アレスタ
【課題】ブッシングの挿入孔内面とアレスタ素子積層体の外周に設けられたゴムモールド体外面との嵌合部の面圧を確保する。
【解決手段】アレスタは、ブッシング2を備えており、ブッシング2の先端部から後端部に向かって円錐状に広がるテーパ内面53bを有しており、このテーパ内面53bを介して上部挿入孔51aおよび下挿入孔52aが連通されている。高圧シールド体4は、シールド本体41を備えており、その側壁部41aの後端側端部の内側にテーパ内面53bが位置するように配置されている。アレスタモールド体6は、酸化亜鉛を主成分とする複数個のアレスタ素子61aを積層して成るアレスタ素子積層体61を備えており、アレスタ素子積層体61の外周にはシリコーンゴムなどから成るゴムモールド体67が設けられている。
【解決手段】アレスタは、ブッシング2を備えており、ブッシング2の先端部から後端部に向かって円錐状に広がるテーパ内面53bを有しており、このテーパ内面53bを介して上部挿入孔51aおよび下挿入孔52aが連通されている。高圧シールド体4は、シールド本体41を備えており、その側壁部41aの後端側端部の内側にテーパ内面53bが位置するように配置されている。アレスタモールド体6は、酸化亜鉛を主成分とする複数個のアレスタ素子61aを積層して成るアレスタ素子積層体61を備えており、アレスタ素子積層体61の外周にはシリコーンゴムなどから成るゴムモールド体67が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレスタに係り、特に、酸化亜鉛を主成分とする複数個の非直線抵抗素子(以下「アレスタ素子」という。)の積層体(以下「アレスタ素子積層体」という。)を備えるアレスタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電所や変電所等に設置されるガス絶縁開閉装置には、落雷時等に線路から侵入する異常電圧から開閉装置や変圧器等の電気機器を保護するためにアレスタが配設されている。
【0003】
従来、このようなアレスタとしては、図13に示すように、アレスタ素子積層体100を絶縁ガスが封入されたタンク110の底部110aに立設し絶縁支持筒120を介して支持して成るもの(例えば、非特許文献1)、若しくは、図14に示すように、機器ケース210の内壁にブッシング220を気密に取り付け、このブッシング220にアレスタ素子積層体230を着脱自在に装着して成るものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、前者のアレスタにおいては、アレスタ素子積層体100を構成するアレスタ素子の電圧分担を均一化するために、アレスタ素子積層体100の高圧側に大型のシールド130を配設しなければならず、このため、機器自体が大型化するという難点があり、また、アレスタ素子積層体100を有するガス絶縁開閉装置の耐電圧試験を行なう際に、アレスタ素子積層体100を主回路導体(不図示)から切り離さなければならないため、切り離し装置(不図示)を設ける必要があり、このため機器の構造が複雑になるという難点があった。
【0005】
一方、後者のアレスタにおいては、切り離し装置を設ける必要がないため構造が簡素化され、また、耐電圧試験を行なう際に機器ケース210内の絶縁ガスを回収したり、充填したりする作業を不要とすることができるものの、次のような難点があった。
【0006】
第1に、アレスタ素子積層体230の一部の外周に接地体としての機器ケース210が存在することから、アレスタ素子230aの電圧分担を均一にすることが困難であり、このため、その適用が22/33kV程度の中圧用の線路に制限されるという難点があった。
【0007】
第2に、このようなプラグインタイプのアレスタにおいては、アレスタ素子積層体230の外周に絶縁樹脂のモールド体240を設け、このモールド体240の外面をブッシング220の挿入孔の内面に密着させることで、モールド体240の外面とブッシング220の挿入孔の内面間の面圧を確保し、界面での絶縁破壊を防止する必要がある。
【0008】
第3に、前述のモールド体240の外面とブッシング220の挿入孔の内面間の面圧を確保する方法としては、絶縁樹脂のモールド体240の外面形状をブッシング220の挿入孔の内面形状に合わせる方法が知られているが、単に、絶縁樹脂のモールド体240の外面形状をブッシング220の挿入孔の内面形状に合わせて、これをブッシング220の挿入孔内に挿入させる構成では、モールド体240の外面とブッシング220の挿入孔の界面に有効な面圧を付与することが困難である。
【0009】
第4に、このようなプラグインタイプのアレスタにおいては、機器の耐電圧試験の際に、アレスタ素子積層体230に当該アレスタ素子積層体230の動作開始電圧を超える電圧が印加されるため、ブッシング220からアレスタ素子積層体230を取り外した状態で耐電圧試験を行なう必要があるところ、ブッシング220からアレスタ素子積層体230を取り外した場合には、ブッシング220内部をSF6ガスや固体絶縁物等によって絶縁する必要がある。
【0010】
第5に、前述のブッシング220内部を絶縁する方法としては、図15に示すように、モールド体240と同形状の絶縁栓310をブッシング220の挿入孔内に着脱自在に装着する方法が知られているが、このような構成の絶縁栓310においては、ブッシング220の挿入孔の内面と絶縁栓310の外面間の界面に隙間が生じないようにするため、絶縁栓310の外面形状をブッシング220の挿入孔の内面形状に合わせる必要があり、このため絶縁栓310が必要以上に大型化するという難点があり、また、単に、絶縁栓310の外面形状をブッシング220の挿入孔の内面形状に合わせた構成では、前述のモールド体240と同様にブッシング220の挿入孔の内面と絶縁栓310の外面間の界面に有効な面圧を付与することが困難である。
【0011】
【非特許文献1】電気学会技術報告 第851号 7(図2.10)
【特許文献1】特開平1−232681(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、主として、ブッシングの挿入孔内面とアレスタ素子積層体の外周に設けられたゴムモールド体外面との嵌合部の面圧の確保を図り、界面での絶縁破壊を防止することができるアレスタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様であるアレスタは、電気機器を収容する機器ケースの開口部に、開口部を気密に覆う如く配設されたブッシングと、ブッシングの挿入孔内に機器ケースの外部から着脱自在に装着されるアレスタモールド体と備え、アレスタモールド体は、複数個のアレスタ素子を積層して成るアレスタ素子積層体と、アレスタ素子積層体の外周に設けられたゴムモールド体とを備え、アレスタモールド体は、ブッシングの挿入孔の内部に収容されているものである。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様であるアレスタにおいて、アレスタモールド体は、ブッシングの挿入孔の内部でブッシングの先端部に向けて押圧されているものである。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様であるアレスタにおいて、アレスタモールド体の後端部には、軸方向の押圧によりバネ力が付勢されるスプリングが配設されているものである。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、ブッシングの挿入孔の内面は、ブッシングの先端部から後端部に向かって円錐状に広がるテーパ内面を有し、ゴムモールド体の外面は、テーパ内面と嵌合するテーパ外面を有するものである。
【0017】
本発明の第5の態様は、第4の態様であるアレスタにおいて、ブッシングには、アレスタ素子積層体の先端部外周を覆う高圧シールド体が設けられ、テーパ内面は、高圧シールド体の後端側端部の内側に位置するものである。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1の態様乃至第5の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、ブッシングの挿入孔内には、アレスタモールド体と交換的に、機器ケースの外部から着脱自在に絶縁栓が装着されるものである。
【0019】
本発明の第7の態様は、第6の態様であるアレスタにおいて、ブッシングには、アレスタ素子積層体の先端部外周を覆う高圧シールド体が設けられ、絶縁栓は、高圧シールド体の後端側端部の内側に位置するものである。
【0020】
本発明の第8の態様は、第7の態様であるアレスタにおいて、絶縁栓は、ブッシングの挿入孔内に装着され、外面にブッシングのテーパ内面と嵌合するテーパ外面を有する絶縁栓本体と、ブッシングの挿入孔内に装着され、高圧シールド体と絶縁栓本体の高圧側電極とを電気的に接触させる接触部材と、ブッシングの挿入孔内に装着され、絶縁栓本体をブッシングの先端部側に向けて押圧する押圧部材とを備えているものである。
【0021】
本発明の第9の態様は、第8の態様であるアレスタにおいて、絶縁栓本体の後端面と押圧部材の先端面間にスプリングが配設され、スプリングは、押圧部材のブッシングの先端部方向への押圧によりバネ力が付勢されるものである。
【0022】
本発明の第10の態様は、第9の態様であるアレスタにおいて、押圧部材は、絶縁栓本体に進退自在に取り付けられているものである。
【0023】
本発明の第11の態様は、第1の態様乃至第10の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、ブッシングは、硬質のプラスチック樹脂で形成されているものである。
【0024】
本発明の第12の態様は、第1の態様乃至第11の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、ブッシングの後端部は、機器ケースの開口部を通り機器ケースの外部に気密に導出されているものである。
【0025】
本発明の第13の態様は、第5の態様乃至第12の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、高圧シールド体の外周は、絶縁性のバリヤにより覆われているものである。
【0026】
本発明の第14の態様は、第5の態様乃至第12の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、高圧シールド体は、ブッシングの先端部の形状と略同形状の金具を有し、金具は、ブッシングの先端部にブッシングと同心状に埋設されているものである。
【0027】
本発明の第15の態様は、第5の態様乃至第12の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、高圧シールド体は、ブッシングの先端部外周に塗布された導電性の塗布層で形成されているものである。
【0028】
本発明の第16の態様は、第5の態様乃至第12の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、高圧シールド体は、円筒状の金具を有し、金具は、ブッシングの先端部の周りにブッシングの先端部を囲むように配設されているものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の第1の態様乃至第16態様のアレスタによれば、次のような効果がある。
【0030】
第1に、アレスタ素子積層体の外周にゴムモールド体を設け、当該アレスタモールド体をブッシングの挿入孔の内部に収容することで、従来のアレスタよりもより高い電圧階級の線路に適用することができる。
【0031】
