説明

アイリス撮影装置

【課題】上まつげや上まぶたによりアイリスが覆われている場合の、認証対象のアイリスの面積を大きくし、認証率を改善する。
【解決手段】利用者のアイリスを撮影するカメラ20と、カメラの光軸に対して上側に設けられた視線方向付け手段30とを備えて構成し、利用者の視線をカメラの光軸に対して、上側に向ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体認証技術の1つであるアイリス(虹彩)認証に用いられるアイリス撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原則として、アイリス認証は、撮影された画像データから、アイリスや瞳孔をその形状である円を利用して検出し、検出したアイリスから認証に必要な特徴部分を抽出して行われる。このため、一般的なアイリス撮影装置では、アイリス撮影装置のカメラの光軸と、利用者の視線を一致させることで、画像データのアイリスの形状を、極力、円形に近づけている。
【0003】
図7を参照して、従来の一般的なアイリス撮影装置について説明する。図7は、従来のアイリス撮影装置の模式図である。
【0004】
アイリス撮影装置110は、カメラ120と視線方向付け手段130を備えている。
【0005】
カメラ120は、利用者の目80を撮影し、画像データを出力する。カメラ120は、例えば、電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)などの撮像素子と、撮影用レンズを含んでいる。
【0006】
視線方向付け手段130は、アイリス撮影装置110の、利用者に対向する面(以下、装置前面と称する。)110aに設けられている。視線方向付け手段130は、アイリスの撮影時に、利用者に注視させる器具である。視線方向付け手段130は、鏡やLEDなどで構成される。
【0007】
このアイリス撮影装置110では、装置前面110aと、カメラ120の光軸(図中、点線Iで示す。)との交点(図中、IIIで示す。)近傍に設けられている。この構成では、撮影時に、視線方向付け手段130を利用者に注視させることによって、利用者の視線(図中、矢印IIで示す。)を、カメラ120の光軸Iに一致させている。
【0008】
なお、利用者の利便性を向上させるため、利用者の視線と、カメラの光軸とが一致していない場合であっても、アイリス認証を可能とする提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示されている技術によれば、アイリス認証装置が、補正手段を備えていて、撮影されたアイリスが楕円形状の場合、これを円形状に補正する。このため、カメラの光軸(I)と、利用者の視線(II)が一致していない状態で撮影が行われた場合であっても、アイリス認証が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−11667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図7を参照して説明した従来のアイリス撮影装置では、カメラの光軸と利用者の視線が一致していても、例えば、まつげがアイリスにかかっていると、まつげ部分がノイズ成分として扱われてしまい、本人拒否率が増加する場合がある。
【0011】
また、アイリス認証を行うアルゴリズムによっては、まつげそのものだけでなく、まつげ間のアイリスが表出している部分までも、認証対象領域外とされてしまう場合もある。この場合、結果的にまつげそのものの面積以上に、認証対象となるアイリスの面積が減ってしまい、本人拒否率の増加につながる。
【0012】
この問題を解決するためには、利用者に目を大きく開けてもらうことが1つの対策として考えられる。しかし、目を大きくあけることのできない利用者や、まつげが長く、アイリスにかかりやすい利用者にとっては、この対策では、上述の問題を解決できない。
【0013】
また、目を大きく開けることを利用者に強いることは、利用者にとっての利便性の低下を意味する。
【0014】
そこで、この出願に係る発明者が鋭意研究を行ったところ、利用者の視線がカメラの光軸に対して上側に向いていると、本人拒否率を低下させ、認証率を改善できることを見出した。この理由について、図8を参照して説明する。
【0015】
