説明

アモルファス矩形鉄心自動成形方法及び装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アモルファス矩形鉄心変圧器の矩形鉄心部の自動成形方法に係り、長方形アモルファス薄板を芯の中心となる巻枠に巻付け両端を突き合わせ環状にしたものを積層する際に、特に巻付け時の緩みを防止するために、アモルファス薄板の軌跡を考慮して巻付け、成形するアモルファス矩形鉄心自動成形方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来技術としては、特開昭63-241911号が知られている。この従来技術は、長方形のアモルファス薄板を一度丸巻して円形に成形し、その円形の中心部に枠をはめ込み、周囲から押しつぶし、矩形状に成形するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術においては、長方形のアモルファス薄板を一度丸巻して円形に成形し、その円形の中心部に枠をはめ込み、周囲から押しつぶして矩形状に成形するものであるため、アモルファス薄板に局部的にしわ(微小変形)や位置ずれが誘起されて、密着させて積層させたアモルファスの矩形鉄心を得ることが難しく、その結果変圧器の磁化特性が劣化して性能の低下が生じるという課題を有するものであった。
【0004】即ち、従来技術においては、局部的なしわ(微小変形)がなく、密着させて積層させた高性能のアモルファス矩形鉄心を作成しようとする課題については考慮されていなかった。
【0005】本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決すべく、高性能な変圧器のアモルファス矩形鉄心を自動的に成形し得るアモルファス矩形鉄心自動成形方法及び装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成するために、所定長さの伸展したアモルファス薄板を搬送して成形の中心形状を成す巻枠の上部に位置決めし、該位置決めされたアモルファス薄板を前記巻枠の上部にクランプし、その後前記巻枠の両側面に懸垂したアモルファス薄板の各部を巻枠の側面の各々について巻枠の上部から下部に向かって押し付けながら緩まないように巻き付けて各々の端を仮止めして巻枠の下部においてオーバラップさせることを積層数繰返し、前記巻枠にアモルファス矩形鉄心を成形するアモルファス矩形鉄心の成形方法である。
【0007】また本発明は、成形の中心形状を成す巻枠と、所定長さの伸展したアモルファス薄板を搬送して前記巻枠の上部に位置決めする搬送手段と、該搬送手段により位置決めされたアモルファス薄板を前記巻枠の上部にクランプするクランプ手段と、該クランプ手段によってクランプされて前記巻枠の両側面に懸垂したアモルファス薄板の各部を巻枠の側面の各々について巻枠の上部から下部に向かって押し付けながら緩まないように巻き付けて各々の端を仮止めして巻枠の下部においてオーバラップさせる巻付手段とを備え、前記巻枠に前記アモルファス薄板を積層数巻き付けてアモルファス矩形鉄心を成形するように構成したアモルファス矩形鉄心の成形装置である。即ち、本発明のアモルファス矩形鉄心自動成形装置は、成形素材である長方形アモルファス薄板の搬送ユニットと、巻枠ユニットと、ベースと、上部クランプユニットと、左右の巻付ローラユニットと、周囲押えユニットとこれらを制御する制御ユニットとから構成されている。搬送ユニットは、長方形アモルファス薄板複数枚を把持する把持手段と、把持確認手段と、把持手段ごと長方形アモルファス薄板を所定位置に移動する移動手段と、移動手段が正常に移動した事を検出する移動量計測手段とから構成されている。
【0008】
