
【0040】
ポリジメチルシロキサンに加えて、他の適切な表面調整用の末端基は、単独で使用されても良いし、相互に組みあわせて使用されても良いが、炭化水素、フッ化水素、フッ化ポリエーテル、ポリアルキレン酸化物、種々のスルホン化基、その他を含む。表面修正用の末端基は、合成時に、ベースポリマーに共有結合で結合された表面活性オリゴマーである。芳香族または脂肪族ハードセグメントが炭化水素のソフトセグメント表面調整用末端基と組みあわされると、炭化水素ポリウレタンが製造され、ゴルフボール用の優れた特性を伴う。
【0041】
熱可塑性ポリカーボネート−ウレタンコポリマーも、この発明の中間層に適切な材料であり、良好な酸化安定性、優れた機械強度、および対摩耗性をもたらす。商業的に入手可能な熱可塑性ポリカーボネート−ポリウレタンTPUは、これに限定されないが、カリフォルニア州、バークレイのPolymer Technology Group社が製造するBioate(商標)55Dおよび75DのようなBioate(商標)ポリカーボネート−ウレタンを含む。
【0042】
Bioate(商標)ポリカーボネート−ウレタンは、ヒドロキシル末端ポリカーボネート、芳香族ジイソシアネート、および、鎖伸長体としての低分子量グリコールの反応生成物として形成される熱可塑性エラストマーである。具体的な実施例では、ポリカーボネートグリコール中間体、ポリ(1,6−ヘキシル−1,2−エチルカーボネート)ジオールは、1,6−ヘキサンジオールの環状エチレンカーボネートとの縮合生成物である。ポリカーボネートが芳香族イソシアネート、4,4’−メチレンビスフェニルジイソシアネートと反応し、1,4−ブタンジオールで鎖伸長される。
【0043】
Bionate(商標)化合物の極限引張強度は10,000psiを超えることが可能である。この発明の極限伸長性は約20〜1000%であり、好ましい伸長性は少なくとも約400〜約800%である。この発明に適した材料の初期弾性は約300〜150,000psiであり、好ましくは約10,000〜約80,000psiの間である。
【0044】
他の適切な商業的に入手可能なTPUは、ドイツのHuntsman Polyurethanes社のD60E4024のようなE−SeriesTPU、ペンシルベニア州、ピッツバーグのBayer社の、商標であるTexin(商標)250、Texin(商標)255、Texin(商標)260、Texin(商標)270、Texin(商標)950U、Texin(商標)DP7−1202、Texin(商標)970U、Texin(商標)3203、Texin(商標)4203、Texin(商標)4206、Texin(商標)4210、Texin(商標)4215、およびTexin(商標)3215、Desmopan(商標)453の下で販売されているTPUを含む。
【0045】
米国特許第6,855,793号、同第6,739,987号、および同第7,037,217号は、それぞれ、好ましいポリカーボネート−ポリウレタンコポリマー、シリコーン−ポリウレタンコポリマー、および、シリコーン−ポリウレタンを開示し、その内容は参照してここに組み入れる。
【0046】
この発明のTPU(熱可塑性ポリウレタンおよび熱可塑性ポリ尿素の双方)は、また、他の熱可塑性ポリマー、例えば、ポリカーボネート、ポリビニルクロライド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、およびポリアミドと容易にブレンドされる。任意のTPUブレンド、アロイ、またはコポリマーもこの発明の中間層に適しており、これは、例えば、TPU/ポリカーボネート;TPU/ABS、TPU/SMA(スチレン−無水マレイン酸);TPU/スチレン−ブタジエンまたはスチレン−エチレン−ブタジエンブロックコポリマー;TPU/ポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレンゴム(「EPR」)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(「EPDM」)、およびエチレン−ビニルアセテート;またはTPU/改質ポリオレフィン、例えば、DuPont Fusabond(商標)官能化(典型的には無水マレイン酸グラフト化による)メタローセン触媒ポリエチレン、または任意の他の極性基改質エチレンコポリマー、例えばDow Amplify(商標)IO、GR、またはEAグレードのポリマーである。
【0047】
この発明のゴルフボールは種々の異なるカバー材料から製造されて良いけれども、好ましい外側カバー層の材料は、これに限定されないが、(1)ポリウレタン、例えば、ポリオールまたはポリアミンとジイソシアネートおよび/またはそのプレポリマーから準備されたポリウレタン、および、米国特許第5,334,673号、および同第6,506,851号に開示されているポリウレタン;(2)ポリ尿素、例えば、米国特許第5,484,870号、および同第6,835,794号に開示されているポリ尿素、(3)ウレタンまたは尿素セグメントを有する、ポリウレタン−尿素ハイブリッド、ブレンドまたはコポリマー、(4)少なくとも1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つの硬化剤の反応生成物を有する他の適切なポリウレタン組成物を含み、これは米国特許第7,105,610号および同第7,491,787号に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0048】
適切なポリウレタン組成物は、少なくとも1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つの硬化剤の反応生成物を有する。硬化剤は、これに限定されないが、例えば、1以上のポリアミン、1以上のポリオール、またはこれらの組み合わせを含んでよい。ポリイソシアネートは1以上のポリオールと組みあわされてプレポリマーを形成でき、これはつぎに少なくとも1つの硬化剤と組みあわされる。そして、ここに説明されるポリオールは、ポリウレタン材料の成分、すなわち、プレポリマーの部分としての成分、および硬化剤中の成分の一方または双方において使用するのに適切である。適切なポリウレタンは米国特許第7,331,878号に説明されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0049】
この発明の外側カバーに使用して好適なポリイソシアネートの例示は以下を含むがこれに限定されない。すなわち、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」);ポリマーMDI;カルボジイミド−変性液状MDI;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(「H12MDI」);p−フェニレンジイソシアネート(「PPDI」);m−フェニレンジイソシアネート(「MPDI」);トルエンジイソシアネート(「TDI」);3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」);ナフタレンジイソシアネート;キシレンジイソシアネート;p−テトラメチルキシレンジイソシアネート;m−テトラメチルキシレンジイソシアネート;エチレンジイソシアネート;プロピレン−1,2−ジイソシアネート;テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート;シクロヘキシルジイソシアネート;ドデカン−1,12−ジイソシアネート;シクロブタン−1,3−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート;1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン;メチルシクロヘキシレンジイソシアネート;HDIのトリイソシアネート;2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネートのトリイソシアネート;テトラセンジイソシアネート;ナフタレンジイソシアネート;アントラセンジイソシアネート;トルエンジイソシアネートのイソシアヌレート;ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン;及びこれらの混合物を含む。ポリイソシアネートは、1以上のイソシアネート基、例えばジイソシアネート、トリイソシアネートおよびテトライソシアネートを有するものとして、当業者には知られている。好ましくは、ポリイソシアネートは、MDI、PPDI、TDI、又はこれらの混合物を含み、より好ましくはポリイソシアネートはMDIを含む。本明細書で使用する用語「MDI」は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリマーMDI、カルボジイミド変性液状MDI、及びこれらの混合物を意味し、かつさらに使用したジイソシアネートが「低遊離(low free)モノマー」であることができるとは「遊離」モノマーの量が低いイソシアネート基であること、典型的には遊離モノマー基の量が約0.1%より低いことを当業者が理解すると理解すべきである。「低遊離モノマー」ジイソシアネートの例は、これに限定されないが、低遊離モノマーMDI、低遊離モノマーTDI、及び低遊離モノマーPPDIを含む。