一般に、上まぶた84にあるまつげ(上まつげ)88は、下まぶた86にあるまつげ(下まつげ)90に比べて長い。また、上まつげ88は、上まぶた84から上方向に巻き上がるように伸びている人もいれば、下向きに垂れ下がるように伸びている人もいて、個人差がある。一方、下まつげ90は、下まぶた86から下向きに垂れ下がるように伸びていることがほとんどであり、上方向に巻き上がることは稀である。
【0016】
このようなまつげの形状により、利用者の視線(II)が、カメラの光軸(I)に一致していると、アイリス82には、特にその上方部において上まつげ88が覆いかぶさってしまう。この結果、認証対象のアイリス82の面積S1が小さくなる(図8(A)参照)。
【0017】
一方、利用者の視線(II)がカメラの光軸(I)に対して上側に向いていると、上まつげ88によるアイリス82の隠蔽の影響が少なくなるので、認証対象のアイリス82の面積S2が大きくなる(図8(B)参照)。
【0018】
また、利用者の視線(II)に対するカメラの光軸(I)の鉛直面内での角度(仰角)が、20°以下であれば、仰角が0°の場合、すなわち、利用者の視線がカメラの光軸に一致している場合と比べて、性能差はほとんど生じないという結果も報告されている(例えば、IRIS RECOGNITION STUDY 2006 (IRIS06)(http://www.authenti-corp.com/iris06/report/IRIS06_final_report_v1-0_20070901.pdf)のFig.6−32参照)。
【0019】
このように、利用者の視線がカメラの光軸に対して上側に向いていると、本人拒否率を改善できる。
【0020】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、この発明の目的は、上まつげや上まぶたにより、利用者のアイリスが覆われている場合に、認証対象のアイリスの面積を大きくし、本人拒否率を低下させる、すなわち、認証率を改善させるアイリス撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した目的を達成するために、この発明のアイリス撮影装置は、利用者のアイリスを撮影するカメラと、カメラの光軸に対して上側に設けられた視線方向付け手段とを備えて構成される。
【0022】
また、この発明のアイリス撮影装置の他の好適実施形態によれば、利用者のアイリスを撮影するカメラと、視線方向付け手段とを備えて構成され、カメラの光軸に対する、視線方向付け手段の鉛直方向の位置が可変であり、視線方向付け手段が、カメラの光軸に対して上側に配置可能である。
【0023】
また、この発明のアイリス撮影装置の他の好適実施形態によれば、利用者のアイリスを撮影するカメラと、視線方向付け部とを備え、視線方向付け部が、鉛直方向の位置が異なる複数の発光手段を備え、少なくとも1つの発光手段が、カメラの光軸に対して上側に設けられていて、アイリスの撮影時には、複数の発光手段のいずれか1つが発光して、視線方向付け手段となる。
【0024】
また、この発明のアイリス撮影装置の他の好適実施形態によれば、利用者のアイリスを撮影するカメラと、視線方向付け手段とを備え、カメラが、アイリス撮影可能位置を中心とする円弧上を移動可能であり、視線方向付け手段を、カメラの光軸に対して上側に配置できる。
【0025】
上述したアイリス撮影装置の実施にあたり、好ましくは、カメラから利用者までの距離を測定する測距部をさらに備え、カメラが、測距部での測定結果を用いて合焦制御を行うオートフォーカス機能、及び、測定結果を用いて撮影倍率制御を行うオートズーム機能を備えるのが良い。
【0026】
また、上述したアイリス撮影装置の実施にあたり、好ましくは、登録者の両目のアイリスデータが格納されているアイリス辞書と、カメラが撮影した画像データから、両目のアイリスデータをそれぞれ取得する目画像切り出し手段とをさらに備えるのが良い。
【発明の効果】
【0027】
この発明のアイリス撮影装置によれば、利用者の視線がカメラの光軸に対して上側に向いていると、上まつげによるアイリスの隠蔽の影響が少なくなるので、認証対象のアイリスの面積が大きくなり、その結果として、本人拒否率を低下させ、認証率を改善できる。
【0028】
また、カメラの光軸に対する、視線方向付け手段の鉛直方向の位置が可変であり、視線方向付け手段が、カメラの光軸に対して上側に配置可能であると、上まつげや上まぶたによるアイリスの隠蔽の影響の大小に応じた適切な状態で撮影可能になり、認証率のさらなる改善につながる。
【0029】