【作用】上記構成により、アモルファス矩形鉄心成形時において、アモルファス薄板を緩まない様に押し付けながら巻付ける軌道上をならわせ巻付ける方法をとるため巻付時の薄板間の緩みを防止することができると共に、ならい位置がローラの移動によりずれた後も順次周囲よりアモルファス薄板を押し付け固定する方法をとるため巻付完了後テープ仮止めに至る迄の間も緩みのない状態を確保することができる様になり、密着させて積層させた高性能のアモルファス矩形鉄心を自動的に成形することができる。
【0009】
【実施例】まず、本発明の対象とする製品であるアモルファス矩形鉄心について図2により説明する。即ち、図2R>2はアモルファス矩形鉄心斜視図及びオーバラップ部拡大図を示したものである。アモルファス矩形鉄心は、柱上変圧器の低損失化を意図し、変圧器内鉄心材料を従来使用してきた珪素鋼板からより効率の高いアモルファス材料にかえて実用化されたものである。その外観は図2に示す通りであって、アモルファス薄板12を矩形環状に巻上げ、オーバラップ部で組み合わされた状態で積層した形状である。これは、アモルファス素材が25μmと非常に薄いためにそのままでは積鉄心には適さないことから巻鉄心構造となり、しかもコイル有磁界長を大きくとり高電圧出力を得るために矩形構造となったものである。これを焼鈍した後、オーバラップ部を拡げて1次側と、2次側に巻コイル16L,16Rを装着し、その後オーバラップ部を閉じて接着等で固定し、変圧器を完成させるものである。1次側コイルに電圧を加え電流を流してやると1次側コイル16Lによって発生した誘発磁界により、2次側コイル16Rに電流が流れ始め、1次側と異った電圧を得ることができ、変圧器の特性が得られるものである。
【0010】以下、本発明のアモルファス矩形鉄心自動成形方法及び装置の実施例を図1〜図6に基づいて説明する。即ち、図1は本発明のアモルファス矩形鉄心自動成形装置の斜視図を、図2は対象製品であるアモルファス矩形鉄心斜視図〔コイル挿入時〕及びオーバラップ部拡大図を、図3はアモルファス薄板巻付け方法説明図を、図4はアモルファス矩形鉄心自動成形方法説明図を、図5はローラ軌跡計算図を、図6は周囲押えユニットを設けたアモルファス矩形鉄心自動成形装置を示したものである。
【0011】本発明のアモルファス矩形鉄心自動成形装置100は、成形素材である長方形アモルファス薄板12の搬送ユニット100aと、巻枠ユニット100dと、ベース100eと、上部クランプユニット100bと、左右の巻付ローラユニット100c,100'cと、周囲押えユニット110a,110b,120a,120bと、これらを制御する制御ユニット11とから構成されている。
【0012】搬送ユニット(搬送手段)100aは、所定の長さに切断された複数枚の長方形アモルファス薄板12の先導端を把持手段14で把持してレール上を移動させて長方形アモルファス薄板12の長さに応じて巻枠ユニット100dの上方まで搬送するものである。即ち、搬送ユニット100aは、制御ユニット11の動作指令を受け、所定位置にあった複数枚の長方形アモルファス薄板12を把持手段14により把持すると共に、該把持手段14を移動させる移動手段(図示せず)により巻付作業位置(巻枠ユニット100dの上方)まで把持手段ごとアモルファス薄板12を搬送移動する。その際、把持手段14内に内蔵されたセンサ(図示せず)により把持の確認が行われると共に、長方形アモルファス薄板12の長さに応じて制御ユニット11から指令される移動量に基づいて把持手段14を移動させる移動手段が制御され、巻枠ユニット100dの上方においてオーバラップ代を考慮したアモルファス薄板12の高精度位置決めを実現している。
【0013】巻枠ユニット(巻枠手段)100dは、矩形鉄心内周面と同一形状をした巻枠2と、該巻枠をベース100eに取外し可能に装着固定する巻軸1とで構成している。即ち巻枠ユニット100dは、巻枠2の外周面上を押し付けならいながらアモルファス薄板12を環状積層化して巻付け成形する芯となるものであり、巻軸(ベース結合部)1を介しベース100eに取外し可能に設置している。