【0050】
少なくとも一つのポリイソシアネートは約14%より少ない未反応のNCO基を有することが必要である。好ましくは該少なくとも一つのポリイソシアネートは約8.0%以下のNCOを有し、より好ましくは約7.8%以下のNCOを有し、最も好ましくは約7.5%以下のNCOを有し、通常、約7.2または7.0%または6.5%のNCOのレベルが用いられる。
【0051】
当業者が利用可能ないずれのポリオールも、この発明に従って使用するのに適している。ポリオールの例は、これに限定されないが、ポリエーテルポリオール、ヒドロキシ末端ポリブタジエン(部分的に/完全に水素添加した誘導体を含む)、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、及びポリカーボネートポリオールである。好ましい実施例では、ポリオールはポリエーテルポリオールを含む。その例は、これに限定されないが、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(「PTMEG」)、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、及びこれらの混合物である。炭化水素鎖は飽和又は不飽和結合及び置換又は未置換の芳香族及び環状基を有することができる。好ましくは、この発明のポリオールはPTMEGを含む。
【0052】
他の実施例では、この発明のポリウレタン材料にポリエステルポリオールが含まれる。適切なポリエステルポリオールは、これに限定されないが、ポリエチレンアジペートグリコール;ポリブチレンアジペートグリコール;ポリエチレンプロピレンアジペートグリコール;o−フタレート−1,6−ヘキサンジオール;ポリ(ヘキサメチレンアジーペート)グリコール;及びこれらの混合物である。炭化水素鎖は飽和又は不飽和結合、又は置換又は未置換の芳香族及び環状基を有することができる。
【0053】
他の実施例では、この発明の材料にポリカプロラクトンポリオールが含まれる。適切なポリカプロラクトンポリオールは、これに限定されないが、1,6−ヘキサンジオール−開始ポリカプロラクトン、ジエチレングリコール開始ポリカプロラクトン、トリメチロールプロパン開始ポリカプロラクトン、ネオペンチルグリコール開始ポリカプロラクトン、1,4−ブタンジオール開始ポリカプロラクトン、及びこれらの混合物である。炭化水素鎖は飽和又は不飽和の、又は置換又は未置換の芳香族及び環状基を有することができる。
【0054】
さらに他の実施例では、この発明のポリウレタン材料にポリカーボネートポリオールが含まれる。適切なポリカーボネートは、これに限定されないが、ポリフタレートカーボネート及びポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコールである。炭化水素鎖は飽和又は不飽和結合、又は置換又は未置換芳香族及び環状基を有することができる。1実施例では、ポリオールの分子量は約200〜約4000である。
【0055】
ポリアミン硬化剤もこの発明のポリウレタン組成物中に使用して好適であり、製品ボールの耐切断性、耐剪断性、および耐衝撃性が改善することがわかっている。好ましいポリアミン硬化剤は、これに限定されないが、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン及びこの異性体;3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン及びこの異性体、例えば3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン;4,4’−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ジフェニルメタン;1,4−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ベンゼン、4,4’−メチレン−ビス−(2−クロロアニリン);4,4’−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン);ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート;N,N’−ジアルキルジアミノジフェニルメタン;p,p’−メチレンジアニリン;m−フェニレンジアミン;4,4’−メチレン−ビス−(2−クロロアニリン);4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジエチルアニリン);4,4’−メチレン−ビス−(2,3−ジクロロアニリン);4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン;2,2’−3,3’−テトラクロロジアミノジフェニルメタン;トリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエート;及びこれらの混合物である。好ましくはこの発明の硬化剤は、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン及びその異性体、例えばバトンルージュのアルバマール社(Albermarle Corporation of Baton Rouge,LA)から入手可能なEthacure(登録商標)300である。適切なポリアミン硬化剤は第1及び第2アミンの両者を含み、好ましくは、その分子量は約64〜約2000の範囲である。
【0056】
少なくとも一つのジオール、トリオール、テトラオール、又はヒドロキシ末端硬化剤を上述のポリウレタン組成物に添加することができる。適切なジオール、トリオール、及びテトラオール基は以下を含む。すなわち、エチレングリコール;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;プロピレングリコール;ポリプロピレングリコール;低分子量ポリテトラメチレンエーテルグリコール;1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン;1,3−ビス−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン;1,3−ビス−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}ベンゼン;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;レゾルシノール−ジ−(β−ヒドロキシエチル)エーテル;ヒドロキノン−ジ−(β−ヒドロキシエチル)エーテル;及びこれらの混合物を含む。好ましいヒドロキシ−末端硬化剤は1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン;1,3−ビス−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン;1,3−ビス−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}ベンゼン;1,4−ブタンジオール、及びこれらの混合物を含む。好ましくは、ヒドロキシ−末端硬化剤の分子量は約48〜約2000の範囲である。ここで、分子量は、絶対重量平均分子量であり、当業者が理解するとおりのものである。
