説明

アルカリ電池用電極の加工方法、および加工装置

【課題】 電池用電極の切断面に突出して(食みだして)いる金属繊維などを容易に、かつ品質低下の恐れもなく除去することが可能な電池用電極の加工方法および加工装置の提供。
【解決手段】 加工方法の発明は、金属繊維もしくは金属箔を集電体として含むシート状のアルカリ電池用電極を切断・分離する工程と、前記切断、分離したアルカリ電池用電極2を厚さ方向に加圧する工程と、前記加圧処理したアルカリ電池用電極2の切断・分離面2c,2dを、たとえば研磨具3,3′研磨し、切断・分離面2c,2dに発生したバリを除去する工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属繊維もしくは金属箔を集電体として含むアルカリ電池用電極(電池用電極板)の切断面に突出している集電体を成す金属繊維などを除去する加工手段に関する。
【0002】
【従来の技術】シート状正極、シート状絶縁体、シート状負極およびシート状絶縁体の積層体をスパイラル状に巻装して成る電極要素を、外装容器内に液密に封装した構成のニッケル水素電池、もしくはニッケルカドミウム電池などが広く実用に供されている。ところで、前記アルカリ電池の電極要素の構成においては、たとえば径10〜30μm 程度の微細なニッケル繊維(ニッケルフェルト系繊維)などの金属繊維、あるいは厚さ20〜 100μm 程度の金属箔を集電体とするシート状(テープ状)電極が使用されている。特に、金属繊維を集電体とすると、微細な多孔質体が電極活物質を多量に担持し易い。また、担持した電極活物質の脱落も起こり難いので、アルカリ電池の高性能化もしくは長寿命化への寄与が期待されるからである。
【0003】そして、この種のアルカリ電池用電極は、担持する活物質はもとより、集電体として含む金属繊維もしくは金属箔を、たとえばカッターによる切断・分離で、所定寸法もしくは所要形状に加工されている。すなわち、シート状の電池用電極は、その量産性などを考慮し、たとえば4〜10条の所定幅ら切断分離し、所要の電池用電極を得ることができる帯状の集電体面に、(a) ニッケル化合物を含む正極活物質層を設けたもの、(b) CaCu5 型の結晶構造を有する水素吸蔵合金を含む負極活物質層を設けたものを製造する。
【0004】ここで、シート状の電池用電極は、電池容量の向上ないし電池のコンパクト化のため、その厚さを成るべく薄くし、捲装の緊迫度を上げられるようにしている。
【0005】次いで、これらのシート状の電池用電極を所定の幅、長さに切断・分離するという加工が施される。その後に、前記切断・分離したシート状の電池用電極間に、電解液(質)担持層を介在させて捲回して作製した電極要素部を、電池外装容器内に液密に封装してアルカリ電池を構成している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記切断加工されたアルカリ電池用電極は、実用上、次ぎのような問題がある。すなわち、アルカリ電池用電極の加工が、カッター切断で行われた場合、電池用電極の切断面に、ニッケル繊維などの集電体の切断面が部分的に突出し(食みだし、バリ)・残存して、電池機能を損なう恐れが認められる。この点、さらに言及すると、たとえばニッケルフェルト系繊維などの金属繊維は、一般的に径が10〜30μm 程度と細く、かつ柔らかいので、また、金属箔の場合も厚さが薄いので、切断面に金属繊維が食みださない状態に、切断加工することが事実上至難である。そして、結果的には、スパイラル状に巻装して電極要素を構成するとき、切断加工された電池用電極の切断面に突出し(食みだし)している金属繊維などが、隣接配置される絶縁シートを突き抜け、他の電極に接触するなど、電池内部で絶縁不良を起こす恐れがある。
【0007】こうした懸念から、電池用電極の切断面に食みだす金属繊維などを、たとえば放電処理などで除去することも試みられている。すなわち、切断・分離した電池用電極に一定の電位を与える一方、対応する電極を切断・分離面に近接し放電を起こさせ、この放電によって食みだす金属繊維などを溶断・除去する手段が知られている。
【0008】しかし、この放電処理手段は限界があり、実用上、十分満足し得る手段といえない。たとえばニッケル水素電池用の負極は、集電体に水素吸蔵合金を含む活物質層を担持しているため、放電処理の過程で発火する危険性がある。ここで、発火の危険性は、作業性ないし作業環境を悪化するだけでなく、品質ないし歩留まりの低下を招来する。