【0014】上部クランプユニット100bは、搬送ユニット100aの把持手段14で搬送して位置決めされた複数枚の長方形アモルファス薄板12を、ベース100e上にあって巻枠ユニット100aの上部から巻枠ユニットに押し付けクランプするためのものである。即ち上部クランプユニット100bは、巻枠ユニット100dの上部のベース100e上に設けられていて、制御ユニット11の動作指令を受けクランプユニット100bが巻枠ユニット100d上のアモルファス薄板12を固定する。その際、クランプユニット100b内に内蔵するセンサによりクランプの確認を行い、制御ユニット11にその動作が終了したことを知らせている。
【0015】巻付ローラユニット(巻付ローラ手段)100c,100'cは、上部クランプユニット100bで巻枠ユニット100dの上部にクランプされ、垂れ下がった状態の複数枚の長方形アモルファス薄板12を、巻枠ユニット100dあるいは、既に巻枠ユニット100dに巻かれた状態の矩形鉄心に倣わせて張力を加えるように押し付けて緩むことなく巻付けるためのローラ3L,3Rの軌跡をX−Y−θ軸の3軸方向に移動しながら描くことのできるローラ移動制御手段(Xテ−ブル5L,5RとXテ−ブル駆動モ−タ6L,6RとYテ−ブル13L,13RとYテ−ブル駆動モ−タ15L,15Rとθテ−ブル7L,7Rとθテ−ブル駆動モ−タ8L,8R)を備えている。Yテ−ブル13L,13Rの各々は、y軸方向にガイド14L,14Rの各々に沿ってYテ−ブル駆動モ−タ15L,15Rの各々に接続された送りネジ19L,19Rの各々により移動できるように構成され、Yテ−ブル13L,13Rの各々の移動はYテ−ブル駆動モ−タ15L,15Rの各々によって制御される。θテ−ブル7L,7Rの各々は、Yテ−ブル13L,13Rの各々の上に回転できるように載置され、θテ−ブル駆動モ−タ8L,8Rの各々によりθテ−ブル7L,7Rの各々の回転量θが制御される。Xテ−ブル5L,5Rの各々は、θテ−ブル7L,7Rの各々に設けられたガイド20L,20Rの各々に沿ってx軸方向にXテ−ブル駆動モ−タ6L,6Rの各々に接続された送りネジ18L,18Rの各々により移動できるように構成され、Xテ−ブル5L,5Rの各々の移動はXテ−ブル駆動モ−タ6L,6Rの各々によって制御される。ローラ3L,3Rの各々は、Xテ−ブル5L,5Rの各々にx軸方向に微動できるように支持され、押し付けばね4L,4Rが取り付けられ、衝撃力がローラ3L,3Rの各々に印加されたとき逃げることもできるように構成されている。この押し付けばね4L,4Rのばね圧で押し付け力を付与しても良いことは明らかである。またYテ−ブル駆動モ−タ15L,15R、θテ−ブル駆動モ−タ8L,8R、およびXテ−ブル駆動モ−タ6L,6Rの夫れ夫れには、変位量を検出するエンコーダ17L,17R,21L,21Rが備えられている。
【0016】巻付ローラユニット100c,100'cは巻枠ユニット100dの左右両側よりアモルファス薄板を巻枠に押し付けならわすため、対となってベース100e上に設置されている。即ち巻付ローラユニット100c,100'cは、巻枠ユニット100dの上部に押し付け固定した後、アモルファス薄板12を巻枠ユニット100dの周上に各ローラ3L,3Rで押し付けならわせながら左右のローラ3L,3Rをオーバラップ代を考慮して、矩形状に巻き付ける働きをする。ローラ3L,3Rをならわせるべく軌跡を考慮して移動させるためにX−Y−θ軸方向を移動あるいは施回しうるローラ移動制御手段が設けられており、各軸に設置したエンコーダ17L,17R,21L,21R等のローラ軌跡計測手段でロ−ラ位置情報をフィードバック制御してローラ3L,3Rによる巻付け動作を行う。更に、巻き付けの際、緩みを生じさせることのない様に、ローラ3L,3Rを前記ローラ移動手段で巻枠2の上部から下部へと倣わせながら押し付けて巻き付け成形を行う。