【0057】
ヒドロキシ末端及びアミン硬化剤の両者は、一又は複数の飽和、不飽和、芳香族、及び環状基を含むことができる。さらに、ヒドロキシ末端及びアミン硬化剤は一又は複数のハロゲン基を含むことができる。ポリウレタン組成物を硬化剤のブレンド又は混合物によって製造することができる。しかしながら所望の場合には、ポリウレタン組成物を単一の硬化剤で製造することができる。
【0058】
この発明の好ましい実施例において、飽和ポリウレタンを用いてカバー層の1以上、好ましくは外側カバー層が形成され、この飽和ポリウレタンは注型可能熱硬化性または熱可塑性ポリウレタンの双方から選択されてよい。この実施例において、この発明の飽和ポリウレタンは実質的に芳香族基または部分を含まない。この発明に使用して好適な飽和ポリウレタンは、少なくとも1つのポリウレタンプレポリマーおよび少なくとも1つの飽和硬化剤の反応生成物である。ポリウレタンプレポリマーは少なくとも1つのポリオールおよび少なくとも1つの飽和ジイソシアネートの反応生成物である。当技術分野で周知のとおり、触媒を採用して硬化剤およびイソシアネートおよびポリオールの反応を促進させても良い。
【0059】
使用可能な飽和のジイソシアネートは、これに限定されないが、エチレンジイソシアネート;プロピレン−1,2−ジイソシアネート;テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(“HDI”);2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;ドデカン−1,12−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;シクロブタン−1,3−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート;1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン;イソホロンジイソシアネート;メチルシクロヘキシレンジイソシアネート;HDIのトリイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネートのトリイソシアネートを含む。最も好ましい飽和ジイソシアネートは4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートである。
【0060】
この発明で使用するのに適した飽和ポリオールは、これに限定されないが、ポリエーテルポリオール、例えばポリテトラメチレンエーテルグリコール及びポリ(オキシプロピレン)グリコールである。適切な飽和ポリステルポリオールは、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリエチレンプロピレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリカーボネートポリオール及びエチレンオキシドでキャップしたポリオキシプロピレンジオールである。この発明で有用な飽和ポリカプロラクトンポリオールは、ジエチレングリコール開始ポリカプロラクトン、1,4−ブタンジオール開始ポリカプロラクトン、1,6−ヘキサンジオール開始ポリカプロラクトン;トリメチロールプロパン開始ポリカプロラクトン、ネオペンチルグリコール開始ポリカプロラクトン、およびポリテトラメチルエーテルグリコール開始ポリカプロラクトンである。最も好ましい飽和ポリオールはポリテトラメチレンエーテルグリコール及びPTMEG開始ポリカプロラクトンである。
【0061】
適切な飽和硬化剤は、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、プロピレングリコール;トリメタノールプロパン;テトラ−(2−ヒドロキシプロピル)−エチレンジアミン;シクロヘキシルジメチロールの異性体の異性体及び混合物、シクロヘキサンビス(メチルアミン)の異性体の異性体及び混合物;トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン;2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン;ジエチレングリコールジ−(アミノプロピル)エーテル;4,4’−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ジシクロヘキシルメタン;1,2−ビス−(sec−ブチルアミノ)シクロヘキサン;1,4−ビス−(sec−ブチルアミノ)シクロヘキサン;イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、1−メチル−2,4−シクロヘキシルジアミン、1−メチル−2,6−シクロヘキシルジアミン、1,3−ジアミノプロパン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イミド−ビス−プロピルアミン、ジアミノシクロヘキサンの異性体の異性体及び混合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、及びジイソプロパノールアミンを含む。最も好ましい飽和硬化剤は1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキシルジメチロール及び4,4’−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ジシクロヘキシルメタンである。
【0062】
代替的には、他の適切なポリマーは、部分的または十分に中和したアイオノマー、メタローセン、または他のシングルサイト触媒ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、非アイオノマー性熱可塑性エラストマー、コポリエーテル−エステル、コポリエーテル−アミド、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレンブロックコポリマー(例えばスチレン−ブタジエン−スチレン)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、その他、並びにそのブレンドを含む。熱硬化性ポリウレタンまたはポリ尿素はこの発明のゴルフボールの外側カバー層に適している。
【0063】
さらに、ポリウレタンをポリ尿素材料と置き換え、またはブレンドしてもよい。ポリ尿素は、明らかにポリウレタン組成物と異なるが、ゴルフボール部品に用いられるときには所望の空力特性や美観特性をもたらす。ポリ尿素ベースの組成物は好ましくはその性質上飽和である。
【0064】
特定の理論に拘束されるものではないが、ポリウレタンプレポリマー中の長鎖ポリオールセグメントを長鎖ポリエーテルジアミンオリゴマーソフトセグメントで置換してポリ尿素プレポリマーを形成することにより、せん断性、切断性及び反発弾性が改良され、かつ他の成分に対する接着性が改良されると、現在考えられている。したがって、この発明のポリ尿素組成物はイソシアネートと硬化剤により架橋されたポリアミンプレポリマーとの反応生成物から生成されて良い。例えば、この発明のポリ尿素ベースの組成物は、少なくとも1つのイソシアネートと、少なくとも1つのポリエーテルアミンと、少なくとも1つのジオール硬化剤または少なくとも1つのジアミン硬化剤とから準備されてよい。
【0065】
当業者に利用可能ないずれのポリアミンも、このポリ尿素プレポリマー中に使用して好適である。ポリエーテルアミンはとくにプレポリマー中で好適である。ここでは、用語「ポリエーテルアミン」は、ポリエーテル主鎖の末端に結合した第1アミノ基を含むポリオキシアルキレンアミンを少なくとも意味する。しかしながら、イソシアネートとアミンの反応が早く、かつ多くの尿素生成物が不溶性であることから、ジアミンとポリエーテルアミンの選択は、ポリ尿素プレポリマーの形成を可能にするものに限られる。1実施例では、ポリエーテル主鎖は、テトラメチレン、プロピレン、エチレン、トリメチロールプロパン、グリセリン、及びこれらの混合物に基づく。
【0066】