第2に、アレスタ素子積層体の外周に設けたゴムモールド体をブッシングの先端部に向けて押圧することで、ブッシングの挿入孔内面とゴムモールド体外面の間の面圧を確保することができ、界面での絶縁破壊を防止することができる。
【0032】
第3に、アレスタモールド体の後端部にスプリングを配設し、当該スプリングにバネ力を付勢することで、アレスタモールド体をブッシングの先端部に向けて押圧することができる。
【0033】
第4に、ブッシングの挿入孔のテーパ内面にゴムモールド体のテーパ外面を嵌合させることで、軸方向の押圧力を面圧として有効に作用させることができる。
【0034】
第5に、電界が集中する高圧シールド体の後端側端部の内側に、面圧が有効に作用するテーパ内面を位置させることで、界面での絶縁破壊を防止することができる。
【0035】
第6に、ブッシングの挿入孔内にアレスタモールド体と交換的に絶縁栓を装着することで、ブッシングの挿入孔内の絶縁を確保した状態で機器の耐電圧試験等を行なうことができる。
【0036】
第7に、電界が集中する高圧シールド体の後端側端部の内側に絶縁栓を位置させることで、絶縁栓を装着した状態における電界のコントロールを有効に行なうことができ、また、高圧シールド体の後端側端部付近の内側のみを封止することで、ブッシングの挿入孔内の絶縁を確保できるため、絶縁栓の小型化を図ることができる。
【0037】
第8に、ブッシングの後端部を機器ケースの外部に気密に導出することで、機器の構造の簡素化、小型化および軽量化を図ることができる。
【0038】
第9に、高圧シールド体の外周を絶縁性のバリヤで覆うことで、相間の絶縁距離や機器ケースとの絶縁距離を短くすることができ、機器の縮小化を図ることができる。
【0039】
第10に、高圧シールド体を導電性の塗布層で形成することで、ブッシングの軽量化および低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明のアレスタを適用した好ましい実施の形態例について、図面を参照して説明する。なおここで、アレスタモールド体の「先端部」、ブッシングの「先端部」とは、アレスタモールド体、ブッシングそれぞれの高圧側の端部をいい、図中では上方向に相当する。また、アレスタモールド体の「後端部」、ブッシングの「後端部」は、先端部と反対側の端部をいい、図中で下方向に相当する。
[実施例1]
図1は、66/77kV級の本発明のアレスタの一例を示す一部断面図である。
【0041】
同図において、本発明のアレスタを有する電気機器は、開閉器等の電気機器(不図示)を気密に収容する機器ケ−ス1を備えており、機器ケ−ス1内には例えばSF6ガスなどの絶縁ガスが充填されている。また、機器ケース1の底部には開口部1aが設けられており、この開口部1aにはそれ自身の先端部を機器ケース1内に位置させ、かつそれ自身の後端部で開口部1aを気密に覆う如くブッシング2が配設され、このブッシング2内には後述するアレスタ素子積層体61を含むアレスタモールド体6が着脱自在に装着されている。
【0042】
ブッシング2は、エポキシ樹脂のモールド体等から成る硬質でかつ絶縁性のブッシング本体3と、ブッシング本体3の先端部にブッシング本体3と同心状に埋設された高圧シールド体4とを備えている。
【0043】
ブッシング本体3は、アレスタモールド体6の上半部を収容するための挿入孔(以下「上部挿入孔」という。)51aを有する上端閉鎖の円筒部(以下「上部円筒部」という。)51と、アレスタモールド体6の下半部を収容するための挿入孔(以下「下部挿入孔」という。)52aを有する円筒部(以下「下部円筒部」という。)52と、アレスタモールド体6の後述する円錐状部67bを収容するための挿入孔(以下「テーパ付挿入孔」という。)53aを有する円筒部(以下「中間円筒部」という。)53とを備えており、下部円筒部52の上部位置の外周には径方向に突出する環状の取付フランジ52bが連設されている。ここで、下部挿入孔52aの口径は、上部挿入孔51aの口径よりも大径とされ、また、テーパ付挿入孔53aは、ブッシング2の先端部から後端部に向かって円錐状に広がるテーパ内面53bを有しており、このテーパ内面53bを介して上部挿入孔51aおよび下挿入孔52aが連通されている。さらに、下部円筒部52の外径は機器ケース1の開口部1aの口径と略同径若しくはこれより若干小径とされ、取付フランジ52bの外径は機器ケース1の開口部1aの口径より大径とされている。
【0044】
高圧シールド体4は、上部円筒部51にその閉鎖部51bから上部円筒部51の後端部に跨って上部円筒部51と同心状に埋設される釣鐘状のシールド本体41と、シールド本体41の水平部中央に閉鎖部51bの上方に突出させた筒状部(以下「接続導体挿入部」という。)42と、接続導体挿入部42の上部に連設され主回路導体(不図示)に接続される主回路接続子43とを備えている。ここで、シールド本体41の側壁部41aは先端部から後端部に向かって円錐状に広がるように形成され、また、その軸方向の長さは上部円筒部51の閉鎖部51bから中間円筒部53の先端部近傍に至る長さ、すなわち、シールド本体41の側壁部41aの後端側端部の内側に前述のテーパ内面53bの先端部が位置するような長さとされている。なお、接続導体挿入部42はアレスタモールド体6の後述する接続導体62の挿入孔としての機能を有し、接続導体挿入部42の先端部に設けられた主回路接続子43はアレスタモールド体6の後述するコイル状のスプリング63のストッパとしての機能も有している。
【0045】
このような構成の高圧シールド体4は、図に示すように、主回路接続子43を上部円筒部51の閉鎖部51bより突出させ、側壁部41aが上部円筒部51の側壁部51b内に位置する如くして上部円筒部51と同心状に埋設されている。
【0046】
このような構成のブッシング2は、ブッシング2の上部円筒部51および中間円筒部53が機器ケース1内に位置し、下部円筒部52が開口部1aを通り機器ケース1の外部に導出されることで、取付フランジ52bの上面が機器ケース1の開口部1aの周縁部の下面に当接される。そこで、機器ケース1の開口部1aの周縁部に設けられた環状の凹溝1bにOリング1cを介在させ、取付フランジ52bに配設したボルト52cを締結することにより、ブッシング2を機器ケース1の開口部1aに気密に取り付けることができる。
【0047】
アレスタモールド体6は、図2に示すように、酸化亜鉛を主成分とする複数個のアレスタ素子61aを積層して成るアレスタ素子積層体61と、アレスタ素子積層体61の先端部側(高圧側)に配設される接続導体62と、接続導体62の先端部側(高圧側)に配設されるコイル状のスプリング(以下「高圧側スプリング」という。)63と、アレスタ素子積層体61の後端部側(低圧側)に配設される押し金具65と、押し金具65の下面側に配設されるコイル状のスプリング(以下「低圧側スプリング」という。)66と、アレスタ素子積層体61の外周に接続導体62および押し金具65に跨って一体的にモールドされるシリコーンゴムなどから成るゴムモールド体67とを備えている。ここで、ゴムモールド体67の外面形状はブッシング2の挿入孔(上部挿入孔51a、下部挿入孔52a、テーパ付挿入孔53a)の内面形状と対応するように形成されている。具体的には、ゴムモールド体67の先端部側(高圧側)側には上部挿入孔51aの内面に当接する小径部67aが、中間部にはテーパ付挿入孔53aのテーパ内面53bに当接するテーパ外面67cを有する円錐状部67bが、後端部側(低圧側)には下部挿入孔52aの内面に当接する大径部67dがそれぞれ設けられている。また、アレスタ素子61aは、所定のバリスタ電圧を考慮して系統電圧に対応した個数が決定される。本実施例は、66kVの高圧線路に適用するものである。
【0048】
接続導体62は、アレスタ素子積層体61の高圧側に当接されるアレスタ素子61aと略同形の円板部62aと、この円板部62aの上面中央部に上方に向けて突設された円筒部62bとを備えており、円筒部62bの外周には図示しないテープ状の導体接続子(マルチコンタクト)を嵌着するための環状の凹溝62cが設けられている。
【0049】
押し金具65は、ゴムモールド体67の後端部側(低圧側)の外径より若干小径とされた環状部材65aを備えており、この環状部材65aの上面中央部にはアレスタ素子61aと略同形の円盤状の押圧部65bが設けられ、下面側外周縁近傍には、例えば12個の凹陥部65cが円周方向に沿って等配する如くして設けられている。なお、図中65dは、環状部材65aの内周縁側に円周方向に沿って等配する如く設けられた例えば4個のネジ孔、65eは環状部材65aの下面側中央部に設けられた大径の凹陥部を示している。
【0050】
このような構成のアレスタ素子積層体61の外周には、その先端部に接続導体62の円板部62aの下面を当接し、後端部に押し金具65の押圧部65bを当接した状態で、接続導体62の円板部62aの上面部および押し金具65の外周に跨ってシリコーンゴムなどのゴムモールド体67が設けられ、このゴムモールド体67により、アレスタ素子積層体61が接続導体62および押し金具65と一体化される。
【0051】
次に、アレスタモールド体6をブッシング2内に着脱自在に装着する方法について説明する。
【0052】
先ず、接続導体62の円筒部62b内に円筒部62bの内径と略同径のコイル状の高圧側スプリング63をその上半部が突出する如くして装着し、この状態でアレスタモールド体6の先端部(高圧側)をブッシング2内に挿入し、高圧側スプリング63の先端部が主回路接続子43の内壁面43aに当接するまで押し込む。これにより、凹溝62cに配設した導体接続子(マルチコンタクト)を構成する舌片(不図示)が接続導体挿入部42の内周面に電気的に接触すると共に、ゴムモールド体67の小径部67aがブッシング2の上部挿入孔51aの内面に、ゴムモールド体67のテーパ外面67cがブッシング2のテーパ内面53bに、ゴムモールド体67の大径部67dが下部挿入孔52aの内面と当接することになる。
【0053】
次に、押し金具65の凹陥部65cに凹陥部65cの内径と略同径のコイル状の低圧側スプリング66をその下半部が突出する如くして装着し、この状態で、ブッシング2の下部円筒部52の下面に円盤状の金具から成るシール蓋Fを当接し、これをシール蓋Fの外周縁近傍に円周方向に沿って配設した複数本のボルトBで下部円筒部52の下面に締結する。なお、図中、符号Nはブッシング2の下部円筒部52の下面に埋設したネジ孔を示しており、このネジ孔NにボルトBの先端部が螺着される。
【0054】
このようなシール蓋Fの下部円筒部52下面への当接・固定により、低圧側スプリング66が軸方向に押圧され、低圧側スプリング66に所定のバネ力が付勢される。これにより、ゴムモールド体67がブッシング2の先端部に向けて押圧され、かつブッシング2のテーパ内面53bとゴムモールド体67のテーパ外面67cとの嵌合部に所定の面圧が付与される。
【0055】
また、ゴムモールド体67がブッシング2の先端部に向けて押圧されることにより、ゴムモールド体67の先端部に配置した高圧側スプリング63が軸方向に押圧され、当該高圧側スプリング63に所定のバネ力が付勢される。これにより、アレスタ素子61aと接続導体62間、アレスタ素子61a間、アレスタ素子61aと押圧部65b間に所定の面圧が付与され、これらの部材間が確実に接触する。
【0056】
