説明

アフコシル化CD20抗体とフルダラビン及び/又はミトキサントロンの併用療法

本発明は、癌治療のためのフルダラビン及び/又はミトキサントロンとアフコシル化抗CD20抗体の併用療法、特に、アフコシル化ヒト化B−Ly1抗体とフルダラビン及び/又はミトキサントロンを用いたCD20発現癌の併用療法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療のためのアフコシル化CD20抗体とフルダラビン及び/又はミトキサントロンの併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
アフコシル化抗体
モノクローナル抗体の細胞媒介エフェクターの機能は、Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180;及び米国特許第6602684号に記載されるように、それらのオリゴ糖成分を操作することにより強化されることが出来、癌免疫療法において、最も一般的に使用される抗体は、各CH2ドメインのAsn297に、保存されたN結合型グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に結合した2つの複合二分岐型オリゴ糖はCH2ドメインの間に埋め込まれ、ポリペプチド骨格との広範な接触を形成し、またそれらの存在は抗体が抗体依存性細胞傷害(ADCC)等のエフェクター機能を仲介するために必須である(Lifely, M., R.等, Glycobiology 5 (1995) 813-822; Jefferis, R.等, Immunol. Rev. 163 (1998) 59-76; Wright, A., and Morrison, S.L., Trends Biotechnol. 15 (1997) 26-32). Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180及び国際公開第99/54342号は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞におけるβ(1、4)-N-アセチルグルコサミン転移酵素III(「GnTIII」)(バイセクト化オリゴ糖の形成を触媒するグリコシル転移酵素)の過剰発現が、インビトロでの抗体のADCC活性を顕著に上昇させることを示した。また、N297における糖質の構成の変更又はその除去は、FcγR及びC1qとの結合に影響する(Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180; Davies, J.等, Biotechnol. Bioeng. 74 (2001) 288-294; Mimura, Y.等, J. Biol. Chem. 276 (2001) 45539-45547; Radaev, S.等, J. Biol. Chem. 276 (2001) 16478-16483; Shields, R.L.等, J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604; Shields, R.L.等, J. Biol. Chem. 277 (2002) 26733-26740; Simmons, L.C.等, J. Immunol. Methods 263 (2002) 133-147)。
【0003】
抗CD20抗体を含む、アフコシル化及びフコシル化抗体の活性を考察する研究が報告されている(例えば、Iida, S.等, Clin. Cancer Res. 12 (2006) 2879-2887; Natsume, A.等, J. Immunol. Methods 306 (2005) 93-103; Satoh, M.等, Expert Opin. Biol. Ther. 6 (2006) 1161-1173; ; Kanda, Y.等, Biotechnol. Bioeng. 94 (2006) 680-688; Davies, J.等, Biotechnol. Bioeng. 74 (2001) 288-294。
【0004】
CD20と抗CD20抗体
CD20抗原(ヒトBリンパ球制限分化抗原Bp35とも呼ばれる)はプレB及び成熟Bリンパ球上に位置する疎水性膜貫通型タンパク質である(Valentine等, J. Biol. Chem. 264(19):11282-11287 (1989);及びEinfeld等, EMBO J. 7(1988):711-717 ;Tedder, T.F.等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85 (1988) 208-212;Stamenkovic, I.等, J. Exp. Med. 167 (1988) 1975-1980;Tedder, T.F.等, J. Immunol. 142 (1989) 2560-2568)。CD20はB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%以上に発現されるが(Anderson等, Blood 63(1984):1424-1433 )、造血幹細胞、プロB細胞、正常なプラズマ細胞又は他の正常な組織上には見出されない(Tedder等, J. Immunol. 135(1985):973-979 )。
【0005】
CD20結合と生物学的活性の様式が著しく異なる抗CD20抗体の2つの異なる型が存在する(Cragg, M.S.等, Blood 103 (2004) 2738-2743; and Cragg, M.S.等, Blood 101 (2003) 1045-1051)。I型抗体、例えば、リツキシマブ(85%以上のフコース量の非アフコシル化抗体)は、補体媒介細胞毒性が強い。
【0006】
II型抗体、例えば、トシツモマブ(B1)、11B8、AT80又はヒト化B−Ly1抗体は、効果的に同時ホスファチジルセリン暴露を伴うカスパーゼ依存アポトーシスを介した標的細胞死を開始する。
【0007】
I型とII型抗CD20抗体が共有する共通の特徴を表1に要約する。
表1:I型とII型抗CD20抗体の性質

【0008】
フルダラビン又はミトキサントロン
フルダラビンは、[(2R,3R,4S,5R)−5−(6−アミノ−2−フルオロ−プリン−9−イル)− 3,4−ジヒドロキシ−オキソラン−2−イル]メトキシホスホン酸である。それはDNA前駆体/代謝抵抗物質であり、ハロゲン化リボヌクレオチドレダクダーゼ阻害剤として機能する。フルダラビン又はフルダラビンホスフェート(フルダラ)は、血液系腫瘍 の治療において使用される化学療法薬である(Rai, K.R.等, N. Engl. J. Med. 343 (2000) 1750-1757)。
【0009】
ミトキサントロンは、1,4−ジヒドロキシ−5,8−ビス[2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エチルアミノ]−アントラセン−9,10−ジオンである。それは、アントラセンジオン(アントラサイクリンではない)剤である。それは、多くが転移性乳癌、急性骨髄性白血病、及び非ホジキンスリンパ腫及び多発性硬化症(MS)である特定の型の癌の治療において使用される。ミトキサントロンはII型のトポイソメラーゼ阻害剤であり;それは正常細胞と癌細胞の両者において、DNA合成とDNA修復を阻害する。
【0010】
フルダラビン及び/又はミトキサントロンとリツキシマブを併用した前臨床及び臨床試験が報告されている(Tempescul, A.等, (2009) Ann. Hematol. 88: 85-88; Tobinai, K.等, Cancer Sci. 100 (2009) 1951-1956)。
【発明の概要】
【0011】
驚くべきことに、我々はアフコシル化抗CD20抗体とフルダラビン及び/又はミトキサントロンの併用(特にフルダラビンのインビボにおける併用)が、非アフコシル化CD20抗体リツキシマブとの併用と比較して、相乗的(例えば、幾つかの場合では、付加以上の)抗増殖性効果を示すことを今回見出した。
【0012】
本発明は、フルダラビン及び/又はミトキサントロンと併用される癌治療のための医薬の製造のための、フコースの量が、Asn297におけるオリゴ糖(糖)の総量の60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体の使用を含む。
【0013】
本発明の一態様は、フルダラビン及び/又はミトキサントロンと併用される、フコースの量が、Asn297におけるオリゴ糖(糖)の総量の60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体の治療を必要とする患者への投与による癌に罹患している患者の治療方法である。
【0014】
本発明の別の態様は、フルダラビン及び/又はミトキサントロンと併用される、フコースの量が、Asn297におけるオリゴ糖(糖)の総量の60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体である。
【0015】
一実施態様では、フコースの量が、Asn297におけるオリゴ糖(糖)の総量の40%から60%の間である。
【0016】
別の実施態様では、フコースの量が、Asn297におけるオリゴ糖(糖)の総量の0%である。
【0017】
一実施態様では、アフコシル化抗CD20抗体はIgG1抗体である。
【0018】
別の実施態様では、前記アフコシル化抗CD20抗体はヒト化B−Ly1抗体であり、前記癌はCD20発現癌であり、一実施態様では、B細胞ホジキンリンパ腫(NHL)である。
【0019】
一実施態様では、アフコシル化抗CD20抗体は10−9Mから10−13mol/lのKDでCD20に結合する。
【0020】
一実施態様では、癌の治療はフルダラビンと併用される。
【0021】
一実施態様では、ヒト化B−Ly1抗体は6又は7回までの3から4週の投与サイクルの1日目に800から1600mgの投与量で投与され、フルダラビンが、6又は7回までの4週の投与サイクルの1、2及び3日目に20mg/mから30mg/mの投与量で投与されることを特徴とする。
【0022】
一実施態様では、治療はフルダラビンとシクロホスファミドと併用される。
【0023】
一実施態様では、ヒト化B−Ly1抗体は6又は7回までの3から4週の投与サイクルの1日目に800から1600mgの投与量で投与され、フルダラビンが、6又は7回までの4週の投与サイクルの1、2及び3日目に20mg/mから30mg/mの投与量で投与され、シクロホスファミドが、6又は7回までの4週の投与サイクルの1、2及び3日目に200mg/mから300mg/mの投与量で投与されることを特徴とする。
【0024】
一実施態様では、癌治療はミトキサントロンと併用される。
【0025】
一実施態様では、癌治療は、このような薬剤の効果を高める一又は複数の付加的な他の細胞障害、化学療法又は抗癌剤、若しくは化合物又は電離放射線が投与されることを特徴とする。
【0026】
本発明の一実施態様は、癌治療のためのフコースの量が60%以下である抗CD20アフコシル化抗体、フルダラビン及び/又はミトキサントロン(好ましくはフルダラビン)を含む組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】アフコシル化II型抗CD20抗体(B−HH6−B−KV1 GE)とフルダラビンの併用療法のインビボ抗腫瘍効果(リツキシマブ(=フコシル化I型抗CD20抗体)とフルダラビンの併用の比較及びそれぞれの単独治療との比較。
【図2】Rec1 MCL細胞における0時間から72時間のアフコシル化II型抗CD20抗体(B−HH6−B−KV1 GE=ヒト化B−Ly1、糖鎖改変)(1μg/ml)とフルダラビン(0.25μg/ml)の併用。未処理のコントロールの値を100%に規格化した。
