説明

アーク溶接開始方法

【課題】 ワーク3を形成する板材が亜鉛メッキ鋼板である場合、板材間及びワーク3・設置台2間の接触抵抗値が大きくなるために、アークスタート性が悪くなる。本発明は、このような溶接条件下でのアークスタート性の改善を目的とする。
【解決手段】 本発明は、ワーク3を設置台2に取り付けてアーク溶接を開始するアーク溶接開始方法において、溶接開始指令Stが出力されると、給電金具7をワーク3に押し付けてワーク3と設置台2とを接触状態にし、前記給電金具7と設置台2との間に電圧を印加して前記給電金具7からワーク3を経て設置台2へと接触電流Isを通電してワーク3・設置台2間の接触抵抗を減少させ、前記接触電流Isの通電を停止した後に溶接電源PSによって溶接用電極1とワーク3との間にアークを発生させて溶接を開始する、ことを特徴とするアーク溶接開始方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークと設置台との間の接触抵抗を減少させてアークスタート性を良好にするためのアーク溶接開始方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、溶接ロボットを用いた一般的なアーク溶接装置の構成図である。同図は消耗電極式アーク溶接の場合である。溶接開始指令生成回路STは、溶接を開始するための溶接開始指令Stを出力する。この溶接開始指令生成回路STには、溶接開始ボタン、PLC等が対応する。ロボット制御装置RCは、上記の溶接開始指令Stを受けて、マニピュレータRMの各軸のサーボモータを制御する動作制御信号Mcを出力すると共に、クランプ4a、4bの開閉を制御するクランプ制御信号Cc及び溶接電源PSを起動する起動信号Onを出力する。溶接電源PSは、上記の起動信号Onを受けて、出力電圧Vo及び出力電流Ioを出力すると共に、送給モータMを制御するための送給制御信号Fcを出力する。マニピュレータRMは、送給モータM及び溶接トーチ5を搭載し、教示された溶接線に沿って溶接トーチ先端を移動させる。溶接用電極(消耗電極)である溶接ワイヤ1は、送給モータMによって送給される。ワーク3は、設置台2に載置されて、クランプ4a、4bによって固定される。
【0003】
図9は、上記の溶接装置における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接開始指令Stの、同図(B)はクランプ制御信号Ccの、同図(C)は起動信号Onの、同図(D)は出力電流Ioの時間変化を示す。以下、同図を参照して溶接開始時の動作を説明する。
【0004】
時刻t1において、同図(A)に示すように、溶接開始指令Stが出力(Highレベル)されると、同図(B)に示すように、クランプ制御信号CcがHighレベルになり、クランプ4a、4bが閉まりワーク3が設置台2に固定される。時刻t2において、同図(C)に示すように、起動信号OnがHighレベルになると、溶接電源PSは溶接ワイヤ1の送給を開始してアークが発生し、同図(D)に示すように、出力電流Ioが通電して溶接が開始する。時刻t3において、マニピュレータRMが溶接線の終端に達すると、同図(C)に示すように、起動信号OnがLowレベルになり、同図(D)に示すように、出力電流Ioの通電が停止して溶接を終了する。時刻t4において、同図(B)に示すように、クランプ制御信号CcがLowレベルになり、クランプ4a、4bが開放されて、ワーク3の交換が行われる。
【0005】
上記の時刻t2において、円滑にアークを発生させることが、良好な溶接品質を得るための重要な要素である。このアークスタート性を良好にするために、特許文献2に記載する従来技術1では、溶接電源の出力端子間に大容量のコンデンサを設け、アークスタート時にこのコンデンサから急峻な大電流を通電することによってアークスタート性を向上させている。
【0006】
また、特許文献3に記載する従来技術2では、溶接電源に測定モードという特別なモードを設け、この測定モードでは溶接電源の出力端子間の通電経路抵抗値を測定する。溶接電源の出力端子と溶接トーチとの接続状態及び出力端子と母材との接続状態(アース状態)に接続不良がある場合、上記の通電経路抵抗値がしきい値よりも大きくなるために、アース状態等の不良を発見することができる。したがって、溶接装置を配置・接続するセ;チトアップ時に1回テストすることになる。
【0007】
【特許文献1】特開平10−235494号公報
【特許文献2】特開昭61−78569号公報