以上のように、このような構成のアレスタによれば、アレスタモールド体6の全体がブッシング2の挿入孔の内部に収容されることで、後述するように従来のアレスタよりもより高い電圧階級の線路に適用することができ、また、ゴムモールド体がブッシングの先端部に向けて押圧されることで、ブッシングの挿入孔内面とゴムモールド体外面の間の面圧が確保され、界面での絶縁破壊を防止することができる。さらに、アレスタモールド体の後端部にスプリングが配設され、当該スプリングにバネ力が付勢されることで、アレスタモールド体をブッシングの先端部に向けて押圧することができ、また、ブッシングのテーパ内面にゴムモールド体のテーパ外面を嵌合させることで、軸方向の押圧力を面圧として有効に作用させることができる。さらに、電界が集中する高圧シールド体の後端側端部の内側に、面圧が有効に作用するテーパ外面を設けることで、後述するようにアレスタ素子61aの電圧分担の均一化を図ることができる。
【0057】
図3は、本実施例におけるアレスタの等電位分布図を示している。同図より、アレスタ素子積層体61の先端部は高圧シールド体4により遮蔽されることで、当該先端部に電界が集中せず、また、アレスタ素子積層体61の後端部は接地体としての機器ケース1の外部に配設されることで、当該後端部にも電界が集中せず、さらに、アレスタ素子積層体61の中間部は高圧シールド体4と接地体としての機器ケース1間の間隔の調整により電界が適正にコントロールされることで、当該中間部にも電界が集中していないことが判る。
【0058】
ここで、シールド本体41と接地体としての機器ケース1がアレスタ素子積層体61に及ぼす影響について説明する。先ず、シールド本体41の後端部と機器ケース1の上面との間隔を短くすると、シールド本体41および機器ケース1の影響によりアレスタ素子積層体61の中間部における電界が密になり、これと反対に、両者の間隔を広くすると、当該中間部における電界が疎になるという関係がある。従って、単に、両者の間隔を広げた構成にすることのみでは、アレスタ素子61aの電圧分担を均一化させることが困難になる。この点、本実施例においては、アレスタ素子積層体61の先端部(アレスタ素子積層体61の1/3程度の長さ)および中間部(アレスタ素子積層体61の1/3程度の長さ)を機器ケース1内に位置させ、アレスタ素子積層体61の後端部(アレスタ素子積層体61の1/3程度の長さ)を機器ケース1の外部に位置させることで、高圧シールド体4と接地体としての機器ケース1との間隔が適正に調整され、アレスタ素子積層体61の中間部における電界を適正にコントロールすることができ、ひいてはアレスタ素子61aの電圧分担の均一化を図ることができる。
【0059】
以上のように、このような構成のアレスタによれば、機器ケース1の開口部1aに気密に取り付けられたブッシング2内にアレスタ素子積層体61を機器ケース1の外部から着脱自在に装着することができることから、従来のガス絶縁形アレスタのように、切り離し装置を設ける必要がなくなり、機器の構造を簡素化することができ、また、耐電圧試験を行なう際に機器ケース1内の絶縁ガスを回収したり、充填したりする作業を不要とすることができる。さらに、アレスタ素子積層体61の先端部外周が高圧シールド体4により覆われていることから、アレスタ素子61aの電圧分担を均一化させることができ、ひいては66/77kV級の高圧線路にも適用できるアレスタを提供することができ、また、アレスタ素子積層体61の一部(低圧側)を機器ケース1の外部に導出させることで、機器の縮小化を図ることができる。
【0060】
図4は、機器の耐電圧試験を行なう際に、前述のアレスタモールド体6と交換的に、ブッシング2内に着脱自在に装着される絶縁栓20の一部断面図を示している。なお、同図において、図1および図2と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0061】
図4において、本発明における絶縁栓20は、ブッシング2のテーパ付挿入孔53a内に装着される絶縁栓本体21と、絶縁栓本体21の上方に位置しかつブッシング2の上部挿入孔51a内に上部円筒部51と同心状に装着される円筒状の接触部材22と、絶縁栓本体21の下方に位置しかつブッシング2の下部挿入孔52a内に下部円筒部52と同心状に装着される上端閉鎖の円筒状の押圧部材23とを備えている。ここで、接触部材22はアルミニウム合金等の金具で形成され、その外径はブッシングの上部挿入孔の口径よりも小径とされ、また、その軸方向の長さは高圧シールド4の頂部内壁41bと後述する高圧側電極27の上壁27b間の間隔と等しい長さとされている。具体的には、接触部材22の軸方向の長さは、絶縁栓20がブッシング2内に正規位置に装着された状態において、接触部材22の先端部が高圧シールド4の頂部内壁41bに電気的に接触し、後端部が高圧側電極27の上壁27bに電気的に接触するような長さとされている。また、押圧部材23はアルミニウム合金等の金具で形成され、円筒部の一部には軸方向に沿って厚肉部23aが設けられている。さらに、押圧部材23の閉鎖部23bには複数個のボルト挿通孔23cが円周方向に沿って等配する如く設けられ、厚肉部23aの後端面には必要に応じてねじ孔23dが設けられている。
【0062】
絶縁栓本体21は、ブッシング2の下部挿入孔52aの口径と略同径の外径を有する円柱状部24と、当該円柱状部24の先端部に連接されブッシング2のテーパ付挿入孔53aに配設される円錐状部25と、円柱状部24の後端部に球面状凸部26aを先端部に向けて埋設された半球状の低圧側電極26と、円錐状部25の先端部に球面状凸部27aを低圧側電極26と対向するように埋設された半球状の高圧側電極27とを備えている。
【0063】
ここで、円錐状部25の外面はブッシング2のテーパ内面53bと嵌合するテーパ外面25aを有しており、また、低圧側電極26の直径は円柱状部24の直径よりも若干小径とされ、さらに、その下端面は円柱状部24の下端面と面一になるように埋設され、当該低圧側電極26の下端面には複数個のスプリング収納孔26bと複数個のねじ孔26cが円周方向に沿って等配するように設けられている。
【0064】
円柱状部24および円錐状部25はエチレンプロピレンゴム等の絶縁材料から成り、低圧側電極26および高圧側電極27と一体的にモールドされている。
【0065】
次に、このように構成された絶縁栓20をブッシング2内に着脱自在に装着する方法について説明する。
【0066】
先ず、図1に示すボルトBを取り外し、ブッシング2の下部円筒部52からシール蓋Fを取り外して、ブッシング2内からアレスタモールド体6を取り外す。
【0067】
次に、図4に示すように、低圧側電極26のスプリング収納孔26bにスプリング28をその下半部がスプリング収納孔26bから突出する如くして配設し、次いで、ボルト29をボルト挿通孔23cに挿通しその先端部を低圧側電極26のねじ孔26cに取り付ける。これにより、押圧部材23がボルト29の軸部29aを介して進退自在に低圧側電極26に取り付けられる。そして、スプリング28にバネ力が付勢されていない状態で、接触部材22、絶縁栓本体21および押圧部材23をブッシング2内に挿入し、接触部材22の先端部が高圧シールドの頂部内壁面41bに当接するまで押し込む。これにより、絶縁栓本体21の円錐状部25のテーパ外面25aがブッシング2のテーパ内面53bに当接する。
【0068】
次いで、ブッシング2の下部円筒部52の下面に、前述と同様に、シール蓋Fを当接し、これを複数本のボルトBで下部円筒部52の下面に締結する。これにより、押圧部材23の上端面がボルト29の軸部29aを介して低圧側電極26の下端面に当接する位置まで押し込まれ、これと共に、スプリング28が軸方向に押圧され当該スプリング28に軸方向のバネ力が付勢される。
【0069】
そして、スプリング28に軸方向のバネ力が付勢されると、絶縁栓20を構成する押圧部材23がブッシング2の先端部に向かって押圧されることで、絶縁栓本体21のテーパ外面25aとブッシング2のテーパ内面53bとの嵌合部に所定の面圧が付与される。
【0070】
図5は、本実施例における絶縁栓の等電位分布図を示している。同図より、絶縁栓20をブッシング2内の正規位置に装着することで、絶縁栓20を構成する絶縁栓本体21の先端部の外周が高圧シールド体4により覆われることから、絶縁栓本体21における電界が適正にコントロールされていることが判る。
【0071】
以上のように、このような構成の絶縁栓によれば、機器の耐電圧試験等を行なう際に、ブッシング2の挿入孔内にアレスタモールド体6と交換的に絶縁栓20を装着することで、アレスタモールド体6を外した状態におけるブッシング2の挿入孔内の絶縁を確保することができる。また、電界が集中する高圧シールド体4の後端側端部の内側に絶縁栓20を位置させることで、絶縁栓20を装着した状態における電界のコントロールを有効に行なうことができ、さらに、また、高圧シールド体4の後端側端部付近の内側のみを封止することで、ブッシング2の挿入孔内の絶縁を確保できるため、絶縁栓20の小型化を図ることができる。
[実施例2]
図6は、本発明の第2の実施例におけるアレスタの一部断面図を示している。なお、同図において、図1と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0072】
この実施例においては、ブッシング7の先端部の外周面に点線で示すように導電性の塗布層75が設けられている。
【0073】
先ず、第2の実施例におけるブッシング7は、それ自身の上面の外周縁近傍に環状の凹陥部71aが設けられた中間円筒部71と、中間円筒部71の上端部に中間円筒部71と同心状に連接され中間円筒部71の外径より小径でかつ先細り状の円錐状部72aを有し上端部が閉鎖された上部円筒部72と、中間円筒部71の下面の外周縁近傍に中間円筒部71と同心状に連接され中間円筒部71の外径よりも小径の下部円筒部73と、上部円筒部72の閉鎖部72bの中央部にそれ自身の先端部を閉鎖部72bから突設するように埋設した主回路接続子74とを備えている。なお、この実施例におけるブッシング7は下部円筒部73の外径が機器ケース1の開口部1aより大径とされ、下部円筒部73の外周縁の下面が機器ケース1の上面に気密に載置・固定されている。
【0074】
符号75は、高圧シールド体としての導電性の塗布層(例えば、銀ペイントから成る塗布層)を示しており、この導電性の塗布層75は、上部円筒部72の閉鎖部72bの外表面から円錐状部72aの外周面および中間円筒部71の凹陥部71aを構成する半円状部分71bの外周面に跨って設けられている。
【0075】
図7は、第2の実施例におけるアレスタの電位分布を示している。同図より、この実施例においても、第1の実施例におけるアレスタと同様に、アレスタ素子積層体61の先端部は高圧シールド体としての導電性の塗布層75により遮蔽されることで、当該先端部に電界が集中せず、また、アレスタ素子積層体61の後端部は接地体としての機器ケース1の外部に配設されることで、当該後端部にも電界が集中せず、さらに、アレスタ素子積層体61の中間部は導電性の塗布層75と接地体としての機器ケース1間の間隔の調整により電界がコントロールされることで、当該中間部にも電界が集中していないことが判る。
【0076】
従って、第2の実施例におけるアレスタにおいても、アレスタ素子61aの電圧分担を均一化させることができる。また、この実施例におけるアレスタにおいては、第1の実施例における金具から成る高圧シールド体4に代えて導電性の塗布層75が設けられていることから、第1の実施例におけるアレスタよりも軽量化および低コスト化を図ることができる。なお、この実施例におけるアレスタは、ガス絶縁や空気絶縁タイプの電気機器に好適する。
[実施例3]
図8は、本発明の第3の実施例におけるアレスタの一部断面図を示している。なお、同図において、図1と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0077】
この実施例においては、ブッシング8の先端部に別体の高圧シールド体10が載置・固定されている。
【0078】