【図3】Z138 MCL細胞中の0時間から72時間のアフコシル化II型抗CD20抗体(B−HH6−B−KV1 GE=ヒト化B−Ly1、糖鎖改変)(1μg/ml)とフルダラビン(0.25μg/ml)の併用。未処理のコントロールの値を100%に規格化した。
【図4】Granta−519MCL細胞中の0時間から72時間のアフコシル化II型抗CD20抗体(B−HH6−B−KV1 GE=ヒト化B−Ly1、糖鎖改変)(1μg/ml)とミトキサントロン(0.5μg/ml)の併用。未処理のコントロールの値を100%に規格化した。
【図5】Rec1 MCL細胞における0時間から72時間のアフコシル化II型抗CD20抗体(B−HH6−B−KV1 GE=ヒト化B−Ly1、糖鎖改変)(1μg/ml)とミトキサントロン(0.25μg/ml)の併用。未処理のコントロールの値を100%に規格化した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、フルダラビン及び/又はミトキサントロンと併用される癌治療のための医薬の製造のための、フコースの量が、Asn297におけるオリゴ糖(糖)の総量の60%以下である(IgG1又はIgG3アイソタイプ、好ましくはIgG1アイソタイプの)アフコシル化抗CD20抗体の使用を含む。
【0029】
一実施態様では、フコースの量が、Asn297におけるオリゴ糖(糖)の総量の40%から60%の間である。
【0030】
「抗体」なる用語は、限定されるものではないが、全抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体及びモノクローナル抗体、キメラ抗体又は組換抗体並びにこのような抗体の断片のような、本発明の特徴的特性が保持されている限りで、遺伝子的に改変された抗体を含む種々の形態の抗体を包含する。ここで使用される「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」なる用語は、単一のアミノ酸組成物の抗体分子の調製物を意味する。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」なる用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する単一結合特異性を示す抗体を意味する。一実施態様では、ヒトモノクローナル抗体は、例えば、不死化細胞に融合したヒト重鎖導入遺伝子と軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニックマウスのようなトランスジェニックの非ヒト動物から得られるB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0031】
「キメラ抗体」なる用語は、1つの源又は種からの可変領域、すなわち結合領域と、異なる源又は種に由来する定常領域の少なくとも一部とを含んでなるモノクローナル抗体を意味し、通常組換えDNA法により調製される。ネズミ可変領域及びヒト定常領域を含んで成るキメラ抗体が特に好ましい。このようなネズミ/ヒトキメラ抗体は、ネズミ免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメント、及びヒト免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含んで成る、発現された免疫グロブリン遺伝子の生産物である。本発明により包含される他の形の「キメラ抗体」は、クラス又はサブクラスが、修飾されているか又は元の抗体のそれから変更されているものである。そのような「キメラ」抗体はまた、「クラス-スイッチ抗体」とも称される。キメラ抗体を生成するための方法は一般的な組換えDNAを含み、遺伝子トランスフェクション技術は当該分野において良く知られている。例えば、Morrison, S.L.等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855、米国特許第5202238号及び米国特許第5204244号を参照のこと。
【0032】
「ヒト化抗体」なる用語は、そのフレームワーク又は「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンのCDRに比較して、異なった特異性の免疫グロブリンのCDRを含んで成るよう修飾されている抗体を意味する。好ましい態様においては、ネズミCDRは、「ヒト化抗体」を調製するために、ヒト抗体のフレームワーク領域中に移植される。例えば、Riechmann, L.等, Nature 332 (1988) 323-327;及びNeuberger, M.S.等, Nature 314 (1985) 268-270を参照のこと。
【0033】
「ヒト抗体」なる用語は、本明細書において使用される場合、ヒト生殖系免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する抗体を包含することを意図する。ヒト抗体は当技術分野の水準において周知である(van Dijk, M.A., and van de Winkel, J.G., Curr. Opin. Chem. Biol. 5 (2001) 368-374)。このような技術に基づき、広範の標的に対するヒト抗体を産生し得る。ヒト抗体の例は、例えば、Kellermann, S.A.等, Curr. Opin. Biotechnol. 13 (2002) 593-597に記載される。
【0034】
「組換えヒト抗体」なる用語は、本明細書において使用される場合、組換え手段によって調製、発現、製造、又は単離される全てのヒト抗体を含むことを意図し、例えば、NS0又はCHO細胞等の宿主細胞から又はヒト免疫グロブリン遺伝子トランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体、又は宿主細胞中にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された抗体等である。このような組換えヒト抗体は、再配列された形でヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する。本発明の組換えヒト抗体は、インビボで体細胞超変異に課された。従って、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系VH及びVL領域に由来しその配列に関連するが、インビボでヒト抗体生殖系レパートリー内に自然に存在することはないだろう。
【0035】
本明細書において使用される場合、「結合する」又は「特異的に結合する」なる用語は、インビトロアッセイにおける、好ましくは精製された野生型の抗原を用いたプラズモン共鳴アッセイ(BIAcore, GE-Healthcare Uppsala, Sweden)における、腫瘍抗原のエピトープに対する抗体の結合を意味する。結合の親和性は、用語ka(抗体/抗原複合体からの抗体の結合に対する速度定数)、k(解離定数)、及びK(k/ka)によって定義される。結合する又は特異的に結合するとは、10-8mol/l以下、好ましくは10-9Mから10-13mol/lの結合親和性(K)を意味する。したがって、本発明に記載のアフコシル化抗体は、腫瘍抗原に対して10-8mol/l以下、好ましくは10-9Mから10-13mol/lの結合親和性(K)で特異的に結合する。
【0036】
ここで使用される「核酸」なる用語は、DNA分子及びRNA分子を含むことを意図している。核酸分子は一本鎖又は二本鎖であってよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0037】
「定常ドメイン」は抗体の抗原への結合には直接関与しないが、エフェクター機能に関与する(ADCC、補体結合、及びCDC)。
【0038】
「可変ドメイン」(軽鎖の可変ドメイン(VL)、重鎖の可変領域(VH))は、本明細書において使用される場合、抗原への抗体の結合において直接関与する軽鎖及び重鎖の対の個々を示す。ヒト可変軽及び重鎖のドメインは、同じ一般構造を有し、そして個々のドメインは4つのフレームワーク(FR)領域を含んで成り、それらの配列は広く保存され、3つの「高頻度可変領域」(又は相補性決定領域、CDR)により結合される。フレームワーク領域は、βシートコンホメーションを採用し、そしてCDRはβシート構造体を結合するループを形成することができる。個々の鎖におけるCDRは、フレームワーク領域によりそれらの3次元構造を保持され、そして他の鎖からのCDRと共に抗原結合部位を形成する。
【0039】
「高頻度可変領域」又は「抗体の抗原結合部分」なる用語は、本明細書において使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を言及する。高頻度可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基を含んで成る。「フレームワーク」又は「FR」領域は、本明細書において定義されるように高頻度可変領域残基以外のそれらの可変ドメイン領域である。従って、抗体の軽鎖及び重鎖は、N-末端からC-末端の方に、ドメインFRl、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。個々の鎖上のCDRはそのようなフレームワークアミノ酸により分離される。特に、重鎖のCDR3は、最も抗原結合に寄与する領域である。CDR及びFR領域は、Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)の標準の定義及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基に従って決定される。
【0040】
フルダラビンは、[(2R,3R,4S,5R)−5−(6−アミノ−2−フルオロ−プリン−9−イル)− 3,4−ジヒドロキシ−オキソラン−2−イル]メトキシホスホン酸である。それはDNA前駆体/代謝抵抗物質であり、ハロゲン化リボヌクレオチドレダクダーゼ阻害剤として機能する。フルダラビン又はフルダラビンホスフェート(フルダラ)は、血液系腫瘍 の治療において使用される化学療法薬である(Rai, K.R.等, N. Engl. J. Med. 343 (2000) 1750-1757)。フルダラビンは濾胞性非ホジキンリンパ腫の治療においてシクロホスファミド、ミトキサントロン、デキサメタゾン及びリツキシマブと種々の組み合わせで使用される。FLAG療法の一部として、フルダラビンは急性骨髄性白血病の治療において、シタラビンと顆粒球コロニー刺激因子共に使用される。その免疫抑制効果から、フルダラビンはまた骨髄非破壊的同種幹細胞移植の前に幾つかの調整条件において使用される。
【0041】
ミトキサントロンは、1,4−ジヒドロキシ−5,8−ビス[2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エチルアミノ]−アントラセン−9,10−ジオンである。それは、アントラセンジオン剤である。それは、多くが転移性乳癌、急性骨髄性白血病、及び非ホジキンスリンパ腫である特定の型の癌の治療において使用される。ミトキサントロンとプレドニゾンの組み合わせは、転移性ホルモン不応性前立腺癌の第二選択療法として承認されている。ドセタキセルとプレドニゾンの組み合わせが生存と無病器官を改善することが最近示されるまで、この組み合わせは、第一選択治療であった。ミトキサントロンはII型トポイソメラーゼ阻害剤であり;それは正常細胞と癌細胞の両者において、DNA合成とDNA修復を阻害する。ミトキサントロンはまた二次性進行型MSとして知られる最も注目すべきサブセットである、多発性硬化症(MS)の治療に使用される。ミトキサントロンは多発性硬化症を治療しないが、二次性進行型MSの進行の遅延と再発寛解型MSと進行性再発MSにおいて再発間の時間の延長において効果的である。
【0042】
