説明

アルカリ蓄電池のセパレータ構造

【課題】本発明は、効果的に極板の巻ずれの抑制が行えるアルカリ蓄電池のセパレータ構造を提供する。
【解決手段】本発明のセパレータ構造は、セパレータ3の極板1,2が配置される一側面に、当該極板の両側の辺部1a,2aと当接して、極板1,2を定位置に規制する規制部17を形成した。同構成により、セパレータ3上の極板1,2は、規制部17で、その動きが規制されるから、巻き取り時、たとえ極板1,2にずれを生じさせる力が加わっても、極板1,2は、ずれることはなく、当初の定位置に配置され続ける。つまり、巻きずれが抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極板を重ねたセパレータで構成されるアルカリ蓄電池のセパレータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電化製品や玩具等の市場においては、ニッケルカドミウム、ニッケル水素など単三形といた小形円筒状のアルカリ蓄電池が広く使用されている。
このようなアルカリ蓄電池には、引用文献1にも示されるように筒形の缶体内に渦巻状の電極群を収めた構造が用いられている。
【0003】
こうした小形のアルカリ蓄電池では、所定長さの帯板状のセパレータを用いて、渦巻状の電極群を構成したものがある。これには、帯板状のセパレータの一側面に、セパレータの外形より小さい極板を載せ、セパレータと共に極板を、渦巻状に巻回する手法を用いたものがある。これは例えば、ドラム形状の設備に正極極板、及び負極極板を載せたセパレータを巻芯(巻き付け部品)へ搬送し、巻芯とドラムの回転で、同巻芯の外周面に、負極極板を配置したままセパレータと、正極極板を配置したままセパレータとを層状に巻き付けて、渦巻状の電極群を構成するものである。
【0004】
ところで、こうした手法は、セパレータ上の極板がずれやすいため、巻き付け時、正極極板や負極極板が、セパレータに対してずれながら、巻芯に巻き付けられる、いわゆる巻きずれを生じることがある。
巻きずれが生じると、正極極板と負極極板とが向い合う対向面積が大きくばらつき、アルカリ蓄電池の容量や放電性などの特性が大きくばらついてしまう。また巻きずれにより、正極極板や負極極板の縁部がセパレータの縁部を越えて外側へ張り出すと、正極極板と負極極板とが導通、いわゆる短絡を生じさせてしまう。
【0005】
そのため、セパレータを追加してセパレータの巻き始め部や巻き終り部を延長したり、極板の外形を大幅に小さくしたりして、巻きずれに対処することが検討されている。しかし、極板の巻きずれの発生は、その都度、異なるため、その対策は十分ではない。
【0006】
そこで、正極ドラム、負極ドラムに可動式の爪部を設けて、セパレータ上の極板を上側(面)から押さえることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−340202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、セパレータの面を押える力は、極板に影響を与えない力であるため、極板は、セパレータが面方向に変位するおそれがあることは避けられず、爪部で押さえても、巻き付け時、極板の巻きずれが生じるおそれはある。
そこで、本発明の目的は、効果的に極板の巻ずれの抑制が行えるアルカリ蓄電池のセパレータ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、セパレータの極板が配置される一側面に、当該極板の両側の辺部と当接して、極板を定位置に規制する規制部を形成した。
同構成によると、セパレータ上の極板は、規制部により、動きが規制されるから、巻き取り時、極板にずれを生じさせる力が加わっても、極板は、ずれないで、当初の定位置に配置され続ける。
【0010】
請求項2の発明は、上記目的に加え、さらに簡単な構造ですむよう、規制部は、セパレータの一側面に、同セパレータの巻回方向に沿って、極板が嵌る溝部を形成してなり、溝部の壁面にて、極板の巻回方向と交差する両側の辺部を規制することとした。
請求項3の発明は、同じく規制部は、セパレータの一側面に、同セパレータの巻回方向と交差する方向にそって極板が嵌る溝部を形成してなり、当該溝部の壁面にて極板の巻回方向両側の辺部を規制することとした。
【0011】
請求項4の発明は、同じく規制部は、セパレータの一側面に、極板の全体が嵌る窪みを形成してなり、窪みの壁面にて、極板の各辺部を規制することとした。
請求項5の発明は、上記目的に加え、さらに電極群の各部のずれも併せて行えるよう、セパレータの他側面には、当該セパレータの他側面に配置される極板を定位置に位置決める位置決め部を有することとした。
【0012】
請求項6の発明は、上記目的に加え、さらに簡単な構造ですむよう、規制部は、セパレータの両側の縁部を折り返して、セパレータの両側に他のセパレータ部分より厚み寸法の厚い部分を形成してなり、当該折り返し部分で形成される壁面にて極板の両側の辺部を規制することとした。
