説明

アラキドン酸を有効成分とする抗疲労剤

【課題】 ヒトや動物等に対して安全で、したがって、継続摂取が可能であり、かつ疲労の予防及び/又は治療に有効である抗疲労剤及びそれを含む医薬組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 アラキドン酸、アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物、又はこれらの混合物を有効成分とする抗疲労剤及び医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、アラキドン酸、アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物、又はこれらの混合物を有効成分とする抗疲労剤、及び抗疲労作用を有する医薬組成物(機能性食品を含む)に関する。
【従来技術】
【0002】
疲労は、一般に疲労感、倦怠感を主症状とするが、その他睡眠障害や意欲低下など多彩な症状を伴う疾患である。疲労感や倦怠感は体の異常を知らせる重要なアラーム信号の一つであり、健常時でも激しい運動、長時間の労働を行った場合や過度のストレス状況におかれた場合などに、自覚するようになる。このような生理学的な疲労は通常、体を休めることにより元の正常な状態に回復し、長く続くことはない。1985年に行われた総理府の「健康に関する国民意識調査」では、約6割強の人が疲労を訴えているが、疲労を訴えている人の7割は「一晩の睡眠により疲労は回復する」と答えている。しかしながら、近年ではこの傾向が変わりつつある。1999年に行われた厚生省疲労調査研究班が実施した疫学調査によると、疲労を自覚している人の6割もの人が6ヶ月以上にわたって疲れを感じていることが報告されている。すなわち、1985年から1999年までの14年の間に、慢性的な疲労に悩む人が増加し、疲労の質が変化してきているのである(非特許文献1)。そして、最近では、慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome;CFS)なる疾患や、過労死が大きな社会問題となっている。しかし、疲労に関する原因、メカニズムは多種多様であり、多くの研究者により研究が行われているが、全体像の把握には至っておらず、また、慢性疲労症候群や過労死などの疲労を原因とする疾患の明確な治療または予防方法は確立されていない。
【0003】
最近では、いわゆる「抗疲労物質」と呼ばれる、疲労の軽減作用や、疲労から正常な状態への回復を早める作用などを有する物質が報告されている。例えば、ある種のアミノ酸組成物(特許文献1)や、L−カルニチンおよびヒスチジン関連ジペプチド(特許文献2)、サンザシ抽出物(特許文献3)などに体力増強作用があることが報告されている。また、運動等による体力の消耗や疲労時等における栄養補給を目的として、アスコルビン酸を含む栄養補給組成生物が有用であることが示されている(特許文献4)。
一方、アラキドン酸及びアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物は、脳機能の低下およびそれに伴う症状あるいは疾患の予防又は改善作用を有すること(特許文献5)や、日中活動量の低下および/又はうつ症状の改善作用を有すること(特許文献6)が、本出願人によって開示されている。
【0004】
このように、これらいずれの文献にもアラキドン酸又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物の経口投与による抗疲労作用については何ら示唆も開示もなされていなかった。
【特許文献1】特開平9−124473号公報
【特許文献2】特開2001−046021号公報
【特許文献3】特開平8−47381号公報
【特許文献4】特開平6−327435号公報
【特許文献5】特開2006−83136号公報
【特許文献6】特開2007−8861号公報
【非特許文献1】I.Shimizu,et al.:HEPATOLOGY,29(1)149(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ヒトや動物等に対して安全で、したがって、継続摂取が可能であり、かつ疲労の予防および/又は治療に有効である組成物、特に医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物の経口摂取により抗疲労作用(疲労の軽減作用および疲労回復の促進作用)が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は下記の内容に関する。
1. アラキドン酸、アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物又はこれらの混合物を有効成分とする抗疲労剤。
2. 成人一日あたりの投与量が、アラキドン酸換算で、10〜800mgである、上記1に記載の抗疲労剤。