適切なポリエーテルアミンは、これに限定されないが、メチルジエタノールアミン;ポリオキシアルキレンジアミン、例えば、ポリエテトラメチレンエーテルジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、およびポリオキシプロピレンジアミン;ポリ(エチレンオキシドキャップオキシプロピレン)エーテルジアミン;プロピレンオキシドをベースとするトリアミン;トリエチレングリコールジアミン;トリメチロールプロパンをベースとするトリアミン;グリセリンをベースとするトリアミン;及びこれらの混合物を含む。1実施例では、プレポリマーを製造するために使用するポリエーテルアミンはJEFFAMINE(商標) D2000(Huntsman社製、オースチン、テキサス)である。
【0067】
ポリ尿素プレポリマーで使用するポリエーテルアミンの分子量は約100〜約5000の範囲であってよい。1実施例では、ポリエーテルアミンの分子量は約200以上、好ましくは約230以上である。他の実施例では、ポリエーテルアミンの分子量は約4000又はそれより小さい。さらに他の実施例では、ポリエーテルアミンの分子量は約600又はそれより大きい。さらに他の実施例では、ポリエーテルアミンの分子量は約3000又はそれより小さい。さらに他の実施例では、ポリエーテルアミンの分子量は約1000〜約3000であり、より好ましくは約1500〜約2500である。ポリエーテルアミンの分子量が低いと固形ポリ尿素を形成しがちであるので、大きい分子量のオリゴマー、たとえばJEFFAMINE D2000が好ましい。
【0068】
先に簡単に述べたように、アミンとイソシアネートとの反応が早いために、アミンのいくつかはイソシアネートとの反応に不適切である。特に短鎖のアミンは早く反応する。しかしながら、ある態様では、立体障害を有する第2ジアミンはプレポリマーで使用するのに適している可能性がある。いずれの特定の理論に束縛されるものではないが、高度の立体障害を有するアミン、例えば窒素原子に結合した第3ブチル基を有するアミンは、障害がないか又はその程度が低いアミンより反応速度が遅くなると考えられる。例えば、4,4’−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ジシクロヘキシルメタン(CLEARLINK(商標) 1000)は、イソシアネートと組み合わせてポリ尿素プレポリマーを製造するのに適しているであろう。
【0069】
当業者が利用可能ないずれのイソシアネートも、ポリ尿素プレポリマー中に使用して好適である。本発明で使用するイソシアネートは、分子当たり2又はそれより多いイソシアネート(NCO)基を有する脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族、これらのいずれかの誘導体、及びこれらの化合物の組合せを含む。イソシアネートは、有機ポリイソシアネート末端プレポリマーであってよい。イソシアネートを含む反応性の成分はいずれのイソシアネート官能性単量体、二量体、三量体、又はこれらの多量体付加物、プレポリマー、疑似プレポリマー、又はこれらの混合物を含んでもよい。イソシアネート官能性化合物は、モノイソシアネート又は2又はそれより多いイソシアネート官能基を含むポリイソシアネートを含むことができる。
【0070】
適切なイソシアネートを含む成分は以下の一般式を有するジイソシアネートを含む。すなわち、O=C=N−R−N=C=Oである。式中Rは好ましくは約1〜約20の炭素原子を含む環状、芳香族、又は直鎖若しくは分岐した炭化水素部分である。ジイソシアネートはさらに一又は複数の環状基又は一又は複数のフェニル基を含むこともできる。多環式基又は芳香族基が存在する場合、環状基又は芳香族基の間のスペーサーとして、約1〜約10の炭素原子を含む直鎖及び/又は分岐した炭化水素が存在することができる。ある場合には、環状基又は芳香族基は2−、3−、及び/又は4−位、又はオルト−、メタ−及び/又はパラ−位においてそれぞれ置換されていてもよい。置換した基は、これに限定されないが、ハロゲン、第1、第2、又は第3炭化水素基、又はこれらの混合物である。
【0071】
この発明で使用することができるジイソシアネートの例は、これに限定されないが、2,2’−、2,4’−、及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを含む置換した、及び、異性体の混合物;3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート;トルエンジイソシアネート;ポリマーMDI;カルボジイミド−変性液状4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート;パラ−フェニレンジイソシアネート;メタ−フェニレンジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4’−及びトリフェニルメタン−4,4”−トリイソシアネート;ナフチレン−1,5−ジイソシアネート;2,4’−、4,4’−、及び2,2−ビフェニルジイソシアネート;ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート;MDIとPMDIの混合物;PMDIとTDIの混合物;エチレンジイソシアネート;プロピレン−1,2−ジイソシアネート;テトラメチレン−1,2−ジイソシアネート;テトラメチレン−1,3−ジイソシアネート;テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート;オクタメチレンジイソシアネート;デカメチレンジイソシアネート;2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;ドデカン−1,12−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;シクロブタン−1,3−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,2−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート;メチル−シクロヘキシレンジイソシアネート;2,4−メチルシクロヘキサンジイソシアネート;2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート;2,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート;1,3,5−シクロヘキサントリイソシアネート;イソシアネートメチルシクロヘキサンイソシアネート;1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン;イソシアネートエチルシクロヘキサンイソシアネート;ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサンジイソシアネート;4,4’−ビス(イソシアネートメチル)ジシクロヘキサン;2,4’−ビス(イソシアネートメチル)ジシクロヘキサン;イソホロンジイソシアネート;HDIのトリイソシアネート;2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネートのトリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;2,4−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート;2,6−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート;1,2−、1,3−、及び1,4−フェニレンジイソシアネート;芳香族脂肪族イソシアネート、例えば1,2−、1,3−、及び1,4−キシレンジイソシアネート;メタ−テトラメチルキシレンジイソシアネート;パラ−テトラメチルキシレンジイソシアネート;いずれかのポリイソシアネートの三量化したイソシアヌレート、例えばトルエンジイソシアネートのイソシアヌレート、ジフェニルメタンジイソシアネートの三量体、テトラメチルキシレンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、及びこれらの混合物;いずれかのポリイソシアネートの二量化したウレジオン、例えばトルエンジイソシアネートのウレトジオン、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、及びこれらの混合物;上記のイソシアネート及びポリイソシアネートから誘導した変性したポリイソシアネート;及びこれらの混合物である。