請求項7の発明は、さらに極板の縁(外周)に残るばり(作製時の裁断ばりや搬送時の接触等により立つばりなど)がセパレータを貫通することを要因とした短絡も併せて抑えられるよう、折り返し部分およびその周辺のセパレータ部分の密度を、他のセパレータ部分よりも高くして、極板のばりがセパレータを貫通するのを抑えるようにした。
【0013】
請求項8の発明は、さらに特段の作業を必要とせずに密度を高められるよう、高い密度のセパレータ部分は、折り返し部分およびその周辺のセパレータ部分を所定形状に整形することにより形成されることとした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、セパレータの両側に形成した規制部により、セパレータ上の極板は、セパレータの動きが規制されることから、極板と共にセパレータが渦巻状に巻回される巻き取り時の際、たとえ極板にずれを生じさせる力が加わることがあっても、極板は、ずれないで、当初の定位置に配置され続ける。
【0015】
したがって、効果的に、巻き付け時における極板の巻ずれを抑制することができる。
よって、極板の対向面積のばらつきが抑制、さらには極板間の短絡が抑制され、均質な電池特性をもち、品質の優れたアルカリ蓄電池の電極群を得ることができる。
【0016】
請求項2〜4,6の発明によれば、簡単な構造で、極板の巻きずれを抑制することができる。
請求項5の発明によれば、電極群の各部のずれも併せて抑制することができる。
【0017】
請求項7の発明によれば、折り返し部分およびその周辺の密度を高めたことにより、極板の縁(外周)に残るばり(作製時の裁断ばりや搬送時の接触等により立つばりなど)のセパレータに対する貫通は抑えられ、当該ばりを要因とした短絡を防ぐことができる。
請求項8の発明によれば、特段の作業を必要とせずに、極板のばり貫通を抑える、密度の高くなった部分を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアルカリ蓄電池の電極群を説明する斜視図。
【図2】巻付機の概略構成を、電極群の形成手法と共に説明する正面図。
【図3】同巻付機の巻芯周りを拡大して示す図。
【図4】同電極群を構成するセパレータ構造を拡大して示す斜視図。
【図5】同セパレータ構造の断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るセパレータ構造の要部を拡大して示す斜視図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るセパレータ構造の要部を拡大して示す斜視図。
【図8】本発明の第4の実施形態に係るセパレータ構造の要部となる規制部並びに規制部が形成される工程を示す図。
【図9】同セパレータ構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図1ないし図5に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1は、本発明が適用されたアルカリ蓄電池、例えば単二形など小形のニッケル水素電池を示している。
【0020】
同ニッケル水素電池は、同図1(a),(b)に示されるように渦巻状の電極群4、具体的には正極活性物質(例えば水酸化ニッケル粒子)が充填された正極極板1(本願の極板に相当)と負極活性物質(例えば水素吸蔵合金)が充填された負極極板2(本願の極板に相当)との間に、絶縁性のセパレータ3を介在させ、これらを渦巻状に巻回した電極群4を、円筒状の缶体5内に収容し、同缶体5内にアルカリ電解液を注入して構成される。ちなみに、缶体5の上部中央には、正極極板1と導通する正極端子7が有り、缶体5の底部には、負極極板2と導通する負極端子8が有る。
【0021】
このニッケル水素電池の電極群4は、図2および図3に示されるような巻付機10を用いて、所定長さの帯板状のセパレータ3、同セパレータ3の外形より小さい帯板状の正極極板1、負極極板2(極板)を渦巻状に巻回させる手法で構成されている。
【0022】
同手法を説明すると、巻付機10には、例えば図2に示されるように巻付け部品となる、表面に凹凸部(図示しない)の有る細径の巻芯11を挟んで、片側に正極ドラム12を隣接配置し、正極ドラム12と反対側に負極ドラム13を隣接配置した構造が用いられる。正極ドラム12、負極ドラム13の複数個所、ここでは四箇所の地点には、部品配置部14がそれぞれ設けられる。
【0023】
電極群4の形成は、まず、図2のように正極ドラム12の部品配置部14にセパレータ3(帯板状)を配置し、同セパレータ3の上面(一側面)に正極極板1(帯板状)を載せ配置しておく。また負極ドラム13の部品配置部14は、同様にセパレータ3(帯板状)を配置し、同セパレータ3の上面(一側面)に負極極板2(帯板状)を載せ配置しておく。ちなみにセパレータ3の長さは、電池種類(例えば単一〜単五形など)より異なるが、ほとんどは20mm〜200mmであり、正極極板1、負極極板2の長さはそれより小さい。