3. 一週間以上の継続投与を特徴とする、上記1又は2に記載の抗疲労剤。
4. アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物が、アラキドン酸のアルコールエステル、又は構成脂肪酸の一部もしくは全部がアラキドン酸である、トリグリセリド、リン脂質又は糖脂質である上記1〜3のいずれか1項に記載の抗疲労剤。
5. 疲労状態を治療または予防するための、上記1〜4のいずれか1項に記載の抗疲労剤。
6. 経口剤である、上記1〜5のいずれか1項に記載の抗疲労剤。
7. 上記1〜6のいずれか1項に記載の抗疲労剤を含む、医薬組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抗疲労剤は、優れた疲労軽減、疲労回復の促進作用を有し、しかも、ヒトに対しても非ヒト動物に対しても安全であるので、継続投与が可能である。したがって、本発明の抗疲労剤は、機能性食品を含む医薬組成物として、広く適用可能である。
【発明の実施するため形態】
【0009】
(アラキドン酸、及びアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物)
本発明の抗疲労剤の有効成分はアラキドン酸であり、本発明の抗疲労剤には、遊離のアラキドン酸の他に、及びアラキドン酸を構成脂肪酸とするすべての化合物(本明細書中、これらを総称してアラキドン酸類という)を利用することができる。アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物としては、何ら限定されるものではなく、アラキドン酸塩(例えばカルシウム塩、ナトリウム塩など)や、アラキドン酸の低級アルコールエステル(例えばアラキドン酸メチルエステル、アラキドン酸エチルエステルなど)や、構成脂肪酸の一部又は全部がアラキドン酸であるトリグリセリド、リン脂質、糖脂質などを利用することができる。
【0010】
本発明の抗疲労剤の有効成分はアラキドン酸であるから、アラキドン酸含量の高いものを用いるのが好ましい。例えば、上記のアラキドン酸を含有するトリグリセリド(構成脂肪酸の一部又は全部にアラキドン酸を含有するトリグリセリドまたはそれを含む油脂と同義)としては、トリグリセリドを構成する全脂肪酸のうちアラキドン酸の割合が10重量(W/W)%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、最も好ましくは40重量%以上である油脂(トリグリセリド)を挙げられる。このようなアラキドン酸を含有するトリグリセリドは、例えば、アラキドン酸を含有する油脂(トリグリセリド)を生産する能力を有する微生物を培養することで工業的に製造することが可能であり、アラキドン酸を25質量%含有する微生物油(トリグリセリド95%以上含有)(SUNTGAR25、サントリー株式会社)や、アラキドン酸を40質量%含有する微生物油(トリグリセリド95%以上含有)(SUNTGAR40S、サントリー株式会社)の他、特開2003−48831号公報や特開2006−83136号公報やWO2003/004667号に記載されている方法及び条件により、アラキドン酸を含有する油脂(トリグリセリド)の生産能を有する微生物を培養して製造することができる。具体的に使用できる微生物、培養条件などはこれら文献を参照されたい。
【0011】
アラキドン酸含有油脂の生産菌の培養によって生産されるアラキドン酸を含有する油脂(トリグリセリド)中のアラキドン酸の割合を高める手だてとして、上記の文献に記載されているように培地炭素源濃度を制御する以外に、アラキドン酸含有油脂に選択的加水分解を行ってアラキドン酸高含有油脂を得ることもできる。この選択的加水分解に用いられるリパーゼはトリグリセリドの位置特異性はなく、加水分解活性は二重結合の数に比例して低下するため、高度不飽和脂肪酸以外の脂肪酸のエステル結合が加水分解される。そして、生じたPUFA部分グリセリド間でエステル交換反応が起こるなどして、高度不飽和脂肪酸が高められたトリグリセリドとなる(「Enhancement of Archidonic: Selective Hydrolysis of a Single-Cell Oil from Mortierella with Candida cylindracea Lipase」:J. Am. Oil Chem. Soc., 72, 1323, 1998)。
このように、アラキドン酸含有油脂に選択的加水分解を行って得たアラキドン酸を高含有する油脂(トリグリセリド)を本発明の有効成分とすることができる。本発明のアラキドン酸を含有する油脂(トリグリセリド)の全脂肪酸に対するアラキドン酸の割合は、他の脂肪酸の影響を排除する目的で高いほうが望ましいが、高い割合に限定しているわけではない。実際には、食品に適応する場合にはアラキドン酸の絶対量が問題になる場合もあり、10重量%以上のアラキドン酸を含有する油脂(トリグリセリド)であれば実質的には使用することができる。
(抗疲労作用及び抗疲労剤)
