説明

アディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤

【課題】アディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤、及びアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制用飲食品、飼料の提供。
【解決手段】ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)の培養上清を有効成分とするアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤、アディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制用飲食品ならびに飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)の培養上清を有効成分とするアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤、アディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制作用を賦与した新規な飲食品、及び、アディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制作用を賦与した新規な飼料に関する。本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤は、摂取することで脂肪組織からのアディポネクチン分泌を促進及び/又は減少を抑制することができる。アディポネクチンの分泌低下は、高血圧、高脂血症、糖尿病等が複合して起こるメタボリックシンドロームの発症・増悪の原因とされており、本発明はその予防・治療に有効である。
【背景技術】
【0002】
脂肪細胞が肥大して内臓脂肪が過剰に蓄積すると、高血圧や高脂血症、糖尿病等の病態が複合的に発症するきっかけとなる。これらの病態は総合してメタボリックシンドロームと呼ばれ、近年、国民の健康において大きな問題であり、その対策が急務となっている。
内臓脂肪組織は、アディポネクチン、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター、腫瘍壊死因子(TNF−α)、レプチン等の内分泌因子を分泌し、生体のホメオスタシスの維持に寄与している。しかし、脂肪細胞が肥大すると、これらの因子の分泌に異常を来たし、過剰、あるいは過小に分泌されるようになる。このバランスの破綻が、メタボリックシンドロームの発症や増悪に深く関与していることが、近年の研究から明らかになってきた。中でも、アディポネクチンの分泌異常がもっとも大きく影響していると考えられている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
アディポネクチンは244個のアミノ酸からなる分子で、脂肪組織から分泌され、インスリン抵抗性改善効果等のほかに、肝臓や筋肉における脂肪燃焼を促進する効果が示されている。また、アディポネクチンには血液中のブドウ糖と脂肪酸が細胞内に取り込まれるのを促進する働きがあることが明らかにされている。筋肉や肝臓等に脂肪がたまると、糖分の取り込みが悪くなり糖尿病につながる。しかし、通常、アディポネクチンは、一時的に過剰となった脂肪や糖分を分解することで、体内の栄養バランスを保つとみられ、肥満が進むと、アディポネクチンを分泌する脂肪細胞の働きが弱くなり、体内の栄養バランスが崩れてしまうといわれている。このように、アディポネクチン分泌の正常化には、高血圧や脂質代謝異常、糖尿病といったメタボリックシンドロームの諸症状を、総合的に改善する効果が期待される。
【0004】
アディポネクチン上昇効果を有する薬物や人工化合物の探索も行われているが、副作用を伴う危険性もあることから、食生活を通じて病状の進展をできるだけ抑制するような機能をもった食品成分の研究が注目されている。血中においてアディポネクチン濃度の増加を促進する物質についてはりんご抽出物(例えば特許文献1参照)、ホップ苞抽出物(例えば特許文献2参照)、緑茶カテキン(例えば特許文献3参照)、米ぬか抽出物(例えば特許文献4参照)、ウコン根茎抽出物(例えば特許文献5参照)等植物由来の抽出物が多く開示されている。しかし、これらは抽出条件が複雑なものや、抽出原料の入手に制約があるもの、食品に添加した場合に風味の低下を来たすものがあり、製剤や飲食品配合原料としての応用性に懸念がある。
【0005】
一方、乳酸菌による発酵を応用した食品は、チーズやヨーグルト、漬け物を始め多岐にわたり、比較的安価に供給できる上、その高い嗜好性から世界中で古くから大量に生産されている。乳酸菌は、発酵によって多くの分解物や代謝産物を産生し、その中から多くの健康機能性成分が見出されつつあるが、いまだ機能未知の成分も多いと考えられる。
本発明者らは、乳酸菌熟成チーズから分離した乳たんぱく質由来のペプチドがアディポネクチン産生促進効果を有することを見出した(例えば特許文献6参照)。また、本出願人は、脱脂乳培地を用いた乳酸菌培養物、特にラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)およびラクトバチラス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)の培養物に、血中アディポネクチン濃度増加促進及び/又は減少抑制効果があることを見出した(特願2006−244377号)。
【0006】
ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)には、病原体感染防御作用(例えば特許文献7参照)、炎症性腸疾患及び過敏性腸症候群予防作用(例えば特許文献8参照)、骨吸収抑制作用(例えば特許文献9参照)、免疫増強作用(例えば特許文献10参照)に加え、糖尿病合併症予防作用(例えば特許文献11参照)や血清コレステロール上昇抑制作用(例えば特許文献12参照)が知られている。しかしながら、ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)のみならず、いかなる種類の乳酸菌についても、その培養物から乳たんぱく質沈殿や菌体成分を除去した液体成分であるところの培養上清が、単独でアディポネクチン上昇効果を有することはまったく知られていない。