【特許文献3】特開2004−74235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10は、ワーク3a、3bから設置台2への出力電流Ioの通電経路を示す図である。同図では、ワークは上板3aと下板3bとからなる重ね継手の場合であり、板材には亜鉛メッキ層6a、6bが表面加工されている場合である。同図に示すように、出力電流Ioは上板3a→亜鉛メッキ層6a→下板3b→亜鉛メッキ層6b→設置台2の経路で通電する。この亜鉛メッキ層6a、6bは板材間及びワーク・設置台間の接触抵抗値を大幅に大きくする。アークスタート時において接触抵抗値が大きいと、出力電流Ioが急峻に立ち上がることができずにアークスタート性が悪くなる。一旦アークスタートすると、電流の通電によって通電経路の亜鉛メッキ層6a、6bが除去されて接触抵抗値は小さくなる。このために、定常時は良好な溶接が行うことができる。
【0009】
上述した従来技術1によってアークスタート時にコンデンサからの急峻な電流を通電しようとしても、上記の接触抵抗値が大きいために急峻に通電することができない。この結果、アークスタート性の悪さは改善されない。さらに、上述した従来技術2は、アース状態等の接続不良を発見して警報を発するものである。このために、ワークを次々と交換して溶接する際の大きな接触抵抗値に起因するアークスタート不良を改善することができない。上記においては、ワークを形成する板材表面に亜鉛メッキ層が存在する場合であるが、これ以外にも機械加工用の油が付着している場合又は板材自体の抵抗値が大きいステンレス鋼板の場合ても接触抵抗値は大きくなる。
【0010】
そこで、本発明では、板材表面にメッキ層、加工用油等が存在するために板材間及びワーク・設置台間の接触抵抗値が大きくなった場合でも、良好なアークスタート性を得ることができるアーク溶接開始方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、ワークを設置台に取り付けてアーク溶接を開始するアーク溶接開始方法において、
溶接開始指令が出力されると、給電金具をワークに押し付けてワークと設置台とを接触状態にし、前記給電金具と設置台との間に電圧を印加して前記給電金具からワークを経て設置台へと接触電流を通電してワーク・設置台間の接触抵抗を減少させ、前記接触電流の通電を停止した後に溶接電源によって溶接用電極とワークとの間にアークを発生させて溶接を開始する、ことを特徴とするアーク溶接開始方法である。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明記載の接触電流の通電を、補助電源によって行う、ことを特徴とするアーク溶接開始方法である。
【0013】
また、第3の発明は、第1の発明記載の接触電流の通電を、溶接電源の出力経路を切り換えて行う、ことを特徴とするアーク溶接開始方法である。
【発明の効果】
【0014】
上記第1の発明によれば、アークスタート前に、給電金具をワークに押し付けて接触電流を通電することによって、通電経路中のメッキ層、油等が除去してワーク・設置台間の接触抵抗値を小さくすることができる。特に、ワークを形成する板材が亜鉛メッキ鋼板、油の付着した鋼板、ステンレス鋼板等のように接触抵抗値が大きい場合には、その接触抵抗値を大きく減少させることができる。この結果、ワークを交換するごとに小さな接触抵抗値の状態にすることができ、常に良好なアークスタート性を得ることができる。また、ワークが交換されるごとに自動的に接触電流の通電及び停止制御が行われるので、本発明は自動溶接システムに適用することができる。
【0015】
上記第2の発明によれば、接触電流を溶接電源とは別個の補助電源によって供給することで、上述した第1の発明の効果を奏することができる。このために、溶接電源として通常のものを使用することができる

【0016】
上記第3の発明によれば、接触電流を溶接電源の通電経路を溶接時とは切り換えて供給することで、上述した第1の発明の効果を奏することができる。このために、溶接電源とは別個の補助電源を必要としないという有利さがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るアーク溶接開始方法を実施するための溶接装置の構成図である。同図において上述した図8と同一物には同一符号を付してそれらの説明は省略する。以下、図8とは異なる点線で示す構成物について説明する。
【0019】