上記のアラキドン酸類をヒトおよび非ヒト動物に経口投与することにより、顕著な抗疲労作用が得られる。ここで、非ヒト動物とは、抗疲労の対象となる動物をいうが、中でも本発明の抗疲労剤は、疲労を知覚するヒト、産業動物、ペットおよび実験動物に用いられ、特にヒトに対して好適に用いられる。ここで、産業動物とは、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ等の家畜や競争馬、猟犬等を表し、ペットとはイヌ、ネコ、マーモセット、ハムスター等を表し、実験動物とはマウス、ラット、モルモット、ビーグル犬、ミニブタ、アカゲザル、カニクイザル等の医学、生物学、農学、薬学等の分野で研究に供用される動物を表す。本発明の抗疲労剤は、疲労を知覚するヒト、産業動物、ペットおよび実験動物に用いられ、特にヒトに対して好適に用いられる。
疲労とは、身体的あるいは精神的負荷を連続して与えたときにみられる一時的な身体的および精神的パフォーマンスの低下現象であり、パフォーマンスの低下は、身体的および精神的作業能力の質的あるいは量的な低下を意味する。また、本発明の「疲労」には、慢性疲労症候群や過労死をも含まれる。
【0012】
本発明における「抗疲労作用」、すなわち「抗疲労剤」としての効果は、上記疲労を減弱させる作用や疲労を回復させる作用をいい、具体的には、運動や作用した部位(脳を含む)の働きの持続時間を向上させること、および同じ運動量や作用量での疲労物質の増加を抑制すること(持久力向上・体力増強)、運動や作用した部位が疲労していないにもかかわらず脳や神経などが疲労感知状態になっていることを改善すること、ならびに運動や作用した部位の疲労状態を通常状態に回復することを促進する効果をいう。
【0013】
また、本発明の抗疲労剤が目的とする慢性疲労症候群とは、日常生活に支障を来すほどの長期的な全身疲労感、倦怠感、微熱、リンパ節腫脹、筋肉痛、関節痛、精神神経症状などの基本的な症状を意味する。本発明の抗疲労剤は、この慢性疲労症候群を処理、すなわち慢性疲労症候群の各症状を緩和し、正常な状態に移行させることができる。さらに、本発明の抗疲労剤が目的とする過労死とは、重度の過労状態にあり、身体的活力を保つことができないにも関わらず、疲労を十分に感じることができなくなり、その結果、脳血管疾患や心疾患を発症して永久的労働不能や死亡に至った状態を意味する。本発明の抗疲労剤は、慢性疲労症候群を処置することができ、それにより過労死を予防しうるものである。
【0014】
本発明の「抗疲労剤」としての効果は、例えば、水浸断眠試験における遊泳時間の測定により評価することができる。この試験は、水浸飼育のように、十分な睡眠や休息姿勢をとることができず、肉体的にも精神的にも休息できない環境で飼育されたマウスを用い、おもりを負荷させた状態で遊泳させ、限界水泳時間(例えば、最初に10秒以上鼻が水没してしまう、その水没時までの時間、又は、最終的に(再浮上しなくなるまで)鼻先が水没する、その水没時までの時間)を測定することにより、その疲労度を確認するものである。この動物モデルは肉体的及び精神的疲労モデルであるから、被験物質を投与することにより遊泳時間が延長されれば、身体的及び/又は精神的疲労が軽減されたこと、疲労状態のもとで身体的活力が維持されたこと(体力が増強されたこと)、持久力が向上したこと等、疲労に対する抵抗性があることが確認される。
【0015】
抗疲労剤としての効果は、上記の水浸断眠試験の他、強制運動試験における自発運動量の測定や、血中の疲労物質量の測定等によっても確認することができる。
本発明者らの検討の結果、アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物(特に、アラキドン酸を含有するトリグリセリド)を経口摂取させた場合に、上記の水浸断眠試験において、疲労に対する抵抗性があることが確認された。このことは、アラキドン酸が抗疲労剤としてはもちろんのこと、慢性疲労症候群の予防や治療、過労死の予防にも有用であることを意味する。
【0016】
本発明の抗疲労剤は、上記のとおり、これを服用することにより疲れにくくなり、また疲労回復にも効果がある。すなわち、スポーツなどの筋肉運動に際して肉体疲労を感じたときや計算作業等の連続作業に際して精神疲労を感じたときに服用して疲労の回復を図ることができるし、予め服用してから労働、スポーツなどを行うと疲労を予防することもできる。また、スポーツを行う前や途中で摂取することにより、持久力向上が期待できる。さらに、日常的に摂取することにより、精神的な疲労やそれに伴う疾患をも予防することができる。
【0017】
本発明の抗疲労剤は、医薬品や食品(機能性食品、健康補助食品、栄養機能食品、特別用途食品、特定保健用食品等の経口投与可能なもの)として使用できる。本発明の抗疲労剤は、包装、容器または説明書に有効成分の種類、剤の用途、持久力向上および抗疲労効果等の効能、および/または摂取方法を表示して用いてもよい。
【0018】