【0007】
発酵によって凝固した乳たんぱく質沈殿や菌体成分は、乳製品の風味に大きな影響を及ぼし、時には品質を劣化させ、商品価値の低下を来たす。乳発酵物から沈殿物を除く技術も開発が進んでおり(例えば特許文献13参照)、食品に良好な風味と高い嗜好性を与える乳発酵物の培養上清は、食品原料として産業上の応用性が極めて高い。

【特許文献1】特開2006−193502号公報
【特許文献2】特開2006−193501号公報
【特許文献3】特開2006−131512号公報
【特許文献4】特開2005−68132号公報
【特許文献5】特開2005−60308号公報
【特許文献6】特開2007-254448号公報
【特許文献7】特開平8−268899号公報
【特許文献8】特開2003−95963号公報
【特許文献9】特開2004−315477号公報
【特許文献10】特開2006−69993号公報
【特許文献11】特開2003−252770号公報
【特許文献12】特開2003−306436号公報
【特許文献13】特開平6−319447号公報
【非特許文献1】J. Clin. Invest., 116:1784-1792
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、食品原料として優れた応用性と汎用性を有し、なおかつ生体においてアディポネクチンの分泌を促進させることにより、メタボリックシンドロームの予防・治療に有効な乳酸菌培養上清を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)の培養上清が、極めて高いアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制効果を示すことを明らかにし、本発明を完成するに至った。
【0010】
したがって、本発明は、下記の構成からなる発明である。
(1)ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)の培養上清を有効成分とするアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤。
(2)ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)の培養上清を有効成分とするアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制用飲食品。
(3)ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)の培養上清を有効成分とするアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制用飼料。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤、及びアディポネクチン分泌促進及び減少抑制作用を賦与した飲食品、飼料は、血中アディポネクチンの低下により発症するといわれるメタボリックシンドロームの予防・治療に有効である。また、本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤、及びアディポネクチン分泌促進及び減少抑制作用を賦与した飲食品もしくは飼料は、ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)の培養上清を使用するので、純度の高い食品素材として優れた応用性と汎用性を有し、比較的安価に大量供給が可能であり、なおかつ極めて安全性が高いという特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者等は、発酵乳やヒト由来の数多くの乳酸菌のうち、糖尿病改善効果がある、又は血中コレステロール低下作用がある、食品に適用した際に香味や物性も優れている菌株の選定を進めてきた。さらに、その培養上清がアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制効果を示すという条件を設定して選定を進め、ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055株を選択することができた。なお、本菌株は寄託番号FERM P-15535として、独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センターに寄託されている。
【0013】
ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)が、その菌体を除いた培養上清のみでこのようなアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制効果を示すことは全く知られておらず、本発明者等によって初めて明らかにされた。
【0014】
次に、これらの乳酸菌の培養方法を示す。培地には、乳培地又は乳成分を含む培地、これを含まない半合成培地等種々の培地を用いることができるが、乳成分としてホエイ粉末を添加した培地が特に好ましい。培養法は静置培養又はpHを一定にコントロールした中和培養で行うが、菌が良好に生育する条件であれば特に培養法に制限はない。得られた培養物から、遠心分離、濾過操作等の方法を用いて、乳たんぱく質沈殿や菌体成分を除去することにより、培養上清を得ることができる。
【0015】
本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤は、上述のようにして得られる培養上清を有効成分とする。そのまま用いてもよいし、また乾燥した粉末を有効成分としてもよい。乾燥方法に特に制限はないが、成分の変質を抑制できる凍結乾燥法が好ましい。これらの粉末は乳糖等の適当な賦形剤と混合し、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤又はシロップ剤等として製剤化することができる。これらは経口投与されることが望ましい。
【0016】