なお、巻枠2の巻き付けは、ローラ3L,3Rをローラ移動手段で算出された軌跡に従って移動させることにより得ることができる。即ち巻枠2の側面への巻き付けは、図3および図5に示すように、+θの角度を付与した状態で、x軸方向に押し付け力を付与してy軸方向に下降させることによって所定の押付け力を付与して緩みにない状態で成形することができる。巻枠2の下部においては、α:巻枠の円弧部(r部)のセンタとローラ3L,3Rの中心を結んだ線の水平線となす角、およびθ:水平線とx軸の軸心とのなす角を巻枠の側面部においては一定の値にして巻枠の下部に行くに従って順次変化させて付与し、後述する(数4)式および(数5)式に従って算出される軌跡をとるようにローラ3L,3Rのx軸およびy軸を制御することにより緩みにない状態で成形することができる。
【0017】周囲押えユニット(周囲押え手段)110a,110b,120a,120bは、図6に示すように、巻付ローラユニット100c,100'cにより巻枠ユニット100dに緩むことなく倣いながら巻付けられた複数枚のアモルファス薄板が、巻付ローラユニット100c,100'cの移動に伴い緩み始めるのを防止するためのものである。即ち複数ある周囲押えユニット110a,110b,120a,120bは、巻付ローラユニット100c,100'cによる巻枠ユニット100dの周上でのアモルファス薄板の巻付けを終了した後も緩みのない状態を確保するために、巻付ローラユニット100c,100'cのローラ3L,3Rの移動が済んだ個所から遂一巻枠ユニット100dの周上に巻かれたアモルファス薄板12の上を、巻付ローラユニット100c,100'cにより制御ユニット11の動作指令の後、押し付ける動作をする。複数ある押付け動作を遂一行ってゆくため、周囲押えユニット110a,110b,120a,120b内に内蔵されたセンサから押し付け動作状況を押付け確認信号として制御ユニット11に知らせている。
【0018】制御ユニット(制御手段)11は、図6に示すように、既知の値であるa:θ軸センタから巻枠2の円弧(r)のセンタまでの距離、b:巻枠2のセンタから巻枠円弧(r)のセンタまでの距離、c:巻枠2の直線部と円弧部(r部)の変曲点から巻枠円弧部(r)のセンタまでの距離、r:巻枠円弧部(r部)の曲率半径、R:ローラの曲率半径、X0:θ軸センタとX軸原点との距離、y0:巻枠センタとY軸原点との距離、α0:巻枠の直線部とR部の変曲点におけるαの角度が入力され、更にt:板厚、β:すきま厚が与えられ、α:巻枠の円弧部(r部)のセンタとローラ3L,3Rの中心を結んだ線の水平線となす角、およびθ:水平線とx軸の軸心とのなす角を巻枠の側面部においては一定の値にして巻枠の下部に行くに従って順次変化させて付与し、後述する(数4)式および(数5)式に従ってx軸およびy軸の制御量x,yを算出する軌跡算出部と、該軌跡算出部で算出されたx,y,θに基づいて、巻付ローラユニット100c,100'cを制御すると共に他のユニットについても制御するコントローラとから構成されている。そして制御ユニット11は、これらユニットを制御することにより、アモルファス矩形鉄心を自動成形することで、成形時発生しうる緩みを低減しそのばらつきを抑えると共に、タクト短縮を図ることで高性能なアモルファス矩形鉄心を成形可能とし、組立コスト低減を図ることができる。制御ユニット(制御手段)11は、これら各ユニットからの動作確認信号をもとに、コントローラ部により動作指令を与えると共に、ローラ軌跡を正しく算出してやるため軌跡算出部により矩形形状寸法及びアモルファス薄板枚数のデータから演算する働きをする。軌跡算出部より算出されたローラ軌跡データはコントローラ部に送られる。コントローラ部は、ローラ軌跡データをもとに巻付ローラユニット100c,100'cのX−Y−θ軸移動の制御を行う。