「アフコシル化抗体」なる用語は、フコース残基のレベルが減少しているAsn297のFc領域においてグリコシル化の様式が変化したIgG1またはIgG3アイソタイプ(好ましくはIgG1アイソタイプ)の抗体を意味する。ヒトIgG1またはIgG3のグリコシル化は、2個までのGal残基で終結するコアフコシル化二分岐複合型オリゴ糖グリコシル化としてAsn297で発生する。これらの構造は、末端Gal残基の量に応じて、G0、G1(α-1,6-もしくはα-1,3-)、又はG2グリカン残基と名付けられている(Raju, T., S., Bioprocess Int. 1 (2003) 44-53)。抗体Fc部分のCHO型グリコシル化は、例えば、Routier, F. H., Glycoconjugate J. 14 (1997) 201-207によって説明されている。糖改変していない(non-glycomodified)CHO宿主細胞において組換えによって発現される抗体は、通常、少なくとも85%の量がAsn297においてフコシル化されている。ここで使用されるアフコシル化抗体なる用語は、グリコシル化様式にフコースを含まない抗体を含むと理解されるべきである。抗体の典型的なグリコシル化残基位置は、EU番号付けシステムに従った位置297におけるアスパラギンである(「Asn297」)。
【0043】
「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」は、一般的には免疫グロブリン重鎖定常領域を言及する際に一般的に使用される(例えば、ここの出典を明示して取り込まれるKabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に報告されたEUインデックス)。
【0044】
このように、本発明に記載のアフコシル化抗体は、フコースの量が、Asn297におけるオリゴ糖(糖)の総量の60%以下である(これはAsn297におけるFc領域の少なくとも40%以上の糖がアフコシル化されていることを意味する)、IgG1又はIgG3アイソタイプ(好ましくはIgG1アイソタイプ)の抗体を意味する。一実施態様では、フコース量はAsn297におけるFc領域の糖の40%から60%の間である。別の実施態様では、フコースの量は50%以下であり、更に別の実施態様では、フコースの量は、Asn297におけるFc領域の糖の30%以下である。別の実施態様では、フコースの量はA297におけるFc領域の糖の0%である。本発明によれば、「フコースの量」とはAsn297でのオリゴ糖(糖)鎖内の前記オリゴ糖(フコース)の量を意味し、Asn297に付着した全てのオリゴ糖(糖)(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計に関連し、MALDI-TOF質量分析法によって測定され、平均値として算出される(フコース量を決定するための詳細な方法は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載されている)。更に、一実施態様では、Fc領域のオリゴ糖は両断される。本発明に記載のアフコシル化抗体は、Fc領域のオリゴ糖を部分的にフコシル化するために十分な量のGnTIII活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも一の核酸を発現するように改変された糖改変宿主細胞において発現し得る。一実施態様では、GnTIII活性を有するポリペプチドは、融合ポリペプチドである。その代わりに、宿主細胞のα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性は、糖改変宿主細胞を生じるために米国特許第6946292号に従って低減又は除去し得る。抗体フコシル化の量は、例えば、発酵条件(例えば、発酵時間)によるか又は少なくとも異なるフコシル化量を有する少なくとも2つの抗体の組み合わせによって事前に決定し得る。このようなアフコシル化抗体とそれぞれの糖改変方法は、国際公開第2005/044859号、国際公開第2004/065540号、国際公開第2007/031875号、Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180), 国際公開第1999/54342号、国際公開第2005/018572号、国際公開第2006/116260号、国際公開第2006/114700号、国際公開第2005/011735号、国際公開第2005/027966号、国際公開第97/028267号、米国特許第2006/0134709号、米国特許第2005/0054048号、米国特許第2005/0152894号、国際公開第2003/035835号、国際公開第2000/061739号に記載される。これらの糖鎖改変抗体は、増加したADCCを有する。本発明に記載のアフコシル化抗体を生じる別の糖改変方法は、例えば、Niwa, R.等, J. Immunol. Methods 306 (2005) 151-160; Shinkawa, T.等, J. Biol. Chem. 278 (2003) 3466-3473; 国際公開第03/055993号又は米国特許第2005/0249722号に記載される。
【0045】
このように、本発明の一態様は、フルダラビン及び/又はミトキサントロンと併用される癌の治療のための医薬の製造のための、フコースの量が、Asn297におけるオリゴ糖(糖)の総量の60%以下であるCD20に特異的に結合するIgG1又はIgG3アイソタイプ(好ましくはIgG1アイソタイプ)のアフコシル化抗CD20抗体の使用である。一実施態様では、フコースの量は、Asn297におけるオリゴ糖(糖)の総量の40%から60%の間である。
【0046】
CD20(Bリンパ球抗原CD20、Bリンパ球表面抗原B1、Leu−16、Bp35、BM5、及びLF5としてまた知られる;配列はSwissProtデータベースエントリーP11836によって決定される)は、プレB及び成熟Bリンパ球上にある分子量約35kDの疎水性膜通過タンパク質である(Valentine, M.A.等, J. Biol. Chem. 264 (1989) 11282-11287; Tedder, T.F.等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85 (1988) 208-12; Stamenkovic, I.等, J. Exp. Med. 167 (1988) 1975-1980; Einfeld, D.A.等, EMBO J. 7 (1988) 711-717; Tedder, T.F.等, J. Immunol. 142 (1989) 2560-2568)。対応するヒト遺伝子は、MS4A1としても知られている、膜貫通4ドメイン、サブファミリーA、メンバー1である。この遺伝子は、膜貫通4A遺伝子ファミリーの膜をコードする。この発生期のタンパク質ファミリーのメンバーは、一般的な構造的特徴と類似のイントロン/エキソンスプライス境界によって特徴付けられ、造血細胞と非リンパ系組織の間の特有の発現様式を示す。この遺伝子は、B細胞の形質細胞への発生と分化において機能するBリンパ球の表面分子をコードする。このファミリーのメンバーは、ファミリーメンバーのクラスター中の11q12に位置する。この遺伝子のオルタナティブスプライシングによって、同一のタンパク質をコードする2個の転写変異体を生じる。
【0047】
「CD20」と「CD20抗原」はここで交換可能に使用され、細胞によって自然に発現されるか又はCD20遺伝子によって形質転換した細胞で発現されるヒトCD20の任意の変異体、アイソフォーム及び種ホモログを含む。CD20抗原への本発明の抗体の結合は、CD20を不活性化することによりCD20(例えば、腫瘍細胞)を発現する細胞の殺傷を媒介する。CD20を発現する細胞の殺傷は、一又は複数の以下の機構:細胞死/アポトーシス誘導、ADCC及びCDCによって起き得る。
【0048】
当該分野で認識されているように、CD20の同義語は、Bリンパ球抗原CD20、Bリンパ球表面抗原B1、Leu−16、Bp35、BM5、及びLF5を含む。
【0049】
本発明に記載の「抗CD20抗体」なる用語は、CD20抗原に特異的に結合する抗体である。抗CD20抗体のCD20抗原への結合能と生物学的活性に依存して、抗CD20抗体(I型とII型抗CD20抗体)の2つの型がCragg, M.S.等, Blood 103 (2004) 2738-2743; and Cragg, M.S.等, Blood 101 (2003) 1045-1051に従って区別され得るが、表2を参照されたい。
表2:I型及びII型抗CD20抗体の性質

【0050】
II型抗CD20抗体の例は、例えば、ヒト化B−Ly1抗体IgG1(国際公開第2005/044859号に開示されるキメラヒト化IgG1抗体)、11B8 IgG1(国際公開第2004/035607号に開示される)及びAT80 IgG1を含む。典型的には、IgG1アイソタイプのII型抗CD20抗体は、特徴的なCDC特性を示す。II型抗CD20抗体は、IgG1アイソタイプのI型抗体と比較して低下したCDC(IgG1アイソタイプの場合)を有する。
【0051】
I型抗CD20抗体の例は、例えば、リツキシマブ、HI47 IgG3(ECACC、ハイブリドーマ)、2C6 IgG1(国際公開第2005/103081号に開示される)、2F2 IgG1(国際公開第2004/035607号及び国際公開第2005/103081号に開示される)及び2H7 IgG1(国際公開第2004/056312号に開示される)を含む。
【0052】
本発明に記載のアフコシル化抗CD20抗体は、一実施態様ではII型の抗CD20抗体であり、別の実施態様では、アフコシル化ヒト化B−Ly1抗体である。
【0053】
本発明に記載のアフコシル化抗CD20抗体は、フコースの低下がない抗CD20抗体と異なり、抗体依存性細胞障害(ADCC)が増加している。
【0054】
「増加した抗体依存性細胞傷害(ADCC)を有するアフコシル化抗CD20抗体」は、その用語が本明細書において定義されるように、当業者に公知の任意の適切な方法によって決定した場合に増加したADCCを有するアフコシル化抗CD20抗体を意味する。1つの受け入れられているインビトロADCCアッセイは以下のとおりである:
【0055】
1)アッセイは、抗体の抗原結合領域によって認識される標的抗原を発現することが知られている標的細胞を使用する;
2)アッセイは、エフェクター細胞として、ランダムに選択された健常ドナーの血液から単離された、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を使用する;
3)アッセイを以下のプロトコルに従って行う:
i)PBMCを、標準的密度遠心分離手順を使用して単離し、そしてRPMI細胞培養培地中に5×10細胞/mlで懸濁する;
ii)標的細胞を、標準的組織培養方法によって増殖させ、90%より高い生存率で指数増殖期から回収し、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、100マイクロ−キュリーの51Crで標識し、細胞培養培地で2回洗浄し、細胞培養培地中に10細胞/mlの密度で再懸濁する;
iii)100μlの最終標的細胞懸濁物を96ウェルマイクロタイタープレートの各々のウェルに移す;
iv)抗体を4000ng/mlから0.04ng/mlまで細胞培養培地中で段階希釈し、得られた抗体溶液の50マイクロリットルを96ウェルマイクロタイタープレート中の標的細胞に加え、上記の濃度範囲全体をカバーする種々の抗体濃度を三連で試験する;
v)最大放出(MR)コントロールのために、標識標的細胞を含むプレート中の3つのさらなるウェルに、非イオン性界面活性剤(Nonidet、Sigma, St. Louis)の2%(VN)水溶液50μlを、抗体溶液(上記iv項)の代わりに与える;
vi)自発性放出(SR)コントロールのために、標識標的細胞を含むプレート中の3つのさらなるウェルに、RPMI細胞培養培地50μlを、抗体溶液(上記iv項)の代わりに与える;
