説明

アンカー用受圧装置

【課題】より簡素な構成に基づいて受圧機能に必要な剛性が簡便に得られ、軽量化による施工性の向上にも有効であり、しかも内部空間に充填を阻害する障害物がなく、緑化基材等の充填基材の隅々までの的確な充填が容易であり、その内部空間へ充填された充填基材の一体化が害されることもなく、コストの削減にも有効な使い勝手のよいアンカー用受圧装置を提供する。
【解決手段】受圧装置1の略中央部にアンカー部材2の挿通部3を備えるとともに、そのアンカー部材2の挿通部3を中心に放射方向に延びる腕部7を備え、前記腕部7は、開口部8を有する両側の傾斜側板部9と、それらの傾斜側板部9間に配設される底板部10との組合わせから構成し、前記各板部の長辺部を接合してなる断面三角形状の骨組み構造を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山等の斜面の安定化などに使用されるアンカー用受圧装置に関する。すなわち、ロックボルトや、PC鋼線、PC鋼より線、異形PC鋼棒等を用いたアンカーテンドンなどから構成されるアンカー部材に作用する引張力を地盤側へ伝達するアンカー用受圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアンカー用受圧装置に関し、アンカー部材の挿通部を中心に放射状に延びる腕部を逆T字形断面の鋼材によって構成し、その逆T字形鋼材に設置した斜材を介して網類などを取付け、緑化基材等の充填基材を吹付けることにより、それらの逆T字形鋼材や網類などによって形成される断面三角形状の内部空間にも緑化基材等を充填して、受圧装置を含めて斜面の緑化を図るものが知られている(特許文献1)。しかしながら、この従来技術の場合には、逆T字形鋼材の採用によって剛性を強化できる点では優れているものの、その逆T字形鋼材に対して斜材を設置して網類などを取付ける構成を採用していることから、構造が複雑になり施工性が低下するだけでなく、コスト的にも割高につくといった問題があった。また、逆T字形鋼材自体や斜材によって断面三角形状の内部空間が仕切られることから、緑化基材等の充填基材を隅々まで的確に充填することが困難になるとともに、その内部空間に充填された充填基材が分割されて縁切れが生じ、緑化基材等の充填基材の一体化が害されるといった問題もあった。
【特許文献1】特許第3252131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑みて開発したものであり、より簡素な構成に基づいて受圧機能に必要な剛性が簡便に得られ、軽量化による施工性の向上にも有効であり、しかも内部空間に充填を阻害する障害物がなく、緑化基材等の充填基材の隅々までの的確な充填が容易であり、その内部空間へ充填された充填基材の一体化が害されることもなく、コストの削減にも有効な使い勝手のよいアンカー用受圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、請求項1の発明では、受圧装置の略中央部にアンカー部材の挿通部を備えるとともに、そのアンカー部材の挿通部を中心に放射方向に延びる腕部を備え、前記腕部は、開口部を有する両側の傾斜側板部と、それらの傾斜側板部間に配設される底板部との組合わせから構成し、前記各板部の長辺部を接合してなる断面三角形状の骨組み構造を採用するという技術手段を採用した。以上のように、本発明では、腕部に両側の傾斜側板部と底板部の長辺部を接合してなる断面三角形状の骨組み構造を採用したので、それらの両側の傾斜側板部と底板部が相俟って剛性が大幅に強化される結果、各板部の板厚を薄くして軽量化を図り、取扱い性の向上やコストの削減を図ることが可能である。両側の傾斜側板部は、それらの接合部において一体的に折曲げ形成するように構成してもよい(請求項2)。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)腕部として板材からなる断面三角形状の骨組み構造を採用したので、簡単な構成により大きな剛性を効果的に得ることができる。
(2)したがって、腕部を構成する傾斜側板部や底板部の板厚を薄くして軽量化を図ることも可能であり、作業性の向上やコストの削減にも有効である。
(3)内部空間に充填を阻害する障害物がないので、緑化基材等の充填基材の充填が隅々まで簡便かつ的確にできる。また、従来の内部空間内の構成部材による充填基材に対する縁切りの問題は解消され、充填基材の一体化が実現される。
(4)簡単な板金加工によって安価な製造が可能である。
