説明

アンカーチェーンホースパイプカバー

【課題】船外からアンカーチェーンをよじ登っても泥棒等が不法に侵入することができない、アンカーチェーンホースパイプカバー構造を提供する。
【解決手段】船舶の停泊用アンカーチェーンが通るアンカーチェーンホースパイプのカバー1において、前記ホースパイプ開口部103aの両端に配置されるヒンジ3a1,3a2,3b1,3b2と、前記ヒンジに観音開き状に回動可能に接続されるカバー摺動支持枠4a,4bと、前記カバー摺動支持枠に前記開口部の中央に摺動可能に配置される左右のカバー2a,2bと、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶のアンカーチェーンホースパイプカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の船首部には、停泊用のアンカーが設けられており、このような停泊用アンカーに対して、該アンカーのチェーンが通るアンカーチェーンホースパイプが設けられ、該アンカーチェーンホースパイプには落下防止および侵入防止のためにカバーが設けられている。
【0003】
この種のアンカーチェーンホースパイプカバーとしては、例えば、実公平5−11114号公報に開示のものが知られている。当該実公平5−11114号公報に開示のものは、考案名称「錨鎖孔蓋装置」に係り、「人力を用いることなく、容易にかつ安全に錨鎖孔蓋の開閉および固定等の操作を行なえるようにした、錨鎖孔蓋装置を提供すること」を目的として(同公報明細書23欄4行〜6行参照)、「船体甲板に形成された錨鎖孔の縁部にヒンジを介して開閉可能に装着された蓋部材をそなえ、同蓋部材の上面に固着された作動レバーと、同蓋部材の両側部に摺動可能に取り付けられて船体甲板上のクリートと係合しうる閉鎖ストツパーとが設けられるとともに、上記錨鎖孔の近傍において船体甲板上に立設された架台と、同架台に枢着された揺動アームに一端を枢着される蓋部材駆動用流体圧シリンダーとが設けられて、同シリンダーの他端に上記作動レバーが枢着され、上記シリンダーによる上記揺動アームの揺動と連動して上記閉鎖ストツバーを進退させるべく同閉鎖ストツパーと上記揺動アームとを連結するリンク機構が設けられた」の構成により(同公報実用新案登録請求の範囲の記載参照)、「錨鎖孔蓋の開閉および固定等の作業が、人力を用いることなく、遠隔操作により行なえるようになるので、同作業に伴う危険が解消されるとともに、同作業が容易になり、これにより船舶乗組員の省人化に役立つ」等の効果を奏するものである(同公報明細書5頁9欄15行〜20行参照)。
【0004】
図5は、当該実公平5−11114号公報に第1図として示される錨鎖孔蓋装置の一実施例平面図であり、図5において、符号101は、船体甲板、102はダブラ、103は錨鎖孔、103aは錨鎖孔の開口部、104は蓋部材、104aは側板、104bは閉鎖ストツパーガイド、104cは軸受、104dは開放ストツパー用穴、104eは開放ストツパー用掛金、104fは補強材、104gはヒンジ部材、104hは作動レバー、105はクリート、106は閉鎖ストツパー、106aは作動軸、107は連結金物、107a、107bはピン、108は転動軸、108a、108bは、転動レバー、109は架台、111aはシリンダー頭部金物、111bは作動突起部、111dはピン、112は作動軸、112bはピン、114は開放ストツパー作動軸、114cは突起部、115はアイプレート、119はリンク機構である。
【0005】
また、当該実公平5−11114号公報には、錨鎖孔径の大きい場合の錨鎖孔蓋装置のヒンジ式錨鎖孔蓋101”の例として、同装置の平面図(図6(a))、同側面図(図6(b))が開示され(同公報第10図2、b参照)、このヒンジ式錨鎖孔蓋101”は、船体上にその端部をヒンジ106”によつて枢着され、同錨鎖孔蓋101”は、ヒンジ106”のまわりに上下に回動できるようになつており、ヒンジ式錨鎖孔蓋101”の開閉操作は、同錨鎖孔蓋101”上面にそなえられたハンドル104”を用いて、人力で上下方向に回動させて行なわれる構成のものであり、錨鎖孔蓋101’101”は、いずれもその閉鎖状態で、図示しないピン等の金物によつて船体に固定される構成のものである(同公報1頁2欄8行〜19行参照)。なお、図6(a)(b)において、符号101”は、ヒンジ式錨鎖孔蓋、104”は、ハンドル、106”は、ヒンジ、105”は、係合部である。