vii)次いで、96ウェルマイクロタイタープレートを50×gで1分間遠心分離し、そして1時間4℃でインキュベートする;
viii)PBMC懸濁物(上記i項)50μlを、25:1のエフェクター:標的細胞比率を生じるように各々のウェルに加え、プレートを5%CO雰囲気下37℃で4時間インキュベーター中に入れる;
ix)各のウェルから無細胞上清を回収し、実験的に放出された放射能(ER)をガンマカウンターを使用して定量する;
x)特異的溶解の百分率を、各抗体濃度について、式(ER−MR)/(MR−SR)×100[ここで、ERはその抗体濃度について定量される平均放射能(上記ix項参照)であり、MRはMRコントロール(上記v項参照)について定量される平均放射能(上記ix項参照)であり、そしてSRはSRコントロール(上記vi項参照)について定量される平均放射能(上記ix項参照)である]に従って算出する;
4)「増加したADCC」を、上記で試験する抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大百分率の増加、および/または上記で試験する抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大百分率の半分を達成するために必要とされる抗体の濃度の低下のいずれかとして定義する。ADCCの増加は、当業者に公知である、同じ標準的な産生、精製、処方および貯蔵方法を使用して、同じ型の宿主細胞によって産生されるが、GnTIIIを過剰発現するように改変された宿主細胞によっては産生されていない、同じ抗体によって媒介される、上記アッセイを用いて測定される、ADCCと相対的である。
【0056】
前記「増加したADCC」を、前記抗体の糖鎖改変によって得ることができ、この手段は、Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17:176-180 (1999)および米国特許第6,602,684号に記載のようにそのオリゴ糖成分を改変することによってモノクローナル抗体の前記天然細胞媒介性エフェクター機能を増強する。
【0057】
「補体依存性細胞傷害(CDC)」なる用語は、補体の存在下での本発明に記載の抗体によるヒト腫瘍標的細胞の溶解を意味する。CDCは、好ましくは、CD20発現細胞の調製物の、本発明に記載の抗CD20抗体での、補体の存在下での処理によって測定される。抗体が、100nMの濃度で、20%以上の腫瘍細胞の溶解(細胞死)を、4時間後に誘導する場合に、CDCは見出される。アッセイは、好ましくは、51CrまたはEu標識腫瘍細胞および放出された51CrまたはEuの測定を用いて行われる。コントロールは、腫瘍標的細胞の、補体との、しかし抗体なしでの、インキュベーションを含む。
【0058】
「リツキシマブ」抗体(参照抗体;I型抗CD20抗体の例)は、ヒトCD20抗原に対する遺伝子改変キメラヒトγ1マウス定常ドメイン含有モノクローナル抗体である。このキメラ抗体は、ヒトγ1定常ドメインを含み、アイデック・ファーマシューティカル社に譲渡された米国特許第5,736,137号(Anderson 等)において名称「C2B8」によって同定される。リツキシマブは、再発性または不応性の低悪性度または濾胞性CD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫の患者の処置のために承認されている。インビトロ作用機構研究は、リツキシマブがヒト補体依存性細胞傷害(CDC)を示すことを示した(Reff等, Blood 83(2): 435-445 (1994))。さらに、それは抗体依存性細胞傷害(ADCC)を測定するアッセイにおいて有意な活性を示す。リツキシマブはアフコシル化されていない。

【0059】
「ヒト化B−Ly1抗体」なる用語は、IgG1由来のヒト定常ドメインとのキメラ化およびその後のヒト化によって、マウスモノクローナル抗CD20抗体B−Ly1(マウス重鎖の可変領域(VH):配列番号1;マウス軽鎖の可変領域(VL):配列番号2 − Poppema, S. and Visser, L., Biotest Bulletin 3: 131-139 (1987)参照)から得られた、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号に開示されるようなヒト化B−Ly1抗体を意味する(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号参照)。これらの「ヒト化B−Ly1抗体」は、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号に詳細に開示されている。
【0060】
一実施態様では、「ヒト化B−Ly1抗体」は、配列番号3から配列番号20(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−HH2からB−HH9およびB−HL8からB−HL17)の群から選択される重鎖の可変領域(VH)を有する。一の特定の実施態様では、このような可変ドメインは、配列番号3、4、7、9、11、13および15からなる群から選択される(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−HH2、BHH−3、B−HH6、B−HH8、B−HL8、B−HL11およびB−HL13)である。好ましくは、「ヒト化B−Ly1抗体」は、配列番号20の軽鎖の可変領域(VL)(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−KV1)を有する。一の特定の実施態様では、「ヒト化B−Ly1抗体」は、配列番号7の重鎖の可変領域(VH)(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−HH6)と配列番号20の軽鎖の可変領域(VL)(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号のB−KV1)を有する。更に別の一実施態様では、ヒト化B−Ly1抗体は、IgG1抗体である。本発明によれば、そのようなアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体は、国際公開第2005/044859号、国際公開第2004/065540号、国際公開第2007/031875号、Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180及び国際公開第1999/54342号に記載の手順に従って、Fc領域において糖鎖改変(GE)されている。一実施態様では、アフコシル化糖鎖改変ヒト化B−Ly1はB−HH6−B−KV1 GEである。このような糖鎖改変ヒト化B−Ly1抗体は、Fc領域におけるグリコシル化の変化したパターンを有し、好ましくはフコース残基の低下したレベルを有する。一実施態様では、フコースの量は、Asn297におけるオリゴ糖の総量の60%以下(一実施態様においてフコースの量は40%から60%、別の実施態様においてフコースの量は50%以下、さらに別の実施態様においてフコースの量は30%以下)である別の実施態様では、Fc領域のオリゴ糖はバイセクト型である。これらの糖鎖改変ヒト化B−Ly1抗体は、増加したADCCを有する。
【0061】
オリゴ糖成分は、物理的安定性、プロテアーゼ攻撃に対する耐性、免疫系との相互作用、薬物動態、および特異的生物学的活性を含む、治療糖タンパク質の効力に関連する特性に有意に影響を及ぼし得る。そのような特性は、オリゴ糖の存在または非存在だけでなく、その特定の構造にも依存し得る。オリゴ糖構造と糖タンパク質機能との間のいくらかの一般化がなされ得る。例えば、特定のオリゴ糖構造は、特定の炭水化物結合タンパク質との相互作用を通じて血流からの糖タンパク質の迅速なクリアランスを媒介し、一方、他のものは、抗体によって結合され、そして所望されない免疫反応を誘発し得る(Jenkins等., Nature Biotechnol. 14:975-981 (1996))。
【0062】
ヒト適用のために最も適合性の形態でタンパク質をグリコシル化するその能力に起因して、哺乳動物細胞は、治療糖タンパク質の産生のために好ましい宿主である(Cumming et al., Glycobiology 1:115-30 (1991);Jenkins et al., Nature Biotechnol. 14:975-81 (1996))。細菌は、非常に稀にタンパク質をグリコシル化し、そして他の型の一般的な宿主、例えば酵母、糸状菌、昆虫および植物細胞のように、血流からの迅速なクリアランス、所望されない免疫相互作用、および、いくつかの特定の場合、低下した生物学的活性に関連するグリコシル化パターンを生じる。哺乳動物細胞の中で、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、この20年の間で最も一般的に使用されている。適切なグリコシル化パターンの付与に加えて、これらの細胞は、遺伝的に安定な高度に生産的なクローン細胞株の一貫した生成を可能にする。それらは、無血清培地を使用して単純なバイオリアクター中で高密度に培養されることができ、そして安全なそして生産的なバイオプロセスの開発を可能にする。他の一般的に使用される動物細胞は、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、NSOおよびSP2/0マウス骨髄腫細胞を含む。より最近では、トランスジェニック動物からの産生も試験されている(Jenkins等, Nature Biotechnol. 14: 975-981 (1996))。
【0063】
全ての抗体は、重鎖定常領域中の保存された位置に炭水化物構造を含み、各イソタイプはN結合型炭水化物構造の異なる配列を有し、これはタンパク質の集合、分泌または機能的活性に可変的に影響を及ぼす(Wright, A., 及び Monison, S. L., Trends Biotech. 15: 26-32 (1997))。結合したN結合型炭水化物の構造は、プロセシングの程度に依存してかなり変化し、高マンノース、多分岐および二分岐複合オリゴ糖を含み得る(Wright, A., and Morrison, S. L., Trends Biotech. 15: 26-32 (1997))。典型的には、特定のグリコシル化部位に結合したコアオリゴ糖構造の不均一なプロセシングが存在し、その結果、モノクローナル抗体でさえ複数のグリコフォームとして存在する。同様に、抗体グリコシル化の大きな差異が細胞株の間で生じ、小さな差異さえも異なる培養条件下で増殖させた所与の細胞株について観察されることが示されている(Lifely, M. R.等, Glycobiology 5(8):813-822 (1995))。
【0064】
単純な産生プロセスを維持し、有意な所望されない副作用を潜在的に回避しながら、効力の大きな増加を得るための1つの方法は、Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17:176-180 (1999)および米国特許第6,602,684号に記載のようにそのオリゴ糖成分を改変することによってモノクローナル抗体の天然の細胞媒介性エフェクター機能を増強することである。癌免疫療法において最も一般的に使用されている抗体であるIgG1型抗体は、各CH2ドメイン中のAsn297に保存されたN結合型グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に結合した2つの複合二分岐オリゴ糖は、CH2ドメイン間に埋められて、ポリペプチド骨格との広範な接触を形成し、その存在は抗体が抗体依存性細胞傷害(ADCC)のようなエフェクター機能を媒介するために重要である(Lifely, M. R.,等, Glycobiology 5: 813-822 (1995);Jefferis, R.,等, Immunol. Rev. 163: 59-76 (1998);Wright, A.及びMorrison, S. L., Trends Biotechnol. 15: 26-32 (1997))。