【0072】
この発明で使用することができる飽和ジイソシアネートの例は、これに限定されないが、エチレンジイソシアネート;プロピレン−1,2−ジイソシアネート;テトラメチレン−ジイソシアネート;テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート;オクタメチレンジイソシアネート;デカメチレンジイソシアネート;2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;ドデカン−1,12−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;シクロブタン−1,3−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,2−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート;メチル−シクロヘキシレンジイソシアネート;2,4−メチルシクロヘキサンジイソシアネート;2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート;2,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート;1,3,5−シクロヘキサントリイソシアネート;イソシアネートメチルシクロヘキサンイソシアネート;1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン;イソシアネートエチルシクロヘキサンイソシアネート;ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサンジイソシアネート;4,4’−ビス(イソシアネートメチル)ジシクロヘキサン;2,4’−ビス(イソシアネートメチル)ジシクロヘキサン;イソホロンジイソシアネート;HDIのトリイソシアネート;2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネートのトリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;2,4−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート;2,6−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート;及びこれらの混合物を含む。芳香族脂肪族イソシアネートも光安定な物質を製造するために使用することができる。これらのイソシアネートの例は以下を含む。すなわち、1,2−、1,3−、及び1,4−キシレンジイソシアネート;メタ−テトラメチルキシレンジイソシアネート;パラ−テトラメチルキシレンジイソシアネート;いずれかのポリイソシアネートの三量化したイソシアヌレート、例えばトルエンジイソシアネートのイソシアヌレート、ジフェニルメタンジイソシアネートの三量体、テトラメチルキシレンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、及びこれらの混合物;いずれかのポリイソシアネートの二量化したウレジオン、例えばトルエンジイソシアネートのウレトジオン、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、及びこれらの混合物;上記のイソシアネート及びポリイソシアネートから誘導した変性したポリイソシアネート;及びこれらの混合物である。さらに、芳香族脂肪族イソシアネートを、本発明の目的にために、先に挙げた飽和イソシアネートのいずれかと混合することができる。
【0073】
イソシアネートとポリエーテルアミンのポリ尿素プレポリマーにおける未反応のNCO基の数を変化させて、反応の速度、得られた組成物の硬度等の因子を制御することができる。例えば、イソシアネートとポリエーテルアミンのポリ尿素プレポリマーにおける未反応のNCO基の数を約14%より小さくすることができる。1実施例では、ポリ尿素プレポリマーは約5%〜約11%の未反応のNCO基を有し、より好ましくは約6%〜約9.5%の未反応のNCO基を有する。1実施例では、未反応のNCO基の割合は約3%〜約9%である。代替的には、未反応のNCO基の割合は約7.5%又はそれより低く、より好ましくは約7%又はそれより低い。他の実施例では、未反応のNCO基の割合は約2.5%〜約7.5%、より好ましくは約4%〜約6.5%である。
【0074】
生成された状態で、ポリ尿素プレポリマーが、プレポリマーの約10重量%から約20重量%の遊離イソシアネートモノマーを含んでもよい。この結果、1実施例では、ポリ尿素プレポリマーから遊離イソシアネートモノマーを除去しても良い。例えば、除去後、プレポリマーは1%またはそれ未満の遊離イソシアネートモノマーを含むことになる。他の実施例では、プレポリマーは約0.5重量%または逸れ未満の遊離イソシアネートモノマーを含んでよい。
【0075】
ポリエーテルアミンを追加のポリオールとブレンドしてコポリマーを形成し、これを過剰のイソシアネートと反応させてポリ尿素プレポリマーを製造することもできる。1実施例では、コポリマーの約30重量%より少ないポリオールを飽和ポリエーテルアミンとブレンドする。他の実施例では、コポリマーの約20重量%より少ない、好ましくはコポリマーの約15重量%より少ないポリオールを、飽和ポリエーテルアミンとブレンドする。ポリウレタンとの関係で先に列挙したポリール、例えばポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、炭化水素ポリオール、他のポリオール、及びこれらの混合物が、ポリエーテルアミンとブレンドするのに適している。これらのポリマーの分子量は約200〜約4000であることができるが、約1000〜約3000であることができ、より好ましくは約1500〜約2500であることができる。
【0076】
ポリ尿素組成物を、ポリ尿素プレポリマーを単一の硬化剤またはそのブレンドで架橋して製造することができる。この発明の硬化剤は、好ましくは、アミン−末端硬化剤、より好ましくは第2ジアミン硬化剤であり、これにより、組成物が単一の尿素結合のみを含むようになる。1実施例では、アミン−末端硬化剤の分子量は約64又はそれより大きい。他の実施例では、アミン−末端硬化剤の分子量は約2000又はそれより小さい。上述のとおり、所定のアミン−末端硬化剤を互換性のあるアミン−末端凝固点降下剤またはその混合物により改質してもよい。
【0077】
適切なアミン−末端硬化剤は、これに限定されないが、エチレンジアミン;ヘキサメチレンジアミン;1−メチル−2,6−シクロヘキシルジアミン;テトラヒドロキシプロピレンエチレンジアミン;2,2,4−及び2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン;4,4’−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ジシクロヘキシルメタン;1,4−ビス−(sec−ブチルアミノ)−シクロヘキサン;1,2−ビス−(sec−ブチルアミノ)−シクロヘキサン;4,4’−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ジシクロヘキシルメタンの誘導体;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン;1,4−シクロヘキサン−ビス−(メチルアミン);1,3−シクロヘキサン−ビス−(メチルアミン);ジエチレングリコールジ−(アミノプロピル)エーテル;2−メチルペンタメチレン−ジアミン;ジアミノシクロヘキサン;ジエチレントリアミン;トリエチレンテトラミン;テトラエチレンペンタミン;プロピレンジアミン;1,3−ジアミノプロパン;ジメチルアミノプロピルアミン;ジエチルアミノプロピルアミン;イミド−ビス−プロピルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン;トリエタノールアミン;モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン;イソホロンジアミン;4,4’−メチレンビス−(2−クロロアニリン);3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン;3,5−ジメチルチオ−2,6−トルエンジアミン;3,5−ジエチルチオ−2,4−トルエンジアミン;3,5−ジエチルチオ−2,6−トルエンジアミン;4,4’−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ジフェニルメタン及びその誘導体;1,4−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ベンゼン;1,2−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ベンゼン;N,N’−ジアルキルアミノ−ジフェニルメタン;N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン;トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート;ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート;4,4’−メチレンビス−(3−クロロ−2,6−ジエチレンアニリン);4,4’−メチレンビス−(2,6−ジエチルアニリン);メタ−フェニレンジアミン;パラ−フェニレンジアミン;及びこれらの混合物を含む。1実施例では、アミン−末端硬化剤は4,4’−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ジシクロヘキシルメタンである。
【0078】
適切な飽和アミン−末端硬化剤は、これに限定されないが、エチレンジアミン;ヘキサメチレンジアミン;1−メチル−2,6−シクロヘキシルジアミン;テトラヒドロキシプロピレンエチレンジアミン;2,2,4−及び2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン;4,4’−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ジシクロヘキシルメタン;1,4−ビス−(sec−ブチルアミノ)−シクロヘキサン;1,2−ビス−(sec−ブチルアミノ)−シクロヘキサン;4,4’−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ジシクロヘキシルメタンの誘導体;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン;1,4−シクロヘキサン−ビス−(メチルアミン);1,3−シクロヘキサン−ビス−(メチルアミン);ジエチレングリコールジ−(アミノプロピル)エーテル;2−メチルペンタメチレン−ジアミン;ジアミノシクロヘキサン;ジエチレントリアミン;トリエチレンテトラミン;テトラエチレンペンタミン;プロピレンジアミン;1,3−ジアミノプロパン;ジメチルアミノプロピルアミン;ジエチルアミノプロピルアミン;イミド−ビス−プロピルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン;トリエタノールアミン;モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン;イソホロンジアミン;トリイソプロパノールアミン;及びこれらの混合物である。さらに、上記のポリエーテルアミンのいずれかを、ポリ尿素プレポリマーと反応させる硬化剤として使用することができる。
【0079】
先の内側、中間、または外側カバー層にいずれも当業界で知られている添加物、例えば、酸化防止剤、染料、顔料、発色剤、安定剤、難燃剤、漏れ防止剤、結晶化核、金属塩、帯電防止剤、可塑剤、潤滑剤、および、先の添加剤の2以上から成る組み合わせを有してよい。有効な量は、典型的には、組成物の総重量をベースにして5重量%未満、好ましくは、0.25重量%から2重量%である。
【0080】
層組成物はフィラーを有しても良く、これは、強化フィラーを含む。例示的なフィラーは、微小な粒子状の鉱物(例えば、クレイ、マイカ、タルク、その他)、グラスファイバー、ナノ粒子、有機クレイ、およびその他、並びにこれらの1以上のフィラーの組み合わせを含む。フィラーは典型的には組成物の総重量をベースにして5重量%から50重量%の量だけ使用される。
【0081】
オプションのフィラー成分を、上述の成分のブレンドに付加的な密度を加えるように選択しても良い。そのようなフィラーの選択は、望まれるゴルフボールのタイプ(すなわちワンピース、ツーピース、マルチコンオーネント、または糸巻)に左右される。有益なフィラーの例は、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、さらに、他の周知の対応する塩およびその酸化物を含む。添加物、例えば、ナノ粒子、ガラス球、および種々の金属、例えばチタンおよびタングステンをこの発明のポリウレタン組成物に周知の目的を実現するために必要な量だけ添加してよい。ポリウレタン組成物に添加できる付加的な成分は、UV安定化剤、さらに、光学的光沢剤および蛍光顔料および染料を含む。そのような添加成分はそれら所望の目的を実現する量だけ添加してよい。
【0082】
当業者に知られている任意の手法を用いて、この発明のポリイソシアネート、ポリオール、および硬化剤を結合して良い。慣用的に採用される1手法は、当業界で1ショット法として知られ、イソシアネート、ポリオール、および硬化剤を同時に混合する。この手法では、得られる混合物は非均一(よりランダム)であり、製造業者にとって製品組成物の分子構造の制御が困難となる。好ましい混合方法はプレポリマー法として知られている。この方法では、硬化剤を添加する前にポリイソシアネートとポリオールを別々に混合する。この方法により、一層均一な混合物が得られ、その結果より一貫性のあるポリマー組成物が得られる。
【0083】
著しく薄いという性質上、この発明では、注型可能、反応性材料が流体状態で塗布され、ゴルフボールの外側カバー層を著しく薄くできることがわたった。とくに、注型可能、反応性液体が反応してウレタンエラストマー材料を形成し、所望の著しく薄い外側カバー層を実現する。
【0084】
ウレタンエラストマー材料を形成するために採用される注型可能な反応性液体は、当該技術において周知の種々の塗布方法、例えば、スプレー、圧縮成型、ディッピング、スピンコーティーング、注型、または流動コーティング法を採用して、コア上に塗布できる。適切なコーティング手法の例が米国特許第5,733,428号に開示されており、参照してここに組み入れる。
【0085】
外側カバーは、好ましくは、材料を混合し成型金型に案内してコアおよび中間カバー層の回りに形成される。粘度を、その時間にわたって、測定することが重要である。この測定により、各成型金型半体に充填し、コアを一方の半体に導入し、さらに成型金型を閉じるという後続のステップが適切なタイミングで行われ、コアおよびカバー半体の融合の芯だしが実現され、全体の一体性が達成される。コアを成型金型に導入するのに適切な硬化ウレタンミックスの粘度範囲は、約2000cPおよび約30000cPの間であり、好ましい範囲は約8000pCから15000cPの間であることが判明している。
【0086】
カバーの製造を開始するために、モーターで駆動するミキサーを取り付けた混合ヘッド内で、ラインを通じて計量した量の硬化剤及びプレポリマーを供給することによって、プレポリマーと硬化剤の混合を行う。予熱した成型金型の上半体を充填しかつ各成型金型の開口に移動するセンタリングピンを使用して取り付けユニットに置く。反応材料が上半体の金型に約40〜約80秒存在した後、コアを制御した速度で落下させ、ゲル状の反応混合物にする。後で、下半体の成型金型、又は一連の下半体の成型金型は、キャビティに導入したのと同量の混合物を保持する。
【0087】