【0006】
このような実公平5−11114号公報に開示のものを始めとする従来のアンカーチェーンホースパイプカバーは、図7に示されるような片側ヒンジの2分割タイプのものが通例であり、さらに、船の長さ方向に開くものが採用されている。
図7は、従来のアンカーチェーンホースパイプカバーの概略を示す図であり、図7において、符号201は、アンカーチェーンホースパイプカバー、202は、アンカーチェーン用ホースパイプ上部開口部、203、203は、ヒンジ、204a、204b、204cは、トグルピンストッパー、205、205は、開き止め用ボルト金物である。
【0007】
図7に示されるように、このアンカーチェーンホースパイプカバー201は、片側ヒンジ型であるため、開閉時にアンカーチェーン(図示外)にカバー201が当たらないようにアンカーチェーン(図示外)とカバー201の間の隙間に余裕をもたせた形状としている。したがって、カバー201の閉鎖時には、この余裕が大きな隙間となり、船外からアンカーチェーンをよじ登ってきた泥棒等の不法侵入の手段として用いられるという問題があった。
【0008】
また、前記開き止め用ボルト金物205、205は、年月が経つとねじ切り部が錆やゴミ詰まりによりねじ込みが困難となるという問題もあった。さらに、該カバー201は丸棒製であるため、容易に手を入れることができ、開き止めを解除することができ泥棒等が不法侵入することが可能という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公平5−11114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、船外からアンカーチェーンをよじ登っても泥棒等が不法に侵入することができない、アンカーチェーンホースパイプカバー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願請求項1に係る発明は、船舶の停泊用アンカーチェーンが通るアンカーチェーンホースパイプのカバーにおいて、前記ホースパイプ開口部の両端に配置されるヒンジと、前記ヒンジに観音開き状に回動可能に接続されるカバー摺動支持枠と、前記カバー摺動支持枠に前記開口部の中央に摺動可能に配置される左右のカバーと、からなることを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に係るアンカーチェーンホースパイプカバーにおいて、前記左右のカバー端部の合わせ目に配置される穴開きピースと、前記ホースパイプ開口部近辺で前記穴開きピースの契合位置に配置されるストッパー孔と、前記穴開きピースと前記ストッパー孔との間に挿入される閂型ストッパーとを具備してなることを特徴とする。
さらに、本願請求項3に係る発明は、前記請求項1に係るアンカーチェーンホースパイプカバーにおいて、前記ヒンジは、横長ヒンジからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上述のとおり構成されているので、次の効果を奏する。
横長ヒンジとすることにより、アンカーチェーンに当たらない位置でカバーを閉鎖することが可能となり、カバーをチェーン側にスライドさせカバーの隙間を減少することが可能となったため、船外からの泥棒(密航者)の侵入を防ぐことが可能という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るアンカーチェーンホースパイプカバーを実施するための形態の一実施例であるアンカーチェーンホースパイプカバーの実施例1を示す概略図、
【図2】図2は、本実施例1に係るアンカーチェーンホースカバー2a、2bが観音開き状態で開いた状態を示す図、
【図3】図3は、観音開きのカバー2a、2bが閉じた状態で、中央部に摺動する前の状態を示す図、
【図4】図4は、カバー2a、2bは中央部に修道され、狭いアンカーチェーン用ホースパイプ上部開口部8が形成され、同開口部8にアンカーチェーン11が挿通された状態を示す図、