また、アイリス撮影装置が、カメラから利用者までの距離を測定する測距部をさらに備え、カメラが、測距部での測定結果を用いて合焦制御を行うオートフォーカス機能、及び、測定結果を用いて撮影倍率制御を行うオートズーム機能を備えると、撮影可能範囲が広がり、利用者の利便性が向上する。
【0030】
また、登録者の両目のアイリスデータが格納されているアイリス辞書と、カメラが撮影した画像データから、両目のアイリスデータをそれぞれ取得する目画像切り出し手段とをさらに備えると、一方の目で認証できない場合に、他方の目のデータをそのまま利用できるので、再度の撮影処理が不要となり、認証に係る時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態のアイリス撮影装置の模式図である。
【図2】第1実施形態のアイリス撮影装置のブロック図である。
【図3】第2実施形態のアイリス撮影装置のブロック図である。
【図4】第3実施形態のアイリス撮影装置のブロック図である。
【図5】第4実施形態のアイリス撮影装置の模式図及びブロック図である。
【図6】第5実施形態のアイリス撮影装置の模式図及びブロック図である。
【図7】アイリス撮影装置の従来例の模式図である。
【図8】カメラの光軸と利用者の視線との関係を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0033】
(第1実施形態)
図1及び図2を参照して、第1実施形態のアイリス撮影装置について説明する。図1は、利用者の視線と、アイリス撮影装置が備えるカメラの光軸との関係を示す、アイリス撮影装置の模式図である。また、図2は、アイリス撮影装置のブロック図である。
【0034】
アイリス撮影装置10は、カメラ20、測距部22、照明部24、視線方向付け手段30、制御部40及びアイリスデータベース(DB)70を備えている。制御部40は、例えば、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶手段を備えて構成される。制御部40が、記憶手段に格納されているプログラムを実行することにより、機能手段として、距離判定手段50、撮像制御手段52、画像処理手段54、アイリス特徴抽出手段56、アイリス照合手段58及び結果出力手段60が実現される。
【0035】
カメラ20は、制御部40からの指示に応答してアイリスを含む利用者の目80を撮影し、画像データを出力する。カメラ20は、例えば、電荷結合素子(CCD)などの撮像素子と、撮影用レンズを含んでいる。カメラ20から出力された画像データは、制御部40に送られる。
【0036】
測距部22は、例えば、赤外光による3点測量の原理を用いて、カメラ20から利用者までの距離を測定する。測距部22で測定された距離情報は、制御部40に送られる。
【0037】
照明部24は、アイリスの撮影に適切な輝度の光を、利用者に対して照射する。利用者に対する光の照射や、照射される光の輝度の調整は、制御部40からの指示に応答して行われる。照明部24は、例えば発光ダイオード(LED)で構成され、LEDを流れる電流の大きさに応じて、輝度が定まる。
【0038】
視線方向付け手段30は、アイリス撮影装置10の、利用者に対向する面(以下、装置前面と称する。)10aに設けられている。視線方向付け手段30は、アイリスの撮影時に、利用者に注視させる器具である。視線方向付け手段30は、鏡やLEDなどで構成される。
【0039】
この実施形態のアイリス撮影装置10では、カメラ20の光軸が、水平方向に対して、鉛直上向きに所定の角度で傾けられていて、視線方向付け手段30は、カメラ20の光軸と、装置前面10aとの交点(図中、IIIで示す。)よりも、上側に設けられている。
【0040】
距離判定手段50は、測距部22から受け取った距離情報を用いて、カメラ20と利用者との距離が撮影可能範囲内であるか否かを判定する。カメラ20と利用者との距離が撮影可能範囲内である場合は、撮像制御手段52に判定結果を送る。
【0041】
撮像制御手段52は、距離判定手段50から判定結果を受け取ると、カメラ20と照明部24を制御する。この撮像制御手段52の制御により、カメラ20及び照明部24が、利用者に対して適切な輝度の光を照射しながら、撮影を行う。
【0042】
画像処理手段54は、カメラ20から受け取った画像データからアイリスを切り出す機能を有している。画像処理手段54は、切り出したアイリスの情報を、アイリス特徴抽出手段56に送る。
【0043】