ロボット制御装置RC2は、溶接開始指令Stを受けて、マニピュレータRMの各軸のサーボモータを制御する動作制御信号Mcを出力すると共に、クランプ4の開閉を制御するクランプ制御信号Cc、給電金具7の開閉を制御する給電金具制御信号Kc、補助電源HPの起動を制御する補助電源起動信号Hp及び溶接電源PSの起動を制御する起動信号Onを出力する。給電金具7は、設置台2とは絶縁されており、上記の給電金具制御信号Kcに従ってワーク3へ押し付けられる。ワーク3に押し付けられる部分は、銅、アルミニウム等の導電性の良い材料を使用する。補助電源HPは、上記の補助電源起動信号Hpに従って起動されて給電金具7と設置台2との間に電圧を印加し、給電金具7を介してワーク3→設置台2へと接触電流Isを通電する。補助電源HPは、定電流特性又は垂下特性の電源で良い。また、補助電源HPは、商用電源を変圧器で降圧して限流抵抗器を挿入した簡単な構成のものでも十分である。接触電流Isの電流値及び通電時間は、小径の通電経路中のメッキ層、油等が除去されて接触抵抗値が小さくなる値の組合せであれば良い。
【0020】
図2は、図1で上述した溶接装置における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接開始指令Stの、同図(B)は給電金具制御信号Kcの、同図(C)はクランプ制御信号Ccの、同図(D)は補助電源起動信号Hpの、同図(E)は接触電流Isの、同図(F)は溶接電源PSの起動信号Onの、同図(G)は出力電流Ioの時間変化を示す。以下、同図を参照して溶接開始時の動作を説明する。
【0021】
時刻t1において、同図(A)に示すように、溶接開始指令Stが出力(Highレベル)されると、同図(B)に示すように、給電金具制御信号KcがHighレベルになり、給電金具7がワーク3に押し付けられる。時刻t2において、同図(D)に示すように、補助電源起動信号HpがHighレベルになると、同図(E)に示すように、補助電源HP→給電金具7→ワーク3→設置台2の経路で接触電流Isが通電する。これにより、通電経路中のメッキ層、油等が除去されて接触抵抗値が小さくなる。
【0022】
時刻t3において、同図(D)に示すように、補助電源起動信号HpがLowレベルになると、同図(E)に示すように、接触電流Isの通電は停止する。時刻t4において、同図(C)に示すように、クランプ制御信号CcがHighレベルになり、クランプ4が閉じてワーク3を設置台2に固定する。時刻t5において、同図(F)に示すように、起動信号OnがHighレベルになり、溶接ワイヤ1の送給及び溶接電源の出力が開始されて、同図(G)に示すように、良好なアークスタートが行われて出力電流Ioが通電する。良好なアークスタートとなる理由は、接触電流Isの通電によって接触抵抗値が小さくなっているためである。この動作をワーク3が交換される度に自動的に行うことで、常に良好なアークスタート性を得ることができる。
【0023】
上記において、同図(C)に示すクランプ制御信号Ccを、同図(B)に示す給電金具7と同じタイミングの時刻t1にHighレベルにして閉じるようにしても良い。この場合、接触電流Isの一部がクランプ4側にも分留するが、上述した効果にはほとんど影響しない。
【0024】
[実施の形態2]
図3は、本発明の実施の形態2に係るアーク溶接開始方法を実施するための溶接装置の構成図である。同図において上述した図1と同一物には同一符号を付してそれらの説明は省略する。以下、図1とは異なる点線で示す構成物について説明する。
【0025】
ロボット制御装置RC3は、溶接開始指令Stを受けて、マニピュレータRMの各軸のサーボモータを制御する動作制御信号Mcを出力すると共に、クランプ4の開閉を制御するクランプ制御信号Cc、給電金具7の開閉を制御する給電金具制御信号Kc、溶接電源PSからの出力電流Ioの通電経路を切り換える接点を開閉する接点開閉信号Cr及び溶接電源PSの起動を制御する起動信号Onを出力する。電磁開閉器CRは、上記の接点開閉信号Crに従ってその接点を開閉する。この接点を閉状態にして溶接電源PSを起動することによって、接触電流Isを給電金具7→ワーク3→設置台2の経路で通電する。このとき、溶接用電極(溶接ワイヤ1)はワーク3と離れた位置にある。また、接触電流Is通電時の溶接電源PSの特性は、定電流特性又は垂下特性で良い。また、上記の電磁開閉器CRの代わりにスイッチング素子を使用しても良い。
【0026】
図4は、図3で上述した溶接装置における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接開始指令Stの、同図(B)は給電金具制御信号Kcの、同図(C)はクランプ制御信号Ccの、同図(D)は接点開閉信号Crの、同図(E)は接触電流Isの、同図(F)は溶接電源PSの起動信号Onの、同図(G)は出力電流Ioの時間変化を示す。以下、同図を参照して溶接開始時の動作を説明する。