【0024】
この状態から、図2に示されるように負極ドラム13は、矢印方向への回転により、負極極板2を載せたセパレータ3を巻芯11へ搬送する。セパレータ3の搬送方向前側の端部は、巻芯11へ至る直前で、返し部材(図示しない)により、負極極板2の端を包むように折り返される(図3)。
【0025】
ここで、巻芯11は、負極ドラム13と同期して回転していて、図3に拡大して示されるように負極極板2とセパレータ3が、巻芯11の上方から、巻芯11と負極ドラム13間に挟み込まれ、凹凸により巻芯11の外周面に、層状に巻き付けられる(負極極板2が内側、セパレータ3が外側)。
【0026】
正極ドラム12上の正極極板1、セパレータ3も、矢印方向への回転により、巻芯11へ搬送される。セパレータ3の搬送方向前側の端部は、巻芯11へ至る直前で、上記同様、返し部材(図示しない)により、正極極板1の端を包むように折り返される。続いて、正極ドラム10の正極極板1、セパレータ3は、極板同士が向き合うタイミングで、巻芯11の下方から、巻芯11上のセパレータ3と正極ドラム12との間に挟み込まれ、先に巻き付けた巻芯11上のセパレータ3に、層状に巻き付けられる(正極極板1が内側、セパレータ3が外側)。
【0027】
これにより、巻芯11には、同巻芯11を挟み込むように正極ドラム12側の正極極板1とセパレータ3、負極ドラム13側の負極極板2とセパレータ3の双方が層状に巻き付けられ、図1(b)に示されるような渦巻状の電極群4が構成される。電極群4は、正・負極ドラム12,13の部品配置部14毎に形成される。この電極群4が、巻芯11から取り外され、例えばほぐれないように巻き止めテープ(図示しない)で固定した後、缶体5内に挿入される。
【0028】
こうした巻き付けの際、正極極板1、負極極板2は、セパレータ3上に配置(載置)されたまま、巻芯11に巻き付けられるため、セパレータ3の幅方向に対して、ずれやすい。特に正極極板1は、巻き始めからセパレータ3に巻き付くため、ずれを伴いやすい。
【0029】
そこで、極板12、13が配置されるセパレータ3には、巻きずれを抑える手立てが講じられている。
これは、図1に示されるようにセパレータ3の正・負極極板1,2が配置される一側面に、当該極板1,2の両側と辺部と当接して、正・負極極板1,2を定位置(当初に定めた位置)に規制する規制部17を形成したものである。
【0030】
具体的には、図4および図5に示されるような規制部17が用いられている。
すなわち、規制部17は、各セパレータ3の正極極板1,負極極板2が配置される一側面の全体に、それぞれ同セパレータ3の巻回方向(=長手方向)に沿って、正極極板1、負極極板2が嵌る溝部18を形成してなる。つまり、セパレータ3の一側面の幅方向両側(巻回方向と交差する方向の両側)に形成される溝部18の壁面18a(壁部)により、正極極板1、負極極板2の幅方向両側(巻回方向とは交差する幅方向両側)の辺部1a,2aを規制にして、正・負極極板1,2が所定の定位置に位置決められるようにしたものである。
【0031】
ここでは、溝部18の形成には、セパレータ3に圧延や熱処理を施して、セパレータ3の一側面を凹形にする手法が用いられている。この成形では、溝部18の深さは、セパレータ3の厚み寸法に対して、20%〜70%が好ましい。
【0032】
こうした両側の壁面18aにより、極板1,2を幅方向から規制する構造は、正極極板1や負極極板2を配置する際の位置ずれが抑えられるだけでなく、搬送中や巻き取り中も、セパレータ3上の正極極板1や負極極板2の幅方向(巻回方向と交差する方向)の動きが規制される。そのため、巻芯11へ巻き付ける工程の際、たとえ正極極板1や負極極板2にずれを生じさせるような力が加わり変位しようとする挙動が生じても、当該正極極板1や負極極板2は、幅方向両側の辺部1a,2aが壁面18aとの当接により規制され、ずれることはない。つまり、セパレータ3上の正極極板1、負極極板2は、定めた定位置に配置され続ける。
【0033】
したがって、効果的に正・負極極板1,2の巻ずれを抑制することができる。それ故、極板1,2の対向面積のばらつきは抑制、さらには正・負極極板1,2間の短絡は抑制され、均質な電池特性をもつ、品質の優れた電極群4が提供できる(図1)。特にこの手立ては、予めセパレータ3の側面に溝部18を形成するだけでよく、簡単な構造ですむ。
【0034】
図6は、本発明の第2の実施形態を示す。
本実施形態は、第1の実施形態の変形例で、第1の実施形態のように溝部をセパレータの長手方向に沿って形成したのではなく、セパレータ3の巻回方向(長手方向)とは交差する方向、すなわち幅方向に沿って、極板1,2の嵌る溝部19を形成したものである。
【0035】