(5)両側の傾斜側板部をそれらの接合部において一体的に折曲げ形成するように構成すれば、腕部の組立て作業の簡便化に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、略中央部に設置されるアンカー部材の挿通部を中心に放射方向に延びる腕部を備えたアンカー用受圧装置であれば、広く適用することができる。その腕部の設置数や配置に関しては、十字状に4本設置する形態や、Y字状に3本設置する形態、他の多角位置に設置する形態、あるいはアンカー部材の挿通部を中心に両側に2本設置する形態など、種々の配置形態が可能である。また、本発明に係るアンカー用受圧装置の設置状態に関しては、それぞれが離間した独立状態に設置される独立設置形態でも、隣接するアンカー用受圧装置の腕部同士が直接的あるいは間に中間部材を挟んで連続的に設置される連続設置形態でも適用が可能である。特に後者の連続設置形態の場合は法枠の形成に好適である。その場合には、そのままの状態で法枠の交差部として使用もよいし、グラウト材を吹付けた状態で使用するようにしてもよい。
【0007】
前記両側の傾斜側板部に形成する開口部に関しては、内部空間への充填基材の充填が可能であれば、適宜の形状や大きさの開口部を任意に配置することが可能である。また、底板部に関しては、傾斜側板部と同様の開口部を開口したものでもよいし、傾斜側板部とは異なる形状や大きさの開口部を形成したものでもよいし、開口部を全く設けない形態のものも可能である。特に、両側の傾斜側板部をトラス状の枠部が残るように開口した場合には、その枠部に作用する曲げ荷重や剪断荷重が大幅に軽減されることから、部材が持つ引張強度や圧縮強度を最大限利用することができ、高い剛性と大きな開口面積とをより効果的に確保することが可能であり、延いては軽量化やコストの削減にも有効である。なお、両側の傾斜側板部や底板部の材質に関しては、受圧機能に十分な強度を有するものであれば、鋼製など金属製のものに限らず、合成樹脂製のものなども可能である。
【実施例】
【0008】
図1は本発明の実施例に係るアンカー用受圧装置の設置状態を片側断面で示した施工状態図であり、図2はその中央の部分を拡大して示した部分拡大図である。また、図3は腕部を示した斜視図であり、図4はその正面図、図5は側面図である。図示のように、アンカー用受圧装置1は、その略中央部にアンカー部材2の挿通部3を備えている。本実施例は、アンカー部材2としてロックボルトを使用した場合を示したものであり、図2のようにロックボルトが挿通可能なパイプ状の挿通管4と、その挿通管4を挟んで上下の端部に溶接等により固着された上板5と下板6とによって、アンカー部材2の挿通部3を構成している。また、アンカー部材2の挿通部3の外方には該挿通部3を中心に放射方向に延びる適宜数の腕部7を備え、それらのアンカー部材2の挿通部3と放射方向に延びる適宜数の腕部7とによって、アンカー用受圧装置1を構成している。因みに、この腕部7の設置数や配置に関しては、前述のように十字状に4本設置する形態やY字状に3本設置する形態など、種々の設置形態が可能である。
【0009】
前記各腕部7は、図3及び図5に示したように、開口部8を有する両側の傾斜側板部9a,9bと、それらの両側の傾斜側板部9a,9bの下端部間に配設された底板部10との組合わせから構成され、前記各板部9a,9b,10の長辺部同士を接合することにより形成される断面三角形状の骨組み構造を採用している。因みに、本実施例の場合には、底板部10の両側に折曲げ形成した係止部11a,11bに両側の傾斜側板部9a,9bの下端部を係止させた状態で溶接等により固着するように構成している。また、図1及び図4に示したように、本実施例の傾斜側板部9では、三角形の開口部8を採用し、トラス状の枠部12が残るように構成した場合を示した。また、図3及び図5に示したように、本実施例では、両側の傾斜側板部9a,9bをそれらの接合部13において一体的に折曲げ形成するように構成した場合を示した。なお、この接合部13における具体的な折曲げ方に関しては、前記断面三角形状の骨組み構造の基礎を損わない形態であれば、断面円弧状に折曲げるものや断面角形状に折曲げるものなど、適宜の折曲げ形態が可能である。さらに、底板部10に関しては、中間部が上方へ若干突出した凸状断面からなる場合を示した。因みに、この底板部10には開口部を設けていないが、長孔状の開口部などの適宜形状の開口部を形成し得ることはいうまでもない。
【0010】