【0027】
時刻t1において、同図(A)に示すように、溶接開始指令Stが出力(Highレベル)されると、同図(B)に示すように、給電金具制御信号KcがHighレベルになり、給電金具7がワーク3に押し付けられる。時刻t2において、同図(D)に示すように、接点開閉信号CrがHighレベルになり、かつ、同図(F)に示すように、起動信号OnがHighレベルになると、溶接電源PSの出力電流Ioの経路が切り換わり、同図(E)に示すように、給電金具7→ワーク3→設置台2の経路で接触電流Is(=出力電流Io)が通電する。これにより、通電経路中のメッキ層、油等が除去されて、接触抵抗値が小さくなる。
【0028】
時刻t3において、同図(D)に示すように、接点開閉信号CrがLowレベルになり、同図(F)に示すように、起動信号OnがLowレベルになると、同図(E)に示すように、接触電流Isの通電は停止する。時刻t4において、同図(C)に示すように、クランプ制御信号CcがHighレベルになり、クランプ4が閉じられてワーク3を設置台2に固定する。時刻t5において、同図(F)に示すように、起動信号OnがHighレベルになり、溶接ワイヤ1の送給及び溶接電源の出力が開始されて、同図(G)に示すように、良好なアークスタートが行われて出力電流Ioが通電し溶接が行われる。良好なアークスタートとなる理由は、接触電流Isの通電によって接触抵抗値が小さくなっているためである。この動作をワーク3が交換される度に自動的に行うことで、常に良好なアークスタート性を得ることができる。
【0029】
[実施の形態3]
図5は、本発明の実施の形態3に係るアーク溶接開始方法を実施するための溶接装置の構成図である。同図において上述した図3と同一物には同一符号を付してそれらの説明は省略する。以下、図3とは異なる点線で示す構成物について説明する。
【0030】
ロボット制御装置RC4は、溶接開始指令Stを受けて、マニピュレータRMの各軸のサーボモータを制御する動作制御信号Mcを出力すると共に、クランプ4の開閉を制御するクランプ制御信号Cc、給電金具7の開閉を制御する給電金具制御信号Kc及び溶接電源PSの起動を制御する起動信号Onを出力する。同図では、溶接電源PSの出力端子は図3とは異なり直接給電金具7に接続される。給電金具7をワーク3に押し付けられた状態にして溶接電源PSを起動することによって、接触電流Isを給電金具7→ワーク3→設置台2の経路で通電する。このときの溶接電源PSの特性は、定電流特性又は垂下特性で良い。溶接を行うときは、給電金具7を開放して出力電流Ioの分流経路を切り離し、出力電流Ioが溶接ワイヤ1→ワーク3→設置台2と通常経路で通電するようにする。すなわち、同図では接点の代わりに給電金具7の開閉を利用していることになる。
【0031】
図6は、図5で上述した溶接装置における各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接開始指令Stの、同図(B)は給電金具制御信号Kcの、同図(C)はクランプ制御信号Ccの、同図(D)は接触電流Isの、同図(E)は溶接電源PSの起動信号Onの、同図(F)は出力電流Ioの時間変化を示す。以下、同図を参照して溶接開始時の動作を説明する。
【0032】
時刻t1において、同図(A)に示すように、溶接開始指令Stが出力(Highレベル)されると、同図(B)に示すように、給電金具制御信号KcがHighレベルになり、給電金具7がワーク3に押し付けられる。時刻t2において、同図(E)に示すように、起動信号OnがHighレベルになると、同図(D)に示すように、給電金具7→ワーク3→設置台2の経路で接触電流Isが通電する。これにより、通電経路中のメッキ層、油等が除去されて、接触抵抗値が小さくなる。
【0033】
時刻t3において、同図(E)に示すように、起動信号OnがLowレベルになり、かつ、同図(B)に示すように、給電金具制御信号KcがLowレベルになると、同図(D)に示すように、接触電流Isの通電は停止する。これにより、給電金具7がワーク3から解放されるので、溶接電源PSの出力電流Ioの通電経路は通常の溶接トーチ5側となる。時刻t4において、同図(C)に示すように、クランプ制御信号CcがHighレベルになり、クランプ4が閉じられてワーク3を設置台2に固定する。時刻t5において、同図(E)に示すように、起動信号OnがHighレベルになり、溶接ワイヤ1の送給及び溶接電源の出力が開始されて、同図(F)に示すように、良好なアークスタートが行われて出力電流Ioが通電し溶接が行われる。良好なアークスタートとなる理由は、接触電流Isの通電によって、接触抵抗値が小さくなっているためである。この動作をワーク3が交換される度に自動的に行うことで、常に良好なアークスタート性を得ることができる。上記において、ワーク3又は設置台2から絶縁されたクランプ4を使用し、時刻t1において、同図(C)に示すクランプ制御信号CcをHighレベルに変化させてクランプ4を閉状態にしても良い。