先ず、第3の実施例におけるブッシング8は、先細り状の中間円筒部81と、中間円筒部81の上端部に中間円筒部81と同心状に連接され中間円筒部81の外径より小径の上部円筒部82と、中間円筒部81の下端部に中間円筒部81と同心状に連接され中間円筒部81の下端部外径と略同径の下部円筒部83とを備えており、下部円筒部83の先端部位置の外周には環状の取付フランジ83aが連設されている。
【0079】
高圧シールド体10は、上端閉鎖の円筒状の金具11と、金具11の閉鎖部12中央に閉鎖部12から上方に向けて立設された主回路接続子13とを備えている。
【0080】
このような構成の高圧シールド体10は、図に示すように、主回路接続子13を上部円筒部82の上方位置に配置し、金具11の側壁部14が上部円筒部82の側壁部82aの周りに位置する如くして上部円筒部82の先端部に上部円筒部82と同心状に載置・固定されている。
【0081】
図9は、第3の実施例におけるアレスタの電位分布を示している。同図より、この実施例においても、第1の実施例におけるアレスタと同様に、アレスタ素子積層体61の先端部は高圧シールド体10を構成する円筒状の金具11により遮蔽されることで、当該先端部に電界が集中せず、また、アレスタ素子積層体61の後端部は接地体としての機器ケース1の外部に配設されることで、当該後端部にも電界が集中せず、さらに、アレスタ素子積層体61の中間部は円筒状の金具11と接地体としての機器ケース1間の間隔の調整により電界がコントロールされることで、当該中間部にも電界が集中していないことが判る。
【0082】
従って、第3の実施例におけるアレスタにおいても、全体としてアレスタ素子61aの電圧分担を均一化させることができる。なお、この実施例におけるアレスタは、油絶縁、ガス絶縁若しくは空気絶縁タイプの電気機器に好適する。
[実施例4]
図10は、本発明の第4の実施例におけるアレスタの一部断面図を示している。なお、同図において、図1および図8と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0083】
この実施例においては、ブッシング9の先端部に図6に示す高圧シールド体10が載置・固定され、また、次のようにして、高圧シールド体10の回りが絶縁性のバリヤ91bで覆われている。
【0084】
先ず、第4の実施例におけるブッシング9は、それ自身の上面の外周縁近傍に環状の凹陥部91aが設けられた上部円筒部91と、上部円筒部91の下端部に上部円筒部91と同心状に連接され上部円筒部91の外径より小径の下部円筒部92とを備えている。そして、図6に示すものと同様の構成の高圧シールド体10は、その側壁部14が上部円筒部91の凹陥部91a内に位置するように上部円筒部91と同心状に配設されている。なお、この実施例におけるブッシング9は上部円筒部91の外径が機器ケース1の開口部1aより大径とされ、上部円筒部91の外周縁の下面が機器ケース1の内面に気密に載置・固定されている。
【0085】
図11は、第4の実施例におけるアレスタの電位分布を示している。同図より、この実施例においても、第1の実施例におけるアレスタと同様に、アレスタ素子積層体61の先端部は高圧シールド体としての円筒状の金具11により遮蔽されることで、当該先端部に電界が集中せず、また、アレスタ素子積層体61の後端部は接地体としての機器ケース1の外部に配設されることで、当該後端部にも電界が集中せず、さらに、アレスタ素子積層体61の中間部は円筒状の金具11と接地体としての機器ケース1間の間隔の調整により電界がコントロールされることで、当該中間部にも電界が集中していないことが判る。
【0086】
従って、第4の実施例におけるアレスタにおいても、全体としてアレスタ素子積層体61の電圧分担を均一化させることができる。また、この実施例におけるアレスタにおいては、高圧シールド体10の側壁部14が上部円筒部91の凹陥部91aに配設されることで、円筒状の金具11の周りに絶縁性のバリヤ部材91bが配置されることになるから、相間の絶縁距離、若しくは機器ケース1との絶縁距離を短くすることができ、ひいては、機器の縮小化を図ることができる。なお、この実施例におけるアレスタは、油絶縁、ガス絶縁若しくは空気絶縁タイプの電気機器に好適する。
[実施例5]
図12は、本発明の第5の実施例におけるアレスタの一部断面図を示している。なお、同図において、図1および図2と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0087】
この実施例においては、次のようにして、アレスタモールド体6の先端部に高圧シールド体20が埋設されている。
【0088】
先ず、第5の実施例におけるブッシング30は、上部円筒部51の閉鎖部51b中央に図1に示す接続導体挿入部42が埋設され、接続導体挿入部42の先端部には図1に示す主回路接続子43が連設されている。また上部円筒部51の内周には閉鎖部51bから下端部に向かって円錐状に広がるテーパ孔31が設けられ、このテーパ孔31は図1に示す下部挿入孔52aと同径の中間部挿入孔32と連通している。
【0089】
高圧シールド体20は、円盤状の水平部21aと、水平部21の外周縁から円錐状に広がるように垂設された側壁部21bとを有する逆コップ状のシールド本体21を備えており、このシールド本体21の水平部21aの上部中央には図2に示す円筒部62bが突設されている。
【0090】
このような構成の高圧シールド体20は、図に示すように、水平部21aがアレスタ素子積層体61の先端部側(高圧側)に当接され、この状態においてアレスタ素子積層体61の外周に設けられたゴムモールド体67により一体化されている。なお、ゴムモールド体67の先端部外周にはテーパ孔31の内周面に当接する円錐状部67dが設けられている。
【0091】
この実施例においても、アレスタ素子積層体61の先端部外周が高圧シールド体20により覆われていることから、アレスタ素子61aの電圧分担を均一化させることができる。
【0092】
なお、第5の実施例においては、高圧シールド体20をゴムモールド体67に埋設した場合について説明しているが、当該高圧シールド体20はゴムモールド体67の外周に配設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、特許請求の範囲内で、次のように、変更、修正を加えることができる。
【0094】
第1に、前述の実施例においては、機器ケース1の底部にブッシングを配設した場合について説明しているが、機器ケース1の側壁にブッシングを配設してもよい。
【0095】
第2に、前述の実施例においては、66/77kVの高圧線路に本発明のアレスタを適用する場合について説明しているが、66kV未満の線路若しくは77kVを超える高圧線路に本発明のアレスタを適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施例におけるアレスタの一部断面図。
【図2】本発明の第1の実施例におけるアレスタモールド体の一部断面図。
【図3】本発明の第1の実施例におけるアレスタの等電位分布図。
【図4】本発明における絶縁栓の一部断面図。
【図5】本発明における絶縁栓の等電位分布図。
【図6】本発明の第2の実施例におけるアレスタの一部断面図。
【図7】本発明の第2の実施例におけるアレスタの等電位分布図。
【図8】本発明の第3の実施例におけるアレスタの一部断面図。
【図9】本発明の第3の実施例におけるアレスタの等電位分布図。
【図10】本発明の第4の実施例におけるアレスタの一部断面図。
【図11】本発明の第4の実施例におけるアレスタの等電位分布図。
【図12】本発明の第5の実施例におけるアレスタの一部断面図。
【図13】従来のアレスタの一部断面図。
【図14】従来のアレスタの一部断面図。
【図15】従来の絶縁栓の一部断面図。
【符号の説明】
【0097】
1・・・機器ケース
1a・・・開口部
2・・・ブッシング
4・・・高圧シールド体
6・・・アレスタモールド体
61・・・アレスタ素子積層体
67・・・ゴムモールド体
11・・・円筒状の金具
20・・・絶縁栓
21・・・絶縁栓本体
22・・・接触部材
23・・・押圧部材
75・・・導電性の塗布層
91b・・・絶縁性のバリヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレスタに係り、特に、酸化亜鉛を主成分とする複数個の非直線抵抗素子(以下「アレスタ素子」という。)の積層体(以下「アレスタ素子積層体」という。)を備えるアレスタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電所や変電所等に設置されるガス絶縁開閉装置には、落雷時等に線路から侵入する異常電圧から開閉装置や変圧器等の電気機器を保護するためにアレスタが配設されている。
【0003】
従来、このようなアレスタとしては、図13に示すように、アレスタ素子積層体100を絶縁ガスが封入されたタンク110の底部110aに立設し絶縁支持筒120を介して支持して成るもの(例えば、非特許文献1)、若しくは、図14に示すように、機器ケース210の内壁にブッシング220を気密に取り付け、このブッシング220にアレスタ素子積層体230を着脱自在に装着して成るものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、前者のアレスタにおいては、アレスタ素子積層体100を構成するアレスタ素子の電圧分担を均一化するために、アレスタ素子積層体100の高圧側に大型のシールド130を配設しなければならず、このため、機器自体が大型化するという難点があり、また、アレスタ素子積層体100を有するガス絶縁開閉装置の耐電圧試験を行なう際に、アレスタ素子積層体100を主回路導体(不図示)から切り離さなければならないため、切り離し装置(不図示)を設ける必要があり、このため機器の構造が複雑になるという難点があった。
【0005】
一方、後者のアレスタにおいては、切り離し装置を設ける必要がないため構造が簡素化され、また、耐電圧試験を行なう際に機器ケース210内の絶縁ガスを回収したり、充填したりする作業を不要とすることができるものの、次のような難点があった。
【0006】
第1に、アレスタ素子積層体230の一部の外周に接地体としての機器ケース210が存在することから、アレスタ素子230aの電圧分担を均一にすることが困難であり、このため、その適用が22/33kV程度の中圧用の線路に制限されるという難点があった。
【0007】
第2に、このようなプラグインタイプのアレスタにおいては、アレスタ素子積層体230の外周に絶縁樹脂のモールド体240を設け、このモールド体240の外面をブッシング220の挿入孔の内面に密着させることで、モールド体240の外面とブッシング220の挿入孔の内面間の面圧を確保し、界面での絶縁破壊を防止する必要がある。
【0008】
第3に、前述のモールド体240の外面とブッシング220の挿入孔の内面間の面圧を確保する方法としては、絶縁樹脂のモールド体240の外面形状をブッシング220の挿入孔の内面形状に合わせる方法が知られているが、単に、絶縁樹脂のモールド体240の外面形状をブッシング220の挿入孔の内面形状に合わせて、これをブッシング220の挿入孔内に挿入させる構成では、モールド体240の外面とブッシング220の挿入孔の界面に有効な面圧を付与することが困難である。
【0009】
第4に、このようなプラグインタイプのアレスタにおいては、機器の耐電圧試験の際に、アレスタ素子積層体230に当該アレスタ素子積層体230の動作開始電圧を超える電圧が印加されるため、ブッシング220からアレスタ素子積層体230を取り外した状態で耐電圧試験を行なう必要があるところ、ブッシング220からアレスタ素子積層体230を取り外した場合には、ブッシング220内部をSF6ガスや固体絶縁物等によって絶縁する必要がある。
【0010】
第5に、前述のブッシング220内部を絶縁する方法としては、図15に示すように、モールド体240と同形状の絶縁栓310をブッシング220の挿入孔内に着脱自在に装着する方法が知られているが、このような構成の絶縁栓310においては、ブッシング220の挿入孔の内面と絶縁栓310の外面間の界面に隙間が生じないようにするため、絶縁栓310の外面形状をブッシング220の挿入孔の内面形状に合わせる必要があり、このため絶縁栓310が必要以上に大型化するという難点があり、また、単に、絶縁栓310の外面形状をブッシング220の挿入孔の内面形状に合わせた構成では、前述のモールド体240と同様にブッシング220の挿入孔の内面と絶縁栓310の外面間の界面に有効な面圧を付与することが困難である。
【0011】
【非特許文献1】電気学会技術報告 第851号 7(図2.10)
【特許文献1】特開平1−232681(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、主として、ブッシングの挿入孔内面とアレスタ素子積層体の外周に設けられたゴムモールド体外面との嵌合部の面圧の確保を図り、界面での絶縁破壊を防止することができるアレスタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様であるアレスタは、電気機器を収容する機器ケースの開口部に、開口部を気密に覆う如く配設されたブッシングと、ブッシングの挿入孔内に機器ケースの外部から着脱自在に装着されるアレスタモールド体と備え、アレスタモールド体は、複数個のアレスタ素子を積層して成るアレスタ素子積層体と、アレスタ素子積層体の外周に設けられたゴムモールド体とを備え、アレスタモールド体は、ブッシングの挿入孔の内部に収容されているものである。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様であるアレスタにおいて、アレスタモールド体は、ブッシングの挿入孔の内部でブッシングの先端部に向けて押圧されているものである。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様であるアレスタにおいて、アレスタモールド体の後端部には、軸方向の押圧によりバネ力が付勢されるスプリングが配設されているものである。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、ブッシングの挿入孔の内面は、ブッシングの先端部から後端部に向かって円錐状に広がるテーパ内面を有し、ゴムモールド体の外面は、テーパ内面と嵌合するテーパ外面を有するものである。
【0017】
本発明の第5の態様は、第4の態様であるアレスタにおいて、ブッシングには、アレスタ素子積層体の先端部外周を覆う高圧シールド体が設けられ、テーパ内面は、高圧シールド体の後端側端部の内側に位置するものである。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1の態様乃至第5の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、ブッシングの挿入孔内には、アレスタモールド体と交換的に、機器ケースの外部から着脱自在に絶縁栓が装着されるものである。
【0019】
本発明の第7の態様は、第6の態様であるアレスタにおいて、ブッシングには、アレスタ素子積層体の先端部外周を覆う高圧シールド体が設けられ、絶縁栓は、高圧シールド体の後端側端部の内側に位置するものである。
【0020】
本発明の第8の態様は、第7の態様であるアレスタにおいて、絶縁栓は、ブッシングの挿入孔内に装着され、外面にブッシングのテーパ内面と嵌合するテーパ外面を有する絶縁栓本体と、ブッシングの挿入孔内に装着され、高圧シールド体と絶縁栓本体の高圧側電極とを電気的に接触させる接触部材と、ブッシングの挿入孔内に装着され、絶縁栓本体をブッシングの先端部側に向けて押圧する押圧部材とを備えているものである。
【0021】
本発明の第9の態様は、第8の態様であるアレスタにおいて、絶縁栓本体の後端面と押圧部材の先端面間にスプリングが配設され、スプリングは、押圧部材のブッシングの先端部方向への押圧によりバネ力が付勢されるものである。
【0022】
本発明の第10の態様は、第9の態様であるアレスタにおいて、押圧部材は、絶縁栓本体に進退自在に取り付けられているものである。
【0023】
本発明の第11の態様は、第1の態様乃至第10の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、ブッシングは、硬質のプラスチック樹脂で形成されているものである。
【0024】
本発明の第12の態様は、第1の態様乃至第11の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、ブッシングの後端部は、機器ケースの開口部を通り機器ケースの外部に気密に導出されているものである。
【0025】
本発明の第13の態様は、第5の態様乃至第12の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、高圧シールド体の外周は、絶縁性のバリヤにより覆われているものである。
【0026】
本発明の第14の態様は、第5の態様乃至第12の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、高圧シールド体は、ブッシングの先端部の形状と略同形状の金具を有し、金具は、ブッシングの先端部にブッシングと同心状に埋設されているものである。
【0027】
本発明の第15の態様は、第5の態様乃至第12の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、高圧シールド体は、ブッシングの先端部外周に塗布された導電性の塗布層で形成されているものである。
【0028】
本発明の第16の態様は、第5の態様乃至第12の態様の何れかの態様であるアレスタにおいて、高圧シールド体は、円筒状の金具を有し、金具は、ブッシングの先端部の周りにブッシングの先端部を囲むように配設されているものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の第1の態様乃至第16態様のアレスタによれば、次のような効果がある。
【0030】
第1に、アレスタ素子積層体の外周にゴムモールド体を設け、当該アレスタモールド体をブッシングの挿入孔の内部に収容することで、従来のアレスタよりもより高い電圧階級の線路に適用することができる。
【0031】
第2に、アレスタ素子積層体の外周に設けたゴムモールド体をブッシングの先端部に向けて押圧することで、ブッシングの挿入孔内面とゴムモールド体外面の間の面圧を確保することができ、界面での絶縁破壊を防止することができる。
【0032】
第3に、アレスタモールド体の後端部にスプリングを配設し、当該スプリングにバネ力を付勢することで、アレスタモールド体をブッシングの先端部に向けて押圧することができる。
【0033】
第4に、ブッシングの挿入孔のテーパ内面にゴムモールド体のテーパ外面を嵌合させることで、軸方向の押圧力を面圧として有効に作用させることができる。
【0034】
第5に、電界が集中する高圧シールド体の後端側端部の内側に、面圧が有効に作用するテーパ内面を位置させることで、界面での絶縁破壊を防止することができる。
【0035】
第6に、ブッシングの挿入孔内にアレスタモールド体と交換的に絶縁栓を装着することで、ブッシングの挿入孔内の絶縁を確保した状態で機器の耐電圧試験等を行なうことができる。
【0036】
第7に、電界が集中する高圧シールド体の後端側端部の内側に絶縁栓を位置させることで、絶縁栓を装着した状態における電界のコントロールを有効に行なうことができ、また、高圧シールド体の後端側端部付近の内側のみを封止することで、ブッシングの挿入孔内の絶縁を確保できるため、絶縁栓の小型化を図ることができる。
【0037】
第8に、ブッシングの後端部を機器ケースの外部に気密に導出することで、機器の構造の簡素化、小型化および軽量化を図ることができる。
【0038】
第9に、高圧シールド体の外周を絶縁性のバリヤで覆うことで、相間の絶縁距離や機器ケースとの絶縁距離を短くすることができ、機器の縮小化を図ることができる。
【0039】
第10に、高圧シールド体を導電性の塗布層で形成することで、ブッシングの軽量化および低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明のアレスタを適用した好ましい実施の形態例について、図面を参照して説明する。なおここで、アレスタモールド体の「先端部」、ブッシングの「先端部」とは、アレスタモールド体、ブッシングそれぞれの高圧側の端部をいい、図中では上方向に相当する。また、アレスタモールド体の「後端部」、ブッシングの「後端部」は、先端部と反対側の端部をいい、図中で下方向に相当する。
[実施例1]
図1は、66/77kV級の本発明のアレスタの一例を示す一部断面図である。
【0041】
同図において、本発明のアレスタを有する電気機器は、開閉器等の電気機器(不図示)を気密に収容する機器ケ−ス1を備えており、機器ケ−ス1内には例えばSF6ガスなどの絶縁ガスが充填されている。また、機器ケース1の底部には開口部1aが設けられており、この開口部1aにはそれ自身の先端部を機器ケース1内に位置させ、かつそれ自身の後端部で開口部1aを気密に覆う如くブッシング2が配設され、このブッシング2内には後述するアレスタ素子積層体61を含むアレスタモールド体6が着脱自在に装着されている。
【0042】
ブッシング2は、エポキシ樹脂のモールド体等から成る硬質でかつ絶縁性のブッシング本体3と、ブッシング本体3の先端部にブッシング本体3と同心状に埋設された高圧シールド体4とを備えている。
【0043】
ブッシング本体3は、アレスタモールド体6の上半部を収容するための挿入孔(以下「上部挿入孔」という。)51aを有する上端閉鎖の円筒部(以下「上部円筒部」という。)51と、アレスタモールド体6の下半部を収容するための挿入孔(以下「下部挿入孔」という。)52aを有する円筒部(以下「下部円筒部」という。)52と、アレスタモールド体6の後述する円錐状部67bを収容するための挿入孔(以下「テーパ付挿入孔」という。)53aを有する円筒部(以下「中間円筒部」という。)53とを備えており、下部円筒部52の上部位置の外周には径方向に突出する環状の取付フランジ52bが連設されている。ここで、下部挿入孔52aの口径は、上部挿入孔51aの口径よりも大径とされ、また、テーパ付挿入孔53aは、ブッシング2の先端部から後端部に向かって円錐状に広がるテーパ内面53bを有しており、このテーパ内面53bを介して上部挿入孔51aおよび下挿入孔52aが連通されている。さらに、下部円筒部52の外径は機器ケース1の開口部1aの口径と略同径若しくはこれより若干小径とされ、取付フランジ52bの外径は機器ケース1の開口部1aの口径より大径とされている。
【0044】
高圧シールド体4は、上部円筒部51にその閉鎖部51bから上部円筒部51の後端部に跨って上部円筒部51と同心状に埋設される釣鐘状のシールド本体41と、シールド本体41の水平部中央に閉鎖部51bの上方に突出させた筒状部(以下「接続導体挿入部」という。)42と、接続導体挿入部42の上部に連設され主回路導体(不図示)に接続される主回路接続子43とを備えている。ここで、シールド本体41の側壁部41aは先端部から後端部に向かって円錐状に広がるように形成され、また、その軸方向の長さは上部円筒部51の閉鎖部51bから中間円筒部53の先端部近傍に至る長さ、すなわち、シールド本体41の側壁部41aの後端側端部の内側に前述のテーパ内面53bの先端部が位置するような長さとされている。なお、接続導体挿入部42はアレスタモールド体6の後述する接続導体62の挿入孔としての機能を有し、接続導体挿入部42の先端部に設けられた主回路接続子43はアレスタモールド体6の後述するコイル状のスプリング63のストッパとしての機能も有している。
【0045】
このような構成の高圧シールド体4は、図に示すように、主回路接続子43を上部円筒部51の閉鎖部51bより突出させ、側壁部41aが上部円筒部51の側壁部51b内に位置する如くして上部円筒部51と同心状に埋設されている。
【0046】
このような構成のブッシング2は、ブッシング2の上部円筒部51および中間円筒部53が機器ケース1内に位置し、下部円筒部52が開口部1aを通り機器ケース1の外部に導出されることで、取付フランジ52bの上面が機器ケース1の開口部1aの周縁部の下面に当接される。そこで、機器ケース1の開口部1aの周縁部に設けられた環状の凹溝1bにOリング1cを介在させ、取付フランジ52bに配設したボルト52cを締結することにより、ブッシング2を機器ケース1の開口部1aに気密に取り付けることができる。
【0047】
アレスタモールド体6は、図2に示すように、酸化亜鉛を主成分とする複数個のアレスタ素子61aを積層して成るアレスタ素子積層体61と、アレスタ素子積層体61の先端部側(高圧側)に配設される接続導体62と、接続導体62の先端部側(高圧側)に配設されるコイル状のスプリング(以下「高圧側スプリング」という。)63と、アレスタ素子積層体61の後端部側(低圧側)に配設される押し金具65と、押し金具65の下面側に配設されるコイル状のスプリング(以下「低圧側スプリング」という。)66と、アレスタ素子積層体61の外周に接続導体62および押し金具65に跨って一体的にモールドされるシリコーンゴムなどから成るゴムモールド体67とを備えている。ここで、ゴムモールド体67の外面形状はブッシング2の挿入孔(上部挿入孔51a、下部挿入孔52a、テーパ付挿入孔53a)の内面形状と対応するように形成されている。具体的には、ゴムモールド体67の先端部側(高圧側)側には上部挿入孔51aの内面に当接する小径部67aが、中間部にはテーパ付挿入孔53aのテーパ内面53bに当接するテーパ外面67cを有する円錐状部67bが、後端部側(低圧側)には下部挿入孔52aの内面に当接する大径部67dがそれぞれ設けられている。また、アレスタ素子61aは、所定のバリスタ電圧を考慮して系統電圧に対応した個数が決定される。本実施例は、66kVの高圧線路に適用するものである。
【0048】
接続導体62は、アレスタ素子積層体61の高圧側に当接されるアレスタ素子61aと略同形の円板部62aと、この円板部62aの上面中央部に上方に向けて突設された円筒部62bとを備えており、円筒部62bの外周には図示しないテープ状の導体接続子(マルチコンタクト)を嵌着するための環状の凹溝62cが設けられている。
【0049】
押し金具65は、ゴムモールド体67の後端部側(低圧側)の外径より若干小径とされた環状部材65aを備えており、この環状部材65aの上面中央部にはアレスタ素子61aと略同形の円盤状の押圧部65bが設けられ、下面側外周縁近傍には、例えば12個の凹陥部65cが円周方向に沿って等配する如くして設けられている。なお、図中65dは、環状部材65aの内周縁側に円周方向に沿って等配する如く設けられた例えば4個のネジ孔、65eは環状部材65aの下面側中央部に設けられた大径の凹陥部を示している。
【0050】
このような構成のアレスタ素子積層体61の外周には、その先端部に接続導体62の円板部62aの下面を当接し、後端部に押し金具65の押圧部65bを当接した状態で、接続導体62の円板部62aの上面部および押し金具65の外周に跨ってシリコーンゴムなどのゴムモールド体67が設けられ、このゴムモールド体67により、アレスタ素子積層体61が接続導体62および押し金具65と一体化される。
【0051】
次に、アレスタモールド体6をブッシング2内に着脱自在に装着する方法について説明する。
【0052】
先ず、接続導体62の円筒部62b内に円筒部62bの内径と略同径のコイル状の高圧側スプリング63をその上半部が突出する如くして装着し、この状態でアレスタモールド体6の先端部(高圧側)をブッシング2内に挿入し、高圧側スプリング63の先端部が主回路接続子43の内壁面43aに当接するまで押し込む。これにより、凹溝62cに配設した導体接続子(マルチコンタクト)を構成する舌片(不図示)が接続導体挿入部42の内周面に電気的に接触すると共に、ゴムモールド体67の小径部67aがブッシング2の上部挿入孔51aの内面に、ゴムモールド体67のテーパ外面67cがブッシング2のテーパ内面53bに、ゴムモールド体67の大径部67dが下部挿入孔52aの内面と当接することになる。
【0053】
次に、押し金具65の凹陥部65cに凹陥部65cの内径と略同径のコイル状の低圧側スプリング66をその下半部が突出する如くして装着し、この状態で、ブッシング2の下部円筒部52の下面に円盤状の金具から成るシール蓋Fを当接し、これをシール蓋Fの外周縁近傍に円周方向に沿って配設した複数本のボルトBで下部円筒部52の下面に締結する。なお、図中、符号Nはブッシング2の下部円筒部52の下面に埋設したネジ孔を示しており、このネジ孔NにボルトBの先端部が螺着される。
【0054】
このようなシール蓋Fの下部円筒部52下面への当接・固定により、低圧側スプリング66が軸方向に押圧され、低圧側スプリング66に所定のバネ力が付勢される。これにより、ゴムモールド体67がブッシング2の先端部に向けて押圧され、かつブッシング2のテーパ内面53bとゴムモールド体67のテーパ外面67cとの嵌合部に所定の面圧が付与される。
【0055】
また、ゴムモールド体67がブッシング2の先端部に向けて押圧されることにより、ゴムモールド体67の先端部に配置した高圧側スプリング63が軸方向に押圧され、当該高圧側スプリング63に所定のバネ力が付勢される。これにより、アレスタ素子61aと接続導体62間、アレスタ素子61a間、アレスタ素子61aと押圧部65b間に所定の面圧が付与され、これらの部材間が確実に接触する。
【0056】
以上のように、このような構成のアレスタによれば、アレスタモールド体6の全体がブッシング2の挿入孔の内部に収容されることで、後述するように従来のアレスタよりもより高い電圧階級の線路に適用することができ、また、ゴムモールド体がブッシングの先端部に向けて押圧されることで、ブッシングの挿入孔内面とゴムモールド体外面の間の面圧が確保され、界面での絶縁破壊を防止することができる。さらに、アレスタモールド体の後端部にスプリングが配設され、当該スプリングにバネ力が付勢されることで、アレスタモールド体をブッシングの先端部に向けて押圧することができ、また、ブッシングのテーパ内面にゴムモールド体のテーパ外面を嵌合させることで、軸方向の押圧力を面圧として有効に作用させることができる。さらに、電界が集中する高圧シールド体の後端側端部の内側に、面圧が有効に作用するテーパ外面を設けることで、後述するようにアレスタ素子61aの電圧分担の均一化を図ることができる。
【0057】
図3は、本実施例におけるアレスタの等電位分布図を示している。同図より、アレスタ素子積層体61の先端部は高圧シールド体4により遮蔽されることで、当該先端部に電界が集中せず、また、アレスタ素子積層体61の後端部は接地体としての機器ケース1の外部に配設されることで、当該後端部にも電界が集中せず、さらに、アレスタ素子積層体61の中間部は高圧シールド体4と接地体としての機器ケース1間の間隔の調整により電界が適正にコントロールされることで、当該中間部にも電界が集中していないことが判る。
【0058】
ここで、シールド本体41と接地体としての機器ケース1がアレスタ素子積層体61に及ぼす影響について説明する。先ず、シールド本体41の後端部と機器ケース1の上面との間隔を短くすると、シールド本体41および機器ケース1の影響によりアレスタ素子積層体61の中間部における電界が密になり、これと反対に、両者の間隔を広くすると、当該中間部における電界が疎になるという関係がある。従って、単に、両者の間隔を広げた構成にすることのみでは、アレスタ素子61aの電圧分担を均一化させることが困難になる。この点、本実施例においては、アレスタ素子積層体61の先端部(アレスタ素子積層体61の1/3程度の長さ)および中間部(アレスタ素子積層体61の1/3程度の長さ)を機器ケース1内に位置させ、アレスタ素子積層体61の後端部(アレスタ素子積層体61の1/3程度の長さ)を機器ケース1の外部に位置させることで、高圧シールド体4と接地体としての機器ケース1との間隔が適正に調整され、アレスタ素子積層体61の中間部における電界を適正にコントロールすることができ、ひいてはアレスタ素子61aの電圧分担の均一化を図ることができる。
【0059】
以上のように、このような構成のアレスタによれば、機器ケース1の開口部1aに気密に取り付けられたブッシング2内にアレスタ素子積層体61を機器ケース1の外部から着脱自在に装着することができることから、従来のガス絶縁形アレスタのように、切り離し装置を設ける必要がなくなり、機器の構造を簡素化することができ、また、耐電圧試験を行なう際に機器ケース1内の絶縁ガスを回収したり、充填したりする作業を不要とすることができる。さらに、アレスタ素子積層体61の先端部外周が高圧シールド体4により覆われていることから、アレスタ素子61aの電圧分担を均一化させることができ、ひいては66/77kV級の高圧線路にも適用できるアレスタを提供することができ、また、アレスタ素子積層体61の一部(低圧側)を機器ケース1の外部に導出させることで、機器の縮小化を図ることができる。
【0060】
図4は、機器の耐電圧試験を行なう際に、前述のアレスタモールド体6と交換的に、ブッシング2内に着脱自在に装着される絶縁栓20の一部断面図を示している。なお、同図において、図1および図2と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0061】
図4において、本発明における絶縁栓20は、ブッシング2のテーパ付挿入孔53a内に装着される絶縁栓本体21と、絶縁栓本体21の上方に位置しかつブッシング2の上部挿入孔51a内に上部円筒部51と同心状に装着される円筒状の接触部材22と、絶縁栓本体21の下方に位置しかつブッシング2の下部挿入孔52a内に下部円筒部52と同心状に装着される上端閉鎖の円筒状の押圧部材23とを備えている。ここで、接触部材22はアルミニウム合金等の金具で形成され、その外径はブッシングの上部挿入孔の口径よりも小径とされ、また、その軸方向の長さは高圧シールド4の頂部内壁41bと後述する高圧側電極27の上壁27b間の間隔と等しい長さとされている。具体的には、接触部材22の軸方向の長さは、絶縁栓20がブッシング2内に正規位置に装着された状態において、接触部材22の先端部が高圧シールド4の頂部内壁41bに電気的に接触し、後端部が高圧側電極27の上壁27bに電気的に接触するような長さとされている。また、押圧部材23はアルミニウム合金等の金具で形成され、円筒部の一部には軸方向に沿って厚肉部23aが設けられている。さらに、押圧部材23の閉鎖部23bには複数個のボルト挿通孔23cが円周方向に沿って等配する如く設けられ、厚肉部23aの後端面には必要に応じてねじ孔23dが設けられている。
【0062】
絶縁栓本体21は、ブッシング2の下部挿入孔52aの口径と略同径の外径を有する円柱状部24と、当該円柱状部24の先端部に連接されブッシング2のテーパ付挿入孔53aに配設される円錐状部25と、円柱状部24の後端部に球面状凸部26aを先端部に向けて埋設された半球状の低圧側電極26と、円錐状部25の先端部に球面状凸部27aを低圧側電極26と対向するように埋設された半球状の高圧側電極27とを備えている。
【0063】
ここで、円錐状部25の外面はブッシング2のテーパ内面53bと嵌合するテーパ外面25aを有しており、また、低圧側電極26の直径は円柱状部24の直径よりも若干小径とされ、さらに、その下端面は円柱状部24の下端面と面一になるように埋設され、当該低圧側電極26の下端面には複数個のスプリング収納孔26bと複数個のねじ孔26cが円周方向に沿って等配するように設けられている。
【0064】
円柱状部24および円錐状部25はエチレンプロピレンゴム等の絶縁材料から成り、低圧側電極26および高圧側電極27と一体的にモールドされている。
【0065】
次に、このように構成された絶縁栓20をブッシング2内に着脱自在に装着する方法について説明する。
【0066】
先ず、図1に示すボルトBを取り外し、ブッシング2の下部円筒部52からシール蓋Fを取り外して、ブッシング2内からアレスタモールド体6を取り外す。
【0067】
次に、図4に示すように、低圧側電極26のスプリング収納孔26bにスプリング28をその下半部がスプリング収納孔26bから突出する如くして配設し、次いで、ボルト29をボルト挿通孔23cに挿通しその先端部を低圧側電極26のねじ孔26cに取り付ける。これにより、押圧部材23がボルト29の軸部29aを介して進退自在に低圧側電極26に取り付けられる。そして、スプリング28にバネ力が付勢されていない状態で、接触部材22、絶縁栓本体21および押圧部材23をブッシング2内に挿入し、接触部材22の先端部が高圧シールドの頂部内壁面41bに当接するまで押し込む。これにより、絶縁栓本体21の円錐状部25のテーパ外面25aがブッシング2のテーパ内面53bに当接する。
【0068】
次いで、ブッシング2の下部円筒部52の下面に、前述と同様に、シール蓋Fを当接し、これを複数本のボルトBで下部円筒部52の下面に締結する。これにより、押圧部材23の上端面がボルト29の軸部29aを介して低圧側電極26の下端面に当接する位置まで押し込まれ、これと共に、スプリング28が軸方向に押圧され当該スプリング28に軸方向のバネ力が付勢される。
【0069】
そして、スプリング28に軸方向のバネ力が付勢されると、絶縁栓20を構成する押圧部材23がブッシング2の先端部に向かって押圧されることで、絶縁栓本体21のテーパ外面25aとブッシング2のテーパ内面53bとの嵌合部に所定の面圧が付与される。
【0070】
図5は、本実施例における絶縁栓の等電位分布図を示している。同図より、絶縁栓20をブッシング2内の正規位置に装着することで、絶縁栓20を構成する絶縁栓本体21の先端部の外周が高圧シールド体4により覆われることから、絶縁栓本体21における電界が適正にコントロールされていることが判る。
【0071】
以上のように、このような構成の絶縁栓によれば、機器の耐電圧試験等を行なう際に、ブッシング2の挿入孔内にアレスタモールド体6と交換的に絶縁栓20を装着することで、アレスタモールド体6を外した状態におけるブッシング2の挿入孔内の絶縁を確保することができる。また、電界が集中する高圧シールド体4の後端側端部の内側に絶縁栓20を位置させることで、絶縁栓20を装着した状態における電界のコントロールを有効に行なうことができ、さらに、また、高圧シールド体4の後端側端部付近の内側のみを封止することで、ブッシング2の挿入孔内の絶縁を確保できるため、絶縁栓20の小型化を図ることができる。
[実施例2]
図6は、本発明の第2の実施例におけるアレスタの一部断面図を示している。なお、同図において、図1と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0072】
この実施例においては、ブッシング7の先端部の外周面に点線で示すように導電性の塗布層75が設けられている。
【0073】
先ず、第2の実施例におけるブッシング7は、それ自身の上面の外周縁近傍に環状の凹陥部71aが設けられた中間円筒部71と、中間円筒部71の上端部に中間円筒部71と同心状に連接され中間円筒部71の外径より小径でかつ先細り状の円錐状部72aを有し上端部が閉鎖された上部円筒部72と、中間円筒部71の下面の外周縁近傍に中間円筒部71と同心状に連接され中間円筒部71の外径よりも小径の下部円筒部73と、上部円筒部72の閉鎖部72bの中央部にそれ自身の先端部を閉鎖部72bから突設するように埋設した主回路接続子74とを備えている。なお、この実施例におけるブッシング7は下部円筒部73の外径が機器ケース1の開口部1aより大径とされ、下部円筒部73の外周縁の下面が機器ケース1の上面に気密に載置・固定されている。
【0074】
符号75は、高圧シールド体としての導電性の塗布層(例えば、銀ペイントから成る塗布層)を示しており、この導電性の塗布層75は、上部円筒部72の閉鎖部72bの外表面から円錐状部72aの外周面および中間円筒部71の凹陥部71aを構成する半円状部分71bの外周面に跨って設けられている。
【0075】
図7は、第2の実施例におけるアレスタの電位分布を示している。同図より、この実施例においても、第1の実施例におけるアレスタと同様に、アレスタ素子積層体61の先端部は高圧シールド体としての導電性の塗布層75により遮蔽されることで、当該先端部に電界が集中せず、また、アレスタ素子積層体61の後端部は接地体としての機器ケース1の外部に配設されることで、当該後端部にも電界が集中せず、さらに、アレスタ素子積層体61の中間部は導電性の塗布層75と接地体としての機器ケース1間の間隔の調整により電界がコントロールされることで、当該中間部にも電界が集中していないことが判る。
【0076】
従って、第2の実施例におけるアレスタにおいても、アレスタ素子61aの電圧分担を均一化させることができる。また、この実施例におけるアレスタにおいては、第1の実施例における金具から成る高圧シールド体4に代えて導電性の塗布層75が設けられていることから、第1の実施例におけるアレスタよりも軽量化および低コスト化を図ることができる。なお、この実施例におけるアレスタは、ガス絶縁や空気絶縁タイプの電気機器に好適する。
[実施例3]
図8は、本発明の第3の実施例におけるアレスタの一部断面図を示している。なお、同図において、図1と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0077】
この実施例においては、ブッシング8の先端部に別体の高圧シールド体10が載置・固定されている。
【0078】
先ず、第3の実施例におけるブッシング8は、先細り状の中間円筒部81と、中間円筒部81の上端部に中間円筒部81と同心状に連接され中間円筒部81の外径より小径の上部円筒部82と、中間円筒部81の下端部に中間円筒部81と同心状に連接され中間円筒部81の下端部外径と略同径の下部円筒部83とを備えており、下部円筒部83の先端部位置の外周には環状の取付フランジ83aが連設されている。
【0079】
高圧シールド体10は、上端閉鎖の円筒状の金具11と、金具11の閉鎖部12中央に閉鎖部12から上方に向けて立設された主回路接続子13とを備えている。
【0080】
このような構成の高圧シールド体10は、図に示すように、主回路接続子13を上部円筒部82の上方位置に配置し、金具11の側壁部14が上部円筒部82の側壁部82aの周りに位置する如くして上部円筒部82の先端部に上部円筒部82と同心状に載置・固定されている。
【0081】
図9は、第3の実施例におけるアレスタの電位分布を示している。同図より、この実施例においても、第1の実施例におけるアレスタと同様に、アレスタ素子積層体61の先端部は高圧シールド体10を構成する円筒状の金具11により遮蔽されることで、当該先端部に電界が集中せず、また、アレスタ素子積層体61の後端部は接地体としての機器ケース1の外部に配設されることで、当該後端部にも電界が集中せず、さらに、アレスタ素子積層体61の中間部は円筒状の金具11と接地体としての機器ケース1間の間隔の調整により電界がコントロールされることで、当該中間部にも電界が集中していないことが判る。
【0082】
従って、第3の実施例におけるアレスタにおいても、全体としてアレスタ素子61aの電圧分担を均一化させることができる。なお、この実施例におけるアレスタは、油絶縁、ガス絶縁若しくは空気絶縁タイプの電気機器に好適する。
[実施例4]
図10は、本発明の第4の実施例におけるアレスタの一部断面図を示している。なお、同図において、図1および図8と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0083】
この実施例においては、ブッシング9の先端部に図6に示す高圧シールド体10が載置・固定され、また、次のようにして、高圧シールド体10の回りが絶縁性のバリヤ91bで覆われている。
【0084】
先ず、第4の実施例におけるブッシング9は、それ自身の上面の外周縁近傍に環状の凹陥部91aが設けられた上部円筒部91と、上部円筒部91の下端部に上部円筒部91と同心状に連接され上部円筒部91の外径より小径の下部円筒部92とを備えている。そして、図6に示すものと同様の構成の高圧シールド体10は、その側壁部14が上部円筒部91の凹陥部91a内に位置するように上部円筒部91と同心状に配設されている。なお、この実施例におけるブッシング9は上部円筒部91の外径が機器ケース1の開口部1aより大径とされ、上部円筒部91の外周縁の下面が機器ケース1の内面に気密に載置・固定されている。
【0085】
図11は、第4の実施例におけるアレスタの電位分布を示している。同図より、この実施例においても、第1の実施例におけるアレスタと同様に、アレスタ素子積層体61の先端部は高圧シールド体としての円筒状の金具11により遮蔽されることで、当該先端部に電界が集中せず、また、アレスタ素子積層体61の後端部は接地体としての機器ケース1の外部に配設されることで、当該後端部にも電界が集中せず、さらに、アレスタ素子積層体61の中間部は円筒状の金具11と接地体としての機器ケース1間の間隔の調整により電界がコントロールされることで、当該中間部にも電界が集中していないことが判る。
【0086】
従って、第4の実施例におけるアレスタにおいても、全体としてアレスタ素子積層体61の電圧分担を均一化させることができる。また、この実施例におけるアレスタにおいては、高圧シールド体10の側壁部14が上部円筒部91の凹陥部91aに配設されることで、円筒状の金具11の周りに絶縁性のバリヤ部材91bが配置されることになるから、相間の絶縁距離、若しくは機器ケース1との絶縁距離を短くすることができ、ひいては、機器の縮小化を図ることができる。なお、この実施例におけるアレスタは、油絶縁、ガス絶縁若しくは空気絶縁タイプの電気機器に好適する。
[実施例5]
図12は、本発明の第5の実施例におけるアレスタの一部断面図を示している。なお、同図において、図1および図2と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0087】
この実施例においては、次のようにして、アレスタモールド体6の先端部に高圧シールド体20が埋設されている。
【0088】
先ず、第5の実施例におけるブッシング30は、上部円筒部51の閉鎖部51b中央に図1に示す接続導体挿入部42が埋設され、接続導体挿入部42の先端部には図1に示す主回路接続子43が連設されている。また上部円筒部51の内周には閉鎖部51bから下端部に向かって円錐状に広がるテーパ孔31が設けられ、このテーパ孔31は図1に示す下部挿入孔52aと同径の中間部挿入孔32と連通している。
【0089】
高圧シールド体20は、円盤状の水平部21aと、水平部21の外周縁から円錐状に広がるように垂設された側壁部21bとを有する逆コップ状のシールド本体21を備えており、このシールド本体21の水平部21aの上部中央には図2に示す円筒部62bが突設されている。
【0090】
このような構成の高圧シールド体20は、図に示すように、水平部21aがアレスタ素子積層体61の先端部側(高圧側)に当接され、この状態においてアレスタ素子積層体61の外周に設けられたゴムモールド体67により一体化されている。なお、ゴムモールド体67の先端部外周にはテーパ孔31の内周面に当接する円錐状部67dが設けられている。
【0091】
この実施例においても、アレスタ素子積層体61の先端部外周が高圧シールド体20により覆われていることから、アレスタ素子61aの電圧分担を均一化させることができる。
【0092】
なお、第5の実施例においては、高圧シールド体20をゴムモールド体67に埋設した場合について説明しているが、当該高圧シールド体20はゴムモールド体67の外周に配設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、特許請求の範囲内で、次のように、変更、修正を加えることができる。
【0094】
第1に、前述の実施例においては、機器ケース1の底部にブッシングを配設した場合について説明しているが、機器ケース1の側壁にブッシングを配設してもよい。
【0095】
第2に、前述の実施例においては、66/77kVの高圧線路に本発明のアレスタを適用する場合について説明しているが、66kV未満の線路若しくは77kVを超える高圧線路に本発明のアレスタを適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施例におけるアレスタの一部断面図。
【図2】本発明の第1の実施例におけるアレスタモールド体の一部断面図。
【図3】本発明の第1の実施例におけるアレスタの等電位分布図。
【図4】本発明における絶縁栓の一部断面図。
【図5】本発明における絶縁栓の等電位分布図。
【図6】本発明の第2の実施例におけるアレスタの一部断面図。
【図7】本発明の第2の実施例におけるアレスタの等電位分布図。
【図8】本発明の第3の実施例におけるアレスタの一部断面図。
【図9】本発明の第3の実施例におけるアレスタの等電位分布図。
【図10】本発明の第4の実施例におけるアレスタの一部断面図。
【図11】本発明の第4の実施例におけるアレスタの等電位分布図。
【図12】本発明の第5の実施例におけるアレスタの一部断面図。
【図13】従来のアレスタの一部断面図。
【図14】従来のアレスタの一部断面図。
【図15】従来の絶縁栓の一部断面図。
【符号の説明】
【0097】
1・・・機器ケース
1a・・・開口部
2・・・ブッシング
4・・・高圧シールド体
6・・・アレスタモールド体
61・・・アレスタ素子積層体
67・・・ゴムモールド体
11・・・円筒状の金具
20・・・絶縁栓
21・・・絶縁栓本体
22・・・接触部材
23・・・押圧部材
75・・・導電性の塗布層
91b・・・絶縁性のバリヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を収容する機器ケースの開口部に、前記開口部を気密に覆う如く配設されたブッシングと、前記ブッシングの挿入孔内に前記機器ケースの外部から着脱自在に装着されるアレスタモールド体と備え、
前記アレスタモールド体は、複数個のアレスタ素子を積層して成るアレスタ素子積層体と、前記アレスタ素子積層体の外周に設けられたゴムモールド体とを備え、
前記アレスタモールド体は、前記ブッシングの挿入孔の内部に収容されていることを特徴とするアレスタ。
【請求項2】
前記アレスタモールド体は、前記ブッシングの挿入孔の内部で前記ブッシングの先端部に向けて押圧されていることを特徴とする請求項1記載のアレスタ。
【請求項3】
前記アレスタモールド体の後端部には、軸方向の押圧によりバネ力が付勢されるスプリングが配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のアレスタ。
【請求項4】
前記ブッシングの挿入孔の内面は、前記ブッシングの先端部から後端部に向かって円錐状に広がるテーパ内面を有し、
前記ゴムモールド体の外面は、前記テーパ内面と嵌合するテーパ外面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載のアレスタ。
【請求項5】
前記ブッシングには、前記アレスタ素子積層体の先端部外周を覆う高圧シールド体が設けられ、
前記テーパ内面は、前記高圧シールド体の後端側端部の内側に位置することを特徴とする請求項4記載のアレスタ。
【請求項6】
前記ブッシングの挿入孔内には、前記アレスタモールド体と交換的に、前記機器ケースの外部から着脱自在に絶縁栓が装着されることを特徴とする請求項1乃至請求項5何れか1項記載のアレスタ。
【請求項7】
前記ブッシングには、前記アレスタ素子積層体の先端部外周を覆う高圧シールド体が設けられ、
前記絶縁栓は、前記高圧シールド体の後端側端部の内側に位置することを特徴とする請求項6記載のアレスタ。
【請求項8】
前記絶縁栓は、前記ブッシングの挿入孔内に装着され、外面に前記ブッシングのテーパ内面と嵌合するテーパ外面を有する絶縁栓本体と、前記ブッシングの挿入孔内に装着され、前記高圧シールド体と前記絶縁栓本体の高圧側電極とを電気的に接触させる接触部材と、前記ブッシングの挿入孔内に装着され、前記絶縁栓本体を前記ブッシングの先端部側に向けて押圧する押圧部材とを備えていることを特徴とする請求項7記載のアレスタ。
【請求項9】
前記絶縁栓本体の後端面と前記押圧部材の先端面間にスプリングが配設され、前記スプリングは、前記押圧部材の前記ブッシングの先端部方向への押圧によりバネ力が付勢されることを特徴とする請求項8記載のアレスタ。
【請求項10】
前記押圧部材は、前記絶縁栓本体に進退自在に取り付けられていることを特徴とする請求項9記載のアレスタ。
【請求項11】
前記ブッシングは、硬質のプラスチック樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10何れか1項記載のアレスタ。
【請求項12】
前記ブッシングの後端部は、前記機器ケースの開口部を通り前記機器ケースの外部に気密に導出されていることを特徴とする請求項1乃至請求項11何れか1項記載のアレスタ。
【請求項13】
前記高圧シールド体の外周は、絶縁性のバリヤにより覆われていることを特徴とする請求項5乃至請求項12何れか1項記載のアレスタ。
【請求項14】
前記高圧シールド体は、前記ブッシングの先端部の形状と略同形状の金具を有し、前記金具は、前記ブッシングの先端部に前記ブッシングと同心状に埋設されていることを特徴とする請求項5乃至請求項12何れか1項記載のアレスタ。
【請求項15】
前記高圧シールド体は、前記ブッシングの先端部外周に塗布された導電性の塗布層で形成されていることを特徴とする請求項5乃至請求項12何れか1項記載のアレスタ。
【請求項16】
前記高圧シールド体は、円筒状の金具を有し、前記金具は、前記ブッシングの先端部の周りに前記ブッシングの先端部を囲むように配設されていることを特徴とする請求項5乃至請求項12何れか1項記載のアレスタ。
【請求項1】
電気機器を収容する機器ケースの開口部に、前記開口部を気密に覆う如く配設されたブッシングと、前記ブッシングの挿入孔内に前記機器ケースの外部から着脱自在に装着されるアレスタモールド体と備え、
前記アレスタモールド体は、複数個のアレスタ素子を積層して成るアレスタ素子積層体と、前記アレスタ素子積層体の外周に設けられたゴムモールド体とを備え、
前記アレスタモールド体は、前記ブッシングの挿入孔の内部に収容されていることを特徴とするアレスタ。
【請求項2】
前記アレスタモールド体は、前記ブッシングの挿入孔の内部で前記ブッシングの先端部に向けて押圧されていることを特徴とする請求項1記載のアレスタ。
【請求項3】
前記アレスタモールド体の後端部には、軸方向の押圧によりバネ力が付勢されるスプリングが配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のアレスタ。
【請求項4】
前記ブッシングの挿入孔の内面は、前記ブッシングの先端部から後端部に向かって円錐状に広がるテーパ内面を有し、
前記ゴムモールド体の外面は、前記テーパ内面と嵌合するテーパ外面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項記載のアレスタ。
【請求項5】
前記ブッシングには、前記アレスタ素子積層体の先端部外周を覆う高圧シールド体が設けられ、
前記テーパ内面は、前記高圧シールド体の後端側端部の内側に位置することを特徴とする請求項4記載のアレスタ。
【請求項6】
前記ブッシングの挿入孔内には、前記アレスタモールド体と交換的に、前記機器ケースの外部から着脱自在に絶縁栓が装着されることを特徴とする請求項1乃至請求項5何れか1項記載のアレスタ。
【請求項7】
前記ブッシングには、前記アレスタ素子積層体の先端部外周を覆う高圧シールド体が設けられ、
前記絶縁栓は、前記高圧シールド体の後端側端部の内側に位置することを特徴とする請求項6記載のアレスタ。
【請求項8】
前記絶縁栓は、前記ブッシングの挿入孔内に装着され、外面に前記ブッシングのテーパ内面と嵌合するテーパ外面を有する絶縁栓本体と、前記ブッシングの挿入孔内に装着され、前記高圧シールド体と前記絶縁栓本体の高圧側電極とを電気的に接触させる接触部材と、前記ブッシングの挿入孔内に装着され、前記絶縁栓本体を前記ブッシングの先端部側に向けて押圧する押圧部材とを備えていることを特徴とする請求項7記載のアレスタ。
【請求項9】
前記絶縁栓本体の後端面と前記押圧部材の先端面間にスプリングが配設され、前記スプリングは、前記押圧部材の前記ブッシングの先端部方向への押圧によりバネ力が付勢されることを特徴とする請求項8記載のアレスタ。
【請求項10】
前記押圧部材は、前記絶縁栓本体に進退自在に取り付けられていることを特徴とする請求項9記載のアレスタ。
【請求項11】
前記ブッシングは、硬質のプラスチック樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10何れか1項記載のアレスタ。
【請求項12】
前記ブッシングの後端部は、前記機器ケースの開口部を通り前記機器ケースの外部に気密に導出されていることを特徴とする請求項1乃至請求項11何れか1項記載のアレスタ。
【請求項13】
前記高圧シールド体の外周は、絶縁性のバリヤにより覆われていることを特徴とする請求項5乃至請求項12何れか1項記載のアレスタ。
【請求項14】
前記高圧シールド体は、前記ブッシングの先端部の形状と略同形状の金具を有し、前記金具は、前記ブッシングの先端部に前記ブッシングと同心状に埋設されていることを特徴とする請求項5乃至請求項12何れか1項記載のアレスタ。
【請求項15】
前記高圧シールド体は、前記ブッシングの先端部外周に塗布された導電性の塗布層で形成されていることを特徴とする請求項5乃至請求項12何れか1項記載のアレスタ。
【請求項16】
前記高圧シールド体は、円筒状の金具を有し、前記金具は、前記ブッシングの先端部の周りに前記ブッシングの先端部を囲むように配設されていることを特徴とする請求項5乃至請求項12何れか1項記載のアレスタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−165436(P2006−165436A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357916(P2004−357916)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】
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