【図5】図5は、実公平5−11114号公報に第1図として示される錨鎖孔蓋装置の一実施例平面図、
【図6】図6(a)は、実公平5−11114号公報に開示の錨鎖孔径の大きい場合の錨鎖孔蓋装置のヒンジ式錨鎖孔蓋101”の平面図、図6(b)は、同側面図、
【図7】図7は、従来のアンカーチェーンホースパイプカバーの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るアンカーチェーンホースパイプカバーを実施するための形態の一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に係るアンカーチェーンホースパイプカバーを実施するための形態の一実施例であるアンカーチェーンホースパイプカバーの実施例1を示す概略図であり、図2〜図4は、本実施例1に係るアンカーチェーンホースパイプカバー1の開閉動作を示す図であり、図2は、本実施例1に係るアンカーチェーンホースカバー2a、2bが観音開き状態で開いた状態を示す図であり、図3は、観音開きのカバー2a、2bが閉じた状態で、中央部に摺動する前の状態を示す図であり、図4は、カバー2a、2bは中央部に修道され、狭いアンカーチェーン用ホースパイプ上部開口部8が形成され、同開口部8にアンカーチェーン11が挿通された状態を示す図である。
【0016】
図1〜図4において、符号1は、本実施例1に係るアンカーチェーンホースパイプカバー、2aは、右側カバー、2bは、左側カバー、3a1、3a2は、右側横長ヒンジ、3b1、3b2は、左側横長ヒンジ、4aは、右側カバー摺動支持枠、4bは左側カバー摺動支持枠、5a1、5a2は、右側穴開きピース、5b1、5b2は、左側穴開きピース、6aは、船首側閂型ストッパー、6bは船尾側閂型ストッパー、7a1,7a2、7b1、7b2は、ストッパー孔、8は、アンカーチェーン用ホースパイプ上部開口部、9、9は、前記閂型ストッパー支持部、10,10,・・・・は、ハンドル、11は、アンカーチェーンである。
【0017】
図1に示すように、アンカーチェーンホースパイプカバー2a、2bを左右観音開きとし、また、アンカーチェーン(図示外)とカバー2a、2bとの隙間を削減するため、ヒンジ3a1、3a2、3b1、3b2を横長ヒンジタイプとし、カバー2a、2bの開き止めにボルト金物の代わりにカバー端部の合わせ目に穴開きピース5a1、5a2、5b1、5b2を取付けて、該穴開きピース5a1、5a2、5b1、5b2内に閂型ストッパー6a、6bを挿入する。さらに、カバー2a、2bを丸型から鋼板製に変更し、手が入らないようにし、かつ、泥棒が侵入しても中からアンカーチェーンホースパイプカバー2a、2bを開けることができない構造とする。
【0018】
すなわち、本実施例1に係るアンカーチェーンホースパイプカバー1は、船舶の停泊用アンカーチェーンが通るアンカーチェーンホースパイプのカバーであって、前記ホースパイプ開口部103aの両端に回動可能に配置される横長タイプのヒンジヒンジ3a1、3a2、3b1、3b2と、このヒンジヒンジ3a1、3a2、3b1、3b2に観音開き状に配置されるカバー摺動支持枠4a、4bとを有し、さらに、このカバー摺動支持枠4a、4bには、アンカーチェーン用ホースパイプ開口部202の中央方向に摺動可能に配置される左右分割可能な二つのカバー2a、2bとからなるものである。
【0019】
そして、図1ないし図4に示すように、本実施例1に係るアンカーチェーンホースパイプカバー2a、2bは、従来のように丸型のカバーではなく、左右観音開きの鋼板製とし、また、前記ヒンジ3a1、3a2、3b1、3b2は、横長ヒンジタイプとし、さらに両カバー2a、2bの端部の合わせ目には、前記穴開きピース5a1、5a2,5b1、5b2を取付けて、該穴開きピース5a1、5a2,5b1、5b2内に前記閂型ストッパー6a、6bを挿入して前記ストッパー孔7a1,7a2、7b1、7b2で施錠可能とした構造としたものである。
【0020】