また、本発明は、上述のようにして得られる培養上清を有効成分とするアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制機能を賦与した飲食品である。飲食品としてはどのような飲食品でも良く、培養上清自体であっても良いし、培養上清自体を配合した飲食品としても良い。培養上清又はその乾燥物は、喫食時にどのような飲食品に添加しても良く、飲食品の製造工程中に製品に添加しても良いし、原料に配合しても良い。飲食品の例として、乳飲料、発酵乳、果汁飲料、ゼリー、キャンディー、マヨネーズ等の卵加工品、バターケーキ等の菓子、パン類等の食品を挙げることができる。また、各種粉乳のほか、乳幼児及び低出生体重児等を対象とする栄養組成物に配合したものを例示することができる。
【0017】
さらに、本発明は、上述のようにして得られる培養上清を有効成分とするアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制機能を賦与した飼料である。家畜用飼料として、前記飲食品と同様に、培養上清又はその乾燥物は、どのような飼料に配合しても良く、その製造工程中に原料に添加しても良い。
【0018】
本発明において、アディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制作用を発揮させるためには、通常成人の場合、ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)の培養上清を一日当たり、10〜200g、あるいは乾燥物として0.5〜50g摂取できるように、投与量や配合量等を調整すればよい。
【0019】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
(培養上清の調製1)
還元ホエイ培地(13重量%ホエイ粉、0.5重量%酵母エキス含有)を95℃で30分間殺菌した後、ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055を接種し、37℃で16時間培養し、得られた培養物を3,500回転で20分間遠心して、沈殿物を除いた培養上清を得た。これは、そのまま本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤として使用し得る。
【実施例2】
【0021】
(培養上清の調製2)
還元脱脂乳培地(13重量%脱脂粉乳、0.5重量%酵母エキス含有)を95℃で30分間殺菌した後、ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055を接種し、37℃で16時間培養し、得られた培養物を3,500回転で20分間遠心して、沈殿物を除いた培養上清を得た。これは、そのまま本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤として使用し得る。
【0022】
〔試験例1〕
(脂肪細胞投与実験)
実施例1で得られた培養上清について、初代培養内臓脂肪細胞への投与実験を行った。
ラットの初代培養内臓脂肪細胞(VAC01、セルガレージ社)及び内臓脂肪細胞分化誘導培地(セルガレージ社)を用いて実験を行った。セルガレージ社のプロトコルに従って凍結保存した細胞を融解し、24穴プレートに播種した日をday0とし、アディポネクチン分泌が活発になるday5に、還元ホエイ培地培養上清を培地中に添加した。比較対照として、脂肪細胞分化誘導培地のみで何も添加しないものを用意した。37℃、二酸化炭素分圧0.5%の条件下で、細胞を2時間培養し、培地を回収した。
培地中に分泌されたアディポネクチン濃度の測定は、アディポネクチンELISAキット(大塚製薬社)を用いた。測定結果は、各ウエルから抽出したDNA量で標準化した。
【0023】
(脂肪細胞投与実験結果)
ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)の培地に還元ホエイ培地を用いた場合のアディポネクチン濃度の測定結果を図1に示す。脂肪細胞に、ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)の培養上清を添加すると、何も投与しない細胞に比べて、アディポネクチン分泌量は約1.44倍に増加した。還元ホエイ培地のみを添加した細胞に比べると、アディポネクチン分泌量は約1.36倍に増加した。
【0024】
以上のことから、ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)の培養上清に、脂肪細胞に対してアディポネクチン分泌を顕著に促進する作用があることが認められ、なおかつその効果は還元ホエイ培地ではなく、ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)から産生された成分によるものであることが示唆された。
【実施例3】
【0025】
(錠剤の製造)
還元ホエイ培地(13重量%ホエイ粉、0.5重量%酵母エキス配合)を95℃で30分間殺菌した後、ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055を接種し、37℃で16時間培養し、得られた培養物を3,500回転で20分間遠心して、沈殿物を除いた培養上清を得た。これを凍結乾燥処理して培養上清粉末を得た。この培養上清粉末1部に脱脂粉乳4部を混合し、この混合粉末を打錠機により1gずつ常法により打錠して、本発明のラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)の培養上清200mgを含むアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制錠剤を調製した。
【実施例4】
【0026】
(散剤の製造)
ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055を還元ホエイ培地5Lに接種後、37℃、18時間静置培養を行った。培養終了後、7,000回転で15分間遠心して、沈殿物を除いた培養上清を得た。次いで、この培養上清を、脱脂粉乳10重量%、グルタミン酸ソーダ1重量%を配合した分散媒と同量混合し、pH7に調整後、凍結乾燥を行った。得られた凍結乾燥物を60メッシュのフルイで整粒化し、培養上清凍結乾燥物を製造した。第13改正日本薬局方解説書製剤総則「散剤」の規定に準拠し、この培養上清凍結乾燥物1gにラクトース(日局)400g、バレイショデンプン(日局)600gを加えて均一に混合し、本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤を得た。
【実施例5】
【0027】
(カプセル剤の製造)
ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055を還元ホエイ培地5Lに接種後、37℃、18時間静置培養を行った。培養終了後、7,000回転で15分間遠心して、沈殿物を除いた培養上清を得た。次いで、この培養上清を、脱脂粉乳10重量%、グルタミン酸ソーダ1重量%を配合した分散媒と同量混合し、pH7に調整後、凍結乾燥を行った。得られた凍結乾燥物を60メッシュのフルイで整粒化し、培養上清凍結乾燥物を製造した。表1に示した配合により原料を混合し、造粒した後、カプセルに充填して、本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制用カプセル剤を製造した。
【0028】
【表1】

【実施例6】
【0029】
(スティック状健康食品の製造)
ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055をMRS液体培地(Difco社)5Lに接種後、37℃、18時間静置培養を行った。培養終了後、7,000回転で15分間遠心して、沈殿物を除いた培養上清を得た。次いで、この培養上清を、脱脂粉乳10重量%、グルタミン酸ソーダ1重量%を配合した分散媒と同量混合し、pH7に調整後、凍結乾燥を行った。得られた凍結乾燥物を60メッシュのフルイで整粒化し、培養上清凍結乾燥物を製造した。このラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055の培養上清物粉末30gに、ビタミンCとクエン酸の等量混合物40g、グラニュー糖100g、コーンスターチと乳糖の等量混合物60gを加えて混合した。混合物をスティック状袋に詰め、本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制用スティック状健康食品を製造した。
【実施例7】
【0030】
(飲料の製造)
ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055を還元ホエイ培地5Lに接種後、37℃、18時間静置培養を行った。培養終了後、7,000回転で15分間遠心分離して、沈殿物を除いた培養上清を得た。表2に示した配合により原料を混合し、容器に充填した後、加熱殺菌して、本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制用飲料を製造した。
【0031】
【表2】

【実施例8】
【0032】
(ヨーグルトの製造)
ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055をMRS液体培地(Difco社)にて培養した。対数増殖期にある各培養液を、0.5%の酵母エキスを添加した13%還元ホエイ培地(115℃、20分滅菌)に1%接種し、マザーカルチャーを作成した。得られた培養物を3,500回転で20分間遠心して、沈殿物を除いた培養上清を得た。
100℃にて10分間加熱して冷却したヨーグルトミックスに得られた培養上清を2.5%添加後、ラクトバチラス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)からなる混合スターター3%を添加して、37℃で発酵を行い、乳酸酸度0.85に到達した時点で冷却し、発酵を終了させ、本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制用ヨーグルトを得た。
【実施例9】
【0033】
(ドリンクヨーグルトの製造)
実施例8で得られたヨーグルト43kgにグラニュー糖4kg、水3kg、ペクチン0.15kgを加えた後に均質化して、本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制用ドリンクヨーグルト50kgを得た。このドリンクヨーグルトはマイルドな好ましい風味を有し、pH3.6であった。
【実施例10】
【0034】
(イヌ飼育用飼料の製造)
ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055をMRS液体培地(Difco社)5Lに接種後、37℃、18時間静置培養を行った。培養終了後、7,000回転で15分間遠心して、沈殿物を除いた培養上清を得た。次いで、この培養上清を、脱脂粉乳10重量%、グルタミン酸ソーダ1重量%を配合した分散媒と同量混合し、pH7に調整後、凍結乾燥を行った。得られた凍結乾燥物を60メッシュのフルイで整粒化し、凍結乾燥培養上清を製造した。表3に示した配合により原料を混合し、本発明のアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制用イヌ飼育用飼料を製造した。
【0035】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】アディポネクチン濃度の測定結果を示す。(試験例1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)の培養上清を有効成分とするアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制剤。
【請求項2】
ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)の培養上清を有効成分とするアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制用飲食品。
【請求項3】
ラクトバチラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055 (FERM P-15535)の培養上清を有効成分とするアディポネクチン分泌促進及び/又は減少抑制用飼料。

【図1】
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【公開番号】特開2009−107956(P2009−107956A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280195(P2007−280195)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000006699)雪印乳業株式会社 (155)
【Fターム(参考)】