説明

アクチュエータ構造

【課題】 本発明は、ボールねじ軸の軸方向のスペースを短縮し、モータ或いは被回転軸を単体で交換することができ制御性が良好でコンパクトな構成を得ることができるアクチェエータ構造を提供する。
【解決手段】 本発明は、ケーシング内に軸受けを介して支持されたモータシャフトの軸方向の端部に締結用ねじ孔を形成し、前記締結用ねじ孔に締結用ねじ部を螺合して外周にボール溝を形成したボールねじを組付けたアクチュエータ構造において、前記締結用ねじ部31aを締結用ねじ孔18d内に案内する中空円筒部材25を前記ケーシング16の前記モータシャフト18と同軸線上に配置し、前記中空円筒部材25の内面に沿って前記締結用ねじ部31aを前記モータシャフト18の締結用ねじ孔18dに締結した構造にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじをモータシャフトに締結したアクチュエータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、産業用のロボットにおいては、モータシャフトにボールねじを連結し、モータによりボールねじを回転駆動することにより、ボールねじのナット部分にブラケットを介して取付けられた作業部材等を直線的に移動させるようにしている。このような単軸ロボットにおいては、ボールねじを構成するボールねじ軸とモータの出力軸とがカップリングを介して連結されるのが一般的である。
【0003】
しかしながら、近年では、ボールねじ駆動の制御性の向上あるいは単軸ロボットのコンパクト化を図る等の目的から、モータのロータ軸を形成するシャフトを延長して、このシャフトの延長部分にねじを螺着することにより、モータのロータ軸とボールねじのボールねじ軸とを一体化することが行われている(特許文献1参照)。
【0004】
また、電動モータの回転軸の一端に円筒状の穴を形成し、送りねじ軸の一端面に円筒状の突起を形成し、送りねじ軸の突起に電動モータの回転軸の穴を嵌合させて溶融金属媒体によって接合させることが行われている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−57667号公報
【特許文献2】特開 2005−114081
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、締結部にシュパンリングを使用するため、高い部品精度が必要で、コストが高くなることや外形の小さな小型モータへの応用は難しい。
特許文献2は、2種類のブランク材をレーザー等で固定後にボールねじのボール溝を加工して、モータシャフトとボールねじの一体部材を製作するためモータとボールねじの分離が不可能であるとともにボールねじの交換等に対応ができない。 多品種のボールねじとモータとの組み合わせを生産するには、生産対応がしにくいという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、ボールねじ軸の軸方向のスペースを短縮し、モータ或いは被回転軸を単体で交換することができ制御性が良好でコンパクトな構成を得ることができるアクチェエータ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、ケーシング内に軸受けを介して支持されたモータシャフトの軸方向の端部に締結用ねじ孔を形成し、前記締結用ねじ孔に締結用ねじ部を螺合して外周にボール溝を形成したボールねじを組付けたアクチュエータ構造において、前記締結用ねじ部を締結用ねじ孔内に案内する中空円筒部材を前記ケーシングの前記モータシャフトと同軸線上に配置し、前記中空円筒部材の内面に沿って前記締結用ねじ部を前記モータシャフトの締結用ねじ孔に締結したことにある。
また、本発明は、前記モータシャフトの端部に小径部を形成し、該小径部に前記軸受けを配置し、かつ該軸受けの内輪を前記モータシャフトの小径部端部壁面と前記中空円筒部材端面とで挟持するとともに、前記ボールねじのボール溝と締結用ねじ溝との間に段付き円筒部を設け、該段付き円筒部の端面で前記中空円筒部材を固定したことにある。
さらに、本発明は、前記中空円筒部材の内径を、前記ボールねじのボール溝と締結用ねじ部との間に設けられた段付き円筒部の外径及び前記モータシャフトの端部の小径部の外径より小さな内径寸法に形成したことにある。
またさらに、本発明は、前記ボールねじの外周ボール溝と締結用ねじ部のねじ溝の螺刻方向が異なることにある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、ボールねじの締結用ねじ部をケーシング内に案内する中空円筒部材を前記ケーシングの前記モータシャフトと同軸線上に配置し、前記中空円筒部材の内面に沿って前記締結用ねじ部を前記モータシャフトの締結用ねじ孔に締結したので、軸方向のスペースを短縮することができるとともに、モータ或いはボールねじ等の被回転軸を単体で交換することができる。また、ボールねじの締結用ねじ部を中空円筒部材の内面に沿って組付けることができるので、組付け性を向上できる。
請求項2の発明によれば、モータシャフトの端部に小径部を形成し、該小径部に前記軸受けを配置し、かつ該軸受けの内輪を前記モータシャフトの小径部端部壁面と前記中空円筒部材端面とで挟持するとともに、前記ボールねじのボール溝と締結用ねじ部との間に段付き円筒部を設け、該段付き円筒部の端面で前記中空円筒部材を固定したので、締結用ねじ部をモータシャフトの締結用ねじ孔に螺合することで段付き円筒部により中空円筒部材を固定することができる。
請求項3の発明によれば、中空円筒部材の内径を、前記ボールねじのボール溝と締結用ねじ部との間に設けられた段付き円筒部の外径及び前記モータシャフトの端部の小径部の外径より小さな内径寸法に形成したので、中空円筒部材の内径からの半径方向圧縮力により、モータシャフトとボールねじとが高い同軸度が得られ、締結ねじの緩み止めの効果が得られる。
請求項4の発明によれば、ボールねじの外周ボール溝と締結用ねじ部のねじ溝の螺刻方向が異なるので、軸方向に発生する荷重を相殺することができ、締結部の緩み防止効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図示の実施の形態を図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は本発明に係るアクチェエータ構造を示す断面図である。
【0010】
図1に示す実施の形態は、ステッピングモータ部10と、ボールねじ軸31とボールを介して螺合するナット32からなるボールねじ部30から構成されている。 ステッピングモータ部10は、固定子鉄心11、固定子巻線12等からなる固定子(ステータ)13及び回転子(ロータ)14と、固定子13の前後両側に配置され、固定子13とともにモータケース15を形成する中空のケーシング16,17とで構成されている。
【0011】
回転子14は、ロータ軸を形成するモータシャフト18に取付けられた永久磁石19および回転子コア20,21からなるもので、永久磁石19を挟むようにして回転子コア20,21が設けられている。モータシャフト18は両端部に小径部18a,18bが形成されており、この小径部18a,18bとケーシング16,17内面との間に配置された軸受け22,23を介して前記モータケース15の中心軸線上にモータシャフト18が回転自在に配設されている。
【0012】
前記軸受け22,23のうちモータシャフト18の出力側に配置された軸受け22は、2個のアンギュラベアリングを並設して支持剛性が高められている。
この軸受け22はケーシング16の内周面の最も奥に形成されたリブ16aと、ケーシング16の開口端側内周面に螺着された環状の押え板24によってその外輪部が挾持されており、これによってケーシング16内に固定されている。軸受け22の内輪側は、モータシャフト18の小径部18aの最内部の終端壁面18cと、押え板24の内周側に配置された中空円筒部材25によって挟持されている。
中空円筒部材25は、前記ボールねじ部30のボールねじ軸31の先端に形成された締結用ねじ31aを、モータシャフト18の出力側端部に軸方向に形成されたねじ孔18dに螺合することで、ボールねじ軸31に設けられたボールねじ軸円筒部31bの後端に段付き円筒部を形成するフランジ部31cを介して軸受け22側に押し付けられている。
【0013】
中空円筒部材25の内径は、モータシャフト18の出力軸18eの外径及びボールねじ軸31の円筒部31b外径寸法より、小さく仕上げられており、これによる圧縮力により、出力軸18eとボールねじ軸31との同軸度が得られる。また、中空円筒部材25からの圧縮力により、ボールねじ軸31と出力軸18eとのねじ締結の緩み防止効果を得ることができる。
【0014】
また、ボールねじ軸31の端末に設けられたねじ部31aのねじ溝の螺刻(巻き)方向と、ボール溝31dの螺刻(巻き)方向を逆向きにすることで、出力軸18eが回転する際に発生するねじ部31aの軸方向の力の向きとナット32からボールねじ軸31が受ける軸方向の力が逆向きになり、締結部の緩み止め防止の効果を得ることができる。
更に強い締結力を必要とする場合は、中空円筒部材25の外周部より、半径方向に六角穴付き止めねじをボールねじ軸31の円筒部31bの外周及び出力軸18e外周に押し当てることで緩み止め防止効果が得られる。
【0015】
図2は、上述したアクチュエータ構造の作用を移動ブラケットの往復動に適用した場合について説明する。
ステッピングモータ部10を単軸ロボット40にねじ止めして固定し、ボールねじ部30のナット32に移動ブラケット41をねじ止めする。ステッピングモータ部10は、ドライバ、コントローラの制御機器により制御されるもので、移動ブラケット41はガイドレール42に沿って軸方向に移動するものである。
そして、ステッピングモータ部10のモータの駆動により、ボールねじ軸31が回転させられると、それに伴って、ナット部材32及びこれに固着された移動ブラケット41がガイドレール42に沿って移動する。ドライバ、コントローラの制御機器によりモータが制御され、これにより上記移動ブラケット41の移動速度や移動量が制御されることになる。
【0016】
このようにして単軸ロボット40が作動されているとき、ロータ軸としてのモータシャフト18に直接、ボールねじ軸31が連結されているので、ロータ軸の回転量とボールねじ軸31との回転量との間にずれが生じることが防止される。すなわち、モータのモータシャフトとボールねじ軸とをカップリングを介して連結する場合には、両軸間にねじり剛性が低い部分が介在することになり、両軸間の回転量にずれが生じる可能性が高いが、上記実施形態の構成によればこのようなことがなく、高精度でのモータ制御が可能となる。
【0017】
また、上述のようにカップリングが用いられることなくボールねじ軸31の端末部がステッピングモータ部10の内部に挿入された状態で連結されているため、カップリングを用いる構造に比べ、ボールねじ部30を支持する軸受け等の支持部材の分だけボールねじ軸31の軸方向のスペースが短縮される。すなわち、ボールねじ部30の有効範囲(移動ブラケット41の可動範囲)を同等にすれば単軸ロボット40の軸方向寸法を短縮することができ、逆に単軸ロボット40の軸方向寸法を同等にすればボールねじ部30の有効範囲を長くとることが可能となる。従って、単軸ロボット40のコンパクト化を効果的に達成することができる。
【0018】
しかも、上記実施形態の単軸ロボット40では、ボールねじ軸31とモータシャフト18とを結合するため中空円筒部材25を取り外すことにより、ボールねじ軸31とステッピングモータ部10とを簡単に分離させることができるので、モータ自体に故障が生じた場合や、ボールねじ軸31に損傷が生じた場合には、ボールねじ軸31、あるいはステッピングモータ部10を個別に取り外して交換することができる。
従って、ステッピングモータ部10のロータ軸とボールねじ部30とを一体化した従来の構造のように、ボールねじやモータの故障等の際にロボットのほぼ全体を分解してボールねじを含むモータ全体を交換する必要がなく、単軸ロボット40のカバー43を外してボールねじ軸31、あるいはモータ本体のみを交換することができ、これにより単軸ロボット40のメンテナンス性が向上される。
【0019】
モータ出力軸18eとボールねじ軸31との高い同芯度と小型化が可能な締結をするために、通常、研削加工されているモータ出力軸18e及びボールねじ軸31を同寸法に仕上げ(必ずしも、同一でなくとも良い)、モータ出力軸外径寸法及びボールねじ軸31外径寸法より小さな内径寸法を有する中空円筒部材(カラー)25をモータ出力軸とボールねじ軸の間に配置して、該中空円筒部材25の内径をインローとしてボールねじ軸端末に設けられた締結用ねじ部31aを出力軸先端のねじ孔18dに締めこむことにより、モータ出力軸18e及びボールねじ軸31dが中空円筒部材25に圧入されて、軸受け22の内輪を出力軸18cと中空円筒部材25端面で挟み込む位置に固定することができる。また、中空円筒部材25の内径寸法が、モータ出力軸18e外径及びボールねじ部30外径寸法より小さく仕上げられていることから、中空円筒部材25内径からの半径方向圧縮力により、モータ出力軸18eとボールねじ軸31とが高い同軸度が得られるとともに、締結ねじの緩み止めの役割も得られる。
これにより、カップリングおよび軸受け(アンギュラベアリング)を固定するロックナットが必要なくなり、小型化を実現できる。
【0020】
モータ出力軸18eとボールねじ部30を締結しているねじ部を緩めることで、モータとボールねじ部30を簡単に分離することができ、メンテナンス等でボールねじを交換することが可能となるとともに、部品点数が少なく、低コストで、高い同軸度が得られ、且つ締結部分が小スペースのアクチュエータを実現できる。
また、ボールねじ部30のボール溝の巻き方向と端部ねじ31aの巻き方向を逆にすることで、軸方向に発生する荷重を相殺することができ、締結部の緩み防止効果が得られる。
