説明

アンモニア注入装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は排ガスの脱硝装置のダクト内に設置されるアンモニア注入ノズルの支持機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ボイラからの排ガスは、図13に示すように、次の手順で処理される。ボイラ12から排出される排ガスは、ダクトを通り、途中アンモニア注入装置13によりアンモニアガスが供給され脱硝反応器14によって窒素酸化物が除去され、空気予熱器15によって冷された後電気集塵機16によって塵が除去され、脱硫装置17によってイオウ化合物が除去されて煙突18から放出される。本発明はこのうちアンモニア注入装置13と脱硝反応器14からなる脱硝装置のアンモニア注入装置13に係るものである。
【0003】従来のアンモニア注入装置、特にアンモニア注入ノズルの支持機構は、例えば図10乃至図12に示すようになっている。図10はその概略図であり、図1111は図10の一部詳細図であり、図12はその側断面図である。図10乃至図12において、アンモニアガスは矢印で示すようにダクトケーシング7に設けられたアンモニア注入用ヘッダー1から注入され、このアンモニア注入用ヘッダー1と連結しているアンモニア注入母管4を介してこのアンモニア注入母管4に配設されたアンモニア注入ノズル3からダクト内へ供給される。この場合、これらアンモニア注入母管4は自重による撓みや振動を防止するため、ダクトケーシング7内に配置された多数のサポート部材9によって支持されている。この例では図10に示すように、ダクトケーシング7にアンモニア注入用ヘッダー1は左右に設けられ、これらアンモニア注入用ヘッダー1と連結しているアンモニア注入母管4は、図11および図12に示すように、中央部まで延びておりそこでそれぞれサポート部材9に支持固定されており、また、その中間部をUボルト等でサポート部材9に固定されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図10乃至図12に示すような従来のアンモニア注入ノズルの支持機構では、ダクトケーシング7内に配置された多数のサポート部材9によって、ダクトケーシング7内の排ガスの流れを乱したりするため、また、このサポート部材9を設置するためにアンモニア注入ノズル3の取付け間隔を広げたりする必要があるため、均一なアンモニア注入ができないという問題点があった。
【0005】従って、本発明の目的は、これら欠点を解消するためサポート部材9を無くすか、または、その本数を減少させて、アンモニア注入ノズルの支持機構の強度を向上させ、なおかつ均一なアンモニアガスの供給が可能なアンモニア注入装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の本発明の目的は、アンモニア注入装置を以下の構成とすることによって達成される。即ち、排ガスの脱硝装置の触媒層の上流側ダクトにアンモニア注入用ヘッダーと、このアンモニア注入用ヘッダーに連結してアンモニア注入母管を設け、このアンモニア注入母管にアンモニア注入ノズルを配設してダクト内に水平方向または垂直方向にアンモニア注入ノズル群を形成したアンモニア注入装置において、前記アンモニア注入用ヘッダーに一端が閉塞されたアンモニア注入母管を櫛歯状に配置し、アンモニア注入母管のアンモニア注入用ヘッダーに連結していない側を他のアンモニア注入用ヘッダーに支持固定させるようにしたことを特徴とする。
【0007】このアンモニア注入装置において、アンモニア注入母管の複数本を一グループとして、これらとアンモニア注入用ヘッダーとの支持固定を井桁状に構成したことを特徴とする。また、このアンモニア注入装置において、ダクトケーシングの垂直方向に複数本アンモニア注入用ヘッダーを設け、アンモニア注入母管のアンモニア注入用ヘッダーに連結していない側をその下のアンモニア注入用ヘッダーに支持固定させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
【作用】ダクトケーシングにアンモニア注入用ヘッダーを設け、このアンモニア注入用ヘッダーに一端が閉塞されたアンモニア注入母管を櫛歯状に連結し、このアンモニア注入母管のアンモニア注入用ヘッダーに連結していない側を他のアンモニア注入用ヘッダーに支持固定させるようにして、アンモニア注入母管にアンモニア注入ノズル群を形成したので、従来のアンモニア注入ノズルの支持機構におけるサポート部材9を無くすか、または、その本数を減少させることができる。その結果、均一なアンモニア注入ができるようになる。
【0009】このようなアンモニア注入装置において、アンモニア注入母管の複数本を一グループとして、これらとアンモニア注入用ヘッダーとの支持固定を井桁状に構成したので、均一なアンモニア注入ができるとともにアンモニア注入ノズルの支持機構の強度の向上にもなる。
【0010】また、このようなアンモニア注入装置において、ダクトケーシングの垂直方向に複数本アンモニア注入用ヘッダーを設け、アンモニア注入母管のアンモニア注入用ヘッダーに連結していない側をその下のアンモニア注入用ヘッダーに支持固定させるようにしたので、同様に均一なアンモニア注入ができるとともにアンモニア注入ノズルの支持機構の強度の向上にもなる。