アイリス特徴抽出手段56は、画像処理手段54が切り出したアイリスの情報から、照合に用いる特徴データ(アイリスデータとも称する。)を抽出する。アイリス特徴抽出手段56は、利用者のアイリスの特徴データをアイリス照合手段58に送る。
【0044】
アイリス照合手段58は、アイリス特徴抽出手段56から受け取った利用者のアイリスの特徴データと、アイリスDB70から読み出した登録者のアイリスの特徴データとを比較して、個人認証を行う。アイリスDB70には、予め、登録者のアイリスの特徴データが読出し自在に格納されている。アイリス照合手段58でのアイリス照合の結果は、結果出力手段60に送られる。
【0045】
結果出力手段60は、アイリス照合手段58での個人認証の結果を出力する。
【0046】
なお、制御部40の各機能手段で行われる、アイリス認証処理については公知なので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0047】
この第1実施形態の構成によれば、アイリスの撮影時に、カメラの撮影可能範囲内にいる利用者が、視線方向付け手段30を注視すると、利用者の視線が、カメラの光軸とは一致しない。また、利用者の視線が水平方向を向いているときに、カメラの光軸が水平方向に対し、所定の角度で上側に傾いていて、アイリスを下側から撮影することになる。このため、上まつげによるアイリスの隠蔽の影響が少なくなるので、認証対象のアイリスの面積が大きくなり、その結果として、本人拒否率を低下させ、認証率を改善できる。
【0048】
なお、この第1実施形態では、利用者の視線を水平方向として、カメラの光軸を所定の角度で傾けている例を示しているが、この例に限定されない。利用者の便宜を考慮すると、利用者の視線を水平にするのが好ましいが、カメラの光軸を水平とし、利用者の視線が、水平方向に対して所定の角度で上方に傾いていても良い。
【0049】
また、利用者が視線方向付け手段30を注視することで、カメラの光軸よりも上側に、視線を向ける構成であれば良く、視線方向付け手段30は、必ずしも装置前面10aに設けられていなくても良い。
【0050】
利用者の視線と、カメラの光軸のなす角度が大きくなると、特許文献1に開示されているような、円形補正等の手段が必要になる場合がある。認証率は、利用者の視線と、カメラの光軸のなす角度だけでなく、画像の品質、認証に用いるアルゴリズム、利用者のまぶたやまつげの状態などにも依存するが、IRIS06の報告によれば、利用者の視線と、カメラの光軸のなす角度を20度程度にすることができる。
【0051】
(第2実施形態)
図3を参照して、第2実施形態のアイリス撮影装置について説明する。図3は、アイリス撮影装置のブロック図である。
【0052】
第2実施形態のアイリス撮影装置は、カメラ21が、オートフォーカス機能及びオートズーム機能を備えて構成される点と、制御部42が、さらにズーム・フォーカス変更手段62を備える点が異なっている。それ以外の構成及び機能は、図1及び2を参照して説明した第1実施形態のアイリス撮影装置と同様なので、重複する説明を省略する。
【0053】
ズーム・フォーカス変更手段62は、距離判定手段50での測距結果を利用して、撮影倍率を変更する。すなわち、アイリス撮影装置から利用者までの距離が異なる場合でも、画像中のアイリスが占める面積は、一定範囲に維持される。
【0054】
このズーム・フォーカス変更手段62が設定した撮影倍率の情報は、カメラ21に送られる。カメラ21は、オートズーム機能を備えていて、撮影倍率の情報を用いて、例えば、ズームレンズの位置を移動させることで、撮影倍率制御を行う。また、カメラ21は、オートフォーカス機能を備えていて、撮影者までの距離、及び、撮影倍率の情報を用いて、合焦制御を行う。
【0055】
第2実施形態の構成によれば、第1実施形態の構成と同様に、上まつげによるアイリスの隠蔽の影響が少なくなるので、認証対象のアイリスの面積が大きくなり、その結果として、本人拒否率を低下させ、認証率を改善できる。また、第1実施形態の構成では、撮影倍率を制御しないので、撮影時のカメラから利用者までの距離は、狭い範囲に限定される。これに対し、第2実施形態の構成によれば、カメラから利用者までの距離に応じて、好適な倍率で撮影を行うことができる。この結果、アイリス撮影時の利用者の位置の制限が緩和され、利用者の利便性が向上する。
【0056】
(第3実施形態)
図4を参照して、第3実施形態のアイリス撮影装置について説明する。図4は、アイリス撮影装置のブロック図である。
【0057】