【0065】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(”GnTIII7y)(バイセクト型オリゴ糖の形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼ)の過剰発現が、改変されたCHO細胞によって産生される抗神経芽細胞腫キメラモノクローナル抗体(chCE7)のインビトロADCC活性を有意に増加させることが以前に示された(Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17: 176-180 (1999);および国際公開第99/154342号(その内容全体を本明細書に参照により組み入れる)参照)。抗体chCE7は、高い腫瘍親和性および特異性を有するが、GnTIII酵素を欠く標準的な工業的細胞株において産生させた場合に臨床的に有用であるためには少なすぎる効力を有する非コンジュゲートモノクローナル抗体の大きなクラスに属する(Umana, P., et al., Nature Biotechnol. 17: 176-180 (1999))。抗体産生細胞をGnTIIIを発現するように改変することによってADCC活性の大きな増加を得ることができ、これはまた定常領域(Fc)結合バイセクト型オリゴ糖(バイセクト型非フコシル化オリゴ糖を含む)の割合の、天然の抗体において見出されるレベルより上への増加を導くことが、この研究によって最初に示された。
【0066】
「癌」なる用語は、ここで使用される場合、リンパ腫、リンパ球性白血病、肺癌、非小細胞肺(NSCL)癌、細気管支肺胞(bronchioloalviolar)細胞肺癌、骨癌、膵癌、皮膚癌、頭部又は頸部癌、皮膚又は眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、大腸癌、乳癌、子宮癌、卵管の癌、子宮内膜の癌、頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、上皮小体癌、副腎癌、軟部組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓又は尿管癌、腎臓細胞癌、腎盂の癌、中皮腫、肝細胞性癌、胆道癌、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、多形神経膠芽腫、星状細胞腫、神経鞘腫、上衣腫(ependymonas)、髄芽細胞腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体性腺腫を含み、上記の癌の何れかの難治性のもの、又は上記の癌の一又は複数の組合せを含む。 一実施態様では、癌なる用語は、CD20発現癌を意味する。
【0067】
「CD20抗原の発現」なる用語は、それぞれ腫瘍または癌、好ましくは非固形腫瘍由来の、細胞における、好ましくはTまたはB細胞、より好ましくはB細胞の細胞表面上での、CD20抗原の有意なレベルの発現を示すことが意図される。「CD20発現癌」を有する患者を、当該分野において公知の標準的なアッセイによって決定することができる。例えば、CD20抗原発現は、免疫組織化学的(IHC)検出、FACSを使用して、または対応するmRNAのPCRに基づく検出を介して測定され得る。
【0068】
本明細書において使用する「CD20発現癌」なる用語は、CD20抗原の発現を示す癌細胞における全ての癌を意味する。好ましくは、ここで使用されるCD20発現癌は、リンパ腫(好ましくはB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL))およびリンパ球性白血病を指す。このようなリンパ腫およびリンパ球性白血病は、例えば、a)濾胞性リンパ腫、b)小型非切れ込み核細胞性リンパ腫/バーキットリンパ腫(風土性バーキットリンパ腫、散発性バーキットリンパ腫および非バーキットリンパ腫を含む)、c)周辺帯リンパ腫(節外周辺帯B細胞リンパ腫(粘膜関連リンパ組織リンパ腫、MALT)、結節周辺帯B細胞リンパ腫および脾臓周辺帯リンパ腫を含む)、d)マントル細胞リンパ腫(MCL)、e)大細胞型リンパ腫(B細胞びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、びまん性混合細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、縦隔原発性B細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫−肺B細胞リンパ腫を含む)、f)ヘアリー細胞白血病、g)リンパ球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、h)急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性白血病(SLL)、B細胞前リンパ球性白血病、i)形質細胞腫瘍、形質細胞性骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞腫、j)ホジキン病を含む。
【0069】
一実施態様では、CD20発現癌は、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)である。別の実施態様では、CD20発現癌は、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、B細胞びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、バーキットリンパ腫、ヘアリー細胞白血病、濾胞性リンパ腫、多発性骨髄腫、周辺帯リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、HIV関連リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、または原発性CNSリンパ腫である。
【0070】
例えば癌等に適用されるとき、「治療法」、又はこれと同じ意味の用語は、患者の癌細胞の数を減少させ、又は消滅させるように、又は癌の症状を緩和するように設計された活動の手順又は過程を指す。癌又は他の増殖疾患を「治療する方法」は、癌細胞又は他の疾患が実際に除去され、細胞又は疾患の数が実際に減少し、又は癌又は他の疾患の症状が実際に緩和され得るものであることを必ずしも意味しない。しばしば、癌を治療する方法は、成功率が低くても実行され得るが、そうした方法は、患者の病歴及び余命を鑑みて、それにもかかわらず、総合的な利益をもたらすものとみなされる。
【0071】
「共投与」又は「共投与する」なる用語は、前記アフコシル化抗CD20抗体及びフルダラビン及び/又はミトキサントロンを、単一の製剤として、又は2つの個別の製剤として投与することを意味する。該共投与は、同時に又は連続してなされてもよく、ここで、好ましくは、両方の(又は全ての)有効薬剤が、それらの生物活性を同時に発揮させる期間が存在する。前記抗CD20アフコシル化抗体及びフルダラビン及び/又はミトキサントロンは、同時に又は連続的(例えば、持続的な注入(一つは抗CD20抗体であり、結局、一つはフルダラビン及び/又はミトキサントロンである)による血管内(i.v.)投与等)に共投与される。両方の治療剤を連続的に共投与するとき、投与は、個別の2つの投与を同日に行うか、又は薬剤の一つを1日目に投与し、第2を2日から7日目に、好ましくは2日から4日目に投与する。従って、「連続的に」なる用語は、第1の成分(フルダラビン又はミトキサントロン又はCD20抗体)の投与後7日、好ましくは第1の成分の投与後4日以内を意味し;「同時に」なる用語は、同時であることを意味する。前記アフコシル化抗CD20抗体及びフルダラビン及び/又はミトキサントロンの維持用量に関する「共投与」なる用語は、治療サイクルがいずれの薬物にも適している場合(例えば毎週等)に、維持用量が、両方とも同時に共投与され得ることを意味する。あるいは、フルダラビン及び/又はミトキサントロンが、例えば1日から3日毎に投与され、前記アフコシル化抗体は毎週投与される。あるいは、連続して1日から数日以内に、維持用量が共投与される。
【0072】
研究者、獣医、医師又は他の臨床医により想定されている、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を引き出し得る各化合物又は組合せの量である、「治療的に有効な量」(又は単純に「有効量」)の抗体が患者に投与されることは、自明である。
【0073】
疾患の種類及び重度に依拠して、約1μg/kgから50mg/kg(例えば、0.1から20mg/kg)の前記のアフコシル化抗CD20抗体、及び1μg/kgから50mg/kg(例えば、0.1から20mg/kg)のフルダラビン及び/又はミトキサントロンは、患者への双方の薬剤の同時投与のための最初の候補投薬量である。一実施態様では、前記アフコシル化抗CD20抗体(好ましくはアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)の好適な投与量は、約0.05mg/kgから約30mg/kgの範囲にあることになる。従って、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、10mg/kg又は30mg/kg(又はそれらの任意の組合せ)の一又は複数の投薬量が患者に共投与されてよい。一実施態様では、フルダラビン及び/又はミトキサントロンの投与量は、0.01mg/kgから30mg/kg、例えば0.1mg/kgから10.0mg/kgの範囲内になる。患者の型(種類、性別、年齢、体重等)及び状態によって、並びにアフコシル化抗CD20抗体の種類によって、前記アフコシル化抗体とフルダラビン及び/又はミトキサントロンの投与量及び投与日程は、異なることがある。例えば、前記アフコシル化抗CD20抗体は、例えば、1から3週毎に投与されてよく、フルダラビン及び/又はミトキサントロンは、毎日又は2から10日毎に投与されてよい。最初に高いローディング用量、次いで一又は複数の低用量が投与されてもよい。
【0074】
一実施態様では、前記アフコシル化抗CD20抗体(例えば、アフコシル化ヒトB−Ly1抗体)の投与量は、6回までの4週投与サイクルの1日目に400から1200mg、例えば、400から800mgであってもよく、フルダラビン及び/又はミトキサントロンの投与量は6回までの4週投与サイクルの1、2、3日目に20mg/mから30mg/m(好ましくは25mg/m)であり得る。その代わりに、好適な前記アフコシル化抗CD20抗体の投与量は、6週投与サイクルの1、8、15日目における400から1200mg(好ましくは400から800mg)、次いで5回までの4週投与サイクルの1日目における400から1200mg(好ましくは400から800mg)の投与量であり得る。
【0075】
一実施態様では、前記ヒト化B−Ly1抗体は、6又は7回までの3から4週投与サイクルの一日目に800から1600mgの投与量で投与され、フルダラビンは6又は7回までの4週投与サイクル(1サイクル目(8日目)に余剰の投与を追加してもよい)の1、2及び3日目において20mg/mから30mg/mの投与量(好ましくは25mg/m)で投与される。
【0076】
一実施態様では、フコース量が60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体(好ましくはアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)は、フルダラビンとシクロホスファミド(CTX;例えば、シトキサン(登録商標))と併用される。一の特定な実施態様は、フルダラビンとシクロホスファミド(CTX;例えば、シトキサン(登録商標))と併用される癌の治療のための医薬の製造のためのフコース量が60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体(好ましくは、アフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)である。このような併用において、好ましくは前記ヒト化B−Ly1抗体は、6から7回までの3から4週投与サイクルの1日目において800から1600mgの投与量で投与され、フルダラビンは、6又は7回までの4週投与サイクルの1、2及び3日目(1サイクル目(8日目)に余剰の投与を追加してもよい)に20mg/mから30mg/mの投与量(好ましくは25mg/m)で投与され、シクロホスファミドは6又は7回までの4週投与サイクルの1、2及び3日目(1サイクル目(8日目)に余剰の投与を追加してもよい)に200mg/mから300mg/mの投与量(好ましくは250mg/m)で投与される。
【0077】
一実施態様では、医薬は、癌、好ましくはCD20発現癌に罹患している患者において、転移又は更なる拡散を防止又は低下させるのに有用である。医薬は、そのような患者の生存期間を増加し、そのような患者の無増悪生存を増大させ、応答の継続を増大させるのに有用であり、その結果、生存期間、無増悪生存、応答率又は応答の継続により測定される、治療を受ける患者の統計的に有意かつ臨床的に有意義な改善がもたらされる。好ましい態様において、医薬は、一群の患者の応答率を増大させるのに有用である。
【0078】
本発明に関連して、付加的な他の細胞傷害性薬剤、化学治療剤若しくは抗癌剤、又はそのような薬剤の効果を亢進させる化合物(例えばサイトカイン)が、癌のアフコシル化抗CD20抗体とフルダラビン及び/又はミトキサントロンの併用療法に使用され得る。そのような分子は、適切には、意図される目的を果たすのに有効な量が、組合せ中に存在する。一実施態様では、前記アフコシル化抗CD20抗体とフルダラビン及び/ミトキサントロンの併用療法は、そのような付加的な細胞傷害性薬剤、化学治療剤若しくは抗癌剤、又はそのような薬剤の効果を亢進させる化合物なしで使用される。
【0079】
そのような薬剤は、例えば、以下を含む:アルキル化剤またはアルキル化作用を有する薬剤、例えばシクロホスファミド(CTX;例えばシトキサン(登録商標))、クロラムブシル(CHL;例えばリューケラン(登録商標))、シスプラチン(CisP;例えばプラチノール(登録商標))、ブスルファン(例えば、ミレラン(登録商標))、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾシン、トリエチレンメラミン(TEM)、マイトマイシンCなど;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート(MTX)、エトポシド(VP16;例えばベプシド(登録商標))、6−メルカプトプリン(6MP)、6−チオグアニン(6TG)、シタラビン(Ara−C)、5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン(例えばゼローダ(登録商標))、ダカルバジン(DTIC)など;抗生物質、例えばアクチノマイシンD,ドキソルビシン(DXR;例えばアドリアマイシン(登録商標))、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンなど;アルカロイド、例えばビンカアルカロイド、例えばビンクリスチン(VCR)、ビンブラスチンなど;および他の抗腫瘍剤、例えばパクリタキセル(例えばタキソール(登録商標))およびパクリタキセル誘導体、細胞分裂阻害剤、グルココルチコイド、例えばデキサメタゾン(DEX;例えばデカドロン(登録商標))およびコルチコステロイド、例えばプレドニゾン、ヌクレオシド酵素阻害剤、例えばヒドロキシウレア、アミノ酸枯渇酵素、例えばアスパラギナーゼ、ロイコボリンおよび他の葉酸誘導体、および類似の多様な抗腫瘍剤。以下の薬剤をさらなる薬剤として使用してもよい:アミフォスチン(arnifostine)(例えばエチオール(登録商標))、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン リポ(例えばドキシル(登録商標))、ゲムシタビン(例えばジェムザール(登録商標))、ダウノルビシン リポ(例えばダウノキソーム(登録商標))、プロカルバジン、マイトマイシン、ドセタキセル(例えばタキソテール(登録商標))、アルデスロイキン、カルボプラチン、オキサリプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT11(イリノテカン)、10−ヒドロキシ7−エチル−カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンβ、インターフェロンα、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル。好ましくは、アフコシル化抗CD20抗体とフルダラビン及び/又はミトキサントロンの併用療法はそのようなさらなる薬剤なしで使用される。
【0080】
好ましい実施態様は、フルダラビンとシクロホスファミド(CTX;例えば、シトキサン(登録商標))と併用される癌の治療のための、フコース量が60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体(好ましくはアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)である。
【0081】
好ましい実施態様は、フルダラビンとシクロホスファミド(CTX;例えば、シトキサン(登録商標))と併用される癌の治療のための医薬の製造のための、フコース量が60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体(好ましくはアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)である。
【0082】
化学療法レジメンにおける上記の細胞傷害剤および抗癌剤ならびに抗増殖性標的特異的抗癌薬、例えばプロテインキナーゼ阻害剤の使用は、癌治療の技術分野において一般に十分に特徴付けられており、それらの使用は、本明細書において、いくらかの調節を伴って、寛容および有効性のモニタリングおよび投与経路および投与量の制御のために同様に考慮される。例えば、細胞傷害剤の実際の投与量は、組織培養法を使用することによって決定される患者の培養細胞応答に依存して変動し得る。一般に、投与量は、さらなる他の薬剤の非存在下で使用される量と比較して低下し得る。
【0083】
有効な細胞傷害性薬剤の典型的な投与量は、製造業者によって推奨される範囲内であることができ、インビトロ応答または動物モデルにおける応答によって示され、およそ一桁の濃度または量まで低下し得る。従って、実際の投与量は、医師の判断、患者の状態、および初代培養悪性細胞または組織培養組織試料のインビトロ応答性、または適切な動物モデルにおいて観察される応答に基づく治療方法の有効性に依存する。
【0084】
本発明の関連で、アフコシル化抗CD20抗体とフルダラビン及び/又はミトキサントロン併用療法に加えて、有効量の電離放射線を行ってもよく、及び/又は放射性医薬品を使用してもよい。放射線源は、処置される患者の外部又は内部のいずれかであることができる。線源が患者の外部である場合、治療は外照射(EBRT)として知られる。線源が患者の内部である場合、処置は組織内照射(BT)と呼ばれる。本発明の関連での使用のための放射性原子は、限定するものではないが、ラジウム、セシウム−137、イリジウム−192、アメリシウム−241、金−198、コバルト−57、銅−67、テクネチウム−99、ヨード−123、ヨード−131、およびインジウム−111を含む群から選択し得る。そのような放射性同位体で抗体を標識することもまた可能である。好ましくは、アフコシル化抗CD20抗体とフルダラビン及び/又はミトキサントロン併用療法はそのような電離放射線なしで使用される。
【0085】
放射線療法は、切除不能または手術不能の腫瘍および/または腫瘍転移を制御するための標準的な治療である。放射線療法が化学療法と組み合わされた場合、改善された結果が観察されている。放射線療法は、標的領域に送達される高線量照射が腫瘍および正常組織の双方における繁殖細胞の死を生じるという原理に基づいている。放射線量レジメンは、一般に照射吸収線量(Gy)、時間および分画の点から規定され、腫瘍学者によって慎重に規定されなければならない。患者が受ける照射の量は種々の考慮に依存するが、2つの最も重要なものは、身体の他の重要な構造または器官との関連での腫瘍の位置、および腫瘍が広がった程度である。放射線療法を受けている患者のための治療の典型的な過程は、週に5日、約1.8から2.0Gyの単回一日画分で患者に投与される10から80Gyの総線量を用いる、1〜6週の期間にわたる処置スケジュールである。本発明の好ましい実施態様において、ヒト患者中の腫瘍が本発明の併用療法および照射を用いて処置される場合、相乗作用が存在する。換言すると、本発明の組み合わせを含む薬剤による腫瘍成長の阻害は、照射と、場合によりさらなる化学療法剤または抗癌剤と組み合わされた場合、増強される。アジュバント放射線療法のパラメーターは、例えば、国際公開第99/60023号に含まれている。
【0086】
アフコシル化抗CD20抗体は、公知の方法に従って、ボーラスとしてのまたは一定期間にわたる連続注入による静脈内投与によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内またはくも膜腔内経路によって、患者に投与され得る。一実施態様では、抗体の投与は、静脈内または皮下投与が好ましい。
【0087】
フルダラビン及び/又はミトキサントロンは、公知の方法に従って、ボーラスとしてのまたは一定期間にわたる連続注入による静脈内投与によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、くも膜腔内又は経口経路によって、患者に投与される。静脈内または腹腔内投与が好ましい。
【0088】
本明細書において使用する「薬学的に許容可能な担体」は、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、および医薬投与に適合性の他の材料および化合物を含む、医薬投与に適合性の任意のそして全ての材料を含むことが意図される。任意の従来の媒質または薬剤が活性化合物と不適合性でない限り、本発明の組成物におけるその使用が意図される。補足の活性化合物を組成物中に組み入れることもできる。
【0089】
医薬組成物:
医薬組成物は、本発明の抗CD20抗体及び/又はフルダラビン及び/又はミトキサントロンを、薬学的に許容可能な無機又は有機担体で加工することにより取得され得る。ラクトース、コーンスターチ又はそれらの誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩等が錠剤、被覆錠剤、ドラジェ及び硬ゼラチンカプセルの担体として、使用され得る。軟ゼラチンカプセルに適した担体は、例えば、植物油、蝋、脂肪、半固形及び液体ポリオール等である。しかし、有効成分の性質によって、軟ゼラチンカプセルの場合においては、担体が通常必要ではない。溶液及びシロップの生産に適した担体は、例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油等である。懸濁物に適した担体は、例えば、天然又は硬化油、蝋、脂肪、半液体又は液体ポリオール等である。
【0090】
更に、医薬組成物は、保存料、可溶化剤、安定化剤、保湿剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香料、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、マスキング剤又は抗酸化剤を含み得る。また、それらは、また他の治療的に有益な物質を含み得る。