【0011】
【実施例】以下に、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例の概略図であり、図2は図1の一部詳細図であり、図3はその側断面図である。図1乃至図3において、ダクトケーシング7にアンモニア注入用ヘッダー1とこれと同様のアンモニア注入用ヘッダー2を設け、アンモニアガスは矢印Aで示すようにこれらアンモニア注入用ヘッダー1および2から注入される。これらアンモニア注入用ヘッダー1および2には一端が閉塞されており、複数のアンモニア注入ノズル3が配設されているアンモニア注入母管4が連結している。図2に示すように、左から4本目まではアンモニア注入母管4はアンモニア注入用ヘッダー1に連結しており、アンモニアガスは矢印Bで示すように移動する。一方アンモニア注入母管4のアンモニア注入用ヘッダー1に連結していない側の一端は閉塞されており、その端部はアンモニア注入用ヘッダー2に支持固定されている。そして、次の4本はアンモニア注入用ヘッダー2に連結しており、アンモニア注入用ヘッダー2に連結していない側の一端は閉塞されており、その端部はアンモニア注入用ヘッダー1に支持固定されている。また、同様に、右から4本目まではアンモニア注入母管4はアンモニア注入用ヘッダー2に連結しており、アンモニアガスは矢印Cで示すように移動する。一方アンモニア注入母管4のアンモニア注入用ヘッダー2に連結していない側の一端は閉塞されており、その端部はアンモニア注入用ヘッダー1に支持固定されている。そして、次の4本はアンモニア注入用ヘッダー1に連結しており、アンモニア注入用ヘッダー1に連結していない側の一端は閉塞されており、その端部はアンモニア注入用ヘッダー2に支持固定されている。支持固定の方法はUボルトを用いてもよいし、溶接によってもよい。このように4本のアンモニア注入母管4を一グループとして、アンモニア注入用ヘッダー1および2とアンモニア注入母管4とを、所謂、井桁状に構成して支持固定したのでアンモニア注入ノズル3の支持機構の強度が向上する。
【0012】これらアンモニア注入用ヘッダー1および2はその両端をダクトケーシング7に固定するが、その固定点5および6の間におけるアンモニア注入用ヘッダー1および2は、ダクトケーシング7と温度差があるため、熱膨張に差を生じる。この熱膨張を吸収するため図2R>2に示す例では、アンモニア注入用ヘッダー1および2の中央部8を2重管としてそれぞれの熱膨張をスライド的に吸収するようにしている。この例では、アンモニア注入用ヘッダー1の中央部8のやや左側を2重管としており、アンモニア注入用ヘッダー2の中央部8のやや右側を2重管としている。
【0013】図4は本発明の別の一実施例の概略図であり、図5は図4の一部詳細図であり、図6はその側断面図である。アンモニア注入用ヘッダー1および2をダクトケーシング7に固定し、このアンモニア注入用ヘッダー1および2にアンモニア注入母管4を連結して、これらを井桁状に構成して支持固定する点は図1乃至図3に示している実施例と同様である。この実施例では上記温度差があるための熱膨張を吸収するための方法として、アンモニア注入用ヘッダー1および2の中央部8を分割し、それぞれの分割部をサポート部材9にUボルト等で支持してスライド的に吸収するようにしたものである。
【0014】図1乃至図6に示す実施例では、アンモニア注入用ヘッダー1および2にアンモニア注入母管4を連結して、これらを井桁状に構成して支持固定する場合にアンモニア注入母管4の4本を一グループとしているが、これに限定されるものではなくその本数は適宜決め得る。また、極端な場合、一本ごとに交互に井桁状に構成して支持固定してもよい。
【0015】図1乃至図6に示す実施例では、図2と図3R>3および図5と図6で示すような一部詳細図にて説明したアンモニア注入ノズル3の支持機構を、図1および図4R>4では部分的にしか示していないが、ダクトケーシング7内全面に設けてアンモニア注入装置を構成している。
【0016】次に、図7乃至図9に本発明のさらに他の一実施例を示す。図7はその概略図であり、図8は図7の一部詳細図であり、図9はその側断面図である。図7乃至図9においては、アンモニア注入用ヘッダー10がダクトケーシング7の垂直方向に固定点5および6にて順次固定して設けられており、このアンモニア注入用ヘッダー10には複数のアンモニア注入ノズル3が配設されたアンモニア注入母管4が連結されている。そして、アンモニア注入母管4が連結されている側と反対側の一端は閉塞されており、アンモニア注入母管4が連結されているアンモニア注入用ヘッダー10のすぐ下のアンモニア注入用ヘッダー10に支持固定されている。このような支持機構が順次繰返し行われてダクトケーシング7内の全面をおおうようにしている。この場合、最後のアンモニア注入母管4の下端にはアンモニア注入用ヘッダー10の代わりにサポート用のパイプを設けて、この下端部を支持固定するようにしている。また、この実施例では、図4乃至図6の場合と同様、ダクトケーシング7の内外の温度差による熱膨張を吸収するために、アンモニア注入用ヘッダー10の中央部8を分割し、この分割部をサポート部材9に支持させるようにしている。この場合はアンモニア注入用ヘッダー10の強度を向上させるために内部にもう一本管を設け2重管としいてる。そして、内部管にはアンモニア注入用ヘッダー10(外部管)の間にスペーサ11が設けられている。このようにアンモニア注入用ヘッダー10を2重管とすることによって、より強固なアンモニア注入ノズル3の支持機構が可能となる。なお、この場合アンモニアガスの均等配分を考慮して内部管と外部管のいずれにもアンモニアガスを注入するようにしている。即ち、図8に示すように、内部管には矢印Aから、そして、外部管10には矢印Dの方向から注入する。