本発明の抗疲労剤を医薬品として使用する場合、アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を単独で、あるいは、薬理学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤等ととともに、液剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、丸剤等の剤形で経口投与できる。投与量や投与形態は、対象、病態やその進行状況、その他の条件によって適宜選択すればよいが、例えば、アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物としてアラキドン酸を含有するトリグリセリドを選択し、ヒト(成人)を対象に抗疲労作用を得ることを目的として経口投与する場合には、アラキドン酸量換算として、一般に、1日当たり10〜800mg、好ましくは50〜700mg、より好ましくは100〜500mg程度となるように、1日に1〜3回程度の頻度で連続投与するとよい。特に、一週間以上、好ましくは二週間以上の連続投与で抗疲労作用を得ることができる。なお、本発明者らは、マウスの疲労動物モデルを用いて検討した結果、アラキドン酸含有油脂を予め服用して精神的および肉体的疲労の軽減を図る場合には、10〜800mg/kg、好ましくは50〜700mg/kg、より好ましくは100〜500mg/kg程度を二週間連続して服用することで抗疲労作用が得られることを確認している。
【0019】
本発明の抗疲労剤を食品として使用する場合、その配合量は、アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物の種類などによって異なるが、例えば、アラキドン酸を含有するトリグリセリドを用いる場合には、アラキドン酸として0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上となるように配合する。
本発明の抗疲労剤には、アラキドン酸の効果を損なわない、すなわちアラキドン酸との配合により好ましくない相互作用を生じない限り、必要に応じて、他の生理活性成分、ミネラル、ビタミン、ホルモン、栄養成分、呈味料、香料、などの他の添加物を混合することができる。これらの添加物はいずれも一般的に医薬、食品に用いられるものが使用できる。
【実施例】
【0020】
以下実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1.アラキドン酸摂取による抗疲労作用(1)
被験物質となるアラキドン酸としては、SUNTGA40S(アラキドン酸48%含有油脂)を用いた。なお、SUNTGA40Sは、特開2003−48831号公報(実施例1)に記載の方法で製造したものである。
【0021】
水浸断眠試験により、疲労に対する効果を評価した。評価は、Tanakaらの方法(Neurosience, Let.352, 159−162, 2003)を一部改変した方法で実施した。被検動物としてBalb/c 系雄性マウス(5週齢)(日本エスエルシー株式会社より購入)を用い、1週間試験環境で馴化させた後、順調な発育を示した動物を試験に供した。平均体重が均等になるようにマウスを5群(各群6〜10匹)に群分けし、アラキドン酸含有油脂を添加した実験動物用標準飼料(AIN-93G飼料)で2週間飼育した。その後、4群(群2〜群5)は水浸断眠ストレス群として、床敷(ペーパーチップ)のかわりに水温23℃の水道水を水深7mmになるように飼育ケージに入れて飼育することにより、マウスを水浸断眠させた。水浸断眠中は、実験動物用標準飼料(AIN-93G飼料)を給餌し、群3〜群5の3群には前記のアラキドン酸含有油脂をオリブ油に溶解したものを、被験サンプルとして1日1回、2日間強制経口投与した(水浸飼育アラキドン酸群)。また、対照群(群2)には、オリブ油を強制経口投与した。残りの1群(群1)は、通常の床敷(ペーパーチップ)を敷いた飼育ケージで飼育し、1日1回、オリーブ油を強制経口投与した(通常飼育対照群)。
【0022】
水浸飼育又は通常飼育2日後、マウスの尾に体重の8%相当の重りをつけて水槽中(直径18cm、水深30cm)で遊泳させ、限界時間(最終的に(再浮上しなくなるまで)鼻先が水没する、その水没時までの時間)を測定した。水浸飼育群のマウスは通常飼育群のマウスよりも遊泳時間が短縮するが、被検サンプル(アラキドン酸)投与によって遊泳時間の短縮をどれだけ抑制できるかにより、疲労に対する効果を判定した。
【0023】
なお、表1のアラキドン酸量は、マウスが摂取したアラキドン酸含有油脂添加飼料の量から計算したアラキドン酸の一日摂取量およびマウスに投与したアラキドン酸含有油脂の投与量から計算したアラキドン酸の一日摂取量を記載している。
【0024】
【表1】

【0025】