【0009】本発明は上記事情に対処してなされたもので、電池用電極の切断面に突出して(食みだして)いる金属繊維などを容易に、かつ品質低下の恐れもなく除去することが可能な電池用電極の加工方法および加工装置の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、金属繊維もしくは金属箔を集電体として含むシート状のアルカリ電池用電極を切断・分離する工程と、前記切断、分離したアルカリ電池用電極を厚さ方向に加圧する工程と、前記加圧処理したアルカリ電池用電極の切断・分離面を研磨し、切断・分離面に発生したバリを除去する工程と、を有することを特徴とするアルカリ電池用電極の加工方法である。
【0011】請求項2の発明は、金属繊維もしくは金属箔を集電体として含み、かつ切断・分離したシート状のアルカリ電池用電極を走行させる走行機構と、前記走行機構の側面に沿わせて対向・配置され、走行機構を走行するアルカリ電池用電極の切断・分離面を研磨する研磨具と、前記研磨具をアルカリ電池用電極の切断・分離面に対して進退させる研磨具進退機構と、前記研磨具をアルカリ電池用電極の切断・分離面に対する押圧を調整する押圧調整機構と、を具備して成ることを特徴とするアルカリ電池用電極の加工装置である。
【0012】請求項1および2の発明において、被加工体となる電池用電極は、1枚のシート状の電池用電極、たとえばニッケル水素電池用の正・負極シート、ニッケルカドミウム電池用の正・負極シートなどを、複数条に切断・分離して複数化された電池用電極で、集電体が電極活物質層を担持した構成のものである。
【0013】請求項1および2の発明において、切断・分離された電池用電極の切断・分離面を研磨して、その切断・分離面に突出した集電体系のバリを除去する研磨手段は、たとえば目の細かい綾目の工具用ヤスリ(たとえば呼び寸法 200,上目数56,JIS B 4703)、目の細かい(# 200〜#1000程度)ダイヤモンド砥石ないしダイヤモンドベルトなどを研磨具としたものである。
【0014】ここで、研磨手段による研磨は、被加工体である電池用電極の材質、厚さ、構成などによっても異なるが、一般的に、500g〜2000g 程度の押圧力に設定すれば十分である。
【0015】請求項1の発明では、被加工体(電池用電極)の切断面に突出・食みだした微細な金属繊維などが、その切断面に適切に押圧される研磨具で研磨・除去される。すなわち、微細な金属繊維などが突出・食みだした切断面は、適正な機械的処理条件で研磨されるため、突出・食みだした金属繊維など容易に、かつ確実に除去される。しかも、この処理は、純機械的であって、発火などの危険性がない状態で行われるので、良好な作業性、歩留まりも確保される。
【0016】請求項2の発明では、請求項1の発明に係る加工方法を定常的に実施することが可能で、信頼性の高い電池用電極を量産的に、かつ歩留まりよく加工できる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図1および図2を参照して実施例を説明する。
【0018】図1は実施例に係る加工装置の要部構成を示す斜視図、図2は被加工体とした電池用負電極の要部構成を示す断面図である。図1において、1は金属繊維もしくは金属箔を集電体として含み、かつ切断・分離したシート状のアルカリ電池用負電極2を走行させる走行機構である。
【0019】ここで、走行機構1は回転ローラ1a,1b対であり、ほぼ一定の間隔をおいて複数対が設置され、アルカリ電池用負電極2をガイドを兼ねながら一定の方向に走行させる。なお、アルカリ電池用負電極2は、図2に示すように、厚さ45μm のニッケルメッキ鋼板(金属箔)2aの両主面に、CaCu5 型の結晶構造を有する水素吸蔵合金を含む負極活物質層2bを設けて成る厚さ 0.3mm程度、幅60mm程度のテープ状に切断されたものである。
【0020】また、3,3′は前記走行機構1の側面に沿わせて対向・配置され、走行機構1を走行するアルカリ電池用負電極2の切断・分離面2c,2dを研磨する研磨具、4,4′は前記研磨具3,3′をそれぞれ保持する保持具である。
【0021】ここで、研磨具3,3′は、研磨面が細か目の綾目に形成された工具用ヤスリであり、この工具用ヤスリ3,3′は、挟着的な保持具4,4′によって、それぞれ保持され、かつ所定の間隔をおいて対向配置されている。なお、保持具4,4′は、図示を省略してある研磨具進退機構によって、適宜、方向・位置を変更調節できるようになっている。
【0022】さらに、5は前記保持具4,4′間に架張され、保持具4,4′に保持された研磨具3,3′が、アルカリ電池用負電極2の切断・分離面2c,2dを押圧する力を調節する押圧調整機構である。ここで、押圧調整機構5は、たとえばスプリング、その他の弾発手段、エアーシリンダーなどであるが、構造ないしコストなどの点で、スプリング方式が望ましい。
【0023】次に、前記構成の加工装置による加工例を説明する。
【0024】先ず、図示していない裁断・分離機構において、厚さ45μm のニッケルメッキ鋼板(金属箔)2aの両主面に、CaCu5 型の結晶構造を有する水素吸蔵合金を含む負極活物質層2bを設けて成る厚さ 0.3mm程度、幅 500mm程度のシート状のニッケル水素電池用負電極を切断・分離して、幅60mm程度のテープ状電極を作製する。その後、幅60mm程度に切断・分離したテープ状電極は、圧着ローラ間を通過させられ圧着処理が行われた。このとき、テープ状電極2の切断・分離面2c,2dには、前記切断・分離によって生じた金属箔2a系の細かいバリなどが認められた。
【0025】次いで、前記加圧処理したアルカリ電池用負電極2を走行機構1に移載し、所定の方向に、たとえば約10 m/min.の速度走行させる。この段階で、工具用ヤスリ3,3′を挟着的に保持している保持具4,4′のスプリング5によって、走行するアルカリ電池用負電極2の両切断面2c,2dに、前記工具用ヤスリ3,3′が約1000 gの力で押圧・対接するように調製する。
【0026】このような条件設定で、アルカリ電池用負電極2の両切断面2c,2dを研磨したところ、前記切断・分離面に発生・残存していたバリが確実に除去され、切断面2c,2dは、いずれも良好な平坦面を成していた。つまり、こうし上記加工処理したテープ状のアルカリ電池用負電極2を、テープ状のアルカリ電池用正電極およびテープ状のセパレーターとを緊迫に捲装し、電極要素を作製した場合、電極間の短絡発生の恐れがない信頼性の高い電極要素、強いてはアルカリ電池を歩留まりよく製造できる。
【0027】なお、本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲でいろいろの変形を採り得る。たとえば、アルカリ電池用電極はニッケル水素電池に限らず、ニッケルカドミウム電池の場合でもよく、また、シート状の負極に限らず、シート状の正極などの場合にも適用し得るし、集電体が金属繊維ないしニッケルフェルト系の場合であっても同様に行い得る。
【0028】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、適正な機械的処理条件により、研磨被加工体(電池用電極)の切断面に突出・食みだした微細な金属繊維などが容易に、かつ確実に除去される。しかも、その処理は、発火などの危険性がない状態で行われるので、良好な作業性、歩留まりも確保される。
【0029】請求項2の発明によれば、上記作用効果を呈する加工方法が、定常的に実施できるので、信頼性の高い電池用電極を量産的に、かつ歩留まりよく提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係るシート状のアルカリ電池用電極の加工装置の要部構成例を示す斜視図。
【図2】シート状のアルカリ電池用負電極の要部構成を示す断面図。
【符号の説明】
1(1a,1b)……走行機構
2……テープ状のアルカリ電池用負電極
2c,2d……切断・分離面
3,3′……研磨具
4,4′……保持具
5……押圧調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属繊維もしくは金属箔を集電体として含むシート状のアルカリ電池用電極を切断・分離する工程と、前記切断、分離したアルカリ電池用電極を厚さ方向に加圧する工程と、前記加圧処理したアルカリ電池用電極の切断・分離面を研磨し、切断・分離面に発生したバリを除去する工程と、を有することを特徴とするアルカリ電池用電極の加工方法。
【請求項2】 金属繊維もしくは金属箔を集電体として含み、かつ切断・分離したシート状のアルカリ電池用電極を走行させる走行機構と、前記走行機構の側面に沿わせて対向・配置され、走行機構を走行するアルカリ電池用電極の切断・分離面を研磨する研磨具と、前記研磨具をアルカリ電池用電極の切断・分離面に対して進退させる研磨具進退機構と、前記研磨具をアルカリ電池用電極の切断・分離面に対する押圧を調整する押圧調整機構と、を具備して成ることを特徴とするアルカリ電池用電極の加工装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【公開番号】特開2000−323135(P2000−323135A)
【公開日】平成12年11月24日(2000.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−133213
【出願日】平成11年5月13日(1999.5.13)
【出願人】(000003539)東芝電池株式会社 (109)
【Fターム(参考)】