しかして、施工に際しては、図1及び図2に示したように、地盤14側に定着されたアンカー部材2の地上に露出した頭部に対して、その頭部が前記下板6に挿通管4と同心的に形成された挿通孔へ挿入されるように位置合せを行いながら、アンカー用受圧装置1全体を下降させ、図示のように下板6と腕部7を構成する底板部10が地盤14側に当接するように、アンカー用受圧装置1の載置作業が実施される。因みに、このアンカー用受圧装置1の地盤14側への載置作業においては、予め工場等において挿通部3に各腕部7を固着した状態で現場に搬入し、アンカー部材2の地上に露出した頭部に対して外嵌設置するのが通常の作業手順であるが、挿通管4と上板5と下板6から構成される挿通部3のみをアンカー部材2の地上に露出した頭部に外嵌設置した後に、その挿通部3に対して各腕部7を固着するという作業手順も可能である。
【0011】
そして、アンカー用受圧装置1の地盤14側への載置作業が済んだら、図示のように上板5に形成された挿通孔を介して上方へ露出したアンカー部材2の頭部に対して、本実施例では球面座金付きのナット15を螺合して前記上板5上に設置された球面座金16に対して締付け固定することにより、アンカー部材2としてのロックボルトに引張力を作用させて所期の緊張状態に維持することになる。しかる後、アンカー部材2の頭部に防錆キャップ17を設置して内部に防錆油を充填することにより防錆処置を施す。さらに、それらのナット15によるアンカー部材2の締付け固定作業あるいは防錆キャップ17の設置作業に前後して、必要な場合には、腕部7やその周囲に対して緑化基材等の充填基材やグラウト材を吹付けなどにより供給することによって、アンカー用受圧装置1の設置作業が終了することになる。因みに、その設置後のアンカー用受圧装置1全体を網材などの多孔材により被うようにすれば、前記緑化基材等をより安定的に定着させることができる。
【0012】
図6は本発明に係るアンカー用受圧装置を構成する腕部に関する他の実施例を示した斜視図であり、図7はその側面図である。図示のように、本実施例に係る腕部18は、前記実施例に係る腕部7と比較して、両側の傾斜側板部19a,19bに形成する開口部として矩形状の開口部20を採用した点でのみ相違する。本実施例の場合には、矩形状の開口部20を採用したので、板金加工においてより簡便な加工が可能である。以上のように、両側の傾斜側板部に形成する開口部の形状や大きさ、個数などに関しては、必要に応じて変更することが可能である。また、本実施例では、図7に示したように平板状の底板部21を採用した場合を示したが、前記実施例のように凸状断面の底板部を採用したり、適宜形状の開口部を設けたりし得ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係るアンカー用受圧装置の設置状態を片側断面で示した施工状態図である。
【図2】同アンカー用受圧装置の中央の部分を拡大して示した部分拡大図である。
【図3】同アンカー用受圧装置の腕部を示した斜視図である。
【図4】同腕部を示した正面図である。
【図5】同腕部を示した側面図である。
【図6】本発明に係るアンカー用受圧装置を構成する腕部に関する他の実施例を示した斜視図である。
【図7】同腕部を示した側面図である。
【符号の説明】
【0014】
1…アンカー用受圧装置、2…アンカー部材、3…挿通部、4…挿通管、5…上板、6…下板、7…腕部、8…開口部、9…傾斜側板部、10…底板部、11…係止部、12…枠部、13…接合部、14…地盤、15…ナット、16…球面座金、17…防錆キャップ、18…腕部、19…傾斜側板部、20…開口部、21…底板部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
略中央部にアンカー部材の挿通部を備えるとともに、そのアンカー部材の挿通部を中心に放射方向に延びる腕部を備え、前記腕部は、開口部を有する両側の傾斜側板部と、それらの傾斜側板部の間に配設される底板部との組合わせから構成され、前記各板部の長辺部を接合してなる断面三角形状の骨組み構造を採用したことを特徴とするアンカー用受圧装置。
【請求項2】
両側の傾斜側板部をそれらの接合部において一体的に折曲げ形成するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のアンカー用受圧装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−25242(P2008−25242A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200146(P2006−200146)
【出願日】平成18年7月22日(2006.7.22)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】