つまり、溝部19の両側の壁面19aにより、正・負極極板1,2のセパレータ3の巻回方向両側の辺部、すなわちセパレータ3の巻き始めの端の辺部1b、2b、巻き終りの端の辺部2c(正極板については図示せず)の双方を規制して、正・負極極板1,2のずれが生じないようにした。このような規制部17でも、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0036】
また、詳細には図示していないが、図4中の二点鎖線αのように溝部18の両端側にも壁部21を形成し、溝部18と協同して、セパレータ3の正・負極極板1,2が配置される側面に、極板全体が嵌る窪み22を形成して、極板1,2の各辺部(両側の各四辺)を規制する構造としてもよい。このようにしても第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0037】
図7は、本発明の第3の実施形態を示す。
本実施形態は、セパレータ3の正・負極極板1,2が配置される反対側の側面(他側面)に、極板の動きを規制する位置決め部、例えば溝部24を形成して、同溝部24の壁面24aにて、隣接する極板とのずれを抑えるようにしたものである。
このようにすると、渦巻状に巻回した電極群4の各部のずれも併せて抑制できる。
【0038】
図8および図9は、本発明の第4の実施形態を示す。
本実施形態は、図8(a)〜(d)に示されるように規制部17として、セパレータ3の巻回方向(長手方向)とは交差する方向の縁部、すなわち幅方向両側の縁部を内側へセパレート3と重なり合うように折り返して(U字状)、セパレータ3の幅方向両側に、他のセパレート部分より厚み寸法の厚い部分を形成したものである。すなわち、厚い部分をなす折り返し部分26の先端部で形成される壁面26aにて、正極極板1(あるいは負極極板2)の幅方向両側の辺部1a(あるいは2a)を規制するようにしたものである。同規制部17は、先の実施形態と同様、セパレータ3の長手方向両側に形成しても構わない。
【0039】
さらに本実施形態の規制部17は、極板1,2の外周(縁)に残るばり(図示しない)を要因とした極板の短絡を防ぐことも行っている。すなわち、極板の短絡は、巻ずれによるだけでなく、極板1,2の外周(縁)に残るばり(図示しない)を要因として生じる場合も多い。具体的には、正極極板1(あるいは負極極板2)の縁(外周)は、作製時における裁断ばりや搬送時の接触等により立つばりなど、微細なばり(図示しない)が残ることがある。この正極極板1(あるいは負極極板2)のばりは、セパレータ3を貫通して、隣接した極板(負極極板)と触れ、短絡を生じさせるおそれがある。
【0040】
そこで、本実施形態には、折り返し部分26およびその周辺のセパレータ部分の密度を他のセパレータ部分の密度よりも高くして、正極極板1(あるいは負極極板2)のばりがセパレート3を突き抜け難くする工夫が施されている。この密度を高めるに際し、面倒な作業が強いられたりするが、これを避けるために、折り返した部分を所定の形状に整形する工程を用いて、折り返し部分26およびその周辺のセパレータ部分の密度を高くする工夫も施されている。図8(a)〜(d)には、その密度を高める構造やその密度を高めるための工程が示されている。
【0041】
折り返し部分26(規制部17)が整形されるまでの工程を説明すると、まず、図8(a),(b)に示されるように帯板状のセパレータ3の幅方向の縁部を折り返す。
具体的にはセパレータ3には、折り返しが可能な0.8〜2.0mmの範囲の厚み寸法が用いられている。そして、図示しない折り返し機器を用いて、同セパレータ3の縁部を、先端が正極極板1(あるいは負極極板2)の辺部が配置される地点よりも内側に配置されるように折り返す(U字状)。このときの折り返す部分となるセパレータ3の目付範囲は30〜100g/m2が好ましい。
【0042】
その後、図8(c)に示されるよう例えば二種類の整形具29,31を用いて、折り返しにより厚み寸法の厚くなった部分およびその周辺のセパレータ部分を、熱および圧力を加えながら所定の形状に整形する。
ここでは、例えばL形の整形部28を有する整形具29、例えば折り返し部分26の端側の整形面28aを他の整形面28bよりも下方に突出させた段差形の整形部29を用いて、厚み寸法の厚くなった部分を、重なる方向(ここでは上下方向)から加熱しながら挟み付ける(加圧)。と共に、例えば平坦な整形部30を有する整形具31を用いて、厚み寸法の厚くなった部分を、側方(ここでは右方向)から加熱しながら押圧する(加圧)。
【0043】
これにより、図8(d)中の二点鎖線に示されるように正極極板1(あるいは負極極板2)の辺部の配置される折り返し部分26の先端部は、整形面28aで行われる加熱・加圧により、当初のセパレータ3の厚み寸法まで整形が施され、他の折り返し部分26は、同じく整形面28aで行われる整形面28bにて、土手状に整形が施される。さらに整形部30で行われる加圧・加熱により、土手状となった部分が所定の形状に整形される。