ボールカップがボールのコアを減圧(又は部分的な真空)によって保持する。約40〜約80秒間ゲル化した後で、金型の両半体に、コーティングされたコアを置き、真空を解除してコアを離す。コア及び固形化したカバーの半体を有する金型の半体をセンタリング取り付け具からはずし、反転させて他の金型の半体に合わせ、該他の金型に導入された選択した量の反応性ポリウレタンプレポリマー及び硬化剤は合わせる前の適切な時間にゲル化を開始する。
【0088】
同様に、米国特許第5,006,297号及び同第5,334,673号の両者は、この発明で使用する注型可能な反応性液体を適用するのに使用することができる適切な成形技術を開示している。さらに、米国特許第6,180,040号および同第6,180,722号は二重コアゴルフボールを準備する方法を開示している。これらは参照してここに組み入れる。
【0089】
他の成型方法は、反応射出成形(「RIM」)であり、この方法では、2つの液体成分を、予め一決めされたコアを保持する金型中に射出する。液体成分は反応して固体の熱硬化性ポリマー組成物、典型的にはポリウレタンまたはポリ尿素を生成する。
【0090】
この発明のゴルフボールのCORは典型的には約0.775より大きく、好ましくは約0.795より大きく、さらに好ましくは約0.800より大きい。このゴルフボールのAtti圧縮は、典型的には少なくとも約40、好ましくは約50〜約120、より好ましくは約60〜110である。ここで用いられるように、用語「Atti圧縮」は、ニュージャージー州ユニオンシティのAtti Engineering社から入手可能であるAtti Compression Gaugeにより測定したときの、較正スプリングの撓みに対比した対象物または材料の撓みとして定義される。Atti圧縮は典型的にはゴルフボールの圧縮を測定するのに用いられる。直径が1.680インチ未満のコアを測定するときには、金属または他の適切な楔を用いて測定対象の直径を1.680インチに正規化することを理解されたい。
【0091】
「材料硬度」と「硬度」(局面、例えば、ゴルフボールの表面で直接に測定したもの)とは、基本的に異なることを理解されたい。材料硬度は、ASTM−D2240によって測定され、一般に、硬度を測定すべき材料から形成させた平坦な「スラブ」または「ボタン」の硬度を測定するものである。ゴルフボール(または、他の球体表面)上で直接測定するときの硬度は、典型的には異なる硬度値を生ずる。硬度値におけるこの相違は、限定するものではないが、ボール構造(即ち、コアのタイプ、コアおよび/またはカバー層の数等)、ボール(または球体)直径、および隣接各層の素材組成のようないくつかの要因に由来する。また、2つの測定方法は直線的には相関せず、従って、一方の硬度値が他方の硬度値と容易に相関し得ないことも理解すべきである。ここで使用されるように、用語「硬度」は測定対象層(すなわち、コア+内側カバーを含む球、コア+内側カバー+中間カバーを含む球、またはコア+内側カバー+中間カバー+外側カバーを含む球)の曲面で測定される硬度を指す。
【0092】
内側カバー層の硬度は約45〜68ショアDであり、好ましくは約50〜62ショアDであり、さらに好ましくは約52〜60ショアDである。好ましい実施例においては、内側カバー層の硬度は55〜60ショアDであり、より好ましくは56〜59ショアDであり、最も好ましくは57〜58ショアDである。代替的には、内側カバー層の硬度は約55〜98ショアCであり、好ましくは約66〜90ショアCであり、さらに好ましくは約74〜86ショアCである。好ましい実施例においては、内側カバー層の硬度は76〜85ショアCであり、より好ましくは78〜84ショアCであり、最も好ましくは80〜83ショアCである。
【0093】
中間カバー層の硬度は約55〜80ショアDであり、好ましくは約57〜75ショアDであり、さらに好ましくは約61〜69ショアDである。代替的には、中間カバー層の硬度は約65〜100ショアCであり、好ましくは約72〜95ショアCであり、さらに好ましくは約74〜92ショアCである。
【0094】
外側カバー層の硬度は約35〜65ショアDであり、好ましくは約40〜62ショアDであり、さらに好ましくは約52〜60ショアDである。好ましい実施例においては、外側カバー層の硬度は55〜60ショアDであり、より好ましくは56〜59ショアDであり、最も好ましくは57〜58ショアDである。代替的には、外側カバー層の硬度は約55〜90ショアCであり、好ましくは約62〜86ショアCであり、さらに好ましくは約68〜82ショアCである。好ましい実施例においては、外側カバー層の硬度は76〜85ショアCであり、より好ましくは78〜84ショアCであり、最も好ましくは80〜83ショアCである。
【0095】
具体的な好ましい実施例において、ゴルフボールはコア、1つの内側カバー層、1つの中間カバー層、および1つの外側カバー層から製造される。コアは外側直径が約1.52インチの単一ソリッドコアである。内側カバー層はアイオノマーから形成され、その厚さは約0.035インチであり、その硬度は約58ショアDである。代替的には、内側カバー層の硬度は約82ショアCである。中間層は熱可塑性ポリカーボネートポリウレタンコポリマーから形成され、その厚さは約0.015インチであり、その硬度は約62ショアDである。代替的には、中間カバー層の硬度は約90ショアCである。外側カバー層は熱硬化性ポリ尿素から形成され、その厚さは約0.030インチであり、その硬度は約57ショアDである。代替的には、外側カバー層の硬度は約80ショアCである。
【0096】
この発明のゴルフボールにおいて、内側カバー層、中間カバー層、および外側カバー層の関係も重要である。外側カバー層は第1の硬度を伴い、中間カバー層は第2の硬度を伴い、内側カバー層は第3の硬度を伴う。この発明の非アイオノマー製の中間層の硬度は、内側カバー層および外側カバー層の硬度より大きい。第2の硬度は、第1および第3の硬度の値より少なくとも5ショアDだけ大きく、好ましくは第1および第3の硬度の値より少なくとも10ショアDだけ大きく、より好ましくは、第1および第3の硬度の値より少なくとも15ショアDだけ大きく、最も好ましくは、第1および第3の硬度の値より少なくとも20ショアDだけ大きい。
【0097】
この発明のコアのAtti圧縮は、好ましくは、約50および約90の間であり、より好ましくは、約60および約85の間であり、最も好ましくは、約70および約80の間である。コアの外側直径は、好ましくは、約1.45インチから1.58インチであり、より好ましくは、約1.50インチから1.56インチであり、最も好ましくは、約1.51インチから1.55インチである。
【0098】
内側カバー層の厚さは、好ましくは、約0.010インチから0.075インチであり、より好ましくは、約0.030インチから0.060インチであり、最も好ましくは、約0.035インチから0.050インチである。
【0099】
中間カバー層の厚さは、好ましくは、約0.010インチから0.075インチであり、より好ましくは、約0.030インチから0.060インチであり、最も好ましくは、約0.035インチから0.050インチである。代替的な好ましい実施例では、中間カバー層の厚さは約0.015インチから0.030インチである。
【0100】
外側カバー層の厚さは、好ましくは、約0.005インチから0.045インチであり、より好ましくは、約0.020インチから0.040インチであり、最も好ましくは、約0.025インチから0.035インチである。
【0101】
このゴルフボールにおいて中間層の曲げ弾性率は、ASTM D6272−98、手順Bで測定され、典型的には約55,000psiより大きく、好ましくは、約60,000psi〜120,000psiである。好ましくは、この発明の中間層の組成物の、具体的な硬度における曲げ弾性率は、同一の硬度における、内側カバー層のアイオノマー材料の曲げ弾性率よりも大きい。
【0102】
ゴルフボールの全体の直径のサイズは任意で良い、合衆国ゴルフ協会はゴルフボールの最小サイズを1.680インチに制限しているけれども、最大直径の制約はない。ゴルフボールの直径は、好ましくは約1.68インチから1.74インチであり、より好ましくは約1.68インチから1.70インチであり、最も好ましくは約1.68インチである。
【0103】