【0019】本発明におけるアモルファス矩形鉄心自動成形装置100は、以上の構成により自動的に、巻枠ユニット100d周上に巻付けるアモルファス薄板12の軌跡を考慮した上で巻付けるとともに、巻付け後も周囲を押えながらオーバラップ部にテープを仮固定して成形を行うことで、緩みのない巻付け成形を行うことができる。
【0020】アモルファス矩形鉄心は前述した様に巻鉄心構造であり、鉄心間にすき間があくなどの様に磁路に欠陥があると磁気損による変圧器の効率が低下してしまう。このため、アモルファス矩形鉄心を巻く時はすき間を作らない様にできる限り緩ませないことが必要になってくる。そして一層分を巻き付けた後はテープによる仮止めを行い、次の層を巻く際に緩まない様にしている。又、焼鈍後のアモルファス薄板12は若干巻きぐせは残るものの弾性変形が可能なため、コイル16L,16Rを挿入することができる。
【0021】アモルファス矩形鉄心は、一度矩形形状に複数枚を巻付けた状態にして一定方向の磁界を与えながら焼鈍した後、矩形端面を開放して1次側及び2次側の変圧器コイル16R,16Lを挿入し、これを再度閉じて接合する。そして、図2に示すようにアモルファス矩形鉄心では、開放する側の矩形端面にオーバラップ部を設けているから、巻付けの際のアモルファス薄板12の供給位置決めにおいてはこのオーバラップ代を十分考慮しておく必要がある。
【0022】以上、アモルファス矩形鉄心の成形は、オーバラップ代を考慮してアモルファス薄板12の位置決めを正確に行うとともに、緩むことのないように巻付けを行う必要がある。
【0023】次に、アモルファス矩形鉄心の一連の自動成形について図4に基づいて具体的に説明する。
【0024】搬送ユニット(搬送手段)100a(図4中に図示せず)は、図4(1)に示すように、各種長さのアモルファス薄板12を、巻枠ユニット100dへのオーバラップを考慮して搬送及び位置決めを行う。次に図4(2)に示すように、上部クランプユニット100bによる巻枠ユニット100dへの押付け固定を行い、搬送ユニット100aの把持手段14を開放してアモルファス薄板12端面を解放してやる。この時アモルファス薄板12は焼鈍前は非常に柔らかいから、重力の影響を受け下方にだれる。
【0025】次に制御ユニット11で算出された軌跡通りにローラ3L,3Rが移動するように、エンコーダ17L,17R,21L,21Rの各々から検出される変位量に基づいてYテーブル駆動モータ15L,15R、θテーブル駆動モータ8L,8R、Xテーブル駆動モータ6L,6Rの各々を制御して、図4(3)に示すように、左右の対となった巻付ローラユニット100c,100c'が左右同時に上部クランプユニット100b押付け部根元から巻枠ユニット100dの周上を動き、先端部のローラ3L,3Rを押し当てながらアモルファス薄板12の軌跡をならって巻き付け成形を行う。更にローラ3L,3Rは、ローラ押し付け手段である押しばね4L,4Rの一定圧縮力を加えた状態でアモルファス薄板12をならし、巻枠ユニット100dあるいは既にアモルファス薄板12を巻いたアモルファス矩形鉄心上に緩みなくアモルファス薄板12を巻付け成形し、緩みのない状態で巻付けが可能となる。
【0026】次に図4(4)に示すように、片側の巻付ローラユニット100′cから始端(オーバラップ部の下側にあたる部分)の巻付けを行いテープ20仮止め固定〔図中矢印方向〕を行う。同様にして図4(5)に示すように、反対側の巻付ローラユニット100cによる終端(オーバラップ部上側にあたる部分)の巻付けを行ってテープ20仮止め固定を行う。
【0027】以上図4(1)〜(5)の一連の動作を制御ユニット11の制御指令のもと自動的に所定積層数になるまで繰返し、図4(6)の様な巻付成形を終了する。
【0028】尚、図4(3)〜(5)の巻付け動作の最中にも、ローラ押付け位置の移動により緩みが発生する可能性があるため、ローラ移動に際し複数の巻枠ユニット100d周囲に配置された周囲押付けユニット100eによる緩み止めを行っている。
【0029】図6は、本発明の一実施例であるアモルファス矩形鉄心自動成形装置100において左肩,右肩,左側,右側の4方向からの周囲押付けユニット100a,110b,120a,120bを設けたものである。
【0030】これにより本実施例においては図4(3)に際しては左肩あるいは右肩の周囲押付けユニット110a,110bを作動させ、図4(4)に際しては4つの周囲押付けユニット100a,110b,120a,120bを作動させる。
【0031】次に、本発明の一実施例に用いたローラ軌跡算出方法について、図5により説明する。
【0032】移動に際しては、前述したようにX,Y,θ3軸移動するローラ移動手段であるDCモータの周期制御により行われる。
【0033】ローラ3Rの一定押付け力での巻付けを行うためには、ローラの正しい軌跡を知っておく必要がある。即ちローラ3Rはアモルファス薄板12の巻付けを1回行うたびに位置が変化するため、繰返しその位置を算出しながら移動を行う。
【0034】計算方法は、ローラ3Rの通るべき軌跡を数十ポイントに細かく分割し、なめらかな動きに対応できるようにする。そのポイントは、計算の難しくなる巻枠2下部の円弧の中心の水平からの角度αで表すのが望ましい。
【0035】また、θは、前述した第3図の動きにするため、あらかじめαの角度に対応したθの変化角度を考える。よって、あるαのポイントでのX,Yの指令値は次の式で表わされる。
【0036】
【数1】
r’=r+R+D (数1)
【0037】
【数2】
D =(t+D’)n−D’ (数2)
【0038】
【数3】
D’=(β/(90°−α0))(α−α0) (数3)
巻枠の側面においてはα=α0とする。
【0039】
【数4】
x =((a−r’・cosα)/cosθ)−x0 (数4)
【0040】
【数5】
y =y0−(b−c+r’・sinα−(a−r’・cosα)tanθ) (数5)
n :積層数D′:積層数の増加につれて巻枠の下部において角度変化に応じたすきま厚相当分D :積層数の増加につれて変化するローラ位置の増分a :θ軸センタから巻枠円弧部(r部)のセンタまでの距離b :巻枠のセンタから巻枠円弧部(r部)のセンタまでの距離c :巻枠の直線部と巻枠円弧部の変曲点から巻枠円弧部のセンタまでの距離r :巻枠円弧部の曲率半径α :巻枠円弧部のセンタとローラの中心を結んだ線の水平線となす角θ :水平線とx軸の軸心との成す角(巻枠の側面の場合、一定値)
0 :θ軸サンタとX軸原点との距離y0 :巻枠センタとY軸原点との距離t :板厚β :すきま厚α0 :巻枠の直線部と円弧部の変曲点におけるαの角度以上説明したように、巻枠の側面におけるローラの軌跡(x,y)はα=α0、θを一定の値にして(数4)式および(数5)式から算出することができる。
【0041】更に巻枠の下部においては、ローラの軌跡(x,y)は、αおよびθを変化させながら、(数4)式および(数5)式から算出することができる。このように制御ユニット11において算出された軌跡(x,y)の通りにローラ3L,3Rが移動するように、エンコーダ17L,17R,21L,21Rの各々から検出される変位量に基づいてYテーブル駆動モータ15L,15R、θテーブル駆動モータ8L,8R、Xテーブル駆動モータ6L,6Rの各々を制御することにより、巻枠ユニット100dあるいは既にアモルファス薄板12を巻いたアモルファス矩形鉄心上に緩みなくアモルファス薄板12を巻付け成形し、緩みのない状態で巻付けが可能となる。
【0042】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、アモルファス矩形鉄心成形時において、アモルファス薄板を緩まない様に押し付けながら巻付ける軌道上をならわせ巻付ける方法をとるため巻付時の薄板間の緩みを防止することができると共に、ならい位置がローラの移動によりずれた後も順次周囲よりアモルファス薄板を押し付け固定する方法をとるため巻付完了後テープ仮止めに至る迄の間も緩みのない状態を確保することができる様になり、緩みによって発生していた変圧器の性能低下を防止できる。更に、従来作業者の勘に依存していた緩みのばらつきを上記作業の自動化によりなくすことができ、製品の信頼性を向上することができる。また、巻付けの一連の協調動作を自動的にコントロールして行わせることで、作業効率を上げることができ、タクト短縮に伴う組立コスト低減を図ることが可能となる等効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアモルファス矩形鉄心自動成形装置の一実施例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係るアモルファス矩形鉄心斜視図(コイル挿入時)及びオーバラップ部拡大図である。
【図3】本発明に係るアモルファス薄板巻付けを説明するための図である。
【図4】本発明に係るアモルファス矩形自動鉄心成形方法を説明するための図である。
【図5】本発明に係るローラ軌跡を説明するための図である。
【図6】本発明に係る周囲押えユニットを設けたアモルファス矩形鉄心自動成形装置の一実施例を示した図である。
【符号の説明】
1…巻枠ユニットベース結合部(軸部)、 2…巻枠
100…本発明のアモルファス矩形鉄心自動成形装置、 100a…搬送ユニット、100b…上部クランプユニット、 100c…左巻付けローラユニット
100c’…右巻付けローラユニット、 11…制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】所定長さの伸展したアモルファス薄板を搬送して成形の中心形状を成す巻枠の上部に位置決めし、該位置決めされたアモルファス薄板を前記巻枠の上部にクランプし、その後前記巻枠の両側面に懸垂したアモルファス薄板の各部を巻枠の側面の各々について巻枠の上部から下部に向かって押し付けながら緩まないように巻き付けて各々の端を仮止めして巻枠の下部においてオーバラップさせることを積層数繰返し、前記巻枠にアモルファス矩形鉄心を成形することを特徴とするアモルファス矩形鉄心の成形方法。
【請求項2】成形の中心形状を成す巻枠と、所定長さの伸展したアモルファス薄板を搬送して前記巻枠の上部に位置決めする搬送手段と、該搬送手段により位置決めされたアモルファス薄板を前記巻枠の上部にクランプするクランプ手段と、該クランプ手段によってクランプされて前記巻枠の両側面に懸垂したアモルファス薄板の各部を巻枠の側面の各々について巻枠の上部から下部に向かって押し付けながら緩まないように巻き付けて各々の端を仮止めして巻枠の下部においてオーバラップさせる巻付手段とを備え、前記巻枠に前記アモルファス薄板を積層数巻き付けてアモルファス矩形鉄心を成形するように構成したことを特徴とするアモルファス矩形鉄心の成形装置。
【請求項3】前記巻付手段は、ローラ押付け手段を有することを特徴とする請求項2記載のアモルファス矩形鉄心の成形装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3191993号(P3191993)
【登録日】平成13年5月25日(2001.5.25)
【発行日】平成13年7月23日(2001.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−184959
【出願日】平成4年7月13日(1992.7.13)
【公開番号】特開平6−140269
【公開日】平成6年5月20日(1994.5.20)
【審査請求日】平成11年6月7日(1999.6.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−293605(JP,A)
【文献】特開 昭57−45215(JP,A)
【文献】特許3098570(JP,B2)