【0017】この実施例ではアンモニア注入用ヘッダー10を垂直方向に順次固定して設けたが、これに限定されるものではなく場合によっては水平方向に取り付けた構成としても可能である。
【0018】
【発明の効果】上記のように、本発明によれば、アンモニア注入ノズル3の支持機構即ちアンモニア注入用ヘッダー1とアンモニア注入母管4との関係を、アンモニア注入用ヘッダー1に一端が閉塞されたアンモニア注入母管4を櫛歯状に連結し、アンモニア注入母管4のアンモニア注入用ヘッダー1に連結していない側を他のアンモニア注入用ヘッダー1に支持固定させるようにしたので、その強度を向上させることができ、また、サポート部材9を無くすかまたは本数を減らすことができるので、排ガスの流れの乱れを無くすことができ、均一なアンモニアガスの供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の概略説明図である。
【図2】図1の一部詳細図である。
【図3】図2の側断面図である。
【図4】本発明の別の一実施例の概略説明図である。
【図5】図4の一部詳細図である。
【図6】図5の側断面図である。
【図7】本発明のさらに他の一実施例の概略説明図である。
【図8】図7の一部詳細図である。
【図9】図8の側断面図である。
【図10】従来のアンモニア注入装置の概略説明図である。
【図11】図10の一部詳細図である。
【図12】図11の側断面図である。
【図13】脱硝装置付きボイラの排ガス処理の基本系統図である。
【符号の説明】
1 アンモニア注入用ヘッダー
2 アンモニア注入用ヘッダー
3 アンモニア注入ノズル
4 アンモニア注入母管
5 固定点
6 固定点
7 ダクトケーシング
8 アンモニア注入用ヘッダー中央部
9 サポート部材
10 アンモニア注入用ヘッダー
11 スペーサ
12 ボイラ
13 アンモニア注入装置
14 脱硝反応器
15 空気予熱器
16 電気集塵機
17 脱硫装置
18 煙突

【特許請求の範囲】
【請求項1】 排ガスの脱硝装置の触媒層の上流側ダクトにアンモニア注入用ヘッダーと、該アンモニア注入用ヘッダーに連結してアンモニア注入母管を設け、該アンモニア注入母管にアンモニア注入ノズルを配設してダクト内に水平方向または垂直方向にアンモニア注入ノズル群を形成したアンモニア注入装置において、前記アンモニア注入用ヘッダーに一端が閉塞されたアンモニア注入母管を櫛歯状に配置し、アンモニア注入母管のアンモニア注入用ヘッダーに連結していない側を他のアンモニア注入用ヘッダーに支持固定させるようにしたことを特徴とするアンモニア注入装置。
【請求項2】 請求項1において、アンモニア注入母管の複数本を一グループとして、これらとアンモニア注入用ヘッダーとの支持固定を井桁状に構成したことを特徴とするアンモニア注入装置。
【請求項3】 請求項1において、ダクトケーシングの垂直方向に複数本アンモニア注入用ヘッダーを設け、アンモニア注入母管のアンモニア注入用ヘッダーに連結していない側をその次のアンモニア注入用ヘッダーに支持固定させるようにしたことを特徴とするアンモニア注入装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図12】
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【図8】
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【図11】
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【図13】
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【特許番号】特許第3292887号(P3292887)
【登録日】平成14年4月5日(2002.4.5)
【発行日】平成14年6月17日(2002.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−21016
【出願日】平成4年2月6日(1992.2.6)
【公開番号】特開平5−212243
【公開日】平成5年8月24日(1993.8.24)
【審査請求日】平成11年2月2日(1999.2.2)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−298429(JP,A)
【文献】特開 昭53−14667(JP,A)