第3実施形態のアイリス撮影装置は、制御部44が、カメラ20が撮影した画像データから両目のアイリスデータを取得する目画像切り出し手段64をさらに備える点と、アイリスDB72に、登録者の両目のアイリスデータが格納されている点とが異なっている。それ以外の構成は、図1及び2を参照して説明した第1実施形態のアイリス撮影装置と同様なので、重複する説明を省略する。
【0058】
目画像切り出し手段64は、画像データから右目と左目の位置を決定する。目画像切り出し手段64は、画像データから、右目及び左目の一方の目を含む画像を切り出す。この切り出した画像データを画像処理手段54に送る。
【0059】
制御部44の各機能手段で行われる照合処理は、第1実施形態と同様に行われる。アイリスDB72には、登録者の右目と左目のアイリスデータが格納されていて、目画像切り出し手段64が一方の目(ここでは、右目とする。)を含む画像を切り出した場合は、アイリス照合手段58は、登録されている右目のアイリスデータとの照合を行う。
【0060】
照合の結果、本人の認識ができた場合は、結果出力手段60がその結果を出力して、アイリス認証処理を終了する。一方、本人の認識ができなかった場合は、目画像切り出し手段64が、他方の目である左目を含む画像を切り出して、画像処理手段54へ送り、照合処理を行う。
【0061】
第3実施形態の構成によれば、第1実施形態の構成と同様に、上まつげによるアイリスの隠蔽の影響が少なくなるので、認証対象のアイリスの面積が大きくなり、その結果として、本人拒否率を低下させ、認証率を改善できる。さらに、第3実施形態の構成によれば、一方の目で認証できない場合に、他方の目のデータをそのまま利用できるので、再度の撮影処理が不要となる。この結果、認証に係る時間を短縮することができる。
【0062】
ここでは、第1実施形態のアイリス撮影装置の構成及び機能に加えて、両目の撮影を可能とした例について説明したが、第2実施形態で説明した、オートフォーカス機能及びオートズーム機能をさらに備える構成にしても良い。
【0063】
(第4実施形態)
上述した各実施形態のアイリス撮影装置では、利用者の視線と、カメラの光軸のなす角度が一定となっているが、カメラの光軸に対する、視線方向付け手段の鉛直方向の位置が可変であってもよい。以下、利用者の視線と、カメラの光軸のなす角度が可変である第4実施形態の構成例について、図5を参照して説明する。なお、図1及び2を参照して説明した第1実施形態のアイリス撮影装置と重複する説明は、省略する場合がある。
【0064】
図5(A)は、利用者の視線と、アイリス撮影装置の模式図である。また、図5(B)は、アイリス撮影装置のブロック図である。
【0065】
アイリス撮影装置16は、装置前面16aに視線方向付け部32を備えている。視線方向付け部32は、鉛直方向の位置が異なる複数の発光手段33a、33b及び33cを備えている。この複数の発光手段33a、33b及び33cの少なくとも1つが、カメラの光軸Iに対して、上側に設けられている。
【0066】
制御部46は、視線変更手段66を備えている。視線変更手段66は、複数の発光手段33a、33b及び33cを制御し、複数の発光手段33a、33b及び33cのいずれか1つを発光させる。アイリスの撮影時には、複数の発光手段33a、33b及び33cの中で、発光している発光手段が、視線方向付け手段として機能する。
【0067】
この構成によれば、カメラの光軸に対する、視線方向付け手段の鉛直方向の位置が可変であり、視線方向付け手段を、カメラの光軸に対して上側に配置することができる。また、カメラの光軸に対する、視線方向付け手段の鉛直方向の位置が可変であると、上まつげや上まぶたによるアイリスの隠蔽の影響の大小に応じて適切な状態で撮影可能になり、本人拒否率のさらなる低減につながる。
【0068】
ここでは、第1実施形態のアイリス撮影装置の構成及び機能に加えて、視線方向付け手段の位置を可変とした例について説明したが、第2実施形態で説明した、オートフォーカス機能及びオートズーム機能を備える構成や、第3実施形態で説明した両目のそれぞれの画像を切り出す機能を備える構成、あるいは、その両者を備える構成にしても良い。
【0069】
(第5実施形態)
第4実施形態のアイリス撮影装置では、カメラの光軸Iが固定され、利用者の視線を可変としている。これに対し、第5実施形態のアイリス撮影装置では、利用者の視線IIを固定し、カメラの光軸Iを可変としている。
【0070】
図6(A)は、第5実施形態の利用者の視線と、アイリス撮影装置の模式図である。また、図6(B)は、アイリス撮影装置のブロック図である。