【0034】
[効果の一例]
図7は、従来技術1と本発明とで不良なアークスタートが発生する比率(不良スタート率)を比較した図である。同図は、板材に板厚2mmの亜鉛メッキ鋼板及び軟鋼を使用して炭酸ガスアーク溶接を行った場合であり、ワークを交換しながら多数回のアークスタート試験を繰り返し不良なアークスタートとなった比率を測定したものである。同図から明らかなように、亜鉛メッキ鋼板の不良スタート率は大幅に減少している。また、軟鋼の場合もアークスタート性が改善されている。上記から、本発明は通常の軟鋼に対してもアークスタート性が改善するが、特に、亜鉛メッキ鋼板、油の付着した鋼板及びステンレス鋼板に対してアークスタート性を大幅に改善する。上述した実施の形態1〜3では、接触電流の通電制御をロボット制御装置RC2〜RC4が行う場合を例示したが、溶接電源PS又は別の制御装置が行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1に係るアーク溶接開始方法を実施するための溶接装置の構成図である。
【図2】図1の溶接装置における各信号のタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2に係るアーク溶接開始方法を実施するための溶接装置の構成図である。
【図4】図3の溶接装置における各信号のタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施の形態3に係るアーク溶接開始方法を実施するための溶接装置の構成図である。
【図6】図5の溶接装置における各信号のタイミングチャートである。
【図7】従来技術1と本発明との不良スタート率の比較図である。
【図8】従来技術におけるアーク溶接開始方法を実施するための溶接装置の構成図である。
【図9】図8の溶接装置における各信号のタイミングチャートである。
【図10】課題を説明するためのワーク3a、3bから設置台2への出力電流Ioの通電経路を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 溶接ワイヤ
2 設置台
3 ワーク
3a 上板
3b 下板
4、4a、4b クランプ
5 溶接トーチ
6a、6b 亜鉛メッキ層
7 給電金具
Cc クランプ制御信号
CR 電磁開閉器
Cr 接点開閉信号
Fc 送給制御信号
HP 補助電源
Hp 補助電源起動信号
Io 出力電流
Is 接触電流
Kc 給電金具制御信号
M 送給モータ
Mc 動作制御信号
On 起動信号
PS 溶接電源
RC ロボット制御装置
RC2〜RC4 ロボット制御装置
RM マニピュレータ
ST 溶接開始指令生成回路
St 溶接開始指令
Vo 出力電圧


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを設置台に取り付けてアーク溶接を開始するアーク溶接開始方法において、
溶接開始指令が出力されると、給電金具をワークに押し付けてワークと設置台とを接触状態にし、前記給電金具と設置台との間に電圧を印加して前記給電金具からワークを経て設置台へと接触電流を通電してワーク・設置台間の接触抵抗を減少させ、前記接触電流の通電を停止した後に溶接電源によって溶接用電極とワークとの間にアークを発生させて溶接を開始する、ことを特徴とするアーク溶接開始方法。
【請求項2】
請求項1記載の接触電流の通電を、補助電源によって行う、ことを特徴とするアーク溶接開始方法。
【請求項3】
請求項1記載の接触電流の通電を、溶接電源の出力経路を切り換えて行う、ことを特徴とするアーク溶接開始方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−69228(P2007−69228A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257641(P2005−257641)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】