ここに示した実施例のいずれもいずれの既知のディンプル数およびパターンを伴ってよいけれども、ディンプルの好ましい数は252から456であり、より好ましくは330から392である。ディンプルは先行技術に開示された任意の幅、深さ、およびエッジ角度を伴って良く、パターンは異なる幅、深さおよびエッジ角の複数のディンプルを有してよい。典型的なディンプルカバー率は約60%より大きく、好ましくは約65%より大きく、より好ましくは約75%より大きい。パターンの分離線構造は、直線でも、互い違いの波状の分離線(SWPL:Staggered Wave Parting Line)でもよい。最も好ましくはディンプル数が330、332、または392であり5から7のディンプル寸法を伴い、分離線がSWPLである。
【0104】
作業例における他の事柄、または、とくに明言しなくとも、すべての数値範囲、量、値、百分率、例えば材料の量についてのこれら、および明細書中の他のものは、たとえその値、量または範囲に関連して用語「約」が表示されていなくとも、「約」がその前に配置されているように読むことができる。したがって、そうでないと示されていない限り、明細書および特許請求の範囲に表される数のパラメータは近似的であり、これは、この発明により得られることが企図される所望の特性に応じて変化する。最低限でも、もちろん均等論の適用を制約するものではないが、各数のパラメータは記録されている有効数字の数や通常の丸め処理に照らして解釈されるべきである。
【0105】
この発明の広範な範囲を示す数的範囲およびパラメータは近似的であるけれども、具体例において示された数値は可能な限り正確に記録した。任意の数値は、それでも、それぞれのテスト計測に見いだされる標準偏差に必然的に起因する誤差を含む。さらに、種々のスコープの数値範囲が示される場合には、例示された値を含めた値の任意の組み合わせが利用できると理解されたい。
【0106】
ここに説明した発明の事例的な実施例はこの発明の好ましい実施例を満たすことは明らかであるが、種々の変更や他の実施例を当業者が想到できることを理解されたい。したがって、特許請求の範囲は、そのような変更や他の実施例をすべてカバーするように意図されており、この発明の精神およびスコープの範囲に入ると理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、
コアに隣接して配されたカバーとを有し、
上記カバーは、
上記コアの回りに配され、55および60ショアDの間の硬度を伴う熱可塑性の内側カバー層と、
55および60ショアDの間の硬度を伴う外側カバー層と、
上記内側および外側カバー層の間に配され、その硬度が上記内側カバー層の硬度および上記外側カバー層の硬度より大きい、非アイオノマー性の熱可塑性ポリウレタンまたはポリ尿素の中間カバー層とを有し、
上記内側カバーは部分的または完全に中和されたアイオノマーを有し、上記外側カバー層はポリウレタン、ポリ尿素、またはウレタン−尿素ブレンドであることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記中間層の硬度は上記内側カバー層の硬度および上記外側カバー層の硬度より少なくとも5ショアDだけ大きい請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記中間層の硬度は上記内側カバー層の硬度および上記外側カバー層の硬度より少なくとも10ショアDだけ大きい請求項1記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記中間層の硬度は60ショアDまたはそれ以上である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記中間層の硬度は75ショアDまたはそれ以上である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記中間層の硬度は80ショアDから90ショアDである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記のポリウレタン、ポリ尿素、またはウレタン−尿素ブレンドは、注型可能な熱硬化性または反応性射出成型可能な熱硬化性材料である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項8】
上記外側カバーは注型可能な熱硬化性ポリ尿素であり、上記内側カバー層は異なる金属カチオンを具備する2またはそれ以上のアイオノマーからなるアイオノマーブレンドを有し、上記中間カバー層はポリカーボネート−ポリウレタン、ポリカーボネート−ポリ尿素、または、ポリウレタンまたはポリ尿素とのポリカーボネートブレンドを有する請求項1記載のゴルフボール。
【請求項9】
上記コアはセンタおよび少なくとも1つの外側コア層を有する請求項1記載のゴルフボール。
【請求項10】
上記センタは均一な組成から製造される単一のソリッド層である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項11】
上記非アイオノマー性の熱可塑性ポリウレタンまたはポリ尿素の中間カバー層は、ポリオレフィン、ポリアミド、またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマーをさらに有する請求項1記載のゴルフボール。
【請求項12】
上記外側カバーは熱可塑性のポリウレタンを有し、上記内側カバー層は異なる金属カチオンを具備する2またはそれ以上のアイオノマーからなるアイオノマーブレンドを有し、上記中間カバー層は少なくとも1つの熱可塑性シリコーン−ポリウレタンまたは熱可塑性シリコーン−ポリ尿素を有する請求項1記載のゴルフボール。
【請求項13】
上記熱可塑性の内側カバー層はさらにポリオレフィン、メタローセン、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性エラストマー、コポリエーテル−アミド、コポリエーテル−エステル、またはこれらの混合物を有する請求項1記載のゴルフボール。
【請求項14】
上記内側カバー層、上記中間カバー、および上記外側カバーの組み合わせは全体で0.125インチ以下の厚さを有する請求項1記載のゴルフボール。
【請求項15】
上記全体の厚さは0.115以下である請求項13記載のゴルフボール。
【請求項16】
上記外側カバー層の硬度は上記内側カバー層の硬度より小さい請求項1記載のゴルフボール。
【請求項17】
コアと、
コアに隣接して配されたカバーとを有し、
上記カバーは、
上記コアの回りに配され、55ショアDから60ショアDの硬度を伴うアイオノマー性で熱可塑性の内側カバー層と、
55ショアDおよび60ショアDの間の硬度を伴う注型可能な熱硬化性の外側カバー層と、
上記内側および外側カバー層の間に配され、その硬度が上記内側カバー層の硬度および上記外側カバー層の硬度より大きい、非アイオノマー性の熱可塑性の中間カバー層とを有し、
上記内側カバー層は第1の厚さを伴い、上記外側カバー層は第2の厚さを伴い、上記中間カバー層は、上記第1または上記第2の厚さより少なくとも20%薄い第3の厚さを伴うことを特徴とするゴルフボール。
【請求項18】
コアと、
コアに隣接して配されたカバーとを有し、
上記カバーは、
上記コアの回りに配され、55ショアDから60ショアDの間の硬度を伴うアイオノマー性で熱可塑性の内側カバー層と、
55ショアDおよび60ショアDの間の硬度を伴う注型可能な熱硬化性ポリウレタンの外側カバー層と、
上記内側および外側カバー層の間に配され、その硬度が上記内側カバー層の硬度および上記外側カバー層の硬度より大きい、非アイオノマー性で熱可塑性のポリカーボネート−ポリウレタンまたはポリカーボネート−ポリ尿素の中間カバー層とを有し、
上記内側カバー層は第1の厚さを伴い、上記外側カバー層は第2の厚さを伴い、上記中間カバー層は、上記第1または上記第2の厚さより少なくとも20%薄い第3の厚さを伴うことを特徴とするゴルフボール。
【請求項19】
上記中間層の硬度は60ショアDより大きい請求項17記載のゴルフボール。
【請求項20】
上記中間層の硬度は75ショアDより大きい請求項17記載のゴルフボール。

【公開番号】特開2010−214110(P2010−214110A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−55368(P2010−55368)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY