説明

アバランシェホトダイオード及びこれを用いた光受信モジュール

【課題】増倍率が低い状態においても、光吸収層内で発生した電子の、光吸収層と電界調整層の界面への蓄積が抑制され、素子破壊に至る光信号強度を増加させることが可能な光吸収層を有するアバランシェホトダイオード及びこれを用いた光受信モジュールの提供。
【解決手段】電気調整層のうち、積層方向の少なくとも一部における伝導帯端のエネルギー準位が、光吸収層における伝導帯端のエネルギー準位より高く、増倍層の伝導帯端のエネルギー準位より低いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収層を有するアバランシェホトダイオード及びこれを用いた光受信モジュールに関し、特に、素子破壊に至る光信号強度の増加という性能向上に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板上に、光を吸収してキャリアを発生する光吸収層と、発生したキャリアを増倍する増倍層と、光吸収層と増倍層の間に位置する電界調整層とを備えるアバランシェホトダイオード(Avalanche Photodiode:以下、APDと記す)がある。
【0003】
図7は、従来技術に係るAPDの受光部メサ構造を示す断面図である。図7に示すAPDは、裏面入射型APDであって、図7の図中下側からn型InP基板701の裏面へ入射する光は、その後、光吸収層705で受光される。そして、光吸収層705において光電変換により発生した電子は、印加された電界により加速され、増倍層703を通過する。その際に、増倍層703において、アバランシェ増倍作用によりキャリアの増倍が行われ、電流として検出される。このように、APDは、信号光電流に対する増倍作用を有しており、微弱光信号を受信する光通信用の受光素子として広く用いられている。
【0004】
光吸収層705には、InP基板に格子整合し、1550nm帯の光信号に対して高い感度を有するInGaAsが用いられる。増倍層703には、InP基板に格子整合し、高いイオン化率比を有するInAlAsが用いられる。また、光吸収層705と増倍層703の間には、InAlAsから成る電界調整層704が配置され、その濃度を適切に調整することにより、光吸収層705と増倍層703が適切な電界強度に印加されることが可能となる。電界調整層704は、メサ構造中心部が周辺部より厚くなっている構造を有し、これによりエッジ降伏を防止することが可能となっている。たとえば、特許文献1および特許文献2に、かかる構造を有する裏面入射型APDが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−324911号公報
【特許文献2】特開2004−179404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
APDは電流増倍機能を有するため、強い光信号が入力された場合にはAPDの逆バイアス電圧を低下させて大電流の発生を抑える必要がある。このため、APDと保護抵抗とを直列に接続することが一般的である。入力光強度が増加し、光電流が増加すると、保護抵抗による電圧降下が大きくなり、APDの逆バイアス電圧が自動的に低下するためである。
【0007】
しかしながら、従来技術に係る光吸収層を有するAPDでは、増倍率が低い状態、すなわち、逆バイアス電圧が低く光吸収層に印加される電界強度が低い状態において、強い光信号が入力されると、光吸収層の一部が溶融し、素子破壊に至るという問題が生じている。
【0008】
図8は、従来技術に係るAPDの伝導帯端のエネルギー準位を示す概略図となっている。図8は、電界が印加されていない状態を示している。横方向は、位置を表し、左から順に、増倍層3、電界調整層4、光吸収層5の領域を示している。縦方向は、エネルギー準位である。
【0009】
APDに逆バイアス電圧が印加されると、伝導帯端のエネルギー準位は、その電界強度に応じて、右上がりに傾斜する。入射した光が、光吸収層5において受光されると、価電子帯にある電子が伝導帯へ励起し、伝導帯に電子が、価電子帯にホール(正孔)が出現する。この電子が印加された電界によって加速され、増倍層3まで到達すると、キャリアの増倍が行われることとなる。
【0010】
しかし、図8に示す通り、電界調整層4の伝導帯端のエネルギー準位は、光吸収層5の伝導帯端のエネルギー準位より高くなっているため、光吸収層5に印加された電界が弱い場合には、光吸収層5内で発生した電子のうち、増倍層3まで達する電子の数は減少し、それ以外の電子が、光吸収層5と電界調整層4との界面に、停留蓄積してしまう。その結果、光吸収層5の一部がn型反転し、局部的に電界強度が高くなり、大電流が発生することとなる。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、増倍率が低い状態においても、光吸収層内で発生した電子の、光吸収層と電界調整層の界面への蓄積が抑制され、素子破壊に至る光信号強度を増加させることが可能な光吸収層を有するAPDおよびこれを用いた光受信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係るアバランシェホトダイオードは、半導体基板上に、少なくとも増倍層と、電界調整層と、光吸収層とを含む半導体層を積層してなるアバランシェホトダイオードであって、前記電界調整層のうち、積層方向の少なくとも一部における伝導帯端のエネルギー準位が、前記光吸収層における伝導帯端のエネルギー準位より高く、前記増倍層の伝導帯端のエネルギー準位より低い、ことを特徴とする。
【0013】
(2)上記(1)に記載のアバランシェホトダイオードであって、さらに、前記電界調整層において、少なくとも一層の量子井戸層を含んでいてもよい。
【0014】
(3)上記(2)に記載のアバランシェホトダイオードであって、さらに、前記電界調整層は、前記増倍層側から前記光吸収層側へ、順に、障壁層となる第1電界調整層、量子井戸層となる第2電界調整層、障壁層となる第3電界調整層によって構成され、前記第3電界調整層が厚さ15nm以下であってもよい。
【0015】
(4)上記(1)に記載のアバランシェホトダイオードであって、さらに、前記電界調整層のうち、積層方向の少なくとも一部において、前記光吸収層側の端から前記増倍層側の端にかけて、伝導帯端のエネルギー準位が単調的に増加していてもよい。
【0016】
(5)上記(4)に記載のアバランシェホトダイオードであって、前記電界調整層の少なくとも前記一部において、前記光吸収層側の端から前記増倍層側の端にかけて、該エネルギー準位が徐増していてもよい。
【0017】
(6)上記(4)に記載のアバランシェホトダイオードであって、前記電界調整層の少なくとも前記一部において、前記光吸収層側の端から前記増倍層側の端にかけて、該エネルギー準位が段階的に増加していてもよい。
【0018】
(7)本発明に係るアバランシェホトダイオードは、n型InP半導体基板の上に、InAlAs混晶から成る増倍層と、p型電界調整層と、InGaAs混晶から成る光吸収層と、p型コンタクト層とが、積層してなるアバランシェホトダイオードであって、前記電界調整層において、少なくとも一層の量子井戸層を含む、ことを特徴とする。
【0019】
(8)上記(7)に記載のアバランシェホトダイオードであって、さらに、前記電界調整層は、前記増倍層側から前記光吸収層側へ、順に、障壁層となる第1電界調整層、量子井戸層となる第2電界調整層、障壁層となる第3電界調整層によって構成され、前記第2電界調整層がp型InGaAs混晶からなり、前記第3電界調整層がp型InAlAs混晶からなっていてもよい。
【0020】
(9)上記(8)に記載のアバランシェホトダイオードであって、さらに、前記第3電界調整層の厚さが15nm以下であってもよい。
【0021】
(10)本発明に係るアバランシェホトダイオードは、n型InP半導体基板の上に、InAlAs混晶から成る増倍層と、p型電界調整層と、InGaAs混晶から成る光吸収層と、p型コンタクト層とが、積層してなるアバランシェホトダイオードであって、前記電界調整層のうち、積層方向の少なくとも一部は、前記光吸収層の前記InGaAsの組成と、前記増倍層の前記InAlAsの組成と、を内分して組成されている、ことを特徴とする。
【0022】
(11)上記(10)に記載のアバランシェホトダイオードであって、さらに、前記電界調整層のうち、積層方向の少なくとも一部において、その組成が、前記光吸収層側から前記増倍層側にかけて、より前記増倍層の前記InAlAsの組成に近づくように、前記光吸収層の前記InGaAsの組成と、前記増倍層の前記InAlAsの組成と、を内分しながら単調的に変化していてもよい。
【0023】
(12)上記(11)に記載のアバランシェホトダイオードであって、前記電界調整層の少なくとも前記一部において、その組成が、前記光吸収層側から前記増倍層側にかけて、徐々に前記増倍層の前記InAlAsの組成に近づくように、変化していてもよい。
【0024】
(13)上記(11)に記載のアバランシェホトダイオードであって、前記電界調整層の少なくとも前記一部において、その組成が、前記光吸収層側から前記増倍層側にかけて、段階的に、前記増倍層の前記InAlAsの組成に近づくように、変化していてもよい。
【0025】
(14)上記(1)乃至(13)のいずれかに記載のアバランシェホトダイオードであって、前記増倍層と、前記電界調整層と、前記光吸収層は、前記半導体基板側からこの順に積層してなり、積層方向に沿って、徐々に断面積を小さくなるよう、前記電界調整層の一部から前記半導体層の上端までからなるメサ構造が形成され、前記メサ構造の周囲には、半絶縁性埋め込み層が形成されていてもよい。
【0026】
(15)上記(1)乃至(13)のいずれかに記載のアバランシェホトダイオードであって、前記電界調整層のうち、前記増倍層に接する部分が、p型InPによって形成されていてもよい。
【0027】
(16)上記(15)に記載のアバランシェホトダイオードであって、前記増倍層と、前記電界調整層と、前記光吸収層は、前記半導体基板側からこの順に積層してなり、積層方向に沿って、徐々に断面積を小さくなるよう、前記電界調整層のうち前記p型InPからなる層の上面から、前記半導体層の上端までからなるメサ構造が形成され、前記メサ構造の周囲には、半絶縁性埋め込み層が形成されていてもよい。
【0028】
(17)光受信モジュールが、上記(1)乃至(16)のいずれかに記載のアバランシェホトダイオードを、備えていてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、増倍率が低い状態においても、光吸収層内で発生した電子の、光吸収層と電界調整層の界面への蓄積が抑制され、素子破壊に至る光信号強度を増加させることが可能な光吸収層を有するAPD及びこれを用いた光受信モジュールとを、提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係るAPD全体を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るAPDの受光部メサ構造を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るAPDの受光部メサ構造を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るAPDの受光部メサ構造を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態及び従来技術に係るAPDそれぞれについて、破壊光電流IとAPDの逆バイアス電圧Vの関係を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るAPDの伝導帯端のエネルギー準位を示す図である。
【図7】従来技術に係るAPDの受光部メサ構造を示す断面図である。
【図8】従来技術に係るAPDの伝導帯端のエネルギー準位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下本発明の実施形態に係るAPDについて、図面を参照しながら説明する。なお、同一部位には同じ参照番号を振り、説明は繰り返さない。
【0032】
[第1の実施形態]
図1および図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係るAPDについて説明する。なお、当該APDは、裏面入射型APDである。
【0033】
図1は、本実施形態に係るAPDをサブマウントに実装した組み立て完成品の概略図である。図1(a)は、完成品の全体斜視図であり、図1(b)は、完成品の上面図である。
【0034】
図2は、本実施形態に係るAPDの受光部メサ構造を示す断面図である。例えば、図1(b)のAA断面図の主要部を表している。
【0035】
図2を参照して、当該APDの構造および製造プロセスを説明する。なお、図2は、APDの主要部の完成断面図であるが、当業者が参照すればその製造プロセスを理解可能である。
【0036】
図2に示す通り、不純物濃度1×1018atom/cmのn型InP基板201に、分子線エピタキシャル成長法を用いて、順に、不純物濃度2×1018atom/cmで厚さ0.7μmのn型InAlAsバッファ層202、不純物濃度5×1014atom/cm以下で厚さ0.2μmのn型InAlAs増倍層203、不純物濃度1×1018atom/cmで厚さ0.025μmのp型InAlAs電界調整層204a(第1電界調整層)、不純物濃度1×1018atom/cmで厚さ0.01μmのp型InGaAs電界調整層204b(第2電界調整層)、不純物濃度1×1018atom/cmで厚さ0.015μmのp型InAlAs電界調整層204c(第3電界調整層)、不純物濃度1×1015atom/cmで厚さ1.2μmのp型InGaAs光吸収層205、不純物濃度5×1017atom/cmで厚さ1.0μmのp型InAlGaAsキャップ層206、不純物濃度5×1019atom/cmで厚さ0.1μmのp型InGaAsコンタクト層207が、形成される。
【0037】
その後、さらに上部に、円形のハードマスクが形成され、p型InGaAsコンタクト層207、p型InAlGaAsキャップ層206、p型InGaAs光吸収層205およびp型InAlAs電界調整層204cがエッチングされることにより、第1メサ構造208が形成される。第1メサ構造208は、図2において、太線にて示されている。図2に示すように、p型InAlAs電界調整層204c、p型InGaAs光吸収層205、p型InAlGaAsキャップ層206およびp型InGaAsコンタクト層207は、積層方向に沿って、順に、徐々に断面積が小さくなっている。ここで、エッチングの際に、InAlAsとInGaAsに対して選択性があるエッチング液が交互に使用されることにより、p型InGaAs電界調整層204bの上面にてエッチング停止することが可能である。以上の工程により、n型InP基板201上に第1メサ構造208が形成される。
【0038】
次に、有機金属気相エピタキシャル(Metal Organic VaporPhase Epitaxy:以下、MOVPEと記す)法を用いて、第1メサ構造208の周囲に、不純物濃度1×1015atom/cmで厚さ1.6μmのFeドーピングInP結晶からなる埋め込み層209が、成長され、その後、ハードマスクが除去される。
【0039】
次に、p型InGaAsコンタクト層207、埋め込み層209の上部に、第1メサ構造208よりも径の大きい直径の円形の平面パターンを有するフォトレジストが形成され、このレジストをマスクとして、埋め込み層209、3層からなる電界調整層、n型InAlAs増倍層203、n型InAlAsバッファ層202およびn型InP基板201の表面が、Br系エッチング液により、エッチングされる。以上の工程により、第1メサ構造208の周囲に、第2メサ構造210が形成される。第2メサ構造210は、第1メサ構造208に対して同心円状の平面パターンを有している。なお、第2メサ構造210は、図2において、破線にて示されている。
【0040】
そして、フォトレジストが除去された後、n型InP基板201の表面全体が絶縁性の保護膜211によって被膜される。保護膜211は、SiN層が0.2μmとSiO層0.3μmとで構成される。保護膜211をフォトリソグラフィ技術で加工することによって、p型InGaAsコンタクト層207の一部(スルーホール)およびn型InP基板201の一部(図示せず)が露出され、コンタクト層107に接続されるp型電極212およびn型電極(図示せず)が形成される。n型電極は、図2のn型InP基板201に接続される。
【0041】
これら電極は、蒸着法で堆積した膜厚0.5μmのTi/Pt/Au膜(本明細書において、”/”は、基板に近い側、基板に遠い側の順に、配置されていることを記している)が、フォトリソグラフィ技術でパターニングすることによって、形成される。なお、p型InGaAsコンタクト層207に形成したスルーホールは二つの同心円からなるリング形状を有している。この結果、リング形状のスルーホール部以外は、p型InGaAsコンタクト層207の上に保護膜211、メタライズとしてTi/Pt/Au膜が形成され、鏡(ミラー)を構成する。
【0042】
次に、n型InP基板201の裏面、すなわち、図2の図中下側の面には、厚さ0.2μmのSiNからなる反射防止膜213が被着され、ウエハが完成する。最後に、このウエハは、1対のp型電極212、n型電極を含む1素子分毎に分割される。
【0043】
図2で説明した当該APDが、APD素子101として、図1に記されている。このAPD素子101が、窒化アルミニウム製(1×1mm、厚さ0.2mm)のサブマウント102上に搭載されている。サブマウント102には、Ti/Pt/Au膜によるP電極パターン103及びN電極パターン104が形成されている。P電極パターン103の一端には、APD素子101のp型電極212のサイズに合わせてAuSnはんだ蒸着パターンが、またN電極パターン104の一端には、APD素子101のn型電極のサイズに合わせてAuSnはんだ蒸着パターンが、形成されている。適切な荷重と温度を加え、両電極を同時にはんだ接続することにより、当該APDが完成する。
【0044】
なお、APD素子101は、裏面入射型APD素子であり、裏面から入射した受信光をミラーで反射して、p型InGaAs光吸収層205を双方向に通過させてキャリアを発生させることが可能であり、高感度である。また、p型InGaAs光吸収層205を薄くすることが可能となり、高速応答特性に優れている。
【0045】
このようにして作製されたAPDについて評価を行った。当該APDに、逆バイアス電圧を印加したところ、降伏電圧(Vb)は30Vで、0.9Vbにおける暗電流は10nAと十分に低い値であった。高温逆バイアス通電試験(200℃,100μAで一定)では、1000時間後の電圧変動は1V以下であり、室温における降伏電圧、暗電流も試験前と変化がなく、高い信頼性を示し、良好な特性を示した。
【0046】
また、光信号の増倍率は最大50であり、メサ中央領域で均一であった。従来の10ギガビット光受信器のPIN型ホトダイオードを当該APDで置き換えて測定したところ、最小受信感度が−19dBmから−28dBmに大幅に改善された。この光受信器及びその他の必要部品を搭載して光モジュールが構成される。
【0047】
図5は、素子破壊が発生した破壊光電流IとAPDの逆バイアス電圧Vの関係を、従来技術に係るAPD、第1の実施形態に係るAPD、及び、後述する第2の実施形態に係るAPD、それぞれについて示す図である。図5において、従来技術に係るAPDについてはシンボル▲で、第1の実施形態に係るAPDについてはシンボル●で、第2の実施形態に係るAPDについてはシンボル□で、それぞれ示されている。
【0048】
いずれの場合にも、逆バイアス電圧Vが低く、光吸収層の電界強度が低い状態において、素子破壊が発生する破壊光電流Iが低下している。これは、電界強度が低い状態において、光吸収層内で発生した電子が光吸収層と電界調整層の界面に停留蓄積し易くなるために、弱い光電流においても光吸収層の一部がn型反転し、局部的に電界強度が高くなり、大電流が発生するためである。しかしながら、本実施形態である第1の実施形態に係るAPDは、従来技術に係るAPDに比べて、素子破壊が発生した破壊光電流Iの最小値が大きくなっている。これは、図6(a)に示す概略図によって説明出来る。
【0049】
図6は、本発明に係るAPDの伝導帯端のエネルギー準位を示す概略図となっている。図8と同様に、図6も、電界が印加されていない状態を示している。同様に、横方向は、位置を表し、左から順に、増倍層3、電界調整層4、光吸収層5の領域を示している。縦方向は、エネルギー準位である。
【0050】
図6(a)は、本実施形態に係るAPDの伝導帯端のエネルギー準位を模式的に示している。電界調整層4は、図中左から順に、障壁層となる第1電界調整層、井戸層となる第2電界調整層、障壁層となる第3電界調整層によって、構成されている量子井戸構造を有している。
【0051】
第3電界調整層の伝導帯端のエネルギー準位は、図8に示す従来技術に係るAPDの電界調整層4の伝導帯端のエネルギー準位と同様に、光吸収層5の伝導帯端のエネルギー準位よりも高くなっている。これにより、光吸収層5に印加された電界が弱い場合には、光吸収層5内で発生した電子のうち、同様に、増倍層3まで達する電子の数は減少するところ、量子井戸構造のトンネル効果により、電子が第3電界調整層を通過することが出来るので、この減少が抑制され、光吸収層5と電界調整層4との界面に停留蓄積される電子の数を抑制することが出来る。
【0052】
なお、本実施形態に係るAPDは、第1メサ構造208と第2メサ構造210を有している。上述した通り、上方から下方に、積層方向に沿って、当該第1メサ構造208の周囲の多層部分が、エッチングにより取り除かれ、第1メサ構造208の最下点は、電界調整層の一部に達している。このような場合、通常、電界調整層のどの部分にまで、エッチングするかは、このメサ構造の特性向上の観点から決められる。
【0053】
さらに、本実施形態に係るAPDのように、電界調整層が量子井戸構造を有し、上方からみて、障壁層となるp型InAlAs電界調整層204cと、井戸層となるp型InGaAs電界調整層204bが配置される場合、その後の工程において酸化されやすいAlを含んでいないp型InGaAs電界調整層204bの上面に達するまで、エッチングされることになる。これらの観点により、障壁層となるp型InAlAs電界調整層204cを設計すると、厚さがたとえば0.02μm程度になる。
【0054】
しかし、本実施形態に係るAPDにおいては、障壁層となるp型InAlAs電界調整層204cに生じるトンネル効果を大きくするとの観点から、厚さを0.015μm以下に薄くしたところ、図5に示す通り、破壊光電流Iの最小値が大幅に大きくなり、顕著な効果が得られている。
【0055】
さらに、p型InAlAs電界調整層204cの層厚をさらに薄くすることにより、破壊光電流Iの最小値が増加する可能性があるが、InAlAsとInGaAsのエッチング選択比が25〜30程度であり、またエッチングレートにウエハ面内分布があるために、p型InAlAs電界調整層204cが薄すぎる場合、ウエハ一部でp型InGaAs電界調整層204bを突き抜けてp型InAlAs電界調整層204aまで、あるいは、n型InAlAs増倍層203にまで、エッチングが進む恐れが生じる。それゆえ、本実施形態における実施例では、p型InAlAs電界調整層204cの膜厚は0.015μmとしている。しかし、エッチング工程を工夫することにより、さらに薄くすることも可能であり、その場合、本発明の効果はさらに高まることとなる。
【0056】
このように、本実施形態に係るAPDでは、保護抵抗による電圧降下にてAPDの逆バイアス電圧が自動的に低下した場合においても、光電流破壊耐力をより有するため、信頼性の優れた受光装置を実現することが可能となる。
【0057】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係るAPDの受光部メサ構造を示す断面図である。なお、当該APDは、裏面入射型APDであり、また、当該APDをサブマウントに実装した組み立て完成品の構造は、第1の実施形態に係るAPDと同様に、図1に示す通りである。
【0058】
さらに、当該APDの基本的な構造及び製造プロセスは、上述した第1の実施形態に係るAPDと同様である。第1の実施形態に係るAPDの主要な相違点は、以下の2点である。一つには、第1電界調整層が、不純物濃度1×1018atom/cmで厚さが0.03μmのp型InP電界調整層304aで、第3電界調整層は同じ組成であるが厚さが0.01μmのp型InAlAs電界調整層304cである点である。もう一つには、第1メサ構造308の最下点が、p型InP電界調整層304aの上面に達している点である。
【0059】
このようにして作製されたAPDについて評価を行ったところ、第1の実施形態に係るAPDと同様に良好な特性を示した。すなわち、当該APDに、逆バイアス電圧を印加したところ、降伏電圧(Vb)は30V、0.9Vbにおける暗電流は10nAと十分に低い値であった。高温逆バイアス通電試験(200℃,100μAで一定)では、1000時間後の電圧変動は1V以下であり、室温における降伏電圧、暗電流も試験前と変化がなく、高い信頼性を示し、良好な特性を示した。また、光信号の増倍率は最大50であり、メサ中央領域で均一であった。従来の10ギガビット光受信器のPIN型ホトダイオードを本アバランシェホトダイオードで置き換えたところ、最小受信感度が−19dBmから−28dBmに大幅に改善された。
【0060】
上述の通り、図5には、本実施形態に係るAPDについて、破壊光電流IとAPDの逆バイアス電圧Vの関係が、シンボル□で、示されている。本実施形態に係るAPDの場合、従来技術に係るAPDのみならず、第1の実施形態に係るAPDと比較しても、さらに、破壊光電流Iの最小値が、大きくなっている。
【0061】
これは、第1の実施形態に係るAPDにおいては、障壁層である第3電界調整層のp型InAlAs電界調整層204cの厚さが0.015μmであるのに対して、本実施形態に係るAPDにおいては、p型InAlAs電界調整層204cの厚さが0.01μmと、0.005μm薄くなっている。障壁層の厚さをさらに薄くすることにより、トンネル効果が大きくなり、光吸収層内で発生した電子が増倍層側へ通過する確率が増大し、より一層、光吸収層と電界調整層との界面に停留蓄積される電子の数を抑制することが出来ていると考えられる。
【0062】
本実施形態におけるAPDにおいて、p型InAlAs電界調整層304cの厚さを薄くすることが出来たのは、第1電気調整層をp型InP電界調整層304aで構成することが出来たことによる。燐酸系のエッチング液を使用した場合、InPに対するエッチングレートが、InGaAs及び、InGaAlAs、InAlAsに対するエッチングレートと比較して、大幅に低くなる。そのため、p型InGaAs電界調整層304bやp型InAlAs電界調整層304cの厚さに関係なく、p型InP電界調整層304aの上面にて、エッチング停止することが可能なのである。
【0063】
このように、本実施形態に係るAPDでは、保護抵抗による電圧降下にてAPDの逆バイアス電圧が自動的に低下した場合においても、高い光電流破壊耐力をさらにより有するため、さらに信頼性の優れた受光装置を実現することが可能となる。
【0064】
なお、図6(a)に示す電界調整層4の伝導帯端のエネルギー準位は、第1及び第2の実施形態に係るAPDにおける電界調整層4の量子井戸構造を分かりやすく示したものであり、実際のエネルギー準位とは異なっている。井戸層及び障壁層それぞれのエネルギー準位の高さは、その組成によって調整することが出来る。また、第1及び第2の実施形態に係るAPDでは、電界調整層4を、1つの井戸層を備える単一量子井戸構造の場合について示しているが、複数の井戸層を備える多重量子井戸構造であっても構わない。また、電界調整層4のうち、積層方向の一部に量子井戸構造を含んでいる場合であっても構わない。
【0065】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態に係るAPDの受光部メサ構造を示す断面図である。なお、当該APDは、裏面入射型APDであり、また、当該APDをサブマウントに実装した組み立て完成品の構造は、第1の実施形態に係るAPDと同様に、図1に示す通りである。
【0066】
さらに、当該APDの基本的な構造及び製造プロセスは、上述した第1の実施形態に係るAPDと同様である。第1の実施形態に係るAPDの主要な相違点は、以下の2点である。
【0067】
一つには、電界調整層が、不純物濃度1×1018atom/cmで厚さ0.03μmのp型InP電界調整層404aと、不純物濃度1×1018atom/cmで厚さ0.02μmのp型InGaAlAs電界調整層404bの2層からなっている点である。ここで、p型InGaAlAs電界調整層404bは、光吸収層405側の端からp型InP電界調整層404a側の端に向かって、エネルギーギャップが1.4μmから1μmまで連続的に変化し、なおかつ、n型InP基板401と格子整合するように、組成を調整している。
【0068】
もう一つには、第1メサ構造408の最下点が、第2の実施形態に係るAPDと同様に、p型InP電界調整層404aの上面に達している点である。燐酸系のエッチング液を使用すると、第2の実施形態に係るAPDと同様に、p型InP電界調整層404aの上面にて、エッチング停止することが可能である。
【0069】
このようにして作製されたAPDについて評価を行ったところ、第1の実施形態に係るAPDと同様に良好な特性を示した。すなわち、当該APDに、逆バイアス電圧を印加したところ、降伏電圧(Vb)は30V、0.9Vbにおける暗電流は10nAと十分に低い値であった。高温逆バイアス通電試験(200℃,100μAで一定)では、1000時間後の電圧変動は1V以下であり、室温における降伏電圧、暗電流も試験前と変化がなく、高い信頼性を示し、良好な特性を示した。また、光信号の増倍率は最大50であり、メサ中央領域で均一であった。従来の10ギガビット光受信器のPIN型ホトダイオードを本アバランシェホトダイオードで置き換えたところ、最小受信感度が−19dBmから−28dBmに大幅に改善された。
【0070】
本実施形態に係るAPDについても、破壊光電流IとAPDの逆バイアス電圧Vの関係が測定され、その結果、図5に示す第2の実施形態に係るAPDと同等の結果が得られた。
【0071】
図6は、上述の通り、本発明に係るAPDの伝導端のエネルギー準位を示す概略図であり、図6(b)は、本発明の実施形態の一例に係るAPDについて示している。図6(b)においては、電界調整層4の伝導端のエネルギー準位が、電界調整層4の光吸収層5側の端においては、光吸収層5のエネルギー準位と等しく、電界調整層4の増倍層3側の端においては、増倍層3のエネルギー準位と等しく、電界調整層4の内部においては、図中右側から左側に対して、直線的に増加している。
【0072】
当該APDに逆バイアス電圧を印加すると、伝導帯端のエネルギー準位は、その電界強度に応じて、右上がりに傾斜する。すなわち、電界調整層4におけるエネルギー準位の増加の割合も、逆バイアス電圧に応じて、低減することとなる。光吸収層5内で発生した電子に対して、増倍層3まで到達することが容易くなっている。それにより、光吸収層5と電界調整層4との界面に停留蓄積される電子の数が抑制される。
【0073】
電界調整層4の伝導帯端が、このようなエネルギー準位を持つためには、例えば、電界調整層4の組成を、光吸収層5側の端においては、光吸収層5の組成とほぼ等しくし、増倍層3側の端においては、増倍層3の組成とほぼ等しくし、光吸収層5側の端から増倍層3側の端にかけて、電界調整層4の組成を、これら組成を内分し、単調的に変化して、増倍層3の組成に近づくようにすればよい。この変化が直線に近づけば近づくほど、増倍層3まで達する電子の数はより増加するものと考えられる。
【0074】
ここで、増倍層3がInAlAsに、光吸収層5がInGaAsによって構成されている場合を例に考える。電界調整層4の組成は、増倍層3の組成であるInAlAsと、光吸収層5の組成であるInGaAsを内分するInGa1−xAlAsである。電界調整層4の光吸収層5側の端においては、x=0に近づくよう、増倍層3側の端においてはx=1に近づくようにし、光吸収層5側の端から増倍層3側の端にかけて、xの値が単調的に増加するようにすればよい。
【0075】
なお、電界調整層4の伝導帯端のエネルギー準位は、単調的に変化していることが望ましいのであって、必ずしも端から端まで同じ割合で変化していなければいけないわけではない。図6(c)に示すAPDの電界調整層4の伝導帯端のエネルギー準位は、右側の一部のみが、図中右側から左側に対して、直線的に増加しており、左側の残りの部分では、一定である。このような場合であっても、図8に示す従来技術に係るAPDと比較して、光吸収層5と電界調整層4との界面に停留蓄積される電子の数が抑制されるのは、明らかである。
【0076】
本実施形態に係るAPDは、図6(c)に示すAPDと同様に、p型InGaAlAs電界調整層404bにおいて、その組成が、光吸収層405側からp型InP電界調整層404a側にかけて、よりn型InAlAs増倍層203の組成に近づくよう、徐々に変化し、それに応じて、伝導帯端のエネルギー準位も徐々に増加しているものと考えられる。この変化は直線的である必要はないが、直線的な変化に近づくほど、本発明の効果はより大きくなる。上述の通り、第3の実施形態に係るAPDにおいて、破壊光電流Iの最小値が、第2の実施形態に係るAPDと同じ程度まで大きくなっており、その効果が顕著である。
【0077】
このように、本実施形態に係るAPDでは、保護抵抗による電圧降下にてAPDの逆バイアス電圧が自動的に低下した場合においても、光電流破壊耐力をより有するため、信頼性の優れた受光装置を実現することが可能となる。
【0078】
なお、図6(b)と図6(c)において、エネルギー準位が徐々に変化する場合について説明したが、図6(d)に示すように、電界調整層4において伝導帯端のエネルギー準位が段階的に変化する場合であってもよい。このような場合であっても、図8に示す従来技術に係るAPDと比べて、光吸収層5と電界調整層4との界面に停留蓄積される電子の数が抑制される。この場合、電界調整層4の組成を、積層に応じて、段階的に変化させればよく、連続的に変化する場合と比較して、より簡単な工程で積層することが出来る。
【0079】
図6に示すように、本発明に係るAPDの電界調整層4の伝導帯端のエネルギー準位は様々であるが、電界調整層4の少なくとも一部のエネルギー準位が、光吸収層5のエネルギー準位と、増倍層3のエネルギー準位との間に位置しているならば、図8に示す従来技術に係るAPDと比較して、停留蓄積される電子の数が抑制され、本発明の効果を有する。さらに、その一部において、光吸収層5側から増倍層3側に対して、単調的に増加していればなおよい。
【0080】
本発明の根幹は、積層方向に対して、少なくとも電界調整層の一部において、伝導帯端のエネルギー準位を、光吸収層の伝導帯端のエネルギー準位に近づけることにより、増倍層3へ到達する電子を増加させるというものである。その際に、電界調整層を複数の層によって構成させる場合が考えられる。それとは、別に、第1メサ構造では、その最下点が電界調整層の一部に達している。第1メサ構造は、エッチングにより作り出されるが、その最下点は、エッチング選択性によって決められると、複数の素子間でのばらつきなどが抑制される。よって、電界調整層の構造と第1メサ構造との両面を考慮して、APDの作製がされることにより、その効果はより高まることとなる。特に、InPが、InGaAsやInAlAsに対して、選択性が非常に高いことは特筆すべきことである。
【0081】
なお、本発明に係るAPDは、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、裏面入射型APDについて説明したが、表面入射型APD、端面入射型APDなど他のAPDについて広く適用可能である。たとえば、表面入射型APDの場合、p型電極はリング形状をしており、リング形状の内側には、表面から入射された光を透過する反射防止部を有している。
【0082】
本発明の実施形態に係るAPDを搭載した光受信モジュールは、当該APDによりモジュールの特性が向上するということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0083】
3 増倍層、4 電界調整層、5 光吸収層、101 APD素子、102 サブマウント、103 P電極パターン、104 N電極パターン、201 n型InP基板、202 n型InAlAsバッファ層、203 n型InAlAs増倍層、204a p型InAlAs電界調整層、204b p型InGaAs電界調整層、204c p型InAlAs電界調整層、205 p型InGaAs光吸収層、206 p型InAlGaAsキャップ層、207 p型InGaAsコンタクト層、208 第1メサ構造、209 埋め込み層、210 第2メサ構造、211 保護膜、212 p型電極、213 反射防止膜、301 n型InP基板、302 n型InAlAsバッファ層、303 n型InAlAs増倍層、304a p型InP電界調整層、304b p型InGaAs電界調整層、304c p型InAlAs電界調整層、305 p型InGaAs光吸収層、306 p型InAlGaAsキャップ層、307 p型InGaAsコンタクト層、308 第1メサ構造、309 埋め込み層、310 第2メサ構造、311 保護膜、312 p型電極、313 反射防止膜、401 n型InP基板、402 n型InAlAsバッファ層、403 n型InAlAs増倍層、404a p型InP電界調整層、404b p型InGaAlAs電界調整層、405 p型InGaAs光吸収層、406 p型InAlGaAsキャップ層、407 p型InGaAsコンタクト層、408 第1メサ構造、409 埋め込み層、410 第2メサ構造、411 保護膜、412 p型電極、413 反射防止膜、701 n型InP基板、702 バッファ層、703 増倍層、704 電界調整層、705 光吸収層、706 キャップ層、707 コンタクト層、708 第1メサ構造、709 埋め込み層、710 第2メサ構造、711 保護膜、712 p型電極、713 反射防止膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、少なくとも増倍層と、電界調整層と、光吸収層とを含む半導体層を積層してなるアバランシェホトダイオードであって、
前記電界調整層のうち、積層方向の少なくとも一部における伝導帯端のエネルギー準位が、前記光吸収層における伝導帯端のエネルギー準位より高く、前記増倍層の伝導帯端のエネルギー準位より低い、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項2】
請求項1に記載のアバランシェホトダイオードであって、
さらに、前記電界調整層において、少なくとも一層の量子井戸層を含む、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項3】
請求項2に記載のアバランシェホトダイオードであって、
さらに、前記電界調整層は、前記増倍層側から前記光吸収層側へ、順に、障壁層となる第1電界調整層、量子井戸層となる第2電界調整層、障壁層となる第3電界調整層によって構成され、
前記第3電界調整層が厚さ15nm以下である、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項4】
請求項1に記載のアバランシェホトダイオードであって、
さらに、前記電界調整層のうち、積層方向の少なくとも一部において、前記光吸収層側の端から前記増倍層側の端にかけて、伝導帯端のエネルギー準位が単調的に増加する、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項5】
請求項4に記載のアバランシェホトダイオードであって、
前記電界調整層の少なくとも前記一部において、前記光吸収層側の端から前記増倍層側の端にかけて、該エネルギー準位が徐増する、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項6】
請求項4に記載のアバランシェホトダイオードであって、
前記電界調整層の少なくとも前記一部において、前記光吸収層側の端から前記増倍層側の端にかけて、該エネルギー準位が段階的に増加する、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項7】
n型InP半導体基板の上に、InAlAs混晶から成る増倍層と、p型電界調整層と、InGaAs混晶から成る光吸収層と、p型コンタクト層とが、積層してなるアバランシェホトダイオードであって、
前記電界調整層において、少なくとも一層の量子井戸層を含む、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項8】
請求項7に記載のアバランシェホトダイオードであって、
さらに、前記電界調整層は、前記増倍層側から前記光吸収層側へ、順に、障壁層となる第1電界調整層、量子井戸層となる第2電界調整層、障壁層となる第3電界調整層によって構成され、
前記第2電界調整層がp型InGaAs混晶からなり、
前記第3電界調整層がp型InAlAs混晶からなる、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項9】
請求項8に記載のアバランシェホトダイオードであって、
さらに、前記第3電界調整層の厚さが15nm以下である、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項10】
n型InP半導体基板の上に、InAlAs混晶から成る増倍層と、p型電界調整層と、InGaAs混晶から成る光吸収層と、p型コンタクト層とが、積層してなるアバランシェホトダイオードであって、
前記電界調整層のうち、積層方向の少なくとも一部は、前記光吸収層の前記InGaAsの組成と、前記増倍層の前記InAlAsの組成と、を内分して組成されている、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項11】
請求項10に記載のアバランシェホトダイオードであって、
さらに、前記電界調整層のうち、積層方向の少なくとも一部において、その組成が、前記光吸収層側から前記増倍層側にかけて、より前記増倍層の前記InAlAsの組成に近づくように、前記光吸収層の前記InGaAsの組成と、前記増倍層の前記InAlAsの組成と、を内分しながら単調的に変化する、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項12】
請求項11に記載のアバランシェホトダイオードであって、
前記電界調整層の少なくとも前記一部において、その組成が、前記光吸収層側から前記増倍層側にかけて、徐々に前記増倍層の前記InAlAsの組成に近づくように、変化する、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項13】
請求項11に記載のアバランシェホトダイオードであって、
前記電界調整層の少なくとも前記一部において、その組成が、前記光吸収層側から前記増倍層側にかけて、段階的に、前記増倍層の前記InAlAsの組成に近づくように、変化する、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載のアバランシェホトダイオードであって、
前記増倍層と、前記電界調整層と、前記光吸収層は、前記半導体基板側からこの順に積層してなり、積層方向に沿って、徐々に断面積を小さくなるよう、前記電界調整層の一部から前記半導体層の上端までからなるメサ構造が形成され、
前記メサ構造の周囲には、半絶縁性埋め込み層が形成される、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項15】
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載のアバランシェホトダイオードであって、
前記電界調整層のうち、前記増倍層に接する部分が、p型InPによって形成される、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項16】
請求項15に記載のアバランシェホトダイオードであって、
前記増倍層と、前記電界調整層と、前記光吸収層は、前記半導体基板側からこの順に積層してなり、積層方向に沿って、徐々に断面積を小さくなるよう、前記電界調整層のうち前記p型InPからなる層の上面から、前記半導体層の上端までからなるメサ構造が形成され、
前記メサ構造の周囲には、半絶縁性埋め込み層が形成される、
ことを特徴とするアバランシェホトダイオード。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれかに記載のアバランシェホトダイオードを、備える光受信モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−278406(P2010−278406A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132550(P2009−132550)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】