ちなみに整形は、加熱、加圧によるだけでなく、超音波などの媒体を用いて所定形状に整形してもよく、この超音波を用いた整形でセパレータの密度を高めるようにしてもよい。
【0044】
この整形工程により、図9中のクロスハッチング域で示されるように正極極板1(あるいは負極極板2)の幅方向両側の辺部1a(あるいは2a)が配置される折り返し部分26(土手状の規制部17)、およびその周辺のセパレータ部分、具体的には正極極板1(あるいは負極極板2)の辺部が配置されるセパレータ部分の密度は、正極極板1(あるいは負極極板2)の縁に生じるばりがセパレート3を突き抜け難いとされる密度、例えば元のセパレータ3の密度に対し130〜180%まで高められる。
【0045】
これにより、面倒な作業となる特段の作業を用いずに、正・負極極板1,2の巻ずれを抑制する規制部17の簡単な整形工程を流用して、正極極板1(あるいは負極極板2)に生じるばりの貫通を要因とした極板短絡を防ぐことができる。
むろん、密度を高める構造は、セパレータ3は長手方向両側を折り返す構造にも流用しても構わない。
但し、図6ないし図9において、第1の実施形態と同じ部分には同一符号を付してその説明を省略した。
【0046】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば上述した実施形態では、規制部は、溝部や窪み部や折り返し部分から形成した例を挙げたが、これに限らず、他の構造を用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1,2 正極極板,負極極板(極板)
3 セパレータ
4 電極群
11 巻芯
18,19,22 溝部,窪み(規制部)
24 溝部(位置決め部)
26 折り返し部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの帯板状のセパレータの一側面に、同セパレータより外形が小さい帯板状の極板を配置してなり、前記セパレータを前記極板と共に渦巻状に巻回することにより渦巻状の電極群が形成可能なアルカリ蓄電池のセパレータ構造であって、
前記セパレータの前記極板が配置される一側面に、当該極板の両側の辺部と当接して、前記極板を定位置に規制する規制部を形成した
ことを特徴とするアルカリ蓄電池のセパレータ構造。
【請求項2】
前記規制部は、前記セパレータの一側面に、同セパレータの巻回方向に沿って前記極板が嵌る溝部を形成してなり、当該溝部の壁面にて前記極板の巻回方向と交差する両側の辺部を規制することを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池のセパレータ構造。
【請求項3】
前記規制部は、前記セパレータの一側面に、同セパレータの巻回方向と交差する方向に沿って前記極板が嵌る溝部を形成してなり、当該溝部の壁面にて前記極板の巻回方向両側の辺部を規制することを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池のセパレータ構造。
【請求項4】
前記規制部は、前記セパレータの一側面に前記極板の全体が嵌る窪みを形成してなり、当該窪みの壁面にて前記極板の各辺部を規制することを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池のセパレータ構造。
【請求項5】
前記セパレータの他側面は、当該セパレータの他側面に配置される極板を定位置に位置決める位置決め部を有することを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池のセパレータ構造。
【請求項6】
前記規制部は、前記セパレータの両側の縁部を折り返して、前記セパレータの両側に他のセパレータ部分より厚み寸法の厚い部分を形成してなり、当該折り返し部分で形成される壁面にて前記極板の両側の辺部を規制することを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池のセパレータ構造。
【請求項7】
前記折り返し部分およびその周辺のセパレータ部分は、他のセパレータ部分よりも密度が高くしてあることを特徴とする請求項6に記載のアルカリ蓄電池のセパレータ構造。
【請求項8】
前記高い密度のセパレータ部分は、前記折り返し部分およびその周辺のセパレータ部分を所定形状に整形することにより形成されることを特徴とする請求項7に記載のアルカリ蓄電池のセパレータ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−62227(P2013−62227A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15224(P2012−15224)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(510206213)FDKトワイセル株式会社 (36)
【Fターム(参考)】