【0021】
さらに、本発明のアクチュエータ構造によれば、以下の効果を奏する。
ロータ軸を構成するモータシャフト18とボールねじ軸31とを中空円筒部材25に圧入及びボールねじ部30端末部の締結用ねじ31aにより連結するので、ボールねじ軸31とモータとの連結において、カップリングを省略することができる。その上、ボールねじ軸31端末がモータ内に挿入された状態で連結されるので、ボールねじ部30とモータとを用いた駆動構造において、ボールねじ軸31方向のスペースを短縮することができる。
【0022】
また、カップリングが不要となることで、ボールねじ軸31とロータ軸との間にねじり剛性が低い部分が介在することがなく、ロータ軸の回転量とボールねじ軸31との回転量との間にずれが生じることが防止されるため制御性が向上される。
さらに、ボールねじ軸31とモータ出力軸18eとが中空円筒部材25の内径で案内され、ボールねじ軸31端末部の締結用ねじ31aを締め込むことにより、高い同軸度で連結され、ボールねじ軸31端末部の締結用ねじ31aを緩めることにより、ボールねじ軸31とモータとを分離することが可能である。よって、ボールねじ軸31とモータとを用いた駆動構造において、モータ、あるいは被回転軸を単体で交換することが可能でありメンテナンス性が向上する。
【0023】
従って、このようなアクチュエータ構造を単軸ロボット40の駆動装置を構成するモータに採用することにより、モータのロータ軸とボールねじ部30とを一体化した従来のこの種の装置と同様に制御性が良好で、かつコンパクトな構成を達成しながら、さらにメンテナンス性のよい単軸ロボット40の駆動装置を提供することができる。
【0024】
なお、上記実施形態で説明したステッピングモータ部10は、本発明に係るモータ構造が適用されるモータの一例であって、具体的な構造は本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態によるアクチュエータ構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態によるアクチュエータ構造を単軸ロボットの往復動に利用した構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 ステッピングモータ部
13 固定子
14 回転子
15 モータケース
16,17 ケーシング
18 モータシャフト
22 軸受け
24 押え板
25 中空円筒部材
30 ボールねじ部
31 ボールねじ軸
32 ナット
40 単軸ロボット
41 移動ブラケット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に軸受けを介して支持されたモータシャフトの軸方向の端部に締結用ねじ孔を形成し、前記締結用ねじ孔に締結用ねじ部を螺合して外周にボール溝を形成したボールねじを組付けたアクチュエータ構造において、前記締結用ねじ部を締結用ねじ孔内に案内する中空円筒部材を前記ケーシングの前記モータシャフトと同軸線上に配置し、前記中空円筒部材の内面に沿って前記締結用ねじ部を前記モータシャフトの締結用ねじ孔に締結したことを特徴とするアクチェエータ構造。
【請求項2】
前記モータシャフトの端部に小径部を形成し、該小径部に前記軸受けを配置し、かつ該軸受けの内輪を前記モータシャフトの小径部端部壁面と前記中空円筒部材端面とで挟持するとともに、前記ボールねじのボール溝と締結用ねじ部との間に段付き円筒部を設け、該段付き円筒部の端面で前記中空円筒部材を固定したことを特徴とする請求項1に記載のアクチェエータ構造。
【請求項3】
前記中空円筒部材の内径を、前記ボールねじのボール溝と締結用ねじ部との間に設けられた段付き円筒部の外径及び前記モータシャフトの端部の小径部の外径より小さな内径寸法に形成したことを特徴とする請求項2に記載のアクチェエータ構造。
【請求項4】
前記ボールねじの外周ボール溝と締結用ねじ部のねじ溝の螺刻方向が異なることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアクチェエータ構造。





【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−154944(P2007−154944A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348571(P2005−348571)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】