結果を図1に示す。図1中、**はスチューデントt検定による危険率0.01%の有意差を示す。図1より明らかなとおり、水浸飼育対照群の遊泳時間は、通常飼育対照群にくらべて有意に短縮した。一方、被験サンプルとしてアラキドン酸224mg/kg、448mg/kg、896mg/kgを投与した群、特にアラキドン酸224mg/kg、448mg/kgを投与した群において、遊泳時間の短縮が抑制された。このことは、アラキドン酸の経口摂取により抗疲労作用が得られることを示唆している。
実施例2.アラキドン酸摂取による抗疲労作用(2)
各群9〜10匹となるよう表2のように3群にマウスを群分けしたこと以外は、実施例1と同様にして、アラキドン酸による抗疲労作用を測定した。ただし、実施例2での限界水泳時間としては、最初に10秒以上鼻が水没してしまう、その水没時までの時間を測定した。なお、表2におけるアラキドン酸量は実施例1と同様に計算した。
【0026】
【表2】

【0027】
結果を図2に示す。図2中、**はスチューデントt検定による危険率0.01%の有意差を示す。図2より明らかなとおり、水浸飼育対照群の遊泳時間は、通常飼育対照群にくらべて有意に短縮した。被験サンプルとしてアラキドン酸を摂取した群において遊泳時間の短縮抑制効果がみられ、アラキドン酸100mg/kg程度の摂取でも抗疲労作用が得られることが確認された。
実施例3.製剤例
(製剤例1: カプセルの調製)
ゼラチン100質量部及び食品添加物用グリセリン35質量部に水を加え50〜60℃で溶解し、粘度2000cpのゼラチン被膜を調製した。次にアラキドン酸含有油脂(SUNTGA40S)にビタミンE油0.05質量%を混合し、内容物を調製した。このゼラチン被膜と内容物を用いて、常法によりカプセル成形及び乾燥を行い、1粒当たり180mgの内容物を含有するソフトカプセルを製造した。
(製剤例2: 脂肪輸液剤の調製)
アラキドン酸含有油脂(SUNTGA40S)400g、精製卵黄レシチン48g、オレイン酸20g、グリセリン100g及び0.1 N 苛性ソーダ40mlを加え、ホモジナイザーで分散させたのち、注射用蒸留水を加えて4リットルとした。これを高圧噴霧式乳化機にて乳化し、脂質乳液を調製した。該脂質乳液を200mlずつプラスチック製バッグに分注したのち、121℃、20分間、高圧蒸気滅菌処理して脂肪輸液剤とした。
【0028】
(製剤例3: ジュースの調製)
β−シクロデキストリン2gを20%エタノール水溶液20mlに添加し、ここにスターラーで撹拌しながら、アラキドン酸含有油脂(SUNTGA40SにビタミンEを0.05質量%配合)100mgを加え、50℃で2時間インキュベートした。室温冷却(約1時間)後、さらに撹拌を続けながら4℃で10時間インキュベートした。生成した沈殿を、遠心分離により回収し、n-ヘキサンで洗浄後、凍結乾燥を行い、アラキドン酸含有トリグリセリドを含有するシクロデキストリン包接化合物1.8gを得た。この粉末1gをジュース500mLに均一に混ぜ合わせ、アラキドン酸含有トリグリセリドを含有するジュースを調製した。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1における、アラキドン酸摂取による抗疲労作用を示すグラフである。
【図2】実施例2における、アラキドン酸摂取による抗疲労作用を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラキドン酸、アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物又はこれらの混合物を有効成分とする抗疲労剤。
【請求項2】
成人一日あたりの投与量が、アラキドン酸換算で、10〜800mgである、請求項1に記載の抗疲労剤。
【請求項3】
一週間以上の継続投与を特徴とする、請求項1又は2に記載の抗疲労剤。
【請求項4】
アラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物が、アラキドン酸のアルコールエステル、又は構成脂肪酸の一部もしくは全部がアラキドン酸である、トリグリセリド、リン脂質又は糖脂質である請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗疲労剤。
【請求項5】
疲労状態を治療または予防するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗疲労剤。
【請求項6】
経口剤である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗疲労剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗疲労剤を含む、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−73747(P2009−73747A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243004(P2007−243004)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】