すなわち、図1〜図4に示すように、本実施例1に係るアンカーチェーンホースパイプカバー2a、2bは、アンカーチェーン11を上げ下ろしする際には、前記カバー2a、2bを左右に摺動させて開き、さらに、観音開きに開け放してアンカーチェーン11を上げ、または下げ降ろし,アンカーチェーンが所定位置に配置されたら、前記観音開きカバー2a、2bを閉じ、さらに、中央方向に摺動させて、開口部が狭いアンカーチェーン用ホースパイプ上部開口部8を形成するようにする。
【0021】
そして、しかる後、前記カバー2a、2bの端部の合わせ目に配置された前記穴開きピース5a1、5a2,5b1、5b2と、前記ストッパー孔7a1,7a2、7b1、7b2に前記閂型ストッパー6a、6bを挿入して施錠する。
このような構成としたので、本実施例1に係るアンカーチェーンホースパイプカバーは、アンカーチェーン11に当たらない位置でカバー2a、2bを開閉閉鎖することが可能となり、さらに、カバー2a、2bをアンカーチェーン11側にスライドさせカバーの隙間を減少することが可能となったため、船外からの泥棒(密航者)の侵入を防ぐことができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、船舶のアンカーチェーンホースパイプカバーに利用される。
【符号の説明】
【0023】
1 アンカーチェーンホースパイプカバー
2a、2b カバー
3a1、3a2、3b1、3b2 ヒンジ
4a、4b カバー摺動支持枠
5a1、5a2、5b1、5b2 穴開きピース
6a、6b 閂型ストッパー
7a1,7a2、7b1、7b2 ストッパー孔
8 アンカーチェーン用ホースパイプ上部開口部
9、9 閂型ストッパー支持部
10,10,・・・・ ハンドル
11 アンカーチェーン
101 船体甲板
101” ヒンジ式錨鎖孔蓋
102 ダブラ
103 錨鎖孔
103a 錨鎖孔の開口部
104 蓋部材
104” ハンドル
104a 側板
104b 閉鎖ストツパーガイド
104c 軸受
104d 開放ストツパー用穴
104e 開放ストツパー用掛金
104f 補強材
104g ヒンジ部材
104h 作動レバー
105 クリート
105” 係合部
106 閉鎖ストツパー
106” ヒンジ
106a 作動軸
107 連結金物
107a、107b ピン
108 転動軸
108a、108b 転動レバー
109 架台
111a シリンダー頭部金物
111b 作動突起部
111d ピン
112 作動軸
112b ピン
114 開放ストツパー作動軸
114c 突起部
115 アイプレート
119 リンク機構
201 アンカーチェーンホースパイプカバー
202 アンカーチェーン用ホースパイプ上部開口部
203、203 ヒンジ
204a、204b、204c トグルピンストッパー
205、205 開き止め用ボルト金物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の停泊用アンカーチェーンが通るアンカーチェーンホースパイプのカバーにおいて、
前記ホースパイプ開口部の両端に配置されるヒンジと、
前記ヒンジに観音開き状に回動可能に接続されるカバー摺動支持枠と、
前記カバー摺動支持枠に前記開口部の中央に摺動可能に配置される左右のカバーと、
からなることを特徴とするアンカーチェーンホースパイプカバー。
【請求項2】
前記左右のカバー端部の合わせ目に配置される穴開きピースと、
前記ホースパイプ開口部近辺で前記穴開きピースの契合位置に配置されるストッパー孔と、
前記穴開きピースと前記ストッパー孔との間に挿入される閂型ストッパーとを具備してなることを特徴とする請求項1に記載のアンカーチェーンホースパイプカバー。
【請求項3】
前記ヒンジは、横長ヒンジからなることを特徴とする請求項1に記載のアンカーチェーンホースパイプカバー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−43513(P2013−43513A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181510(P2011−181510)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000146814)株式会社新来島どっく (101)