【0091】
一実施態様では、組成物は、癌、特にCD20発現癌(例えば、B細胞ホジキンリンパ種(NHL))の治療における使用のための前記フコース量が60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体(好ましくは前記アフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)とフルダラビン及び/ミトキサントロン(好ましくはフルダラビン)を含む。
【0092】
前記医薬組成物は、1又は複数の薬学的に許容可能な担体を更に含み得る。
【0093】
更に、本発明は、例えば、(i)有効な第一の量の60%以下のフコース量であるアフコシル化抗CD20抗体(好ましくはアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)、及び(ii)有効な第二の量のフルダラビン及び/又はミトキサントロンを含む、癌において使用される医薬組成物を提供する。そのような組成物は、薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤を含んでもよい。
【0094】
親油性製剤又は水溶液の形態で、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい所望の純度の抗体と、賦形剤又は安定化剤とを混合することにより(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))、本発明に記載のアフコシル化抗CD20抗体を単独で使用する医薬組成物は、保存用に調製される。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、採用される用量及び濃度で対象に毒性を有さず、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメチオミウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル若しくはプロピルパラベン;;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm‐クレゾール);低分子量(10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又はイムノグロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む、単糖類、二糖類、及び他の糖類;キレート剤、例えばEDAT;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えばZn−タンパク質複合体);並びに/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0095】
フルダラビン及び/又はミトキサントロン(好ましくはフルダラビン)の薬学的組成物は、アフコシル化抗CD20抗体について上述されるものと類似であり得る。
【0096】
本発明の更なる一実施態様では、アフコシル化抗CD20抗体とフルダラビン及び/又はミトキサントロンが2つの別の薬学的組成物に製剤化される。
【0097】
また、コロイド薬剤輸送系(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、微小エマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)における、又は大型エマルジョンにおける、コアセルベーション技術、又は異種間ポリマー化、例えばヒドロキシメチルセルロースにより調製される微小カプセル、又はゼラチン−微小カプセル、及びポリ(メチルメタクリレート)微小カプセル中に、有効成分が封入され得る。そのような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に記載されている。
【0098】
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の適切な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは、例えばフィルム又は微小カプセル等の固体の形態である。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びガンマ−エチル−L−グルタミンのコポリマー、非分解性エリレンビニルアセテート、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射用マイクロスフェア)等の分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、並びにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。
【0099】
インビボ投与に使用されるべき製剤は、滅菌されなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより、容易に達成される。
【0100】
本発明は更に(i)有効な第一の量のフコースの量が60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体、(好ましくはアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体);と(ii)有効な第二の量のフルダラビン及び/又はミトキサントロンの治療を必要とする患者への投与を含む癌の治療法を提供する。
【0101】
一実施態様では、フコースの量は40%から60%である。
【0102】
好ましくは前記癌はCD20発現癌である。
【0103】
好ましくは前記CD20発現癌はB細胞ホジキンリンパ種(NHL)である。
【0104】
好ましくは前記アフコシル化CD20抗体はII型抗CD20抗体である。
【0105】
好ましくは前記抗体はヒト化B−Ly1抗体である。
【0106】
好ましくは前記ヒト化B−Ly1抗体は、6回までの4週投与サイクルの1日目に400から1200mgの投与量で投与され、フルダラビン及び/又はミトキサントロンは6回までの4週投与サイクルの1、2、3日目に20mg/mから30mg/m(好ましくは25mg/m)の投与量で投与される。
【0107】
一実施態様では、前記治療法は、癌の治療がフルダラビンのみ(すなわち、ミトキサントロンなし)と併用されることを特徴とする。このような併用において、好ましくは前記ヒト化B−Ly1抗体は、6から7回までの3から4週投与サイクルの1日目において800から1600mgの投与量で投与され、フルダラビンは、6又は7回までの4週投与サイクルの1、2及び3日目(1サイクル目(8日目)に余剰の投与を追加してもよい)に20mg/mから30mg/mの投与量(好ましくは25mg/m)で投与され、シクロホスファミドは6又は7回までの4週投与サイクルの1、2及び3日目(1サイクル目(8日目)に余剰の投与を追加してもよい)に200mg/mから300mg/mの投与量(好ましくは250mg/m)で投与される。
【0108】
一実施態様では、前記治療法は、癌治療がフルダラビンとシクロホスファミド(CTX;例えば、シトキサン(登録商標))のみ(すなわち、ミトキサントロンなし)と併用されることを特徴とする。このような併用において、好ましくは前記ヒト化B−Ly1抗体は、6から7回までの3から4週投与サイクルの1日目において800から1600mgの投与量で投与され、フルダラビンは、6又は7回までの4週投与サイクルの1、2及び3日目(1サイクル目(8日目)に余剰の投与を追加してもよい)に20mg/mから30mg/mの投与量(好ましくは25mg/m)で投与され、シクロホスファミドは6又は7回までの4週投与サイクルの1、2及び3日目(1サイクル目(8日目)に余剰の投与を追加してもよい)に200mg/mから300mg/mの投与量(好ましくは250mg/m)で投与される。
【0109】
一実施態様では、前記方法は癌治療がミトキサントロンのみと併用されることを特徴とする。
【0110】
本明細書で使用する場合、「患者」という用語は、何らかの目的でアフコシル化抗CD20抗体による治療を必要とするヒト(例えばCD20発現癌に罹患している患者)を意味し、より好ましくは、癌、又は前癌症状又は病態の処置を要するヒトを指す。しかしながら、「患者」という用語は、また、非ヒト動物、好ましくはイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ及び非ヒト霊長類、その他を意味する。
【0111】
本発明は更に、癌治療における使用のためのフコース量が60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体とフルダラビン及び/又はミトキサントロン(好ましくはフルダラビン)を含む。このような併用において、好ましくは前記ヒト化B−Ly1抗体は、6から7回までの3から4週投与サイクルの1日目において800から1600mgの投与量で投与され、フルダラビンは、6又は7回までの4週投与サイクルの1、2及び3日目((8日目)に余剰の投与を追加してもよい)に20mg/mから30mg/mの投与量(好ましくは25mg/m)で投与され、シクロホスファミドは6又は7回までの4週投与サイクルの1、2及び3日目(1サイクル目(8日目)に余剰の投与を追加してもよい)に200mg/mから300mg/mの投与量(好ましくは250mg/m)で投与される。好ましくは前記併用はミトキサントロンを含まない。
【0112】
一実施態様では、フコース量が60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体(好ましくはアフコシル化ヒト化B−Ly1抗体)はフルダラビンとシクロホスファミド(CTX;例えば、シトキサン(登録商標))と癌治療において併用される。このような併用において、好ましくは前記ヒト化B−Ly1抗体は、6から7回までの3から4週投与サイクルの1日目において800から1600mgの投与量で投与され、フルダラビンは、6又は7回までの4週投与サイクルの1、2及び3日目(1サイクル目(8日目)に余剰の投与を追加してもよい)に20mg/mから30mg/mの投与量(好ましくは25mg/m)で投与され、シクロホスファミドは6又は7回までの4週投与サイクルの1、2及び3日目(1サイクル目(8日目)に余剰の投与を追加してもよい)に200mg/mから300mg/mの投与量(好ましくは250mg/m)で投与される。
【0113】
好ましくは前記アフコシル化CD20抗体はヒト化B−Ly1抗体である。
【0114】
好ましくは癌はCD20発現癌、より好ましくはB細胞ホジキンリンパ腫(NHL)である。
【0115】
以下の実施例、配列表、及び図は、本発明の理解を補助するために提供されるものであり、本発明の実際の範囲は、添付されている特許請求の範囲に記載されている。本発明の精神から逸脱すること無く、記載されている手順の改変がなされ得ることを理解されたい。
【0116】
配列表
配列番号:1
マウスモノクローナル抗CD20抗体B−Ly1の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配。
配列番号:2
マウスモノクローナル抗CD20抗体B−Ly1の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配。
配列番号3から19
ヒト化B−Ly1抗体(B−HH2からB−HH9、B−HL8、及びB−HL10からB−HL17)の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列。
配列番号20