【0071】
アイリス撮影装置18は、利用者のアイリスを撮影するカメラ20を、移動させるカメラ可動手段28を備えている。また、制御部48は、光軸変更手段68を備えている。
【0072】
カメラ可動手段28は、例えば、円弧状のレール等で構成される。カメラ20は、光軸変更手段68からの指示に応答して、モータ等の任意好適な従来周知の機構により、このカメラ可動手段28上を動く。この場合、カメラ可動手段28の円弧は、カメラの撮影可能範囲内のある点(以下、中心点と称し、図中、IVで示す。)を中心としており、カメラは、可動する際に、その光軸Iが中心点を通るように可動する。また、視線方向付け手段30を、カメラの光軸Iに対して上側に配置できる。
【0073】
第5実施形態の構成によれば、第4実施形態の効果に加え、さらに、視線の方向が固定されているため、利用者にとって、視線を動かす必要がなく、利便性が向上するという効果が得られる。
【0074】
ここでは、第1実施形態のアイリス撮影装置の構成及び機能に加えて、光軸の位置を可変とした例について説明したが、第2実施形態で説明した、オートフォーカス機能及びオートズーム機能を備える構成や、第3実施形態で説明した両目のそれぞれの画像を切り出す機能を備える構成、あるいは、その両者を備える構成にしても良い。
【符号の説明】
【0075】
10、16、18、110 アイリス撮影装置
20、21、120 カメラ
22 測距部
24 照明部
28 カメラ可動手段
30、130 視線方向付け手段
32 視線方向付け部
33a、33b、33c 発光手段
40、42、44、46、48 制御部
50 距離判定手段
52 撮像制御手段
54 画像処理手段
56 アイリス特徴抽出手段
58 アイリス照合手段
60 結果出力手段
62 ズーム・フォーカス変更手段
64 目画像切り出し手段
66 視線変更手段
68 光軸変更手段
70、72 アイリスDB
80 利用者の目
82 アイリス
84 上まぶた
86 下まぶた
88 上まつげ
90 下まつげ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者のアイリスを撮影するカメラと、
前記カメラの光軸に対して上側に設けられた視線方向付け手段と
を備えることを特徴とするアイリス撮影装置。
【請求項2】
利用者のアイリスを撮影するカメラと、
視線方向付け手段と
を備え、
前記カメラの光軸に対する、前記視線方向付け手段の鉛直方向の位置が可変であり、前記視線方向付け手段が、前記カメラの光軸に対して上側に配置可能である
ことを特徴とするアイリス撮影装置。
【請求項3】
利用者のアイリスを撮影するカメラと、
視線方向付け部と
を備え、
前記視線方向付け部が、鉛直方向の位置が異なる複数の発光手段を備え、
少なくとも1つの前記発光手段が、前記カメラの光軸に対して上側に設けられていて、
前記アイリスの撮影時には、複数の前記発光手段のいずれか1つが発光して、視線方向付け手段となる
ことを特徴とするアイリス撮影装置。
【請求項4】
利用者のアイリスを撮影するカメラと、
視線方向付け手段と
を備え、
前記カメラが、アイリス撮影可能位置を中心とする円弧上を移動可能であり、
前記視線方向付け手段を、前記カメラの光軸に対して上側に配置できる
ことを特徴とするアイリス撮影装置。
【請求項5】
前記カメラから利用者までの距離を測定する測距部をさらに備え、
前記カメラが、前記測距部での測定結果を用いて合焦制御を行うオートフォーカス機能、及び、前記測定結果を用いて撮影倍率制御を行うオートズーム機能を備える
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアイリス撮影装置。
【請求項6】
登録者の両目のアイリスデータが格納されているアイリス辞書と、
前記カメラが撮影した画像データから、両目のアイリスデータをそれぞれ取得する目画像切り出し手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のアイリス撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−267121(P2010−267121A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118647(P2009−118647)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】