ヒト化B−Ly1抗体B−KV1の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列。
【実施例】
【0117】
実施例1(図1を参照されたい)
フルダラビンとアフコシル化II型抗CD20抗体(B−HH6−B−KV1 GE)の併用治療のインビボ抗腫瘍活性
試験に用いる試薬
GlycArt, Schlieren, SwitzerlandのII型抗CD20抗体B−HH6−B−KV1 GEの(=ヒト化B−Ly1、糖鎖改変B−HH6−B−KV1、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号を参照されたい)を、ストック溶液として準備した(c=9.4mg/ml)。抗体緩衝液は、ヒスチジン、トレハロース、及びポリソルベート20を含んでいた。注入の前に、抗体溶液をストック溶液からPBSで適宜希釈した。
【0118】
フルダラビンリン酸(Fludarabinmedac)は、medac, Gesellschaft fur klinische Spezialpraparate mbH, Fehlandstr. 3, 20354 Hamburg, Germanyから購入した。必要な希釈は、25mg/mlの調製したストック溶液から調整した。
【0119】
細胞株と培養条件
ヒトZ138マントル細胞リンパ腫細胞株を、8%のCO2で水飽和雰囲気中で、37℃で10%のウシ胎児血清(PAA Laboratories、オーストラリア)と2mMのL−グルタミンを追加したDMEM中で規定通り培養した。継代2を移植に使用した。細胞をマトリゲルで同時注入した。
【0120】
動物
到着時に4〜5週齢の雌SCIDベージュマウス(Charles Riever,Sulzfeld、ドイツから購入)を、誓約したガイドライン(GV−Solas; Felasa; TierschG)に従い、12時間照明/12時間暗所の日周の特別な無菌条件下で維持した。実験プロトコルは、地方自治体により査読及び認可された。到着後、新しい環境に慣らすために、動物を2週間動物施設の隔離区画中で維持して、それから観察に付した。定期的に、継続的な健康状態のモニタリングを行った。栄養食(Provimi Kliba 3337)及び水(pH2.5〜3に酸性化したもの)を、不断給餌により供給した。
【0121】
モニタリング
動物の臨床的症状及び副作用の判定が、日常的に管理された。実験全体をモニタリングするために、動物の体重を週2回記録し、病期分類後に、キャリパーにより腫瘍体積を測定した。
【0122】
動物の処置
腫瘍細胞移植の22日後のランダムに決定した日に、動物の処置を開始した。1mg/kgの指定の投与量で試験の22及び29日目において単一薬剤i.v.q7dとして、ヒト化II型抗CD20抗体B−HH6−B−KV1 GE又はリツキシマブが投与された。対応するビヒクルは、同一の日に投与された。フルダラビンは40mg/kgで22、23、24、及び25日目にi.p.で投与された。併用療法の群では、化学療法剤は22日目に双方の抗体の8時間後に投与された。
【0123】
インビボ腫瘍増殖阻害(図1を参照されたい)
腫瘍細胞移植36日後、対照群と比較し、それぞれ、フルダラビン、リツキシマブ、リツキシマブとフルダラビンの組み合わせ、抗CD20抗体 B−HH6−B−KV1 GE又は抗CD20抗体とフルダラビンの組み合わせを投与された動物において、50%、60%、85%、86%又は108%(縮退)の腫瘍増殖阻害があった。抗CD20抗体とフルダラビンを併用した処置群では、10匹の動物中3匹もの動物でが腫瘍がなく、43日目において、腫瘍負荷のほぼ完全な消失を示した(n=2)。
【0124】
結論:
これらのインビボの結果は、化学療法的な化合物フルダラビンとアフコシル化II型抗CD20抗体 B−HH6−B−KV1 GE(=ヒト化B−Ly1、糖鎖改変)の併用が、NHL Z138異種移植における付加活性以上であることを示す。
【0125】
実施例2(図2から5を参照されたい)
フルダラビン又はミトキサントロンとアフコシル化II型抗CD20抗体(B−HH6−B−KV1 GE)の抗増殖性活性のインビトロ評価
材料と方法
応用腫瘍細胞株の特性評価
以下の非ホジキンリンパ種(NHL)細胞株を実験において使用した:マントル細胞リンパ腫細胞株としてのGranta−519、HBL−2、Rec−1及びZ−138とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株としてのKarpas−422。全ての細胞株は「Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH” (DSMZ), Braunschweig, Germany」から得た。
【0126】
細胞培養条件:
全ての細胞株は、標準の手順に従って保存し、CO2インキュベーター中で37℃、5%CO2及び95%の相対湿度で培養した。Granta519、HBL−2、JeKo−1、Rec−1及びZ−138を10%の熱失活FCSと1%のペニシリン/ストレプトマイシンを伴うRPMI−1640培地で培養した。
【0127】
トリプトパンブルー細胞排除法を用いた生存率と増殖の決定
生存細胞の密度を、トリパンブルー細胞排除法に基づき、BeckmanCoulterViCell(商標)生死細胞オートアナライザーで決定した。この試験は、生存細胞がトリパンブルーの取り込みを阻害するインタクトの細胞膜を有する一方で、死細胞はこの能力を失っているという原理に基づく。したがって、生存細胞は、透明の細胞質を有する一方で、死細胞はその青色の細胞質によって同定され得る。
【0128】
物質:

【0129】
試験化合物:
B−HH6−B−KV1 GE(=ヒト化B−Ly1、糖鎖改変B−HH6−B−KV1、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号を参照されたい):
ストック溶液10mg/ml(ロシュ、グリグアート)
併用パートナー
1.フルダラビン:PBS中のストック溶液25mg/ml;Medac GmbH(Wedel)
2.ミトキサントロン:ストック溶液2mg/ml(Baxter Oncology GmbH)
【0130】
実験プロトコル:
MCL細胞株パネル(Granta−519、HBL−2、Jeko−1、Rec1及びZ−138)とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(Karapas−422)を用いて、細胞増殖及び生存性に対するB−HH6−B−KV1のみ並びにフルダラビン、ミトキサントロンとの併用の効果を決定した。トリパンブルー試験を細胞生存性の解析に用いた。
【0131】
簡潔には、MCL細胞を、合計細胞数3x10細胞に対応する6mlの合計容積中の0.5x10細胞/mlの開始密度まで希釈し、化学療法的なフルダラビン又はミトキサントロンの次の濃度と併用する1μg/mlのB−HH6−B−KV1 GEで処理した。これらの濃度は、MCL細胞上で前実験で決定した。
1.0.25μg/mlフルダラビン
2.0.25及び0.5μg/mlミトキサントロン
1mlのサンプルを毎日0時間、24時間、48時間、72時間で回収し、生存細胞の数を決定した。細胞増殖の低下を画分生成物計算に使用した(相乗>0.1;付加効果−0.1<x<0.1;拮抗<−0.1)。実験は独立して3回実施した。
【0132】
結果:
B−HH6−B−KV1 GE(1μg/ml)で1回暴露後、Granta−519とRec−1は、最高の感度を示した(Granta:65−75%の細胞減少、Rec−1:30−45%)。中間結果は、HBL−2(20−30%)、Z−138とKarpas−422(10−15%)、Jeko−1(5%)に達した。フルダラビンのみは、20−40%の細胞減少の結果であるが、一方でミトキサントロン処理は、全ての細胞株に高い効果を示した(80−95%細胞減少)。
【0133】
それぞれの薬剤とB−HH6−B−KV1 GEの併用は、40−80%(フルダラビン)と85−95%(ミトキサントロン)の細胞減少の結果となる全ての組み合わせについて付加的な効果を示した。
【0134】
結論:
これらのインビトロの結果は、化学療法的化合物であるフルダラビンとミトキサントロンと併用されるアフコシル化II型CD20抗体B−HH6−B−KV1 GE(=ヒト化B−Ly1、糖鎖改変)がNHL細胞株に対して有望な活性を示す(例えば、幾つかの場合は付加以上)ことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルダラビン及び/又はミトキサントロンと併用される癌治療のための医薬の製造のための、フコースの量が、Asn297におけるオリゴ糖(糖)の総量の60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体の使用。
【請求項2】
前記癌がB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)であることを特徴とする、請求項1から2の何れか一項に記載の使用。
【請求項3】
前記抗体がヒト化B−Ly1抗体であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
癌の治療がフルダラビンと併用されることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
ヒト化B−Ly1抗体が、6又は7回までの3から4週の投与サイクルの1日目に800から1600mgの投与量で投与され、フルダラビンが、6又は7回までの4週の投与サイクルの1、2及び3日目に20mg/mから30mg/mの投与量で投与されることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
癌治療がフルダラビン及びシクロホスファミドと併用されることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
ヒト化B−Ly1抗体が、6又は7回までの3から4週の投与サイクルの1日目に800から1600mgの投与量で投与され、フルダラビンが、6又は7回までの4週の投与サイクルの1、2及び3日目に20mg/mから30mg/mの投与量で投与され、シクロホスファミドが、6又は7回までの4週の投与サイクルの1、2及び3日目に200mg/mから300mg/mの投与量で投与されることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
癌治療がミトキサントロンと併用されることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の使用。
【請求項9】
このような薬剤の効果を高める一又は複数の付加的な他の細胞障害、化学療法又は抗癌剤、若しくは化合物又は電離放射線が投与されることを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載の使用。
【請求項10】
フコースの量が、Asn297におけるオリゴ糖(糖)の総量の60%以下であるアフコシル化抗CD20抗体とフルダラビン及び/又はミトキサントロンを含む癌治療のための組成物。
【請求項11】
前記アフコシル化CD20抗体が、ヒト化B−Ly1抗体であることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−501741(P2013−501741A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524147(P2012−524147)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004940
【国際公開番号】WO2011/018225
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(512036384)ロシュ グリクアート アーゲー (8)
【Fターム(参考)】